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自立的な価値観の形成を目指す社会科論争問題学習 : 「アメリカの社会的論争問題」を事例として

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(1)

会系教

科教

育学会

『社会系教科教育学研究』第12

号 2000

(pp.

97-104)

自立的な価値観の形成を目指す社会科論争問題学習

「ア

リカの社

的論

争問題

を事例

して

The Issues

一 Centered Approach in Social Studies Class to Develop

Children's Independent sense of Values:

In the Case of Curriculum Unit

“American Social Issues

I 

じめ

一問題

所在

経済

的に

も豊か

にな

民主

的な

政治

体制

った

現代

いても

,私た

日常の

生活の

中で様

々な社

問題

して

いる

。例

,臓

移植

題が

。医療

術の

達に

以前

ら命

を救

ことが

きなか

った

刻な

状態の

人も

,臓

を移

植す

ことに

って

きる

望み

を持

ことが

きる

うに

った

。臓器

成立

,施行

され(1997

年)

,人

々は臓器

供意

思表

ド等に

って

提供

るか

どうか

を自

定で

きる(実

際の

あた

ては

家族の

同意

条件が

くつか

ある)

。 

しか

し,この

ことに

しては

脳の

を基準

した

受け入れ

られ

い人

々か

ら反対

批判

も起

こっ

いる

。法

的に

段階の

移植

認め

られ

とは

または

家族が

提供

同意

るか

どうかは

人ひ

りの

自己決

に任

され

,我

々は

この

題に

いて

関心

では

られ

とい

う状

況に

おかれ

いる

。臓

移植の

問題

でな

く,

どの

うに

動すべ

きか

いて絶

な共

通の

規範

,各

自に

判断

委ね

られ

る社会

問題は

くある

。出版

物の

とい

う言

論の

自由規制

関す

問題

,大規

開発

いての

護す

るか

的繁

を求

るか

とい

う問題

々で

,それ

らは

論争

問題

と呼

ばれ

る1)

とこ

ろで

,学校

,特

に社

科教

ども

これ

らの

問題

有効

に対

し得

力を育

し得

てい

るだ

ろうか

。結

論か

ら言

えば

,現実

十分

ある

と言わ

ざる

を得

。基礎

・基

と呼

ばれ

事項の

説明

時間

を費

,現

実の

問題

きれ

うの

それ

を打破

るね

らいも

って

平成10

年度の

学習

指導要領の改訂では

,匚

総合的な学習の時間」が

導入された

。確かに匚

総合的な学習の

時間」にお

いては

,子どもの

自主的自発的な活動が重ん

じら

るため

,論争問題について子どもは

自由に活発

に意見を述べ

ることができる

。しか

し,それは

どもが浅い社会認識と自分の持っている価値観

に基

づいて決断

しているに過ぎない

したが

って,

自ら意見

を表明する態度の

形成や議論の方法に

いては習得

し得ても

,その

問題に

ついてよ

り高度

な思考

・判断ができるようになったとは言い難

‰論争問題

を取

り上げて学習することの

目的

,意見

を表明

した

り話合いをした

りする場

を提

供することだけではない

。学問的探求や徹底的な

科学的研究に基づいて

,その

問題に対

してできる

り合理的な解答

を導き出せる

力をつけてやる必

要が

あるの

ではないか3

。問題に対処する

力は,

問題について徹底的に探求

してい

くことによって

しか

育成され

得ない

。論争問題学習は

,その

よう

な探求を体

系的

・計画

的に行な

うことの

できる社

会科の中で取

り扱われ

るべきである

。問題

となる

,社

会科における論争問題学習では

,どの

よう

問題

を取

り上げ

,それ

らをどの

うに構

し,

ように教授

していけばよいか

ということである

本稿では

,上記の

ような問題意識に基づいて,

論争問題

を中心に構成され

る社会科カリキ

ュラム

の原理を考察

していく

。その方法

としては,まず

次章において

,これまでの

問題中心の社会科教育

論に関する研究

を検討

,現代の論争問題に適

たカ

リキュラム

理論

・方法は何か

を解明する。そ

して

,第Ⅲ章以下においては

,そのような考え方

を比較的明瞭に反映

していると考

えられる具体的

な事例を分析

しながら論

を展開

していくことにす

97−

(2)

。最終的には,その

ようなカリキ

ュラム

の内容

構成原理や授

業構成原理

を示

,それ

らが持つ教

育的意義について考察

していきたい

n 

どもの信念の成長を促す論争問題学習

1.論争問題学習の諸理論

現代の

論争問題を扱うカ

リキュラムの原理は

学習を通

じて

,生徒の論争

を批判的に吟味する能

力を高めるもの

でなければならない

。また

,判断

の拠

り所となる価値観や信念を成長させ

るもの

なければならない

。なぜな

ら,現代の論争問題は

容易に合意が得られ

るものではな

,む

しろ個々

の価値観に基

づく合理的な判断に解決が委ね

られ

るも

のであるからである。

論争問題学習を社会科の原理

とす

る研究はアメ

リカ合衆国においては1960

年代後半か

らの

「新社

会科

」の中で積み重ね

られ

てきた几日本におけ

る研究は

,それ

らの

アメ

リカの研

究を紹介

,分析

検討する形で行なわれ

てきている5

。その代表的

な論者と

してはメ

トカ

フ,オ

リバー

マシャラ

,シ

ェー

バー等が挙げられ

よう。この

四者の

,オ

リバー

,マシャラス

,シ

ェー

バーは論争問

題学習のね

らいを合理的な意思決定力や判断

力の

育成と捉えている。まず

この

三者に

ついて検討

う。

論争問題の解決へ向けての意思決定過程は次の

うな段階を経

ると言われ

ている

民主主義的な価値意識の

形成

問題状況の事実関係の正確な把握

問題解決のための可能な選択肢に

ついて

,その

結果の

予測と評価。

対立す

る価値よ

りもよ

り高次の価値に照

らし合

わせての決断6

マシャラスは

この

うち②③の段階に基づく意思

決定力の

育成を重視

,判断の根拠

としての

科学

的な事実認識を重視する

。それ

に対

してオ

リバー

とシ

ーバー

では

,オ

リバー

が論争

問題の内容自

体の認識を重視

,それ

に対

してシ

ェー

バーは意

思決定

力の育成にむ

しろ重きをおくという違いは

あるものの

,いずれ

も価値判断の段階を重視

して

いるという点で共通

している

。オ

リバー

は匚

法制

的フレ

ーム

ワー

ク」と呼ばれ

る社会的価値に照

して,シ

ェーバー

では第三のよ

り高次の価値に訴

える

ことで判断することを求めている。

現代の価値が鋭く対立する論争問題を扱うなら

,価値判断過程を重視したオリバーとシェーバー

の理論の方がより適していると言えるだろう

。し

かし

,両者とも最終的な判断は,対立を解消する

ため第

三の,社会的に見てより高次の価値に照ら

して選択肢を採用させようとしている点て限界が

ある

。現代的論争問題では,例えば臓器移植の問

題にしても

,そのような高次の価値を想定するこ

とは困難であるし

,これらの問題は対立を解消す

べく決断するというよりも

,対立を前提に個々人

が自分の価値観に照らして判断するものだからで

ある。

一方,対立を対立として受け止めさせ,そのよ

うな社会における意見の対立は

,個の内面におい

ても葛藤として生じ

,その葛藤が信念を揺るがせ,

変容させるというメ

トカ

ーフの考え方は注目に値

する

。彼の理論は以下のようにまとめられる。

すなわ

,パー

ソナ

リテ

ィーの

形成を文化的文脈

中で捉

,真の問題をアメリカ文化のclosed area

における論争問題に

一致した信念に限定

し,それ

反省的に吟味させることによって,生徒の内面性の

育成

を達成せんとするとき

,そこには,

「 ̄

『何のため

に』

『何

を』

『どう教えるのか』

」という目標

・内容

方法が

一つの問題として追求されており,それ

を可

ならしめ

る論理が展開され

ている7

論争問題学習を意思決定力や判断力の育成とい

た目標達成のための手段として捉え

,学習過程に

重点をおくのではなく

,子どもの内面性を育成す

る教育内容として論争問題の特性に着目し

,目標

と内容

,方法が一体化した論争問題学習の原理を

示している点が,先の三者との大きな違いと言

えるだろう

。また,

closed area

についてはメ

トカーフは次のように述べている。

closed area

先入見やタ

ーで満たされ

てお

り。

そこでは

,信念や価値観の不一致や相互の

矛盾が行

を支配

している8

すなわち,

closed area

とは

,社会全体で意見が

対立するばかりでなく

,個々人においても信念が

対立するような問題領域であり

,さらにそこは偏

見やタブ

ーといった合理的な思考を阻害する要因

に支配されており,人々はそれらに従って情緒的

(3)

に行動するというのである

。 

したがってこの

closed

aにおける信念

を反省的に吟味するこ

とは

,子

どもにとっては

内面の葛藤を克服

し,内

的成

長をとげる

ことであ

社会にとってはclosed

area

における問題を解消することにつながるの

である

。また

,その反省的思考の過程は

「 ̄

信念

(先入見)→疑い→意見

(洞察

,仮説)→吟味→

吟味された信念

」9

という展開を経る。最初に選

択され

る信念とは

,何

らかの論争問題に関連

し,

生徒の

多くが保持

しているもの

である

。この

よう

な信念に疑問を抱かせ

過程が反省的思考の過程なのである。

,それ

を吟味

し再構築する

この

ようなメ

トカ

フの社

会科教

育論は,

closed

area

の設定をは

じめとして彼独自のアメリカ

社会の

分析に基づいたもの

であるということと

1960

年代とい

う時代的な問題を考慮すると

,現代

論争問題学習に適用するうえでは限界が

あると

いうことは否定できないが

,次の

ような点につい

ては

示唆を与えてくれる

と思われ

る。

子どもの内的葛藤

を促

,それ

によって信念の

変容

・成長

を促すという目標設定。

問題は価値や信念といったその社会の

文化の

核に関わるもの

であるという内容選択の原理

それ

らの価値や信念を反省的に吟味

していくと

いう学習原理

以上の議論

を踏ま

えると現代

的論争

問題学習と

しては

,論争問題の認識

を通

じて,子

どもの内的

葛藤

を生み

,信念の成長を促す

ようなものが求め

られ

ていると言

えるの

ではないだ

ろうか

『ア

メリカの社会的論争問題』の全体計画

次章か

らは

,前節で明らかになった論争問題学

習の原理

を比較的明瞭に反映

していると思われ

『アメリカの社会的論争問題(American Social

Issues)

(以下

『論争問題』と表記する)を取

上げ

,論

を展開す

る。まず

,本節

ではその全体的

な概要を説明する。

『論争

問題』は,

Ann Breil, John A.Santoro,

James A.Wasowski

という3人の熟練

した社会

科教師に

よって開発された後期中等教育用の教材

である

。目標や教授手順と生徒に配布する資料が

含まれ

一冊の

カリキ

ュラムユ

ニッ

トと

して出版

されている。そのね

らいについては序章において

次のように述べ

られ

ている。

リカの

生徒た

ちは

多元的

な国

共同体の

一員

であ

。文

,価

値観

の違

いや

社会

に重要

国家

的論争

して

関心

を持た

ことが

できず

それ

受け入れ

させ

ことが

きな

けれ

,生徒

ちが

育か

ら得

られ

るもの

しく制

され

いる

にな

。生徒た

ちは

証拠

を吟

し,対

立す

る見

えた

上で

責任

ある決

,自

由に考

え選

を実行

こと

を学

けれ

らな

い10)

文化や価値観の違いから生

じる論争問題に関心

を持たせ

,認識

させることの重要性だけでなく,

それ

らを徹底的に吟味

,責任ある判断ができる

能力を育成することの必要性が説かれ

ている

『論争問題』は文化や価値観の

対立か

ら生

じる

社会的論争問題

を取

り上げ

,それ

についての唯一

の解決策を探求するのではなく

,問題に対する信

念を吟味

,対立

を踏ま

えた上で責任ある自分な

りの決断ができる

ことをね

らいと

したカリキュラ

であり

,本研究の問題意識に答

えるための分析

対象としてふ

さわ

しいと言

える

Ⅲ 

メリカ文化の危機の克服

一内容編成原理

1.全体構成一ア

メリカ文化の諸領域が直面して

いる危機的状況−

『論争問題』の全体構成は

,子どもが,現代の

アメリカ社会において広く抱かれ

ている様

々な信

を批判的に認識

できるよう

,アメリカ社会の文

化の諸領域が直面

している危機的状況か

ら組織

ている。

『論争問題』の全体計画は表川

した通

りで

ある

。表扣

は各パー

トを大単

元の表題と

して,

大単

元を構成

している各課

を小単元と

してその表

を示

している

。大単元の表題はそれぞれ「

アメ

リカ人の生活における家族の問題」

,匚

アメ

リカ人

の生活に対する宗教の影響」

,厂

テクノロジーの衝

撃」

,「

メリカ大の

生活に対するスポー

ツの衝

撃」

「アメリカ人の

生活における暴力」

,匚

私たち人民」

となっている。各大単元には5∼7の小単元が配

され

ている。

この全体構成

を分析

し整理

したものが表

2であ

。表2には,各大単元が対象と

している文化の

諸領域

,その文化の中核

を構成する信念

,直面

ている危機的状況とそれ

によって生起

した問題

−99−

(4)

表 1  『 ア メ リ カ の 社 会 問 題 』 の全 体 計 画

大 単 元 1: アメ リカ 人 の生 活 に お け る 家 族 の 問 題 小 単 元 1  困 難 と変 化 :家 族 の 問 題 の100 年 間 小 単 元 2 小 単 元 3 小 単 元 4 小 単 元 5 小 単 元 6 小 単 元 7 植 民 地 ア メ リ カ に お け る 家 庭 生 活 そ れ は 子 供 た ち に ど の よ う に 影 響 を あ た え る か ? 青 年 期: 「 私 は 自 分 の 子 ど もを コント ロ ールで きな い」 父 親 の資 格 :進 化 す る 概 念 アメ リカ の家 族 : 過 去, 現 在, 未 来 育 児 につ い て の ジェネラル・ミルズ・ レポート: 最 新 情 報 大 単 元 2 : アメ リ カ 人 の生 活 に対 する 宗 教 の 影 響 小 単 元 8  フ レ ンド 派 , ピ ル グ リ ム フ ァ ーザ ー ズ, 伝 道 師

小単元 9

小単元10

小単元11

小単元12

アメ リカ の 地名 に対 す る 宗 教 的 影 響 60 年 代 の 霊 歌 非 暴 力 運 動 の 宗 教 的 基 盤 信 教 の 自 由: 修 正 第 1 条 と 教 育 大 単 元 3 : テ ク ノ[] ジ ー の 衝 撃 小 単 元13  テ ク ノ ロ ジ ー と 人 間 の 精 神 : 芸 術 的 見方 小 単 元14  テ ク ノ ロIジ ー: や っ て く る も のに つ い て の予 言 小 単 元15  テ ク ノ ロ ジ ー: 爆 弾

小単元16

小単元17

テ ク ノロ ジ ー: 臓 器 移 植 テ レ ビ の 衝撃 大 単 元 4: アメ リカ 人 の生 活 に 対 す る スポ ーツ の衝 撃 小 単 元18  見 る ス ポ ー ツ の 人 気 小 単 元19  人 生 の 隠 喩 と し て の ス ポ ーツ の危 険 性 小 単 元20 い単 元21 卜 単 元22 ア メ リ カ の ス ポ ーツ に お け る 人 種 差 別 主 義 リト ル リ ー グ・ シ ンド ロ ー ム ア メ リ カ の ス ポ ーツ に お け る 暴 力 大 単元 旦 こ アメ_リ カ 人 の生 活 に お ける 暴 力 小 単 元23  銃 , 暴 力 と 修正 第 2 条一 犯 罪 の パ ート ナ ー 小 単 元24  暴 力 犯罪 の 犠 牲 者 小 単 元25  私 た ち の社 会 の 犯 罪 : あ ま り に 多 い 権 利 ? 小 単 元26  罰 : 目 に は 目を ? 小 単 元27 暴 力 が 答え か ? 大 単 元 6: 私 た ち 人 民 小 単 元28  ネイ テ ィブ アメ リ カ ン:忘 れら れた ア メ リカ人 を 見 る 小 単 元29  私 た ち の社 会 に お け る女 性 小 単 元30  ア フ リ カ ン ア メ リ カ ン: 奴 隷 か ら平 等 へ ?

小単元31

小単元32

小単元33

人 種 差 別主 義 200 年 以 上 の 差 別 ア メ リ カ の るつ ぼ 一 神 話 か 現 実 か ?

Ann Breil, John A .Santoro,

and James A.Wasowski,

Ame パcan Social Issues, The Center for Learning,

1997, pp.iii

− i

v,

よ り筆者作成o Part を大 単元とし, Lesson を小 単元 と表 記し た。

表 2

ア メ リ カ 文 化 の諸 領 域 に お ける 危 機− 『 ア メ リ カ の 社 会 問 題 』 全 体 構 造−

単 元 名

領 域

信 念

危 機 的 状 況 [ 問 題 ]

危 機 の 要 因

大 単 元 エ ニ

ア メ リ カ 人 の

生 活 に お け る

家 族 の 問 題

家 族

家 族 観

・ 家 族 や そ の 構 成 員 に 課 せ ら れて き た 伝 統 的 役 割

の衰 退 に 伴 う , 家 族 構 成 員 の世 代 間 の断 絶。

[ 家 庭 問 題] 社 会 の 急 激

な 変 化 と そ

れ に 対 す る

伝 統 的 信 念

の 不 一 致 に

よ っ て 引 き

起 こ さ れ る

問 題

社 会 の 変 化 に 伴 う

家 族 の 形 態 の 多 様

化 と 伝 統 的 な 家 族

観 と の 不 一 致 。

大 単 元 3 二

テ ク ノ ロ ジ ー

の衝 撃

科 学

技 術

科 学 観

・ 人 類 の生 存 の危機 を もた ら した 核兵 器や , 従来 は

救 え な か っ た命 を 救 っ たり で き る よ うに な っ た臓

器移 植 な ど の科 学 の 進歩 と, そ れ が もた らし た伝

統的 な科 学 観, 倫理 の動 揺。[平 和 問題 ・医 療 問題]

科 学 技 術 の 目 覚 し

い 進 歩 と 従 来 の 科

学 観 と の不 一 致 。

大 単 元 5:

ア メ リ カ 人 の

生 活 に お け る

暴 力

法 律

人 権

意 識

・ 銃 器 を 携 行 し 自衛 す る 権 利 の 保 護 や , デ ュ ー=

プ ロ セ ス と そ の厳 格 な 適 用 に 伴 う 犯 罪 者 の 摘 発

の困 難 と , 銃 によ る 残 虐 な 暴力 犯 罪 の増 加。

「犯 罪]

暴 力 犯 罪 の 増 加 と ,

建 国 当 初 の 人 権 規

定 に 基 づ く 司 法 シ

ス テ ム と の矛 盾。

大 単 元 2:

ア メ リ カ 人 の

生 活 に お け る

宗 教 の 影 響

宗 教

宗 教 観

・ 公 立 学 校 に お け る 教 育 の中 立 性 と 宗 教 教 育 の関

係 に関 す る 問 題 。

[宗 教 問 題 ・ 教 育 問題]

ア メ リ カ 社

会 の も つ 多

様 性 に 起 因

す る 問 題

公 立 学 校 に お い て

宗 教 教 育 が 許 容 さ

れ る 程 度 に つ い て

の 考 え の多 槍 吐。

大 単 元 4 二

ア メリ カ 人 の生

活に対するスポー

ツ の衝撃

大 衆

文 化

道 徳 観

・ ス ポ ー ツ に お け る娯 楽 性 の追 求 と 過 激 化 す る 暴

力 な ど の 問 題 。

[ 公序 良 俗 違 反]

見 る ス ポ ー ツ に お

い て 娯 楽 性 の 追 求

と 公 序 良 俗 に 対 す

る 考 え 方 の多 様 性 。

大 単元 6:

私 た ち 人 民

制 度

人 種 ・

ジェンタ L

に 対 する

意   識

・ 人 種 や ジェ ン ダ ー に 基 づ く差 別 の問 題 。

[ 社 会 的 差 別]

ア メ リ カ 社 会 に お

け る マ イ ノ リ テ ィ

集 団 の お り 方 に 関

す る 多 様 な 考 え 方 。

Ann Breil, John A .Santoro,

and James A.Wasowski,

American Social Issues,

The Center for Learning,

工997,

pp.iii一如, より筆者作成。

そ の危 機 の 要 因 を ま と め て い る。 文 化 の 危 機 的 状    要 因 と は , 一 つ は 社 会 の 急 激 な 変 化 と そ れ に対 す

況 と は , そ の 文 化 領 域 の 中 核 と な る 信 念 に対 立 や    る 伝 統 的 信 念 の 不 一 致 で あ り , も う 一 つ は, ア メ

矛 盾 が 生 じ, そ れ に起 因 し て 習 慣 や 制 度 に 障 害 が    リ カ 社 会 に 内 在 す る多 揄 哇で あ る。

生 じ, 円 滑 に 機 能 し な く な っ て い る 状 況 を 言 う 。     ま ず, 伝 統 的 信 念 の 不 一 致 を 要 因 と し て 生 じ る

そ の よ う な 状 況 を 生 じ さ せ る 危 機 の 要 因 を ,『 論    危 機 を 扱 っ た 単 元 に つ い て 具 体 的 に見 て い こ う。

争 問 題 』 で は大 き く 2 種 類 を 想 定 し て い る。 そ れ    大 単 元 1 で 取 り 上 げ る の は 家 族 の 領 域 で あ る。 こ

に よ って 大 単 元 は 大 単 元1, 3, 5 と2, 4, 6   

こ で は家 族 観 を 検 討 す る。 家 庭 問 題 が取 り 上 げ ら

の二 つ に 区 分 さ れ る。 表 2 に示 し た よ う に, そ の    れ , そ れ は, 例 え ば 家 族 や そ の 構 成 員 に 課 せ ら れ

(5)

てきた伝統的役割の衰退や

,構成

員の世代間の断

である

。これ

らは

,社会の変化に伴

う家族の形

態の

多様化と伝統的な家族観との不

一致によって

じるもの

である

。大単元3では

,科学技術領域

おける科学観が検討

される

。平和問題である核

兵器の脅威をは

じめ

とす

る科学の進歩に伴って生

じた人類の

生存の

危機や

,医療問題である臓器移

植など科学の進歩に

よる伝統的な倫理観の

動揺が

り上げられ

ている

。これ

らの

問題は科学技術の

目覚

しい進歩と従来の科学観との不

一致か

ら生ず

るもの

である

。人権意識を検討する大単元5は法

律領域

を扱い

,提示され

る問題は犯罪である。具

的には銃器

を携行

し自衛する権利の保護と銃に

よる暴力犯罪の増加や

,デ

ュー

=プロセス

とその

厳格な適用に伴

う犯罪者の摘発の

困難といった問

題が取

り上げられ

ている。

次にアメ

リカ社会の

多様肢

に起

因す

る問題を扱っ

た単元2,

4, 6を見ていくことにする

。大単元

2では宗教が扱われる

。宗教観に

ついて批判的に

討す

ることになるが

,公立学校における教育と

宗教の

関係という宗教

・教

育問題が取

り上げられ

。これ

らの

問題は公立学校における宗教教育の

許容範囲についての意見の

多榛肢

に起

して生

。大衆文化を取

り上げる大単元4は,人々の抱

いている娯楽観

を問題にす

。具体的にはスポー

ツにおける娯楽性と暴

力性の関係等が取

り上げら

,公序

良俗に反する

ような娯楽が問題

となる

この問題は

,見るスポーツにおいて娯楽性

を追求

ることと公序

良俗に関す

る考え方の

多榛吐に起

因する

。最後の大単元6は制度領域が割

り当てら

,それ

らに対する人々の意識が

問題となってい

。社会

的差別が問題

して扱われ

,それ

らはア

メリカ社会におけるマイノリティ集

団の

あり方に

関する考

えの

多後肢が原因となっている

以上の

ように

『論争

問題』の

全体構成はアメリ

カ文化の諸領域における危機

をと

りあげ

,それぞ

れの文化領域の核

となる信念を

,現代社会に生き

る生徒たちが批判的に検討するよう構成され

てい

。この

ような構成は

,現代社会で生活する中で

直面する様々な問題に

ついて判断する際に根拠

なる信念を幅広

く身に付けると共に

,日常生活の

中で生徒たちが

これ

まで身に付けてきた

それ

らの

信念を反省する機会

を提供するものである

.単元構成原理

一文

化の危機

的状

況の

克服過程

各大単元の構成は

,それぞれの文化領域に生じ

ている危機的状況を認識

,未来へ

向け解決への

望がもてるように

,問題の克服過程として組織

され

ている

。この

ような構成は

,生徒たちに文化

の危機的状況を自らの問題

として

受け止めさせる

ことで

,信念の対立を反映

している

自らの

内的葛

を自覚

させ

,内的成

長を促すもの

と考

えられ

る。

その過程は

,単元に

よって若干の違いは

あるもの

,冂 危機的状況の背景の理解

,H 

問題の

明確化

,Ⅲ 

解決への展

望」という段階

を経

る。

表3に各大単元についてその展開

を整理

してい

。大単元によって問題の克服の仕方が異なって

いるので大単元

,3を取

り上げて具体的に見て

いくことにする

大単元2は

,小単

元8か

ら12

を含み

,それ

ぞれ

の小単元の表題は

小単元8匚

レン

ド派

,ピルグ

リム

ファ

ーザーズ,伝道師」

,9匚

アメ

リカの地

名に対する宗教的影響」

,工o

匚60

年代の霊歌」

非暴力運動の宗教的基盤」

,12「

信教の

自由

:修

正第工

と教育」となっている。大単元2はアメ

リカ社会の

多偸歐

に起因す

る問題

を取

り上げるた

,その

多楡歐の

じた理

由,

多元的な信念が生

活に

どの

ように表れ

ているかという現状の把握

踏ま

えて問題を把握

,それに基

づいて信念の再

構成

をするような構成になっている

。背景の理解

段階では

,建国当初の各宗派の相違

点を信念の歴

史的

・構造的根拠と

して理解する。問題の明確化

の段階では

,まず地名やポ

ピュラー

ソングの

中に

宗教や思想の影響がどの

ように現れ

ているかを確

認することで

,我々の抱いている信念が

生活に及

ぼす影響

を理解する

。次に非暴力運動の基盤に各

宗教思想がなっていること

,それ

らの宗教思想の

内容

を把握

,それ

らの実生活に対する効用を推

測する

。解決の展望では,公教育と宗教活動の関

係の

あり方について

,これ

までの歴史的背景や現

実の生活に対する宗教の影響についての学習を踏

まえて

,自らの信念を再構成するよう促

され

る。

大単元3は匚

テクノロジ

と人間の精神

:芸術的

見方」

予言」

,厂

,匚

テクノロジー

テク

ロジー

:やって

:爆弾」

,厂

くるものについて

テクノ

ロジー

−101

(6)

表 3  文 化 の 危 機 的 状 況 の 克 服 一 単元 展 開−

展 開 各 大 単 元 の 学 習 内 容 と 主 な 事 例 大 単 元1, 3, 5 大 単 元 2, 4 大 単 元 6 I 危 機 的 状 況 の 背 景 の理 解 歴 史 的 変 遷 ・ 経 過 [ 工] ・ ア メ リ カ の歴 史 上 の 出 来 事 が 家 族 に及 ぼ し て き た 影 響(1) ・ 植 民 地 時 代 の 家 庭 のあ り 方(2) [3 ] ・ テ ク ノ ロ ジ ー の 発 達 と 人 々 の そ れ に対 す る 見 方 の 歴 史 的 変 遷(13) [5 ] ・ 憲 法 修 正 2条 に 関 す る 異 な っ た考 え 方(23) 心 的・ 構 造 的 根 拠 [ 2] ・ 建 国 当 初 の 各 宗 派 の相 違 点(8) [4 ] ・ 見 る ス ポ ー ツ の現 状(18) 歴 史 的 経 過 と 現 状 ・ ネ イ テ ィ ブ ア メ リカ ン のお か れ て き た立 場 と 現 状(28) ・ 女 性 の お か れ て き た立 場 と現 状 (29) ・ ア フ リ カ ンア メ リカ ンお か れ て き た立 場 と現 状(30) n 問 題 の 明 確化 信 念 の 確 認 [ 1] ・家 族 の現 状 と子 育 て に 関 す る問 題 (3) [3 ] ・ テ クノ ロ ジ ー の 発 達 に対 す る 考え 方 の 歴 史 的 変 遷(14) [5 ] ・ 犯 罪 の 犠 牲 者 の現 状(24) 信 念 の 生 活 に 対 す る 影 響 [2] ・ 地 名 の由 来 に 見 ら れ る 宗 教 の影 晉(9) ・ ポピ ュ ラ ー ソ ン グ に 見 ら れ る時 代 の考 え 方(10) [4] ・ 生 活 の中 に 比 喩 と し て 用 い ら れ る ス ポ ー ツ(19) 信 念 の 確 認 ・ 差 別 に対 す る 考 え 方 の 確 認(31) 問 題 の 把 握 [1] ・ 現 在 の子 育 て に関 す る問 題(4) ・ 父 親 の役 割 の変 化(5) [3] ・ テ ク ノロ ジ ー の 発 達( 核 兵 器 の 開 発) によ る新 た な問 題 状況(15) [5] ・ 被 疑 者 に 保 障 さ れ て い る権 利 と 犯 罪 の摘 発 の困 難 さ の問 題(25) 問 題 の 把 握 [ 2] ・ 非 暴 力 運 動 の 基 盤 とな っ た宗 教 思 想(11) [4] ・ ス ポ ー ツ に お け る 人 種 差 別 の影 響(20) ・ 子 ど も の ス ポ ーツ に対 す る過 度 な 期 待 と そ の影 響(21) 問 題 の 把 握 ・ 歴 史 的 な 差 別 事 例 の検 証(32) Ⅲ 解 決 へ の 展 望 信 念 の 比 較 ・ 評 価 [ 1 ] ・ こ れ まで の 家 族 のあ り 方 と 将 来 の 自 分 た ち の家 族 の あ り方(6) ・ 子 育 て に関 す る 価 値 観 の 比 較(7) [3 ] ・ 医 療 技 術 の 発 達 ( 臓 器 移 植 ) によ る論 争 の 発生(16) ・ テ ク ノ ロ ジ ー( テ レ ビ の 発 達 ) と 人 間 と の 関 係 の あ り 方(17) [5 ] ・ 犯 罪 に対 す る 罰 の意 味 に つ い て の 考 え 方 の対 立(26) ・ 権 利 を 獲 得 す る た め の 暴力 の 正 当 化 の問 題(27) 信 念 の 再 構 成 [ 2] ・ 公 教 育 と 宗 教 活 動 の関 係 の あ り 方(12) [4] ・ ス ポ ーツ に お け る娯 楽 性 と 暴力 性 の 程 度(22) 信 念 の 構 成 ・ ア メ リカ 社 会 に お け る マ イ ノ リ テ ィ の あ り 方 につ い て の提 言(3 3)

Ann Breil, John A.Santoro, and James A.Wasowski,

American Social Issues,

The Center for Learning,

1997, pp.iii

− i

v, より筆者 作成。[ ]内 の数 字は大 単元,

( )内 の数字は小 単元を表 わしてい る。

臓 器移 植」

, 匚テ レ ビの衝 撃」 とい う小 単元13 か

ら17 で 構 成さ れて い る。 大 単元 3は社 会 の変 化

と伝 統的 信念 の不一 致 によ って生 じる危 機的状 況

を取 り上 げてい る。 そ の ため, 歴史 的変 遷 と経 過

を まず把握 し, 伝統的 な信念 と社会 の変 化 に伴っ

て それ が実情 とど のよう に乖 離 し, 新 しくど のよ

うな信念 が抱 か れて いる かを探求 して, そ れらの

新旧 の 信念を比 較評 価し なが ら, 自分 の信念 を形

成 させ るよう な構成 とな ってい る。 危機 の要因 が

同 じで ある大単 元 1と 5も, そ れと ほぼ同 様の単

元 構成 とな って い る。 ま ず, テクノロ ジーの発達

と人 々 のそ れに対 する見方 の変 遷を理 解さ せる。

次 の段 階で はテ クノロ ジ ーに対 す る人 々 の信念を

さ ら に 明 確 化 し , そ し て 核 兵 器 の 開 発 を 事 例 と し

て , テ ク ノ ロ ジ ー の発 達 が ど の よ う な 問 題 状 況 を

生 み 出 し , 伝 統 的 な 科 学 観 と 現 代 社 会 に 科 学 が も

た ら し た 事 態 の ギ ャ ッ プ を 認 識 す る。 最 終 的 に は,

テ ク ノロ ジ ー の 発 達 に よ っ て 可 能 と な っ た 臓 器 移

植 や, 現 代 社 会 に 最 も 大 き な 影 響 を 与 え て い る メ

デ ィ ア と 言 って も過 言 で は な い テ レ ビ に つ い て 抱

か れて い る様 々 な 信 念 を 比 較 ・ 評 価 す る こ と で,

自 ら の 信 念 を 成 長 さ せ よ う と し て い る。

以 上 の よ う に 『 論 争 問 題 』 の各 大 単 元 は危 機 的

状 況 の 問 題 を 克 服 す る 過 程 と して 構 成 さ れて い る。

こ こで の 問 題 の 克 服 と は, 唯 一 の 解 答 を 示 す こ と

で は な く , 問 題 の背 景 や 現 状 , そ して 対 立 点 を 子

(7)

ど も に把 握 さ せ た 上 で , そ の 単 元 が 取 り 上 げ て い

る文 化 領 域 の 中 核 と な る 信 念 を 子 ど も が 確 認 , 反

省 し, 洗 練 さ せ て い く こ と で 各 自 に 解 決 へ の 展 望

を 持 た せ る と い う も ので あ る。 こ の よ う な構 成 は,

特 定 の 信 念 を 生 徒 た ち に 押 し 付 け よ う と す る も の

で は な く, 社 会 に 対 す る 見 方 や 考 え 方 を 自 ら 成 長

さ せ 得 る よ う 支 援 す る も の で あ り , 価 値 の 無 批 判

な 受 容 を 避 け る と と も に, 自 主 的 自 立 的 な 意 思 決

定 を 促 進 し よ う と す る も の で あ る 。

IV  文 化 の 中 核 と し て の 信 念 の 反 省 的 吟 味 一 授 業

構 成 原 理−

『 論 争 問 題 』 の ね ら い は , 生 徒 が 自 ら 自 分 の信

念 を 反 省 し , 再 構 成 し て い く と こ ろ に あ る。 授 業

構 成 原 理 につ い て は, そ の ね ら い を 比 較 的 明 瞭 に

反 映 し た 小 単 元 につ い て 検 討 し よ う 。 そ こで は,

生 徒 が 問 題 に 接 す る こ と に よ っ て 自 ら の 信 念 を 明

ら か に し, 問 題 に内 在 す る 意 見 の 対 立 を 内 面 化 す

る こ と で 葛 藤 し , 信 念 を 反 省 , 再 構 成 し て い く 過

程 と し て 授 業 が 構 成 さ れて い る。 そ の 過 程 を , 生

徒 の 主 な 学 習 活 動 の 展 開 を 中 心 に 整 理 し た も の が

表 4 で あ る 。 授 業 は,「 導 入 : 問 題 の概 要 把 握 → 展

開 1 : 自 ら の 信 念 に 基 づ く 判 断 → 展 開 2 : 信 念 の

明 確 化 ・ 相 対 化 → 展 開 3: 対 立 の 内 面 化 ・ 葛 藤 →

展 開 4: 信 念 の 反省 → 終 結 : 信 念 の再 構 成 → 発 展 :

再 構成 さ れ た 信 念 の吟 味」 と い う よ う に展 開 す る。

表 4 信念 の反省的吟 味一 授業 構成 原理−

過  程 生 徒 の 主な 学 習 活 動 導 入 : 問 題 の 概 要 理 解 資 料 な ど を 読 み, 学 習 テ ー マ と な る 問 題 の 概要 につ い て 理 解 す る。 展 開 1 : 自 ら の 信 念 に基 づ く 判 断 問 題 状 況 につ い て , 現 時 点 で の 自 分 の判 断 を 表 明 す る。 展 開 2 二信 念 の 明 確 化 ・ 相 対 化 各 自 の 判 断 につ い て 討 論 す る 中 で , 判 断 の 根拠 と な る 自 己 の 信 念 を 明 確 化 す る 。 展 開 3 : 対 立 の 内 面 化 ・ 葛 藤 展 開 2 よ り も, さ ら に 具 体 的 で 複 雑 な 状 況 に 自 己 の 信 念 を 適 用 し , 判 断 す る こ とを 通 し て , そ の問 題 に内 在 す る対 立 を 内面 化 し, 葛 藤 を 生 じ さ せ る。 展 開 4 : 信 念 の反 省 葛 藤 を 経 て , そ れ まで の 信 念 を 評 価 ・ 反 省 す る 。 終 結 : 信 念 の 再 構 成 展 開 3 で の 判 断 に つ い て の 他 者 と の 討 論 を 通 し て , 新 た に信 念 を 再 構 成 す る。 発 展 : 再 構 成 さ れ た 信 念 の 吟 味 発 展 的 な 学 習 活 動 に よ っ て, 再 構 成 さ れ た 信 念 を 再 度 吟 味 す る。

(筆者 作成)

大 単 元 3 匚テ ク ノ ロ ジ ー の 衝 撃 」 小 単 元16

匚テ ク ノ ロ ジ ー の 衝 撃 : 臓 器 移 植 」 を 取 り 上 げ て

そ の 過 程 を 具 体 的 に 検 討 し よ う 。 教 授 ・学 習 過 程

に つ い て は 紙 幅 の 都 合 上 表 の 形 で は 示 さ な い 。

導 入部 の 匚

問題 の概 要理解」 段階 で は, 臓器 移

植 について 映像 や文学 作品 などを用 いて その概要

が説 明さ れる。展 開 1の 厂自ら の信念 に基づ く判

断」 の段階 で は資 料が配 布さ れ,指示 さ れた作業

を各 自が行 な う。 そこ で は3種類 の資 料が示 さ れ

てい る。 一つ は 厂もし誰 か の角 膜を 移植 するこ と

によ って失 わ れた視力を 回復 する ことがで きる な

ら ば, そ の角 膜を受 け取 り ます」 等 の10 の意見

に対 して賛成, 反対 ,不 明 の意思を表 示す る もの

であ る。 もう一つ は,運 転免許 証 の裏 に記載 さ れ

てい る臓器提 供 の意思表示 カ ードを記 入さ せる も

のであ る。さ ら にもう一つ ア ンケ ート かお る。 そ

の問い と は, 例え ば 匚

あ なた は, 臓器 の中で 他 の

ものよ り も望 んで移 植を する という ものか おりま

すか ? もし, あ れば, 次 に挙げ た ものについ て,

順 位をつ けて くださ い。角 膜,血, 腎 臓, 皮 蔵

骨 髄 , 心 臓尹 とい う も ので あ る。 続 く 展開 2 の

匚信念 の明確化 」 段 階で は, 先 の判 断を グル ープ

また はク ラスで話し 合 わせる ことで,各 自 に自分

の判 断 の根拠 とな った信念を 明 確に自覚 させ, 他

者 と の意 見交換 の中 でそ れを 相対化 さ せる。 展 開

3の 匚

対立 の内面 化 ・葛 藤」 段階 で は, エピ ソ ー

ドを 読 んで,具 体的 な問題状 況 に関す る問い に答

え させ る。 例え ば次 のよう なエ ピソ ード が示 され

てい る12

事 例A

1968 年 に , ニ ッ ク は テ キ サ ス の バ ー で 撃 た れ た。 数 時

間 後 , 病 院 に 運 ば れ た が し ば ら く 脳 波 も反 射 も 見 ら れ

な か っ た 。 よ っ て , 血 液 に 酸 素 を 送 り 込 ん で い た 機 械

は 止 め ら れ , 彼 の 心 臓 は ス タ ッ ク ビ ッ チ に 移 植 さ れ ,

彼 は 数 日 間 生 きて い た。 移 植 に 関 し て た め ら い が あ っ

た こ と が 報 告 さ れ た 。 な ぜ な ら , ニ ッ ク を 撃 っ た 人 物

が 殺 人 罪 に 問 わ れ そ う に な っ た か ら で あ る 。 彼 の 体 全

体 が 法 的 な 証 拠 で あ り , 部 分 を 証 拠 と す べ き か と い う

こ と が 問 題 で あ っ た 。 

し か し な が ら, 医 療 チ ー ム は ,

郡 の 保 健 所 長 が 証 拠 を 「 隠 す 」 た め に彼 等 に 反 対 す る

こ と が な か っ た の で 移 植 を 進 め た 。 

し か し , こ の こ と

は 単 に 法 律 の 問 題 で は な い 。 殺 人 罪 の裁 判 は ニ ッ ク が

実 際 に 死 ん で い た か ど う か 次 第 で あ ろ う 。 な ぜ な ら ,

ニ ッ ク の心 臓 は ス タ ッ ク ビ ッ チ の 鼓 動 を 打 っ て 生 き 延

び て い た か ら 。 あ な た は こ の 事 件 の判 決 を 下 す 陪 審 員

に 喜 ん で な り ま す か ? こ の例 に お い て は , ニ ッ ク の 脳

が 損 傷 さ れ 元 に 戻 ら な か っ た 。 こ の こ と は 死 の 適 切 な

基 準 と な る か ? あ る い は, 心 臓 が 機 能 し て い る こ と が

考 慮 さ れる べ き な のか ?

― 103 −

(8)

この状況に

して

自分が被告

人の

弁護

士であっ

して

どの

ように弁護するか

ということが

問われ

対立点は

心臓

死をも

って死

とするか

,脳死

として

受けとめ

るか

とい

うことで

ある

この

な対立

を含む具体

的な状況につ

いて考

える

ことで

その信念

の対

を内

面化

,生徒は

葛藤状

態に陥

4の匚

信念の

反省

」段階では

,新た

な意

思決定

を行

,終結部ではグルー

プで話

し合

うことによっ

て信

を再構成す

。ここでは

さらに

,発展

的に社

的には

どの

ような制度

が基準

して設

けられ

るべ

きか

という

とを追

させて

いる

この

ように

『論争問題』

では

,具体的な問題に

含まれ

る対立

を内面化することを通

して

,文化の

中核

となる信念

を反省的に吟味するような授業が

展開

され

ている

。反省の過程に

おいては

自らの

意見

を他者に表明する

ことや他者の意見と比較す

る学習活動が

,生徒が

自分の信念

を相

対化,反省,

再構成するきっかけを作

り出す

よう取

り入れ

られ

ている

。生徒が討論

を通

じて自分が抱いていた信

念から自己

を解放

し内面的に成長することで

,よ

り洗練

され

た信念に基

づいた

自主的

自立的に判

断が

きるよ

うになる

ことを

目指

して

いる

と言

えよう

V 

おわ

りに

一信念の再構

を促す論争

問題学

『論争問題』は社会問題の要因を文化の直

面し

いる危機ととらえ

,その対立や矛盾

を認識

・克

服す

ることが個人の内面の成長を促

,信念の変

・成

長を促すという原理に基

づいて構成され

いる

。論争問題の学習

を意思決

定力育成のための

手段

として捉

,学習方法

を強調するのではな

く,

認識

内容

を重視

,論争問題の

対立点を内面化す

ることで生徒

自身の内的成長を促進

しようと

して

いる

。方法

面のみが強調

された論争問題学習では

,信念の再構成という独

自の

目標のもとで,

内容構成原理

と授

業構成原理が

一体

となった論争

問題学習が成立する

ことを提

示している

。また,

社会的論争問題の複

雑な背景に迫る

一方で,唯一

の解決

を押

し付けるの

ではなく生徒の

自主的

自立

的な判断を保障

しようとするカリキュラム

として

も評価

され得る。

しか

しながら

,一方では,各大単元においてで

きる限

り多様

な問題を取

り上げようとす

る傾

向が

認め

られ

,そのため

り上げる論争問題の対立点

一貫していない単元がある

(例えば大単元4)

ことや,多様な問題を取り上げ過ぎていることか

一つの問題に対する事実探求が広く浅いものと

なってしまっているといった限界もある

。しか

し,

そのような限界はあるものの

,合意が容易でない

現代の論争問題について有効に対処し得る市民を

育成しようとしている注目すべきカリキュラムと

評価できるだろう。

[註]

1)森分孝治厂

論争問題

」大森

・佐

・次山

・藤岡

谷川編

『新訂 

社会科教育指導用語辞典』教育出版

1986

年,

192

頁参照

2)この

点については森分孝治氏のいわゆる新学力観

に対する批判を参考に

した

(森分孝治

「社会科にお

ける思考力育成の基本原則

向の

克服のためにー」

『社会科研究』第47

一形式主義

・活動主義的

号,

1997

年。

3 )

Ronald W.Evans,

Fred M.Newmann,

and David

Warren Sa

χe

, "Defining Issues-Centered Education,"

Ronald W.Evans and David Warren 8axe(ed.),

Han

book

on

Teaching

Social Issues NCSS

Bulletin

93,

National Council for the Social Studies, 1996,

p.2.

4)森分孝治

「アメリカにおける社会科教育改革の動

向」

『社会科研究』第16

号,

1968

年,

63-66

5)代表的な論文としては次の

ようなものがある

。片

上宗二

「メ

トカ

フの社会認識教育論」内海巌編

『社会

認識教

育の

理論

と実践

一社会

科教

育原理』

葵書房

1971

年,

254-272

,溝

上泰

「オ

リバー

の社会

認識教育

論」同上.

272-288

,小原

友行

「社会科

学習原理と

ての

探求

B.

G.

マシャラスの

場合

一」

「社会科研

究」第

24号,

1975

年,

73-82

,児玉修

「社会的

判断力育成の

教材構成

D.

W.

リバー

の公的問題についてー」

『社

会科研究』第25

号,

1976

年,

93-102

,河

田敦

「合

的意思決定能

力育成の

社会科内容構成一J.

P.

ェー

ーの

公的論争問題学習

を手がか

りと

してー

『社会

究』

第30

号,

1982

年,

84-94

,溝

口和宏

「歴

史教

における開かれ

た態度形成

一D.W.

リバーの

「公的

争問題シ

リー

ズ」の場合

一」

『社会科研

究』

第42

1994

年,

41-50

6)森分

)片上前掲

1論文,

論文,

192

268-269

頁参

頁。

8) M.P.Hunt

& L.M.Metcalf,

Teaching

High

School

Social

Studies Second

Edition,

Harper

& Row,

1968,

p.26.

9 )

ibid.,

p.57.

10)

n Breil, John A.

Santoro,

and James

A.

Wasowski,

American

Social Issues, The Center for

Learning*,

1997,

pp.v.

11)

ibid.,

p.112.

12)

ibid.,

p.113.

表 1  『 ア メ リ カ の 社 会 問 題 』 の全 体 計 画 大 単 元 1: アメ リカ 人 の生 活 に お け る 家 族 の 問 題 小 単 元 1  困 難 と変 化 :家 族 の 問 題 の100 年 間 小 単 元 2 小 単 元 3 小 単 元 4 小 単 元 5 小 単 元 6 小 単 元 7 植 民 地 ア メ リ カ に お け る 家 庭 生 活 そ れ は 子 供 た ち に ど の よ う に 影 響 を あ た え る か ? 青 年 期: 「 私 は 自 分 の 子
表 3  文 化 の 危 機 的 状 況 の 克 服 一 単元 展 開− 展 開 各 大 単 元 の 学 習 内 容 と 主 な 事 例 大 単 元1,  3,  5 大 単 元 2, 4 大 単 元 6 I 危 機 的 状 況 の 背 景 の理 解 歴 史 的変 遷 ・経 過 [ 工] ・ ア メ リ カ の歴 史 上 の 出 来 事 が 家 族に及 ぼ し て き た 影 響(1)・ 植 民 地 時 代 の 家 庭 のあ り 方(2)[3 ] ・ テ ク ノ ロ ジ ー の 発 達 と 人 々 の そ

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水問題について議論した最初の大きな国際会議であり、その後も、これまで様々な会議が開 催されてきた(参考7-2-1)。 2000