Unit 7 平成 22 年度 本試験 MCQ 1.湿疹の病態について述べた次の文章のうち、誤っているものを一つ選べ。(あ:104) 7 章 湿疹は皮膚炎と同義であり、皮膚科の日常診療の上で最も頻繁に遭遇する疾患である。臨床的には搔痒や発赤、 落屑、漿液性丘疹を呈する。病理組織学的には角化細胞間の浮腫(海綿状態)が特徴的である。原因としては刺 激物質ないしアレルゲンなどの外的因子によるものとアトピー素因などの内的因子によるものとに分けられる が、両者の要素が含まれる場合も多く、またⅣ型アレルギーなどの免疫反応が加わって特徴的な病像を形成する ことがある。治療はステロイド外用。 a.( )臨床的にはそう痒、発赤、落屑、漿液性丘疹を呈する。 b.(×)病理組織学的には真皮膠原線維間の浮腫を特徴とする。 誤り。角化細胞間の浮腫(海綿状態)が特徴的である。 c.( )慢性期には過角化、錯角化、表皮の不規則な肥厚や表皮突起の延長などがみられる。 正しい。慢性湿疹は臨床的に苔癬化を伴い、発症してから1 週間以上経過している場合が多い。皮膚肥厚、不全 角化が目立ち、炎症細胞の表皮内浸潤は少ない。 d.( )湿疹発症の外的因子としては、薬剤、花粉、ハウスダスト、細菌などがある。 e.( )湿疹発症の内的因子としては、皮脂腺の状態、発汗異常、アトピー素因などがある。 2.アトピー性皮膚炎について述べた次の文章のうち、誤っているものを一つ選べ。 あ:109 7 章 先天的にフィラグリン遺伝子変異などにより皮膚バリア機能が低下し、IgEを産生しやすい素因を持った状態を 基礎として後天的に様々な刺激因子が作用して慢性の湿疹・皮膚炎病変を形成したものである。アトピー素因(① 家族歴、既往歴 ②IgE 抗体を産生しやすい素因)に基づいて発症する。 特徴として搔痒、左右対称性など特徴的分布を示す湿疹病変、慢性・反復性の経過などがある。治療はステロイ ドおよび免疫抑制薬の外用、抗ヒスタミン薬内服や保湿剤の塗布など。 a.( )アトピー素因とはアレルギー性の喘息および鼻炎、結膜炎、皮膚炎のことを指す。 ただしい。これらの疾患の既往歴・家族歴が重要である。 b.( )診断基準に記載されている好発部位は、前額、眼囲、口囲、耳介周囲、頚部、四肢関節部、体幹である。 正しい。 c.( )白色皮膚描記症が陽性となる。 正しい。皮膚描記症(法)とは尖端の鈍なもので皮膚をこする試験である。こすった部位が赤色に隆起する場合 を紅色皮膚描記症といい蕁麻疹の検査所見である。また擦過部位が蒼白になると白色皮膚描記症といい、アトピ ー性皮膚炎などで見られる所見である。検査として感度は高いが特異度は低い。 d.( )IgE や TARC が高値となる。 正しい。IgE は高値となりやすく(アトピー患者で正常なこともある)とくにダニやハウスダスト特異的 IgE-RAST が陽性となりやすい。TARC は病性を鋭敏に反映するとされる。 e.(×)重要な合併症として Kaposi 水痘様発疹症や緑内障、結膜炎がある。 誤り。緑内障ではなく白内障である。
3.蕁麻疹について述べた次の文章のうち、誤っているものを一つ選べ。 あ:120 8 章 搔痒を主体とする一過性、限局性の紅斑や膨疹である、原因不明のことも多い。症状が6 週間未満で終息するも のを急性蕁麻疹、それ以上のものを慢性蕁麻疹という。血管透過性が亢進することにより真皮上層に浮腫を形成 することが膨疹の主体である。治療には抗ヒスタミン薬などを投与する。 a.( )病理組織学的には、真皮上層の浮腫が本態である。 正しい。血管透過性亢進による真皮上層の浮腫によって膨疹が発生する。 b.( )肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、これが血管透過性を亢進させる。 正しい。Ⅰ型アレルギーとして抗原特異的、ないし自己免疫性のIgE 抗体が関与する例もある。 c.(×)コリン性蕁麻疹は寒冷刺激が誘発因子である。(あ:123) 誤り。コリン正蕁麻疹は、運動や入浴、緊張などで体温が上昇し、発汗を起こすような状態に至った際に膨疹が 発生する。 d.( )接触アレルゲンによる蕁麻疹が存在する。 正しい。接触蕁麻疹と言い、皮膚あるいは粘膜に物質が接触した数分~数十分後に蕁麻疹を生じる。ラテックス アレルギーなどが関与するアレルギー性接触蕁麻疹と、昆虫アレルギー(アレルギーと書いてあるが、発生機序 として非アレルギー性のものがある)などによる非アレルギー性接触蕁麻疹がある。 e.( )C1NH 欠損による遺伝性神経血管浮腫がある。 正しい。これはC1-INH の活性の低下によるブラジキニンの増加による血管透過性亢進が原因で、真皮下層~皮 下脂肪組織で浮腫が生じる蕁麻疹である。搔痒は通常ない。 4.環状紅斑の背景因子として適当でないものを一つ選べ。(1/30_2 井上:4) あ:135 9 章 小紅斑として初発し、遠心性に拡大する一方で中心部が消褪し、その結果、環状の紅斑を形成する。このような 皮疹の出現が主体の疾患の総称である。感染症や内臓悪性腫瘍、膠原病、薬剤などを背景として発症することが ある。 a.( )シェーグレン症候群 b.( )胃癌 c.(×)ヒトパルボウイルス B19 感染症 d.( )ライム病 e.( )グルカゴノーマ ヒトパルボウイルスB19 感染症は伝染性紅斑(いわゆるりんご病)である。 (あ:479 23 章)
5.次の文章のうち正しいものを一つ選べ。 あ:152~ 11 章 a.( )アナフィラクトイド紫斑病は I 型アレルギーで生じる。 あ:154 誤り。アナフィラクトイド紫斑(Henoch-Schonlein 紫斑)はIgA 免疫複合体が真皮状層の血管壁に沈着して発 症する、一種のⅢ型アレルギーである。 b.( )Churg-Strauss 症候群は C-ANCA が陽性となる。 あ:159 誤り。P-ANCAが陽性となる。C-ANCA が陽性となるのはベーチェット病など。 c.( )Wegener 肉芽腫症は間質性肺炎や喘息を合併する。あ:160 誤り。間質性肺炎や喘息などと合併するのはたぶんChurg-Strauss 症候群。 d.(○)結節性多発動脈炎により難治性皮膚潰瘍を来すことがある。 あ:157 正しい。表在性動脈の走行に一致して皮膚結節や紫斑、進行すれば潰瘍をきたす。慢性に経過し、再発と寛解を 繰り返す。 e.( )Behcet 病治療の第一選択薬は副腎皮質ステロイドである。 あ:162 誤り。コルヒチンや免疫抑制薬などである。しかし皮膚病変に対してはステロイドの外用なども行う。 6 次の文章のうち誤っているものを一つ選べ。 あ:169~ 11 章 a.(×)特発性血小板減少性紫斑病は PT、APTT が延長している。(み 5:160) 誤り。ITP は免疫学的機序(Ⅱ型アレルギーの関与)により血小板の破壊亢進が起きる疾患である。凝固系は正 常な為PT、APTT は正常である。 b.( )多発性骨髄腫により紫斑を来すことがある。 正しい。多発性骨髄腫では単クローン性に免疫グロブリンが増殖するためクリオグロブリン血症をきたすことが ある(IgM や IgG など)。クリオグロブリン血症は続発性血小板減少性紫斑病の一つである。 c.( )閉塞性動脈硬化症により生じた皮膚潰瘍は激しい疼痛を伴う。(み 2:266) 正しい。閉塞性動脈硬化症は四肢の主幹動脈などに粥状硬化を生じ、慢性的に動脈硬化性の狭窄や閉塞をきたす 疾患である。下肢動脈の虚血による各種症状が出現し、日本ではFontaine 分類が用いられる。 ①Fontaine1 度:四肢末端の一過性の冷感、しびれ、チアノーゼや皮膚蒼白、Raynaud 現象も見られる。 ②Fontaine2 度:間欠性跛行 ③Fontaine3 度:安静時疼痛。足趾に激痛を伴う潰瘍を形成しやすくなる。 ④Fontaine4 度:潰瘍、壊死、下肢切断を余儀なくされることもある。
d.( )網状皮斑には大理石様皮斑と分枝状皮斑があるが、大理石状皮斑は生断的である。 生断的ってどういう意味なんだろ。真皮および皮下脂肪組織境界部において静脈網の緊張低下と動脈網の緊張亢 進状態が生じることで生じる赤紫色~暗赤色の網状斑を認める状態を総称してリベドという。大きく以下の3 種 に分けられる。 ①大理石様皮膚 :基礎疾患の無い小児や若年女性の下腿に、淡紅色で環の閉じた網目状の紅斑として見られる。一過性で自覚症 状なく出現し、寒冷時に増強し温めることによって消失する。交感神経の関与が考えられている。 ②分枝状皮斑 :四肢に樹枝状で環の閉じていない紫紅色持続性紅斑として出現することが多い。血管腔の閉塞や血流障害、血 管壁の障害などをきたす様々な原因が考えられる ③先天性血管拡張性大理石様皮斑 e.( )川崎病では手足に硬性浮腫を生じる。 正しい。α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ遺伝子の変異による酵素欠損で、リソソーム蓄積症の一種である。 常染色体劣性遺伝形式をとる。Fabry 病に類似した皮膚症状で、全身、特に腰臀部に小さな被角血管腫の多発を 認める。 7.( )薬疹・薬物障害に関する次の文彦のうち、誤っているものを一つ選べ。 あ:141~ 10 章 a.( )ペニシリンショックは IgE を介して生じるI型アレルギーである。 正しい。薬疹は発生機序によってアレルギー性のものと非アレルギー性のものがある。ペニシリンはI 型アレル ギーによって蕁麻疹型薬疹を起こす。 b.( )NSAIDs により固定薬疹を来すことがある。 正しい。固定薬疹とは同一薬剤摂取のたびに同一部位に皮疹を繰り返す、特殊な薬疹である。アセトアミノフェ ン、メフェナム酸などのNSAIDsやテトラサイクリン、食品などによる。近年は総合感冒薬に含まれる催眠鎮静 薬による報告が多い。真皮状層に存在するCD8+T 細胞が薬剤により活性化されて生じるとされる。 c.( )固定薬疹を繰り返すと中毒性表皮壊死症に移行することがある。 正しい。中毒性表皮壊死症(TEN)はおもに薬剤摂取により、発熱を伴って全身に紅斑や水疱を形成し、著明な 壊死や剥離を生じる重篤な疾患である。
d.(×)薬剤過敏性症候群には HCV が関与していると言われている。 誤り。薬剤過敏症症候群は、薬剤に対するアレルギー反応と、ヒトヘルペスウイルス6 型(HHV-6)など体内で 潜伏感染していたウイルスの再活性化が複雑に関与して生じると考えられている。カルバマゼピンなど特定の薬 剤を内服した2~6 週間後に発熱と急速に広がる紅斑が生じ、肝機能障害や好酸球増多、末梢血異型リンパ球な どを見る重傷薬疹の一型である。 e.( )梅毒治療開始時に Jarisch-Herxheimer 反応が生じることがある。 あ:532 正しい。早期梅毒に抗菌薬(ペニシリン系)を投与するとトレポネーマが急速に大量に死滅するため中毒反応が 生じ、投薬後数時間のうちに40℃前後の発熱と皮疹の増悪を見る(Jarisch-Herxheimer 反応)が通常 1~2 日 で自然軽快する。 8.正しいものを選べ あ:232~ 14 章 a.( )尋常性天疱瘡では Nikolsky 現象を認めることはない 誤り。尋常性天疱瘡では水疱が発生し、水疱を破れないようにして圧迫すると周囲の健常皮膚にも拡大し、びら んを形成する(Nikolsky 現象)。 b.( )尋常性天疱瘡の治療にステロイド全身投与が用いられることはない 誤り。治療はステロイド全身投与が第一選択である(プレドニゾロン 1mg/kg/日)。そのほか免疫抑制薬や、難 治例の場合では免疫グロブリン大量静注療法や血漿交換療法を併用する。 c.(○)落葉状天疱瘡では粘膜侵襲はみられない 正しい。落葉状天疱瘡は表皮浅層での棘融解、水疱形成が起き、粘膜病変は見られない。 d.( )水疱性類天疱瘡の水疱は表皮内水疱である 誤り。水疱性類天疱瘡は表皮下水疱を特徴とし、好酸球浸潤が強い。 e.( )水疱性類天疱瘡の治療にテトラサイクリン系抗生物質が用いられることはない 誤り。治療はステロイド内服が主で、シクロホスファミドなどの免疫抑制薬、DDS、テトラサイクリンとニコチ ン酸アミドの併用療法も有効である。 9.掌蹠膿疱症について誤っているものを選べ(1/28_3 成澤:7) あ:247~ 14 章 a.( )掌蹠膿疱症の膿疱は無菌性膿疱である 正しい。掌蹠膿疱症は手掌足底に対称性の無菌性膿疱を形成し、慢性に経過する。中年に多い。 b.( )扁桃炎やう歯などの病巣感染、歯科金属アレルギーが原因となる症例もある 正しい。原因は不明であるが、1 日 20 本以上の長期喫煙者に多い。病巣感染(扁桃炎、齲歯など)が見られる 例では治療により本症の治療警戒を認める場合があり、細菌アレルギーの関与が示唆されている。歯科金属アレ ルギーを誘因とする症例もある。膿疱性乾癬の限局型という説もある。 c.(○)胸肋鎖骨間骨化症を合併することはない 誤り。胸肋鎖骨間骨化症を合併して胸痛をきたす場合がある。 d.( )爪の点状陥凹が高頻度にみられる 正しい。症状は手掌の母子球部や小指球部、足底の土踏まず部に小水疱が多発し、膿疱化して周囲は紅斑となり、 融合して局面を形成する。時に搔痒があり、爪の点状陥凹や肥厚が高頻度に見られる。
e.( )喫煙者は禁煙も治療法の選択肢となる 正しい。長期喫煙者では禁煙が有効である。背景となる病巣感染を治療あるいは予防する。皮疹に対してはステ ロイド外用薬や活性型ビタミンD3 軟膏が第一選択である。 10.正しいものを選べ あ:265~ 15 章 a.( )尋常性乾癬では皮疹のない部分に刺激で同様の皮疹が出現する Auspitz 現象を認める 誤り、説明が間違っている。尋常性乾癬の特徴的所見としてAuspitz 現象とKoebner 現象がある。 ・Auspitz 現象(アウスピッツ現象):発疹のある部分を水平に削ると、点状の出血が出現する現象。 ・Koebner 現象(ケブネル現象):正常な皮膚に物理的刺激を与えると、その部分に発疹が出現する現象。 b.(○)乾癬性関節炎では通常リウマトイド因子は陰性である(1/30_3 井上:4) 正しい。リウマチ性関節炎と合併する場合もあるが、通常リウマトイド因子は陰性である。 c.( )膿疱性乾癬の汎発型では著しく全身状態が悪化することはない 誤り。汎発型と限局型があり、汎発型では発熱や全身倦怠感、悪寒戦慄とともに全身に紅斑を生じその上に無菌 性膿疱が多発し、更に融合して膿海を形成する。膿疱は容易に破れてびらんを形成する。浸出液により低蛋白血 症をきたし、全身状態が悪化することがある。 d.( )扁平苔癬ではオリーブ油滴下で白色線条(Wickham 線条)が認められることはない 誤り。扁平苔癬ではケブネル現象が陽性で、また白色線条が見られる。 e.( )ジベルばら色粃糠疹では全例に初発疹であるヘラルドパッチが認められる 誤り。50〜90%でみられる(あ:277) 11.誤っているものを選べ あ:354~ 20 章 a.( )太田母斑は悪性化することはないが自然消退もない 正しい。太田母斑は真皮メラノサイト系母斑の一つで、悪性化は認めないが自然消退もないため、治したいなら レーザー療法をする必要がある。 b.( )スピッツ母斑は病理組織学的に悪性黒色腫に類似する 正しい。青少年に好発する母斑細胞母斑の一種である。臨床的、病理組織学的に悪性黒色腫に類似している。悪 性化はしない。 c.( )脂腺母斑から加齢とともに基底細胞癌などの悪性腫瘍が生じる場合がある(あ:364) 正しい。脂腺母斑は表皮、付属器、結合組織など、種々の成分由来の細胞が異常増殖して生じる。加齢とともに 毛芽腫、基底細胞癌などの腫瘍を生じる場合があるため、切除を考慮する。 d.( )神経線維腫症1型は生下時から多発する色素斑は主徴のひとつである 正しい、いわゆるレックリングハウゼン病である。症状として生下時から多発する色素斑(カフェオレ斑)、小 児期以降に出現する弾性軟の腫瘤(神経線維腫)、貧血母斑などがある。そのほか神経膠腫などが時にみられ、 けいれん発作や精神遅滞などを生じうる。骨格異常も本症に特徴的である。 e.(×)結節性硬化症は顔面の血管線維腫、知能障害、聴力障害を 3 主徴とする×→痙攣発作 誤り。3 主徴は顔面の多発性血管線維腫、精神遅滞、てんかんの 3 つである。原因遺伝子は TSC1 または TSC2 であり、常染色体優性遺伝である。
12.悪性黒色腫について誤っているものを選べ あ:457~ 22 章 a.( )悪性黒色腫を疑わせる臨床像として ABCDE の頭文字で表される5つの特徴のうち、“B”は"境界不鮮明" である 正しい。 A:Asymmetry 不規則形 B:Borderline irregularity 境界不鮮明 C:Color variegation 色調多彩 D:Diameter enlargement 拡大傾向 E:Elevation of surface 表面隆起 b.( )悪性黒色腫はメラノサイト(色素細胞)の悪性腫瘍である 正しい。 c.( )悪性黒色腫の非侵襲的な診断にはダーモスコピーが有用である 正しい。その他部分生検がある。 d.(×)悪性黒色腫の臨床像は全例黒色である 誤り。通常、メラノサイトは悪性化してもメラニン産生能を有するので、多くは黒褐色病変となるが、まれにメ ラニン産生に乏しいものもある(無色素性黒色腫)。 e.( )悪性黒色腫に対する化学療法の奏効率は 30%以下である 正しい。治療は早期発見、早期外科切除が大原則であり、他の治療法はあまり効果がない。遠隔転移を伴うStage Ⅳでは手術適応が少なく、ダカルバジンを中心とした化学療法や放射線療法、免疫療法を行うが、化学療法の奏 効率は30%以下で有効な治療法に乏しい。 13.尋常性白斑について正しいものを選べ(あ:286) 16 章 俗にいう”白なまず”である。後天的にメラノサイトが減少ないし消失するため、脱色素斑(白斑)を形成する。 メラノサイトやメラニンに対する自己免疫などが原因と考えられているが不明。治療はステロイド外用やPUVA などである。 a.( )先天的にメラノサイトが減少ないし消失している 誤り。尋常性白斑は後天的なメラノサイト減少である。先天的なものは眼皮膚白皮症(先天性白皮症)という。 b.( )発症する原因として、自己免疫的なメカニズムが明らかにされている 誤り。自己免疫が原因として考えられてはいるが、明らかではない。 c.( )男性が女性より発症率が高い 誤り。発症に男女差はなく、20 歳前後の若年者に多い。 d.( )皮疹は境界不明瞭な不完全脱色素斑である×→明瞭 誤り。皮疹は境界明瞭な完全脱色素斑で、多くはその辺縁で色素が軽度増強している。 e.(○)治療はステロイド外用や光線療法である
正しい。PUVA 療法、ステロイド外用のほか narrow band UVB 療法や活性型ビタミン D3 外用、タクロリムス 外用が有効である。
14.次のうち、正しいものを一つ選べ。 あ:488~ 24 章 a.( )皮膚細菌感染症とは、表皮や粘膜の常在菌によって生じるものを指す。 誤り。常在菌あるいは通過菌が毛包や汗腺など皮膚バリア機能の低下している部位や、創部などから侵入して生 じる。 b.( )伝染性膿痂疹には、主にA群β溶血性連鎖球菌による水痘性膿痂疹と、黄色ブドウ球菌による痂皮性膿 痂疹に分類される。 誤り。水疱性膿痂疹は黄色ブドウ球菌で起きやすく、痂皮性膿痂疹はA 群β溶血性連鎖球菌によって起きやすい。 c.( )伝染性膿痂疹は皮膚に限局した感染症であり、発熱や腎炎などの全身症状を伴うことはない。 誤り。血液に菌が入れば敗血症となり、重篤な全身症状を伴う。 d.( )伝染性膿痂疹の治療は抗生物質の外用療法が中心である。 誤り。治療は主にセフェム系抗菌薬の内服である。 e.(○)伝染性膿痂疹のうち、Kaposi 水痘様発疹症との鑑別が難しいのは痂皮性膿痂疹である。(2/5_2 三砂:1) 正しい。痂皮性膿痂疹は、特にアトピー性皮膚炎患児ではKaposi 水痘様発疹症との鑑別が難しい。 15.次のうち、正しいものを一つ選べ。 あ:488~ 24 章 a.( )浅在性の毛包炎が思春期に多発する場合、尋常性毛唐と呼ぶ。 誤り。尋常性毛瘡は深在性病変である。思春期に起きる浅在性の毛包炎とは、つまりニキビのことだろう。 b.( )毛包炎が進行し、一つの毛包に発生したものが癰(よう)、複数の毛包に広がったものが癤(せつ)と いう。×→逆 誤り。毛包炎が進行して一つの毛包に発生したものが癤、複数の毛包に広がったものが癰である。 c.(○)癤(せつ)腫症の場合、糖尿病や悪性腫瘍が背景に存在することがある。 正しい。癤が長期間にわたって反復して発生するか多発性に認めるものを癤腫症といい、糖尿病や内臓悪性腫瘍、 AIDS などを背景に生じることがある。 d.( )丹毒は主にA群β溶血性連鎖球菌による真皮の感染症で、蜂窩織炎より深在性の病変である。 誤り。丹毒(真皮)は蜂窩織炎(真皮~皮下組織)より浅い。 e.( )丹毒ではニューキノロン系抗生物質投与が第一選択である。 誤り。丹毒の主な原因最近はβ溶連菌である。なので第一選択はペニシリン系や第一世代セフェムとなる。 16. ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 ssss について述べた次の文章のうち、誤っているものを一つ選べ。 (2/5_1 三砂:4) あ:496~ 24 章 ssss は黄色ブドウ球菌の剥脱毒素が全身に回ってしまった場合に生じる症候群である。伝染性膿痂疹から移行す る場合がある。剥脱毒素は表皮のデスモソームのデスモグレイン1 を切断するため、水疱を生じる。全身にこの 毒が回ることにより、まず発熱とともに口囲や眼囲の発赤から始まり、有痛性の表皮剥離、びらん、水疱を形成 する。Nikolsky 現象陽性で、治療は抗菌薬の投与と全身管理である。
a.(×)ssss は streptococcus scalded skin syndrome の略である。×→Staphylococcal 誤り。ブドウ球菌が原因なのでStreptococcus(レンサ球菌)でなく Staphylococcal である。 b.( )特有の顔貌とは口囲のしわ裂、眼脂、痂皮を形成することである。
正しい。口囲の放射状亀裂、眼脂、痂皮を形成し独特の顔貌を呈する。
c.( )表皮剥脱性毒素によりデスモグレイン 1 を切断し、表皮上層で棘融解と浅い水疱を生じる。 正しい。
d.( )Nikolsky 現象が陽性である。 正しい。全身に剥脱毒素が回っているため健常に見える部位でも摩擦すると表皮は容易に剥離する。 e.( )水疱内容に菌は検出されない。 誤り。検出される。 17.真菌症に関する文章のうち、正しいものを一つ選べ。あ:505~ 25 章 a.( )真菌の寄生部位が表皮~真皮に限局する浅在性真菌症と、脂肪織以下を寄生の主座とする深在性真菌症 に分類される。(2/5_3 三砂:3) 誤り。浅在性は表皮や毛包に限局しており、真皮以下に真菌が寄生したものは深在性である。 b.( )足白癬には、趾間びらん型、小水疱・鱗屑型、乾癬型に分類される。 誤り。水虫の分類は趾間型・小水疱型・角質増殖型である。 c.( )爪白癬は足白癬から続発性に起こる場合が多く、第 4 趾爪に多い。(2/5_3 三砂:4) 誤り。爪白癬は第1 趾爪に多い。 d.( )頭部白癬の治療は抗真菌薬外用が第一選択である。 誤り。白癬の基本的な治療は抗真菌薬の外用療法であるが、有毛部(頭髪、髭)の病変、難治例や深在性の病変 (Celsus 禿瘡、角質増殖型の足および手白癬、爪白癬、白癬菌性肉芽腫)に対しては内服療法を行う。 e.(○)ケルスス禿瘡はステロイド軟膏を誤用することが原因となる。 正しい。ケルスス禿瘡はステロイド外用薬の誤用などを基礎として、頭部白癬など毛包部の白癬に真皮の炎症が 加わったものである。 18.次の文章のうち、誤っているものを一つ選べ。 あ:513~ 25 章 a.( )癜風は Mallassezia furfur による浅在性の感染症である。
正しい。酵母様真菌の一種であるMalassezia 属(特に M.globosa)による浅在性の感染症である。 b.( )Malassezia furfur は 90%以上の成人で皮膚の正常菌叢の一部をなしている。 c.( )癜風の皮疹をメスの先で擦ると粃糠様の大量の落屑を認め、これをカンナ屑現象という。 正しい。癜風の病変は平坦であり、単なる色素異常のように見えるが、爪先やメスの先でこすると大量の落屑を 認め、これをカンナ屑現象という。 d.(×)スポロトリコーシスは Sprothri schenckii によって生じ、背景に悪性腫瘍などの免疫不全があることが 多い。×→成人(高齢者)の前腕に多い 誤り。原因菌は枯れ木や土中などに存在し、土と接触する機会の多い農業および園芸従事者や土で遊ぶ幼小児に 好発する。 e.( )スポロトリコーシスは限局型、リンパ管型、播種型などに分類される。 正しい。限局型は小児の顔面や上肢に好発、リンパ管型は成人の手背から前腕に好発する。リンパ管型が最も多 い。
19.熱傷に関する文章のうち、誤っているものを一つ選べ。 あ:204 13 章 a.( )深度は熱源の温度と接触時間により決定され、I~III 度に分類される。 正しい。臨床的にはⅡ度が重要で、真皮浅層なら瘢痕はないが真皮深層まで熱傷があると瘢痕が残る。 b.( )範囲の算出には,成人では「9 の法則」、小児では「 3 の法則 」を主に用いる。 誤り。小児に用いるのは「5 の法則」である。というか3 の法則ってあるのか? c.( )深度判定に針刺法や抜毛法が有用である。 正しい。針刺法では注射針で軽く刺して痛みがあればⅡ度、無ければⅢ度と判断する。抜毛法では毛を軽く引っ 張って容易に抜ければⅡ度熱傷あるいはⅢ度熱傷と判断する。 d.( )湯たんぽなどによる低温熱傷でも III 度熱傷が生じうる。 正しい。 e.( )II 度熱傷は、真皮への損傷が少なければほぼ瘢痕を残さず治癒する。 正しい。↑図の通り。 20.acantholysis はどれか。 あ:41 2 章 a.( )不全角化 parakeratosis b.( )表皮肥厚 acanthosis c.( )顆粒変性 granular degeneration d.( )海綿状態 spongiosis e.(○)棘融解 acantholysis 21.自己トレランスについて正しいものはどれか。 T 細胞や B 細胞が自己抗原などの特定の抗原に対して免疫反応を起こさなくなることを免疫寛容(免疫トレラン ス)という。
a.( )制御性 T 細胞(Treg)の機能発現には IL-8 や TGFβが関与している。 誤り。機能発現にはIL-10やTGFβが関与している。
b.( )B 細胞の自己トレランス成立には抗原提示細胞の B7 分子と CD28 分子の相互作用の欠如が関与している。 c.( )骨髄での B 細胞自己トレランスの成立には AIRE 遺伝子が関与している。
d.( )胸腺内で分化する過程で自己に強く反応する B 細胞クローンは消失する。
e.(○)成熟 B 細胞の軽鎖遺伝子再構成(receptor editing)は自己反応性の回避に利用される。
22. サイトカインについて正しいのはどれか。 サイトカインは、様々な刺激によって白血球などの細胞から産生されるタンパクであり、それに対するレセプタ ーに結合し細胞内のシグナル伝達を引き起こす。 ■おもなサイトカイン ・インターロイキン(IL):白血球から分泌され、免疫反応を調節する ・インターフェロン(IFN):ウイルス増殖阻止や Mφの活性化などに働く ・腫瘍壊死因子(TNF):腫瘍細胞の障害や炎症反応などに関与する ・コロニー刺激因子(CSF):血球の増殖に関与する。 a.( )1 種類のサイトカインは 1 種類の標的細胞に作用する。 誤り。サイトカインの多くは複数の標的細胞に対し多様な作用を誘導する(多機能性)。また、複数のサイトカ インが同じ作用を発揮することがある(機能重複)。 b.( )それぞれのサイトカインは細胞表面の特異レセプターに結合する。 c.( )すべてのサイトカインは T 細胞から産生される。 誤り。産生細胞はさまざまである。 d.(○)サイトカイン遺伝子の活性化は刺激後数分以内におこる。 e.( )サイトカインレセプターの発現は T 細胞レセプター遺伝子によって制御される。 23.ワクチンについて正しいものはどれか。 み⑥:120
a.( )ワクチンの有効性・有用性・安全性を決定する要因の一つとして、製品が遺伝子工学の技術を使用して いることが必要とされている。 b.(○)不恬化ワクチンは病原体を加熱するなどの処理により製造される。 c.( )弱毒化(生)ワクチンの利点として免疫不全患者への接種ができることが挙げられる。 d.( )不恬化ワクチンの抗原性および免疫原性は弱毒化(生)ワクチンのそれと同じである。 e.( )ワクチン接種を受けたヒトや動物は、そのワクチンが特異的に標的とする病原体には感染しない。 24.自己反応性リンパ球に関し、正しいのはどれか。 a.(○)健常者にも存在しているが、通常は活性化されていない。 正しい。アネルギーやTreg 細胞による抑制により活性化を抑えられている。 b.( )補体を産生する。 c.( )胸腺に集中して存在する。 誤り。一次リンパ組織にも二次リンパ組織にも存在する。 d.( )そのほとんどが直接組織傷害に関与する。 e.( )自己抗体産生とは関係ない。 25.補体の特徴で誤りはどれか。 み⑥:22 補体とは、血清中に存在して免疫機構に関わる一連のタンパク質であり、主に肝で産生される。異物の侵入によ って活性化されることによって、炎症の促進や病原体の排除など、生体防御に重要な作用を発揮する。 a.( )好中球による細菌の貪食を助ける。 正しい。これをオプソニン化という。 b.( )分解産物には白血球に対する走化性がある。 正しい。これにより食細胞の炎症巣への動員を行う。 c.(×)主な産生細胞は単球である。 誤り。おもに肝臓で産生される。 d.( )免疫複合体により活性化される。 正しい。これが古典経路である。 e.( )グラム陰性菌の LPS によって直接活性化される。 正しい。これが副経路である。
26. ステロイド薬の特徴で、正しいのはどれか。 み⑥:50 副腎皮質で産生されるステロイドホルモンの中で、主にグルココルチコイド活性を持つコルチゾールやその合成 薬がステロイドとして用いられる。ステロイドホルモンは、転写因子として特定の遺伝子発現を調節することに より多様な作用を発揮する。ステロイドはこれらの作用の内炎症性メディエーターなどの発現の制御(抗炎症・ 免疫抑制)を目的として投与される。そのためステロイドの効果が発現するまでには時間がかかる(即効性では ない)。 ステロイドを一定量長期投与するとその免疫抑制作用により感染のリスクが上がる。また、そのほかのホルモン 作用(糖新生・蛋白分解↑、ミネラルコルチコイド活性など)が過剰に発言し、副作用として出現する。 a.(?)炎症に効果はあるが、遅効性である。 転写を利用しているため発現は遅い。 b.( )免疫抑制効果はない。 誤り。ステロイドはサイトカイン合成やT 細胞機能、白血球遊走、アラキドン酸カスケードなどの機能を低下・ 抑制することによって抗炎症作用を示す。そのため免疫抑制作用を持つ。 c.(○)血糖上昇作用がある。 正しい。グルココルチコイドの働きとして糖新生が起きる。 d.( )関節リウマチでは禁忌となっている。 誤り。普通に使われる。 e.( )腎障害を起こす。 誤り。そのような事実はない。 27.全身性エリテマトーデス(SLE)について誤りはどれか。 み⑥:72 遺伝的素因を背景にホルモン異常やウイルス感染などが誘因となって、抗核抗体などの多様な自己抗体を産生す ることによっておこる、Ⅱ型・Ⅲ型アレルギーを中心とした慢性炎症性疾患である。膠原病の中でも著しく多彩 な臓器病変を呈する。女性に多く、好発年齢は10~30 歳代である。 a.( )疾患の活動性が上昇すると、白血球は減少する。 正しい。3 系統の血球の減少を認める。 b.( )圧倒的に女性に多い。 正しい。男女比は1:10 で 10~30 歳代の妊娠可能年齢の女性に好発する。 c.( )関節炎が起こっても、骨の破壊は稀である。 正しい。多発性の関節炎・関節痛が見られるが骨破壊、関節変形をきたすことはまれである(20 年以上の経過 ではJaccoud 変形と呼ばれる軽度の関節変形をきたすことがある) d.( )抗 2 本鎖 DNA 抗体価は活動性に一致して変動する。 正しい。抗dsDNS 抗体価は SLE の疾患活動性に平行して変動するため、病態、診断の治療方針の決定に有意義 である。 e.(×)生物学的製剤である TNF-α阻害薬が著効する。 誤り。SLE の治療はステロイドが中心で、ステロイド治療抵抗性がある場合や合併症などにより投与できない場 合は免疫抑制薬を投与する。臓器病変がない場合はNSAIDsのみで対処することもある。
28.皮膚筋炎に関連があるのはどれか。 み⑥:84 原発性の横紋筋の炎症性疾患を多発性筋炎といい、近位筋群の筋力低下を特徴とする。加えて皮膚症状があるも のを皮膚筋炎という。好発年齢は5~15 歳に小さなピークと 40~60 歳に大きなピークの二峰性分布を示す。小 児で性差はないが、成人では 1:2 で女性に多い。悪性腫瘍を合併することが多いため、検索を怠ってはならな い。 a.(○)血清アルドラーゼ高値(:9) b.( )糸球体腎炎 c.( )回盲部潰瘍 d.( )肺胞出血 e.( )抗 Scl-70 抗体陽性 筋障害を示す検査所見として、重要なものに筋原酵素(CK、アルドラーゼ)の上昇がある。その他対称性の筋 力低下、間質性肺炎、筋電図で筋原性異常(筋収縮時の低電位、短い持続など)が見られたら多発性筋炎を疑う。 確定診断は筋生検である(筋線維の変性、リンパ球浸潤)。その他特異性が高い検査として抗Jo-1 抗体の検査が ある。これらの所見に加えてヘリオトロープ疹、Gottron 徴候などが見られたら皮膚筋炎を考える。 治療はステロイドが第一選択で効果不良の場合は免疫抑制薬を併用する。悪性腫瘍がある場合は腫瘍摘除を行う と治ることがある。 29.強皮症について正しいのはどれか。(み 6:80) 全身性の結合組織病変で、血管障害を中心に展開される炎症性・線維性変化を主体とする疾患である。主旨より 始まる皮膚の効果病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明で、中年女性に多い。 a.( )皮膚の硬化は四肢近位部から始まる。 誤り。四肢末端が初発である。 b.( )病態形成には TNF-αが重要である。 原因は不明である。 c.( )治療にはステロイドを長期間使用する必要がある。 誤り。すべて対症療法を行う。その意味で日常生活指導が非常に大切である。 d.(○)肺線維症は肺底部から始まる。 正しい。そのためX 線検査で下肺野線状網状陰影が見られる。 e.( )抗セントロメア抗体の陽性率は 50%以上である。 30.SLE の腎病変について正しいのはどれか。 み⑥:74 a.( )SLE の予後には大きな影響を与えない。 誤り。感染症・脳血管障害・腎不全はSLE の予後に大きく関与する。 b.( )初期から腎不全状態になっていることが多い。 誤り。ループス腎炎を経由する。 c.(○)糸球体に Clq の沈着が特徴的である。(み 8:194) d.( )尿細管性アシドーシスを起こす。 誤り。これはSjögren syndromeのことを言っている e.( )治療に免疫抑制薬を必要とするのは稀である。 誤り。ステロイドが使えない場合は免疫抑制薬を使う。
31.以下の組み合わせで誤りはどれか。 a.( )白血球減少- SLE み⑥:72 正しい。SLE では末梢血で 3 系統の汎血球減少を認める。 b.(×)血小板減少- 強皮症 み⑥:80 誤り。そのような事実はない。 c.( )抗 Jo-1 抗体- 多発筋炎 み⑥:84 正しい。抗Jo-1 抗体は多発筋炎や皮膚筋炎で特異性が高い d.( )抗 2 本鎖 DNA 抗体- SLE 正しい。抗dsDNA 抗体は SLE に特異的な抗核抗体である。 e.( )血清 LDH 高値- 皮膚筋炎 正しい。筋原線維の破壊所見である。 32. 肺病変との組み合わせで最も頻度の低いのはどれか。 a.( )心外膜炎- SLE み⑥:72 SLE では漿膜炎(心膜炎=心外膜炎、胸膜炎)などが見られる。 b.(○)肺高血圧- 皮膚筋炎 み⑥:84 皮膚筋炎や多発性筋炎における肺症状はびまん性間質性肺炎である。抗Jo-1 抗体陽性の場合、高率にみられる。 肺高血圧はMCTDにおいて重要な所見となる。 c.( )胸水貯留- 混合性結合組織病(MCTD) み⑥:88 混合性結合組織病とは、SLE(全身性エリテマトーデス)、SSc(強皮症)、PM/DM(多発性筋炎/皮膚筋炎)の臨床症 状が混在し、抗 U1-RNP 抗体が陽性となる疾患である。従来、予後良好とされていたが、肺高血圧合併群は予 後不良であることが注目されてきている。 症状として顔面紅斑、多発関節炎、発熱(SLE)と手指の皮膚硬化、肺線維症(SSc)、筋力低下(PM/DM)と いったように3 つの疾患の症状を少しずつ併せ持つ。 胸水貯留とは、つまり胸膜炎。SLE 様所見として出ることがある。 d.( )間質性肺炎- 多発筋炎 皮膚筋炎や多発性筋炎における肺症状はびまん性間質性肺炎である。抗Jo-1 抗体陽性の場合、高率にみられる。 e.( )伝導障害- 強皮症 み⑥:80 強皮症では心症状として心膜炎、心筋線維化、不整脈などを認める。 33. 関節組織について正しいのはどれか a.( )関節軟骨内には毛細血管が発達している 誤り。関節軟骨に毛細血管はない。栄養は滑液や周囲の骨組織から得る。 b.( )滑膜は厚い膠原線維組織からなる 誤り。滑膜は繊維芽細胞とマクロファージからなる。 c.(○)関節液中には高分子の糖蛋白が多く含まれる 正しい。ヒアルロン酸が主成分である。多いとは言っても蛋白濃度を血漿中よりも低い。 d.( )滑膜細胞は中皮細胞由来である 中皮とは胸腔、心嚢、腹腔の体腔表面を覆う膜様組織のことである。滑膜細胞は繊維芽細胞やマクロファージか らなるので中皮細胞由来でない。 e.( )靭帯はすべての関節に存在する 34. 関節疾患と好発部位に関する組み合わせで正しいのはどれか シラバス 2/7
a.( )変形性関節症- 中手指節関節(MCP 関節) 誤り。変形性関節症はDIP 関節に出やすい。 b.( )関節リウマチ- 腰椎 誤り。関節リウマチは指や手に多くその他ひざや肩に好発する。 c.( )痛風- 手関節 誤り。痛風は第一足趾に出やすい。 d.( )強直性脊椎炎- 遠位手指節関節(DIP 関節) 誤り。強直性脊椎炎は仙腸関節に好発する。 e.(○)無菌性骨壊死症- 股関節 正しい。 35. ベーチェット病で少ない症状はどれか(み 6:94) ベーチェット病は、反復する炎症反応により全身の臓器が障害され、多彩な臨床症状を示す難治性の疾患である。 発症に性差は認められないが、男性に症状が重篤な病型が多い。 症状は主症状と副症状とに分けられる。 a.( )口内炎 主症状 b.(×)乾性咳嗽 c.( )関節痛 副症状 d.( )陰部潰瘍 主症状 e.( )ブドウ膜炎 主症状
36. 混合性結合組織病について最も高頻度に認められる所見はどれか(朝:1082) み⑥:88 最も重要な所見は、抗U1-RNP 抗体が単独で強陽性になることと肺高血圧を高頻度に合併することである。 a.( )レイノー現象 中核症状 b.( )指のソーセージ様腫脹 中核症状 c.( )間質性肺病変 SSc 病変 d.( )白血球減少 SLE 病変 e.(○)抗 RNP 抗体陽性全例 37. シェーグレン症候群について正しいのはどれか み⑥:91 唾液腺・涙腺の慢性炎症のため唾液・涙の分泌量が減少し、口腔内・眼の乾燥症状が主徴となる自己免疫疾患で ある。唾液腺や涙腺などの導管・腺房が破壊されることが特徴で、多彩な自己抗体が出現したり、高γ-グロブリ ン血症をきたすことが多い。 a.(○)ときに耳下腺腫脹をきたす 正しい。唾液腺の腫脹である。 b.( )関節痛をきたすのはまれである 誤り。原発性シェーグレン症候群の患者の約 30%では、涙腺、唾液腺以外に病変が及ぶ。これを腺外性シェー グレン症候群と呼ぶ。頻度が高い症状は関節炎、レイノー現象、リンパ節腫脹などである。 c.( )口腔内アフタ性潰瘍が多発する 誤り。口腔症状は口腔の乾燥による固形物の嚥下困難やう蝕の増加、口腔内カンジダなどである。 d.( )しばしばブドウ膜炎をきたす 誤り。これはベーチェット病の所見 e.( )甲状腺機能亢進症の合併が多い 誤り。起きるのは慢性甲状腺炎、つまり甲状腺機能低下症である。
38. 副腎皮質ステロイド剤の全身投与が第一選択となるのはどれか a.(△)成人スチル病 み⑥:66 成人スチル病はまずNSAIDsを投与して経過を観察し、改善が見られない例にはステロイド投与を行う。しかし、 NSAIDsのみで寛解に至る例はまれで、ほとんどの症例でステロイドを必要とする。 b.( )ベーチェット病 み⑥:94 ベーチェット病はNSAIDs、コルヒチン、ステロイド、免疫抑制薬が基本である。 c.(△)シェーグレン症候群 み⑥:91 治療は対症療法が基本である。発熱、関節症状などの腺外症状に対してはステロイドが使用される。乾燥症状に は人工涙液点眼、水分摂取、外分泌腺機能促進薬などを使う。 d.( )関節リウマチ み⑥:52 関節リウマチの第一選択はメトトレキサートである e.( )変形性関節症 み⑥:62 変形性関節症の治療はNSAIDs やステロイド、ヒアルロン酸の関節内注入である。 39. リウマチ性多発筋痛症について正しいのはどれか(み 6:109) リウマチ性多発筋痛症はしばしば側頭動脈炎に合併する。発熱、体重減少、倦怠感といった全身症状と肩、頸部 の筋痛が急速に生じる。また、朝のこわばりも見られる。検査でリウマトイド因子・自己抗体は陰性である。筋 原性酵素は正常である(PM との鑑別点) a.( )中年女性に好発する 誤り。側頭動脈炎と同様に高齢の女性に好発する。 b.( )筋痛は上腕、前腕、下腿に好発する c.( )リウマトイド因子が陽性である 誤り。リウマトイド因子は陰性である。 d.(○)赤沈や CRP の上昇を認める 正しい。 e.( )ステロイド剤に対する反応は不良のことが多い 誤り。ステロイドが著効する。 40.45 歳、女性。2 か月前から手指の関節痛が出現。その後、大腿、肩、腕などの筋肉痛と脱力が出現し、階段 が上れなくなったために来院した。両上腕、大腿に対称性の筋力低下を認めた。胸腹部、皮膚には異常を認め なかった。末梢血、検尿は異常なし。生化学ではCK 3800 mg/dl (正常:40~160)と上昇を認め、抗核抗体 は640 倍であった。診断はどれか。 対称性の近位筋の筋力低下、筋原酵素の上昇、抗核抗体(おそらく抗 Jo-1 抗体か?)などから多発性筋炎が考 えられる。皮膚症状がないため皮膚筋炎ではない。
a.( )rheumatoid arthritis b.(○)polymyositis
c.( )systemic sclerosis
d.( )polymyalgia rheuinatica e.( )Adult-onset still's disease
41.抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎に属する血管炎はどれか。 み⑥:102 あ:152~ 11 章 ANCA 関連血管炎とは、血管炎症候群の中でも、病態にANCA(好中球の細胞に対する自己抗体、C と P の二つ がある)が関連してくる疾患である。顕微鏡的多発血管炎、アレルギー性肉下種性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症な どがある。 a.(○)アレルギー性肉芽腫性血管炎 b.( )結節性動脈周囲炎 c.( )ベーチェット病 d.( )シェーンライン・ヘノッホ紫斑病 e.( )側頭動脈炎 42. アレルギー性肉芽極性血管炎の症状について誤ったものはどれか。 み⑥:104 あ:159 11 章 血管内あるいはその周囲に肉芽腫を形成する全身性の壊死性血管炎である。気管支喘息やアレルギー性鼻炎、好 酸球増多が先行する、P-ANCA(MPO-ANCA)陽性のANCA 関連血管炎である。肺病変は必発で気管支ぜんそ く症状に加え多発性肺浸潤影が見られる。病理所見の認められないものはChurg-Strauss 症候群とも呼ばれる。 治療はステロイド大量療法など。 a.( )気管支喘息 b.( )アレルギー性鼻炎 c.(×)鞍鼻 d.( )紫斑 e.( )多発性単神経炎 鞍鼻はWegener 肉芽腫で見られる。 43. Wegener 肉芽腫症に見られる所見はどれか。(み 6:106) あ:160 11 章 全身性血管炎の一種。上気道症状(鼻閉、鞍鼻、慢性副鼻腔炎など)、肺病変(咳嗽、血痰、呼吸困難など)、腎 病変(急速進行性糸球体腎炎)の順に出現することが多い。肉芽腫を伴う血管炎が特徴的な C-ANCA 陽性の ANCA 関連血管炎である。治療は免疫抑制薬とステロイドの併用。 a.( )HLA-B51 陽性 b.(○)PR3-ANCA 陽性 c.( )抗核抗体陽性 d.( )血清 IgE 高値 e.( )抗基底膜抗体陽性 C-ANCA は好中球のアズール顆粒中のプロテイナーゼ 3(PR3)に対する自己抗体である。
44.大動脈炎症候群の症状として誤った選択肢はどれか み②:256 いわゆる高安病である。大動脈と主要分枝、時には肺動脈などの太い動脈に好発する非特異的炎症とその瘢痕化 により、二次的に狭窄・閉塞・拡張を生じる慢性血管炎である。症状は病変の部位と程度、または動脈炎の活動 期痂皮活動期化により著しく相違する。 a.( )頚部血管雑音 総頸動脈 b.( )血圧の左右差 鎖骨下動脈 c.( )失神発作 上行大動脈、鎖骨下動脈、総頸動脈 d.( )大動脈弁閉鎖不全 上行大動脈 e.(×)点状出血 45.81 歳男性。1ヶ月前より 38℃の発熱持続。乾性咳嗽も出現し、近医受診。蛋白尿・血尿を指摘され、CRP 3 +と高値のため紹介受診。MPO-ANCA 202IU で、間質性肺炎の所見を胸部X線でみとめた。また、入院後、 急速にCr 2.1 と上昇を認め、皮膚に紫斑がみられた。皮膚生検を施行したところ、壊死性血管炎の所見をえ た。治療法として適切なものはどれか。 MPO-ANCA(P-ANCA)はアレルギー性肉芽種性血管炎で見られる。間質性肺炎は好酸球性のものである。治療 はステロイドの大量療法を行う。難治例には免疫抑制薬の併用を行う。
a.(○)副腎皮質ステロイド+免疫抑制剤 b.( )皮膚外用剤 c.( )抗生剤 d.( )生物学的製剤 e.( )血液透析 46. リウマチ性多発筋痛症を合併しやすい血管炎はどれか。 a.( )悪性関節リウマチ b.(○)側頭動脈炎 c.( )顕微鏡的多発血管炎 d.( )高安動脈炎 e.( )ベーチェット病 47.X 連鎖劣性遺伝病の特徴はどれか。 病的遺伝子がX 染色体上にある遺伝病である。特徴として、 ・X 染色体が一つしかない男性では容易に発現しうる(罹患者はほとんど男性) ・母が患者の場合、息子には100%伝わる、 ・父から息子に伝わることはない(父からはY が伝わるから) などがある。 a.( )母親の兄弟が罹患している男児が発症する確率は 1/2 より大きい b.( )父親が患者の場合、息子が罹患する確率は約 1/2 である 誤り。父親から息子にはY 染色体が伝わるので、息子が罹患する確率は 0 である。 c.(○)母親が患者の場合、息子が罹患する確率は約 100%である 正しい。母親から必ず病的遺伝子が遺伝するので100%罹患する。 d.( )母の病的遺伝子は男児にのみ伝わる 誤り。娘が保因者となることがある。 e.( )患者の性比はほぼ 1:1 である 誤り。圧倒的に男に多い。 48.正常な夫婦から、ある常染色体劣性遺伝病の子供と正常児が 1 人ずつ生まれた。正常児が遺伝的保因者(病 的遺伝子のヘテロ接合)である確率はどれだけか。 常染色体劣性遺伝病の子供が正常な夫婦から生まれたということは、両親はどちらとも遺伝的保因者であったと 考えられる。正常遺伝子をA、病的遺伝子を A’とすると、 子供は図の太枠の遺伝子のいずれかの表現型になる(4 つとも確率は同じ)。よって正常時が遺伝的保因者である 確率は2/3となる。 A,A' A,A' AA AA' AA' A'A'
a.( )1/600 b.( )1/200 c.( )1/4 d.( )1/2 e.(○)2/3 49.貧血と腎障害で死亡した女児の病理解剖例。別紙図は腎の HE 標木強拡大像。関連する記述で最も適切なも のを選びなさい。 a.( )アレルギー性肉芽腫性血管炎 b.( )古典的多発動脈炎 c.( )顕微鏡的多発血管炎 d.( )アミロイド腎 e.( )播種性血管内凝固症候群 50. 成人男性、眼瞼下垂を主訴に単純X線で胸部心・縦隔陰影の拡大を示し、手術で摘出された臓器の HE 弱拡 大像と枠内は強拡大像(別紙図)。関連する記述で最も適切なものを選びなさい。 a.( )前縦隔腫瘍 b.( )筋委縮性側索硬化症 c.( )皮膚筋炎 d.( )細胞悪性リンパ腫 e.( )筋ジストロフィ