9 英語
1.研究主題によせて (1) はじめに
日本のユネスコスクールが急増(550校)している。
この背景はグローバル人材の育成が求められる時代の 流れに合致したことや学習指導要領に ESD(持続発展 教育)の考え方が取り入れられたことなどが指摘され ている。
国際交流の弱さと英語力を課題にもつ日本の現況に, どう対応していくのか,試行錯誤を私自身がくり返す 日々である。このことに着目すると,表現の幅を拡げる ために語彙数の獲得を考えるべきである。例えば,英語 のコミュニケーション能力の高い中国・韓国・台湾の 英語教育では,同じ学年の教科書の語彙数(単語・熟 語・定番表現)が日本の2.5~6.0倍といわれる。そこ で生徒たちが,自然に語彙数を獲得できる方法を考え ていきたい。
この研究のきっかけとなったのは,近隣地域の中 国・韓国・台湾の教科書における語彙数が違うことに ある。「アジア各国と日本の英語教科書比較」*(1) に よると,その内容は韓国・台湾の英語教科書の本文量は, 日本の2.5~4.5倍,中国は日本の4~6倍というもので ある。一方,日本の英語教科書の中学3年間の語彙数は 900語(旧の学習指導要領)から1200語(新学習指導要 領)に改定されて増えたが,アジア地域(中・韓・台)の 小学校修了時のレベルに相当する事実も見逃せない点 である。
この問題点を受け,日本の英語教育における言語活 動や会話表現の中で何が欠如しているかを観察したり, 生徒たちの意見を聞いたりしている。その結果,語彙数 不足により,ネイティブ・スピーカーのALTやJTE ・ 友達と会話をするときに英語の文章がすぐさま出て来 ない実態が明らかになった。
本研究では,この現実を克服するために丸暗記や書 く練習だけではなく,新出語彙を身近なものにする具 体的な取り組みと生徒相互間での学び合いを行う意義 は大きいと私は考える。だから, 本研究では,教科書で 扱った語彙や語句は,単元毎のまとめの時間で,生徒た ちが3分~5分間の2・3人での会話やプレゼンテーシ ョンを行わせる。その検証として,「Let’s Enjoy BINGO」*(2) BINGOだけの活用とせず,「ビンゴの英作 文ノート」(ビンゴ帳の品詞の語彙数を活用しての英文 再生ノート)の活用をしたり, Bingo から生まれる英 作文発表の中から間違った文をその都度,矯正を行っ たりする。
研究した結果が,実用的に「使える英語」であるかど うかをALTとの面接テストやオーラル・コミュニケー ションの時間に検証をする。日常から,授業の内外を問 わず語彙数の創造と共に英語表現の幅が拡がるよう に,ALTやJTEとのコミュニケーションに慣れる場面作 りをしていきたい。
語彙習得から生まれるコミュニケーション能力を育てる授業
― Teaching Methods For Students Communication In The New English Vocabulary ―
増田 とよ子 本論の要旨
今回の学習指導要領の改訂では,「聞く」・「話す」ことを重視した指導から,「書く」・「読む」ことが追加重視となり 四技能をバランスよく総合的にかつ統合的に指導することが求められている。統合的に指導するとは,「読んで話す- 読
んで書く,聞いて書く- 聞いて話す」などの複数の技能を組み込んでいくことである。
その上で,思考力・判断力・表現力を構築したり,知識・技能を活用したりしてコミュニケーション能力を育てること
が必要である。生徒の実態では,コミュニケーション能力の向上を目的に,「実用性」・「語彙力」・「英語知識」・「話す ことへの習慣と自信」の4つの要素に重点を置いている。このことは生徒の現状と今後の目標を設定して,実態が浮か び見えてきたものである。また,英語そのものが嫌いと言う生徒の抵抗を減らし,どこまで,底上げできるかという点も 忘れてはならない。
コミュニケーションの基本は話す相手がいて,話したい内容があることである。生徒は,この過程において英語が口 から出ないことや肝心な語句が思い浮かばないことにより会話が成り立たない現状が明らかになった。この現状は, 語彙数を増加させていく言語活動からの脱却を図る学習活動を通して高めあえることに気づいていった。その結果, 一人ひとりの生徒が目的意識をもち,自分のつまずきを克服しながら実際に使える英語が増幅される姿が見えてきた。
キーワード
語彙数の獲得 「Quick Responseクイック・レスポンス」 実用的に使える英語 持続発展教育=ESD (Education for Sustainable Development)
(2) 研究のねらい
授業において英語の知識やスキルを教えることにほ ぼ終始しているように生徒は感じていないか。公教育 としての英語教育は,英語の知識や技能を第一義的に 捉えることではなく,「実用的に使える英語をもってコ ミュニケーションできるようになる」ことや,むしろそ の先にある「異文化理解を意識した授業の構築になる」
ことが肝要であろう。
このことは,中学校学習指導要領の評価規準に 相当する内容である。
コミュニケ ーションの 関心・意欲・
態度 :ア
外国語表 現の能力 :イ
外国語理 解の能力 ウ
言語や文化に ついての 知 識 ・ 理 解 :エ
①コミュニケ ーションに関 心をもち,積 極的に言語活 動を行い,コ ミュニケーシ ョンを図ろう とする。
② 外 国 語 で 話 し た り 書 い た りして,自 分 の 考 え な ど を 表 現 し て い る。
③ 外 国 語 を 聞 い た り 読 ん だ りして,話 し 手 や 書 き 手 の 意 向 な ど を 理 解 し て いる。
④外国語の活 動を通して,言 語やその運用 についての知 識を身につけ るとともにそ の背景にある 文化などを理 解している。
そこで,生徒が真のコミュニケーション能力を 獲得するにために,次の試みを実践し研究するこ とにした。
覚えっぱなしを防いで,「使える実践的な英語」
を身につけること
そこには「情報発信手段としての言葉」を英語で 操る方策が求められる。その戦略として, 「Quick
Responseクイック・レスポンス」(言いたいことを
即座に言葉にする)を導入することにある。これは
「英語で語彙数を増やすことができると会話が長 い時間できる」という実践的英語に到達する。こ の過程において,生徒の英語に対峙する思考力と 表現力の習熟の変化が表れよう。
つまずきからの克服は,「話すことへの習慣と自 信」を身につけること
他者とのコミュニケーショは,外的には 社会的活動 を可能にする社会的言語である。また思考を支える内 的言語で,飛躍や文法的逸脱も多いとされる。ゆえに, 話すことへの習慣はつまずきや抵抗を除き「話す」こ との自信につながる過程として重要であると考える。
「話す」ことや「書く」*(3)は,「情緒の安定」「思 考」「伝達」「記憶」のどの領域においても意味をもつ と考えられている。特に,「情緒の安定」や「伝達」に は「話す」ことが,「思考」や「記憶」には「書く」こ とが重視されているといえるだろう。
(3) 研究仮説
日本人が不得意だとされているものとして,英語の 音・語・文法が挙げられるが,本校の3年生の生徒も似 たような傾向が見受けられる。具体的には,発音が聞き 取れないために全体が理解できない,聞き取れないか ら話が続かない,言おうとするが英語が口から出てこ ない,自分の言いたいことや考えがうまく表現できな いのはなぜなのかといった問題が生じた(図1)。
これらの要因が日本語と英語の違いにあることを感 性に頼らず,その性質を知らせる。この両者の比較を通
して,生徒はその特徴を,読み方の工夫・語句の量と質・
文の作り方・表現の工夫にあることを発見し,つまずき の原因になっていることも自ずと気づくであろう。こ の気づきを礎に,語彙数の増強・辞書による語句集めと 意味調べ・使用頻度や運用度の高いものを活用しての 厳選や習熟を生徒に図らせていきたい。コミュニケー ションのために,生徒2・3人で,あるいはグルー プで“chain story”を作って,交流したり,話した りすることで生徒相互間に共有化と可視化が産出 されるであろう。即答の工夫「Quick Response」を 習得し「実用的に使える英語」の活用は,伝え合う 楽しさを実感することを目指すことになろう。実 用 的に実 践でき る英語 学習 である ために,内 発 的・外発的要因を探る必要が出てくる。
そこで,生徒が英語学習の中で考えるつまずき の原因について,項目ごとにアンケートを集計し たものである。全11各項目より「とても当てはま る」あるいは「まあまあ当てはまる」ものを3 つ 選択した結果を図示した(図1)。生徒が考えるつ
まずきの75%を「話す・書く・聞く」という技能
であり,これらに焦点を当てて指導をしていきた い。
図1 英語学習で生徒が考えるつまずきの原因 円グラフの数字は人数(118名)の割合を示す
2.授業実践 1
「「Quick Responseクイック・レスポンス」に着
英 語
目した実践的で楽しめる英語学習 (1) 主題(単元 , 題材) <第3学年>
Let’s Talk about Things Japanese (日本の伝統文化についての報告)
【Sun Shine English Course 3 】
(2) 主題設定の理由
本課では現在分詞・過去分詞による後置修飾を学習す るが,これはPROGRAMS7,8において導入される関係代名 詞による後置修飾を理解する上で基礎となる事項であ り,修飾される先行名詞とこの後置修飾部分とが主語・
述語の関係にあることをしっかりと理解させることが 必要である。本課の概要は, マイクが美術の授業で興味 を持った「鳥獣戯画」についてインターネットで,日本 の漫画の原点と言われることを知って驚く報告シーン から始まる。日本の伝統的なおもちゃや祭り等を叙述し, ,さらに,後置修飾の応用表現を用いて日本独自のもの を記述できることをねらう。
新学習指導要領において「内容の取扱い」中に規定さ れている「外国や我が国の生活や文化についての理解を 深めるとともに,言語や文化に対する関心を,これらを 尊重する態度を育てるのに役立つこと」との点を踏まえ, 日本の文化を英語で表現することを目標としている。自 国の文化についての知識はあっても,それを英語で表現 するということになると,どのように述べればよいかと いうことが問題になる。相手の文化にそれに対応する概 念がない場合は訳語を当てることができず,説明を加え ることになるが,どのように表現すれば的確に理解して もらえるかを意識しつつ,日本文化の発信というところ に生徒の興味・関心が向けられることをねらいとしてい る。
本学校の生徒は明るく積極的な生徒や与えられた課 題に対して熱心に取り組むことができる生徒が多い。電 子辞書を使わず,自力で辞書を引き問題解決を図る姿も 見られることから,説明を加える形容詞の働きをする後 置修飾の用法についても意欲的に取り組み,Warm-up用 の英作文にも習得・活用し出力してくれることを期待し ている。この単元により,生徒は日本文化の持つ面白さ や興味・関心を英文表現することでできるようになるた め, いっそう異文化理解への橋渡しが拡大するだろう。
(3) 学習計画(全6時間)
第1時 現在分詞の後置修飾の導入と本文の概要把握 (本時) 第2時 現在分詞の後置修飾の練習と本文の理解 第3時 過去分詞の後置修飾の導入と本文の概要把握 第4時 過去分詞の後置修飾の練習と本文の理解 第5時 分詞の後置修飾を使った日本文化の説明
(紹介文の作成)
第6時 作成した日本文化に関する作品のスピーチ
(4) 情報の時間に関連して
実際のコミュニケーションでは,伝えたいこと を即座に言葉にする力が必要になるが,習得した はずの基本文でさえ上手く活用できない。また,応 用表現に至ってはさらに困難となっている。語彙 数を増強するために「Thinking Tool シンキング・ ツール」を活用して思考力を磨きあげ,成句表(句 動詞などの共通点や相違点など,また,生徒が興味 を 惹かれ た品詞 のいろ いろ)を 完成さ せていく
(図2-1・2-2)。
図2-1「シンキング・ツール」を活用したノート
(単元のまとめシートでの ーish 語彙集め)
図2-2「シンキング・ツール」を活用したノート (ghの発音の種別の 語彙集め)
授業用のHandoutの1種類に,単元のまとめの時に利 用しているのが,(図2-1)である。このシートには,
「 Expression to learn 」,「 Today’s points 」, さらに,後置修飾の応用表現を用いて日本独自のもの
を記述できることをねらう。
新学習指導要領において「内容の取扱い」中に規定さ れている「外国や我が国の生活や文化についての理解を 深めるとともに,言語や文化に対する関心を,これらを 尊重する態度を育てるのに役立つこと」との点を踏まえ 日本の文化を英語で表現することを としている
文化についての知識はあっても,それを英語で表現 するということになると,どのように述べればよいかと
「My own opinion」と情報の時間に関連しての「シン キング・ツールを活用してのYチャートやベン図」等 がまとめられる。特に,「シンキング・ツールを活用 してのYチャートやベン図」は,生徒が自然に自分の思 考と調べる語句・成句・発音の相違(図2-2)等のカ テゴリーによって判断し,活用している実践例である。
(5)本時の学習過程
“You’ve been selfish since you was a child.”:
生徒はselfishの語句に興味を示し, シンキング・ツ ールによって自分の思いや考えを可視化することに 至るである。selfish の意味が「わがままな」の意味 を得たことで,British は「英国の・英国人」,Jewish は「ユダヤ人,ユダヤの」と言う方法知を得て,自分自 身の課題に挑戦するねばり強さが積上げられていった。
学習内容と学習活動 指導上の留意点,★思・判・表を伸ばす方策,◆評価 導
入
1BINGOでVocabulary Buildingを行う。
Bingoから5英作文/5人の生徒が書き取り
・英語の挨拶とBINGOにより,英語モードに雰囲気を切り替える。
・GAMEを利用し,英作文発表か書取りを行い自己チェックを促す。
展 開
2 新文型の導入(リスニング)の理解を行う。
Many children like this day a lot, Because they can get money. We can see many people wearing kimonos at Shrines. We get many greeting cards written by friends.
・課題に対する答えを予想
・Intake reading で英文を暗唱 3 基本文理解のワークシートを活用する。
・リズムトレーニング
・英作文作り
4 新出単語の学習を行う。
・ 英語と日本語の交互反応
・ リスニング 5 本文の音読練習を行う。
・ 英語と日本語の交互反応
・タイムレース
6 本文の概要を把握する。
・ 質問に答えて,次時に学習する内容の準備
・未習語を含むときは, 前後の文脈から理解できるように概要把握に努めさせ る。
・課題をはっきりと示すために,黒板の青い枠内に板書する。
・新文型の導入なので,文法的な説明ではなく文の意味を把握できる程 度の理解にとどめる。
★生徒同士が相互に発音・抑揚・リエゾンなどに注意し,最終日本語を英語に置 換できる。
・リズムに乗って語彙数を増やしていき,基本文を定着させる。
◆【知識・理解:規準④】 現在分詞の後置修飾の用法を理解し,活 用できる。
・自分の英文を自由に書くように机間支援して促す。
・指示されるスピードで読ませる。
★英語vs日本語の視点から素早く読んだり,反応できたりするようにさ せる。
・3分間で何回音読ができるか;自分通読の限界に挑戦させる。
・指示や目標を示唆した後,練習・発表をさせる。
★それぞれ相互チェックされた音読の箇所に注視して読み,概ね本文が理 解できることに努めさせる。
◆【理解の能力:規準③】 本文の概要を把握できるようにする。
ま と め
7 本時のまとめと次時予告をする。
後置修飾の活用しながら,意見交流する。
◆【知識・理解規準④】:交流文が相互に理解することができる。
(・詳細なリーディングや意味理解については,次時の取組みである。)
○ 資料・教具・準備など 電子黒板: リモコン
作業 : 2色刷の生徒プリント, Reuseシート「リスニングクイズ」
説明している英文を聞いて, 該当する休日や行事を選んでみよう。
【例】 “ chain story”(日本文化の何でもコーナー)
・マイクが興味を持った絵は何?⇒複数組み(別の切り口)でインタビューしあう。
・ マイクが好きな場面は? ⇒複数組み(別の切り口)でインタビューしあう。
・絵が描かれたのはいつごろ? ⇒複数組み(別の切り口)でインタビューしあう。
・絵は日本で( )漫画という人もいる。⇒複数組(別の切り口)でインタビューしあう。
英 語
(6) 本時の授業に対する意見
授業後の校内の協議会では,以下のようなことが意 見として挙がった。
・英語の授業のテンポはこれほどまでに速いのか。タ イムレースもいいが,ディジタル教科書で読んだ後も っとじっくり教師が読んでやってもよかった。
・中3の授業の導入のBingoは,単純なゲームではなく て,英作文のためのものであり,コミュニケーションに 完結することがわかった。教師のWarm-upにもなる。
・細かい発音チェックを生徒同士でできるようになる には3年間の積み上げが左右するものだ。
・今回「鳥獣戯画」がとり扱われていたが,日本文化の 紹介などの指導はたくさんやったほうがよいだろう。
・日本人でも自国の文化を英語で紹介できないのも残 念である。
・Q: 語彙数が少ない時はよいが,多い時はどのような 手立てで,支援をしているのか。英語の苦手な生徒や英 語の嫌いな子には,どうしているのか。
⇒A:この質問に該当する生徒には,「Intake Reading」
などを利用して相方を見つけて多読をさせる。また, 文脈から類推的にイメージさせてマンガのカットの 要領で忘れないような覚え方を工夫させる。何回もく り返して覚えさせる手立てを講じるようにしている。
3.授業実践 2
効果的な語彙指導から生まれるコミュニケーション能 力
語彙数を増やすことのメリット
数多の世界のどの言語にしても,語彙数は豊富にあ る方が言語使用や会話には便利である。やはり,ジェス チャーや笑顔だけでは限界がある。語彙数が少ない時 や言葉をなかなか発することができない時の対策を考 えていきたい。また,生徒は受験英語に留まるのではな く,英会話ができることを念頭に,目標に置いているこ とも見逃してはならない。
図1で示したように, 英語学習で生徒が考えるつ まずきの原因から,「英語を書くのが難しい」・「英語 を話すのが難しい」「英語を聞きとるのが難しい」「文 法が難しい」という実態を受けて,授業の導入時に,取 り組みやすい,抵抗を感じない教材を工夫していくこ とを試みた。
BINGOによる一連のパターン化を図る(図3)。
(1)BINGO帳の語句を授業者の後について音読する。
(2)BINGO帳の語句に1語と1英文のPlus1を加える。
(3)BINGOゲームを行うとき,大きな声で発音する。
(4)「Quick Responseクイック・レスポンス」のルー ルにのっとり3秒~5秒以内で英作文し発表する。
発表者が作った英文を受けて全員でリピートす
る。
(5)2・3人組みで英問英答の会話筋力トレを行う。
図3“ BINGOから英作への変身 ”を活用したBINGO
・ 以上のプロセスを経て,構文は語句を入れ替えて変 化させる時に,つまずきの原因を排除できるように配 慮する。「What do you want to say?」や「What’s the meaning?」の問いかけをするとお互いの考える力を伸 ばすことになることを薦める。やはり,教科を越えて探 求型の指導を行なうことで,語彙力と読解力も増すこ とにつながる。
・ 重要なフレーズや金言・格言・諺等は「ある場面 に様々な表現を生徒相互間で自分の用例を紹介し合う。
ここではバラエティに富んだ内容や表現の工夫があれ ば Teacher’s Point として取り上げ,称賛するこ とも忘れないことである。
・ 耳から音を入れる。自分の耳をネイティブの発音 に慣れさせる機会や場面を設定して音声を増強すると いうこと。オウム返しの如く真似ること,役者になった つもりでオーバーに発話することで日本語からくる負 の発音(フラットな発音)が脱出できる機会を得るこ とができた。
・ 英文を声に出して読む。「聞くー音読する」
唯々読み上げるだけではなく,音読しながら英文の 内容を理解する訓練を行う。「耳から聞いたら口に出 す。」「口から出したことは必ず耳で聞く」という習慣 をつけると効果が高まる。
4.まとめ
(1)成果および今後の課題
生徒たちのつまずきの度合いに着目して,英語教育 の改善と同時に,生徒の英語力(四技能の)底上げに奮 闘する楽しい時間を過ごすことができた。
とりわけ,コミュニケーション能力の向上を目的 に,語彙数を増強し,習得・活用することを念頭に生 徒と授業者と共に試行錯誤しながら実践してきた。
終盤,生徒たちの評価と反省を見てその手応えはあ ったと実感できる(図4)。「実用性」「語彙力」「英 語知識」「話すことへの習慣と自信」の
4
つの要素 に重点を置いたことも,生徒たちが不断の努力と学 び合いができ,かなり自分の英語力を高められるこ とにつながったと感じ取っている。図4:生徒たちの授業への感想と反省
さらに,「実用的に使える英語力」や「コミュニケー ション能力」の向上についての課題は,ALT との An Interview testの実技テストの中から浮上したことが ある(図4・5)。声の大小,視線,発音(抑揚や連結), 内容,リスニング等まだまだ努力の必要がある者はま だいないわけではない。また,暗記力の高くない生徒に は,多読をさせて,文脈から類推する力をつけさせ,何 回も繰り返し出てくる語を自然に覚えさせる手立てを 講じることがポイントになってきた。
この視点では,「外国語における語彙学習におい て,Mc.Cathy(1990:P・viii)は,学習者が学習対象者と なる言語の文法や音声を十分に学習し,身につけたと しても,幅広い意味を表現するための語を身につけな ければ,第二言語における意味のあるコミュニケーシ ョンが発生しない」*(4)と述べている。 今後,残され
た課題を含め,それぞれの語彙の意味的特徴をふまえ た上で, 体系的な語彙指導を考えていきたい。
例
【
3年】
インタビュー特有の表現
・ 始: Mark, thank you for this interview.
・ 終: Thank you for your time. I’ve enjoyed talking with you.
・情報“I understand rakugo is a traditional performing art in Japan.
Could you tell me more? ”(現在のこと), “Why did you begin to perform rakugo in English?”(過去の経緯), “How long have you been on this tour?”(最近の日程), “What ‘s next for you?”(今年の 抱負),
⇒ 様々な時制(現在、過去、現在完了)が使われていたり、様々な種類のWH 疑問文が用いられている。相手の回答には、 “I see.”, “That’s true.
I have never heard a Japanese joke. ”, “I’m impressed.”と感想を 述べたりしている。
図 4 「英ⅡのAn Interview Testの表現シート」
図 5 「英Ⅱの授業風景」ALTとの Interview Tests
(2)おわりに
「英語が使える日本人」の育成のために行動計画の 中に,「教員は,普段から主に英語で授業を展開しなが ら,生徒や学生が英語でコミュニケーションを行う場 面を多く競ってすることが重要である。まだまだ,中高 教員に対して,*(5)「授業の 70%は英語を使うこと」
という数値目標があるにもかかわらず,8.8%止まりと いう現実がある。
今回の語彙知識を得ることで,場面にあった会話が より早く口から出て,長い会話も可能になってきてい る現実は,文法説明以外は英語づけにしようという英 語活動は良好と考えられる。入学当初から「英語の授 業は英語で進めるもの」と思わせることが一番のポイ ントとなのだろう。「英語が使える日本人」は,ESD「持 続発展教育」において,世界人財を育てることに置換で きる。そこに尽力できる授業力を持った者でありたい。
参考文献
*(1) 投野由紀夫:東京外大
「アジア各国と日本の英語教科書比較」 資料3
*(2) Word Bingo 研究会 浜島書店
単語集付「Let’s Enjoy BINGO」
*(3) 三宮真智子 大阪大学
「メタ認知」北大路書房 2001年 pp152ー154
*(4) 松久保暁子 : 桜美林大学
「言語文化研究」創刊号2010年3月 p34
*(5) 菅 正隆: 大阪樟蔭女子大学
「日本人の英語力」pp44-45