外国にルーツを持つ障害児および家族への支援に関 する海外文献レビュー
著者 南野 奈津子
著者別名 MINAMINO Natsuko
雑誌名 東洋大学大学院紀要
巻 57
ページ 133‑155
発行年 2021‑03‑15
URL http://doi.org/10.34428/00012614
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
要旨
本稿の目的は、外国にルーツを持つ障害児に関する近年の文献レビューにより、日本の外 国人障害児の支援・研究への示唆を得ることである。2015年1月から2020年6月に発表された 文献を「children」「disabilities」「immigrant」で検索・抽出し、24文献を分析した。その 結果、移民の子どもが非移民より障害の出現率が高いとする研究では(1)栄養不良やスト レスなどの移住者ゆえの社会環境要因(2)生活の脆弱性などホスト社会での社会環境要因
(3)移民の文化に根ざす障害観、等が示された。移民の子どもは非移民の子どもより診断 率が低いとする研究では(1)医療・社会支援へのアクセス欠如(2)スティグマへの不 安、障害・診断の理解・情報不足(3)専門職側の診断の難しさ、等が要因として示され た。保護者は医療・社会的支援へのアクセスや利用、インフォーマルサポートネットワー ク、子どもの障害受容、に関するストレスや困難を抱えていた。支援では、言葉の壁や制度 理解の難しさ、母国に根ざす障害観やスティグマが保護者の支援利用や障害受容に影響する ことへの配慮が求められる。
キーワード : 特別支援教育 外国人児童 家族支援
1.問題の背景
近年、特別な支援を要する子どもの理解、そして共生社会の構築に向けた取り組みが、S DGsへの取り組みとも相まって促進されている。わが国でも外国にルーツを持つ子どもが 増加し、発達に課題を抱える子どもたちが地域で生活を営むなかで、彼らの成長、そして保 護者を支える取り組みは重要課題である。
本研究は、外国にルーツをもち、かつ特別な支援を要する子どものニーズと支援に焦点を あてる。背景として、発達課題を抱える子どもが増加しており、彼らのニーズに対応するた
外国にルーツを持つ障害児および家族への 支援に関する海外文献レビュー
ライフデザイン学部生活支援学科子ども支援学専攻
南野 奈津子
― 134 ―
めの知見の整理と共有が求められている。加えて、こうした子どもたちの中に、外国にルー ツを持つ子どもの姿があり、支援上の課題が存在するなかで、知見の整理や共有が必要とさ れている。
地域で暮らす外国人の子どもたちの生活課題に対する取り組みは、国内で十分に浸透して いるとはいいがたく、外国人集住地域と人口の少ない地域での差もみられる。また、様々な 障がいや医療ニーズ、発達に課題を抱える子どもへの支援もその歴史は長くはない。外国に ルーツをもち、かつ特別な支援を要する子どもや保護者に対する支援の研究や実践の今後の 発展が望まれる。
筆者は、外国人障害児をめぐる実情と諸課題について、外国人ゆえの言葉の壁や制度の理 解困難や保護者の就労状況等が子どもの健康診査受診や専門機関の利用を妨げている点、ヘ ルスケアや公的支援へのアクセスができないことで特別支援教育も十分に活用されていない ことは、特別な支援を要する外国人児童数の正確な把握にも影響を与える点、そして子ども の言葉の理解や学習、行動等の課題が外国人であるからなのか、発達課題に起因するものな のか診断が難しいことが、支援につながらない要因の一つになっている点を課題として指摘 した(南野 2018b)。移民や障害者をめぐる状況は、国内外の社会情勢や制度展開の影響 を受けながら変化していく。そのため、支援や研究の最近の動向の継続的な把握が必要であ る。
移民を多く受けいれてきた歴史を持つ諸外国では、外国にルーツをもつ障害児や家族につ いて一定の知見がある。これらの知見に学び、わが国での外国人障害児への支援実践や研究 に活かすことが有意義である。そこで本稿では、外国人障害児に関する近年の研究をレビュ ーすることにより、外国人障害児や保護者に関する知見をまとめ、それらより今後わが国で の外国人障害児の支援及び研究の示唆を得る。
なお、本稿では「外国にルーツを持つ障害児」として、外国籍の子ども、母国籍だが親が 移民や難民であるなど、外国にルーツをもつ児童、移民や難民の背景をもつ0歳から18歳未 満の児童とする。文献の文脈に応じ移民児・非移民児等の表記も用いる。障害児、の障害 は、身体障害、知的・発達障害、精神障害とする。また、海外文献としては英語で執筆され た文献とした。
2.先行研究のレビュー
本節では、外国にルーツを持つ児童に関する先行研究、そして外国人障害児に関する研究 を整理する。
1)外国にルーツを持つ児童に関する状況
外国にルーツを持つ児童の背景は多様化している。この多様化とは、国籍や国内の居住地 域の多様性、にとどまらず、同じ国籍の子どものなかにある多様性、そして来日時期、母国
や日本での生活年数により言語の獲得状況、家族との関係性や拠り所とする文化基盤は個々 に異なる、などの多様性を含む(南野 2018c)。
多文化子育て家庭をめぐる困難は,外国人全般に共通する背景に加え,子どもの発達段階 に応じて生じる親の悩みやストレス、ジェンダーの影響を受ける困難、そして多文化家族特 有の社会・経済的脆弱性が、複合的に重なりあっている(南野 2015)。母子保健領域では、
外国人の妊産婦や新生児の健康診査や予防接種の情報・支援が重要であり、保健師が継続的 に不安に寄り添うような支援が重要である(小尾・村松 2018)。教育では、法律の規定上、
外国人の子どもには就学義務がないこと、そして子どもたちが日本語で行われる授業や学校 になじめないこと、同国人の通う外国人学校に通学している場合、国の補助がほぼないこと で学費が払えずに不就学になるなど、複数の要因が子どもたちの不就学を生み出している
(小島 2019)。日本の学校に通う外国ルーツの子どもは「日本語理解力の不足により勉強に ついていけない」「保護者が日本の学校システムをあまり理解しておらず、連携が難しい」
などの悩みを抱える。そして福祉領域では、在日外国人家族の世帯所得は日本人に比較して 低く、生活保護の受給率が高いことが諸統計より明らかになっている。なかでも、外国人母 子世帯の貧困率は高くなっている。背景には、外国人が非正規雇用の比率が高いこと、そし て日本人母子よりも外国人母子のドメスティックバイオレンス被害者の比率が高いことなど が貧困リスクを高めている(南野 2017)。親の経済的な豊かさ・貧しさ、子どもを保護し 支援する家族の統合性、学校教育への参入と成功の難易という三つの次元からみて、外国人 または外国につながる子どもの剥奪が重層化している状況がある(宮島 2013 p17)。こ うした厳しい環境におかれる子どもたちへの支援では、医療、教育、通訳、NPO、日本語 教室、療育機関などが連携しながら子どもや家族がおかれた状況を理解し、支援することが 重要である(南野 2018c)。
2)外国人障害児に関する研究
現在、特別な支援を要する子どものうち外国人の子どもがどの程度含まれ、そしてどのよ うな障害を有しているのかについて、正確なデータはない。文部科学省の、特別支援学校に 在籍する外国人児童生徒数に関するデータ(2020)をみると、特別支援学校の小学部、中学 部、高等部に通学する生徒数は2012年には172人であったものが、2018年には329人と増加し ている。
― 136 ―
毎日新聞(2019年8月31日)は、外国籍児童は特別支援学級在籍率が高く、日本語ができ ず知的障害と判断される可能性があるとの記事を掲載している。これによると、調査は、文 科省(2017年)が「外国人集住都市会議」に参加する25市町を対象に実施し、特別支援学級 に在籍する、2016年5月時点の外国籍の子どもの数を集計したものに加え、毎日新聞が2019 年5月の状況について調べた8市を最新のデータに置き換えて、外国籍の子どもの在籍率が算 出されている。その結果、上記25市町の公立小中学校に通う外国籍の子どもの5.37%が特別 支援学級に在籍しており、全児童生徒のうち特別支援学級に在籍している割合(2.54%)の 2倍超となっていた。これについて、「専門家は『日本語理解が困難なため知能指数(IQ)
検査の結果が低く、知的障害などと判断された可能性がある』と指摘している」、との記載 もある。いくつかのメディアでも、同様の記事を掲載している。
児童発達支援センターの契約児童の調査では、外国にルーツを持つ子どもは全体の1.27%
だったとの結果(山岡ら 2019)もあり、実数を把握しようとした調査はいくつかみられる が、正確な数の把握は困難となっている。愛知県豊田市の調査報告書(2008)では、1歳6 か月児健診と3歳児健診では、外国人の未受診率が日本人の約3倍であったとしており、本 来利用対象になっている社会サービスへのアクセスが十分にできていない可能性が示唆され る。診断を受ける機会の格差が、障害の診断を受ける児童数を左右することを考えると、現 在確認できる調査結果が十分に実態を反映しているとは言えない可能性もある。
子どもや家族への支援について、国立障害者リハビリテーションセンター企画・情報部発 達障害情報・支援センターが平成30年に全国の発達障害者支援センターおよび発達障害者地 域支援マネジャー配置事業所に対し実施した調査では、コミュニケーションの問題があり、
「利用できる社会資源等に関する情報収集」や「説明用資料の多言語化」「通訳の確保」が課 題となっていることが明らかにされている。外国籍と発達障害の疑いという2つの困難を抱 える場合には、言葉の違いだけでなく文化や考え方の違いと発達障害から起因するもの、の 両方から理解する必要があり、繰り返し確認や問題を解くなど、こまめな添削やほめる言葉 がけが必要である(境・都築 2012)。児童発達支援センターでは、言語に関わる配慮や、
給食を提供している機関での食事に関する配慮が行われており、多言語での療育教育システ ムのパンフレットや地域療育システムの説明パンフレットの整備、文化理解のための他国の
外国籍 日本国籍
小学部 中学部 高等部 小計 小学部 中学部 高等部 小計 ①+②
2012 69 36 35 140 15 9 8 32 172
2014 101 30 46 177 22 15 12 49 226
2016 148 56 57 261 24 17 19 60 321
2018 141 66 70 277 24 11 17 52 329
図1 特別支援学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒:課程別(2018 年)
出典:文部科学省(2020)を参考に筆者作成
情報収集が今後の課題とされている(山岡ら 2019)。3~6歳児をもつ在日ブラジル人の母 親に対する質問紙調査では、子どもの発達に関する特徴に関するストレスは特別な保健医療 ニーズをもつ子どもの親のほうが、同ニーズをもたない親に比較して高い(元木ら 2016)
との研究結果もある。資料の多言語化や情報周知の工夫に加え、出産後の健康診査での相談 や小学校入学期での子どものアセスメントなど、ほとんどの母子が利用する公的支援の場を 活用することが重要であり(南野2018c)、必要な支援が届くために、機関間の連携が重要で ある(南野 2018b)。
外国にルーツをもつ障害児に関する研究は、以前に比較すれば蓄積されつつあるとはいえ、
特別支援教育の文献全体ではまだ少ない。移民の受け入れがより長い歴史をもつ諸外国の知 見を把握・検討することで、わが国での実践や研究に示唆を得ることができるであろう。
3.研究の目的・方法
1)目的
外国にルーツをもつ障害児に関する文献レビューにより、外国人障害児や保護者に関する 近年の知見を整理することで、わが国での外国人障害児の支援及び研究の示唆を得る。
2)方法
本研究の方法は、文献レビューである。文献の抽出では、検索エンジンにはPubMedを利 用した。PubMedは、米国国立医学図書館:NLM(National Library of Medicine)が作成 している医学・生物化学関連の無料の文献データベースで、1948年~現在までに約 5,400 誌
(80 カ国 37 言語、約1,940万件)の文献が検索可能である。収録数が多く無料であること、
教育、福祉、心理の論文も多く収録されており、海外文献を網羅している点から、PubMed を選択した。
キーワードは「children」「disabilities」「immigrant」を用いた。英語文献を対象として 検索を行い、表題及び抄録の内容を検討して絞り込みを行った。分析内容は、調査対象の子 ども・家族の属性、研究実施国、外国にルーツを持つ障害児や保護者に関する実情、課題、
提言に関する記述部分とした。2015年1月から2020年6月までに発表されたものとし、検索・
抽出は2020年7月に実施した。上記の条件での検索の結果、87文献がヒットした。その中か ら目的に合致する文献24文献を対象とした。
倫理的配慮として、日本社会福祉学会の研究倫理規程および研究倫理規程にもとづく研究 ガイドラインを踏まえたうえで、文献の誤訳等に注意を払い、使用した文献を明記するなど の配慮を行った。
4.結果
本節では、データの概要、文献内容(要約)を提示する。なお、表4では論文は障害の診
― 138 ―
断率に関する論文(11)、保護者の困難に関する論文(12)、その他(1)の順に掲載した が、実際には診断率、保護者の困難両方を記載しているものもある。
1)データの概要
データの概要を表1~表4に示す。各文献の知見を含む一覧は表5のとおりである。研究の 実施国としては米国、カナダの文献が多いが、対象を英語文献とした影響も加味する必要が ある(表1)。研究対象となった障害は、自閉症スペクトラム障害、知的・発達障害の子ども に関する研究が多かった(表2)。これらの研究は自閉症スペクトラム障害に限定したもの、
知的・発達障害、との記載だが自閉症スペクトラム障害も含むもの、に分かれた。「その他」
には、難民の子どもの精神障害に関する文献(1件)も含まれた。
データ収集の方法は保護者へのインタビュー調査が最も多く、母親のみを対象とした研 究、父親のみを対象とした研究、父親・母親両方を含めた研究それぞれがあった。専門職へ の調査は、医療・福祉・法律・運営管理者など複数の職業従事者が調査協力者に含まれた。
特定期間、地域での出生児童のデータ分析では、特定の障害における移民、非移民の診断 率/出現率(Prevalence)の差を明らかにしようとした研究、移民の第何世代かによって障 害の診断率が異なるのかを明らかにしようとした研究などが含まれた。親のストレス、対処、
サポートネットワークには、ソーシャルサポートネットワークを類型化したうえで実情を検 討した研究、交通機関利用など、物理的アクセスに焦点をあてた研究などがあり、いずれも 親へのインタビューデータの分析であった。
表1 調査実施国 表2 研究対象の障害
自閉症スペクトラム障害/知的・
発達障害の子ども 15
医療ニーズをもつ子ども 4 その他・特定の障害の記載なし 5
計 24
米国 8
カナダ 6
豪州 3
ノルウェー 1
トルコ 2
フランス 1
スウェーデン 1
非特定(欧州・非特定) 2
計 24
表1 調査実施国 表2 研究対象の障害
自閉症スペクトラム障害/知的・
発達障害の子ども 15
医療ニーズをもつ子ども 4 その他・特定の障害の記載なし 5
計 24
米国 8
カナダ 6
豪州 3
ノルウェー 1
トルコ 2
フランス 1
スウェーデン 1
非特定(欧州・非特定) 2
計 24
表1 調査実施国 表2 研究対象の障害
自閉症スペクトラム障害/知的・
発達障害の子ども 15
医療ニーズをもつ子ども 4 その他・特定の障害の記載なし 5
計 24
米国 8
カナダ 6
豪州 3
ノルウェー 1
トルコ 2
フランス 1
スウェーデン 1
非特定(欧州・非特定) 2
計 24
表1 調査実施国 表2 研究対象の障害
自閉症スペクトラム障害/知的・
発達障害の子ども 15
医療ニーズをもつ子ども 4 その他・特定の障害の記載なし 5
計 24
米国 8
カナダ 6
豪州 3
ノルウェー 1
トルコ 2
フランス 1
スウェーデン 1
非特定(欧州・非特定) 2
計 24
表3 データ収集の方法
保護者へのインタビュー(個別・グループ・電話) 8
専門職へのインタビュー調査 2
文献レビュー 3
特定期間・地域での出生児・在住児サンプル 7
その他(ケース記録、特に対象者がない、等) 4
計 24
表4 テーマ
移民属性と子どもの障害との関連(出現率・診断率/移民世代等) 11
親のストレス・対処・サポートネットワーク 12
その他(政策の論考) 1
計 24
表5 文献の概要 執筆者 調査目的 調査協力者の概要・
方法
研究実 施国
知見 Fairthorne
et al.
(2017)
移住者の母親 の在留の立場 と出身国と自 閉症スペクト ラム障害の確 率
1994年~2005年の移 民妊婦 134,204 人の うち 1,028 人の知的 障害を伴う自閉症ス ペクトラム障害、347 人の知的障害を伴わ ない自閉症スペクト ラム障害の母親のデ ータ分析
西オー ストラ リア
先住民の女性は白人系の女性・非移民の女性より知的障害を伴う自 閉症スペクトラム障害児の診断率が 50%低く、移民の女性は非移 民女性よりも知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害児の診断が 40%低かった。西アフリカ出身の女性では知的障害を伴う自閉症ス ペクトラム障害児の出現は非移民の白人系女性の 3.5 倍だった。ア ジア系の移民の女性は、知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害の 診断率は低かった。先住民女性の診断率の低さは、社会経済的な脆 弱さや診断アクセスの乏しさも推測され、西アフリカ出身者は生活 ストレス、栄養不良、ビタミン D 不足等が要因と推測できる。
Abdullahi . et al.
(2019)
エスニシティ や出生国毎の 自閉症の子ど もの診断の実 情の把握・検討
1999年~2017年に診 断を受けた4776人の 0 歳~18 歳の児童 4,776 名のデータ分 析
西オー ストラ リア
先行研究では妊娠期の移住、母子保健の支援欠如、社会経済的状況、
支援の少なさ、低所得の移民の母親の出産環境の厳しさ、親の心理 的ストレス、栄養不良状態が自閉症のリスクに寄与すると推測され ている。低所得の移民児はより低年齢で診断され、知的障害のリス クが高く、社会性やコミュニケーションスキルが低く、言語発達の 遅れが顕著傾向。マイノリティの子どもの診断が低年齢なのは、高 年齢児より行政の診断機会を得やすいからとも考えられる。検査ツ ールが英語であること、親の英語力の影響も大きいと思われる。低 所得の国からの移民の母親の子どものコミュニケーションや社会 性は、アセスメントや支援で配慮されるべきである。
Delobel- Ayoub et al.
(2015)
自閉症スペク トラム障害、知 的障害の診断 における社会 経済的状況に よる格差の把 握・検討
1995年~2004年出生 の 8 歳児の行政機関 データ(自閉症スペ クトラム障害 500 ケ ース、知的障害245ケ ース)の分析
フラン ス南西 部オー ト・ガ ロンヌ 県
EU の社会的剥奪指標に基づく分析の結果、知的障害を伴う自閉症 スペクトラム障害は無就業、学位のない者、ひとり親家庭と移民と 関連があり、知的障害を伴わない自閉症スペクトラム障害は移民に おいて最も高い出現であった。移民の場合、背景や立場が複雑ゆえ に結果が矛盾するのは珍しくない。研究では移民における自閉症ス ペクトラム障害の出現率が高いとするもの、低いとするもの両方あ る。エスニシティの要因というよりも、移住がもたらすストレスが 自閉症スペクトラム障害の出現と関係しており、出産前後の移住は リスクを高めるとの知見もある。
Kawa et al.
(2017)
自閉症スペク トラム障害の 移民における 状況の検討
2016 年 5 月までイン 発表された17文献の レビュー
欧州 7 か国
17 文献中 15 文献で、移民の自閉症スペクトラム障害の出現率は非 移民児よりも高いとしていた。1 文献は自閉症スペクトラム障害の 出現は母国民より高いが、アスペルガー症候群は母国民より低いと していた。多くは西アフリカなど欧州以外からの移民が対象の研究 だった。生物学的要因とする研究もあるが、実証研究は十分ではな く、肌の濃い色の移民はビタミン D 欠乏症が多いとの知見、妊娠期 のストレス要因説もある。移民の方が低いとの研究では、医師が社 会文化的要因を考慮して判断しかねること、親が障害と認識せず、
支援も必要と認識しない、との知見もある。背景にはスティグマへ の不安、社会経済的要因、家族の前世や子育てが原因と見なされる、
等もあり、誤診断も文化的要因で起きやすい。出身国との相関、人 口レベルでの研究等が今後求められる。
Magnusson et al.
(2016)
妊娠期のビタ ミンD不足と 自閉症スペク トラム障害リ スクの検討
509,639 人のデータ 分析
スウェ ーデン
知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害との優位差があった。有意 差は、特に非移民においては知的障害を伴う、伴わない両方で顕著 であった。移民研究ではD欠乏症と自閉症スペクトラム障害との関 連は強いという結果もあり、今後も要検討。
Seyhan ÇELİKKIRAN et al.
(2015)
デンバー式発 達検査Ⅱの結 果と 0~4 歳の 子どもの社会 属性との関連 の検討
心理社会サポートセ ンターを利用した 0
~4 歳児 1,000 名の 面接データ(2005~
2010 年出生)の分析 ト ル コ・イ スタン ブール
移民であることは、デンバー式発達検査Ⅱの結果において重要な有 意差はなかった。これは、移民であることは影響を持ち得るとする 先行研究とは異なる結果であった。
― 140 ― 表5 文献の概要
執筆者 調査目的 調査協力者の概要・
方法
研究実 施国
知見 Fairthorne
et al.
(2017)
移住者の母親 の在留の立場 と出身国と自 閉症スペクト ラム障害の確 率
1994年~2005年の移 民妊婦 134,204 人の うち 1,028 人の知的 障害を伴う自閉症ス ペクトラム障害、347 人の知的障害を伴わ ない自閉症スペクト ラム障害の母親のデ ータ分析
西オー ストラ リア
先住民の女性は白人系の女性・非移民の女性より知的障害を伴う自 閉症スペクトラム障害児の診断率が 50%低く、移民の女性は非移 民女性よりも知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害児の診断が 40%低かった。西アフリカ出身の女性では知的障害を伴う自閉症ス ペクトラム障害児の出現は非移民の白人系女性の 3.5 倍だった。ア ジア系の移民の女性は、知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害の 診断率は低かった。先住民女性の診断率の低さは、社会経済的な脆 弱さや診断アクセスの乏しさも推測され、西アフリカ出身者は生活 ストレス、栄養不良、ビタミン D 不足等が要因と推測できる。
Abdullahi . et al.
(2019)
エスニシティ や出生国毎の 自閉症の子ど もの診断の実 情の把握・検討
1999年~2017年に診 断を受けた4776人の 0 歳~18 歳の児童 4,776 名のデータ分 析
西オー ストラ リア
先行研究では妊娠期の移住、母子保健の支援欠如、社会経済的状況、
支援の少なさ、低所得の移民の母親の出産環境の厳しさ、親の心理 的ストレス、栄養不良状態が自閉症のリスクに寄与すると推測され ている。低所得の移民児はより低年齢で診断され、知的障害のリス クが高く、社会性やコミュニケーションスキルが低く、言語発達の 遅れが顕著傾向。マイノリティの子どもの診断が低年齢なのは、高 年齢児より行政の診断機会を得やすいからとも考えられる。検査ツ ールが英語であること、親の英語力の影響も大きいと思われる。低 所得の国からの移民の母親の子どものコミュニケーションや社会 性は、アセスメントや支援で配慮されるべきである。
Delobel- Ayoub et al.
(2015)
自閉症スペク トラム障害、知 的障害の診断 における社会 経済的状況に よる格差の把 握・検討
1995年~2004年出生 の 8 歳児の行政機関 データ(自閉症スペ クトラム障害 500 ケ ース、知的障害245ケ ース)の分析
フラン ス南西 部オー ト・ガ ロンヌ 県
EU の社会的剥奪指標に基づく分析の結果、知的障害を伴う自閉症 スペクトラム障害は無就業、学位のない者、ひとり親家庭と移民と 関連があり、知的障害を伴わない自閉症スペクトラム障害は移民に おいて最も高い出現であった。移民の場合、背景や立場が複雑ゆえ に結果が矛盾するのは珍しくない。研究では移民における自閉症ス ペクトラム障害の出現率が高いとするもの、低いとするもの両方あ る。エスニシティの要因というよりも、移住がもたらすストレスが 自閉症スペクトラム障害の出現と関係しており、出産前後の移住は リスクを高めるとの知見もある。
Kawa et al.
(2017)
自閉症スペク トラム障害の 移民における 状況の検討
2016 年 5 月までイン 発表された17文献の レビュー
欧州 7 か国
17 文献中 15 文献で、移民の自閉症スペクトラム障害の出現率は非 移民児よりも高いとしていた。1 文献は自閉症スペクトラム障害の 出現は母国民より高いが、アスペルガー症候群は母国民より低いと していた。多くは西アフリカなど欧州以外からの移民が対象の研究 だった。生物学的要因とする研究もあるが、実証研究は十分ではな く、肌の濃い色の移民はビタミン D 欠乏症が多いとの知見、妊娠期 のストレス要因説もある。移民の方が低いとの研究では、医師が社 会文化的要因を考慮して判断しかねること、親が障害と認識せず、
支援も必要と認識しない、との知見もある。背景にはスティグマへ の不安、社会経済的要因、家族の前世や子育てが原因と見なされる、
等もあり、誤診断も文化的要因で起きやすい。出身国との相関、人 口レベルでの研究等が今後求められる。
Magnusson et al.
(2016)
妊娠期のビタ ミンD不足と 自閉症スペク トラム障害リ スクの検討
509,639 人のデータ 分析
スウェ ーデン
知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害との優位差があった。有意 差は、特に非移民においては知的障害を伴う、伴わない両方で顕著 であった。移民研究ではD欠乏症と自閉症スペクトラム障害との関 連は強いという結果もあり、今後も要検討。
Seyhan ÇELİKKIRAN et al.
(2015)
デンバー式発 達検査Ⅱの結 果と 0~4 歳の 子どもの社会 属性との関連 の検討
心理社会サポートセ ンターを利用した 0
~4 歳児 1,000 名の 面接データ(2005~
2010 年出生)の分析 ト ル コ・イ スタン ブール
移民であることは、デンバー式発達検査Ⅱの結果において重要な有 意差はなかった。これは、移民であることは影響を持ち得るとする 先行研究とは異なる結果であった。
Phylicia et al.
(2018)
未熟児状態で 生まれた新生 児の発達上の 課題と移民の 世代との関連 の分析
2011年~2012年の電 話調査により収集さ れた、未熟児で、親の 少なくともいずれか が移民の子どもの健 康に関するデータ 8871 ケースの分析
米国 米国では、移民は非移民より良い健康状態にあるという「移民のパ ラドックス」が存在する。移民の第何世代目か、と子どもの発達課 題について分析した結果、第 1 世代、第 2 世代の移民の子どもは第 3 世代の移民の子どもよりも発達上の問題を抱えていない。第 1 世 代、第 2 世代は発達の遅れ、脳性麻痺、てんかん、聴覚障害の兆候 は少なかった。移民は非移民よりヘルスケアの利用が少ない傾向も あることから、背景に診断へのアクセスの格差があるのではない か。
Clara &
Semere (2019)
特別なヘルス ケアニーズを 持つ子どもの スクリーニン グにおける移 民家族の実情 の検討
2011年~2012年の電 話調査により収集さ れた、0 歳~17 歳の 子ども90,417ケース の分析(うち約 18%
が移民家族)
米国 第 1、第 2 世代よりも第 3 世代のほうがスクリーニング検査で特別 支援が必要であるという項目に該当する率が高い。スペイン語圏の ラテン系移民は、子どもの出生時の情報提供に消極的な傾向がある ことも影響を与えているのではないか。親の、子どもの特別支援の 必要性についての認識の違いもその背景にあるのではないか。
Yalın et al.(2017)
移住に伴うス トレス関連障 害の検討
5 歳から 18 歳までの 89 人の子どもとその 保護者の面接データ の分析
トルコ シリア、イラク、アフガニスタンからの 89 人の子どものうち 4 人 に ADHD,3 人に知的障害があった。ADHD は、情緒面の課題を抱える 子どもに有意に高い。障害の背景には、難民のとしてのストレスや 親の学歴、就労状況が影響を与えていると示唆される。
Krista et al.(2018)
新生児集中治 療室における 格差の把握
看護師、医師などか ら寄せられた 324 報 告の分析
米国 過去の研究ではマイノリティの乳児はより質の低い NICU を利用し ており、黒人系の住民が多い地域では低出生体重児の出現比率が高 く、言葉の壁によりマイノリティは十分なケアを受けることができ ない状況にある。
Bhayana
& Bhayana (2018)
難民、難民以 外 の 移 住 者 へ の 障 害 に 関 す る 支 援 の 枠 組 み の 検討
Ovid Medical の英 語文献(2005~
2017 年 2 月)を [developmental disabilities][de velopmental delay]
[refugee]
[immigrant]で抽 出、分析
かかりつけ医では、診断やスクリーニング検査を受けてい ない家族の支援は困難を伴う。家族の混乱や健康の維持力、
トラウマティックな状況の目撃、文化的な要因が発達の遅 れに関する相談を妨げる。状況を見守りつつ、文化に配慮し たスクリーニング検査を行うことが、早期の相談支援につ ながる。難民の場合、母国、移住先国での不利な状況の経験 があるため、介入することは子ども発達の保障や支援にお いて重要である。
Kim &
Dababnah (2019)
子育て困難の 要因、サポート 源、発達への認 識、個人として の変容;の検討
韓国人移民で知的・
発達障害児を養育す る保護者 20 名(父親 5 名、母親 15 名)の 半構造化面接・分析
米国 韓国人コミュニティの障害への偏見は米国移住の理由にもなって いる。移住期間が長いほど移住先国の社会資源を活用しており、教 会から多くの支援を得ている一方で、偏見に基づく対応も経験す る。子どもの障害が重いとストレスが高い傾向があり、クリスチャ ンではなかったが神の意志であると捉えていくようになった家族 もいる。
Chang et al.(2018)
知的・発達障害 の子どもを育 てる中国人移 民の母親の文 化的信念、スト レス、ソーシャ ルサポートの 把握
知的・発達障害児を 養育する中国人の母 親15名への半構造化 面接・分析
カナダ ストレスは「子どもを隠したいという心理」「面目を失うという心 理」「夫家族からの非難の経験」「言語理解力の欠如」「社会的支援 の知識の不足」「大量の書類作成」「支援機関が点在しており交通ア クセスがストレス&母親の疲弊等」「経済的不安と就労困難」「長い 待ち時間」「心理的苦痛や差別」などで、ソーシャルサポートは「政 府からの経済的支援」「地域のかかりつけ医」「教会、学校、保育所、
家族、友人からの情緒的サポート」等。スティグマの軽減、親に社 会的支援をつなぎ、親のネットワークを促進し、ストレスコーピン グへの支援が求められるのではないか。
Khanlou et al.
(2015a)
支援者からと らえた移民の 障害児の母親 の、ソーシャル サポートへの アクセス困難 の把握・検討
支援関係職(福祉職・
管理職・法律関係等)
27 名へのインタビュ ー調査・分析
カ ナ ダ・ト ロント
オーストラリア、UK での研究では、自閉症の診断率の高さと移民で あることは相関関係にある。移民の親にとって障害児の養育はさら なる試練になる。「情報アクセスが困難で、言語やコミュニケーシ ョンの壁がある」「カナダの支援システムの複雑さへの対応困難」
「書類の多さ、サービスの点在」「移民は支援について質問せず感 謝の意を示すのでニーズが見えにくい」「支援者の知識不足」「母親 が全てケアを担うが意思決定は父親、という文化もあり、子どもの ニーズに合った支援につながっていない」等の課題が示された。言 葉の壁への対処が促進される必要がある。
Rivard et al.
(2019)
子どもが自閉 症と診断され た移民の家族 の困難と受け 入れ促進要素 の把握・検討
移民第 1 世代のの保 護者 34 名(父親 13 名、母親 21 名)への 半構造化面接
カ ナ ダ・ケ ベック
困難は「診断まで待ち期間の長さ」「診断までの流れについての情 報不足」「システムのわかりにくさ」「公的支援の利用困難と、民間 支援の費用の高さ」。家族として「社会的孤立感」「診断への拒否感 情」「スティグマへの不安」「専門家の知識不足・情報欠如」など。
障害受容促進要素は、「自身から働きかけるアドボカシー」「親の専 門知識」「子育てのための移住」「専門家の専門性の高さ」「支援職 の支援的態度」「情報」「経済的支援」「親のサポートネットワーク」
「親の障害への理解の深まり」など。文化に根ざす不安として「自 閉症スペクトラム障害を精神遅滞とみる見方やスティグマ、母国の 情報欠如による自閉症スペクトラム障害への恐れや不安」があっ た。同様の境遇の親へのアドバイスは「情報収集、働きかける、質 問を多くする、積極的に支援を得ること」が示された。
Khanlou et al.
(2017)
自閉症の子ど もをもつ母親 のサービスへ のアクセスの 壁についての 検討
移民の母親21名への 電話によるインタビ ュー調査・分析
カ ナ ダ・ト ロント
米国の研究では、自閉症の診断年齢は移民背景をもつ場合は 88~
89 か月で、カナダでは地域にもよるが 39~55 か月、との事を考え ても診断や支援提供も遅れている。調査では、夫や親族、移住先の 友人からの心理的サポートのなさ、診断の遅れ(親が気にしても専 門家が「様子を見る」と返答)、支援情報への誘導のなさ(専門用 語の理解困難等の言葉の壁)、ヘルスサービス、社会・教育関連支 援の散在、官僚的書類の作成、必要時に支援(言語療法など)を利 用できない、通訳の障害への理解不足、カウンセリング費用の高さ、
就労継続の困難等が示された。支援のなじみのなさ、言葉の壁、提 供システムの複雑さ、支援利用率の低さは既に指摘されており、母 親が支援利用の権利について理解が乏しいことも課題である。移住 年数の短いニューカマーにとって障害児の養育はさらに困難だと 思われる。
Nageswaran et al.
(2018)
複雑な医療ニ ーズを持つラ テン系移民の 養育者の交通 (移動)をめぐ る困難の把握
70 名の小児病院利用 児のケアコーディネ ーターの記録(18 か 月分)データをテー マごとに検討
米国 ラテン系移民は交通手段がないゆえに医療アクセスが難しい。「親 の片方のみ免許または車を保持」「障害児向けの車の確保・改造が 困難」「ガソリン代がない」「NEMT 利用で、関連書類が読めない」「利 用対象になるための調査紙記入が困難」「当該児の兄弟は乗車でき ないので兄弟の保育確保が必要」「運転会社に 1 週間前に診察情報 を伝える必要がある」「交通確保ができずに数回病院のアポに行け なかったためネグレクトで通報された」「非正規滞在だと運転免許 を取得できない」などが示された。12 州は非正規移民に免許を付与 している。医師や NEMT 提供者をつなぐ人材、コミュニティサポー トネットワークの拡充、制度改善のアドボカシーが重要。
Khanlou et al.
(2015b)
発達障害をも つ子どもを育 て移民の父親 のストレスや 困難に関する 支援
PsychINFO, PubMed, CINAHL and Sociological Abstracts の4つの データベースから 39 文 献 、 Google scholar から 20 文献 を抽出し、検討
カナダ 情報取得、仕事と子どもへの関与のバランス、子どもの障害理解に 関するストレス等、より現実的な課題へのストレスが多い。支援専 門職が父親に対し肯定的な見方が薄いこと、他者の障害児に対する 見方やスティグマのストレスもあり、これらは満足感の低下につな がっていた。経済的な不安や夫婦間の愛情の問題、ひとり親家庭、
低所得であることは発達課題を抱える子どもと関連がある。非正規 滞在の場合、医療的ケアへのアクセスが減る。文化の違いにより疎 外感を強く持つ。英語が母語でない場合、通訳を使っても子どもの 障害の情報獲得はストレスを伴う。女性の社会参加の向上は男性に もストレスとなる。移住後の期間が短い親にとっては発達障害児の 養育はストレスが高くなる。就労の改善、アクセスの改善、文化へ の配慮あるヘルスケアの増進、父親のジェンダー観の理解、父親対 象のサポートプログラム構築などが重要である。
Shahrzad et al.
(2020)
ノルウェーの 移民の保護者 の支援利用を めぐる経験の 把握・検討
リハビリテーション センターを利用した 14 か国出身の移民の 障害児の保護者(父 親 6 名、母親 17 名)
への半構造化面接・
分析
ノルウ ェー
支援への肯定感、感謝として、小児科からのフォローアップや専門 職の温かい態度、母国での障害児の扱いと比較が感謝につながって いた。コミュニケーションでは、特に移住 1 年目に困難を経験して おり、通訳を挟むストレス、会話の際の態度が影響を与えた。医学 用語の理解困難があり、情報だけでなく支援の利用方法、必要な書 類作成の支援等も必要としていた。。制度知識、自身の権利や利用 可能な支援の理解は孤立を防ぎインクルージョンを進めるために も重要。支援者が親の不安や支援の利用に対し大げさな反応とみて いるかのような経験をした。支援への肯定感は、支援を受けること を自身の権利として認識していないことも寄与したのではないか。
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2)外国にルーツを持つことが障害の早期発見・対応に与える影響
移民背景をもつ子どもが非移民の子どもに比較して障害の診断や支援利用ではどのような 状況にあるのか、についての研究では、障害の診断と診断率、サービス利用上の格差、につ いての知見として、障害の出現率に言及した10 文献のうち、外国にルーツをもつ子どもで あることが、障害の出現のリスクの高さに関連している、との文献が10文献中7文献 (Fairthorne et al. 2017 ; Abdullahi et al. 2019 ; Delobel-Ayoub et al. 2015 ; Kawa et al. 2017 ; Magnusson et al. 2016 ; Khanlou et al. 2015a ; Khanlou et al. 2017)で あ っ た。 非 移 民 児 の ほ う が 障 害 の 診 断 率 が 高 い と す る 知 見 を 示 し た 文 献 は 3 文 献
(Fairthorne et al. 2017 ; Seyhan et al. 2015 ; Phylicia et al. 2018) で あ っ た。
Fairthorne et al. (2017)は、先住民、移民それぞれで異なる知見を提示しており、先住民及 び移民の女性は子どもの自閉症スペクトラム障害の出現率は非移民よりも低いが、西アフリ
Natarajan et al.
(2016)
インド系移民 の障害児の子 育ての実情の 把握・検討
知的・発達障害児を 養育するインド系移 民の保護者(父親 8 名、母親 7 名)への インタビュー調査・
分析
米国 参加者の多くがヒンドゥ教で、親族の多くが障害は前世の呪いと認 識している。親族は当初は拒否的で、説明の継続により徐々に理解 を得た。子どものために移住により、母国にはない支援を得たこと への喜びと障害受容への葛藤がある。一方でヒンドゥの言葉が障害 受容につながっていた。インド人との関係の断絶があり、米国でも 障害や病気があるとインド人の友人から支援は受けられない。イン ド人の生活様式を習得してほしいとの思いもある。
Leea &
Parkb (2019)
障害児の親と しての認識、特 別支援教育の 複雑さに関わ る困難と専門 職との関わり をめぐる困難 の把握
韓国人の母親 7 名に 対する半構造化面 接・分析
米国 サポートグループ、親と専門職との関係、文化規範が支援を求める 力となっていた。英語の壁、米国の特別支援教育の知識不足、特別 支援教育の利用手続きの複雑さが試練となった。子どもの支援利用 過程では父親からの支援は重要だった。米国のシステムに詳しくな く英語の壁がある女性にとって専門職は重要で、子どもに対し親身 で誠実に関わり、文化に配慮した誠実でオープンマインドな専門職 の態度が重要である。母親は積極的に学び、関わろうとすることで 前向きになった。子どもの学業等での成果を出すために親が献身的 に動く文化は障害児においても共通するといえる。様々なサポート ネットワークを得ることで子どもの力強い代弁者となりえる。
Brassart et al.
(2017)
障害児を養育 する保護者の 支援への参画 を促進する要 因に関する戦 略の把握・検討
リハビリテーション センターに勤務する 専門職21名に対する 半構造化面接・分析
カ ナ ダ・ケ ベック
①言葉の壁の克服では、簡単な言葉の使用、ゆっくり話す、何度も 繰り返す、説明で絵や写真を使用、電話よりメール、紙に書いて持 ち帰ってもらう、ノートにまとめる、通訳利用、を実践。子どもの 障害に関する共有では、母国で違う診断を受けていることも多い、
多くの保護者が障害の原因や内容を正確に理解しておらず、子ども の潜在能力を低く見ている。親の障害観の理解・尊重、子どもの障 害の明確な説明、を実践。。援助プロセスの理解への支援では、専 門職の役割を理解せず、プレイセラピーでも遊んでいるだけである ような理解をしていることもある。療育の意味を説明する。日々の ストレスも治療への参画を妨げる。パートナーシップをもち、初回 セッションで十分な対話をすることが有意義で、親の参加へ消極的 態度の尊重、セッションへの参加促進、歓迎が重要。
Garg et al.
(2017)
文化・言語的に 多様な保護者 のヘルスケア へのアクセス の把握・検討
6 グループ(33 名)
のグループフォーカ スインタビュー(33 人)と 7 人のインタ ビュー調査・分析
オース トラリ ア・シ ドニー
多くの保護者は子どもの発達には強い関心を持ち日々の子どもの 様子を見ている。移住先国のシステムがわからないこともあり、親 族、友人、インターネットなど幅広い対象から子どもの発達に関す る情報を得ている。かかりつけ医を、子どもの発達について相談を する場所と捉えている。
Zallman.
et al.
(2019)
移民の社会手 当からの疎外 が医療的ニー ズをもつ子ど もに与える影 響の考察
2015 Medical Expenditure Panel Surveyに参加した17 歳 以 下 の 子 ど も 4,007 名のデータ分 析
米国 トランプ政権による 2018 年の移民への厳しい政策は、医療ニーズ を持つ子どものセイフティネットからの阻害や支援を受けられな い状況を生む。
カ出身の移民女性は、知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害児の出現は非移民の白人系女 性の3.5倍だったとしている。そのほか、Kawa et al. (2017)による文献レビューでも、1文献 が自閉症スペクトラム障害の出現は母国民よりも高いが、アスペルガー症候群は母国民より も低いとしていた。
移住者が移住の第何世代か、という点と障害の診断率との関連を検討した研究は、第3世 代の移民の子どものほうが第1世代、第2世代の子どもよりも特別支援を要するとの診断率が 高かったとしている(Phylicia et al. 2018 ; Clara et al. 2019)。これらの文献はヘルス ケアへのアクセスや文化的要因が与える影響を考察しており、社会統合の度合いが背景にあ ることを示唆している。
こうした、移民と非移民との間で障害の診断率が異なる要因について、生物学的要因とす る研究もあるが、実証研究は十分ではない(Kawa et al. 2017)。移民の子どものほうが診 断率が高い、とする文献は、要因の一つとして移住にかかわるストレスを指摘している
(Fairthorne et al. 2017)。妊娠期の移住、母子保健の支援の欠如、社会経済的状況、支援 の少なさ、低所得の移民の母親の出産環境の厳しさ、親の心理的ストレス、栄養不良状態が 自閉症のリスクに関連すると推測できる(Abdullahi et al. 2019)。Abdullahiらは、低所得 の移民の母親の出生児は、より低年齢で診断され、知的障害のリスクが高く、社会性やコミ ュニケーションスキル力が低く、言語発達の遅れがより顕著傾向である、として、背景には 当事者がおかれている社会経済的な環境の影響があると考察している。そのほか、妊娠期の ストレスはリスク要因であり(Kawa et al. 2017)、妊娠期や出産前後に移住が行われるこ とは、障害の出現においてリスクを伴うとの考察も示された(Delobel-Ayoub et al. 2015)。
他の要因として示されたのが、栄養不良やビタミンDの欠乏であった(Fairthorne et al.
2017)。より肌の濃い色の移民ではビタミンD欠乏症が多いとの知見もあり、(Kawa et al. 2017)、西アフリカ地域の出身者は生活ストレス、栄養不良、ビタミンD不足等が要因と 推測できる(Fairthorne et al. 2017)とする研究もあった。Magnusson et al. (2016)の研究 でも、ビタミンDの欠乏について言及されていた。これらは欧州での研究であり、欧州では 移民・難民として西アフリカ地域の出身者も多いことから、これらの研究ではその状況が反 映されていると思われる。
障害の出現や診断が非移民よりも少ない、とする文献では、医療サービスへのアクセスが 十分にできない状況が診断を受ける機会を遅らせる、との考察があった(Phylicia et al.
2018)。過去の研究ではマイノリティの乳児はより質の低いNICUを利用しており、黒人系の 住民が多い地域では低出生体重児の出現する比率が高く、言葉の壁によりマイノリティは十 分なケアを受けることができない状況にある、との知見をKristaら(2018)は紹介している。
ホスト社会での支援へのアクセスの格差が、障害や医療ニーズをもつ子どもの診断や支援に 影響を与えているとの考察も示された。Abdullahiら(2019)は、低所得の国からの移民の母親
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の子どもはコミュニケーションや社会性の課題があることが、アセスメントや支援で配慮さ れるべきであると述べている。
また、医師が子どもの状況を社会文化的要因によるものではないかと考えて診断しかねる ことも要因ではないか、との考察、そして親が子どもの状況について障害と認識せず、支援 の必要性も認識しない、との考察も示された(Kawa et al. 2017)。移住者が支援を活用し ない背景にはスティグマへの不安、社会経済的要因、家族の前世や子育てに起因すると見な されるなどの文化的要因もあり、誤診断も文化的要因で起きやすい(Kawa et al. 2017)。
要約すると、医療へのアクセスが十分にできていないこと、親の障害認識、支援提供者側が 移住者ゆえの要因か障害か、という点で診断を迷う、そして当事者のスティグマや差別への 不安などの文化的な背景、があるといえる。
移民の背景の複雑さ、多様さを考えても診断における知見は矛盾したものは存在し得る
(Abdullahi et al. 2019)。いずれの研究でも、移住者と非移住者との間にある障害児の出現 率の格差は、生物学的な要因やエスニシティに基づく要因というよりは、移民・難民ゆえの ストレスや移動が生み出すストレス、生活ストレス、ビタミンDの欠乏も含む栄養不良、移 民としての生活基盤の脆弱さ、などの様々な物理的、心理的、社会的ストレスがあり、これ らが子どもの育ち、社会性の発達、コミュニケーション力の発達に影響を与えているのでは ないか、との考察が示されていることがわかる。これらのほか、ホスト社会の言語である英 語での検査ツール、親の英語力の影響も大きいとの指摘がある(Abdullahi et al. 2019)な ど、言語環境の要因も指摘された。文化的要因は子どもの社会性・言葉にも影響を与えるた め、これらの影響を踏まえるべき(Fairthorne et al. 2017)であり、診断率の格差は、移住 者の母国での環境や文化、そしてホスト社会での医療へのアクセス、診断ツールの言語、移 住のストレスなど、多様な要因があると指摘された。難民の子どもに関する研究(Yalın et al. 2017)では、紛争での家族の混乱、トラウマティックな経験が発達の遅れに関する相談 を妨げるとの言及もあり、社会情勢も移民の障害診断に影響を与えうることが示された。
Yalınら(2017)は、文化に配慮したスクリーニング検査を行うことは早期の相談支援につな がるものであり、難民の場合、母国、ホスト社会での不利な状況の経験があるため、介入す ることは子どもの発達保障や支援では非常に重要であると述べている。
3)保護者のストレス・困難と対処
外国にルーツをもつ障害児の保護者のストレスや困難として、公的支援へのアクセスや利 用に関する困難、家族や友人などのインフォーマルなサポートネットワークに関連する困 難、子どもの障害受容に関連するストレスや困難、そしてジェンダーや文化に関連するスト レスなどが示された。
まず、公的支援に関するストレスとして、支援情報を入手できないことがあり、背景には 言葉の壁が大きいことが指摘された(Chang et al. 2018 ; Khanlou et al. 2015a)。使用