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大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

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Academic year: 2021

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(1)

合同研究班参加学会

日本循環器学会  日本心臓血管外科学会  日本胸部外科学会  日本血管外科学会 日本医学放射線学会  日本心臓病学会  日本脈管学会

班員

大木 隆生

東京慈恵会医科大学 血管外科

加地 修一郎

神戸市立医療センター中央市民病院 循環器内科

植田 初江

国立循環器病研究センター 病理部

圷 宏一

日本医科大学付属病院 循環器内科

齋木 佳克

東北大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学分野

椎谷 紀彦

浜松医科大学 第一外科

古森 公浩

名古屋大学大学院医学系研究科 血管外科

加藤 雅明

森之宮病院 心臓血管外科

千葉 義郎

水戸済生会総合病院 循環器内科

森崎 裕子

榊原記念病院 臨床遺伝科

林 宏光

日本医科大学 放射線医学

志水 秀行

慶應義塾大学医学部 心臓血管外科

湊谷 謙司

京都大学医学部附属病院 心臓血管外科

重松 邦広

国際医療福祉大学三田病院 血管外科

松田 均

国立循環器病研究センター 心臓血管外科(血管外科)

荻野 均

東京医科大学 心臓血管外科学分野

班長

副班長 飯田 修

関西労災病院 循環器内科

日本循環器学会/日本心臓血管外科学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会合同ガイドライン

2020

年改訂版

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

JCS/JSCVS/JATS/JSVS 2020 Guideline on Diagnosis and Treatment of Aortic Aneurysm and  Aortic Dissection

(2)

外部評価委員

(五十音順,構成員の所属は20203月現在)

小野 稔

東京大学大学院医学系研究科 心臓外科

木村 剛

京都大学大学院医学研究科 循環器内科学

大北 裕

神戸大学大学院医学系研究科 心臓血管外科分野

上田 裕一

奈良県総合医療センター

宮田 哲郎

山王メディカルセンター 血管病センター

目次

改訂にあたって 10

1 推奨クラス分類 11

2 エビデンスレベル 11

1 定義,病態,疫学 13

1. 大動脈瘤の定義,病態,分類 ‥‥‥‥‥‥ 13

1.1 定義 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 131 紡錘状大動脈瘤 13 当麻 正直

兵庫県立尼崎総合医療センター 循環器内科

南都 清範

関西労災病院 循環器内科

築部 卓郎

神戸赤十字病院 心臓血管外科

田崎 淳一

京都大学大学院医学研究科 循環器内科学

松本 拓也

国際医療福祉大学 血管外科学

宮本 伸二

大分大学医学部附属病院 心臓血管外科

樋上 裕起

大津赤十字病院 循環器科

西部 俊哉

東京医科大学 心臓血管外科分野

山内 治雄

東京大学医学部附属病院 心臓外科

山中 一朗

奈良県総合医療センター 心臓血管センター

師田 哲郎

日本医科大学付属病院 心臓血管外科

森崎 隆幸

東京大学医科学研究所附属病院 総合診療科

吉岡 邦浩

岩手医科大学 放射線医学

協力員

岩橋 徹

東京医科大学 心臓血管外科分野

上田 達夫

日本医科大学 放射線医学

市橋 成夫

奈良県立医科大学附属病院 放射線科

東 信良

旭川医科大学 血管外科学分野

岡田 健次

神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科学分野

渡橋 和政

高知大学医学部 外科学(外科二)講座

内田 敬二

横浜市立大学附属市民総合医療センター 心臓血管センター

碓氷 章彦

名古屋大学大学院医学系研究科 心臓外科学

川原田 修義

札幌医科大学 心臓血管外科

木下 順久

豊橋ハートセンター 循環器科

神谷 健太郎

東京医科大学 心臓血管外科分野

勝間田 敬弘

大阪医科大学 胸部外科学教室

(3)

2 嚢状大動脈瘤 13

3 真性大動脈瘤 14

4 仮性大動脈瘤 14

1.2 病態 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14

1.3 分類 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 143 大動脈瘤の分類 155 胸腹部大動脈瘤の人工血管置換範囲による

Crawford分類

15 2. 大動脈解離の定義,病態,分類 ‥‥‥‥‥ 16

2.1 定義 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 164 IMH (壁内血腫)の概念と表記 17 2.2 病態 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 176 大動脈解離の病態 17 2.3 分類 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 175 大動脈解離の分類 187 偽腔の状態による大動脈解離の分類 19 3. 疫学 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 19

3.1 年間発症率 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 196 地域における急性大動脈解離の発症率調査 198 本邦の非解離性胸部大動脈瘤,大動脈解離の手術

件数の年次推移

209 本邦の非解離性腹部大動脈瘤の手術件数の年次

推移 21

3.2 年齢による発症数の変化 ‥‥‥‥‥‥ 1910 本邦の非解離性大動脈瘤と大動脈解離の剖検数の 年齢分布

21 3.3 季節,時間,曜日による発症数の変化‥ 19

3.4 突然死例にみる大動脈解離 ‥‥‥‥‥ 19 4. 用語 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 20 4.1 大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 20 4.2 大動脈解離 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 21

PQ 1:嚢状瘤は早期手術の対象とすべきか‥ 2211 高リスク嚢状瘤の定義(12312 高リスク嚢状瘤の定義(223

13 高リスク嚢状瘤 23

14 低リスク嚢状瘤 23

2 病理 24

1. 大動脈の正常と加齢変化,動脈硬化 ‥‥‥ 2415 大動脈正常構造 24

16 大動脈の加齢変化 24

2. 大動脈病変 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 24

3. 大動脈瘤とは ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2517 大動脈瘤の形態 25 4. 大動脈硬化症 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2518 大動脈粥状硬化のグレード(AHA分類) 25 5. 粥状硬化症による大動脈解離 ‥‥‥‥‥‥ 25

6. 遺伝性結合織疾患による大動脈解離 ‥‥‥ 26

3 症状,検査,診断 26

1. 症状 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 26 1.1 大動脈瘤の症状 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 26 1.2 急性大動脈解離の臨床症状 ‥‥‥‥‥ 26 2. 血液検査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 28 2.1 大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 28

(4)

2.2 大動脈解離 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 28 PQ 2大動脈疾患に合併した播種性血管内凝固

症候群(DIC)の治療法は‥‥‥‥‥ 29 3. 画像診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 30

3.1 単純X線写真 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3019 大動脈瘤の単純X線立位・仰臥位正面像 30

3.2 CT検査‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3120 大動脈解離の造影CT 早期相 31

21 大動脈瘤のサイズ計測 3222 バルサルバ洞動脈瘤(心電図同期造影CT MPR 像) 3323 弓部大動脈瘤(造影CT MPR 像) 33

24 炎症性大動脈瘤 34

25 感染性大動脈瘤 34

26 外傷性大動脈瘤 34

27 大動脈十二指腸瘻 34

28 TEVAR/EVAR 後のtype II エンドリーク 3529 大動脈瘤のfrank (open) rupture 3530 大動脈瘤のdraped aorta sign(造影CT3531 腹部大動脈瘤のhigh-attenuating crescent sign

HAC sign36

32 大動脈解離,石灰化内膜偏位像 3733 偽腔開存型大動脈解離 37

34 aortic cobweb(造影CT38

35 大動脈解離,entry内膜欠損像 3836 大動脈解離,entry内膜欠損像(MPR 像) 3837 偽腔閉塞型大動脈解離急性期 38

38 ULP(潰瘍様突出像)型大動脈解離 39

39 ULP(潰瘍様突出像)型大動脈解離における壁内

血液貯留(造影CT

3940 大動脈解離の心電図同期撮影によるアーチファク

トの低減

3941 大動脈解離による臓器虚血のメカニズム(造影

CT

40

42 Marfan 症候群に合併した大動脈三腔解離 40

PQ 3 大動脈瘤の大きさはどのようにして 計測するか ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 36

3.3 MRI検査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 40

3.4 Adamkiewicz動脈の同定‥‥‥‥‥‥ 4143 Adamkiewicz 動脈の同定 42

3.5 血管造影検査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 42

3.6 エコー検査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4344 大動脈解離のエコー検査 4445 大動脈解離に伴う脳malperfusion 4546 大動脈解離に伴う腸管malperfusion 46

4 治療法の選択 47

1.内科治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 47 1.1 内科治療の目標 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 47

1.2 腹部大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4747 腹部大動脈瘤の診断・治療カスケード 48 1.3 胸部大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4748 胸部大動脈瘤の診断・治療カスケード 48

(5)

1.4 急性大動脈解離 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4949 急性大動脈解離の診断 ・ 治療カスケード 49 1.5 慢性大動脈解離 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4950 慢性大動脈解離の診断・治療カスケード 50 1.6 併存疾患に対する内科治療 ‥‥‥‥‥ 507 大動脈疾患の併存疾患に対する降圧薬の適応 51 PQ 4 大動脈瘤症例と慢性大動脈解離症例の

血圧管理目標値は ‥‥‥‥‥‥‥‥ 51 PQ 5大動脈疾患症例の脂質管理目標値は

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 52

2. 血管内治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 548 大動脈瘤 ・ 大動脈解離の血管内治療

TEVAR/EVAR

54

2.1 TEVAR ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 549 大動脈瘤 ・ 大動脈解離のTEVAR 54

51 大動脈のステントグラフトlandingおよび移植

範囲のZone分類 56

52 TEVAR/EVAR 後のエンドリーク分類 56

2.2 EVAR ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5710 大動脈瘤 ・ 大動脈解離のEVAR 57

2.3 その他の血管内治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 58 PQ 6 腎機能低下・腎不全患者に対する

TEVAR/EVARは妥当か‥‥‥‥‥‥ 58 3. 外科手術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 59 3.1 人工血管置換術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 59 3.2 体外循環と臓器保護 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 59 3.3 院内死亡率 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 59

5 大動脈瘤の治療 60

1. 胸部大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 60

1.1 内科治療と侵襲的治療の適応 ‥‥‥‥ 6011 胸部大動脈瘤の内科治療 60 PQ 7 胸部大動脈瘤は瘤径何mm以上で

侵襲的治療の適応となるか ‥‥‥‥ 61

53 胸部大動脈瘤の瘤径と解離や破裂などの合併症の 発症率

62 1.2 非破裂性胸部大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥ 6212 大動脈基部と上行大動脈の非破裂性大動脈瘤の

外科手術

6213 非破裂性弓部大動脈瘤の外科手術 6414 非破裂性弓部大動脈瘤の血管内治療 6554 胸部大動脈瘤のハイブリッドTEVAR 6615 非破裂性下行大動脈瘤の外科手術 6716 非破裂性胸腹部大動脈瘤の外科手術 6855 胸腹部大動脈瘤の人工血管置換範囲による

Crawford 分類の修正版 69

17 非破裂性下行大動脈瘤の血管内治療 70 1.3 胸部大動脈瘤破裂 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7118 大動脈基部と上行・弓部大動脈の大動脈瘤破裂の

治療

7119 大動脈基部〜弓部大動脈瘤(非解離)破裂に対す

る開胸手術の成績

7220 弓部大動脈瘤破裂の血管内治療 7321 下行大動脈瘤破裂の血管内治療 74 1.4 広範圍胸部大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 75

2. 腹部大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 76

2.1 内科治療と侵襲的治療の適応 ‥‥‥‥ 7622 腹部大動脈瘤の内科治療とフォローアップ 7623 腹部大動脈瘤の瘤径別推定年間破裂率 78

(6)

PQ 8 腹部大動脈瘤は瘤径何mm以上で侵 襲的治療の適応となるか ‥‥‥‥‥ 78

2.2 非破裂性腹部大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥ 7924 非破裂性腹部大動脈瘤の侵襲的治療の適応 7925 非破裂性腹部大動脈瘤の術前評価 7926 非破裂性腹部大動脈瘤の外科手術術式 8027 非破裂性腹部大動脈瘤のEVAR 8156 腹部大動脈瘤のEVAR 8357 傍腎動脈型腹部大動脈瘤の開窓型EVAR 8558 傍腎動脈型腹部大動脈瘤のdouble snorkel EVAR 8559 腹部大動脈瘤の内腸骨動脈温存デバイス 85 2.3 腹部大動脈瘤破裂 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8628 腹部大動脈瘤破裂の治療 86

29 腹部大動脈瘤破裂に対する侵襲的治療後の合併症 発症率

87

30 腹部大動脈瘤破裂の治療後の死亡率 87 2.4 大動脈腸管瘻 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8831 大動脈腸管瘻の治療 88 2.5 炎症性大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8932 炎症性腹部大動脈瘤の診断と治療 89 2.6 感染性大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 91

2.7 外傷性大動脈瘤 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 92

6 大動脈解離の治療 93

1. 総論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 93 1.1 定義と分類 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 93 PQ 9 ULP型大動脈解離をどのように扱うか

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 93 1.2 intramural hematomaIMH)‥‥‥‥ 94 1.3 penetrating atherosclerotic ulcer

PAU)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 94

60 PAU(穿通性動脈硬化性潰瘍)の進展様式 95

1.4 外傷性大動脈損傷 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 9533 外傷性大動脈損傷の治療選択 96 1.5 医原性大動脈解離 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 96

2. Stanford A型大動脈解離‥‥‥‥‥‥‥‥ 96

2.1 治療適応 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 9634 Stanford A型大動脈解離の治療 96 2.2 急性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 9761 高度な弯曲を呈する弓部大動脈での屈曲狭窄とそ

の治療 100

35 急性Stanford A型大動脈解離における冠動脈 malperfusionの診断と治療

10036 malperfusionを伴う急性Stanford A型大動脈

解離の治療

101 PQ 10 急性Stanford A型解離の手術術式は

上行置換(hemiarchを含む)か,

全弓部置換か‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 99 2.3 慢性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 104

2.4 再手術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10637 Stanford A型大動脈解離の再手術 107 2.5 血管内治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10838 Stanford A型大動脈解離のTEVAR 108 3. Stanford B型大動脈解離‥‥‥‥‥‥‥ 109

3.1 急性および亜急性 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 109

(7)

PQ 11 Stanford B型解離に対するステント

グラフト内挿術はいつが適切か‥ 109

62 Stanford B 型大動脈解離の病期とTEVAR の適応 11039 Stanford B型大動脈解離急性期・亜急性期におけ

る慢性期偽腔拡大の予測因子

11040 complicated急性/亜急性Stanford B型大動脈解

離の治療

11163 大動脈解離に伴うmalperfusionの発生メカニズム

による分類 112

64 TEVAR 施行の際に用いる大動脈真腔径の計測方法 11341 uncomplicated急性/亜急性Stanford B型大動脈

解離の治療

116 3.2 慢性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11942 慢性Stanford B型大動脈解離の侵襲的治療 119 3.3 術後フォローアップと再治療 ‥‥‥ 12343 大動脈解離の術後フォローアップと再治療 123 3.4 広範囲大動脈解離 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 125

7 大動脈手術に伴う諸問題 126

1. 脳保護 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 126

2. 脊髄保護 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 12744 大動脈瘤・大動脈解離の侵襲的治療における脊髄

保護 127

2.1 脊髄動脈支配の解剖学的特徴 ‥‥‥ 12765 脊髄動脈支配の解剖学的特徴 128 2.2 虚血性脊髄障害の病態 ‥‥‥‥‥‥ 12866 collateral network concept の水槽モデル 130 2.3 脊髄保護法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 130

3. 再手術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 132

3.1 外科手術後 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13245 大動脈再手術の術前検査と再開胸前の体外循環 132 3.2 血管内治療後 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 134

8 その他の大動脈疾患 134

1. 遺伝性大動脈疾患 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 134 1.1 定義 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 135

1.2 症候群性遺伝性大動脈疾患 ‥‥‥‥ 13546 Marfan 症候群と類縁疾患の診断のための改訂 Ghent 基準(2010

136

47 血管型Ehlers-Danlos 症候群の診断基準(2017137 1.3 非症候群性遺伝性大動脈疾患 ‥‥‥ 138

1.4 遺伝子診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13848 胸部大動脈瘤・大動脈解離を合併する遺伝性 症候群

140 1.5 外科手術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14149 遺伝性大動脈疾患の外科手術 141 1.6 内科治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14350 Marfan症候群の内科治療 143 1.7 血管内治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14451 遺伝性大動脈疾患の血管内治療 144 2. 大動脈二尖弁に伴うaortopathy ‥‥‥‥ 145

2.1 病態 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 145

2.2 手術適応 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14552 大動脈二尖弁に伴うaortopathyの外科手術 145 3. 動脈硬化性大動脈疾患 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 147

3.1 血栓塞栓性大動脈疾患 ‥‥‥‥‥‥ 147 3.2 大動脈内血栓 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 148 3.3 動脈硬化性大動脈閉塞 ‥‥‥‥‥‥ 148 3.4 大動脈石灰化 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 148 3.5 Leriche症候群‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 149

(8)

3.6 shaggy aorta ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14953 shaggy aorta 14967 典型的なshaggy aorta(造影CT 所見,前額断像)150 4. 大動脈炎 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 150

4.1 定義,分類 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15054 血管炎のカテゴリーと疾患 15168 高安動脈炎(慢性活動期) 15269 高安動脈炎(活動期) 152

70 巨細胞性動脈炎 153

71 血管型Behçet153

72 炎症性大動脈瘤 154

73 IgG4関連疾患としての炎症性大動脈瘤 154

4.2 画像診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15474 PET/CT による大動脈炎の評価 15575 高安動脈炎の早期にみられるdouble-ring like

appearance

156 4.3 侵襲的治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 156

4.4 内科治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15655 大動脈炎の内科治療 156 5. 大動脈腫瘍 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 158

5.1 病理 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15876 大動脈内膜肉腫 15877 大動脈内膜肉腫の分類 15878 大動脈内膜肉腫(血管肉腫型) 159 5.2 画像診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15979 大動脈腫瘍(下行大動脈原発の内膜肉腫) 159 5.3 侵襲的治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 159

6. 外傷性大動脈損傷 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16056 外傷性大動脈損傷の診断と治療 160 6.1 病理 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16080 外傷性大動脈損傷 160 6.2 画像診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16181 外傷性大動脈瘤 161 6.3 侵襲的治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 161

7. 先天性大動脈疾患 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 161

7.1 Kommerell憩室 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16182 Kommerell 憩室瘤と嚥下障害例での食道狭窄 162

7.2 大動脈縮窄症 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16283 大動脈縮窄症 163 7.3 頚部大動脈弓 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16384 頚部大動脈弓 163 8. 大動脈食道・気管支瘻 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 16357 大動脈食道瘻,大動脈気管支瘻の治療 163 8.1 大動脈食道瘻 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16458 大動脈食道瘻の原因 164 8.2 大動脈気管支瘻 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 166

8.3 食道癌・肺癌の大動脈浸潤に伴う大動 脈瘻 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 166 PQ 12 食道癌の大動脈浸潤に対しTEVAR

は有効か‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 167

9 リハビリテーション 168

1. 大動脈解離のリハビリテーション ‥‥‥ 16859 大動脈解離急性期におけるリハビリテーション 16860 大動脈解離の短期リハビリテーションプログラム

の適応基準

168 1.1 急性期から回復期まで ‥‥‥‥‥‥ 16861 大動脈解離の短期リハビリテーションプログラム

の例

169

62 大動脈解離のリハビリテーションの開始基準 16963 大動脈解離のリハビリテーションの中止基準 169 1.2 回復期から日常生活復帰へ ‥‥‥‥ 169

(9)

2. 大血管周術期リハビリテーション ‥‥‥ 17064 大血管周術期リハビリテーション 170 2.1 術前リハビリテーション ‥‥‥‥‥ 170

2.2 術後リハビリテーション ‥‥‥‥‥ 170 2.3 病態・治療法別の対応 ‥‥‥‥‥‥ 170

2.4 周術期リハビリテーションの実施 ‥ 17165 大血管疾患術後リハビリテーションの開始基準 17266 大血管疾患術後リハビリテーションの中止基準 172

10 大動脈疾患診療の諸問題 173

1. 疾患予防 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 173 1.1 治療成績と救命率の現状 ‥‥‥‥‥ 173 1.2 大動脈解離の危険因子 ‥‥‥‥‥‥ 173 1.3 大動脈解離の予防 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 174

2. サーベイランス ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 17467 大動脈疾患慢性期のリスク管理 17468 大動脈疾患のサーベイランス 174 2.1 病期と病態の分類 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 175

2.2 臨床的病相 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 175 2.3 診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 175 2.4 術前サーベイランス ‥‥‥‥‥‥‥ 175 PQ 13 腹部大動脈瘤や慢性大動脈解離後の

CT検査の頻度は ‥‥‥‥‥‥‥ 176 2.5 侵襲的治療後のフォローアップ ‥‥ 176 PQ 14 大動脈解離慢性期において運動制限

を行うべきか‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 177 3. 画像診断での留意点 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 177

3.1 CT検査による放射線被曝‥‥‥‥‥ 177

3.2 ヨード造影CT検査による造影剤腎症 17769 大動脈疾患症例における造影CT 177 PQ 15 腎機能低下・腎不全患者に対し造影

CT検査を行ってもよいか ‥‥‥ 178 3.3 ガドリニウム造影MRA検査 ‥‥‥ 178 3.4 医療デバイスのMRI検査適合性‥‥ 178

付表 班構成員の利益相反(COI)に関する開示‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥179 文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥182

(無断転載を禁ずる)

推奨とエビデンスレベル

(10)

改訂にあたって

日本循環器学会による大動脈疾患の診療ガイドライン は,2000年に「大動脈解離診療ガイドライン」(初版)が出 版され,続いて2006年に大動脈瘤に対する診療指針を加 えた「大動脈解離・大動脈瘤ガイドライン(2006年改訂 版)」が,さらに2011年にその改訂版1)が上梓された.今 回で3回目の改訂であり,やや大幅な改訂版となる.

社会の高齢化とともに大動脈疾患も増加し,大動脈瘤だ けでなく大動脈解離のレジストリにおいても,発症率は人 口10万人あたり年間10件以上であることが明らかとなり つつある.特に,本邦においては高いCT検査普及率のも と,大動脈疾患を診断できる施設,機会が多く,救急搬送 を含めた診療体制の整備により,さらなる治療成績の向上 が期待できる.そのためにも,従来の心臓血管外科が中心 の診療体制から,循環器内科,放射線科,病理診断科,

臨床遺伝科のほか,麻酔科,救命救急科,総合診療内科,

臨床検査技師・臨床工学技士,看護師などの参画による集 学的な診療基盤が必要となる.したがって,本ガイドライ ンはその目的により,基本的な事項からエキスパートレベ ルまで幅広い内容を包括するものとして作成した.

主な改訂点は,第一に,国内と海外で異なる定義を有す るものの解釈を明記した.その一つが,大動脈解離のin- tramural hematomaIMH)の取り扱いである.本邦での 定義は「大動脈壁中膜内に出血してできる壁内血腫」であ る.一方,欧米では拡大解釈され,偽腔閉塞型全般に用い られる傾向にあることから,その国際的なコンセンサスを 重んじて呼称の一つとしてIMHを認めることとした.逆に 本邦から発信されたもので,これまでやや不明瞭であった ulcer-like projectionULP)の基準を明確にした.これと 略語一覧

AAA abdominal aortic aneurysm 腹部大動脈瘤 ABF aorto-bronchial fistula 大動脈気管支瘻 ACC American College of Cardiology 米国心臓病学会 ADD-RS Aortic Dissection Detection Risk

Score 大動脈解離診断リスクスコア

AEF aorto-esophageal fistula 大動脈食道瘻 AHA American Heart Association 米国心臓協会 BAV bicuspid aortic valve 大動脈二尖弁 ESC European Society of Cardiology 欧州心臓病学会 ESVS European Society for Vascular

Surgery 欧州血管外科学会

ET elephant trunk

EVAR endovascular aortic repair 腹部ステントグラフト内挿術 FET frozen elephant trunk

IMH intramural hematoma 壁内血腫

IRAD International Registry of Acute

Aortic Dissection 急性大動脈解離国際レジストリ JACSM Japanese Committee for

Stentgraft Management 日本ステントグラフト実施基準管理委員会 JCVSD Japan Cardiovascular Surgery

Database 日本心臓血管外科手術データベース

NCD National Clinical Database PAU penetrating atherosclerotic

(aortic) ulcer 穿通性動脈硬化性潰瘍

SCI spinal cord injury 脊髄障害

STS Society of Thoracic Surgeons 米国胸部外科学会 SVS Society for Vascular Surgery 米国血管外科学会 TAA thoracic aortic aneurysm 胸部大動脈瘤 TAAA thoracoabdominal aortic

aneurysm 胸腹部大動脈瘤

TEVAR thoracic endovascular aortic

repair 胸部ステントグラフト内挿術

ULP ulcer-like projection 潰瘍様突出像 VSRR valve-sparing [aortic] root

replacement 自己弁温存大動脈基部置換術

(11)

関連して,ULP型の位置づけやStanford A型偽腔閉塞型 に対する外科手術の適応拡大についても記述した.さらに,

急性大動脈解離とともに,急性大動脈症候群(AAS)の一 要素であるpenetrating atherosclerotic ulcerPAU)につい ても個別に概説した.

治療手段に関しては,大動脈疾患治療全体に占めるステ ントグラフト内挿術(TEVAR/EVAR)の割合が増加傾向に あり,この9年間のエビデンスとなる研究も多く,TEVAR/

EVARに関する記載が増加した.新たなデバイスの開発や 改良もあり,下行大動脈瘤や腹部大動脈瘤において,施設 によっては多くがTEVAR/EVARの対象となっている.そ の他,弓部大動脈瘤や胸腹部大動脈瘤の一部においても,

分枝灌流に対する対策を施した新たな手技が導入され,良 好な成績が実証されてきている.大動脈解離に目を向けて も,解離に対してデバイスが承認されたこともあって,この 9年間でTEVARの適応範囲は拡大してきている.Stanford B型解離の急性・亜急性期において,合併症を併発した complicated型だけではなく,合併症の併発や拡大・破裂 の危険性が高いuncomplicated型に対しても,RCTの結果 も相まって,TEVARがより積極的に適用されてきている.

一方,通常の外科手術においても,技術的な進歩,術式 の改良,脳・脊髄保護の確立,人工血管の改良,経験の 蓄積などに加え,高齢者など外科手術のリスクが高い症例 に対するTEVAR/EVAR優先という要素も加わって,治療 成績の向上がみられる.しかしながら,新しい画期的な手 技・治療法が少ないため,エビデンスの基となる新規研究 に乏しく,推奨度に関しても大きな変化がみられない.外 科手術とTEVAR/EVARの推奨度を比較するうえでの注意 点でもある.さらにこの9年間の発展として,両者の中間 に位置するハイブリッド治療の定着があり,先行バイパス による分枝処理(debranching)だけでなく,拡大性病変に 対する段階的治療など,外科手術とTEVAR/EVARとを組 み合わせた重要な治療戦略といえる.

大動脈解離に関するトピックスの一つとして,出血性合 併症のほかに,malperfusion(分枝灌流障害)が治療成績 に大きく影響することが明らかとなっている.特にA型解 離における冠動脈や頚動脈,A/B型解離における上腸間膜 動脈のmalperfusionにおいて死亡率が高く,迅速な対応 が求められる.これと関連して,本邦においても2014年以 降,企業製のfrozen elephant trunk(オープンステントグ ラフト)デバイスが使用可能となり,広範囲の弓部大動脈 瘤や,malperfusion合併A型解離の遠位側吻合部処理に 利用されている.これにより,早期成績の向上と遠隔期の 下行大動脈リモデリング(偽腔消失)が得られ,国内外で 大きな広がりをみせている.

さらに,大動脈疾患と遺伝子異常との関係が年々明らか になってきている.遺伝性結合織疾患を含めた「遺伝性大 動脈疾患」に対する遺伝子診断を含む集学的な対応の重要 性などについても概説した.

しかしながら,ガイドラインを作成するうえで問題と なったのは,依然として,この分野のエビデンスの少なさ である.大動脈解離を対象とする国際的なレジストリなど から多くの事実が明らかとなりつつあるものの,発症直後 の死亡症例のデータや緊急時の細かなデータの不足など が,エビデンスの構築に至らない原因といえる.また,リ スクの高い侵襲的治療が主体であり,RCTの対象となりに くい.さらに,外科医の経験や技術的要素,施設の体制が 成績に大きく反映することも,メタ解析を含めてエビデン ス不足の原因となる.したがって,推奨クラスとエビデン スの採用基準,レベル付けは,従来のガイドラインに用い られている標準的なものを用いた(表12).

昨今のガイドラインの中には,Minds形式を採用し,従 来の推奨度と併記されているものもあるが,本領域におい ては,エビデンスやシステマティックレビューの対象とな りえる研究が少ないため,Minds形式は採用しなかった.

ただ,Minds形式におけるClinical Questionは,ガイドラ インの読者にとり,通常の診療における疑問点を直ちに解 決できる有用なものであり,本ガイドラインにおいても同

推奨クラス分類

クラスⅠ 手技・治療などが有効・有用であるというエビデンス がある,またはそのような見解が広く一致している.

クラスⅡ 手技・治療などが有効・有用であることについて,エ ビデンスまたは見解が一致していない.

クラスⅡa エビデンス,見解から有効・有用である可能性が高い.

クラスⅡb エビデンス,見解から有効性・有用性がそれほど確立 されていない.

クラスⅢ 手技・治療などが有効・有用でないとのエビデンスが ある,またはそのような見解が広く一致している.

エビデンスレベル

レベル A 複数のランダム化試験,またはメタ解析の結果による.

レベル B 単一のランダム化試験,または多施設大規模レジスト リ研究の結果による.

レベル C 専門家の間の一致した意見,または小規模臨床試験,

サブ解析の結果などによる.

(12)

様の目的で,「Practical QuestionPQ)」として本文中に追 加記載した.

最後に,本ガイドラインは関連学会の支援のもと,循環 器内科医,放射線科医,病理医,臨床遺伝専門医,心臓 血管外科医など多分野の医師が一堂に会し,集学的診療 を基本概念に,大動脈瘤・大動脈解離に関する定義,診 断・検査,内科治療・侵襲的治療,リハビリテーション,

予防,サーベイランスなど,多くの関連事象を包括したも のとして作成した.本邦における大動脈瘤・解離診療の良 い指標となることを期待しているが,現時点での少ないエ ビデンスと,多くのエキスパートコンセンサスにより作成 された診療指針であり,本ガイドラインにすべて則らなけ ればならないというものではない.

むしろ,この分野の優れた医師らは,ガイドライン上の エビデンスやエキスパートコンセンサスを十分に知ったう えで,これによらない別の治療法や新しい治療法を,施設 ごとの倫理審査委員会の承認の下に実施することもありう る.今後のエビデンスとして期待される部分でもある.ま た,施設ごと,医師ごとにリスク評価や治療内容・手技レ ベルは異なり,特に緊急手術を含め侵襲度の高い治療が多 くを占める本領域においては,ガイドラインは診療内容を 規定するものではなく,実際の診療はあくまで施設や医師 ごとの判断に委ねられるものとする.特に,未破裂大動脈 瘤に対する侵襲的治療などにおいては,その適応基準を明

記しているが,医療従事者だけでなく,十分な説明のうえ,

患者,家族の希望,同意のもとに最終的に判断されるべき ものと考える.

一方,若い医師,プライマリーケアを担当する医師,他 分野を専門とする医師らにとり,現在の大動脈瘤・解離の 診療レベルの医療を提供するには,まずこのガイドラインを 十分に理解することが前提となる.むしろ,その意味合いを 強く意識し,集学的診療による治療成績の向上を目指した 記載内容の多い構成とした.

本邦は世界的にも大動脈疾患の発症率が高いが,救急 診療体制を含め診療レベルも高く,治療成績は優れている といえる.本ガイドラインが本邦の大動脈疾患の診療レベ ルをさらに向上させ,多くの患者の救命とより良い生活に つながることを,改訂にあたった関係者を代表して心から 望む.

なお,本ガイドラインでは大動脈疾患の治療法を表す用 語を下図に示す意味で用いた.「手術」は「侵襲的治療」と 同義とし,外科手術と血管内治療を合わせたものとした.

「外科手術」は開胸・開腹手術のことで,主に人工血管置 換術を指す.一方,「血管内治療」はステントグラフト内挿 術(TEVAREVAR),経カテーテル・ステント留置術な どを指すものとした.

大動脈疾患の治療

内科治療 手術 または 侵襲的治療

外科手術 主に 人工血管置換術

血管内治療

本ガイドラインにおける大動脈疾患治療法の用語

(13)

1

章 定義,病態,疫学

1.

大動脈瘤の定義,病態,分類

1.1

定義

大動脈瘤(aortic aneurysm)は 「大動脈の壁の一部が,

全周性,または局所性に(径)拡大または突出した状態」

とする.大動脈が全体にわたって拡大したものは,「大動 脈拡張症(aortomegaly)」と称する.また,大動脈基部が 拡張したものは「大動脈弁輪拡張症」とも称される.成人 の大動脈の正常径としては,一般に胸部で30 mm,腹部

20 mmとされており,壁の一部が局所的に拡張した(こ

ぶ状に突出,嚢状に拡大した)場合,または直径が正常径 の1.5倍(胸部で45 mm,腹部で30 mm)を超えて拡大し た(紡錘状に拡大した)場合に「瘤(aneurysm)」と称して いるが,それに満たない拡大を「瘤状拡張(aneurysmal dilatation)」と称することがある2, 3)

大動脈瘤は限局的な大動脈壁の(径)拡大または突出で あり,その形状が紡錘状であれば「紡錘状大動脈瘤(fusi- form type aortic aneurysm)」(図1),嚢状であれば「嚢状 大動脈 瘤(saccular type aortic aneurysm)」(図2)と称さ れる(PQ 1P. 22参照).また,瘤の発生部位により,胸 部大動脈では胸部大動脈瘤(thoracic aortic aneurysmTAA),胸部と腹部に連続する胸腹部大動脈瘤(thoracoab- dominal aortic aneurysmTAAA),腹部では腹部大動脈 瘤(abdominal aortic aneurysmAAA)と称している.非 拡張部の大動脈壁から瘤部の壁へは滑らかな移行を示し,

病理組織学的には瘤部の壁に本来の大動脈壁の構造,特 に中膜の弾性線維が残っていることが多い(図3-a).その ため,多くの場合,本来の大動脈壁が拡張したことを理解 するのは容易である.しかしながら,瘤壁の破壊が進むと 中膜が破壊消失し,線維性構造物しか残らない部分が出 現してくる(図3-b).このような場合にも非拡張部からの 移行は滑らかであり,詳しく瘤壁を観察すると他の部位に

中膜の弾性線維の一部を確認できることが多い.このよう な点で次に述べる仮性大動脈瘤と異なる場合,後者から明 確に区別するために「真性大動脈瘤(true aneurysm)」と称 する.

一方,「仮性大動脈瘤(pseudoaneurysm)」は大動脈壁 の破綻により大動脈内腔と周囲組織との間に交通が生じて 血液が周囲に漏出し,大動脈壁の外側に血液で満たされた 腔が形成されるもので,その血液は時として血栓化して血 腫となり,血液の漏出が閉鎖される(図4).したがって,

最外層にあるのは線維性被膜のみであり3層構造はなく,

「大動脈壁の破綻=破裂」が生じたあとの不安定な状態で あると考えられる.また,大動脈解離において径拡大をき たして瘤を形成した場合は,「解離性大動脈瘤(dissecting aneurysm)」とも呼ばれる.

大動脈瘤の最も重要な臨床的問題は破裂である.「破裂」

を厳密に定義することは困難であるが,一般的には血管外 に血液の漏出を認めた場合を「破裂(rupture)」,血液の漏 出はないが痛みの位置が瘤の存在部位と一致する場合を

「切迫破裂(impending rupture)」と呼ぶ.切迫破裂では瘤

紡錘状大動脈瘤

嚢状大動脈瘤

(14)

の壁在血栓が崩れて造影剤が一部流入するattenuating crescent signを認めることがある.近年では症状を重視し て,「痛みがある=危険な状態」と認識し,「症候性(symp- tomatic)」と「無症候性(asymptomatic)」とに分け,症候 性の大動脈瘤は侵襲的治療の適応とすることが多い.

大動脈瘤の発生には大動脈壁の脆弱化が大きく関与し ており,その脆弱化はBehçet4, 5),高安動脈炎6, 7)Mar- fan症候群のような遺伝性結合織疾患8, 9),粥状硬化10, 11)な どによる壁の構造異常や破壊によってもたらされる.AAA の場合,内腔側には強い動脈硬化性変化があり,瘤の発生 に動脈硬化が強く関連している12).しかし,AAAと閉塞 性動脈硬化症との関連は乏しいこと13),家族内発症がある

こと14, 15),糖尿病が危険因子でないという報告や逆相関を

示す報告もあること16, 17)LDLコレステロールとの有意な 関連がみられないこと18)など,AAAの発症が動脈硬化の みでは説明できない点もあり,他の要因,とくに遺伝的要 因や高血圧の関与も考えられている3, 19).分子レベルでは

インターロイキンやインターフェロンγなどの炎症性サイト カインや,マトリックスメタロプロテイナーゼなどの細胞 外マトリックスの分解に関与する酵素の関与が強く示唆さ

れている3, 19, 20)

1.2

病態

大動脈瘤による症候は,①破裂によって生じる「疼痛」

や「出血」,②破裂前の瘤が周囲臓器へ及ぼす「圧迫症状」

に分けられる.症状の詳細は別項に譲る(第3章の「1. 症 状」,P. 26〜).

疼痛と出血:一般的に破裂前の大動脈瘤は無症状であ ることがほとんどである.破裂後は激烈な痛みが生じる.

出血の部位に応じて胸痛,背部痛,腹痛,腰痛などの症状 が出現する.比較的強い症状があるが,血液が大動脈外 へ漏出しておらず,破裂がおこりかけている状態を「切迫 破裂」という.出血による症状は,出血性ショックによる 意識障害,肺・気管支に穿破すれば喀血,食道に穿破す れば吐血,腸管に出血すれば下血,胸腔に出血すれば血 胸となり呼吸不全,肺動脈に破裂すれば急性心不全などの 症状が出現する.

圧迫症状:瘤による周囲組織への圧迫が症状として自覚 されることは多くない.反回神経麻痺による嗄声,肺への 圧排による血痰,食道の圧排による嚥下困難,消化管の圧 排による通過障害などがある.圧排が長期にわたると瘻孔 が形成され,破裂に近い出血が認められるとともに敗血症 となる場合もある.

1.3

分類

瘤(aneurysm)の分類は,①瘤壁の病態(形態),②存 在部位,③原因,④瘤の形状,により分類されている

(表321)1.3.1

瘤壁の病態(形態)

真性(true aneurysm):瘤壁が大動脈壁成分(内膜・中膜・

外膜の3層構造)からなるもの.ただし,瘤壁の一部で3層構 造のすべてがみられない部分があってもよい.

仮性(pseudoaneurysm):瘤壁には大動脈壁成分がなく

(線維性被膜と外膜の一部が含まれることがある),本来の 大動脈腔の外にできた「新たな腔」を仮性大動脈瘤と呼ぶ.

大動脈内腔とは交通(瘤孔を介して)している.大動脈腔 外の血液が血栓化した場合には「血腫(hematoma)」と称 される.

解離性(dissecting aneurysm):大動脈壁が中膜のレベ 真性大動脈瘤

内膜 中膜 外膜

滑らかな移行

中膜が消失し 線維組織のみが 残存している

a b

仮性大動脈瘤 壁の破綻

血腫

大動脈壁外の線維組織 から構成される被膜 大動脈壁から

被膜への突然 の移行

血流がある 場合もある

(15)

ルで2層に剥離して,本来の大動脈腔(真腔)以外に,壁 内に生じた新たな腔(偽腔)をもつものが大動脈解離(aortic dissection)である.その状態で,大動脈径(主に偽腔径)

が拡張して突出(嚢状拡張,限局型解離)または全周の拡 張(紡錘状拡張,広範型解離)をきたした場合,「解離性大 動脈瘤」と呼ぶ.大動脈解離の慢性期にみられる病態で ある.

1.3.2

瘤の存在部位

胸部(thoracic),胸腹部(thoracoabdominal),腹部(ab-

dominal)に分類され,それぞれがさらに以下のように分

類される.

胸部:上行(ascending),弓部(arch),下行(descending

に分かれる.

胸腹部:胸腹部瘤外科手術における置換範囲による Crawfordの分類がある(図5).

腹部:腎動脈を基準に腎上部(supra-renal),腎下部

infra-renal)に分けられるが,瘤の多くは腎下部に生じる.

1.3.3 原因

瘤ができた原因によって,動脈硬化性(atherosclerotic),

外傷性(traumatic),炎症性(inflammatory),感染性(in- fected),先天性(congenital)などがある.ほとんどが動 脈硬化性である.

腹部大動脈瘤と胸部大動脈瘤の病因

AAAの病因は,以前は動脈硬化と考えられてい たが,最近では変性(degeneration)とされており,

古典的な「動脈硬化性腹部大動脈瘤」という病名は 病態に則していない.しかしながら,病理学的に動 脈硬化性変化は内膜病変として瘤壁に必ず存在し,

大動脈瘤の拡大には大動脈壁の脆弱性に関与する 重要な因子であることは否定できない.また,動脈 硬化に伴った炎症や免疫反応による血管壁構造の 破壊と再構築が,拡張病変の形成に重要な役割を 果たし,その他,発生学的要因,血行動態学的要 因,遺伝的要因などの関与も指摘されている.

以上より,AAAの病因は動脈硬化に加え,その 他多くの因子が複合的に関与したものであり,「変 性性腹部大動脈瘤」と呼ぶのが相応しい.

一方,TAAの病因は上行大動脈では囊状中膜壊 死であることが 多く,Marfan症 候 群やEhlers- 大動脈瘤の分類

存在部位: 胸部 thoracic

胸腹部 thoracoabdominal 腹部 abdominal 形: 嚢状 saccular type

紡錘状 fusiform type 壁の形態: 真性 true

解離性 dissecting 仮性 pseudo 原  因: 動脈硬化性 atherosclerotic

感染性 infected 外傷性 traumatic 炎症性 inflammatory 先天性 congenital その他

(松尾汎,2004 21)より)

胸腹部大動脈瘤の人工血管置換範囲によるCrawford分類

Ⅰ型 Ⅱ型 Ⅲ型 Ⅳ型

図 2  嚢状大動脈瘤 13 図 3  真性大動脈瘤 14 図 4  仮性大動脈瘤 14 1.2  病態 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14 1.3  分類 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14 表 3  大動脈瘤の分類 15 図 5  胸腹部大動脈瘤の人工血管置換範囲による Crawford 分類 15  2
図 12  高リスク嚢状瘤の定義(2)
図 25  感染性大動脈瘤   不整な形態をした嚢状の大動脈瘤を認め(↑),短期間に急速拡大している. 近傍には膿瘍と思われる被包化液体貯留を認める(▲). 5 日後造影 CT(初回検査)3 日後 図 26  外傷性大動脈瘤 胸部下行大動脈に嚢状動脈瘤を認め,外傷性大動脈瘤が示唆される (↑). 造影 CT 横断像 造影 CT MPR 像 図 27  大動脈十二指腸瘻 腹部大動脈瘤が十二指腸粘膜層に穿破し,粘膜下血腫を形成(↑).造影 CT 横断像図24 炎症性大動脈瘤腹部大動脈瘤を覆うように前側方に軟部陰
図 42  Marfan 症候群に合併した大動脈三腔解離
+5

参照

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