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Academic year: 2021

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(1)

国語の入試問題は、文章を読み、考え、書くという学習の基本 の姿勢を問うものであり、それは同時に、今後の学習に対する準 備段階をみるものであると聖光学院国語科は考えています。

国語の入試問題は、本校に進学する生徒にどのような能力を欲しているかを伝える、

国語科からのメッセージです。

晴れて本校に入学することになった生徒たちが、さまざまな科目にチャレンジしその 才能を開花させていくために最も必要なのは、間違いなく国語を「聞く・読む」・「理 解する」・「考える」・「表現する」能力なのです。「それを伸ばすのがあなたたちの 仕事ではないか」と、おっしゃる声が聞こえてきそうですが、小学校で日常会話以上の ことをしてこなかった生徒、言い換えれば小学校である一定の言語能力を身につけられ なかった生徒が、突然中学校のたくさんの教科の言語表現に適応できるでしょうか?

もちろん国語科として、中学入学後に教え伝えるべきこともたくさんあります。しかし、

入学してから他教科の授業と同時進行で教えていては間に合わない、そのような基本的 言語能力をどの程度持っているかを、入試問題を通して計りたいと思っているのです。

問題の冒頭に、漢字力や語彙力を試す設問を毎年必ず入れているのも、小学校で学ぶべ き言語知識がどれだけついているかを知りたい、私たちが問題文にメッセージを籠めた という意味の一つはこういうことなのです。

さて、本校では、

言語感覚・読解力・思考力・表現力が豊かな生徒

を育成することを目標として、日常の指導を行っています。ですから、前段階として入 試問題にも、そのような能力を測ることができる問題を出題しようと工夫しています。

もちろん上記の能力が完璧に備わっている必要はありません。しかし、それらの能力の 片鱗を備えている人材が欲しいというメッセージを籠めて作問しているつもりです。

入試問題の相当長い文章を「読み」、内容を「理解し」、何を質問されているかを

「考え」て、自分の言葉で「表現する」能力を身につけることは、一朝一夕でできるこ とではありません。小学校や塾で勉強するだけでは、決して十分ではありません。では どうしたら良いのでしょうか。できれば三年生・四年生の頃から身の丈にあった読書を させ、読書はおもしろいという認識を持たせたいものです。「身の丈にあった」読書と は、それぞれの年齢や理解力で読め、しかも一人ひとりの興味に適した読書ということ です。最初から入試対策のために、入試問題によく出る作家・作品を押し付けてはいけ ません。最初はときどき童話・神話や子供用の冒険小説などを一緒に読んだり、感想な どを話し合うのも良いでしょう。本はおもしろい、読書は楽しいと気付かせ、徐々に自 分から本を読む習慣をつけさせるのです。しかし現実には、お子様がすでにその年齢を 過ぎているご家庭がほとんどでしょう。五年生頃になって、塾などで受験を真剣に意識

国語

(2)

するようになっていたら、ほんの少しレベルの高い評論や小説を毎日十ページとか二十 ページとか、意味上ひとまとまりになったところを読ませるようにする。どのような本 を読ませたら良いかは、学校や塾の推薦図書などがあれば参考になるでしょう。

そのような読書を毎日積み重ねている生徒と、ただ問題ばかり解いている生徒では問 題文の理解に歴然とした差がついてくるでしょう。たとえ一緒に合格したとしても、そ の力の差が中学入学後にはっきりと現れてくると思います。

小説や論説の文章で、私たちが問おうとしているのは、

①テーマや場面などが文脈に即して読み取れているか。

②それを他の言葉に置き換えたり、ひろげたりして考えられるか。

ということです。つまり、

「読むだけ」「覚えるだけ」ではなく「読み取る」「よく考える」

と言ってもよいでしょう。これは入試問題に取り組む際の「鉄則」とも言えます。

また、受験生の心構えとして大切にしてほしいのは、何よりも、

問題の設問文から、設問の意図をよく「読み取る」こと。

です。具体的には、

③設問文(特に傍線部)に、その問題に解答する時のヒントがこめられている。

④各設問はテーマや、文章の全体的な内容と深い関わりがある。

⑤ある設問が他の設問のヒントになっている場合もある。

という意識が役に立つということです。

実際に採点してみると、自分勝手に問題文を読み進めていたり、全体をまったく理解 していないで感覚的に解いていたりする解答が少なくありません。

やみくもに答えるのではなく、解答の根拠となる表現や内容を「探し出す」こと。

がポイントです。

国語は、努力の成果を感じ取りにくい科目かもしれません。しかし、目先の成果にと

らわれず、地味な努力を続けられる生徒に出会えることを期待しています。

(3)

◇今年度の入試問題より

※国語の問題は、の7ページからはじまっています。

最初に、「本校では、言語感覚・読解力・思考力・表現力が豊かな生徒を育成する ことを目標として、日常の指導を行っています」と書きました。「言語感覚・読解力

・思考力・表現力が豊かな生徒」とは、言い換えれば「豊かな国語力を持った生徒」

ということになります。しかし、この「豊かな国語力」という表現は、なかなか厄介 な代物です。なぜならば、「豊か」という言葉が、「自由」とか「個性的」といった イメージにたどり着いてしまうために、どうしても言語への繊細なまなざしが忘れら れてしまいがちだからです。助詞の使い方や述語のあり方といった、見過ごしてしま いそうな微細な表現を汲み取ることを通して、はじめて正確な読解は生まれます。こ うした地道な基礎的作業を経ていない「豊かさ」とは、結局、ただ自分勝手なだけで、

実は「豊かさ」とは正反対の「貧しい」ものに過ぎないのです。つまり、言語を地道 に読み取ることで得られる正確な読解を経てはじめて、「豊かな読解」にたどり着く のです。この「豊かな読解」をもたらす重要な要素である「正確な読解」ですが、自 分だけが「正しい」と主張しても決して「正確な読解」とは呼ぶことが出来ません。

多くの人が共通して「正しい」と納得出来なくてはなりません。つまり、文章中に根 拠があってはじめて「正確な読解」ということが出来るということなのです。国語の 問題では、こうした意味での「正確な読解」を求めています。しかし、中学受験生の みなさんや、入学してくる中学一年生に聞いてみると、「根拠」という発想が驚くほ ど稀薄です。そして、その「根拠」にたどり着くために必要な「言語に対する繊細な まなざし」はほとんど意識されていないのが現実です。いわゆる、「なんとなく読ん でいる」という段階です。こうした段階にとどまっている限り、「国語は勉強しても 成績が上がらない」という状態や、「出来、不出来の波が大きい」状態から抜け出す ことは出来ません。ですから、「根拠」を探すという意識と、言語への繊細さを養う ことが重要です。

さて、ここでは二〇〇八年度第一回入試から、物語文の問題について一部解説する こととします。実は、多くの中学受験生に接する中で分かったことがあります。それ は、非常に多くの受験生たちが、国語を苦手としていることです。しかも、他の科目 でぐんぐん力を伸ばしている優秀な受験生の多くが、物語文で伸び悩んでいるらしい ということです。これは、恐らく文章中に根拠を見付ける意識が足らないことと、そ の前提として言語を言語として読むことが出来ていないということが原因だと思われ ます。的確な方法で練習を重ねれば、国語も必ず伸ばすことが出来ます。それでは、

物語文を読み方と解き方を見て行きましょう。

(4)

二〇〇八年度第一回入試では重松清の「すねぼんさん」から出題しました。トラッ クの運転手だった父親の急死によって、母親の実家に引っ越すこととなった小学生の 少年が主人公の小説で、父親の元の同僚であったトラック運転手二人とともに移動す る深夜のトラックの中が描かれています。トラックが目的地に着くまでの、たった一 夜の出来事ですが、多くの「動き」が詰まっています。登場人物たちの「動き」、主 人公の心の中の「動き」、登場人物同士の関係の「動き」、場面の「動き」、状況の

「動き」……。物語文の中には様々な「動き」を読み取ることが出来ます。これらの

「動き」を「変化」というキーワードで捉えて、分析的に把握することが大切になり ます。つまり、ある「動き」を、【変化前】→【きっかけ】→【変化後】という要素 が組み合わさったものとして把握するということです。そして、多くの場合、問いは

【変化後】の内容への説明を求めてきますので、この「変化」における三つの要素を 示してやれば良いのです。

以下、【記述】【選択肢】【ぬき出し】それぞれの解法例を示しますので参考にし て下さい。

【記述】

問一 「少年」がどのような時にひざ小僧をなめているのかが問われた問題でした。

「少年」の亡くなった父のふるさとでは、「ひざ小僧」のことを、「すねぼん さん」と呼ぶということが語られています。この小説の題名は「すねぼんさ ん」ですから、この小説にとって「少年」が「ひざ小僧(すねぼんさん)」を なめる仕草が重要なポイントになっていることを理解したいところです。先述 した、「小説を言語として読む」という姿勢は、別の表現をとれば、「小説を 作られたものとして読む」という姿勢とも言うことが出来ます。小説家は、

「ひざ小僧(すねぼんさん)をなめる」という特徴的な動作を巧みに配置する ことによって、読者に「少年」の心情を伝えたり、物語の流れにアクセントを 与えたりします。こういった言語的操作によって、物語は文学・芸術になるの だとも言えます。

さて、解答にあたっては、「ひざ小僧(すねぼんさん)」をなめている場面 を調べていくことが大切です。これも先述した、「文章中に根拠を見付ける」

という姿勢です。指定された範囲で、「少年」は四回ほど「ひざ小僧(すねぼ

んさん)」をなめています。そのうち二回は「胸がどきどき」してなめていま

す。この「胸がどきどき」した状態は、傍線部の直前にもある「不安」のあら

われです。つまり、「少年」は、「不安」な気持ちになった時、「ひざ小僧

(5)

(すねぼんさん)」をなめている、というのが解答の中心になりそうです。し かし、それだけではありません。別の箇所では、友人と別れて来たことを思い 出した直後に、なめています。これは、「さびしい」気持ちです。つまり、

「ひざ小僧(すねぼんさん)」をなめる前には、「不安」や「さびしさ」を感 じているということになります。しかし、「不安」や「さびしさ」を感じた時 に「ひざ小僧(すねぼんさん)」をなめる、という説明ではまだ説明不足な感 じがします。なぜならば、「ひざ小僧(すねぼんさん)」をなめるという行為 と、「不安」や「さびしさ」という感情が直接結びつかないからです。ここで、

先ほど述べた、「変化」の三要素(【変化前】→【きっかけ】→【変化後】)

を使って考えてみましょう。

まず、「不安」や「さびしさ」を感じている状態、これが【変化前】の状態 です。ここに、「ひざ小僧(すねぼんさん)」をなめるという【きっかけ】を 与えてやることで「変化」が起こります。いったいどんな「変化」が起こるの でしょうか。当然、「不安」や「さびしさ」がやわらぐはずです。もし、より

「不安」になったり、より「さびしく」なったりするのだったら「ひざ小僧

(すねぼんさん)」をなめるはずがありません。「不安」や「さびしさ」をま ぎらわしたり、ごまかしたりするために、「少年」は、「ひざ小僧(すねぼん さん)」をなめるのです。

〔解答例〕不安な気持ちやさびしい気持ちをまぎらわそうとするとき。

【選択肢】

問五 これから休憩しようという店について、「ボクのお父ちゃんも、しょっちゅ

うそこで飯を食うとったんじゃ」と言ったアサイさんに対して、ヒガシさんが

叱るような目配せをした、という場面です。ヒガシさんが目配せをした理由が

問われています。実は、合格者も含めて正答率の低い問題でした。原因は、視

野の狭さです。物語全体を把握した上で選択肢を吟味しないと、必ずダミー選

択肢に引っかかってしまいます。本文を読み進めながら、途中途中で解答した

りしないようにしたいものです。物語全体を先に把握している人は、もうすぐ

休憩するドライブインで、亡くなった父親の同僚たちの歓迎というサプライズ

が起こることを知っています。ですから、ヒガシさんの〈秘密にしておきた

い〉という気持ちが理解できるはずです。ところが、全体を把握せずに、しか

も、本文に根拠を求めずに解答するとどうなるでしょうか。常識的な判断でイ

やウの選択肢を選んでしまうのではないでしょうか。しかし、イもウも本文中

(6)

に根拠がありません。これからドライブインで「父親のことを思い出させるよ うな」ことをする訳ですし、ドライブインでの休憩は「時間をつぶす」ことと は違います。また、目配せだけでアサイさんに通じている以上、エの「寄せ書 き帳を『少年』が読んでいる……」というのも理屈が合いません。オも、これ から食事をさせる展開と合いません。

常識で判断する力というものもとても大切ですが、文章を読解する以上、本 文に根拠を求めなくてはなりません。もし、根拠がないのならば、どんなに常 識的な読解であっても、それは自分勝手な読解と言わざるを得ないのです。

〔正答〕ア

【ぬき出し】

問六 本文に段落を補充する問題です。言葉への繊細なまなざし抜けている段落を 分析することから始めます。「お父さんだってそうじゃないか、と少年は思う。

あんなに元気だったのに、嘘みたいにあっけなく死んでしまった。大きなトラ ックを自由自在に操っていた太い腕は、たった一カ月の闘病生活の間に、枯れ 枝みたいに細くなってしまっていた。」とあります。ここには、「元気―死」

「太い腕―細い腕」という二つの対比があります。最初に「お父さんだってそ うじゃないか」と「少年」は思っていますから、これらと同類の対比を、〈何 か〉に見てとったはずです。こうした分析をしっかり行った上で探してほしい と思います。「派手な電飾で彩られたトラックは、街を走っているときには、

たてがみの立派なライオンのように堂々としていた。いまだって、外から見る ときっと、怖いものなどなにもないみたいにたくましいだろう。でも、車の中 に入ってしまうと、街灯の明かりすらない深い闇に浮かぶきらびやかな電飾が、

逆にものさびしさやこころぼそさをかきたててしまう。」という部分から、ト ラックの「きらびやかさ―さびしさ」という対比を読み取ることが出来れば解 答出来ます。多少、問題解説という部分からは脱線しますが、トラックと父親 を重ね合わせた「少年」の心情を、立ち止まって慮ることが出来る感性も育ん で行きたいものです。

〔正答〕てしまう。

(7)

三、 次の 文章を 読 ん で 、あ と の 問 い に答 え な さい 。 トラ ックは小さな 峠 を い く つ も越 えた 。高 速道 路を降 り て

とうげこ

からは、曲がりくねった細い道 がつづく。真夜中 そろ そ

ろ 明 け方が近い 。 前 方 を照 らすヘッ ドライ ト の明かりがぼう

っ と 霞ん で見える。霧が 出 て いるのかもしれな い。

かすきり

「ボク 、 もう 起 き たんか ? 」

ハ ン ドルを握るアサイさん が言った。助手席のヒガシさん

にぎ

も首 をよじっ て少年を振り向 き 、「 横 に なっと ら ん と 車酔い

ふよ

するど」と少 し心配そう に 言 う 。

シートの後 ろ の仮眠用のスペースにち ょ こ ん と座った少年

かみんすわ

は、肩をすぼめて「はい … …」とうなずい て 、 け れどそのま

かた

まの姿勢で 、フロントガラ ス越しに夜の闇を見つめた。

ごやみ

高速 道路を 走 って いるとき にう たた寝をし た き り だっ たが 、

ち っ とも 眠くな い 。夕方 の 五時にトラ ッ クが 出発して から す

ねむ

で に 十時間以 上たって い て 、車の震 動にさら さ れ どおしの小

しんどう

さ な 体はぐったりと疲 れているはず なのに、 頭と心は、 き ん 、

つか

と音がしそうなほど冴えて いた。

緊 張 している。初めて乗り込んだトラ ッ クに興奮もしてい

きんちょうこ

るし 、それ か ら 不安も、 あった。

折り曲げ た ひ ざをき つ く 抱 き 直 し 、 ① 半ズボンから 覗 く ひ

だのぞ

ざ小僧 を そっと な めた 。 埃 の味と汗の味が入り交 じって、し

こぞうほこりあせ

ょっ ぱいような 、 苦 い ような … …。

おい しい 。

い つ か そ う言 った ら、 ク ラ ス で い ち ばん 仲良 しの 原 田 くん

はらだ

に笑 われ た 。埃の 中にはばい菌 や寄生虫の卵 がた くさん入っ

きん

て い て、 なめると病気になるらしい 。 母も少年が ひ ざ 小 僧 を なめるのを見るた び に ② 眉をひ そ め 、病気になっても知らな

まゆ

いわ よ 、 お

行 儀 が 悪 い ん だ か ら ほ ん と に

、 と 言 う

ぎょうぎ

物知りの原 田く ん は「口 ざ みし い」と い う 言 葉を 教えてく

れた 。 ひ ざ 小 僧 を しょ っ ち ゅ う な め る の は 、 こ こ ろの さ び し

さが 口 に 伝わ って 、な にか 味のあ る も の を 食 べ ず に は いられ

ない か ら なの だ と い う 。 お ま え っ て コ ド ク な ん じ ゃない の ?

ヨッ キューフ マンなん じ ゃ ないの? かわ いそ ーっ。 笑 い

ながら言 う原田くんの手の爪はいつも ぎ ざぎざだ。保健委員

つめ

の清潔検査で は、必ず爪の欄に×をつけられてしまう。爪 を

らん

噛む のも口 ざ みし いからな のだろ う か。あ い つもコ ド クで ヨ

ッ キ ュ ー フ マ ンなのだ ろうか。一度言い 返してや ろうと思 っ

たまま、それきりに な ってしまった 。

原田く ん は屁理屈 も得 意だから、 そ れと これとは違 うよ 、

へりくつちが

ぜんぜん違うよ、だっ て爪は味しない も ん、 と言ったかもし

れない。まあい い や 。 原田 くん と 遊 ぶ こ とは、 も う、 ない 。

昨日の夕方 、 校門の前でお 別れをし た。 「さ よなら 」 を交わ

す順番を待つ間、 ③ あいつはずっと 爪を 噛ん で いた。

少年はまた ひ ざ小僧 を なめる。味のする場所 を探 して、 少

し脇 の ほ うを。

わき

元には、

リュックサックと

ランドセルが置い

てある

まくらもと

ランドセルの 中には全科 目の教科 書 が詰め て ある。算数の 宿

題がある。計算 ド リルを二ページ 。 でも、 そ れはも う 少年に

は関係のな い 話だった。クラ ス 担任の須藤先生が 「算数の 宿

すどう

題、忘 れ ない でね」 と 『終 わりの会』 で みん なに言 った、 そ

の数分

前 に、少

年 は

壇に立

っ てお別れの挨拶をして

いた

きょうだんあいさつ

「新しい学校に行ってもが んばって ね」と目を赤くし て 言 っ

(8)

てくれた 先生 が、 少年が席に戻るとすぐに口調 を 明るく変 え

もど

て、明 日 の こ とについ て話しだ した いま 振 り 返 る と 、 な

んとなく 、 悔 し い 。

くや

ランドセルの中にはクラ ス のみんなに書い て もらった寄せ

書き 帳もある。学 校から帰ってすぐにトラ ッ クに乗り込んだ

ので 、リボンで 結 んだノート の 中身は、まだ知ら ア ない。

取り出 し て読ん で みたかった が 、 ト ラ ッ クの車内は真っ暗

で、 運 転 席の前の メー ターの明 かり しか イ な い 。アサイさん

とヒ ガシさん の顔 も、 見分けられるのは、ヘッ ド ライ トの明

かりがうっすら と映り込む鼻や頬のあたりだけ だ っ た 。

ほお

寄せ 書 き 帳 を 一 ペ ージ だ け 読 む なら それ は原田く んの

ページ で も須藤 先 生のページ で もな い 。 Ⅰ 成瀬裕子さんのペ

なるせゆうこ

ージを、読みたい 。どん な 言葉 が書い てあるかを知りたい 。

「さよなら」だけでない、もう一言 があ った らいいのに。

ヒガ シさん は また 少年を振り向い て 、「もうじき

休 憩 す る

きゅうけい

けん」 と 言 っ た 。

休憩 ? 町の明 か りも見えない、 こ ん な 山 奥 で ?

「 ええ 店 があるんよ」アサイさん が言った。「ボクのお父 ち

ゃ んも 、 し ょっち ゅう そこ で 飯 を 食う と っ た んじゃ 」

の う 、 そ うじ ゃ っ たよの、と助手席のほうを向い て言った

アサイさんに、 ④ ヒガ シさんは黙って 、 叱 るよう に目配 せ し

だましか

た。最初はき ょ と んとしていたアサイさん も、 ああそうか 、

と う なずき、 気まずそ うな咳払いとともに 運 転 に 戻った。

せきばら

ヒガシさんもアサイさんも低い声で話す。しわがれ た声で

笑う。 二 人は父と同じ運 送 会社 で 働い て いる。それ以 上のこ

とは わか ら ウ ない 。 名 前 を 漢 字 で ど う 書 く の か も 知 ら な い 。

「ヒガ シ 」と 「アサイ」と い う 読み方も 、出がけ に母が 挨 拶 をして い ると き に ちらりと聞いただ け で 、 もしかしたらほん

とう は ま っ た く 違 う 名 前な のか もしれ エ

ない

。 自 己

介を

しょうかい

してくれなかった二人は、 少年の こ とも なにも訊かなかった

し、 めった に 話しか け てこ オ ない 。 最初 は 二人 に 嫌わ れ て いる んじゃ な いかと心配 だ っ た。 い

きら

まで も ち ょっと心配 は 残って いる。も っ とう まく 、にこ や か

に 受 け 答 え をし ない と 。 ち ゃ ん と 笑 わ ない と 。無 愛 想 だ った

ら怒 ら れ る か もし れない 。 「 は い 」 と「いい え」 ですませ る

おこ

のではな く、もう 一言 、二言… … 自分から話しかけ た り… …

でも、 なに を ?

胸がどき どき して 、息苦 し くなった。

ひざ 小 僧 を 、 ま た な め た 。 運動 会 の か け っ こ の 前 み た い だ 。

かくれ ん ぼの鬼になかなか見つ けてもらえない と きや、いた

おに

ずらが見つかって先 生 に 職員室に呼び 出 され るとき と も 似 て

いる。 ひ ざ小僧 を 何度もなめる。舌 を押しつ けて、 こ すっ て 、

し ょ っぱさと苦 さの溶け た 唾を 、 こ く ん 、と呑 み込む。

とつばの

すねぼんさん と呼 ぶのだと、父に教 わった 。 父の ふる

さとで は 、 ひ ざ小 僧のこ と をそう 呼 ぶ。 「すね坊主」 をて い

ぼうず

ねいに言 うと「す ねぼんさん」に な るらしい 。父の ふ るさ と

の方 言は不

思 議だ。太ももを

「 ひ ざ

」 と 呼 ぶ

。ひ ざ小僧は

「すねぼんさん」 で、向 こ うずねは「すね」のまま。父の ふ

るさとで は、太ももの裏側だけを 「 もも 」と呼ぶ のだという 。

そ ん な の変だよ 、 と少年が笑うと、父もおかしそう に笑っ て

いた。

そのとき の父の笑顔を思い出すと、急に悲しくなった。 ひ

ざ小 僧 すねぼんさんに額を乗せた。

(9)

父は、ヒガシさんやアサイさんと同じ、トラ ックの 運 転 手 だっ た。 二カ月 ほ ど 前 、病気で 亡くな っ た。 まだ三十 代半 ば

の若さだった。風邪 ひ とつ ひ い た こ との な い たくましい ひ と

かぜ

だっ たのに、肺に小さ なガンが見つかった あ と、ほんの一カ

月 で 亡くなっ てしまったのだ。

母と少年は、母の実家のある町に引っ越しをすることにな

ひこ

った 。少年は家財道具と一緒にトラッ クに乗せ ら れ、母は ト

いっしょ

ラッ ク を 途

中 で 追 い 抜 く 格 好 で

、 夜 行 列 車 で ふ る さ と へ 向 か

とちゅうぬ

った 。母がそう決めた 。なぜそうするかは教 えてくれなかっ

た。

下り坂だった道は、いつのまにか再び 上 り坂に な って いた 。

また峠 を 越 え るのだ ろ う。真っ暗 な 、ほんとうにさ び しい山

道だ。すれ 違 う車 もな い。派手な

*1

電 飾 で 彩 ら れ た ト ラ ッ

でんしょくいろど

クは、街 を走 っ て いると き には、た てがみの立派なライ オ ン

のよう に 堂々として い た。 いまだって 、 外から見るとき っ と 、

怖いもの な ど な に もない み たいにた くましいだ ろ う。でも 、

こわ

車の中に入ってしまうと、街灯の明かりすらな い 深い闇に浮

かぶきらびやか な 電飾が、逆にものさ び しさ やこころぼそさ

をかき た ててし ま う。

アサイさんは右手一 本 で ハンドルを 操作して 、左手で 無線

のマイクを取った 。「 そ ろ そ ろ 着 く ど」と喉からちぎり取っ

のど

たような そ っ け な い 声 で 言 って 、マ イクを戻 す。 向こう か ら

「 了 解」とい う声も聞こえた が 、 アサイ さん もヒガシさん も

りょうかい

返事はしなかった 。

胸がまた、どき ど き し てき た。すねぼんさんをなめて 、目

をつぶり、成瀬さんの 名前をこころ の中 で 呼 んだ。成瀬さん 、

成瀬 さん 、成 瀬 さ ん … …と繰 り 返す と、 ⑤ 舌の付け 根から苦

い も の が 湧い てくる。

校門まで 見 送 り に 来て くれ たの は男 子 だ け だ っ た。 女 子の

何人かは教室のベランダから手を振ってくれ た。成瀬さん が

その 中にいた かど うかは わ からない 。ほん と うは成瀬さん だ

けでよかったのだ、見送りは。原田くん よりも成瀬さんと最

後に会いたかっ た 。 校 門を 出て 一人で 家 へ向かって いると き

も、 ひ ょ っとした ら成瀬さん が 走っ て追い か けてくるん じ ゃ

な い か、 先回りして四つ角の陰に隠 れて待って い てくれるん

かげかく

じゃな い かと期待して いた が 、 結局成瀬さん は姿を見せなか

った。も しも、最後の最後に成瀬さんに会 え た な ら、いま ま

でどう し ても言 えなかっ た言葉 を……。

アサイさんがな に か言った。

あわてて 顔を 上 げ て 「 はい?」と聞 き返すと、 アサイさん

は前を向いた まま、「もうじきじゃけ ん 」とつぶやくように

言った。

少年は黙っ てう な ず き 、 ⑥ それじゃわ か らな いんだと思 い

直して 、 「はい」と声 に出して 答え た。

で も 、アサイさんには聞こえ な か っ たのか 、 聞こえて い て

も返事をするのが面倒だったのか、黙ってギアを一つ落と し 、

めんどう

アクセ ル を 踏 み込む だ け だ った。

坂の 勾 配 が急になった。峠 が近い 。

こうばい

「腹 が 空 いたろう

、 ボク」ヒガ

シさんが

振り向いて

笑 う

「美味 いも ん 、ぎ ょう さん食わ せ た るけ え 、 楽し み に しとき

うま

んさい」

少年 は な にも 応 え ない

。 こ こ ろぼ そ さ の 向か う 先 が 微 妙

こたびみょう

に変 わ っ た。新しい町 で の 暮らし 新し い学 校で 友だち が

できるだ ろうか、い じめられたりしないだ ろうか、引っ越 し

(10)

た ら仕事 を始 めるとい うお母さんは疲 れ て病気に なった り し

ないだ ろ うか、無口なおじ い ち ゃ ん と仲良く暮らして い け る

だろ う か 、行 儀 にう る さ い お ば あちゃ ん に 嫌 わ れ な い よう に

がん ばら な い と… …「 だい じょ うぶ じ ゃ 、 困 った こと があっ

たら 、お 父 さ んにな ん で も 言え や 」 と 肩 を 抱 いて くれ るお 父

さ ん は、 もう、 い ない …… 。

トラック が急なカーブ を曲がると、目の前 が 不意に明るく

なった。

ドライブ インだった。峠の てっぺんに、雑木林に囲ま れて 、

まる で秘密 基 地 の よ う な終 夜 営 業 の ド ラ イ ブ イ ン があった 。

広い 駐 車 場 はト ラ ッ クで 満杯だった。どのトラックも電

ちゅうしゃじょうまんぱい

飾をまばゆく灯し 、一斉にクラクションを鳴らして少年の乗

ともいっせい

った トラックを迎 えた。

むか

「み んな集まってくれ たんじゃ 」

アサイさんが初めて少 年を振り向 い て笑った。

「み んな 、お父ちゃ ん の連れ な んじゃ 」

ヒ ガ シさん も笑 っ た 。 ま わ りのトラックの明かりに照 らさ

れ た 顔は、二人ともあん が い優しそうだった。

やさ

トラ ックはスピー ドを落として 、ゆっくりと駐車場を進む 。

なんだ か

*2

『ジャングル 大帝』のレ オ に な った ような気分で 、

たいてい

少年も初めて 、頬 をゆるめた 。

二 人 に連れられて食堂に入った 。ヒ ガシさん がセルフサ ー

ビスの水を持ってきてくれて 、アサイさんは「味噌 ラーメン

みそ

と 餃 子にせ え や、ボク」と言 っ た。ど ち ら も 父の 大好物 で 、

ぎょうざ

この ド ラ イブ イ ン に寄るた びに 食べ てい た の だ と い う 。

やがて 、 外から何人もの男の ひ とが 入ってき た。父と顔な じみのトラ ッ ク仲間 な のだとヒガシさ ん が教えてくれ た。自

己紹介 は しな い。 名 前もわ からな い 。 た だ 、 テー ブルを 取 り

囲んだ顔は、 みん な笑っていた 。

「 え え食いっぷりじゃ のう 」「親父によう 似 とる わ い 」「 ト

おやじ

ン汁も食うか? 親父はトン汁も好きじ ゃ っ たんど」「 ぎ ょ

じる

うさ ん 食 う て 早 う 大 き ゅ う なっ て、 お母 ち ゃ ん に 楽さ せ ち ゃ

はよ

れ 」 ……。

少年は 黙 っ て ラー メン を食べる 。餃 子 を食べる 。 ラー メ ン

も餃子も口の中を火傷しそうなほど熱かった 。味はよくわ か

やけど

らな い。 こ ん なに唐辛子の効いた味噌 ラ ーメンは初めて だ っ

とうがらし

たし 、ふ だ ん 家で 食べるとき に は 、 母はラ ー 油を 入れて く れ

ない 。

どん ぶりに顔 をつっ こ ん でラー メンを啜り、 むせそうにな

すす

りながら 餃子を 食 べて いると 、 鼻の奥が 熱くな っ てき た。味

はあいかわらず わ からな い 。それでも、 これ はおいしいん だ 、

いままで食べた ラ ーメンや餃子の中 で い っとうお いしい ん だ 、

と決め た 。

ドラ イブインを出るとき に も、トラ ック仲間 が外に出 て見

送っ てくれた 。ヘッ ド ライ トや電飾を浴 びて駐車場 を 進ん で

いると、左右から「しっかりが んばれや !」「困った こ と が

あった ら なん でも相 談 せ えよ!」「 あんた の お父 ち ゃ ん に は

世話にな っ た んじゃけ ん!」と声がかかる。 照れ く さ くなっ

て夜空 を 見上 げると、 父 が ゴツい顔 をくし ゃ くし ゃに し て 笑

って いた。

トラ ックに 乗 り込 んだ。 ま わ り のトラ ッ クの明かりは仮眠

用のスペースも 、 ぼうっと照らして いた。あ 、そう だ 、と少

年は ランドセルの蓋 を 開 け た 。 寄せ書 き 帳のリボンをほ ど き 、

ふた

(11)

ページを急い で めくった。

〈元気で ね〉

成瀬さんは、そう書い てくれて いた。 期 待して いたような

言葉 で は なかったが 、 Ⅱ でもいいや、と笑って ノートを閉じ

た。

トラ ッ ク が走りだす。 今度は下り坂。道路案内板が見え た 。

右に 曲 が れば 父 が 定期 的に 荷物 を 運 ん で い た コンビ ナ ー トの

ある街、 左 に 曲がれば古 い 城下町 母の ふる さと。

左折 して 、 カ ーブ をい くつか曲がると、 急に 見晴らしがよ

くなった 。遠くに町の明 か り が見える。空の下のほ うが白ん

でいた 。

「あ と 三十 分 ほどで 着 くけえ の 」と アサイさんが 言っ た。

「お 母ちゃ ん が 迎 え に 来て くれ とるど 」と ヒ ガシさんが 笑う 。

少年 は黙ってうなず き 、すねぼんさ ん を ぺ ろ りとなめた 。

味噌 ラー メンと餃 子の辛 さ に舌 が痺 れてい る せい なの か、 す

からしび

ねぼんさんの味は、今度はほんのりと甘かった。

あま

( 重 松

「 す ね ぼ ん さ ん 」 に よ る 。 一 部 原 文 の 表 記 を 改 め た と こ ろ が あ る )

しげまつきよし

注 *1 電 飾 ……トラ ック の周 り に つ け られ た 色 とりど り の 電 球

でんしょく

を使った 装 飾 。

そうしょく

*2 『ジ ャン グル 大 帝 』… …手 塚 治 虫の 漫 画 。主人公はレ オ

たいていてづかおさむまんが

という名 前の白 い ライ オ ン 。

問一 線部①に「半ズボンから 覗 く ひ ざ小僧をそっと

のぞこぞう

な め た 」 とありますが 、本文の冒頭から 線B(

ぼうとう

10 ペー ジ)までの 範 囲で 、「少 年 」はどう い う と き に、 ひ

はんい

ざ小僧 を なめ て い ます か。三十字 以 内 で 説明し な さい 。 問二 線部 ②に「 眉 を ひ そ め 」 と あり ま す が、 この言

まゆ

葉を 本 文 中 と同 じ 意味で 使 って いる文として 最もふ さ わ

しいものを、次 の ア ~ オ の 中 か ら一つ選 び、記 号 で答 え

なさい 。

ア 近視 の母 は 買 い物 を し てい て、 眉 を ひそ め て 小 さ な

値段 表示を見て い た。

イ 兄は 試合 でタイム リ ー ヒ ッ ト を 打 っ た 仲 間 を 、 眉 を

ひそ めて出 迎 えた 。

むか

ウ 建物か ら 急 に 外 へ 出た姉は、明るい太陽を見 上 げて

眉をひ そ め た。

エ 父 は 電車の中 で 携 帯 電 話 で 話 し てい る 人 を 見 て、 眉

けいたい

をひ そ め た。

オ ぼくは授 業中、先生 の 難し い話を聞い て 眉をひ そめ

た。

問三 線部③に「あ いつはずっと爪を 噛ん で いた」と

つめか

ありますが 、 こ の とき 「原田くん」は な ぜ、「ずっと爪

を 噛 んで いた 」のです か。 二十字以内で 説明しな さい 。

問四 線部ア ~ オの中 で 、 一 つだ け他とは言葉 のはた

ほか

らき が 異 な る も の を 選 び 、 記 号 で 答 えな さい。

問五 線部 ④に 「ヒ ガシさんは黙っ て 、叱るように 目

だましか

配せ した 」と ありま す が、 ヒ ガ シ さ ん が この よ う な態度

をと った のはな ぜ で すか 。 次のア~オの中から 最 もふ さ

わし い もの を 一つ選び、記 号 で 答 え な さ い 。

(12)

ア 「少 年 」 の父 が い つ も 利 用 し て いたドラ イブインで 、 トラ ック 運 転 手 の 仲 間 たち と 一 緒に、父を亡くした

いっしょな

「 少 年」 を励 ます 計 画 を 秘密 にし てお きた か っ た か ら 。

はげ

イ 父親の急死に よっ て引っ越し を し な け れ ば な ら な く

ひこ

なっ た「 少年 」 に 、 あ え て 父 親 の こ と を 思い 出さ せる

よ う な余計な こと を言 う必 要は ないと 思 った から 。

ウ 「少 年 」 の父 が 仕 事 中に も か か わ ら ず 、 ドラ イブイ

ン で 時 間 を つ ぶ し て い た と いう 不 名 誉な 事実 を 、 「少

ふめいよ

年」 に伝 えてしまうことは酷なことだ か ら。

こく

エ クラスの友達 が 書いた寄せ書 き 帳 を 「 少 年」 が読ん

でい る こ と に 気 づ い て 、 邪 魔 を し て は い け な い と い う

じゃま

こと を何とか伝 え よ う と し てい る か ら。

オ 突然の引っ越し を 告 げ られた上 に、 初対 面の 大人と

とつぜん

の移動で 緊 張 して食欲を失っている「 少 年 」 に、食事

きんちょう

の話をするのは失 礼 な ことだから。

問六 線A(8ページ)から 線B( ページ)

10

までの 部 分に は次の段 落がぬけて い ます。補 うべ き 場所

を見 つけ 出し、直前の段 落の最 後の五字 をぬ き 出 して答

えな さい 。

お父さ ん だっ てそ うじ ゃない か 、 と 少 年は 思 う 。 あん

なに元気だったのに、 嘘みたいに あ っ け なく死ん でしま

うそ

った。大 きなトラッ ク を 自 由自 在に

操 っ て い た 太 い 腕 は

あやつうで

たった一カ月 の闘 病 生 活 の 間 に 、枯 れ 枝 みたいに細くな

とうびょうか

って し ま って い た。 問七 線部 ⑤に「舌の 付 け 根 か ら苦い もの が湧い てく

る」とありますが、 こ のと きの少年の気持 ち はどのよう

なもの で すか。次のア ~オの中 か ら最 も ふ さ わしい も の

を一つ選び、記号で答 えなさい 。

ア クラス で 一番の仲良しだった成瀬さん と 離 れ ば な れ

なるせはな

にな っ て し ま っ た 孤 独 感に 襲わ れて 、二人で いたいと

こどくおそ

い う 欲求が 満 たさ れずに寂しく思う気持 ち 。

さび

イ 予想もして い なか った父の死による悲 し みを紛 ら わ

まぎ

す た めに 、何 とな く 成 瀬さん に 好 意 を 持 ち 始 めた自分

のいい加減さ が 嫌 に な っ て いる気持 ち。

いや

ウ こ こ ろ の 中で 成瀬 さんの名前を何度も呼ぶた びに 、

今日 のお 別れ の 際 の 成 瀬 さ んの 冷 た さを 思 い知 っ て し

まうこ とを 紛 らわ そう と す る気持ち 。

エ 男子 はみん な で見送っ てくれたのに、成瀬さんのせ

いで 女子 はベラン ダか ら手を 振 ってくれ る人さ え 少 な

かった こ とを苦 々 しく思 う 気持ち。

オ 成瀬 さ んに 好 意 を 抱い てい た の に、最 後 に会 う こ と

いだ

も で きず 、 と うと う自 分の 思 い を 伝 え ら れ な か っ た こ

とを切 な く思う 気 持ち 。

問八 線部 ⑥に「 そ れじ ゃわからないんだ」と ありま

すが 、な ぜで すか。その理由を 簡潔に説明しな さ い。

問九

線部Ⅰに「成瀬裕子さ

んの ページ

、 読 み た

なるせゆうこ

い 」、Ⅱに「でも いいや、と笑って ノートを閉じた」と

ありますが、 こ の あ い だで、「 少年」の気持 ちはどのよ

(13)

うに 変化 しま した か 。 次 の ア ~ オ の 中 か ら最 も ふさ わ し

いも の を 一つ 選び 、 記号で 答え な さ い。

ア 学 校 から 帰る なり トラッ ク に乗 せ ら れた 不 安 を解消

しようと成 瀬 さ ん のペ ージ を見たがっ て い た が、味噌

みそ

ラー メンと

餃 子 の 味 を 堪 能 す る こ と で

、 新 し い 生 活 へ

ぎょうざたんのう

の不 安が 解消 され 、晴れ や か な 気 持 ち に 変化 して いる 。

イ あこがれていた成瀬さん が 、 自 分に好意を持っ て い

るか どう かが 気になって い たが 、 「元 気 で ね 」と いう

短い言葉の中にも確かな愛情 が 感 じ られて 、 新しい町

でも やっ て い けそ う な気持 ちに 変化し て い る 。

ウ 不安な気持 ち の中 で、 好意 を寄せ て いた成瀬さん の

本当の気持 ち を知りたいと思っ て い たが、父親の思い

出の場所 に連 れて行っ てくれた 運 転 手さんた ち の はか

ら いによ って 心が 落ち 着き 、 前 向きな 気 持ち に変 化し

ている 。

エ 運 転 手 さ んとの会話も 弾まず、心もとな い中で成瀬

はず

さんからの優し い 言葉 を想像 していた が 、新 し い 生活

への期 待 感 が 強 まる とと も に、 成瀬 さん への 気 持 ちを

美し い思い出 とし、さっぱりし た気持 ち に変化し て い

る。

オ 母が一人 で決め てしまった引っ越 しのた め、 そ れ ま

での 生 活 や 思い を 寄 せ てい た 成 瀬さ ん に 未 練 を 持 っ て

いたが、 成瀬さん のあっさ り し た 寄 せ 書 きを見た こと

で未 練 が 解 消 さ れ 、 活 き 活 きと した 気 持 ちに 変 化 し て

いる 。

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