日本のアーバンデザインに関する研究
都市におけるカラープランニング
A Study on Urban Design in Japan
Color Planning for the City
1w153090-8 田中 奈穂子 指導教員 長 幾朗 教授 TANAKA Naoko Prof. CHOH Ikuro
概要: 本研究は、町を構成する色彩、サイン、建物、看板等のアーバンデザインを情報と捉え、色彩を変更する ことによってより良い街並みができるかどうかを研究した。現在では経済産業省が東京オリンピックに向けてサ インシステムの JIS を改正したように日本国内では色彩に意識が高まっている。そこで、プルキンエ現象発生時 から夜の街に光(色彩)を追加することによって街の情報を誰もが容易に取得し得るについて検証した。色彩は 街のイメージによるイメージプロフィールを作成し、代表的なイメージからカラーチャートを作成し街並みを付 加することを試みた。
キーワード: アーバンデザイン、サインシステム、色彩、カラーチャート、プルキンエ現象 Keywords: urban design, sign system, color chart, Purkinje phenomenon
1.はじめに
本研究の課題は、日本のアーバンデザインの 特異性の分析、およびこれらを考慮したデザイ ン・メソッドの提案である。欧米の環境や手法 の、いわゆるウェスタン・スタイルのデザイン を模倣した表現ではなく、日本に古来から根付 いている審美性や空間構成を活かし、その有用 性や可能性を見出したい。日本には古来から、
精霊、霊魂、神様が自然の中に宿るというアニ ミズムの思想があった。八百万の神とも呼べる だろう。人工物に囲まれて暮らす現代の人々に は無縁の世界観に感じられるかもしれないが、
現在の日本人にもこの考え方は残っている。そ のため、西洋のアーバンデザインをただむやみ に参考するのではなく、日本的な慣習や風習に 即したデザインが必要である。
2.昼間と夜間の町の情報量
ドラッグストアや家電販売店のチェーン店等 の乱立により、原色系の色を用いた派手な色が景 観を汚している。例えば、マツモトキヨシやビッ グカメラなどのチェーン店の乱立である。
「高彩度よりも低彩度の色彩の方が周辺の景観
と調和しやすい傾向」があり、「中小規模の建物 であっても高彩度の色彩を使用すると周囲の景 観に影響を及ぼします」
という視覚効果においては、このような店舗が乱 立する事により高彩度色ばかりが氾濫 する事に よる情報過多や色彩過多の状況に至っている。情 報や色彩過多に至る事により、 本来の街の景観 や標識、案内等の顕在化を困難としてしまってい る。また、広告としての視認性のためだけに、夜 間にライティングする事は夜間の情報認知を損 なう要因ともなっている。このような状況は、街 としての景観に配慮しないデザインの事例とも 言えよう。
3.プルキンエ現象と今後の提案
明るい状態では超波長の光に対する感度が高
い一方で、暗くなってくると短波長に対する感
度が相対的に高くなるプルキンエシフトによっ
て、薄暗く(薄明視に)なってくると感度が落
ちる長波長の光である赤や橙、黄はくすんで見
える。一方で相対的な感度が高くなっていく短
波長域の色である青はより明るく鮮やかに見え
2
る。これをプルキンエ現象といい、桿体と錐体 の波長ごとの感度の違いを表していると言え る。
プルキンエ現象を緩和させるには失われた長波 長の光を回復させる必要があるだろう。現在は プルキンエ現象の対策として Panasonic が夜の 街並みを明るくする街灯を提案している。
本提案では、プルキンエ現象が発生する薄暮か ら夜間の間に、町並みに色彩や光を加える事を挙 げた。このような表現による街のイメージ形成や ゾーニングの認知性の向上を示唆した。そうする ことで夜の風景として情報量を増加させること を提案したい。色彩選択については、街のイメー ジを再現することを課題とした。
3.イメージの再表現
調査実験で抽出された、渋谷は「軽くて不透 明で刺激的で高級感がなく、さわやかでない派 手で複雑な町」、代官山は「女性的で穏やかな 大人っぽい高級感のある町」という結論からカ ラーチャートを作成した。
図1 渋谷および代官山のイメージカラー
渋谷の街、代官山の街並みそれぞれに適応させ、
調査実験と同様にイメージを SD 法で調査した。
その結果が図2である。
また、別実験としてそれらのカラーを歌舞伎町 等に適応させ、現状の町について違和感があるの か、街の情報量が適切かどうか、どのように感じ るかの心理調査も行っている。
4.結論(まとめ)
現状の街並みを構成する部分のうち、壁面の 色彩の殆どは東京都の設定するカラーマップの 適正値内にあった。つまり昼間の場合に関して 言えば現状の街並みで問題がないということで ある。壁面の色彩という情報という点に関して 言えば、現状理想通りである。
そのため、街並みを構成する別要素、つまり 極彩色で広告された看板類、周囲から突出した 外看板や置き看板の色彩および形状に規制を設 ける必要があるだろう。
また、東京都は夜の街の情報を構成る色彩に ついても作成する必要があるだろう。また、街 の印象は、形態・色彩等諸要素も含まれている ため、夜間にも機能するランドマークが必要で ある。
このような試みは、視覚健常者へのイメージ形 成と共に、色覚障害者にも優しいまちづくりを示 唆するものとなろう。ただし、全盲者への対処は 他のアプローチが今後必要である。
注:
*1 『新宿区景観形成ガイドライン 形態意匠の手 引き』
<http://www.city.shinjuku.lg.jp/content/00023843 6.pdf 23p>
*2 大山 正、 齋藤 美穂 『色彩学入門―色と感性の 心理』(東京大学出版会、2009)
*3 『色彩検定公式テキスト 2 級編』(株式会社 A・
F・T 企画、2010)
*4 『波長制御技術(Panasonic)』
<http://www2.panasonic.biz/es/lighting/plam/know ledge/document/0902.html>