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1. 経皮的椎体形成術の現況と治療成績

関西医科大学 放射線科学教室

谷川 昇

 経皮的椎体形成術はその低侵襲性と劇的な除痛効果 により世界的に急速に普及してきた。適応は疼痛を有 する脊椎圧迫骨折であり,感染性のものを除き腫瘍性, 骨粗鬆症性のいずれの圧迫骨折に対しても適応とな る。しかしながら,骨粗鬆症性圧迫骨折に対する本手 技について New England Journal of Medicine(NEJM) に本治療法の有効性に疑問が投げかけられる論文が発 表され,その結論は今だ出ていないのが現状である1,2) 本稿では腫瘍性と骨粗鬆症性圧迫骨折に分けてそれぞ れ適応,手技,臨床成績について概説させていただく。 腫瘍性圧迫骨折 1)適 応  腫瘍に起因する圧迫骨折でそれに起因する疼痛を有 する症例が適応となる。腫瘍性の圧迫骨折では骨粗鬆 症性圧迫骨折に比較して椎体後面の骨皮質の破壊が多 い。原則的には椎体後面の骨皮質が保たれているもの が適応となるが,実際にはそのような症例は少なく, 椎体後面の骨皮質へ腫瘍が浸潤し脊柱管内に腫瘍が存 在する症例であっても脊髄や神経根の圧排症状がない 場合は経皮的椎体形成術を施行する症例は少なからず 存在する。 2)臨床成績  腫瘍性圧迫骨折に対する PVP のこれまでの報告は ほとんどが後向き研究であり,その有効率は 80%以 上の報告が多い(Fig.1)。しかしながら合併症の発生 率は 8~14%と骨粗鬆症性圧迫骨折に対するPVP の合 併症の頻度と比較して高い。腫瘍性圧迫骨折に対する PVP の成績については Meta-Analysis の成績を紹介す る(Table 1)3)。臨床的有効率すなわち除痛率には報告 によりかなりの幅があり,20.3~78.9%と報告されて

骨セメント

いる。合併症の頻度についてはセメント注入量が 4㏄ 以上で合併症の発生率が増加していた。  腫瘍性圧迫骨折に対する PVP の前向き試験は本邦 で行われその報告では有効率は 1 週後,4 週後でそれ ぞれ 70%,83%であり,腫瘍性圧迫骨折に対するPVP は安全で即効性のある有効な治療手段であると結論づ けている4)。しかしながら,骨粗鬆症と比較すれば明 らかにその合併症の頻度は高い。その原因はセメン トリークの多いことに起因していると考えられる。転 移性椎体骨折に対する PVP の合併症に関する報告で も 304 椎体に対する PVP で 423 か所にセメントリーク が認められており,リークは静脈内へのものは全体の 78.5%を占めている5)。骨粗鬆症性圧迫骨折との違い は椎体構面の骨破壊が生じやすいこととセメントリー クの頻度が高いことである。静脈系へのリークは肺塞 栓症,奇異性脳塞栓,右室穿孔,ARDS,下肢動脈塞 栓などを引き起こす可能性があり,十分注意する必要 がある。 骨粗鬆症性圧迫骨折に対する PVP  骨粗鬆症に起因する圧迫骨折に対する PVP は 1990 年代から米国を中心に発展し,2000年代より本邦でも 行われるようになってきた。骨粗鬆症に起因する代表 的骨折には橈骨遠位端骨折,大腿骨頸部骨折,椎体圧 迫骨折があるが,これらのうち椎体圧迫骨折は比較的 低年齢から発症し最も多い骨折である。50歳の女性が 生涯にわたり椎体圧迫骨折を起こす確率は約40%と言 われている。椎体圧迫骨折が生じると背部痛を生じ胸 郭の変形をもきたしてくる。そのため呼吸機能が低下 し食欲も減退し睡眠障害も生じ活動性が低下する。そ のため骨梁はさらに減少し再骨折の危険性は増加し, 肺合併症の頻度も増えて最終的に 23%死亡率が増加

Percutaneous Vertebroplasty:

Current Status and Clinical Results

Department of Radiology, Kansai Medical University

Noboru Tanigawa

Percutaneous vertebroplasty, Compression fracture, Osteoporosis, Metastases Key words

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第 40回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:谷川 昇 するとされている。このように椎体圧迫骨折は良性疾 患ではあるが死亡率をも増加させる病態であるといえ る。このような圧迫骨折に対して経皮的椎体形成術は, 背部痛を軽減するとともに不完全ながら椎体のアライ ンメントをも改善する手技である。 1)適 応  重要な点は圧迫骨折が疼痛の原因であることを確認 することである。その際には MRI での椎体内での信 号変化,すなわち骨折椎体内の bone marrow edema あるいはクレフトの有無が参考となる(Fig.2)。化膿 性脊椎炎などの炎症に起因する疼痛症例および出血傾 向を有する症例は禁忌である。Myelopathy あるいは radiculopathy を伴う症例は絶対的な禁忌ではないが, 術後症状が悪化する症例があり適応は慎重に判断する 必要がある。 2)臨床成績  まず,自験例の骨粗鬆症性圧迫骨折 500 椎体 194 例 に対する 216 回の経皮的椎体形成術の成績を紹介させ ていただく。平均年齢は 73.4歳,女性168例,男性26 例であった。治療椎体の分布は Th5 から L5 までで, Th12 が 88 椎体,L1 が 98 椎体と胸腰椎移行部に多く認 められた。技術的には目的椎体へのセメント注入には 全例で成功し,1 椎体当たりの平均注入量は 3.3 ㏄で あった。臨床的には痛みは術前平均 7.6 であったもの が翌日には 3.1 に低下し,1 ヵ月後 2.3,4 ヵ月後 1.8, 10 ヵ月後 1.5 と低下しその低下した状態はそれ以降も 持続していた。しかしながら経過観察中に65例103椎 体に新たな圧迫骨折が生じてきた(Fig.3)。現時点では 新たな圧迫骨折は骨粗鬆症の自然経過とする意見と, 注入したセメント注入椎体の硬度増強により未治療椎 体の脆弱性が相対的に増加するためとの意見がある が,結論には至っていない。PVP後の新規骨折に関し て前向きに評価した報告では PVP 群と保存的治療群 で有意差はなく,保存的治療群で骨折椎体の椎体高の 減少が大きかった6)。しかしながら,いずれにせよ十 分な経過観察が必要であり,背部痛の再発時には新た な圧迫骨折の出現を念頭においておく必要がある。自 験例の報告以外にも骨粗鬆症性圧迫骨折に対するPVP の有用性は多数報告されており,それらの報告をまと めた meta-analysis の結果を Table 2 に示す7)。自験例 および meta-analysis の結果から PVP の一般的な成績 は,除痛効果を 0 ~ 10 ポイントの visual analog scale (VAS)で評価した場合,約 5 ポイントの低下を示しそ の効果は持続的である。しかしながら,PVP後に新た 技術教育セミナー / 骨セメント

Fig.1 Vertebral compression fractures of L4 and L5 due to bone metastases from breast cancer

a : Preprocedural CT scan of L4. CT scan shows osteolytic and osteoplastic change in vertebral body of L4. b : Lateral radiograph shows the bone cement needles inserted into L4 and L5.

c : Postprocedural CT scan of L4. CT scan shows bone cement injected in L5. In this patient Visual Analog Scale (VAS) score decreased from 8 before the procedure to 0 after PVP.

a b c ・対象  − 1989 〜 2010.4  30 文献  −対象患者:987 例(45〜72 歳) ・手技  −局所麻酔がほとんどで,頸椎に対しては全身麻酔 ・臨床的結果  − Pain reduction:20.3〜78.9% ・合併症  −手技関連死亡:5 例  −重篤な合併症:19 例    神経症状の出現:12 例,肺セメント塞栓:4 例,    血腫:1 例,血胸:1 例,DVT:1 例  −セメント注入量が 4 ㏄以上で合併症の発生率が上昇 Chew C, et al: Clinical Radiology 66: 63 - 72, 2011

腫瘍性圧迫骨折に対する PVP Meta−analysis

Table 1 Summary of meta-analysis of PVP for spinal bone metastasis

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な圧迫骨折を呈する症例も少なからず存在する。PVP の合併症は 1%以下であり,PVP は安全かつ有効な手 技と考えられる。 3)ランダム化比較試験の必要性 PVP のように除痛を目的とした治療の有効性を証明す るには,その治療法が疾患の自然経過とプラセボ効 果を超える除痛効果を有することを示す必要がある8)

Fig.2 a, b : Sagittal(a)T1-weighted and(b)fat-suppressed T2-weighted MR images of osteoporotic

compression fracture of T 10 vertebral body with extensive bone marrow edema pattern. c, d : Sagittal(a)T1-weighted and(b)fat-suppressed T2-weighted MR images of osteoporotic

compression fracture of T 10 vertebral body with large cleft.

0 5 10 15 20

25 Adjacent vertebrae Non-adjacent vertebrae

~1W 1W~

1M 1M~ 3W 3M~ 6M 6M~ 1Y 1Y~ 2Y 2Y~ 3Y 3Y~

c a b

d

Fig.3 Duration from percutaneous vertebroplasty to new vertebral compression fractures

・対象  − 1989〜2004 の 30 文献  −対象患者:2,086 例 ・手技  −全身麻酔:15%,局所麻酔:30%,局所+ NLA:55%  −透視下:75%,透視+ CT:25%  −穿刺針:11.1G(7 〜14G)  − Approach:Transpedicular:61%,Extrapedicular:5.5%         Transpedicular + Extrapedicular:33.5% ・臨床的結果(VAS で評価:19/30)  −術前 8.1(6.4〜9.7)→術後 2.6(1.7〜3.9)p<0.001  − 5.5 points or 67.9%の改善 ・合併症  −症状を有する合併症:0.9%    リークしたセメントを外科的摘出    一過性の神経症状  −手技関連死亡:0  −肺セメント塞栓:0.1%以下(全例で症状はなし)  −セメントリーク:41.2%(98%は無症状)

Hochmuth K, et al: Eur Raddiol. 16(5): 998 - 1004, 2006

骨粗鬆症性圧迫骨折に対する PVP Meta−analysis

Table 2 Summary of meta-analysis of PVP for verte-bral compression fracture due to osteoporosis

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第 40回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:谷川 昇 このためには PVPと類似しているが異なる治療(シャ ム治療)とのランダム化比較試験により PVP の優位性 を証明する必要がある。骨粗鬆症性圧迫骨折に対する PVP に関してもこのことは比較的早期から認識されラ ンダム化比較試験(RCT)が行われ,その結果がNEJM の 2009 年 8 月号に骨粗鬆症性圧迫骨折に対する PVP に関するランダム化比較試験として報告された1,2)。結 果は,2 つの報告とも除痛効果と QOL の改善に PVP とシャム治療とで有意差は認められなかった。これら 2 つの報告からは圧迫骨折の除痛のために骨セメント の注入は必要ないと解釈できるとともにPVPの除痛効 果はプラセボ効果のためではないかとも考えられる。 しかしながら,2 つの報告に対する以下のような問題 点も指摘されている。具体的にはこれらの研究に本 当に痛みの強い患者が含まれていたのか。急性期の圧 迫骨折で PVP による劇的な除痛効果が期待できる患 者が,シャム治療群に回されることを恐れてこの臨床 試験に参加していないのではないか,さらにいずれの 研究も予定症例数の約半数で症例登録が終了しており 十分な統計学的なパワーを有しているのかどうか,ま た,患者選択基準の必須項目に MRI 検査が含まれて おらず,慢性期の疼痛もこの中に含まれており,PVP の正確な評価になっていないなどである9,10)。これら の意見に対して 2 つの論文の筆者らも様々な形で反証 している。PVPに関するランダム化比較試験の結果で は,保存的治療を対照群とした臨床試験では PVP が 保存的治療と比較して除痛効果にすぐれ,対費用効果 も良好との結論であるが,シャム治療を対照群とした RCT では PVP の優位性は証明されていない。そこで 現在VERTOS groupでは前述のシャム治療とのランダ ム化比較試験の欠点を補う形で新たなランダム化比較 試験(VERTOS Ⅳ)が進行中である11) 4)経皮的椎体形成術の保険について  腫瘍性圧迫骨折に対する PVP は 2011 年 1 月より骨 セメント製剤が保険適応となった。しかしながら全例 市販後調査が必要であり,実際には限定された施設で のみ施行可能である。骨粗鬆症性圧迫骨折に対しては 2010年4月に先進医療の適応より除外された。その後, 2012 年 4 月には経皮的椎体形成術の手技が保険に認め られたが,骨粗鬆症性圧迫骨折に対して使用できる骨 セメントが市販されておらず,現時点では自費診療で 行わざるを得ない状況である。 最後に  腫瘍性圧迫骨折に対する PVP は有効で安全な方法 であるが,骨粗鬆症性圧迫骨折に対する PVP と比較 すれば合併症の頻度は高い。骨粗鬆症性圧迫骨折に対 する PVP は保存的治療と比較して除痛効果に優れ対 費用効果も良好ではあるが,シャム治療を対照群と したランダム化比較試験では骨セメントを使用しない シャム治療に対して PVP の優位性は証明されていな い。今後,急性期あるいは偽関節例などに対象を限定 し,厳格な適格基準に基づいたランダム化比較試験を 行うことにより,PVPの有用な病態が明らかになって くるものと考えられる。 【参考文献】

1) Kallmes DF, Comstock BA, Heagerty PJ, et al: A randomized trial of vertebroplasty for osteoporotic spinal fractures. N Engl J Med 361: 569 - 579, 2009. 2) Buchbinder R, Osborne RH, Ebeling PR, et al: A

randomized trial of vertebroplasty for painful osteoporotic vertebral fractures. N Engl J Med 361: 557 -568, 2009.

3) Chew C, Craig L, Edwards R, et al: Safety and effi-cacy of percutaneous vertebroplasty in malignancy: a systematic review. Clin Radiol 66: 63 - 72, 2011. 4) Kobayashi T, Arai Y, Takeuchi Y, et al: Phase I/II

clinical study of percutaneous vertebroplasty (PVP) as palliation for painful malignant vertebral compres-sion fractures (PMVCF): JIVROSG-0202. Ann Oncol 20: 1943 - 1947, 2009.

5) Barragán-Campos HM, Vallée JN, Lo D, et al: Percu-taneous vertebroplasty for spinal metastases: com-plications. Radiology 238: 354 - 362, 2006.

6) Klazen CA, Venmans A, de Vries J, et al: Percuta-neous vertebroplasty is not a risk factor for new osteoporotic compression fractures: results from VERTOS II. AJNR Am J Neuroradiol 31: 1447 - 1450, 2010.

7) Hochmuth K, Proschek D, Schwarz W, et al: Percu-taneous vertebroplasty in the therapy of osteoporot-ic vertebral compression fractures: a critosteoporot-ical review. Eur Radiol 16: 998 - 1004, 2006.

8) Turner JA, Deyo RA, Loeser JD, et al: The impor-tance of placebo effects in pain treatment and re-search. JAMA 271: 1608 - 1614, 1994.

9) Baerlocher MO, Munk PL, Radvany MG, et al: Ver-tebroplasty, research design, and critical analysis. J Vasc Interv Radiol 20: 1277 - 1278, 2009.

10) Bono CM, Heggeness M, Mick C, et al: North American Spine Society Newly released vertebro-plasty randomized controlled trials: a tale of two tri-als. Spine J 10: 238 - 240, 2010.

11) Firanescu C, Lohle PN, de Vries J, et al: A ran-domised sham controlled trial of vertebroplasty for painful acute osteoporotic vertebral fractures (VER-TOS IV). Trial 12: 93, 2011.

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2. 骨粗鬆症性圧迫骨折に対する経皮的椎体形成術

ISOP法による経皮的椎体形成術

札幌東徳洲会病院 画像・IVR センター

齋藤博哉

はじめに  高齢化社会を迎えたわが国では骨粗鬆症患者は約 1000 万人と推定されている。骨粗鬆症を基盤とした椎 体骨折の発生率は高く,女性の 40%が一生のうちに椎 体骨折を罹患すると報告されている。骨粗鬆性椎体骨 折は日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)に影響を及 ぼし,骨折罹患後には死亡率も高まることが明らかに なってきている1)。そのうえ,従来は骨癒合が得られ やすいと考えられてきた骨粗鬆性椎体骨折にも,保存 的治療で骨癒合が得られない予後不良例が数多く存在 することが指摘されてきている2)。経皮的椎体形成術 (percutaneous vertebroplasty:PVP)は, 新 鮮 例, 陳 旧例を問わず骨粗鬆症性椎体骨折の即効性のある除痛 効果手段であり,その優れた奏効率から,今後多くの 医療機関で普及していくことが予想される。一方,技 術的な合併症の増加も危惧され,PVP を安全に効率 よく施行するための,技術的な習熟が望まれる。本稿 では,骨粗鬆症による圧迫骨折に対する DSA 透視下 (ISOP 法)による経皮的椎体形成術について,適応, 手技やコツ,合併症について述べる。 適応と禁忌 1 .適 応  当院での骨粗鬆症性圧迫骨折に対する PVP の適応 を以下に示す。 1) 急性期・亜急性期 疼痛を伴う急性または亜急性期 の圧迫骨折を対象としている。 2) 陳旧性圧迫骨折 陳旧性の圧迫骨折には骨壊死や偽 関節を合併して体動時に疼痛を伴う場合がある。こ のような不安定性の圧迫骨折は PVP が奏功する点

骨セメント

から良い適応となる。無痛性の陳旧性骨折は適応外 としている。 2 .相対的適応  技術的に困難あるいは治療効果が期待できないた め,以下の場合は相対的適応としている。PVPを強く 希望する場合には,十分なインフォームドコンセント のもとで PVPを施行している。 1) 20%以上の脊柱管狭窄を伴う場合 2) 椎体の90%以上に圧潰している圧迫骨折 3) 1 年以上経過した陳旧性骨折(不安定性骨折は適応 としている) 4) 脊髄症状や神経根症状を伴う場合 3 .禁 忌 1) 出血傾向がある場合 2) 感染症を伴う場合(椎間板炎,骨髄炎,硬膜外膿瘍, 敗血症など) 3) 薬物療法が奏功している圧迫骨折 4) 症状のない安定した圧迫骨折 5) 骨粗鬆症のない外傷性圧迫骨折 6) 強直性脊椎炎,強直性脊椎骨増殖症合併例 治療椎体の決定  圧迫骨折は,脊椎 X線写真で圧潰の明らかな圧迫骨 折が存在し,そのレベルに一致して体動時に増強する 局所の疼痛と棘突起上の叩打痛があれば診断は可能で ある。しかし実際の臨床では典型的な臨床症状を呈さ ないことも少なくなく,また,骨折時期が不明な場合 や新旧の骨折が混在する症例では,脊椎 X線写真だけ では治療椎体の決定は困難である。また,疼痛の原因

Percutaneous Vertebroplasty for Osteoporotic Compression

Frutures under ISOP Method

Imaging and IVR center, Sapporo Higashi Tokushukai Hospital

Hiroya Saito

Percutaneous vertebroplasty, Osteoporosis, Compression fracture, ISOP method Key words

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第 40回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:齋藤博哉 技術教育セミナー / 骨セメント が圧迫骨折以外の変形性脊椎症,脊柱管狭窄症,椎間 板ヘルニアである場合や,PVPの禁忌となる周囲感染 症合併の除外のため,PVP適応と治療椎体決定のため には,MRIは必須である3)  MRIでは,急性期~亜急性期の圧迫骨折は炎症や浮 腫を反映して T1 強調像で低信号,T2 強調像脂肪抑制 画像にて高信号を示す。骨壊死や偽関節を伴う陳旧性 圧迫骨折では,骨壊死を反映して T1 強調像と T2 強調 像でともに低信号を呈し,その周囲に炎症や浮腫を反 映して T1 強調像で低信号,T2 強調脂肪抑制像で高信 号を伴う。偽関節の空洞内に気体や液体が観察される こともあり,治療椎体の決定に有用である。  さらに画像診断では,MRIに加えCTが有用である。 CT は横断像ばかりでなく,矢状断像,冠状断像など も作成し,穿刺経路の参考とする。また,椎弓の径や 骨の後方への突出の程度,椎体後壁の破壊や骨折線, cleftの有無などを把握する。 インフォームドコンセント  インフォームドコンセントは他の IVRと同様,重要 である。まず,PVPは圧迫骨折による疼痛除去が第一 の目的であること,治療中の体位,治療方法などにつ いて説明する。また,合併症や術後の新規圧迫骨折に ついても十分に説明しておく必要がある。また,股関 節の手術において骨セメント自体の作用による死亡例 のあることも説明している。治療効果として新鮮例や 偽関節例などでは効果は良好であるが,亜急性期例で は効果がやや低下することも説明しておく。  また,高齢者では,圧迫骨折をきたす以前に腰痛症 を有していることが多い。PVPによりすべての腰痛から 解放されると誤解する場合も少なくない。PVPは圧迫 骨折によって生じた疼痛のみを改善するということを 十分に理解してもらう必要がある。椎体形成術により 圧迫骨折による疼痛の消失により,以前からあった腰 痛や根性坐骨神経痛などが顕在化することがあること なども,十分すぎるくらい説明する必要がある。治療 対象者に高齢者が多いため,理解力があると思われる 症例でも,可能な限り家族にも同席してもらっている。 手技の実際 1 .前準備 前投薬:外来にて手技 30 分前にペンタゾシン15 ㎎筋 注,静脈ルートの確保,および膀胱カテーテルの留置 を行い,血管造影室に患者を移動する。なお,90歳以 上の高齢者では,ペンタゾシン15㎎筋注の代わりにボ ルタレン 25㎎座薬を使用することが多い。 2 .術中管理  患者を DSA台に腹臥位で寝かせる。その際,胸部が 直接圧迫されないように折りたたんだバスタオルを肩 や腹部に置き固定する。セメント注入による椎体高の 伸長を目的として,骨盤と胸部の下にタオルなどを入 れて脊椎の kyohosisを矯正する体位をとるようにして いる。次いで,血圧計,心電図,パルスオキシメーター を装着する。 3 .穿 刺  X線透視を使っての椎体形成術は,DSA装置を使っ て施行している。ISOP法を用いたLatero-transpedicular approach で,基本的に 1 椎体に対して片側の椎弓から 1本の穿刺針(1回の穿刺)のみで骨セメントの注入を行 うという方法である4)。時間的にも材料費(穿刺針)や X 被曝,患者負担の観点からも合理的であるが,圧潰 が著明な症例や側彎・偏移が強い椎体に対しては,理 想的な骨セメントの分布を目的に,最初から両側椎弓 に穿刺することもある。 1) 側面透視にて透視台を上下動し,isocenter を椎体前 面 1/3の部位に合わせる(Fig.1a)。 2) X 線正面透視にて椎弓根が左右対称になるように管 球を左右に動かし,isocenterの位置を治療椎体の棘 突起に合わせる(Fig.1b)。 3) 正面管球を頭尾方向に動かし,両側の椎弓根が椎体 の中央になるように定める(椎弓根が椎体の上下終 板の間に位置するように)。 4) 穿刺する椎弓根を追いながら正面管球を回転し,椎 弓根が真正面から捉えられるような位置~椎弓根の 外側の皮質が消えるまで斜位をかける(Fig.1c)。 5) 椎体の圧潰が強い症例では,目的椎体の椎弓根が同 定しにくいことがある。このような場合は,上下の 圧潰されていない椎体の椎弓根を同定する。上下の 椎弓根を結んだ線上に当該椎弓根が存在するため, おおよその位置が推定できる。 6) ペアンで位置を指しながら,皮膚,穿刺経路,椎弓 の骨皮質を十分に麻酔する。この時,患者に違和感 や電撃痛などがないか,対話しながら麻酔していく。 7) 皮切し,ペアンで鈍的に剥離後,透視下に用手的に 穿刺針を進め,骨皮質に達したならば,穿刺針を しっかりと保持しながら,1 ㎝程ハンマーで挿入し ていく(Fig.1d)。 8) 側面透視に変更し,椎体の前 1/3 程度まで穿刺針を ゆっくりとハンマーを用いて挿入する(Fig.1e)。 9) 正面透視で穿刺針先端が椎体の中央(両 pedicle から 等距離)に位置している事を確認する。 4 .セメント作成・注入 1) 理想は 24℃位の部屋で,冷蔵庫で冷やしておいたセ メントを専用液で溶解(タイマーで測定し 30秒ごと に報告してもらう)。骨セメントは X線透視で見えに くいため,滅菌処理をした硫酸バリウム製剤 6 ㎎を セメント製剤に混和している。約 90秒で液状化した ら 20㏄のシリンジに移し,さらに1㏄のロック付シ リンジに分注し,2~3分程度で注入する。

(7)

2) 側面透視下に慎重にかつ迅速に骨セメントを注入す る。セメントは 1 ㎖注入ごとに,穿刺針の内筒を用 いて圧入する。1 椎体あたりの注入量の目安は,胸 椎で 2㎖,胸腰椎移行部で3㎖,腰椎で4㎖程度であ り,各椎体には 2 ㎖以上は注入したい。なお,空洞 形成例では増量する。しかしながら,PVPの合併症 のほとんどが,椎体外へのセメントのリークが原因 である。骨セメントは「液体塞栓物質」であり,椎体 形成術はそれを用いた「椎体の塞栓術」と考えると, IVR 医にとって理解しやすい5)。椎体外(静脈,椎間 腔)に少しでもリークが起これば注入を中止する。30 秒ほど待ち,穿刺針を少し抜去し追加注入を行うこ ともある。椎体にセメントが十分分布されれば,注 入を中止する。また,椎体後壁近く(椎体後壁から 1/4より背側)までセメントが達した場合も,脊柱管 内へのリークを避けるため,注入を中止する(Fig.2)。 5 .術後管理  術後 2 時間は,背臥位でベッド上安静としている。 この際はパルスオキシメーターによる SaO2 モニター を含むバイタルチェックを行う。術後,炎症反応を伴 わない発熱(37.5℃前後)や一過性の嘔気を認めること があるが,いずれも骨セメントに対する生体反応と考 えられ,重篤な副作用とはならない。2 時間後に起立 させ,問題がなければ歩行を開始させる。通常,3 時 間後に自宅退院(日帰り手術)を許可している。 骨粗鬆症による圧迫骨折の治療成績  数多くの報告があるが,どの成績も良好な臨床成績 を収めている。著明な痛みの軽減は 1ヵ月以内に80~ 90%以上で得られる6~8)。われわれの成績では,VAS 3 以上の改善が有効 94.9%,PVP後VAS値が0~1となっ た著効が 50.8%であった。通常,治療後1~3日後には 疼痛が軽減し長期にわたり持続する。比較的急性期, 亜急性期(2ヵ月以内)の骨折で,骨折が2椎体以内の場 合,また椎体内に空洞形成があり,偽関節状になって いる場合に治療効果が大きい。疼痛改善のほか,背筋 が伸びたと症例がほとんどであり,中には身長が 3.5㎝ 伸びた症例もあった。  なお,術後治療した上下の椎体に骨折を起すことが 約 15~20%あり,再治療が必要なことがある。 Fig.1 a : 側面透視にて isocenter を治療 椎体前面 1/3の部位に合わせる。 b : 正面透視にて isocenter を治療 椎体の棘突起に合わせる。 c : 椎弓根が真正面から捉えられる ような位置まで斜位をかける。 d : 透視下に用手的に穿刺針を進 め,穿刺針を保持しながら 1 ㎝ 程ハンマーで挿入していく。 e : 側面透視下に椎体の前 1/3 程度 まで穿刺針を挿入する。 d a b c e

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第 40回日本IVR学会総会「技術教育セミナー」:齋藤博哉 合併症  治療後に合併症が発生する頻度は,骨粗鬆症で 3% 程度とされている。出現する可能性のある副作用・合 併症には5,6)(1)穿刺に伴うもの:穿刺部の血腫形成, 膿瘍形成,敗血症など,(2)セメント漏出に伴うもの: 脊髄症状(膀胱直腸障害,下肢麻痺),背部痛や腰痛の 悪化,肺塞栓症(低酸素血症,呼吸困難)など,(3)セ メント製剤によるもの:一過性血圧低下,アレルギー ショック,心機能の低下,不整脈の発生などがある。  治療効果は椎体へのセメント注入量に依存せず,反 面,合併症は骨セメントの注入量に相関するとされ, 合併症を避けるため,過量の骨セメントの注入は避け るべきである。骨セメントの椎間板や周囲軟部組織, 椎体周囲静脈叢へのリークは高頻度にみられるが,臨 床症状はなく軽度の漏出は問題ない。しかしながら, 椎間孔や脊柱管へのセメント漏出は,末梢神経や脊髄 の障害を起こす危険性があるため注意が必要である。 また,重篤な骨セメントの副作用として,股関節の手 術での使用時における血圧低下,ショックなどが報告 されている。死亡例は高齢者に多いとされ,その原因 として,髄腔内容物の血管内流出による肺塞栓,骨セ 技術教育セミナー / 骨セメント Fig.2 セメントの注入 は椎体後壁近く までで止める。 Fig.3 椎体周囲静脈叢へ のリークなどは高 頻度にみられるが, ほとんどの場合臨 床症状はない。 Fig.4 脊柱管内へのセメント漏出は,末梢神経や脊髄の障害を起こす危 険性があるため注意が必要である。この症例では幸い臨床症状は 認められなかった。 a b c

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メント重合前の発熱,モノマーによる心筋抑制などが 推測されている9)。製品間の相違はないとされ,死亡 例では昇圧剤やステロイドに反応しないとされる。対 策として,麻酔科医管理下での使用,骨セメント重合 後の使用が推奨されている。自験例では,血圧低下や 心筋抑制,アレルギー反応などは見られていない。 術後の生活指導  寝たきり老人をつくらないためには,術後の個々の 症例に応じた生活指導が重要である。術前,歩行に支 障が無かった症例では,術前通りの歩行を許可する。 術前ある程度歩行が制限され,軽度の筋力が低下し, 転倒の恐れのある場合には,歩行器を使用し歩行を 開始する。患者本人の自覚を促すことも重要であり, QOL,ADL が向上するかあるいは逆に寝たきりにな るか否かは,本人次第であることを自覚・理解しても らう。圧迫骨折の再発を恐れて,日常生活を極端に制 限する症例もあるが,できるだけ骨折前の生活に戻る ように指導するが,転倒に注意し,重たいものを持た ないよう心がけてもらう必要がある。 おわりに  高齢化社会を迎え,骨粗鬆症性椎体圧迫骨折は今後 ますます増加し,これによる寝たきりの高齢者も増加 することが予想される。このような不幸な高齢者が少 しでも減少するためにも,経皮的椎体形成術が普及し 安全に施行されることが望まれる。 【参考文献】

1) Spivak JM, Connolly PJ (ed): Orthopaedic knowl-edge Update: Spine3, American Academy of Ortho-paedic Surgeons, Rosenont, p377 - 396, 2006. 2) 種田 洋, 金田清志, 小熊忠教, 他 : 骨粗鬆症性椎

体圧潰(偽関節)発生のリスクファクター解析. 臨整 外 37: 437 - 442, 2002.

3) 上村昭博, 沼口雄治, 松迫正樹, 他 : 経皮的椎体形 成術における画像診断. IVR会誌 19: 356 - 360, 2004. 4) Sakaino S, Takizawa K, Yoshimatsu M, et al: Percu-taneous vertebroplasty performed by the isocenter puncture method. Radiat Med 26: 70 - 75, 2008. 5) 田中法瑞 : 経皮的椎体形成術:骨粗鬆症における

適応と術後管理-X線法を用いた手技-. IVR会誌 21: 201 - 205, 2006.

6) Kobayashi K, Shimoyama K, Nakamura K, et al: Per-cutaneous vertebroplasty immediately relieves pain of osteoporotic vertebral compression fractures and prevents prolonged immobilization of patients. Eur Radiol 15: 360 - 367, 2005.

7) Masala S, Mammucari M, Angelopoulos G, et al: Percutaneous vertebroplasty in the management of vertebral osteoporotic fractures. Short-term, mid-term and long-mid-term follow up of 285 patients. Skel-etal Radiol 38: 863 - 869, 2009.

8) Anselmetti GC, Manca A, Hirsch J, et al: Percutane-ous vertebroplasty in osteoporotic patients: an insti-tutional experience of 1,634 patients with long-term follow up. J Vasc Interv Radiol 22: 1714 - 1720, 2011. 9) Childer JC, Jensen ME, Evans AJ: Cardiovascular

collapse and death during vertebroplasty[letter]? Drs Jensen and Evans respond. Radiology 228: 902 -903, 2003.

Table 1  Summary of meta-analysis of PVP for spinal  bone metastasis
Table 2  Summary of meta-analysis of PVP for verte- verte-bral compression fracture due to osteoporosis

参照

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