方
便
思
想
の
展
開
(二
)大
品
般
若
の方
便
思想
を
申
心
に日
下
俊
文
目次
一 、 は じ め に 二 、 『 小 品 般 若 』 を受
け 継 い だ方
便 思 想権
巧方
便施
造方
便化
他
方
便虚 仮
方
便 三 、 『大
品 般 若 』 に お け る 方 便 思 想 の特
色 四、方
便 思 想 と 二 諦 説 五 、 ま と め 前 三 い ず れ の 義 に も と れ る 方 便 一は
じ
め
に 前 号 に お い て は 『 小 品 般 若 経 』 を 中 心 に 方 便 思 想 が ど の よ う に 現 わ れ て い る か を 検 討 し た 。 今 回 は そ れ に 引 き 続 い て 『 大 品 般 若 経 』 を 中 心 に 方 便 思 想 の 展 開 を あ と づ け て み た い と 思 う 。 周 知 の よ う に 『 大 品 般 若 経 』 九 十 品 は 『 小 品 般 若 経 』 二 十 九 品 を 増 広 拡 大 し た も の で あ る 。 前 号 所 載 の 如 く 『 小 品 般 若 経 』 に は 七 十 三 回 に わ た り 方 便 の 用 例 が み ら れ 、 こ れ を 分 類 す る と 、 方 便 思 想 の 展 開 ⇔
NII-Electronic Library Service 西 山 学 報
6
権 巧 方 便 口 施 造 方 便 化 他 方 便 虚 仮 方 便 前 三 の い ず れ に も 通 ず る も の と の 五 通 り が あ る と し た 。 ま た 『 小 品 般 若 』 に お け る 方 便 の 用 語 は 二 十 九 品 中 の 十 五 品 に み ら れ た が、 『 大 品 般 若 』 九 十 品 の 中 に は 四 十 七 品 に わ た っ て 方 便 の 用 語 が 現 わ れ て い る こ と を 表 示 し て お い た 。 こ れ を う け て 『 大 品 般 若 』 で は ど の よ う な 方 便 思 想 が 現 わ れ て い る か を 検 討 し た い 。 し か も 今 号 で は 『 小 品 般 若 』 の 方 便 思 想 を ふ ま え な が ら 、 小 品 を 増 広 し た 大 品 で は 『 大 品 般 若 』 独 特 の 方 便 思 想 が み ら れ る か ど う か に 関 心 を 払 い な が ら 調 査 検 討 を 進 め た い と 思 う 。N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe
い ま 『 小 品 般 若 』 と 『 大 品 般 若 」 と
対
応 す る 品 に合
わ せ て 方 便 の 用 語 の 数 を 表 に し て示
す と 次 の 如 く な る 。 こ の う ち 第 六 十 八 摂 五 品 か ら 第 八 十 七 如 化 品 ま で が 拡 大 部 分 で あ り、 『 大 品 般 若 」 独 自 の 思 想 と い え よ う 。 品 1〜10
1
、、一 ,。1
・一 ・・1
・・一 ・・ 41〜50
権 巧 方 便 大 品 施 造 方 便 小 品 化 他 方 便6
090
小 品1
ー 大 品 . 小8
6
12E
「 口 口Ll 大 口 口口 虚 仮 小 品0
方 便 20
一 ど の 義 に も と れ る 方 便7
4
6
2
36
5 2 3 大 品4
小 品 大 品 40
2
7
一42
一1
51
〜60
61
〜66
19
7
計88
〜9
。167
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L _一一 一_7
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12
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1 11
1
2
16
一12
39
53
8
16
59
7
35
1653
こ の 表 か ら 『 小 品 般 若 』 七 十 三 回 の方
便
の 用 例 か ら 『大
品般
若
』 二 百 四 十 回 と 急 増 し て い る こ と が わ か る 。 特 に 化他
方
便
は 著 し く十
倍
に も 達 し て い る の で あ る 。 二『
小
品
般
若
』 を受
け継
い だ方
便
思
想権
巧
方
便
『 小 品般
若 』 に み ら れ た 方 便 の 用 例 は 七十
三 回 で 、 そ の う ち 最 も多
い の は 権 巧方
便 の 三 十 九 回 で あ っ た 。 こ の 権 巧方
便 が 『 小 品 般 若 』 か ら 『 大 品 般若
』 に拡
大 さ れ る と 『 大 品 般 若 』 ( 摩 訶般
若 波 羅 蜜 経鳩 摩 羅 什 訳 ) に 於 け る 二 百 四
十
回 の 用 例 中 五 十 九 回 と な る 。『 小 品
般
若 』 の 権 巧 方 便 は 、 阿耨
多 羅 三 藐 三 菩 提 を 得 ん と す る 菩 薩 が 作 仏 す る ま で よ く 護 る 所 の 方 便 で あ っ た 。菩
薩
が 無 上 菩 提 を 求 め て 修 道 す る と き 、 こ の方
便 の な い菩
薩
は 必 ず 二 地 に 堕 す の で あ っ た 。 ま た 方 便 な き 菩 薩 は 増長
慢
心 を 起 し て 自 ら 高 う し 他 の 諸 の 菩 薩 を 軽 蔑 す る も の で あ り 、 ま た 善 知 識 よ り 方 便 思 想 の 展 開 ⇔NII-Electronic Library Service 西 山 学 報 離 れ 悪 知 識 に 遇 い
声
聞辟
支
仏 の 二 地 に 堕 す る も の で あ っ た 。 諸 の 善 を 無 上 菩 提 に 廻 向 し 、 不 退 に 住 す る の も 方 便 を 学 し得
る こ と に よ っ て で あ っ た 。 こ の よ う な 方 便 の 義 を 『 大 品般
若 』 は受
け 継 い で い る が 、 こ こ に 化 他 、 施 造 等 の 思 想的
増 加 が み ら れ る の で あ る 。『 小 品 般 若 』 に 対 応 す る 『 大 品
般
若
』 を挙
げ て 比較
す る と次
の よ う で あ る 。N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe 〔 小 品
般
若
〕第
十 四船 喩 品 ( 大 正 八、 五 六 〇 中 )
須
菩提
、 菩薩
亦如
是 、 於 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提有
信
有
忍有
楽有
浄
心有
深 心有 欲 有 解
有
捨
有精
進
、為
般若
波 羅 蜜 方便
所 護 故 、 当 知 是 菩 薩 不中
道 退転
、安
穏
得 到 薩婆
若
。 〔大
品
般 若 〕第
五十
剛譬
喩 品 ( 大 正 八、 三 三 〇 上 )須
菩
提 、善
男 子善
女 人 求 阿 耨多
羅 三 藐 三 菩 提 、有
諸
信
忍浄
心 深 心 欲 解捨
精 進 、為
般
若
波 羅 蜜方
便カ
所
護
、為
禅 定 精 進 忍 辱 持 戒布
施乃
至 一 切 種 智所
護
故 。 須 菩 提 、当
知 是 人 不中
道 衰 耗 、 む サ リ リ む む り む む 過声
聞辟
支
仏 地 、 能浄
仏 国 土 、 成就
衆
生 、 得 阿 耨 多羅
三 藐 三 菩 提 。 一44
一 こ こ に み ら れ る よ う に 『 大 品 般 若 』 で は 「 浄 仏 国 土 成就
衆 生 」 が 増 加 さ れ て い る 。 つ ま り 作 仏 す る ま で ょ く 菩 薩 を 護 る 方 便 は 、 薩 婆若
を 得 る こ と と 同 時 に 化 他 の 思 想 が 増 加 し 示 さ れ る よ う に な っ た の で あ る 。 ま た 他方
で は 権 巧 方 便 に 不 取 相 の 義 が 増 加 し て い る と こ ろ が あ る 。次
に挙
げ る と 。 〔小
品般
若 〕第
十
五 大 如 品 ( 大 正 八 、 五 六 三 上 ) 〔大
品般
若
第
五十
四 大如
贔 ( 大 正 八 、 三 三 七 上 )世
尊如
我解
仏 所 説 義若
菩薩
離般
若 波 羅蜜
( 方 便 ) 則
於
阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 狐 疑 未 了是 故 菩 薩 摩 訶
薩
欲 得 阿 耨多
羅 三藐
三 菩 提 、 当 菩 行般
若 波 羅 蜜方
便
。 世 尊 、如
我
解 仏 所 説義
。若
菩薩
摩 訶薩
不 遠 離般
若波
羅 蜜 方 便力
、当
知 是菩
薩 近阿
耨 多 羅 三 藐 三 菩提
。 何 以 故 是菩
薩
摩
訶 薩 初 発 心 以 来 無 法 可 知 若 色 若 受 想行
識 、乃
至 陶 切 種 智 。 世尊
、有
求 菩 薩 道 、普
男 子善
女
人 遠 離 般 若 波 羅蜜
方
便 力 、 当知
是 人 於 阿 耨 多羅
三藐
三 菩 提或
得
或 不む ほ む む む む ロ む む む む 得 。 何 以 故 、 世
尊
、 是 求 菩 薩 道善
男 子善
女
人 む む む む む む む む む む む む む む り 所有
布 施 皆 販 相所 有
持
戒 忍 辱 精 進 禅定
皆 取 相 む む む む む む む む ロ む む む む む 以 是 故善
男 子 善 女 人 於 阿 耨多
羅 三 藐 三 菩提
ゆ 不 定 。 世 尊 、 以 是 因 縁 故 、 菩 薩 摩 訶 薩 欲得
阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 、 不 応 遠 離般
若 波 羅 蜜 方 便 力 、 是 菩 薩摩
訶 薩 住 般 若 波 羅 蜜 方 便力
中 、 以 無 得 無 相 心 、 応布
施 持 戒 忍 辱精
進 禅 定 、 乃 至 以 無 得 無 相 心 、 応修
一 切 種智
。 こ こ で は 『 小 品 般 若 』 は 単 に 無 上 菩 提 を 得 ん と 欲 せ ぱ 般若
波 羅 蜜方
便 を よ く 行 ず べ し と 言 う が 、 『 大 品 般 若 』 に 於 て は 菩 薩 道 を 求 む るも
の は 六 度等
に お い て 相 を 取 り 分 別 す る の で般
若波
羅 蜜 方 便 中 に住
し て 、 無 得 無 相 心 を 以 っ て 六 度 等 を 行 ず べ し と言
う 。 こ こ で は般
若 波 羅 蜜 と方
便 と は 無 上 菩 提 に 導 く も の で あ る と 同 時 に 不 取 相 と 関 連 し て 説 か れ る よ う に な っ た の で あ る 。 つ ま り権
巧方
便 に は 化 他 、 施 造 の 二 方 便 思 想 が 附 加 さ れ て 説 か れ て い る の で あ る 。 方 便 思 想 の 展 開 ⇔NII-Electronic Library Service 西 山 学 報 こ の
他
に 『 大 品 般 若 』 に は 『 小 品 般 若 』 に は み ら れ な か っ た 権 巧 方 便 の 用 例 が み ら れ る 。 す な わ ち 禅 悦 法 味 に 執 着 す る菩
薩
が 現 わ れ 、 次 の よ う に 言 わ れ る の で あ る 。方
便 な き が 故 に 二 地 に も 堕 さ ず 、 菩 薩 位 に も 入 ら ず 頂 位 に 堕 す 菩 薩 で あ る 。 第 八 勧 学 品 に は 、 若 し菩
薩 摩 訶薩
方 便 を 以 っ て せ ず し て 六 波 羅 蜜 を 行 じ 空 無 相 無作
三昧
に 入 り、声
聞 辟 支 仏 地 に 堕 さ ず 、 ま た 菩 薩位
に 入 ら ず 、 是 れ菩
薩摩
訶薩
法 愛 生 ず る が 故 に 頂 に 堕 す と 名 つ く、( 大 正 八、 三 三 二 上 ) と い っ て 、 三 界 の 惑 を 離 れ は す る が 、
法
愛 が 生 じ て 化 他 行 に す す ま ぬ菩
薩
は 頂 に 堕 す と い わ れ る 。 こ れ は 『 小 品 般 若 』 に は み ら れ な い も の で あ る 。 こ の 「 頂 に 堕 す 」 の 義 に つ い て は 羅 什 訳 は 「 不 堕 声 聞 辟 支 仏 地 」 と あ り 、「 大 智 度 論 』 に も 同 様 に み ら れ る 。 し か し 『 放
光
般 若 」 に は 「 堕 声 聞 辟 支 仏 地 亦 不 順 菩 薩 道 」 と あ り 、 玄 奘 訳 で は 「 退 堕 声 聞 或 独 覚 地 不菩
薩 正 性 離 生 」 と す る か ら 頂 に 堕 す こ と は 二 地 に 堕 す こ と と 同 義 か 否 か 断 定 で き な い の で あ る 。 し か し こ こ に 於 て は 方 便力
を も つ て 菩 薩 道 に 入 り 利 地行
を す す め る 点 は 明 瞭 で あ る 。 一 46 一N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe
施
造
方 便 次 に 『
大
品 般 若 』 に も 『 小 品 般 若 』 と 同 様 に 不 取 相、 観 空 無 相 と密
接 に 用 い ら れ る 施 造 方 便 は 五 十 九 回 の 用 例 が み ら れ る 。 菩薩
は 権 巧方
便 に 護 ら れ て 二 地 や 頂 位 に 堕 す こ と な く 、仏
地 に 向 い 無 上菩
提 を 得 る が 、 仏 地 に 近 づ く に 従 い 施 造 方 便 は 不 取 相 と 関 連 し て 『 大 品 般 若 」 で 次 の よ う に 説 か れ る 。 す な わ ち 檀 那 波 羅 蜜 を 行 ず る 時 、 施 者 受 者 施 物 の 相 を 念 う こ と は 方 便 な き 故 で あ る と い う 。 例 え ば 「 我 れ 彼 の 人 に 施 与 す 、 我 れ 持 戒 す る こ と の 是 の 如 く 持 戒 す 、 我 れ 忍 を修
す る こ と 是 の 如 く 忍 を修
す る 、 我 れ 精 進 す る こ と 是 の 如 く 精 進 す、我
れ 入 禅 す る こ と 是 の 如 く 入禅
す る 。 我 れ 智慧
を修
す
る こ と 是 の 如 く 智 慧 を 修 す る 。 我 れ 福 徳 を 得 る こ と 是 の 如 く福
徳 を 得 る 、 我 れ 当 に 菩 薩法
位
中
に 入 る べ し 、 我 れ 当 に 仏 国 土 を浄
め 、 衆 生 を 成 就 す べ し 、 我 れ 当 に 一 切 種 智 を 得 べ し 」 と の 念 、 憶 想分
別 す る こ と は方
便 が な い か ら で 、 無 方 便 の 菩 薩 は 「 生 老 病 死 憂 悲 苦 悩 及 び 後 世 の苦
を 離 る る こ と 能 は ず 」 と さ れ て い る 。 『 大 品 般 若 』 で は さ ら に 不 取 相 が 強 調 さ れ る 。 『 小 品 般若
』 『 大 品 般 若 』 を挙
げ て 比 べ て み る と 。〔 小 品 般 若 〕
第
十
七深 功
徳
品( 大 正 八 、 五 六 七 中 ) 須 菩 提
於 意 云 何
菩 薩 云 何
為
壊 諸 相 世 尊 是 菩 薩 不 如 是学
、 我行
菩 薩 道 於 是 身 断 諸 相 、 若 断 是 諸 相 未 具 足 仏 道 、 当 作 声 聞 。 世尊
。 是 菩薩
大 方 便 力 、 知 是諸
相 過 而 不 取 無 相 。 方 便 思 想 の 展 開 ⇔ 〔 大 品般
若 〕第
五 十 七 深 奥 品 ( 大 正 八、 三 四 六 下 ) 仏告
須 菩提
云 何 名 不 壊 相
須 菩 提
言
世尊
是 菩 薩 摩 詞 薩 行 般 若 波 羅 蜜 、 不 作 是 念 、 我 当 壊 諸 法 相 、 世尊
菩 薩 摩 詞 薩 行 般 若 波 羅 蜜 、 未 具 足 仏 十力
四 無所
畏 四 無 礙 智 大 慈 大 悲 十 八 不 共 法 不 得 阿 耨 多 羅 三藐
三 菩 提 、 世 尊 、 菩 薩 摩 訶 薩 以 方 便力
故 、於
諸 法 亦 不 取 相 亦 不 壊 相 、 何 以 故 、 世尊
、 是 菩薩
摩 訶 薩 知 一 切 諸 法 自 相 空 故 、 菩 薩摩
訶 薩 住 是自
相 空 中 為 衆 生 故 入 三 三 昧 、 用 是 三 む む む む 三 昧 、 成 就衆
生 。 須 菩 提 言 、 世 尊 云 何 菩 薩 摩 訶 薩 入 三 三 昧 、 成 就 衆 生 、 仏言
菩 薩 住 是 三 三 昧 是 衆 生 作 法中
行
、 菩 薩 以 方便
力教 令 得 無 作 、 見 衆 生 我 相
中
行
、 以 方 便 力 故 教 令 行 空 、 見 衆 生NII-Electronic Library Service 西 山 学 報 一 切 相 中
行
、 以 方 便力
故
、 教 令 行 無相
如
是須
「 菩 提 、 菩 薩摩
訶 薩 行般
若 波 羅 蜜 入 三 三 昧 以 三 三 り り む む 皿昧
成 就 衆 生 。 『 大 品 般 若 』 に 至 る と か な り 書 き変
え ら れ て い る が 、 こ こ で は菩
薩 は 一 切 諸法
自
相 空 を 知 っ て 衆 生 を 成 就 す る こ と が 説 か れ る 。 即ち
衆 生 に 三 解脱
門 を行
ぜ し め る の で あ る 。 こ こ は羅
什 訳 と 玄 奘 訳 は 同 様 な 内 容 で あ る し 、 ま た 『放
光 般 若 』 も羅
什
訳 よ り や や 簡 略 で は あ る が ほ ぼ 同 意 で あ る 。 さ ら に 観 空 無 相 と 成 就 衆 生 と 同 一 に 扱 っ て い る と こ ろ は 大 品 の 拡 大部
分 に 於 い て 著 る し い 。 第 七 十 一 道 樹 品 に は 、 須菩
提 仏 に白
し て 言 さ く 、 世 尊 、 若 し } 切 法 無 性 な れ ば、 初 発 意 の 菩 薩 は 何 等 の方
便 を 以 っ て か 、 能 く 檀 那 波 羅 蜜 を 行 じ 、仏
国 土 を浄
め 衆 生 を成
就 す る や … … 中 略 … … 仏 須菩
提 に 告 げ た ま わ く 、 菩 薩 摩 訶 薩 は 能 く 諸 法 の 無 性 を 学 し亦 能
く
仏 国 土 を 浄 め 衆 生 を 成 就 し て 、 国 土 も 衆 生 も ま た 無性
な り と 知 る 、 即 ち 是 れ方
便 力 な り 。 ( 大 正 八、 三 七 八 中 ) と い っ て 、 観 空 、成
就 衆 生 は と も に方
便 力 で あ る と い う 。 こ の 方 便 は 「 空 観 と 大 悲 の 双方
に つ な が る も の と し て 用 い ら れ 、 む し ろ方
便
と い う 言 葉自
体
が 空 観 と 大 悲 の 両 方 の 意 味 に擔
っ て い る 」 と い え よ う 。 す な わ ち 方 便 力 あ る 菩薩
は 「 成 就 衆 生 に著
せ ず 、 浄 仏 国 土 に 著 せ ず 、方
便 法 に著
せ ず 」 し て 、 よ く菩
薩
事
を行
ず る の で あ る 。化
他
方
便 次 に 化 他 方 便 に つ い て 、
『 道
行
般 若 』 で は 「 不 随 禅 生 」 の 方 便 の み が み ら れ た が 、『 小 品 般 若 』 に は 七 回 に わ た り 用 例 が 見 ら れ 、
『 大 品 般 若 』 で は 七 十 回 み ら れ て 『 大 品
般
若 』 中 最 も 多 く な っ て い る 。 ま た 『 小 品 般 若 』 で は 利 益 衆 生 の た め に 「 受 五 欲 」 、 不 可 説 議 を 「 以 但 名 字 、方
便 故 説 」等
の方
便 が み ら れ た が 、 『 大 品 般 若 』 に 至 る と 一一48
一 N工 工一Eleotronlo Llbraryど の よ う な 増 加 が み ら れ る か 次 に 検 討 し た い 。
〔 小 品
般
若 〕第
二 十 七薩 陀
波
崙 品( 大 正 八 、 五 八 三 下 )
曇 無 竭 大
師
神
力 乃 爾来 成 仏 道
神
通 之 力 尚能
如 是 况 得 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 時 、 五 百 女 人 敬重 曇 無 竭 菩
薩
故 皆 発 阿 耨多
羅 三 藐 三 菩 提 心 。 我等 以 是 著 根 因
縁
、於
未 来 世 当 得 作 仏 、 行 菩 薩 道時 亦 得 如 是
功
徳 。如
今
曇 無 竭 菩 薩 供養
恭 敬 重 般若 波 羅 蜜 、
為
人 演 説成 就 方
便
力
亦
如 曇 無 竭菩 薩
薩 陀 波 崙 及 五 百 女 人 頭 面
禮
曇無
竭 菩 薩 足 〔 大 品 般 若 )第
八 十 八常
啼 品( 大 正 八 、 四 二 一 上 ) 曇 無 竭 大 師
神
徳
之 爾 行 菩 薩 道 時 、神
通 力 尚能
如 是 何 况 得 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 時 、 是 時 長 者 女 及 五 百 女 人 清浄
信
心 敬 重 曇 無 竭 菩薩
皆 発 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 心 、 作 是 願 言 如 曇無
竭
菩 薩 得 菩 薩 諸 深 法 、如
曇
無 竭 菩 薩 供 養 般 若波
羅 蜜 如 曇 無 竭 菩 薩於
大衆
中 演 顕 示般
若 波 羅 蜜 義 。む ほ む む 如 曇 無 竭 菩 薩
得
般
若 波 羅 蜜 方 便 力 、成
就
神
通 、 む ロ む ロ む む む 於 菩 薩 事中
得 自 在 、 我 等 亦 当 如 是 。 是 時 薩 陀 波 崙 菩 薩 及 五 百 女 人香
華 宝 物供
養
般若
波 羅 蜜 及 曇 無 竭 菩 薩 己 、 頭 面禮
曇 無 竭 菩薩
。 こ こ に お い て は 「神
通 を 成 就 し 、菩
薩
事
中
に 於 て 、 自在
を 得 る 」 に 注 意 せ ね ば な ら ぬ と 思 う 。 即 ち 化 他 方 便 の 思 想 が具
体
化 す る に 従 い そ の 記 述 も 、 活 動 も 詳 細 に な っ て く る の で あ る 。 『 放 光 般 若 』 に は 「 度 五神
通 品 」 を 第 五 品 に 設 け 五 神 通 を 具 足 す べ き こ と を 説 い て い る 。 こ の神
通 に つ い て 『大
品 般 若 』 第 八 十 三 畢 定 品 に は菩
薩 の 神 通 波 羅 蜜 と し て 展 開 し て 、方
便 力 と 同等
に ま で高
め ら れ 、 こ れ が 「 現 作種
種身
」 へ と 展 開 し て い る の で あ る 。 方 便 思 想 の 展 開 ⇔NII-Electronic Library Service 西 山 学 報
虚 仮
方
便 次 に
虚
仮 の方
便 、 こ れ は 悪 魔 が 用 い た 方 便 を こ の よ う に 呼 ん だ が 、『 大 品
般
若 』 は 『 小 品 般 若 」 と 大 差 は な く 五 回 の 用 例 が み ら れ る に 過 ぎ な い 。 し か し 悪 魔 の 活 動 も 活 発 化 し て 身 を 種 々 に 現作
し て 般 若 波 羅 蜜 を破
壊 し よ う と す る 。 す な わ ち 「 居 士 の 形 を 作 し 、 あ る い は 父 母身
を作
し 」 ま た 「 変 化 し て 種種
の 身 を 作 す 」 の で あ る 。 こ の 虚 仮 方 便 は拡
大部
分 に は み ら れ ず 『 大 品 般 若 』 に み ら れ るも
の は 『 小 品 般若
』 を 受 け 継 い で い る に す ぎ な い と 言 え る 。 例 え ば 第 四 十 七 両 過 品 に は 、 須菩
提 悪 魔 は 比 丘 の 形 像 を作
し て 来 り、方
便も
て 般 若 波 羅蜜
を 破 壊 し 、 書 持 し 説 き 正 憶 念 せ し む る こ と を 得ず
。 須菩
提 仏 に白
し て 言 さ く、世
尊
、 何 の 因 縁 の故
に 悪 魔 は 比 丘 の 形 像 を作
し て 方 便 も て 般 若 波 羅 蜜 を 破 壊 し 書持
乃 至 正 憶 念 せ し む る こ と を 得 ざ る や 、 仏言
は く 、 悪 魔 比 丘 の 形 像 を 作 し て来
り て 、善
男 子善
女
人 の 心 を 壊 し 、般
若 波 羅 蜜 を 遠 離 せ し め 、 是 の 言 を 作 す 。我
が 説 く所
の 経 の 如 き は 即 ち 是 れ 般 若 波 羅 蜜 な り 、 此 の 経 は 般若
波
羅
蜜
に非
ず 、( 大 正 八 、 三 二 二 上 ) と い い 、 『 小 品 般
若
』 と 同 様 に 、 悪 魔 が 諸 人 を つ い わ る と こ ろ が み ら れ る 。ど の 義 に も と れ る 方
便
こ の方
便 は 前 三 い ず れ の 義 と も 取 れ る方
便 を い う が 、 時 の 特 徴 を み た い と 思 う 。 こ こ に 於 て も 『 小 品 般 若 』 か ら 『 大 品般
若
』 に 拡 大 さ れ た 一 50 一 N工 工一Eleotronlo Llbrary〔
小
品 般 若 )第
四明 呪 品
( 大 正 八 、 五 四 三 下 ) 譬
如
月 不 出 時 星 宿 光 明 照 於 世 間 、如
是 僑 尸 迦 、 世 無佛
時
、所
有 善 行 正行
皆
従 菩 薩出
生 、 菩薩
方便
力
皆
従 般 若 波 羅蜜
生 。〔 大 品 般 若 〕
第
三十
四観
持
品( 大 正 八、 二 八 六 下 )
譬
如
月 滿 照 明 星宿
亦能
照 明 、 如 是 僑 尸 迦 、 層 切世
間 善 法 正 法十
善
乃
至 剛 切 種 智 、 若賭
仏 不出
時 皆 従 菩薩
生 、 是 菩 薩 摩 訶 薩 方 便 力皆
従 般 若む む ロ む ロ む む む む ロ サ む む む 波
羅
蜜
生 。 是 菩 薩摩
訶薩
以 是 方 便力
行
檀 那波
羅 む む む ロ む ロ む む む む む む む む む む蜜
乃 至 禅 那 波 羅 蜜 、 内 空 乃 至 無 法 有 法 空四 念 む む む む む む ロ む む む む む む む む む む む む 處
乃
至十
八 不 共 法 、 不 證 声 聞 辟支
仏 地 、 亦能
成 む む む む む む ロ む む む む む む む む む む む む む む就
衆
生
浄
仏 国 土 寿命
成就
国
土 成就
菩 薩 眷属
成 就 む む む む む む む む む む む む む 得 一切
種 智 、 皆 従般
若 波 羅 蜜 生 。 こ こ で は 『 大 品般
若
』 の 後 半 分 は 増 加 さ れ た も の で 、 菩 薩 の 方 便 と し て 行 六度
等 と 共 に 成 就 衆 生 が 加 わ っ て い る 。 つ ま り 菩 薩 道 を修
す
る こ と に 於 て 化 他 思 想 が 付 加 さ れ て い る の で あ る 。 五 種 の 方 便 思 想 に つ い て は 『 小 品 般若
』 に 対 応 す る 『 大 品 般若
』 を 比 較 し て 、 そ の 特 色 あ る 個 所 を 検 討 し た が 、 い ず れ に 於 て も 利他
思 想 、観
空 が 重 視 さ れ て い る の で あ る 。『 小 品 般 若 』 で は 声 聞
辟
支 仏 地 に 堕 す る こ と な く 、観
一 切 法 空 、 不 取相
等
の権
巧方
便 、施
造方
便 に 依 っ て 無 上 菩 提 に 至 る た め の 方 便 思 想 が 主 で あ っ た が 、『
大
品般
若 』 に 至 る と 菩 薩 自身
の方
便 は 同 時 に 化 他 の た め で あ る と 説 か れ 、 化 他 方 便 に お い て は神
通 力 が 力 説 さ れ 、 そ れ に よ っ て 菩 薩 の 利 他 行 は 自由
自 在 融 通 無 礙 と な る こ と が 説 か れ て い る の で あ る 。 方 便 思 想 の 展 開 ⇔NII-Electronic Library Service 西 山 学 報
三
『
大
品
般
若
』 に お け る方
便
思想
の特
色
次 に 『 大 品 般 若 』 独 自 の 展 開 を み せ る 第 亠 ハ 十 八 品 以 後 に は 如 何 な る 方 便 の 思 想 が み ら れ る か 検 討 し て お か ね ば な ら な い 。 『 大 品 般 若 』第
六 十 八 摂 五 品 以降
第
八 十 七 如 化 品 ま で の 各品
の方
便 の 用 例 数 を 表 に す る と 次 の よ う に な る 。83
82
81
80
79
78
77
76
75
74
73
72
71
70
69
68
畢 浄 具 実 善 四 六 一 三 遍 三 道 道 三 方 摂 定 土 足 際 達 摂 喩 念 次 学 善 行 樹 慧 便 五 口 口 口 口 口 ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロロ ロロ ロロ ロロ ロロ ロロ ロ ロ ロロ 凵ロ ロロ ロロ 卩囗 口口 口口 ロロ 方 便 の 用 例塾
権 巧 方 便鏖
方 便 化 他 方琶
翡
臓驚
1
1519125404108030121
1 24
74
1 4512854
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4
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」
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化』
口口8685
平 七 等 譬 口 口 口口 口口84
差 別 品69io121
』
21
1734
165
11 こ こ で は 化 他方
便 の 用 例 が 最 も 多 く 、 拡 大部
分 で は方
便 は 主 に 化 他 の義
と し て 用 い ら れ て い る と い え よ う 。 つ ま り諸
仏 菩 薩 の 利 他 行 の た め の 「手
段 」「
方
法 」 等 の義
と し て 用 い ら れ て い る 。 諸 仏菩
薩 は 三 界中
の 四 顛 倒 に 著 し て 生 死 憂 悲苦
悩 中 に い る 衆 生 を度
脱
す る 。 す な わ ち 衆 生 は 「 顛 倒 を 以 っ て の 故 に 五 陰 に 著 し 、無
常
中 に常
相 、苦
中 に楽
相
、 不 浄 中 に浄
相 、 無我
中
に 我 相 あ り と し 、 無 所 有 処 に 著 」 す 。 そ れ 故 菩 薩 は 方 便 力 を も っ て 衆 生 の 愛 結 を 断 ぜ し め 三 乗法
を 以 っ て 生 死 よ り 度脱
せ し め 、 不 可 説 義 に 無常
、苦
、 空 、 非我
を 説 き 、懈
怠 の も の に は教
え て 身 精 進 、 心精
進 な ら し め る の で あ る 。 「 次 第 に 教 え て 須 陀 沍 果 、斯
陀含
果 、 阿 那 含 果 、 阿 羅 漢 果、辟
支
仏 道 を 得 し め菩 薩 位 に 入 り 阿
耨
多
羅 三 藐 三菩
提 を得
し め 」 、 仏 菩 薩 は 「 空 性 に 住 し て 、 衆 生 を 祐 利 す る 」 の であ
る 。 あ ら ゆ る 菩 薩 道 は 悉 く 化 他 利他
の た め で あ る と い う 。 す な わ ち 第 七 十 九 善 達 品 に は 、 も し 衆 生 自 ら 諸 法 幻 の 如 く 化 の 如 し と 知 ら ば、菩
薩
摩 訶 薩 は つ い に 阿僧
祇 劫 に 於 て 衆生
の 為 に菩
薩
道
を 行 ぜ ず … ( 中 略 ) … … 知 ら ざ る を 以 っ て 、 是 の 故 を 以 っ て 、菩
薩
摩 訶 薩 は無
量 阿 僧 祗 劫 に於
て 六 波 羅 蜜 を 行 じ 、 衆 生 を 成 就 し 、 仏 国 土 を 浄 め 、 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 を 得 る 。( 大 正 八 、 三 九 八 中 ) と い う 。 つ ま り
本
来 菩 薩 道 は 衆 生 を 利 益 す る た め の 化 他 行 で あ る 。「 菩 薩 摩 訶 薩 は 一 切
衆
生 を 安 楽 に せ ん が 為 の 故 に 、世
に 出 現 し 」方
便 力 をも
っ て 衆 生 が名
相
虚
妄 分 別 中 に 住 す る の を 、 名 相 は本
来皆
無自
性 空 な る こ と を 説 き教
示 方 便 思 想 の 展 開 ⇔NII-Electronic Library Service 西 山 学 報 す る の で あ る 。 ま た 方 便 力 に よ り 財 施 、
法
施
を 以 っ て 衆 生 を摂
取 す る 。 即 ち 「 臼 ら 布施
し 、 ま た 人 を し て布
施
せ し あ 」 、 自 ら 行 じ 、 人 を し て 亠 ハ度
等 を 行 ぜ し め る の で あ る 。 こ の 方 便 に つ い て 第 六 十 九 方便
品 に は 、 我 れ も し 方 便力
を行
ぜ ざ れ ば 、 衆 生 を 生 死 よ り 度 脱 す る こ と 能 わ ず 。( 同、 三 六 九 中 ) と い う 。
菩
薩
道 は す な わ ち 「 行方
便 力 」 で あ る と い う こ と が で き よ う 。 ま た方
便 力 と 同 様 に 神 通 力 の 重 視 が み ら れ る 。 即 ち菩
薩
は 「般
若 波 羅蜜
を行
じ 、 方 便 力 を 用 い て 神 通 波羅
蜜
を 生 ず 」 る の で あ る が 、 こ の 菩 薩 の 神 通波
羅 蜜 に つ い て 第 八十
三 畢定
品 に は 、 若 し菩
薩
、 神 通 波 羅蜜
を 遠 離 せ ば 、 転 じ て 衆 生 を 饒 益 す る こ と 能 わ ず 。( 同、 四 一 〇 中 ) と い っ て 、
菩
薩
の 神 通 波 羅蜜
は方
便 力 と 同 様 に 重 要 視 さ れ る に 至 る の で あ る 。 ま た 同 品 に 、菩
薩
は 神 通 な け れ ば 、 意 に 随 っ て 衆 生 を 教 化 す る こ と能
わ ず 。 是 を 以 っ て の 故 に 、 須 菩 提菩
薩 摩 訶薩
は 般 若 波 羅 蜜 を 行 じ て 、 応 に 諸 の 神 通 を 起 す べ し 、 諸 の 神 通 を 起 し 己 り て 、若
し 衆 生 を 饒 益 せ ん と 欲 せ ば 、 意 に 随 っ て 能 く 益 す 。 ( 同 、 四 一 〇 下 ) と い う 。菩
薩 は 方 便 力 を 用 い て 神 通 を 起 し衆
生 を 饒 益 す 。 ま た 種 種 の 身 に 変 化 す る こ と に つ い て も 方 便 力 と し て 説 か れ る の で あ る 。 同 品 に は 。 世 尊、菩
薩摩
訶 薩 の 大 方 便 力 は 聖 無漏
智 慧 を 得 て 、 而 し て 度 す べ き 所 の 衆 生 の 身 に 随 っ て 、 種 種 の 形 を 作 し 以 っ て 衆 生 を 度 す 。( 同 、 四 一 〇 上 ) と い う 。
菩
薩
は 衆 生 を 饒 益 す る た め に 菩 薩 事 を 行 じ 、 三 業 を も っ て 利 益 す る 。 す な わ ち 口業
に よ っ て 説 示 す る の み な ら ず 種 種 に 身 を 現 じ て 利 益 す る の で あ る 。神
通 波羅
蜜 に 住 し て 欲 界 に 還 り て 、 所 に 随 っ て 六 道 生 死 に 入 り 、我
を惜
む こ と な く 衆 生 の た め に 生 死 を 受 け る 。「 も し く は 刹 利 大 姓 婆 羅 門 大 姓 居 士 大 家 に 生 じ 」
「 も し 家 に 在 居 せ ば 、 一
54
一 N工 工一Eleotronlo Llbrary方 便 力 を 以 っ て 衆 生 を 利 益 せ ん が 為 の 故 に 、 五 欲 を 受 け 衆 生 に 布 施 す 。 」 、 あ る 時 は 「 象 馬
牛
羊 男 女 」「
畜
生 身 等 を 現 じ て 利 益 し 」、 あ る 時 は 「畜
生 の た め に 寿 命 を 捨 て 」 、 ま た 大方
便 力 を も っ て 身 を捨
て悩
ま さ ず 利 益 す る 。菩
薩
は 衆 生 を 利 益 す る た め に作
す 所 の 神 通 、 意 に 随 っ て 無 礙 な り、 も し く は 諸 華 を 雨 ら し 、 も し く は 諸 香 を 散 じ 、 も し く は 妓 楽 を作
し 、 も し く は 大 地 を 動 か し 、 も し く は 光 明 を 放 ち 、 も し く は 大 智 光 明 を放
ち て 聖 道 に 入 ら し め 、 殺 生 乃 至 邪 見 を 遠 離 せ し め 、或
は布
施 を も っ て 利 益 す る 」 、 ま た 「 金 色 身 三 十 二 相 八 十 随 形 好 を も っ て 無 上 法 宝 を 一 切 衆 生 に 分 布 し 与 え る 」 の で あ る 。 利 益 衆 生 の菩
薩 道 、 す な わ ち 化 他方
便 は 神 通 力 に よ り 全 能 力 を も っ て 日 常 的 な 事 柄 か ら 非 日常
的 な 不 可 思 議 な事
象 に ま で わ た っ て は た ら く の で あ る 。『 小 品 般 若 』 の 化 他
方
便 と 比 較 す れ ば 用 例 は 激 増 し 、 内 容 も 多 様 化 し て い る の で あ る 。四
方
便
思
想
と 二諦
説
次 に 『 大 品 般 若 』 に 説 か れ て い る 方 便 思 想 と 二 諦 説 と の 係 り に つ い て 検 討 を 進 め た い と 思 う 。 周 知 の よ う に 『 小 品 般 若 』 よ り 『 大 品 般 若 』 に 拡 大 さ れ て く る 過 程 に お い て こ 諦 説 が 取 り 入 れ ら れ て く る 。 二 諦 は 世 諦 と 第 一 義 諦 と で あ る が 、 『大
品 般 若 』 に お け る世
諦 は 差 別 の 言 説 界 、 第 一 義 諦 は 無 分 別 無 言 説 の 絶 対 界 を い う 。 こ の 二 諦 が 説 か れ ◎ る の は 拡 大部
分 に 於 て 多 く み ら れ る 。 ま ず 方 便 に つ い て は 、 諸 法 実 相 は 不 可 説 な り 。 而 に 仏 は方
便 力 を 以 っ て の 故 に 説 く な り 。( 大 正 八 、 三 四 五 下 ) と い う 。 ま た 世 諦 に つ い て は 、 一 切 法 は
皆
、 世 諦 を 以 っ て の故
に 説 く 。( 同 八 、 四 〇 四 上 ) と い う か ら 方 便 と
世
諦 と は 同 義 か と 考 え ら れ る 。 世 諦 は 自 利 利 他 に つ い て も 言 わ れ る 。 す な わ ち菩
薩
が 利 益 衆 生 の 方 便 思 想 の 展 開 口NII-Electronic Library Service 西 山 学 報 た め の 説
法
教 示 と 、 そ れ に よ っ て 衆 生 に 無 上 菩 提 を 得 し む る こ と であ
り 、 ま た 菩 薩 自 身 の 得 無 上菩
提 に つ い て も 言 わ れ る の で あ る 。 第 八十
実
際 品 に は 、 菩 薩 摩 訶 薩 般 若 波 羅 蜜 を 行 ず る 時 、 是 の 因 縁 法 を 以 っ て 、 衆 生 を 性 空 に於
い て 建 立 し 次 第 に漸
漸 に 示 教 利 喜 し て 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 を 得 し む 、 是 れ 世 俗 の 法 に し て第
一 義 に 非ず
。( 同、 四 〇 一 中 ) と い っ て 利 他 行 は 世 諦 と 示 さ れ て い る 。 他
方
菩 薩 自 身 に つ い て は 、 同 品 に 、 菩 薩 摩 訶 薩 は 即 ち 衆 生 の 為 に 布 施 持 戒 の 果 報 を 説 く、 是 の 布 施 持 戒 の 果 報 は 自 性 空 な り 、 布 施 持 戒 の 果 報 自 性 空 な る こ と を 知 り 己 っ て 、 是 の 中 に 著 せ ず、 著 せ ざ る が 故 に 、 心散
ら ず し て 能 く 智 慧 を 生 ず、 是 の 智 慧 を 以 っ て 一 切 結 使 の 煩 悩 を 断 じ て無
余 涅 槃 に 入 る 。 是 れ 世 俗 の 法 に し て 、 第 一 義 に 非 ず 。( 同、 四 〇 一 中 ) と い っ て 同 様 に 世
諦
で あ る 、 と 説 か れ て い る の で あ る 、 こ れ に 対 し て 第 一 義 諦 は 「 知 な く 得 な く 」 、 「 無 有 分 別 説 無 言 説 道 」 で あ り 、 「業
な く 報 な く 生 な く 滅 な く 無 浄 無 垢 」 の 語 言 を 絶 し た絶
対 界 で あ る 。 第 一 義 諦 に つ い て は 、第
一義
相 と は 無作
無為
無 生 無 相 無 説 な り 。( 同、 四 〇 三 上 ) 最 第 一 義 は
一 切 の 語 言 論 議 音 声 を 過 ぎ た り 。
( 同、 四 一 三 下 ) と い っ て 、 分 別 言
説
を 超 え た 絶 対 界 を示
し て い る の で あ る 。 ま た 衆 生 に と っ て 第 一 義 諦 の 意 義 に つ い て は 、 第 七十
三 慧 品 に は 、 第 一 義 を 得 て 一 切法
を度
た り 彼岸
に 到 る 。( 同 、 三 七 六 上 ) と い う 。 諸 仏
菩
薩等
は第
一義
を 得 て 無 上菩
提 に 到 る の で あ る 。 ま た 如 何 に し て 第 = 莪 を 得 る か と い う と 、 第 八 十 六 平 等 品 に は 、須
菩
提 、 是 の有
為
性
無
為
性
是 の 二法
は 合 せ ず散
せ ず 色 な く 形 な く対
す
る な く 一 相 謂 ゆ る 無 相 な り 、 仏 も ま た 世 一56
一 N工 工一Eleotronlo Llbrary諦 を も っ て の 故 に 説 く 、 第 一 義 を も っ て す る に は 非 ず 。 何 を 以 っ て の 故 に 、
第
一 義 の 中 に は 身行
な く 口 行 な く 意 行 な く 、 ま た 身 口 意 の行
を 離 れ ず し て 第 一 義 を 得 れ ば な り、 是 の 諸 の 有 為 法無
為 法 の 平 等 相 、 即 ち 是 れ 第 一 義 な り 、菩
薩摩
訶
薩 は般
若 波 羅 蜜 を 行 ず る 時 、 第 一義
の中
に 動 せ ず し て 而 も 菩 薩事
を行
じ 、 衆 生 を 饒 益 す 。 ( 同、 四 一 五 中 ) と い っ て 、 第 一 義 に は 身 口 意 の 三 業 は な い が 、 第=
莪 を 得 る に は 三業
を 離 れ て得
る こ と は 出 来 な い と示
さ れ る 。 つ ま り 世 諦 は 第 一 義 を 得 る た め の 条件
と な る と い え よ う 。 こ の 二諦
と方
便 と の 係 わ り に つ い て は 、 第 八十
一 具 足 品 に 次 の よ う に 言 っ て い る 。 企 ロ 利弗
、 苙 、離
訶薩
は 、 二 諦 の 中 に 住 し て 衆 生 の為
笹
諦 と箜
義 諦 と毳
法 す . 全 . 利弗
、 二讃
の 中 に 衆簿
べ か ら ず と雖
も 、菩
薩 摩 訶 薩 は 般若
波
羅 蜜 を 行 ず る に 方 便 力 を 以 っ て の 故 に 、 衆 生 の た め に 説 法 す 。 ( 同 、 四 〇 五 上 ) と い う 。 二 諦 に 住 し て 衆 生 の た め に 説法
す る こ と は 方 便 力 の 故 と す る と 、 世 諦 は 即 ち 方 便 力 に よ る と み ら れ、「 世 俗 諦 に 依
毳
竺
般常
識 に 於 け る 田罹
分 別 に 訴 え ・讒
を さ し 、 第 一譱
が 總 じ て .寡
別 を 絶 し騨
分 別 憶鼕
超 え た 即 ち 無 分 別 智 の 領 域 、 抽 象 概 念 や 単 な る 観 念 を 超 え た 体 験 実 証 の境
地 境 涯 を 指 す も の と 言 え る 」 、『 大 品 般 若 』 の 化 他
方
便 は 第 一義
に 住 し た 菩 薩 の は た ら き、 す な わ ち 世 諦 で あ り 、 ま た こ の方
便 を 受 け る方
よ り み れ ば 権 巧方
便 、 施 造方
便 で あ る か ら 、 世 諦 即 方 便 と み て よ い で あ ろ う 。 か く す れ ば 第 七 十 一 道 樹 品 の 説 は 含蓄
が あ る 。 す な わ ち 、 仏 言 は く 、 菩 薩 摩 訶薩
は 世 諦 を 以 っ て の 故 に 衆 生 に 示 す 、 も し は 有 も し は 無 な り と 、 第 一 義 を以
っ て す る に は 非 ら ず 。方
便 思 想 の 展 開 ⇔NII-Electronic Library Service 西 山 学 報 世 尊 、 世 諦 と 第 一 義 諦 と 異 有 り や 、
須
菩
提 、 世 諦 と 第 一 義 諦 と は 異 り な き な り 。 何 を 以 っ て の 故 に 、 世 諦 の 如 は 即 ち 第 } 義 諦 の 如 な れ ば な り 、 衆 生 は 是 の 如 を 知 ら ず 、 見 ざ る を 以 っ て の 故 に 、菩
薩 摩 訶 薩 は 世 諦 を 以 っ て 衆 生 に 示 す 、 若 し は 有、 も し は 無 な り と 。( 同 、 三 七 八 下 ) と い う 。 文 句 分 別 に 固 執 す る こ と に 厳 し い 反
省
を も っ て 第 一 義 を 得 て 、分
別 を 断 絶超
越 し 、 無 言 説 無 分 別 界 の 絶 対 に 住 し な が ら 文 字 分 別 に 帰 り 妙 有 の 世 界 を実
現 す る 思 想 が 二 諦 説 中 に み ら れ る が 、 こ こ に は 菩 薩 の 利 益 衆 生 の は た ら き 、 す な わ ち 第 一 義 に 住 し た 菩 薩 の 具 体 的 分 別 表 現 で あ る 世 諦 も ま た真
如 で あ り、 第 一義
と 異 る こ と は な い と い う の で あ る 。 か く の 如 き の 平 等 の 上 の 分 別 は 虚 妄 に 非 ら ず 、 か く し て 方 便 即 真 実 と 言 わ れ る 素 地 が 『 大 品 般 若 』 の方
便 思 想 の 中 に 窺 え る の で あ る 。 こ の 方 便 も 真 実 も 概 念 的抽
象 的 固 定 的 な も の で は な く無
礙 自 在 の 世 界 で あ り 、 無 言 説 の 世 界 と 化 他分
別 音 声 の 世 界 と に わ た る も の と み て よ い と 思 う 。 す な わ ち 第 一義
は 「 言 説 、 概 念 の 規 定 制 限 を 超 え た 行 的 具 体 的 生 活 境 涯 を 指 す の で あ っ て 、 説 又 は 思 想 は 月 を 指 す 指 に 外 な ら な い 」 の で 、 こ の菩
薩
は 「 声 聞 辟 支 仏 法 を 取 ら ず 、 ま た 凡 人法
を 捨 て ず 」 利他
行 を 修 す る の で あ る 。 こ こ を 『 大 智 度論
』 は 「 菩 薩 位 中 に住
し 、 甚 深 微 妙 の 無 文 字 法 を 知 っ て 、 衆 生 を 引 導 す 、 是 を方
便 と 名 つ く 」 ま た 「 菩薩
は 一 切 法 は 畢竟
空 性 に し て 無所
有 な り と 知 る も 、 而 も 能 く 還 っ て 善 法 を 起 し 六波
羅蜜
を 行 じ て 空 に 随 は ず 、 も し 能 く 四 種 事 、 も し は 疑 も し は 邪 見 、 も し は 入 涅 槃 、 も し は作
仏 を 生 ぜ ん に 、 般 若 に 是 の 如 き の 分 別 あ る を 以 っ て 、 も し 能 く 邪 疑 を除
き 涅 槃 に 入 らず
ば 是 れ 方 便 と名
つ く 」 と い っ て 、方
便 の は た ら き が 融 通無
礙 な る こ と を 釈 し て い る の で あ る 。 一58
一N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe 五
ま
と
め 『 大 品 般 若 』 の 方 便 思 想 は 『 小 品 般 若 』 を 受 け 継 ぎ な が ら 、『 大 品 般
若
』 独 自 の 発 達 が み ら れ た 。『
小
品 般 若 』は 一 切 法 空 を 強 調 し て 、 部 派 の
煩
瑣
な 教 学 に対
し 宗教
味 あ る大
乗 運 動 を展
開 し 、 声 聞 辟 支 仏 の 二 地 と 大 乗菩
薩 と の 一線
を 画 す る も の と し て 六 度 中 特 に 般 若 波 羅蜜
を 出 し て 「 観 一 切 法 空 」 を 力 説 し た 。 ま た 自 ら の 解 脱 と 一 切 衆 生 に教
化 す る こ と と は 別 な は た ら き で あ る と し て 、 謂 ゆ る 「 不 捨 一 切 衆 生 」 と の 二 法 が 菩 薩 行 と さ れ 、 こ れ ら を 「 行 般 若 波 羅 蜜 」 と し た の で あ る 。 方 便 思 想 は こ の 思 想 的 背 景 に お い て 発 展 し て い る 。 即 ち 『小
品般
若 』 で は 二 地 に 堕 せ ず 無 上菩
提 に 至 る ま で 護 る所
の権
巧 方 便 が 主 に 説 か れ た が 、 『 大 品般
若 』 に 拡 大 さ れ て く る と 、 菩 薩 の 二 法 が 成 就 さ れ る こ と が 方 便 で あ る とす
る 。 す な わ ち 施 造 方 便 、 化 他 方 便 に 重 点 が移
る の で あ る 。 さ ら に ま た こ の菩
薩
は 利 他 行 を 如 何 に 修 す る か が 説 か れ る よ う に な っ た の で あ る 。 今 検 討 し た も の を ま と め る と 次 の よ う に な る 。 権 巧 方 便 は 『 小 品 般若
』 か ら 『 大 品 般 若 』 に 至 る と 、 そ こ に 化 他 の 思 想 、 不 取 相 の 思 想 が 増 加 さ れ た 。 ま た 『 小 品 般若
』 に は み ら れ な か っ た菩
薩
、 す な わ ち 法 味 に 愛 着 し 、 二 地 に 堕 せ ず 、 ま た菩
薩位
に 入 ら ぬ と い う 「 頂 に 堕 す 」菩
薩
が み ら れ、方
便 な き 菩 薩 と さ れ て い る 。 施 造 方 便 で は 、 諸 法 自性
空 を 観 知 す る こ と に 成 就 衆 生 の 化 他 思 想 が 加 上 さ れ て い る 。 化 他 方 便 で は 神 通 力 が加
上 さ れ 、 さ ら に 菩 薩 の 化 他 活 動 が 詳 細 に 説示
さ れ て い る 。 虚 仮 の 方 便 で は 『 小 品般
若 』 を 受 け 継 い で い る が 、 進 展 し た 思 想 は み ら れ な い 。 し か し 悪 魔 の 現 作 種 種 身 も み ら れ た 。 前 三 い ず れ と も 取 れ る方
便 に 於 て も 、 化他
の 思 想 が 加 上 さ れ て い る 。 拡 大 部 分 の方
便 思 想 、 す な わ ち 『 大 品 般 若 』 独 自 の 方 便 思 想 の 特 徴 は 施 造方
便 、 化 他 方 便 の 力 説 で あ る 。 こ こ で は 神 通波
羅 蜜 が 説 か れ 、 ま た 菩 薩 事 を 行 ず る た め に 、 種 種 の 身 を 現作
す る方
便 が み ら れ る 。 方 便 思 想 と 二 諦 説 と の 関 係 は 、 ま ず 二 諦 と は 世 諦 ( 言 語 分 別 教 示 の 相 対 界 ) と 第 一 義 諦 ( 分 別 言 語 を超
え た 絶 方 便 思 想 の 展 開 ⇔NII-Electronic Library Service 西 山 学 報 対
界
) と で あ る が 、 『 大 品 般 若 』 に 説 か れ る 方 便 は 即 ち 世 諦 と み ら れ た 。 ま た 方 便 即 真 実 と い う 素 地 も こ こ に 窺 え る の で あ る 。 し か し な が ら 『 大 品般
若
』 に 於 て は 『 法 華 経 』 に み ら れ る 善 巧 方 便 ら し き 思 想 は窺
う こ と が で き な い の で あ る 。 『 法 華 経 』 の方
便 思 想 は 『大
品 般 若 』 の ど の 思 想 か ら発
達 し た も の で あ ろ う か 。 ま た こ の 『大
品 般 若 』 の方
便 思 想 は 『 大 智 度 論 』 で は 如 何 に 展 開 す る か は今
後 に 残 さ れ た 検 討 課 題 で あ る 。N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe 註 『 大 智 度 論 』 巻 四 十 一 、 大 正 二 十 五、 三 六 一 下 に は 「 堕 頂 」 の 釈 が あ っ て 次 の よ う に 言 う 。 「 譬 え ぱ 多 く 食 し て、 消 せ ざ る に 、 も し 療 治 せ ざ れ ば 、 身 に 於 い て 患 と 為 る が 如 し 。 菩 薩 も ま た 是 の 如 し 、 刧 発 心 の 時、 法 食 を 貪 愛 し、 所 謂 方 便 無 く し て 、 諸 の 善 法 を 行 じ 、 深 心 に 無 生 法 忍 を 繋 著 す 。 是 れ 則 ち 生 と 為 し 、 病 と 為 す 、 法 愛 に 著 す る を 以 っ て の 故 に、 不 生 不 滅 に 於 て も ま た 愛 す 」 等 と い っ て い る ( し か し こ れ が 堕 二 地 と は 言 明 し な い 。 『 放 光 般 若 経 』 巻 二 、 大 正 八 、 コ ニ 上 『 大 般 若 波 羅 蜜 多 経 』 巻 四 百 八 、 大 正 七 、 四 三 下 『 摩 訶 般 若 波 羅 蜜 経 』 巻 十 二 、 大 正 八、 三 〇 七 下 に は 方 便 と 憶 想 分 別 と に っ い て 次 の よ う に い う 。 「 菩 薩 摩 訶 薩 般 若 波 羅 蜜 を 行 ず る に 、 方 便 力 を 以 っ て の 故 に 是 の 念 を 作 さ ず 、 我 れ 彼 の 人 に 施 与 す 、 我 れ 持 戒 す る こ と 是 の 如 く 持 戒 す 、 我 れ 忍 を 修 す る こ と 是 の 如 く 忍 を 修 す 、 我 れ 精 進 す る こ と 是 の 如 く 精 進 す、 我 れ 入 禅 す る こ と 是 の 如 く 入 禅 す、 我 れ 智 慧 を 修 す る こ と 是 の 智 慧 を 修 す、 我 れ 福 徳 を 得 る こ と 是 の 如 く 福 徳 を 得 る 、 我 れ 当 に 菩 薩 法 位 中 に 入 る べ し、 我 れ 当 に 仏 国 土 を 浄 め 衆 生 を 成 就 す べ し 、 我 れ 当 に 一 切 種 智 を 得 べ し と 。 須 菩 提 、 是 の 菩 薩 摩 訶 薩 般 若 波 羅 蜜 を 行 ず る に、 方 便 力 を 以 っ て の 故 に 諸 の 憶 想 分 別 な し 、 内 空 外 空 内 外 空 空 空 大 空 第 } 義 空 有 為 空 無 為 空 畢 竟 空 無 始 空 散 空 性 空 諸 法 空 自 相 空 の 故 に、 須 菩 提、 是 れ を 菩 薩 摩 訶 薩 般 若 波 羅 蜜 を 行 ず る に 方 便 力 を 以 っ て の 故 に 所 礙 な し と 名 つ く 」 と 。 増 田 英 男 「 般 若 経 に お け る 「 方 便 」 の 意 味 に つ い て 」 ( 『 印 度 学 仏 教 学 研 究 』 第 十 二 巻 第 一 号、 昭 和 三 十 九 年 )
=
四 頁 。 『 放 光 般 若 経 』 巻 十 八 、 大 正 八 、 =一 = 中 。 『 摩 訶 般 若 波 羅 蜜 経 』 巻 二 、 同 、 二 三 〇 上 。 一60
一『 摩 訶 般 若 波 羅 蜜 経 』 巻 二 十 六 、 同 、 四 一 〇 中 。 『