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Academic year: 2021

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(1)

大半の電子部品や電子回路の特性は温度により変化 するため、温度制御・温度校正は温度計測の専門家でな くても電子回路設計に携わっている多くの技術者にと っても必要とされる技術です。 また、温度制御・温度校正に関する製品は数多く存在 しますが、それらの多くは高価である上に実際の設計、 製造の現場に適合しない場合も多々、存在します。 前回はペルチェを使った恒温槽の設計、製作について 解説しましたが、より高い温度範囲の50∼150℃で高精 度な温度制御・温度校正を実現するため、ラバーヒータ を用いた恒温オイル槽(写真1)の設計と製作について 解説します。 ● 基本構造と特長、用途 ラバー・ヒーターとは、図1で示すようにパターン化 されたニッケルクロム合金による発熱体とシリコン・ラ バーからなっています。その特長は ・ いろいろな形状に合わせて設計できる。 (写真2を参照) ・ 接触面積が大きく加熱効率が高い。 ・ 均一な温度分布を得ることが可能。 ・ 300℃前後の高温領域まで使用可能。 ・ 耐湿、耐候性に優れている。 オイル槽の表面は曲面ですが、この全面にヒーターを貼 付けることが出来るため、均一な温度を得やすい特長を 有していると言うことが出来ます。 ラバー・ヒーターとは

校正にも使える高精度な装置を手作り!

ラバー・ヒーターを使った温度範囲

50℃∼150℃の恒温オイル槽の設計と製作

写真1 製作した恒温オイル槽を使った温度制御システムの外観 50℃∼150℃で温度制御が可能 今回製作した 恒温オイル槽

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図1 ラバー・ヒーターの基本構造 (河合電器産業㈱カタログより)

(2)

2 次に、代表的な用途を次に示します。 ・ 医療関連での保温(MR スキャナー磁場安定、血 液、注射器、医療・健康機器など) ・ 電気・電子機器での保温(半導体用ホットプレー ト、計測機器、モーター、金型ヒーターなど) ・ 宇宙・航空機関連での保温(宇宙ステーション補給 機、尾翼操縦装置、赤外線写真装置など) ・ 事務機器関連での保温(コピー機、OA バインダ ー、ホットスタンプ、写真現像液槽ヒーターなど) ・ その他の用途での保温(パラボラアンテナ凍結防 止、精米機防湿、プレス機、ホッパー加熱など) ● 特性 ラバー・ヒーターの特性は次の性能によって示されま す。 ・ 許容最高温度 ・ 電力密度 ・ 飽和特性 ・ 熱寿命 許容最高温度は一般的に標準品で200℃前後、耐熱品 で300℃前後ですが、取付け方法により多少、異なりま すので注意が必要です。 電力密度(W/cm2)とはヒーターの単位面積当りの電 力であり、加熱対象物の熱容量と共に加熱速度とヒータ ー表面の最高温度を決定します。 飽和特性とは図 2 に示すようにヒーターを空気中に 放置し温度上昇が飽和状態に達するまでの特性を示し、 各メーカーから代表特性として提示されるデータです。 実際の使用条件とは大きく異なるため参考程度のデー タと考えた方が良いでしょう。 発熱体の寿命は半永久的と言われていますが、使用す るシリコン・ラバーの材質、構造により熱寿命は異なり ます。また、図3に示すように、使用するヒーター温度 と電力密度にも関係し、使用温度が低く、電力密度が小 さいほど寿命が長くなります。 ● 取付け方法 ラバー・ヒーターを加熱対象に密着させて取付けるこ とが重要であり、その方法を次に示します。 ・ クランプ(金属板による押さえ) ・ 専用接着剤 ・ 両面粘着シート ・ フック・スプリング 正方形 長方形 円形 複雑な形状 写真2 いろいろな形状のラバー・ヒーターの外観(河合電器産業㈱提供) 用途に合せた形状加工はラバー・ヒーター・メーカーが対応します。 図3 ラバーヒーターの熱寿命 (河合電器産業㈱カタログより) 図2 ラバー・ヒーターの飽和特性 (河合電器産業㈱カタログより) ヒーター単体を空気中に吊下げて表面温度を測定。使用環境、 被加熱物の材質等により特性は変化します。

(3)

● オイル槽の理論飽和特性 必要とするラバー・ヒーターの電力容量の目安を付け るため、使用予定のオイル槽の飽和特性を理論的に求め る必要があります。そのため、まず、オイル(体積 V、 比熱C、比重ρ)を温度 0℃から温度 T に上昇させるの に必要な熱量を求めます。これは次の(1)式で表すこと が出来ます。

)

1

(

L

L

L

VT

C

Q

=

ρ

容 量 3L の 信 越 化 学 製 シ リ コ ン オ イ ル KF-96-20cs(C=1.6kJ/kgK, ρ=0.95kg/L)を用いると、 例えば、温度100℃まで上昇させるにはQ=456kJの 熱量が必要になります。例えば、平均45.6W の電力を オイル槽に供給した場合、温度100℃に上昇するまで約 170 分かかることになります。 供給電力と熱応答の関係をもう少し理論的に検討す るには、熱損失の概念を導入する必要があります。すな わち、被加熱物が外界と接する表面から熱が失われ、こ の熱量は外界と接する材料によって異なります。この熱 損失の代表的データを図4に示します。但し、接してい る外界の風速やオイルの撹拌状態により熱損失の値は 著しく変わりますので、参考程度の値と考えて下さい。 熱損失は表面温度にほぼ比例するので、単位時間当り の熱損失を

)

2

(

L

L

L

aT

W

L

=

とします。 また、ラバー・ヒーターに供給される電力をWo とし、 その半分がオイルに供給されるものと仮定します。 よって、温度 T の時にオイルに加えられる単位時間当 りの熱量は ) 3 ( 2 / 2 / W W aT LLL W W = oL = o − また、(1)式より

W

=

(

dQ

dt

)

であるので、 ) 4 ( ) 2 / ( LLL dt dT V C aT Wo − = ρ 更に ) 5 ( ) 2 / ( LLL

= aT W dT V C dt o

ρ

となるので

(

)

(

)

[

log

W

0

2

log

W

0

2

aT

]

L

L

(

6

)

V

C

t

=

ρ

よって、時間t におけるオイル槽の温度 T は

(

0

2

)

1

10

L

L

L

(

7

)

=

C V t

a

W

T

ρ となります。電力Wo=100, 200, 300W の場合、(7)式よ り導かれる理論飽和特性は図5 のようになります。よっ て、温度150℃を得るには 300W 以上のヒーターが必要 になります。 ● 電力密度の設計 オイル槽に接しているオイルの全表面は 2 2

1000

2

rH

cm

r

S

=

π

+

π

O

(π:オイル槽の半径 8cm、Ho:深さ 15cm) となりますので、各電力密度における熱応答性は図6の ようになります。例えば、60 分以内に 150℃まで昇温 させるには電力密度で 0.6W/cm2 以上、電力容量で 600W 以上のヒーターが必要になります。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 0 60 120 180 240 300 時間(分) 温度(℃) 100W 200W 300W 図5 各電力容量におけるオイル槽の理論飽和特性 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 0 10 20 30 40 50 60 時 間 ( 分 ) 温度( ℃) 0.2W/cm2 0.4W/cm2 0.6W/cm2 0.8W/cm2 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0 50 100 150 200 表面温度(℃) 熱損失(W/cm2) 水表面(無風) オイ ル表面 金属(鉄など )表面 図4 表面温度と熱損失の関係 熱損失はヒーターと接している環境状態や材料により大きく変 わるため、上記値はあくまでも参考データです。 オイル槽の熱設計

(4)

4 ラバー・ヒーターによりオイル槽の温度を制御する場合、 ON/OFF 制御か PID 制御を用いる場合が一般的です。リ レーを用いた ON/OFF 制御は簡単ですが、制御温度の安 定性が充分に高いとは言えないため、ヒーターへの供給電 力を制御できるトライアックを用いた PID 制御が高精度 温度制御には適していると言えます。 トライアックの原理を図7 により簡単に説明します。す なわち、AC100V の正弦波形のゼロ・クロス点に対して 任意の位相差を持つトリガ・パルスを入力することにより 電力を制御することが出来ます。 トライアックを用いた電力制御器で良く知られているのは 調光器であり、この原理的回路を図8 に示します。すなわ ち、回路内のボリューム VR を調整することによりトリ ガ・パルスの位相差を変えることが出来ます。 しかしながら、ボリューム調整による手動制御ではなく 自動制御の場合、トライアックの制御回路は図8 の回路の ような単純な回路ではなく、回路設計上、幾つかの工夫が 必要です。 すなわち、ゼロ・クロス点をパソコン(PC)、またはマイ コンのPIO に入力し、PID 制御演算による操作量に対応 した位相差をトライアック制御回路に与える温度制御シ ステムが必要です。これを図9 に示します。このシステム では位相差をPC の演算処理により与えるため、アナログ 回路の構成は比較的簡単にすることが出来ます。 しかし、トランジスタ技術2007 月 5 月号記事「ペルチ ェを使った範囲±50℃誤差 0.01℃以内の恒温槽の製作(後 編)」と同じ PID 制御演算処理用 PC を用いて図 10 の温度 制御システムを構成するため、PC からトライアック制御 回路に入力する信号はPIOからのタイミング信号ではなく、 DA 変換器を利用したアナログ電圧出力になります。この 場合にはトライアックの制御回路は少し複雑になります。 このシステム例を図11 に、具体的設計例を図 12 示します。 また、各点の波形を図13 に示します。 トライアックによる電力制御の設計 ゼロ・クロス点 AC IN Gate AC OUT トリガ・パルス 図7 トライアックの動作原理 トライアック 制御回路 ゼロ・クロス点 検出回路 温度計測回路 位 相 差 演 算 処 理 PIO Interface PID 制 御 演 算 処 理 PC 図9 PC により位相差をトライアック制御回路 に与える温度制御システム TRIAC CT AC OUT AC100V IN 図8 トライアックを用いた調光器の原理的回路 VR 恒温オイル槽 電力制御回路 PID制御演算処理 DAコンバータ ADコンバータ 温度センサ4本 簡易白金測温抵抗 体用温度計測回路 ペルチェ電子冷却槽 と同じもの 図10 恒温オイル槽の温度制御システム

(5)

積分回路 比較回路 定電圧発生・電圧演算回路 リセット・パルス 発生回路 ゼロ・クロス点 検出回路 波形整形 回路 フォト・トライアック ドライブ回路 ト ラ イ ア ッ ク 電圧−パルス幅変換回路 A C 入 力 制 御 電 圧 図11 アナログ電圧入力による電力制御回路の構成図 図13 アナログ電圧入力型電力制御回路の各点の電圧波形 ① ② ③ ④ TLP560G PHOTO TRIAC Vdd+5V Vss Vss Vss Vss Vss Vdd Vdd Vdd Vdd Vdd Vdd Vdd+5V Vdd+5V 1k Trans. 5.1K A 74HC14 1 2 TLP626 B 74HC14 3 4 1k B TL064 + -5 6 7 4 11 100K 5.1K 1k TL061 + -3 2 6 7 4 5.1K D TL064 + -12 13 14 4 11 15K 10k A TL064 + -3 2 1 4 11 5.1K 5.1K C TL064 + -10 9 8 4 11 LM 336-5.0 10K 5.1K 8.2K 5.1K C 74HC14 5 6 10k 100 TRIAC 330 100 0.1uF 0.1uF400V 100 10K 10K AC100V IN AC100V IN AC OUT Control Voltage IN 図12 アナログ電圧入力型電力制御回路 ① ② ③ ④

(6)

6 恒温オイル槽の製作図を図 14 に示します。ラバー・ ヒーターは底面も含めたオイル槽の全表面に貼付け、貼 付けには熱伝導性が優れている接着剤を使用します。ラ バー・ヒーターの最大容量は500W とし、オイル槽の温 度を均一に保つため撹拌用モーターとスクリューを設 置します。 トライアックでラバー・ヒーターへの供給電力を制御 し、電力Wo=100, 200, 300W における飽和特性の実測 データを図15 に示します。図 5 のデータと比べると実 測データが理論データに類似していることが分かりま す。 更に、オイル槽中心部から約5cm 離れた四隅に 4 本 の温度センサを配置し、オイル槽の空間的、時間的温度 変動を測定した結果を図 16 に示します。温度変動が 0.05℃以内の幅に抑えられていることが分かります。 <参考文献> (1) シリコンラバーヒーター・カタログ、技術資料、 河合電器産業㈱ (2) サミコンヒーター・カタログ、坂口電熱㈱ (3) O&M HEATER カタログ、オーエムヒーター㈱ オイル恒温槽の製作と評価試験 20 cm 20cm 撹拌用モータ オイル槽 電流モニター 断熱材 筐体 (ステンレス) (ラバー・ヒーター貼付け) 図14 恒温オイル槽の製作図 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 0 60 120 180 240 300 時間(分) 温度(℃) 100W 200W 300W 図15 各電力容量におけるオイル槽の飽和特性 の実測データ 148.7 148.75 148.8 148.85 148.9 148.95 149 0 10 20 30 40 50 60 時間(分) 温度(℃) ch1温度セン サ ch2温度セン サ ch3温度セン サ ch4温度セン サ 0.05℃ 図16 恒温オイル槽の温度変動の実測データ

参照

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