<論 説>
企業の特許出願戦略の変化 に関す る研 究
1西 村 陽一郎
目 次 は じめ に
1.既存研究 2.仮 説 3.記述統計
4.
分析 5.結 論は じめに
近年,特許出願件数は減少す る傾 向にある。山田
( 2 0 1 0 )
によると,特許出願件数の減少 は, 企業による研究開発活動の停滞 を一見呈 しているようにみえるが,研究開発費 自体の推移 を見 る と,2 0 0 0
年代 において も増加傾向にあるとしている。 したがって,山田( 2 0 1 0 )
に も指摘 されて いるように,このような企業の特許出願戦略について,複数の発明を 1特許出願に集約 させ ると いった量か ら質への転換 を示 しているといった 1つの可能性が考 えられる。では,この ような企業の特許出願戦略の転換 は,知的財産部 門等 に届 出が なされた発 明の う ち,出願 されなかった発明の件数 を増加 させているのであろうか。『知的財産活動調査』による と,平成
1 9
年度において,2 3 7 , 3 7 1
件の届 出がなされた発明の うち,7 3 , 6 5 9
件( 3 1 %)
が出願 さ れなかった。一方,平成2 0
年度 において,2 8 9 , 8 4 4
件 の届 出が なされた発 明の うち,9 6 , 2 4 0
件( 3 3 %)
が出願 されなかった。この事実だけを見 ると,出願 されなかった発明が若干増加 しているように見 え,企業の特許出 願戦略に変化が生 じているように見 える。 しか し,様々な要因の影響 を受けてこの ような数字に なっているか もしれない。
本稿では,知財部門等へ届出がなされた発明の うち,出願 されなかった発明に注 目し, (1)出 願人属性や産業特性の観点か ら企業の特許出願戦略 にどの ような要因が影響 を及 ぼ しているの か,そ して
( 2 )
企業の特許出願戦略 における経年変化 にどのような要因が影響 を及ぼ している のかを考察す ることを目的 とする。 このような研究は,企業の特許出願戦略の変化が どの ような 要因によるものなのか といった原因の特定化,ひいては特許制度の経済的評価 を考察する際の手2 商 経 論 叢 第47巻第1号 (2011.9)
助けとなると考 え られる。本稿 の構成 は以下の通 りである。第1節では,特許性 向に関連す る既 存研究 を概観す る。第 2節では,理論モデルよ り5つの仮説 を導出す る。第 3節では,記述統計 を概観す る。第4節では,導出された5つの仮説 を特許庁 『知的財産活動調査』 を主 に利用 して 検証す る。第5節では主要 な結果 を結論 として まとめる。
1.既存研究
本稿の研究内容 は特許性向 と非常 に密接 に関連す る。 なぜ な ら,知財部門に届 出が なされた発 明件数 に対 して出願 しなかった件数の比率 は特許性 向の裏返 しであるか らである。そ して,特許 性 向について,Le vinetal.(1987),Cohen etal.(2000),後藤 ・永 田 (1997)では,発明の保護手 段 として特許化 の有効性が弱い といった事実が指摘 されている。特 に,特許制度 による保護方法
については発 明の開示が漏洩につ ながるといった問題点が彼 らによって指摘 されている2。
Horstmann etal.(1985)は,特許性 向の決定要因について, シグナ リング問題の観点か ら理論 分析 を行 っている。 この研究によれば,特許化 の有無 に応 じたフォロワーの利得 をリーダー企業 が私的情報 として握 ってお り, この私的情報が リーダーの特許化 の有無行動 に応 じてフォロワー に漏洩す るため, 自社 にとって有用 な発 明で も必ず しもすべて特許化 されるものではないことを 明 らか に してい る3。す なわち, リー ダーが特 許化 とい う手段 で新 製 品 の保 護 を図 る こ とは
「フォロワーが損失 を被 る」 といったシグナルをフォロワーに伝 えることにな り, リー ダーが秘 匿化 とい う手段で新製品の保護 を図ることは 「フォロワーが利益 を獲得す る」 といったシグナル をフォロワーに伝 えることになる。 よって, この ようなシグナルが フォロワーに伝 わることを前 提 にして リーダーは特許化す る発 明を選別す るとしている。
ArundelandKabla (1998)は,欧州の大企業 (604社)のデー タを利用 して産業別特許性向が ど うなっているのか,そ して特許性 向の決定要因が どんな ものなのか を統計分析 している論文であ る。記述統計分析か ら以下のように (1)か ら (5)までについて知見 を得 ている。
(1)産業別 に見 る と,医薬 品 (pharm aceuticals),化学 (chemicals),機械 (machinary)にお いて特 許性向が高い。他方,繊維 (textiles,clothing),卑金属 (basicmetals(ironandsteel))では,特 許性 向が低 い。
(2)イノベーシ ョン種別及び産業別特許性 向を見 ると,プロダク トイノベーシ ョンについて,医 薬 品 (phm ace血cals)で は
79. 2 %
,化 学 (che血cals)で は5 7. 3 %
,機 械 (machin∬y)で は5 2. 4%
となっている。他方,繊維 (textiles,clothing)では8. 1 0
/0,卑金属 (basic metals(iron and steel))では
1 4. 6 %
となっている。 プロセスイノベーシ ョンについて見 る と,精密機械 (precision instruments)で は46. 80
/0,医薬 品 (pharm aceuticals)で は45. 6 0
/0,金 属 製 品 (fabri‑catedmetalproducts)では
3 9. 4%
となってお り,繊維 (textiles,clothing)では8. 1 0
/0,その他輸 送機械 (othertransport)では1 0. 9 %
,運輸 ・通信サービス (transportandtelecom services)で は1 2. 4%
となっている。企業の特許出願戦略の変化に関する研究 3 (3) プロダク トイノベー シ ョンとプロセスイノベーシ ョンとの間で特許性 向が異 なる。 プロダク
トイノベー シ ョンにつ いては
3 5. 9 %
の イノベー シ ョンが特 許化 され る。他 方,プ ロセス イ ノベー シ ョンにつ いては2 4. 8%
である。 したが って,一般 的な傾 向 として,プ ロダク トイ ノベーシ ョンの方が プロセス イノベー シ ョンよ りも相対的に多 く特許化 される。 この結果 は プロセスイノベー シ ョンについては秘 匿化 によるノウハ ウ化が保護 として効果的であること を示 している。つ ま り,プロセスに拘 わる発明の場合,特許 に よる保護方法 であれば,競合 他社 は特許制度 による技術公 開でその内容 を知 ることが可能 となることに加 えて, プロセス に拘 わる当該発 明 を模倣 した として もなかなかその侵害事実 を発見す ることが難 しい。 した が って,プロセスイノベー シ ョンについては特許化が避 け られている と考 え られる。(4)しか し, どの産業 で も (3)の傾 向が成立す るわけで はない。 プロセス イノベ ー シ ョンが プ ロダク トイノベ ー シ ョンよ りも高 い特 許性 向 を示 す 産業 は,鉱業 (血ning),繊 維 (textiles, clothing),卑金属 (basicmetals(ironandsteel)),石油精製 (petroleum refining),金属製 品 (fab‑
ricatedmetalproducts)となっている。
(5)特許性 向は従業員規模 に応 じて上昇す る (ただし,十分規模が大きいとその後の規模の増加に対し て特許性向は低下する)。
プロダク トイノベー シ ョンまたはプロセスイノベー シ ョンの特許性 向 を被説明変数 とした計量 分析 によって以下の ような結果 を彼 らは得 ている。
(1)被説明変数 と企業規模 との間に統計的に有意 な正 の相 関が見 られる。つ ま り,企業規模 に応 じて特許性 向は増加す る。
(2)発 明 を保護す る手段 として特許化が重要 である と考 えている企業 ほ ど,特許性 向が高い。
(3)被説明変数 と競争の程度 との間に統計的 に有意 な正 の相 関が見 らゴ1る。つ ま り,企業が直面 す る競争の程度が高いほ ど特許価値が高 くなるため,相対 的に模倣す るコス トが低下す る。
よって,模倣 を阻止す るため特許性 向が高 くなる。
( 4 )
被説明変数 と企業のR&D
集約度 との間に統計 的 に有意 な関係が見 られ なか った。つ ま り,R&D
集約度が異 なって もそれほ ど特許価値 の差異 につ なが っていない ことを示唆す る。(5)プロダク トイノベー シ ョンの特許性 向 を被説明変数 とした場合 とプロセスイノベー シ ョンの 特許性 向を被説明変数 とした場合 とで産業 ダ ミー変数 の統計 的有意性が異 な り,前者 の統計 的有意性 の方が高い。つ ま り,プロダク トイノベー シ ョンについては産業差異 といった もの が存在す るが,プロセスイノベー シ ョンについては産業差異 とい った ものが存在 しない。
(6)結論 として,産業特性 の他 に, (1)企業規模, (2)模倣 を防 ぐ手段 としての特許化 の (当該 企業にとっての)重要性 , (3)模倣 を防 ぐ手段 としての秘 匿化 の (当該企業にとっての)重要性
といった企業特性が特許性 向に影響 を及 ぼす としてい る。
Zaby (2010)によれば,Horstmann etal.(1985)とは異 なる理論モデルの フレームワー クで, 特許化 による技術漏洩 について分析 を行 ってい る。Zaゎy (2010)は技術 先行性 に着 目し,技術先
4 商 経 論 叢 第47巻第 1号 (2011.9)
行性が高い企業では特許化 による情報開示 によって,せ っか くの技術先行性が弱 まって しまうと い うデメリッ トが強 く認識 されるため,特許性 向が低い といった結果 を兄いだ している。 また,
リバースエ ンジニアリングの容易 さで測定 した技術複雑度が低 ければ,イノベーシ ョンを生成 し た初期時点の技術先行優位性がす ぐに弱 くなるので,技術先行性が低い場合 と同 じ結果 になると
している。つ ま り,特許性向が高い。
しか し,同 じような要素 について別の議論 を してい る研 究 もある。た とえば特許庁 (2006)で は,技術複雑度が高ければ,た とえリバースエ ンジニア リングが なされて も他社 に漏洩 しに くい とし,特許性向が高い としている。
Br o u we ra ndl qe i n k ne c ht
(1999)は,Ar unde la ndKa bl a
(1998)が分析 した大企業 中心のサ ン プルデー タとは異 な り,零細企業や中小企業 も含む企業規模全階級のオランダ企業の特許性 向 と (1)共同研究開発, (2)企業規模, (3)産業特性 との間に どの ような関係 にあるのか を実証的に 検証 してい る。彼 らに よれば特許保護手段 を どの ように捉 えてい るのか (重要性につき5段 階評 価)について 血¶nde la ndKa bl a
(1998)の結果 と整合 的な結果 を得 ている。た とえば,化学,医 薬品,機械 ,事務用機器,電気機械,精密機械では特許性 向が平均値 よ り高 く, 自動車, ゴム, プラスチ ックでは平均値 より低 い としている。 また,プロセスイノベー シ ョンはプロダク トイノ ベーシ ョンよりも特許化 されに くい とした結果 も得 ている。また,彼 らは
,( 1 )
少 な くとも1
件以上の特許出願 をな している企業 の比率,( 2 )EP
Oへ特 許出願 している企業の特許出願件数のいずれかを被説明変数 として分析 しているが,その うち前 者 を特許性向 として統計分析 を行 っている。分析結果 によれば,第 1に,技術機会が多い産業か どうかの産業 ダ ミー と特許性 向 との間に統計的 に有意 な正 の相 関 を兄 いだ している。 したが っ て,技術機会が多い産業 に属す る企業の方が高い特許性 向であるとい った結果 を得 ている。第2
に,共 同研究 開発性 向 と特許性 向 との間に も統計 的に有意 な正 の相 関 を兄 いだ してい る。つ まり,共同研究開発 に着手す る際 にはパー トナー企業 に自社技術 を開示 す るこ とが必要 になるた め,それに対 して 自社 の保有技術 を事前 に特許化 し,保護 を しようとしていることを示唆す ると している。第3に,企業規模 (従業員の対数)と特許性向 との間に も統計的に有意 な正 の相 関 を兄 いだ している。 これは,大企業 ほ ど高い特許性 向であ り
,
「大企業 と比較 して,小企業や中規模 企業 は市場 シェア,マーケテイングネ ッ トワーク,ブラン ドカ,広告集約度 な どについて相対的 に劣位 にある。 この弱点 をカバ ーす るため,特許 による保護 をよ り訴求す る。」 といった当初 の 符号条件 とは逆の結果 になっている。つ ま り,特許化 にはなん らかのノウハ ウが必要でそれが零 細企業や中規模企業で十分でないためにこれ らの企業の特許性向は低水準であ り,大企業 にはそ れが具備 されているため,高い特許性向であるとしている。山田 ・石井 (2009)は,
Ar o r ae ta
l.(2008)によって定義 されたパ テ ン トプ レミアムを 『知的財 産活動調査』のデータを用いて推計す ることで 日本の特許制度の経済的な評価 を試み ようとして いるものだが,パテ ン トプレミアムを算出す る際に特許性 向 も推計 している。本稿 で以下 に示す企業の特許出願戦略の変化に関する研究 5 ように彼 らも 「出願 した件数」 を 「届 出された件数」で割 ることで得 られた比率 を特許性向に利 用 している。 しか し, この出願割合 について,特許性 向を示 しているものなのか,それ とも特許 性向の構成要素である 「特許価値のあるものの割合」 といった別の指標 を示 しているものなのか を各業界 に属す る個別企業 に対 して ヒア リングをす ることで確 認 を してい る。彼 らに よれば,
『知的財産活動調査』にある 「知的財産部 門又 は知 的財産担 当者 に届 出 された もの」の実体 は, ほ とん ど特許性要件 を備 えた発 明であ り,先 ほ どの 「出願 した件 数」 を 「届 出 された件数」で 割 って算 出 される出願割合 は 「特許価値 のある ものの割合」であ ることを明 らか に してい る。
よって,彼 らは特許性 向を算 出す る際に,文科省科学技術政策研 究所 (2000)が調査 した 「特許 による専有可能性」のデー タによ り調整 を行 っている。
ところで,彼 らが推計 した産業別特許性 向を見 ると,医薬品工業,総合化学 ・化学繊維業の特 許性向が高 く,他方で 自動車工業,その他輸送用機械工業の特許性 向が低 く, また,産業全体の 特許性向の平均値 を0.275と算 出 してお り,
Ar o r ae ta
l. (2008)の推計結果 と比較 して整合的な 結果 を得 ている。Ar o r ae ta
l. (2008)は,米国製造業の企業が出願 した特許 について,特許 プレミアムを算 出す る際 に特許性向を算 出 している。彼 らは 「出願 された件数/ イノベーシ ョン数」 を特許性向 とし ているのではな く,同指数 を 「特許性向 ×イノベーシ ョンあた りに保護す る特許件数」 と分解 し てい る。そ して,彼 らは特許性 向 を1991年 か ら1993年 の期 間 に実施 したR&Dプロ ジェク ト (成果として製品イノベーションを生み出したプロジェクト)ごとに特許出願が なされたか どうかの調査 デー タを利用 して推計及び算出 している。彼 らの特許性向の分析 では,企業 における特許による 保護方法の有効性 についての重要度,従業員数の対数 (企業規模),調査 デー タで得 られた技術市 場の競合他社数 といった3変数 を含 めて推計 をしている。彼 らによれば,調査 デー タで得 られた 技術市場の競合他社数 を除 く変数 について統計的有意性 を確認 (企業における特許による保護方法の 有効性についての重要度については正,従業員数についても正)した としている。2.
仮説ここでは仮説導出のため,以下の ような理論分析 を行 う。
今,次の ような状況 を考 える。市場 (業界)にはイノベー ター とフォロワーの
2
種類 の企業が 存在す る。 イノベー ター とは研究開発 プロジェク トで うま く成功 をお さめ,新 しい発 明を成 した 企業 を指す。 また,イノベー ターに生み出された新 しい発 明について先 ん じられた とい う点で他 企業 は後発者 になるため,先ん じられた後発者 をフォロワー と呼ぶ。 イノベー ターには,発 明を (1)特 許化 に よって保 護す る方法, (2)秘 匿化 (本稿では,特許化 しない行動を秘匿化 と呼ぶ)に よって保護す る方法が意思決定の選択肢 として与 えられている。 フォロワーには, イノベー ター によって先 ん じられた新発 明について (1)模倣す る, (2)模倣 しない といった選択肢が与 え ら れている。 もし,フォロワーによって模倣 されずイノベー ターが新発明 を市場投入で きた場合,6 商 経 論 叢 第47巻第1号 (2011.9)
イノベーターが得 られる利益 (利得)を 「7rHJとお く。 また, フォロワーによって模倣 された場 合 で もその後の特許権 による差 し止め訴訟 に勝訴 した場合又 は先使用権 による通常実施権が抗弁 として認め られた場合, フォロワーに模倣 されなかった場合 に得 られ る利益 (利得)が 回復 で き ると考 え,イノベー ターが得 られる利益 (利得)を同様 に
「 7 r H
」 とお く。 しか し,フォロワーに よって模倣 され,その後の特許権 に基づ く差 し止め訴訟 に敗訴 した場合又 は先使用権 に基づ く抗 弁が認め られず敗訴 した場合,イノベー ターの得 られ る利益 (利得)が 「7 T L
」 まで低下す ると仮 定す る。ただ し,「 7 T H
」 と「 7 r L
」 には以下の ような関係があると考 える。7rH>7TL,∂7rH/∂発明の本源的価値
>
O,∂7T L /
∂発明の本源的価値>0
(1)式つ ま り,イノベー ターが得 られる利益 (利得)は, (1)模倣が なされ なか った状況 または模倣 を 阻止で きた状況 (独占市場), (2)模倣 を阻止で きなかった状況 (非独占市場)といった市場構造 に 依存 して決定 される。 さらに,発明か ら得 られる独 占利益 「7rHJ及 び非独 占利益
「 7 r L
」 は,発 明 の本源的価値 に応 じて大 きくなるといった前提 をお く。次に, フォロワーの利益 (利得)を考 える。模倣 し,特許権 に基づ く差 し止 め訴訟 においてイ ノベー ター を敗訴 させた場合 (フォロワーの勝訴,つまり模倣に成功した場合) にはイノベ ー ターが 得 られ る利益 (利得)と同等 になると考 え
「 7 r L
」 とお く。 また,特許権 に基づ く差 し止 め訴訟 に おいて フォロワーが敗訴 した場合又 はイノベ ー ター に よる先使 用権 の抗弁 が認 め られ た場合 (フォロワーの敗訴,つまり模倣に失敗した場合)には 0とお く。また,模倣 を阻止で きる確率及 び模倣 を阻止で きない確率 を以下の ようにお く4。
模倣 を阻止で きる確率(p)‑模倣 を発見で きる確率 ×裁判で勝訴
Le n f or c e
で きる確率 (2)式 模倣 を阻止で きない確率‑1一模倣 を阻止で きる確率‑1‑♪‑1‑模倣 を発見で きる確率 ×裁判で勝訴
Le n f o r c e
で きる確率つ ま り,イノベー ターが フォロワーによる模倣 を阻止す るためにはまずイノベー ターが フォロ ワーの製品をリバースエ ンジニアリング して,模倣 している侵害事実 を発見で きなければな らな い (観察可能性)。仮 にイノベー ターが模倣 している侵害事実 を発見 で き,差止訴訟 を提訴 した と して も特許化又 は秘匿化 による保護が不十分で敗訴 し模倣 を阻止 で きないか もしれない5。 した が って
,
「模倣 を阻止で きる確率」 は 「模倣 を発見 で きる確率」 に 「裁判 で勝訴Le n f o r c e
で き る確率」 を乗 じた もの となる。また,特許化や秘匿化 には各 々の コス トがイノベー ターにかか るとお き,イノベー ターが特許 化 による保護 といった手段 を用いた場合 と秘匿化 による保護 といった手段 を用 いた場合 で模倣 コ ス トが フォロワーにもそれぞれかかるとお く (各 々を 「特許化 コス ト」
,
「秘匿化 コス ト」,
「特許企業の特許出願戦略の変化に関する研究 7 化の場合の模倣 コス ト」
,
「秘匿化の場合の模倣 コス ト」)
。そ して,各 コス トについて以下の よう な関係が成立す ると仮定す る。特許化 コス ト<秘匿化 コス ト
特許化の場合の模倣 コス ト<秘匿化の場合の模倣 コス ト
(3)式 は,① 日本企業の多 くが秘匿化 よ りも特許化 している比率が高い といった事実か ら特許 化の方が発明の保護手段 として容易である可能性が高い こと,(∋ (2)式 にあるように本稿 では イノベーターが特許化 を選択 しようとも秘匿化 を選択 しようとも模倣 を阻止で きる確率が等 しい ことになっている。一般的に日本 における先使用権の保護 は弱 く,秘匿化の方が模倣 を阻止で き る確率が低い と考 えられる。 したがって, この確率 を両ケースの場合 で等 しく扱 ったため (秘匿 化の場合で も,特許化の場合で模倣 を阻止で きる確率 に十分等 しくなるほど訴訟準備や手間暇 を かけると解釈す る) にその分イノベー ターが負担す る秘匿化 コス トが高 くなっていることを意味 す る。
イノベー ターが特許化 を訴求 した場合,公報で発明が公開され, フォロワーに発明内容が漏洩 す る。 したがって,秘匿化 される場合 と比較すると模倣が容易 にな り,その分模倣 コス トが安 く なると思われ, (4)式のような前提 をお く。
上記のようにモデルを設定す ると,イノベー ター とフ ォロワーの利益 (利得)は図表1の通 り になる。
図表
1
の うち,不確実性の部分 を期待値で評価 し逆戻 りすると図表2
の通 りになる。図表1 イノベーター及びフォロワーの意思決定ダイアグラム
イノベーターの フォロワーの 意思決定 意思決定
模倣する
(イノベーターの利益 (利得),‑フォロワーの利益 (利得)) (TEFl一特許化コスト,一特許化の場合の模倣コスト)
(7TL‑特許化コスト,7TL一特許化の場合の模倣コスト)
(TEH一特許化 コスト,0)
(7rll一秘 匿化 コスト,‑秘匿化の場合の模倣コスト)
(7rL一秘匿化 コスト
,
7TL
‑秘匿化の場合の模倣コスり(7TF{一秘匿化コスト0)
β 商 経 論 叢 第47巻第1号 (2011.9)
図表2 イノベーター及びフォロワーの意思決定ダイアグラム (期待値評価)
イノベーターの 意思決定
フォロワーの
意思決定 (イノベーターの利益 (利得 ),フォロワーの利益 (利得 ))
(97rfT+(1‑i))7rL一特 許化コスト,(1‑9)7rL一特 許化 の場 合の模 倣 コスト)
(nH‑特 許化 コスト,0)
(97Tff(1‑9)7EL‑秘 匿化 コスト,(1‑9)7TL一秘 匿化 の場合 の模倣 コスト)
(7TH一特 許化 コスト,0)
したが って, フ ォロワーが模 倣す る条件 は
模倣 した場合 の フォロワーの利益 (利得)>模 倣 しなか った場合 の フ ォロワーの利益 (利得)
を満 たす ときであ る。つ ま り,
イノベ ー ターが特許化 した場合 :
( 1‑ 9)
7rL一特許化 の場合 の模 倣 コス ト>0
イノベー ターが秘 匿化 した場合
:( 1‑ 9)
7rL‑秘 匿化 の場合 の模 倣 コス ト>0
となる。今
, 「 ( 1‑ 9)
7rL‑模倣す る開催」 とお くと,図表3 フォロワーの意思決定
企業の特許出願戦略の変化に関する研究 9 図表4 (A)の場合
模倣す る開催 >特許化 の場合 の模倣 コス ト 模倣す る開催 >秘 匿化 の場合 の模倣 コス ト
の とき, フォロワー は模 倣 す る。つ ま り,各 々のケース (イノベーターが特許化するのか秘匿化する のか)にお け る模倣 コス トが 「模倣 す る開催」 を上 回 るのか (上に位置するのか),下 回 るのか (下 に位置するのか)で, フ ォロワーが模倣 しないのか模倣 す るのかが決定 され る (図表3)。
意思決定の タイ ミングは以下 の通 りであ る。 イ ノベ ー ターが生 み 出 した新発 明 を特許化す るの か,秘 匿化 す るのか とい った意思決定 を した後 に, イノベ ー ターの意思決定結果 を観察 した結果 を踏 まえて模倣す るのか模倣 しないのか とい った意思決定 をフ ォロワー は模倣 す る間借 に応 じて 考 える。 そ うす る と,以下 の ような3つ のパ ター ンになる。
(A)模倣す る開催 >秘 匿化 の場合 の模倣 コス ト>特許化 の場合 の模倣 コス ト (図表4)
イノベ ー ターが新発 明 を特許化 した場合 で も秘 匿化 した場合 で もフォロワーが負担す る模
10 商 経 論 叢 第47巻第1号 (2011.9)
倣 コス トが模 倣す る開催 よ りも安 くなるため (模倣する間借 より下に位置するため), フ ォロ ワーはイノベー ターの意思決定結果 に拘 わ らず模倣す る (図表4)0
(B)秘 匿化 の場合 の模倣 コス ト>模倣す る開催 >特許化 の場合 の模倣 コス ト (図表5)
イノベー ターが新発 明を特許化 した場合 , フォロワーが負担す る模倣 コス トが模倣す る開 催 よ りも安 くなる (模倣する開催より下に位置する)。 そのため,イ ノベ ー ターが特許化 の意思 決定結果 に対 して フォロワーは模倣す る (図表5)。一方, イノベー ターが新発 明 を秘 匿化 し た場合, フォロワーが負担す る模 倣 コス トが模倣す る開催 よ りも依然 として高 い (模倣する 開催より上に位置する)。そ のた め,イ ノベ ー ターが秘 匿化 の意 思 決定 結果 に対 して フ ォロ ワーは模倣 しない (図表5)。
(C)秘 匿化 の場合 の模倣 コス ト>特許化 の場合 の模倣 コス ト>模倣す る開催 (図表6)
イノベー ターが新発 明を特許化 した場合 で も秘 匿化 した場合 で もフォロワーが負担す る模 倣 コス トが模倣 す る開催 よ りも高 くな るため (模倣する開催 より上に位置するため), フ ォロ
ワーはイノベー ターの意思決定結果 に拘 わ らず模倣 しない (図表6)0
また, (1)〜 (4)式 よ り,各 ケース にお け るイノベ ー ターの利益 (利得)の大小 関係 , フ ォロ ワーの利益 (利得)の大小 関係 は以下の ようになる。
イノベー ターの利益 (利得)の大小 関係 :
7rH一特許化 コス ト>7rH‑秘 匿化 コス ト>p7rH+(119)7rL‑特許化 コス ト>97rH+(1‑9)7rL一秘 匿化 コス ト ((1)・(2ト (3)式より)
フォロワーの利益 (利得)の大小 関係 :
(1‑9)7TL‑特 許化 の場合 の模 倣 コス ト> (1
‑♪
)7lL‑秘 匿化 の場合 の模 倣 コス ト>0((1)・(2)・(4)式より) (5)式
図表6 (C)の場合
企業 の特許 出願戦略の変化 に関す る研究 11 したが って, (A) 〜 (C) の場 合 にお い て, イ ノベ ー ター の望 ま しい意 思 決 定 そ して フ ォロ ワーの望 ま しい意思決 定 は以下 の通 りになる。
(A) の場合 : (イ ノベ ー ター意思決定 , フ ォロワーの意 思決 定) ‑ (特 許化 ,模 倣 す る) (B) の場合 : (イノベ ー ター意思 決定 , フ ォロ ワーの意思決 定) ‑ (秘 匿化 ,模 倣 しない) (C) の場 合 : (イ ノベ ー ター意思 決定 , フ ォロ ワーの意思決 定) ‑ (特 許化 ,模 倣 しない)
さて,本 理論 モ デル を利用 す る と以下 の仮 説 が導 出可 能 で あ る6。
仮 説1(発 明の本 源 的価値 に関す る仮 説)
「潜 の桑 伴ziL 居 であ i とする と′二蒼顔L好さ禿 る
愛
野 の本腰影 癖潜 カう看 (7ざるl7 fと 金賞i/L‑ぱ
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「潜 の条 件が ‑ノ者 であ る と する と
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点て 7jTFる ば とijAt君f/i‑経度 者 のj筑許
鮒 ば いっ/L ・ ん
密 T L, その顔i斉 するo」
この よ うな仮 説 が成立す る理 由 は以下 の通 りで あ る。模 倣す る開催 が十分 に低 い場合 を考 えて み る (
( C)
の場合)。発 明の本源 的価値 が上 昇 す る と 「模 倣 す る開催」 を構 成 す る 「7 r L
」 が上 昇 す る。 この プロセス の中で,模 倣 の開催 が秘 匿化 の場合 の模 倣 コス トよ り下 回 るが特 許化 の場合 の 模 倣 コス トよ り上 回 る場 合 が あ る( ( B)
の場合)。 この場 合,
「秘 匿化 の場 合 の模 倣 コス ト」 が「特 許化 の場合 の模 倣 コス ト」 よ り高 い た め,模 倣 され た くない イ ノベ ー ター は秘 匿化 を選好 す る。 しか し, この水準 よ りも 「模 倣 の閥値」 が さ らに高 くな って しまい 「秘 匿化 の場合 の模 倣 コ ス ト」 を超 えた場合 , イノベ ー ターの行動 とは無 関係 に フ ォロ ワー は模 倣 す る こ とにな る ((A) の場合)。 その場合 , イ ノベ ー ター は特 許化 を選好 す る。
仮説
2
(発∴明特 性 に関す る仮説)「潜 の条 件ziL lを であ る とする と,̲登弟L
好
き禿 る愛 好 が プ L7セJXに静
め る屠 度カモ大 き いjAt君i/i‑嫁豪 君Ifと; ?tEi=p‑許倉庫 が好 いo」
「潜 の
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「潜 の桑 #が ‑ノ者 であ る とする と,磨 草 で蒼 雛 ゞG
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ク彦潜 に7ま・るiAt者f/I/ 貨
産 業■ぱ とこ揮
ノ許産 府がよ ク
密TiLるo」
厳密 な証 明 は補論 を参考 され たい。以下 で は簡 単 な解釈 を加 える。
発 明が プ ロセス に拘 わ る性 質 を よ り強 く帯 び るほ ど, フ ォロ ワーが新 発 明 の内容 を も し知 って
12 商 経 論 叢 第47巻第1号 (2011.9)
しまえば, イノベ ー ターの 「模倣 を発見 で きない確 率」 もし くは 「模倣 を阻止 で きない確 率」 が 高 くなる。 そのため, フ ォロワー に とって模 倣 した ときの利益 (利得)が高 くなる (「(1‑9)7rL」 が上昇)。 この よ うな場合 ,新 発 明 の 内容 が フ ォロ ワー に漏 洩 しない手段 で あ る秘 匿化 をイ ノ ベ ー ターが選択 し, フ ォロワーが負担す る模倣 コス トを高 い状況 を作 り出 し, フ ォロワー に模 倣 をさせ ない状 況 の方が イノベー ター に とって望 ま しい。つ ま り, イノベ ー ターの秘 匿化 とい った 意思決定 に よって, フ ォロワー に よる模 倣 といった選択肢 を困難 に させ るこ とが実際 に起 きるの であ る ((B)の場合)。
同 じ議論が発 明の複雑性 につ いて も可 能であ る。発 明が複雑 であ るほ ど, フ ォロワーが新発 明 の内容 を もし知 って しまえば, イノベ ー ターの 「模倣 を発見 で きない確率」 も しくは 「模 倣 を阻 止 で きない確 率」が高 くなる。 そのため, フ ォロ ワー に とって模倣 した ときの利益 (利得)が高 くなる (「(1‑9)7rL」が上昇)。 この ような場合 ,新 発 明の内容 が フ ォロ ワー に漏 洩 しない手段 で あ る秘 匿化 をイノベ ー ターが選択 し, フ ォロワーが負担す る模倣 コス トを高い状 況 を作 り出 し, フォロワー に模倣 をさせ ない状況 の方が イノベ ー ター に とって望 ま しい。つ ま り,発 明の プロセ ス関連度 と同様 な状況が実際 に起 きるのであ る ((B)の場合)。
仮説3(グローバ ル化 に関す る仮説)
「潜 の桑# ziLl者 であ る よすi と,分 署 店身zirグ p‑ノrjb,
蒼L
T いijJA二t者i/i‑ぱ産芳I
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好 いo」「潜の桑 #が ‑ノ者 であ i とする と,磨草 で倉署膚身が よ クグ O‑パル 推 i‑る公
署f
/=経度 署Ifと こ
J ク符′許
鰍 i密Tするo」第1に,企業活動 が グローバ ル化す るほ ど,理論 モ デル 中の 「模 倣 す る開催 (‑ (1‑A)7rL)」 が高 くなる。その理 由は以下 の通 りであ る。
企業活動が グローバ ル化す るほ ど,理論 モデル中の フォロワーの定義 の範 囲 に,国内の 日本企 業 に加 えて,輸 出先 国 または直接投 資先 国 にお ける現地 の外 国企業 も含 まれ る。 その ような状況 下 で同質 の新 発 明が与 え られてい る とき,当該新 発 明 を新 製 品 と して 日本 国 内の み で展 開す る ケ ー ス よ りもグ ローバ ル に展 開 で きるた め,そ の分 ,発 明 の 本 源 的価 値 が 高 くな りや す い (「7rH」や 「7rL」が大きくなりやすい)oつ ま り,発 明の本源 的価値仮説 に よ り
,
「模 倣 す る開催 (‑ (1‑9)7rL)」 が高 くなる。
第
2
に,企業活動が グローバ ル化 す るほ ど,
「模 倣 を阻止 す る確 率 (b)」 が小 さ くな る。企業 活動 の グローバ ル化 に よ り,現地 の海外企業 の製 品動 向や技術動 向 を常 に監視す るこ とが可能 に な る とはい え (つまり,見方を変えれば 「模倣を発見で きる確率」が上昇すると捉 えることも可能であ る),国内の 日本企業 (または国内市場) と現地 の海外企業 (または現地市場)との間の物理 的距離 は 遠 い。 そのため, どう して も現地 の海外 企 業 に よる模 倣及 び侵 害 の発 見 が遅 れ る (「模倣を発見で企業の特許出願戦略の変化に関する研究 13 きる確率」が小さくなるため,「模倣を阻止する確率 (♪)」が小さくなる)。 また, ア ジアな どで は,知 的 財 産制度 の保 護 が十分 で はない可 能性 が高 いため
,
「裁判 で勝 訴Le nf or c e
で きる確 率」 が低 下 す る。 したが って,
「模 倣 を阻止 す る確 率 (p)」が小 さ くな り,
「模 倣 を阻止 で きない確 率 (1‑♪)」 が高 くな りやす い。
第3に,企業活動が グローバ ル化す るほ ど,特許化 の場合 の模倣 コス トと秘 匿化 の場合 の模倣 コス トの差分が大 きな もの となる (模倣コス トの差分‑秘匿化の場合の模倣コス トー特許化の場合の模倣 コス ト)。先述 の ように,国内の 日本企業 (または国内市場) と現地 の海外 企業 (または現地市場) と の間の物理 的距離 は遠 い。 この ような状況下で は,現地 の海外企業 に とってみれ ば, 日本企業 に よる発 明 また は技術 の吸収 ・模倣経路が特許イヒに よる発 明の公 開,つ ま り公報 とい った もの に よ り集約化 ・特定化 されて しまう。 そのため,特許化 の場合 の模倣 コス トと比較 して,秘 匿化 の場 合 の模倣 コス トが非常 に高 い もの となる。 したが って,模倣 コス トの差分 が非常 に大 き くな り, (B)の場合 が起 きやす くなる。 したが って,企業 は秘 匿化 を選 好 す る こ とに な る。つ ま り,国 内展 開のみの企業 と比較 す る と, グローバ ル化 企業 はその発 明の利益 (利得)の大 きさ,物理 的 距離及 び知 的財産制度 の不 十分 さか ら くる模倣 を阻止す る Lに くさに よ り,海外 にお ける現地企 業 に よって模倣 されやす い。そ して,海外 の現地企業 か らす る と,特 許制 度 に よる発 明の公 開 と い った限 られた手段 か らしか,模倣 しようとす る発 明の情報 を吸収 で きない。 この ような場合 ,
日本企業 はわ ざわ ざ特許化 を しないのであ る。
仮説
4
(技術 的競争 ポジシ ョンに関す る仮説)「
金 賞の榊 多 感釦 ,'1リーダ ー で穿 jWigi灘 拘野〆こ発行 LTいi顔塚 を孝 i i;o( 1
) そのE 存 度 の腰勿カ ミ 何者 潜# (フ ォ Uクー) のJBUWIH ' 4 B
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「リーダ ー であi̲企君 の′蒼jW4,‑潜 幸でよ
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胞 ゞi好Tするo」
当該企業 (イノベ ー ター) の技術 的 な先行 度 の増加 は2つ の保護方法 にお け る模倣 コス トの上 昇 と,模倣 コス トの差分 の増加 を もた らす と考 え られ る。 しか し, (1)の場合 と (2)の場合 に おいて もた らされ る効果がそれぞれ異 なる と考 える。つ ま り, (1)の場合 の ように, フ ォロワー が簡単 にキ ャ ッチ ア ップで きる程度 に当該企業 が技術 的 に先行 してい る程 度 であれ ば,いず れ模 倣 され る場合 に備 えて特許化 を選択す るこ とが望 ま しい。 しか し, (2)の場合 の ように, フォロ
ワーが技術 的 にキ ャ ッチ ア ップす ることが相 当困難 な程 度 に当該企業 が技術 的 に先行 してい るの
14 商 経 論 叢 第47巻第1号 (2011.9)
であれば,特許化 による発明の公開はフォロワーのキ ャッチ ア ップす る能力 (つまり,吸収能力) を高めることになる。 イノベー ターはわざわざそのようなキャッチア ップす る契機 を与 えること につなが る特許化 を選択 しない と考 え られる。
厳密 に議論す ると以下の通 りである。 (1)の場合, フォロワーに吸収能力が十分 にあるため, 発 明の技術 的な先行度の増加 は模倣 コス トの大 きな増加 をそれ ほ どもた らす わけで はない。 ま た,特許化 の場合 の模倣 コス ト及び秘匿化 の場合の模倣 コス トの差である,模倣 コス トの差分 も それほ ど大 きなものではない (図表7) 。 したがって, まず最初 に考 え られ るのが,発 明の技術 的 な先行度の僅かな増加が フォロワーが模倣す る開催 を上 回る水準 の模倣 コス トの高 さまでに成長 せず,イノベー ターの意思決定 に拘 わ らず フォロワーにとって模倣す ることが望 ましい といった ケースであ る (図表8)。 この ようなケースで は, (5)式 よ り特許化 す るこ とが イノベ ー ター に とって望 ましい。 またた とえ,発明の技術 的な先行度の増加が フォロワーが模倣す る開催 を上回
図表7 (1)の場合
企業の特許出願戟略の変化に関する研究 15 図表9(1)の場合においてフォロワーが模倣しない場合
る水準の模倣 コス トの高 さまでに成長 し,イノベーターの意思決定 に拘 わ らず フォロワーが模倣 す ることを断念 した として も (図表9),先 のケース と同様 に (5)式 よ り特許化 す るこ とが イノ ベーターにとって望 ましい。
ところが,フォロワーの吸収能力以上 にイノベー ターの発 明の技術先行 度が さ らに高 くなる と,特許化 の場合 の模倣 コス トはそれほ ど上昇 しないが (公報が技術漏洩の契機になるため),他 方,秘匿化の場合の模倣 コス トが非常 に高 くなると考 え られる。そのため,両 ケースにおける模 倣 コス トの差分・が広が り始め,特許化の場合 にはフォロワーが模倣 し,秘匿化 の場合 にはフォロ ワーは模倣 しない とい った状況 にな りやすい ((B)の場合)。つ ま り, この場合 には,イノベー ターにとって,秘匿化が望 ましい もの となる7。
仮説
5
(企業規模 に関す る仮説)「
潜の桑 伴が「居 であiとすi;ど,企業紗ミ
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@の桑 #
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府は高まio」
企業規模 と特許性 向 との関係 について様 々な研究が存在す るが,企業規模 には3つの効果が存 在す ると考 えられる8。
第1に特許出願 に経験 やスキルを必要 とす る場合,企業 規模が大 きい (または企業内の知財部門 の規模が大きい)ほ ど,その ような経験やスキルが数多 く蓄積 されていると考 え られる。 よって, 企業規模 と 「特許化 コス ト」 との間に反比例 の関係が考 え られ
,
「特許化 コス ト」が低下す る と 考 え られる。第
2
に,補完的資産の規模の大 きさ及びその優位性 により,同質の発明が与 え られている下で は,大企業 における発明の本源的価値が高 くなる (発明の本源的価値に関する仮説 (仮説1))016 商 経 論 叢 第47巻第1号 (2011.9)
第
3
に,Anl nde la ndKa bl a
(1998)やSc he r e r
(1965)に指摘 されてい るように,大企業 におい て 同業他社 の模 倣 ・侵 害 を発見 す る こ と及 びエ ンフ ォース メ ン トが容 易 で あ る (なお,S c h e r e r
(1965)は企業の研究開発投資に対 してどれだけの特許出願がなされているのかといった出願比率を特許性向 の指標として利用している)。 したが って,模倣 を阻止で きる確率が高 くな り (少が高 くなり, (1‑♪) が小さくなり),
「模倣す る開催」が低下す る。その分, フォロワー に よる模 倣 しない領域 が増加 す るため,イノベー ター は特許化 を選好す る (図表10)。つ ま り,企 業規模 が大 き くな るほ ど特 許性 向が高 くなる と考 え られる。しか し,企業 規模が大 きいほ ど,生み出される発 明が一般的に技術 的に先行 してい ることが多 い。 したが って,技 術 的競争 ポ ジ シ ョンに関す る仮 説 に よ り, (1)そ の先 行 度 が,同業 他 社 (フォロワー)の吸収能力 を超 えず範 囲内 にあ る増加 であれば,企業 (イノベーター)の特許性 向が 高 まる。 しか し
, ( 2 )
その先行 度が 同業他社 (フォロワー)の吸収能力 を超 えて さ らに増加 す る ほ ど,企業 の特許性 向が低下す る といった逆 の仮説 も考 え られ る。 また,い くつかの研究の中で は,中小企業では,特許制度 に よった保護手段 のみで しか発 明の保護が期待 で きないため, こjl らの企業では特許性 向が高い といった指摘 もされている (ArundelandKabla(1998))。3 .記述統計
9以下 では,記述統計 を概観す る。
図表11は平成19年度か ら3年 間につ いて非特許性 向 (‑出願しなかった件数/知財部門に届出さ れた発明の件数)の経年変化 を示 した ものである。 全体 的な傾 向 として, 日本 において非特許性 向 が毎年微 増 してお り, 日本企業 の出願戦 略 が僅 か なが ら変化 してい る こ とが確 認 で きる (図表 ll)。
図表
1 2
は非特許性 向を産業別 に どの ような水準 にあ るのか を見 た ものであ る。医薬 品製造業 や総合化学 ・化学繊維製造業 において非特許性 向の水準が低 く (特許性向が非常に高く),逆 に 自動企業の特許 出願戦略の変化 に関す る研 究
図表 11 非特許性向の経年変化
17
%%%%%%%%%%%08642086420211111
. 〟 圭̲9.圭049̲
13.6%
平成19年度 平成20年度 平成21年度
出所:F知 的財産活動調査』
図表 12 非特許性向の産業別分布 (平成 21年度)
%%%%%000004321 宿泊業・飲食サーヒス業石油製品・石炭製品製造業医薬品製造業インターネット附随サーヒス業電気・ガス・熱供給・水道業総合化学・化学繊維製造業小売業鉱業・採石業・砂利採取業油脂・塗料製造業その他の学術・開発研究横間公的研究機関(独立行政法人含む)鉄鋼業公務(他に分類されるものを除‑)技術移転横関(TLO)鵬.覗工でその他の化学工業その他の製造業パルプ・紙・紙加工品製造業プラスチック製品製造業食料品製造業非鉄金属製造業卸売業専門サービス業飲料・たばこ・飼料製造業金属製品製造業建設業全体金融・保険業はん用横械器具製造業その他のサービス業個人生産用横磯器具製造業情報通信横械器具製造業学校教育その他の電気機械器具製造業その他の輸送用機械製造業窯業・土石製品製造業業務用梗概器具製造業分類不能の産業放送業電子応用・電気計測器製造業ゴム製品製造業通信業情報サービス業その他の教育、学習支援案映像・音声・文字情報制作菜電子部品二丁バイス去亀子回路製造業印刷・同関連業運輸業・郵便業自動車製造業不動産業・物品賃貸業農林水産業
出所: 『知 的財産 活 動 調査』
車製造業や電子部品 ・デバイス ・電子回路製造業などで非特許性向が高い水準 にある。LeVin
e t a
l.(1987),Co he ne ta
l.(2000),後藤 ・永田 (1997)で議論 されているように専有可能性手段 とし て特許が重要である産業では非特許性向が低 く,逆 に特許が重要ではない産業で非特許性向が高 いことを確認で きる。図表13は同一産業内で どの企業の非特許性向 も一様の水準 にあるのかをみた ものである。 こ
18 商 経 論 叢 第47巻第1号 (2011.9)
図表 13 産業別非特許性向の最大値 ・最小値 (平成21年度)
業 種 サ ンプル数 平均値 最大値 最小値
農林水産業 2 50% 100% 0%
不動産業 .物品賃貸業 5 36% 100% 0%
自動車製造業 80 32% 80% 0%
運輸業 .郵便業 4 28% 109% 0%
印刷 .同関連業 9 27% 67% 0%
電子 部品 ,デバ イス .電子 回路製造業 98 26% 100% 0%
映像 .音声 .文字情報制作業 2 25% 50% 0%
その他 の教育 .学習支援業 3 25% 75% 0%
情報サー ビス業 60 25% loo‰ 0%
通信業 ll 24% 69% 0%
ゴム製 品製造業 30 24% 80% 0%
電子応用 .電気計測器製造業 48 24% 92% 0%
放送業 3 23% 50% 0%
分類不 能の産業 ll 23% 100% 0%
業務用機械器具製造業 79 23% 90% 0%
窯業 .土石製品製造業 53 23% 100% 0%
その他 の輸送用機械製造業 48 21% 82% 0%
その他 の電気機械器具製造業 149 21% 100% 0%
学校教育 114 21% 81% 0%
情報通信機械器具製造業 47 21% 94% 0%
生産用機械器具製造業 163 20% 100% 0%
個人 70 20% 100% 0%
その他 のサー ビス業 33 19% 100% 0%
はん用機械器具製造業 42 18% 78% 0%
金融 .保 険業 12 17% 100% 0%
全体 2397 17% 100% 0%
建設業 94 17% 98% 0%
金属製 品製造業 128 17% 92% 0%
飲料 .たばこ .飼料製造業 8 17% 100% 0%
専 門サー ビス業 39 16% 100% 0%
卸売業 66 16% 100% 0%
非鉄金属製造業 49 14% 82% 0%
食料 品製造業 88 14% 100% 0%
プ ラスチ ック製 品製造業 98 13% 100% 0%
パ ルプ .紙 .紙加工 品製造業 18 13% 63% 0%
その他 の製造業 165 13% 100% 0%
その他 の化学工業 102 13% 100% 0%
繊維工業 29 13% 97% 0%
技術 移転機 関 (TLO) 9 12% 67% 0%
公務 (他 に分類 され る もの を除 く) 29 11% 97% 0%
鉄鋼業 25 10% 50% 0%
公 的研 究機関 (独立行政法人含 む) 39 8% 38% 0%
その他 の学術 一開発研 究機 関 27 8% 29% 0%
油脂 .塗料製造業 19 7% 67% 0%
鉱業 .採石業 .砂利採取業 2 7% 13% 0%
小売業 16 6% 100% 0%
総合化学 .化学繊維製造業 72 6% 100% 0%
電気 .ガス .熱供給 .水道業 14 3% 14% 0%
イ ンターネ ッ ト附随サー ビス業 2 3% 6% 0%
医薬 品製造業 67 3% 50% 0%
石油製 品 .石炭製 品製造業 15 1% 18% 0%
出所
:
『知的財 産活動調査』企業の特許出願戦略の変化 に関す る研 究 19 れを見 ると,産業別 に非特許性向が異 なるだけではな く,同一産業内で企業別 に非特許性向が大
きく異 なることが明 らかである。
4.
分析本稿 では,第2節で導出された仮説 を検証す るため,①産業別分析 ,②企業別分析 を行 う。仮 説 を検証す るため,利用す るデー タは特許庁 『知 的財産活動調査 (平成19年度〜平成21年度)』, 日本経済新 聞社 『日経
NEEDS
』,東洋経済新報社 『海外進 出企業総覧』,文部科学省科学技術 政 策研究所 『全 国イノベーシ ョン調査』,財 団法人知 的財産研 究所『 I I P
パ テ ン トデー タベース』,EPO 『 EPO Wo r l d Pa t e nt S t a t i s t i c a l Da t a ba s e
(PATSTAT)Apr i12 0 1 0
』 (図表 14‑図表 17)である10。
(1) 産業別分析
<被説明変数 >
特許庁 『知的財産活動調査』には,企業内で 「発 明 ・考案 (特許 ・実用新案相当)された ものの うち,知的財産部門又 は知的財産担当者 に届 出された件数」及び 「知的財産部 門又 は知的財産担 当者 に届 出 された発 明 ・考案の件数の うち,出願 しなか った件数」 とい った調査項 目が存在す る。本稿 では,産業別 に集計 された同 「出願 しなかった件数」 を同 「発明 ・考案 (特許 ・実用新案 相当)された ものの うち,知的財産部門又 は知的財産担 当者 に届 出された件数」で除 した ものを 非特許性向 として利用 した。
<説明変数 >
■産業別研究開発集約度
研究開発集約度が高いほ ど,生み出される発 明の新規性が高 くなる。 また,この ように研究開 発集約度が高い産業では,ブレークスルー型発 明が生 まれやすい。A
r unde la ndKa bl a
(1998)に よればこの ようなプロセスで生み出 された発 明は よ り権利範囲の広 い特許取得が可能 となるの で,発明の価値が高い としている。 また,仮説 1より,非線型の関係が考 え られるため,本変数 については2
乗項 を含めて推計す る。なお,Amnde la ndKa bl a
(1998)及 びBr o u we ra ndKe i nk‑
ne c ht
(1999)において,特許性 向 とR&D
集約度 との間に有意な関係 を兄 いだ していない。■産業別平均請求項数
J a f f ee ta
l.(2000)によれば,請求項数が多い特許ほ ど,発明者 は当該特許の発明 を科学的な ら びに経済的に重要だ と認識 していることを統計的に示 している。当然,発 明が科学的及び経済的 に重要であることは発明の本源的価値が高い ことを意味す る。 したがって,本変数 は発 明の本源20 商 経 論 叢 第47巻第1号 (2011.9)
的価値 を示す ものであ り,期待 される符号 は仮説1よりクロスセクシ ョン分析 で正 ・負,パネル 分析 で正 ・負の両方が考 えられる。仮説 1より,非線型の関係が考えられるため,本変数 につい ては
2
乗項 を含めて推計する。■プロセスイノベーシ ョン関連度
仮説 2より,生み出される発明が製品ではな く,製造や販売のプロセスに関係するものである ほど,産業の特許性向が低下する。 したがって,生み出されたイノベーシ ョンの うち,プロセス イノベーシ ョンである産業別比率 を利用 した11。 また,い ま 1つの指標 として,イノベーシ ョン を実現 した企業の うち,プロセスイノベーションを実現 した企業の比率 を利用 した。プロセスイ ノベーシ ョン比率が高ければ,生み出される発明が製造や販売のプロセスにより関係す ると考 え られる。仮説
2
より予想 される符号 は,正である。■発明の複雑度
仮説 2より,生み出される発明が複雑であるほど,産業の特許性向が低下する。発明の複雑度 を示す指標 として審査期 間の産業別平均値 を利用 した12。 これ らの指標が増加す るほ ど,生み出 された発明が産業平均 として複雑であると考 えられる13。仮説
2
より,期待 される符号 は正であ る。『グローバル化度
仮説3よ り,グローバル化 している産業ほど,産業の特許性向は低下す る。産業別グローバル 化度 を示す指標 として, (1)輸出売上高比率, (2)海外売上高比率, (3)海外現地法人数 (対数 値), (4)アジア現地法人数 (対数値)を利用 した14。 これ ら (1)ない し (4)の指標が大 き くな るほど,グローバル化が進展 していると考えられる。 また, (4)については,先述のように,ア ジアなどでは,知的財産権制度による保護が十分ではないため,アジアにそれ程展開 ・進出 して いない企業 と比較す ると,アジアに進出 している企業ほど模倣品被害で大 きな損害を被 る可能性 が高い。 しか も海外の現地企業 にとって, 日本企業が生み出 した発明に関する情報源 は唯一公報 に限 られる。 このような情報源 をわざわざ提供するような特許化 を選択するより,非特許化 を日 本企業は選好する。 仮説3より,期待 される符号は正である。
<コン トロール変数 >
クロスセクション分析 の場合,共同研究開発性向 (‑非単独出願件数/ (非単独出願件数+単独出願 件数)),発明の保護手段 としての特許化の重要性,市場競争度,技術競争度の効果 をコン トロー ルす るた め に これ らの変 数 を含 め て推 計 した