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離散力学系に基づく情報源の設計に関する研究

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

離散力学系に基づく情報源の設計に関する研究

藤崎, 礼志

https://doi.org/10.11501/3180597

出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第5章

情報源の同定について

5.1 はじめに

系列を生成する機構が未知であるとき, すなわち, 暗箱から系列が生成されているとき,

得られる系列の生成過程を確率過程と想定し, 情報源を最適に推定する問題が考えられる.

これを情報源の同定問題と呼ぶ. 本章では, 特にマルコフ情報源の同定問題を考える.

得られる系列を独立同分布(indepenclent ancl iclcntically clistributecl; i.i.d.)確率変数列 と想定したとき, 無記憶情報源を推定する方法として, 得られる系列に対して長さmのパ タンが発生する頻度を調べ, その期待値と分散を推定する方法が提案されており, パタン の頻度の期待値と分散の理論的導出がなされている[28]. この推定法によって, 高次の統計 量である171次および2m次の相関関数を同時に調べることができる.

方, 得られる人T値系列をN状態マルコフ連鎖と想定したとき, 定常マルコフ情報源は マルコフ推移行列によって完全に決定されるので, マルコフ情報源を推定する方法として は, X2個ある行列の要素全ての値を推定する方法が考えられる. しかしながら, この方法 を用いると, 入'と共に, 調べるべきパタンの種類数が入r2で増大するという問題が生ずる.

そこで, 入ヤが大きいとき, AV個の相異なるパタンを全て観測してマルコフ推移行列を完全 に推定することを諦め, できるだけ少ない数, 特に入'のオーダの数の相異なるパタンだけ を観測して得られる統計的性質を基準として, マルコフ情報源を分類する方法が考えられ る. 本章では, マルコフ情報源から生成される系列の相関特性を決定するのは, マルコフ推 移行列の固有値であることに注目する. 固有値が推定できれば, 少なくとも, マルコフ情報 源から無記憶情報源を区別することはできる. ここで, 固有値が全て同じであっても推移行 列が同じであるとは限らないことから, 自明ではあるが, 固有値によってマルコフ情報源 を分類したとき, マルコフ情報源を完全に決定しているわけではないことを付記しておく.

(3)

第5章情報源の同定について 44

本章では, まず, [28]の無記憶情報源の場合の結果をマルコフ情報源の場合に拡張する.

次に, マルコフ推移行列の固有値と固有多項式の係数が有する未知数の数2_Y -2と同数の 観測すべき有限列パタンを指定する. さらに, 国有多項式の係数が満たすべき方程式は,

パタンのヒストグラムの期待値と分散を変数とする関数を係数行列とする,Yulc-\\�alkcI方 程式!と類似の線形方程式に帰着できることを明らかにする.

5.2 パタンの頻度の期待値と分散

S二{1、2,'" .1Y}とし, 長さ711の任意の入マ値系列を

u=じ00-1 . . . Um-1ぅ L�kεS. k=O,l,....m-1 とすると,uは入rm種類存在する. そのγ番目の系列パタンを

u ( r) = l/

�"

)

) ιL19 1=OL 入.�m_ 1

(5.1 )

( 5.2)

とする. ただし,u

Y

)εS (k二O.l...m-1). 系列{.Xn}之。が マルコフ連鎖の場合,

観測するパタン u(r)の発生頻度を考察するために, 2値確率変数

ハ I

1

(

__'Xη+1'" _\叶m-1= U(r)) 1�1 (U\1ï)

- < 、

l

0 (__'\n-Yn+1'" -\n+m-1 :戸u(r)) ( 5.3)

を導入する.Tをある正の整数とする. 長さT+771-1の系列(XJ72r-2におけるがr)の 個数は

jlT(u(r)) =

L

l�,(u(T')) ( 5.4)

n=O で与えられる. ここで, 確率変数

(r) \ Jん(u(I')) - TE[}�1(U(f'))]

Z:r(u(l'))二 (5.3 )

を導入すると,Zr( U(T'))の分散は次式で与えられる.

l'αγ(Zj'(u(I'))) = T �E[JJf,(u(I'))] - T{E[1�1(U(r))]}之、 (5.6)

ただし,Eは期待値(集合平均)を表す. 連鎖が既約で非周期的ならば,T→∞のとき,

(5.6)の極限が存在する. その極限を

J-llVll(ZT(u(1)))二〆(u(r)) ( 5.7)

1\"\11(> \Ya1k(>r方程式の説明については, 伏見正則著「確率的方法とシミュレーションJ (岩波講座応用数

学[方法10])第3章�3.2の内容を参考にさせていただいた.

(4)

と表す.

長さT+川-1の系列を観測して,141fT(u(I))を得るが,Tが十分大きいとき,

T

十川(1'))→E

[1 �1 ( u ( 7' ) ) ]

(5.8)

となる

山(7'))のヒストグラムを作成するためには,

十川(

1') )を十分多く観測す

i番目の観測量を1叫\u(r))と表すと,

)(uCr) )(に0,1ぅ L

i

-1)が統計的に

T

独立で,TとLが十分大きいとき, ヒストグラムの分散は,

ハuu に.u

u

叶tA Z α ν

→ つん \Ih--11ノ

u

rl‘、1tA fi 九ハ

1

T

いzd

l一TLT

U

M川 /iillt\

1

T

山乞同

1一L

となる. したがって, 以下, 時間平均を集合平均で議論する.

E[J\10( u(r))] = T E[ì令(u(7'))2]十乞2(T-i・)E [1':7, ( u ( r) )九+i(U(T))]

+乞2(T-

i)E[l7n

(U(I'))1い (5.10)

l=rn

(5.10)の右辺第2項は

L 2(T - nE[丸(U(r))孔+i(U(r'))]

EE子l〉2

(

T 一 1ベ)べ(いp久凡引116ι;

(5.11) となる. ただし,61JはKroneckerのデルタ記号である. (5.10)の右辺第3項は

L

2 (T -i) E [1 �l ( u (T) )九+i(u(r))]

�=m

トH \11211'//

M u

p υ4 山HM

U υA /it--hI\

T つ山

山hL一

一一 (5.12)

となる. ここでは)i,jは行列Aの(i, j)成分を表す.

5.3 観測すべきパタンの指定

ステップ1まず 以下の条件を満たすような, 対称性を有するパタンを考える.

(1' )

_

,,(1') ,, (1')

_

,,(1')

二U;n1Uì 二U m'_2" . . (5.13)

(5)

第5章情報源の同定について 46

川j(17j=Ol, [21 )ujr)刊)

この場合, (5.10)の右辺第2項は以下のように簡単になる.

(5.14)

乞2(T - 1:)E[�I(u(r))y�十i(u(I'))] U υA

u r 寸J一 、11j qL \1lit-ノ サム /べ町 ルHM以

一一 一一

川2一附 (5.15)

同時に, (5.10)の右辺第2項は以下のように表される.

L

2(T - i)E[九(U(T))}/ん(U(7'))]

z=n1

二(

T

- 'm)(T - Hl十1) E [}�ì ( U ( 7') ) ]2

n tv� T-l

+

r

lK1(u(T))12

2 E(T一州uo

,jg11.0,j (5.16)

ただし, gi二(g],i)[}2山・・.i 9n.i)" 人= (h1,iぅf川7・・.) h川)1,は各々,Pのt番目の固有値入1 に対する左および右固有ベクトルを表し, 次式を満たす.

g

j fLj

ði

j

二二l 、N ( 5.17)

N

,---^-一一「

ここで, 右肩のtは転置を表す. さらに, 入l二lとした. このとき, g1二p, h1 = (1,・・. ) 1) である.簡単のため, huo,jguo.j = Cj( uo) と表そう. 以上より, 次式が得られる.

Vω(ZT(U(r))) = E[Yn (U(T))] +

E[九(U(T))]2 yUo

((T -咋-

'nL + 1)

-

.'7' T

\ )

E[九(u(T))]2

n N 1 1'-1

Yuo

二E[九(u(r))]2 j

L ;;, 乞 ( T - i)入凶作0)

=2 .L

(5.18)

これは, T→∞のとき,

)��

Var(ZT( U(r))) - σ(U(T))2

E印[ロκ肌川工丸川1 川Jベ川川I11(凶川昨 U(7uザψ(れ何叶7け)

.t' Uo

つ ,、 九 N 入m

+二二E[}Tn ( U ( r) )

]2乞

�Cj('Uo) (5.19)

Pu{) J=2(1 j)")

となる. これより, σ(U(r))2が110に依存することがわかる.

(6)

注意5.1系列{1\η)二。が独立同分布(i.i. r1.)の場合, (5.19)は次のようになり, [28j-[29j の結果と一致する.

σ( u

(

r ) ):2 = E [1/�!

( U

( r)

)]

+ 2 E [1 �I ( U ( r) )

]:2

+ (1 - 2 m )

E

[Yn ( u

(

r) )

f

. ( 5.20 )

ρH

ステッフ2

ステップ1で選んだ, 条件(5.13)と(5.1�)を満足するような, 対称性を有するパタン 全ての集合の部分集合で, 最初の文字1.10が等しいようなパタン全ての集合を考える. この 中で最も長いパタンの長さは2JVである. m = 1,之"', 21V - 2とし, 各1nについて, この 集合の中から長さmのパタンを1つだけ選び, それをu(切,m)と表す.

例5.1 S = {1, 2}, UO = 1 の と き, u(l、1) = 1, U(1.2)二1l. S二{l. 2L UO = 2 の とき,

U(2,1)

= 2, u(2,2) = 22

ステッフ3

ステッフ。2で選んだ 2�"T - 2個のパタン各々について,141h(u(川川)(tn二lぅ2?L ?2N-2) のヒストグラムを調べる. このとき, 定常分布Puoは,1lI二1のときに観測される. 各1n

て,

iト←ドλ.1\1川川)

のヒストグラムの期待イ値配刷直U叫E町[}χ川川川う二川山川tべρμμ(やいμlυ川lバ(οい川川川川tυ川川川川川I仰刷い川o,m川I川川n川)刈)リl と分散叫れuω山(い川U

れば, (5.19)より,入2ぅ入3γ・・7入,Vに関する次の連立方程式が得られる.

2

(

UO)(i入2一入2

) 2(

UO) (1一2入2)入2

(uo)

(1一入2)入3

(uo)

(i一入a)入3

(uo)

(1一3入3)入2

3

(uo)

入3

(1一3入3)

N

= A(l)う + ...

+ c",v'( uo)

(1一入N)

+

... +

C人(uo)

入2

N

= A(2)1 (1一入N)

+ + CN(uo)

入3

y

= A(3),

(1一入κ)

入i(iV一1) 入?(JV-l) 入214\7ー1)

2

(

UO

L

'.,'L \

+

C3( ìlO) ;.,',) 十 ・ + c.v(uo) 二 A(2(.lV - 1)) (1一入2) \ --V / (1一入;3) ' ' -.",- 'v/(l一入v)

ただし,

A(川) 二 PUo 2

( σ ( u( Uo川:2 _ E[l'� (u(uo刈))]

2E[1:1

(υ(uo.rn))]L

\

一三E[1�l ((/(

lLo.m川吋)り)

(5.21)

(5.22)

(7)

第5章情報源の同定について

である.

ここで, Pの特性多項式を

ρ(P) = (.1' - 1)(.1"\'-1 + ({!.C.\'-2 +・・+州-1)

と表す.

(5.21 )と(5.23)より,

A(�V - 1) A(1V - 2) A(l ) αl

A(lV) A(入� - 1) A(2) α2

A(lV + 1) AVV) A(3) (l:�

A(2JV - 3) A(2iV - 4) ... A(1\T - 1)

I Iα:v

-1

A(iV) A(入� + 1) A(入� + 2)

A(2JV - 2)

48

(5.23 )

( 5.24)

が得られ, 観測値A( ) (1TL = 1ぅ2、...,2N-2)を用いて, 向(i= 1,之.. う�iV- 1)が求まる.

5.4 マルコフ推移行列の固有多項式の係数推定とYule­

Walker方程式

時系列解析で想定される確率過程の最も簡単なモデルとして, 次式で表されるl次の 己回帰過程{_.,Yt}があり, AR(l)という記号で表される.

)Ct = CÞ)'(t-l + n(t). (5.2 5)

tは整数値をとるものとし, ..r\tは実数値で、データを表す. φは未知の定数で、母数と呼ばれる.

n(t)は平均が0, 分散がσ立の正規分布に従う白色雑音で, 添字fが違うもの同士は独立とす る. このAR(l)を一般化して,

_Yt =φl-\tー1+φ2)\'t-2十・..+φp_"Kt-p + 11 (t) ( 3.26)

で定義される確率過程を考える. このとき, { .. \t}を p 次の 自己回帰過程といい, 記号 AR(p)で表す. 以下, {_Yt}は定常であるとする. (3.26)の両辺にむ+たをかけてから両辺の 期待値をとると, 定常性より,

E[_\o_\k] = 01E[-\O-\k-l] + o2E[_\O-\k-:.d +・ + opE["\O-\k-p] (5.27)

(8)

となる. ここで,", = 1,2 ,'・・,pを代入し,E[-\_'"o-\_'"-d = E[-X-o..'Ydであることに注意して,

簡単のためE[-"Y引をE[..'y2] で表すと,

X 引J ι vt X 叩 ト

E d

内勺J γA1

X

f町

E

T n v

E[-"Yo .. Ypーd E[-"YO-'Yp-2]

φl E[_\_'"o..'YI]

E[_'YO-\_'"2]

φ2

(5.28)

E[_:{o_Xp-1] E[-,YO./Yp-2] ... E[__,y2] ゆN-l E[Xo-'Yp]

が得られる.これはYule \;Valkerの方程式と呼ばれ,

E[_X2],

E[-"YOX1], E[-"YO__'Y2]ぅ・・・, E[XOXp_1]

を用いて,母数ゆ1,の1・・1のpを推定するための手段として用いられている.(5.27)を差分方

程式

Xk =ゆlXk-l

+φ2:Tた-2 +・・・+

9p:Ck-p ( 5.29)

とみなせば,ゆ1,のγ・・?のを係数とする特性方程式

1=ゆl'L'+ゆ2J,2 +・・・+φp.l_:P ( 5.30)

が得られる. 以上より, AR(p)の母数を推定する方法とマルコフ推移行列Pの特性多項ず の係数を推定する方法とが非常に類似していることがわかる.(5.28)の左辺の行列と(5.24) の左辺の行列とは 類似の形をしているが, 前者は2次の統計量を推定して得られるのに対

して, 後者は27TI次の統計量を推定して得られる. また, 前者はTocplitz行列と呼ばれる が,後者は対称行列ではないので,To叩litz行列ではない.

5.5

吾主主吾と〉自我日間

{1,2}に値を取る2状態マルコフ連鎖を, 第4章で述べたKalnlanの方法によって, 区 分的線形全射写像(piecewise-linear-nlonotollic onto; PL:rvl onto)に基づいて実現し, 本章で 提案したマルコフ情報源の推定を行なった[30].図5.1および図3.2に指定したパタンlおよ びパタン11の頻度のヒストグラムをそれぞれ示す. 図5.1および図5.2において,ヒストグ ラムの横軸は頻度の期待値からのずれを表し, 縦軸は分布の総和が1となる ように規格化 されている.

(9)

第5章情報源の同定について

0.9

0.8

0.7

0.6

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

O -2

0.9

0.8

0.7

0.6

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

O -2

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-1.5 ー0.5 0.5 1.5 2

図5.1:パタン1の頻度のヒストグラム

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II

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図5.2:パタン11の頻度のヒストグラム

50

次に, 頻度の期待値の理論値と実験値, および, 頻度のヒストグラムの分散の理論値と 実験値を表5.1に示す. さらに, 頻度の期待値および頻度のヒストグラムの分散を用いて求 めたマルコフ推移行列の固有値の理論値と実験値を表5.2に示す.

(10)

表5.1:頻度の期待値および頻度のヒストグラムの分散

固有値 ノぐタン 期待値 期待値 分散 分散 111 .4(111) .4( 111 )

(理論値) (実験値) (理論値) (実験値) (理論値) (実験値) 0.1 0.222222 0.222199 0.2112-4:8 0.211702 1 0.086419 0.0802579

11 0.0666667 0.066593-4: 0.0936895 0.095630 2 0.0086-4:19 0.039031 0.548714 0.,)-4:8816 0.819,)59 0.818164 0.521147 0.519741 11 0.433797 0.4338,)1 0.746721 0.902593 2 0.279301 0.507581 0.9 0.900000 0.900017 l. 71 000 l.67049 0.900000 0.869580 11 0.891000 0.8910-4:1 1.702,)2 1.8200.J 2 0.810000 0.865371

一一

表5.2:マルコフ推移行列の固有値の推定結果

理論値 実験値 0.1 l.0.J 73.J5õ 0.5359 1.0189552 0.9 0.997748.J

I

表5.2 からは, 本章で提案したマルコフ推移行列の固有値の推定法が実際に成功してい るとは言えない. 表.).2 において, 入= 0.1 の場合, 分散の理論値と実験値との10<3のオー ダの差が原因で, .4(2)の理論値と実験値とが1桁異なっていることがわかる. ここで,

(5.18 )より, σ(u(r)):2と1rαγ(Z:r(u(r)))との差|σ(u(r))2 _ \Tαr( Z'j'( U(I'))) Iは, 観測する系列 の長さTに関して, 約

で、表される. したがって, 実験で得られる分散が\-ar(ZT(u(r)))に

T

致していると仮定すると, 分散の理論値と実験値との差のオーダを10-4に抑えるために

は, 約T= 104の長さの系列を観測すればよいことがわかる. しかしながら, [30]では,

T = 10:3まで実験値は理論値に近付くが, T = 10:3以ヒになると実験値はTに関して一定に なり, 理論値には近付かなくなることが報告されている• [30]では, さらに, 観測するパタ ンの種類数を入?のオーダに抑えるという制限を外して, 頻度のヒストグラムの期待値だけ を用いる推定法も提案 されているが, 分散の場合と同機に, T = 10:3以上になると期待値の 実験値が理論値に近付かなくなるため, 精度の良い固有値推定には至っていない. 観測す る系列の長さが10;3以上になると, 分散と期待値の実験値が理論値に近付かなくなる原凶の 解明については 今後の課題として残される.

(11)

第5章情報源の同定について 52

5.6 まとめ

本章では, 情報源の同定問題に関して, できるだけ少ない観測量でマルコフ情報源を推 定する一方法を与えた. 具体的には, 21V - 2個の有限列パタンを指定し, パタンの頻度の ヒストグラムの期待値と分散を用いて, マルコフ推移行列の固有値と固有多項式の係数を 求める方法を与えた.

(12)

第6章

離散力学系に基づくスペクトル拡散符号の設計

6.1 はじめに

非同期スペクトル 拡散(spreacl spectnlln; SS)通信システムにおける他チャンネルから の多元接続干渉(nlultiple-access interference; 1\IA1)は Pursleyによって定式化され, その 大きさは, Pursleyによって導入された非周期相互相関関数の値により定まる[31].

通信の信頼性を表す重要な指標のーっとして, ビット誤り確率が挙げられる. ss通信 システムにおけるピット誤りの原因として, 共通チャンネルにおける雑音とI'vfA1がある.

),lA1が原因で発生するピット誤りに関するこれまでの研究につい て以下にま とめる.

ss通信システムにおけるYIA1によるピット誤りの生起確率を評価するために, Pursley に導入された平均干渉パラメータ(average interference paranleter: A1P) がしばしば用い られる[31] [37]. A1Pは1\,IA1によるピット誤りの生起確率を近似的に表す指標 とされて いるが[31] [32], そ れ はデ ータ信号を一様分布独立同分布(independent and identically distribu tecl: i.i.cl.)確率変数列としたときのデータ信号に関する�lA1の分散を平均化して得

られる量であり, A1Pが真のピット誤り確率にどれだけ近いか, すなわち, ビット誤り確 京に対するA1Pの誤差が定量的に知られているわけではない. A1Pは非周期相互相関関数 の2次式で表され, 系列の ペアの選び方に依存するので, [38] では, 無作為に抽出されたペ アに対してだけ, A1P の値が実験的に求められている. また, 確率分布のフーリエ変換を 特性関数を呼ぶが A1Pを用いずに, データ信号に関する:vfA1の特性関数 を利用して,

ビット誤り確率を求めようとする試みも行なわれている[33] [35].

これまで1\1:\1によるピット誤りの生起確率を評価するために, 上述したようにA1Pま たはデータ信号に関する�IえIの特性関数しか評価されていない理由として, 線形フィード バック付シフトレジスタ( linear、feedback shift register: LFSR)が拡散符号として最もよく

(13)

第6章離散力学系に基づくスペクトル拡散符号の設計 54

使用されているので[39], 評価の際に拡散符号がシフトレジスタ系列であると想定されてい たことが挙げられる.

従来のシフトレジスタによる系列生成とは全く異なった方法として Kohdaらによって l次元エルゴード写像から生成した2値確率変数列を拡散符号として用いることが提案さ れた[40]. 離散値ではなく, カオス実数値解軌道を拡散符号として用いることも提案されて いる[41],[42]

方, Ì\,1ωχ1111らによって, 非同期 ss通信システムにおいては, 自己相関関数が指数関 数的に減少する, ]'./状態マルコフ連鎖から生成される系列を拡散符号として使用すること が最近提案されており, 先に述べたAIPを指標としたとき, あるマルコフ情報源から生成 された系列が最適であるという報告がなされている[11ト[43].

本章では, まず, スペクトル拡散通信システムについて概説する1 次に, 拡散符号の JI倍標本(AJ-tÜl1C up-s<-unpliug)を定義し, 遅れ時間を符号のパルス幅の有理数倍とする ことによって, PUl'slげの非周期相互相関関数を2パラメータ関数に一般化する. さらに,

拡散符号を2状態マルコフ情報源としたとき, 符号に関する:\IAIの分散を理論的に評価 し, ピット誤り確率を厳密に評価する.

6.2

スペクトル拡散通信システム

6.2.1

符号分割多元接続(CDMA)

通信システムにおいて, 複数のユーザが共通に同時に使用できるように, 通信回線を設 定する方式を多元接続(nlultiple access: l'vL-\.)という. 中継器の周波数帯域を細分割し, 各 ユーザが使用する周波数が 互いに重なり合わないようにする通信回線方式を周波数分割多 冗接続(frequency cliyision lllultiple乱ccess; FD\lA)方式という. 一方, 時間を分割して,

同一周波数帯を各ユーザに順番に与える通信回線方式を時分割多元接続(tinle divisio11 multiple access: TDI'vIA)という. 各ユーザにたがいに相関のない擬似乱数(pseudo-noise;

P)J)系列を与えることによって, 同じ周波数帯域を同時に使用する通信回線方式を符号分 割多元接続(cocle cli,'isioll llllütiple access: CDÌ\Iλ)という. 図6.1に, 各種多元接続の概 念図を示す.

lスペクトル拡散通信システムの説明については, 熊本大学常国明夫助教授の学位論文[44]第2章を内容 を参考にさせていただいた.

(14)

各種アクセス方式

漏出作匝 話題'恒 四閣幽 朝淵幽 緑樹匝

l::;:;�:�::;:;:;:: :;紛;英三::;:::::::::j

時間 時間 時間

FD恥lA TD恥1A CDMA

図6.1:各種多元接続の概念図

移動体通信システムの接続方式として, これまで, 時間分割多元接続TDMAが主流で あった. 現在, 第3世代の通信システムとして, 符号分割多元接続CD:vIAを実現するスペ クトル拡散(spl'ead spectrunl; SS)通信システムが主流になりつつある. 本節では, SS通信 システムについて概説し, 次節以降にSS通信システムの性能評価を行なうための準備を行 なう. 特にss通信特有の偶および奇の相互相関関数の定式化は重要で ある.

6.2.2

スペクトル拡散通信システム

ss通信システムの基本的概念図を図6.2に示す.

情報信号

拡散信号

三事

図6.2:スペクトル拡散通信の基本的概念図 ss通信システムの特徴を以下にまとめる.

1. 多局に干渉を与えにくい

(15)

第6章離散力学系に基づくスペク卜ル拡散符号の設計 56

2. 多局からの干渉を受けにくい 3. 秘匿性に優れている

.t. CD:-.1Aを実現する

5. 測距可能である

ss通信システムには直接拡散(dircct SC'qlH、11('(': DS)方式と周波数ホッピング(frcquc11cy hopping; FH)方式の2種類ある. DS方式は, データ信号に, これとは無関係なP)J系列を 掛け合わせることにより, 送信信号の帯域を広げ, 受信側ではその P)J系列との相関を取 ることにより復調するものである. 一方, FH方式は, 搬送周波数を多値のPI\系列に従っ て時間的に切り替えていくことにより, スペクトルを拡散する変調方式である. FH方式に おいて, 時間的に変化する搬送周波数の全体をホツピングパタンとよび, ホッピングパタ ンを定める拡散符号を特にアドレス符号とよぶ. 両方式は, 異なったPI\系列によりチャ ンネル識別を行なうことで, 同ーの周波数帯域で複数のユーザが同時に通信するCD�lAを 可能にする. DS方式は, FH方式に比べ, システムの構成が単純で、あるため, システムの 性能を議論しやすく, さらに, コンビュータ上でシステムを模擬しやすいという利点を有 する. 従って, 本論文では, DS方式だけを議論する.

6.2.3

スペクトル拡散変調および復調の原理

DS方式によるSS通信システムでは, 送信者は, データ信号にこれとは独立なP)J系 列を掛け合わせた拡散信号を送信する. 一方, 受信者は, 受信した拡散信号に送信者と同

じPI\系列を掛け合わせることによって送られたデータ信号を復元する. 簡単のため,

ベースバンド通信を考え, データ信号とP:-.J系列はともにバイポーラ(土1)であるとする.

この場合のSS変調および復調の原理を図6.3に示す.

(16)

1フレーム

dp dp+l dp+2

情報データ信号d(t)

....

T

× i

X X X

PN信号 X(t)

+1 11 r一一寸 「寸 「一一-, 11 r一一寸

X=(Xo,

X1

, … ,

XN-1)

-1

�ピ

LJ LJ Lー」 W LJ W

Tc 1チップ

X X

l

-x

拡散信号sω

+1

×

(相関受信) × × ×

S

PN系列X

X X X

S

千夏 調 復冗データ dp dp+l dp+2

図6.3:スペクトル拡散変調および復調の原理(直接拡散方式)

時刻tにおいて, データ信号r1(t) およびそれに割り当てられたP:.'-J信号X(t) は それぞ れ次のように表される.

d(

t

) 二 L dpUT(t

-pT);

dpε{1,-1}

X(t)

=

L LYq'LlTc(t - qTc)、 )\_qε{1ぅ-1}ぅ

(

6

.1

)

(6.2)

ただし,

UT(

t) は ,

1i ハU

flEE/、lE11 一一 、‘hlJ' 4'む リi''u q,.、 (0三t

S: T) (上記以外)

(6

.3)

である. このとき, ベースパンドスペクトル拡散信号s(t)は

s(t) = LY(t) d(t) (6.4)

と表される.TをTc の整数倍に取り,Pl\信号を周期iY = T/T( の周期関数, すなわち,

.\ (t + �V

Tc)

= _\ ( t )とすると, 1データ信号あたりのP:.'-J系列は { LYq}

lである. データ

(17)

離散力学系に基づくスペクトル拡散符号の設計 58

第6章

のパワースペクトルを図6.4および図6.5に示す.

信号およびP='J信号(または拡散信号)

データ信号のスペクトルが 図6.4および図6.5より, PI\信号を掛け合わせることによって,

広がっていることがわかる. 送信信号の広帯域化によって, ss通信は, 狭帯域の妨害信す に対する耐性を実現している.

ー5

0'"ょ

5

周波数 T

ムヘムkmげ/\代lトvヘ

図6.4:データイ百万

ムヘムkmて代lh』Vヘ

5

周波数

-5

図6.5: P:\"信号(または拡散信号)

(18)

以下, 議論を簡単にするため, 遅れ時間をP:.J信号のパルス幅T(の整数倍に限るとす

、っノト品るべ述で~即

次L

N 引

山山

)ゴ

79 3 wn 村山1入けJ|\J 土 決 7・,.1J

nU

一=一ロ 「HU

上lui/L レi小て

11υ

九川

内Uシ」

flj、111 1

'

= =ちY

Z わ し引ち」FTh-JUi くす一

'

f

と 的

X

こ 数

吋う

川 失 6

T ー を が

jlλ

性数

般 関 一

口MM↓小' 関

た 己 土AF

の '口出

マム》

ふ」

(6.5

)

となるように設計されているので, 受信者は, 送信された拡散信号とP:.J信号との相関を 取ることによって, 同期を確立する. 同期を取った後は, 次式のようにデータのパルス幅ご

とに相関を取れば データ信号が復元できる.

U+l)T X(t)s(t)dt

=

dp

P = 01士1ぅ土2う (6.6)

6.2.4

拡散符号に要求される相関特性

前節では, スペクトル拡散変調および復調の原理を説明するために, 他のユーザの信号 を無視して考えた. 一般にユーザ数がJであると き , ベ ースパンド符号分割多元接続 (CD\1A)システムは図6.6のように表される.

XW(t) XW(t)

user #1

d(1(t) J1h

X(.おY(t)

user #2

d(2(t) r(t)

J2(t) X(JJ(t)

user #J

d勺) d(J(t)

図6.6:ベースノてンドCDI'vlAシステム

しかしながら, CDI'vlAシステムにおいて, P:.J系列に要求される相関特性を知るために は, 図6.7に示すよう なユーザ数が2の場合を考えれば十分である.

(19)

第6章離散力学系に基づくスペクトル拡散符号の設計 60

Delay User

1: d(ljftj

Z�)

p

User 2

: ポヤt)

X(2)

図6.7:ユーザ数が2の場合

2つの拡散信号を

S(il(t) = -,y(il(t)ポl(t)i i = 1,2 (6.7)

とする. 各信号の遅れ時間をそれぞれti (i = 1ぅ2)とすると, 受信信号をベt)は, 次式で表 される.

、、1jノ \llノ

nkU QU ハhU ハhu

f'tst、 ,fgts、、

、、EE,,, ?“ ι'ι

千'u ,,t,‘、、 、』ノ →L V' ' t r t 、 、、Igf qL 千t

4t f''EE、、 、、,EB,, 什ノ- a'aEE‘、

X

) + Aノ- 千I 1ll' ーム 一 f

f 一

,,,aEEE‘‘、

、lf 4't

円/- 〆21‘‘、 〆t,、 、、,,

Qリ 1よ + 川

、‘11ノ 1ム

11 41ι イ 一 - 41ι 4't fe--、、

()

、、,J EEム 1 よ f l ‘、 Ju X

一一 一一 、、te,,, ,?L 〆r't、、

pT < t < (p + l)Tにおいて, 受信信号とP:\T信号./Y(l)(t)との相関値は

l/

l

�州

x(l)(t)I(f)flt =

A ア1) 1

X(l)(f)X(l)(f-fl)d(1)(f-fl)df

+

川-,y(1 l (t )./y(2) (t -t2 )d(2) (tーら)dt (6.10)

となる. (6.10)において, d(')( t)三1かつd(2l(t)三1という特別な場合を考えると, 同期 捕捉および復号を実現するためには 自己相関関数

1;叩

(6.11)

がt1に関して6関数的で, 相互相関関数

r

l)1X(l)川l(tーら

(6.12) が任意のらに関して小さければよいことがわかる. ここで, (6.10)の右辺第l項および 第2項 の被積分関数に, それぞれ, d( 1 ) (t -t, )およびd(2)(tーら)が含まれているため,

(20)

(6.11)や(6.12)の ように単純な相関関数になっていないことに注意されたい. ..'\(1 )(t)

(pT < tく(p+ 1 )T)に対して, _\(I)(t-tJ)d(I)(t-t1)および_\(:2)(tーら)d(2)(tーら)は, そ

れぞれ, 一般に, _\(I)(t -t1)および_\(2)(tーら)とは異なる相関特性を与える. このと き, 拡散信号_)((t - t')d(t - t') (pT < t < (p + 1 )T)を1 データ信号あたりのP\f信号-,\(t)

(pT < t < (p + 1 )T)とは異なるP\f信号とみなすことができる. これをデータ信号d(t)と

遅れ時間t'によって_\"(t)から生成されるP\f信号と呼ぼう. 1 データ信号あたりのP\f系 列{-,Yq}

1を形式的に X= (-'\0, .... \1,... , .... \A.-1)とN次ベクトルで表すと, データ信号 d(t)と遅れ時間f(F=O,112J-~N-l)によってXから生成されるP\f系列も, 以下のよ

うに, ベクトルで表現することができる.

Xの要素をe

(e

= 1, 2, . . "-Y - 1)だけ左側に巡回シフトしたベクトルを Xtと表す.

すなわち,

Xf二(_Ye.... Y (+ 1 _Y sーl、-\0,..'\1

.... \e-1 ) (6.13)

である. Xの要素をf (( = 1 . 2, • , iY - 1)だけ左側に巡回シフトし, さらに, 巡回したf 個の要素..'\0,-\""1ぅ・・. .... \t-1の符号を反転させたベクトルを玄fと表す. すなわち,

Xe=(-\(うお+1・・.. ,..'\,V-l; --\0、--\1号・・・、-..'\(-1) (6. 14)

である. 高々2JV - 1個の系列 X.Xe,X((L=1.2γ・1入- - 1)から成る集合をX が形成 する集合(ファミリー)と呼ぶ. 様々な系列が形成する集合(ファミリー)の概念図を|災 6.8に示す.

...X.

\;XI,…,XN-Ì Y X

/ハ\ /"'-...

}Í }Í X] X]

Z2 X2乙

z:L W

Y^日

. . .

. .

九一lILl XN-1 XN-1

/ハ\

/.y YJ, '

関6.8:系列のファミリーの概念図

(21)

離散力学系に基づくスペクトル拡散符号の設計 62 第6章

(6.15) すなわち,

2つのベクトルXとYの内積をくX、Y>で 表す.

くx.Y >= L -\;Ìi

である.

相関関数を定義する. 議 ss通信特有の偶および奇の相

以上の準備のもとで,

前節と同様に, 遅れ時間をPI\信号のパルス幅の整数倍に限 るとする.q)二

d

払の とき,ρT < t < (ρ+ l)Tにおいて, p�信号_X(i)(t)と拡散 信号x(j)(t - f)d(j)(t - e)との相互相関値から, 遅れ時間fにおける偶相互相関関数 論を簡単にするため,

(6.16) fl�,( [; X(i)ぅx(j))が次のように定義される.

ιI、JU /tし 千L

42U X 千t x + p' 、 fli p -F 一一

X

X

RY

R

内積を用いて次のようにも表される.

R�

((: X(i), X(j)) =< X(i). X�j) >

これは,

(6.17) dy)二d

のとき,偶相互相関を表す模式図を図6.9[44]に示す.

duj jJ+l duj p

L

data signal

I

d(j)ω

|

x(j) T=N

x(j)

+1

SS signal S(j) 'J'(t)

(correlation recei ver)・

PN sequence X(i)

×

even cross-correlation'

(p+J)T+tj pT+tj

ヌ:]6.9:偶相互相関関数を考慮する場ム

(22)

図6.9には,dy)二

ft

l=1の場合が描カ亙れている x(j) = (l.-1、1、1、-l.1)であり,

x(i) = (1) -1, -l. 1, -1令1)である. 相対遅れ時聞が2であるから, 偶相 相関は図の 部 に示した太線で表され,-1+1+1+1- 1- 1=0となる. fly)=「l

= -1の場合も同様 である.

方, d

y

)=-d

のとき,戸< tく(p+ l)Tにおいて, Pl\信号_.,y(i)(t)と拡散 信号_x(j)(t -C)d(j) (t - c) との相 相関値から, 遅れ時間fにおける奇相 互相関関数

R�r(

(; X(i) i X(j))が次のように定義される.

f:\ __( �\ 1 r(p+l)T

時 代 X(i) ) X(j))

= _�;\

1 " - '

-,y(i)(t)_y(j)(t - L)d(j)(t - C)dt d

Y

IJT

これは 内積を用いて次のようにも表される.

R�r( L: X(i\

X(j))

=< X(i)

j) >

dt)二-41のとき,奇相互相関を表す模式図を図6.10[4:4]に示す

data signaI

I

ij)ω |

SS signaI s(j) 'J'(t)

ー1

× (correlation recei ver).

PN sequence X(i)

…corr山

duj p

T=N

pT+tl

duj þ+l

-xω

(p+l)T+tj

図6.10:奇相互相関関数を考慮する場合

(6.18)

(6.19)

(23)

第6章離散力学系に基づくスペクトル拡散符号の設計 64

図6.10には,

q

)=1かつfI

2

1二一1の場合が描かれている 奇相互相関は図の下部に 示した太線で表され, -1+1+1十1+1+1=4となる

)二一1かつf1

2

1二lの場合も

同様である.

以上の議論により、CDI'vIAシステムにおいて, Pl\系列に要求される相関特性は, 次の ようにまとめられる.

-偶および奇の自己相関関数が6関数的.

-相異なる系列の数をJとすると, (J - 1)個の相互相関値および2(N - l )(J - 1)個 の偶・奇相互相関値がO.

SS通信におけるP:-J系列は, 拡散符号とも呼ばれる. 従来, 拡散符号として, シフトレ ジスタによって生成される最大周期系列(:vr系列 )や, ここで述べた 偶相互相関関数に関 して最適な, M系列を基本とするIく孔san11 系列やGolcl系列が主に用いられている.

6.3 準同期と非同期の区別と系列のM倍標本

直接スペクトル拡散(dir代t-sequcllcc Spl'(、以l-spcc寸;nllll; DS /SS)方式においては, デー タ信号に, これとは独立な拡散符号が掛け合わされる. データ信号と拡散符号はともにバ イポーラ(土1)であるとする. このようなシステムでは, J人のユーザのスペクトル拡散

信号s(]),j=l,之,",Jが同じ周波数帯域に同時に送信される. 簡単のた め, ベースパン

ド通信を考える.

時刻tにおいて, J番目のユーザのデータ信号 d U)(t) (j二1,2γ・, 1 J)およびそれに割 り当てられた拡散符号信号x(j)(t)は それぞれ次のように表される.

ただし, I1r(t)は,

d(j) (t)二

工 作

)(t-pT )d

; !

)ε

{

1

-1

}

p=

.Ly(J) (t)二 zxjJ)UTr(t-qZ),xjj)ε{1;-1}ぅ

I 1 for 0 < t < T tlT(t) =

<

I 0 otherwise

(6.20 ) (6.21)

(6.22) であ る. TをTcの整数倍に取り, )番 目 の ユ ーザの拡 散 符 号 信 号_jy(j) (t)は, 周 期 入vこT/Tc を持つと し よう. そ の結果, 1データ 信 号 あ たり の拡 散 符 号系 列 は

(24)

XU)二{xjJ)ょfJ)..

.. . _\

�dとなる. 一般性を失うことなく, T(. = 1と仮定する. 以上よ り, ベースパンドスペクトル拡散信号δ(j)(t)は

.'i (j)

( t)

= ./\ (j) ( t ) d(j ) ( t ) (6.23)

と表される. 受信信号I'(t)は, 一般的に,

r(t) =

..1\(j ) (t -t (j) ) d(j ) (t - t (j ) ) + 11 ( t ) (6.24)

と表される. ただし, t(j)はJ番目のチャンネルにおける遅れ時間であり, n (t)は共通チャ ンネルにおける白色ガウス過程の雑音である. 受信信号r(t)がx(i)に適合する相関受イ一言 器に入力されたとき, p番目のデータ信号に関する時間間隔の聞の出力は,

ZJi)= f 1)11(収(i)

(帆i二l.2 ぅI (6.23 )

で与えられる. [31]において, t(i) - t(j)は[0.入�)の実数に値を取ると仮定されているの で,

システムの状態は2つの状態: i) t(i) - t(j)

=

0である同期状態, と ii)

t(i) - t(j) i=

0である

非同期状態, に分けられる. 一方, 本章では, t(i) -t(j)は次のような有理数に値を取ると する.

4

t(i) - t(j)

=

(ij J +こλlJi' fij 二 0. 12

• • • ,�y

-l. kij

=

0, l. 2 ぅ�\I-l. (6.26)

ただし, 1\1はある正の整数である. λIが十分大きいときには, (6.26)に定義した離散的な 値はPursleyが仮定した連続的な値の良い近似となる. (6.26)によって, Pursleyが[31]で 定義した非同期状態をさらに2つの状態に分けることが できる. 非同期状態におけるこれ

ら2つの状態は 以下の議論によって, 非常に異なることがわかる.

定義6.1任意のtとjに対して,f(1)-t(j)=0が成り立つならば, システムは同期である といわれる. (6.26)において, 任意のiとjに対して, kij

=

0が成り立つならば, システ ムは準同期であるといわれる. これら以外の場合, システムは非同期 であるといわれる. I

ここ で, Pnrslc、yによって導入された拡散符号の相互相関関数をまとめておく.

定義6.2

[31}

2値系列X = {-Yn};;三JlとY=(1L)?ふ1の聞の非周期相互相関関数は, 次 式で与えられる.

+ T-

十 七L 同

Y X

R

( 6.27)

(25)

第6章離散力学系に基づくスペクトル拡散符号の設計 66

ただし, 川ま遅れ時間を表し, (= 01

2

, ' . �y

-

1である. これによって 遅れ時間fに おける周期Nの系列XとYの偶および奇の相互相関関数がそれぞれ次のように定義さ れる.

R

�;

(L: X. Y) = R

�,

(L; X. Y) + R:

,(入守一(:Y.X) R

(L:X.Y) =

R :� (

(;X.Y)-

R �T (

'

(; Y X).

(6.28) (6.29)

p番目のデータ信号における, J-1個の他チャンネルからチャンネルtへの多元接 続干渉(n川iplωCCCSS intc'rfcTcncc: :\IAI)をI

I;

と表そう ピット誤りは, データ信号が d

y

=-1かつ雑音および符号問干渉がNより大きい場合 またはデータ信号がd

r

)二l

かっ雑音および符号間干渉が入'より小さい場合に起こる. lvIAIが原因で発生するピット誤 りの生起確率は

で与えられる.

PU凶

た[31 刊lト .

九 = Prob{み)=-l}Pro13{ID>川作)

=

- 1 }

+ P川{d;)i)

=

1}

.

Prob{

1

<

d

jf)

二1

}

勾) - り+d;)N+IZ

〈rff;;fケp+一+刊ぺl

4引:;;

主計(←付什例dみν川yyパ哨)河(

Jヲ-:pi

( 6

.30

)

(6

.

3

1)

(6.32)

+刊吋4d4払2払1 {作(十lト一 岩 討) 川 R:�, R 3 引 (川 Fハんル刊伊iυωバ川j;X(川;X(j炉(υωJρ)

.X(iμi))

+ 岩ヤR吋 元(川N川川一ベベ十f人らト日いt ワ i j- 1日 j-パ日一」ぺl; X リ け

(6.33)

ただし, 11(t)は共通チャンネルにおける雑音を表す.

議論を簡単にするために, まず準同期の場合を考える. すなわち, 任意のiとJについ

てんi.j= 0であるから, (6.33)は次のようになる.

IY;=乞(djj)RJ(fiJ:X(t)X(J))+r12lRiv(Xーら:

J XU), X(i))

) . ( 6 3

.4)

j-:pi

(26)

(6.34 )に 基 づ い て:\1AIを評価す る た は , 4:つ

の事象(dy)J21)=

(1,1), (1,ー1),(-1,1), (-1ぅ-1)を考慮せねばならないことに注意さ れたい. '--、"... '--、"...

で, 第5章に戻って図6.9および図6.10を見ていただきたい. 偶相互相関関数(6.28)および 奇相互相関関数(6.29)に基づけば, 2つの事象rl

y

)=d

lとd

y

)ヂd

lだけを考慮すれば

よい. このとき

I1;

(6.34)は次のように表される.

ム (

dY) + d�11 _ r _ __1 : \ __1 : \ d�!) - rl�11 _" 1 _ \ ('\

1

乞�

Up q p+IR5(ftJ;X(?)7X(j))+ P P+I RZ(tt J;X(?)χ(j))

.

(6.35)

ピi

l

2 l' \ • lJ I 2 1 V \ 'J I /

J

jヲ正t

次に非同期の場合を考えよう. この場合の偶相互相関および奇相互相関を表す模式図を それぞれ図6.11および図6.12に示す.

data signal

I

dUJω

|

SS signal

UJ (t)

× (correlation recei ver)

PN sequence X(i)

duj p

T=N XU)

pTHi

(uu

d��p +l 1

XU)

(p+I)T+fi

図6.11:非同期状態における偶相互相関

L

(27)

離散力学系に基づくスペクトル拡散符号の設計 68 第6章

dUJp+ l 1 duj p

data signal

I

T=N dUJω -1

I

_

xUJ

xUJ

SS signal

UJ (t)

'九=1

: (j-( i =1+

4

;

- 11/1

odd cross-correlation

1+1→以←

ーた j

M←」

t- -ß..

M ー1

(correlation receiver)

PN sequence X(i)

×

1+1

(p+l)T+( i pT+fj

図6.12:非同期状態における奇相互相関

部に示した太線で表されて 相関はそれぞれ図6.11および図6.12の

偶および奇の相 いる.

(6.33)は次のように表 偶相互相関関数(6.28)および奇相互相関関数(6.29)に基づけば,

( 6.36)

{刊 げ バ � C l いC 円j V V必仰 (υ

{什仲(い1ト一

討 ) R 5 引 (μ 代 ( ; X , Y)+旨市+ 1 ; X

P74� { (1 - ��1 ) R�,

U:

X. Y) +ヤミU+l:X,Y)})

現される.

I(t) J、p

周期入γの2つの2値系列

X(i) =

{�y�i)}山一lとX(j)

= {_y�j)}山一lの聞の遅れ時間(JJ +んにおける非周期相互相関

関数を考える.

相 関関数を評価するために,

非 同 期 状態、に お け る相

(6.37) すなわち,

+ ハ+

VL X + 山hL同

一一 x x ''ハ + fi fl、

R

(28)

ただし, C = 0,1, , , , ,1V

-

1, k = 0う1, '・',JJ-1である . さらに, 周期NAJの拡散符号

玄 ニ {X oぅ ..

Xoγ・• ,XO, . X1, " , ..'\11'・" .L\rv-l,・・. ,JY入'-dを考える. このような系列 支を

、一ーーーー� _j 、ーーー--一一-'" v

M �f

系列XのM倍標本(M-tÌlne up-sanlpling)と呼ぶ. このとき, Xのパルス幅えがlで あるのに対して, Xのパルス幅をTcと表すと,生二1/AJとなることに注意されたい.以 上の準備により, 次の補題が直ちに得られる.

補題6.1遅れ時間eM+たにおける系列XとYの聞の非周期相互相関関数は次式で与え られる.

(

k

l

ー も}

吋(e; xY) +

M

(1

;

X

Y)二

M

k;

X

Y)

ただし, = 0ヲ1う2γ・',JV-1,k二0,1,2,' ,1'v[ -1 である. これ より直ちに遅れ時間

fM +kにおける系列支とYの聞の偶および奇の相互相関関数がそれぞれ以下のように得 られる.

R�M(eM + k;文:, Y) = R� i\lJ (ω-1+ん;之Y)十R�P.J (lV M -(CM + k); Y, X), (6.39) R5i以CA1十k;5ιY)=RZル.,(ω1+ん;文\Y)-RLT(んア1'1.[

-

([/\1 +ん)

;子支).

(6.40)

補題6.1より,

(i) _

� f

d

(j)

+

r1�

) l (ベ刊叩 (iωtけ) -:;;:υ

J品p= E日r p�州立 RPM(fuM+ l hJ;X ぅ X \ J I )

J戸

r1�!)

-

d�1 1 1-RZ叫ん1 1

1 � n ' "

\! I

r +ん; x-:;;:"),(i) X-:;;:(j) UJ)\

1 �

(6.41)

2 j\1--lV 11'1 \ .

( .

,j

-

- (j I -- ) _. . I I

が成り立つ, (6

.

41 )と (6

.

35)を比べる こ と に よって , 土R5

G

(fM+k;JιY)が

R�/o(e;

X, Y)の自然な拡張となっていることがわかるであろう.Af ここで, 右肩のE/Oは

Eまたは0, すなわち, 偶または寄を表す.

(6.41)の右辺は, (

)土d

dの項に関してま とめられ てお り, Pursleyによる表現 (6.33)と異なることに注意されたい.

ここで, 関係式

(咋)+djil)(djJ)ーd立J

)二O

を用いると, 次の定理が直ちに得られる.

(6.42)

(29)

第6章離散力学系に基づくスペクトル拡散符号の設計 70

ヰi品 Fi A M

7hv J/

け (Y

功 ( XAj

ム ル

(Y

一ML (yi

シ げい ん ザ C M - + 'H ] ‘、 r f - 一 R 一 小此 μ1一山 山

2 0 N

. \il/

R

f 』 1i- -2 v( )十 一 1 i一イ 4 1 4 一 2 1 対 十 一 2

\llノ υ ー p一 ぺ什十 一 n J一 / L PI一

(Yん一i\一

fhH十九 一一 2

ょ=

p

一 お う一 /い 一 i \ ) p

ill-

(X W勺 + 万ノ 系

意 任 司i 氏U 昭エ γすMF {疋

(6.43)

を満たす.

この定理によって, 拡散符号に関する�lAIの分散を評価するのに見通しがよくなる.

6.4

多元接続干渉(MAI)のデータに関する分散と拡散符号 に関する分散との比較

この節では, データ信号に関するMAIの分散と拡散符号に関するMAIの分散の差異 を議論する これらをそれぞれVα川

!とVα川14:

;

!と表す 議論を簡単にするため,

2ユーザの場合を考える.

まず, AIPの定義を簡単に述べる.データ信号D(i)= {D�i)}手。を{-l)l}に値を取る i.i.d. 確率変数列とし,

Prob{ D�i) =叫=日{Dr)二一l}=

j

(644)

と定める. これより データ信号に関するlV[AIの分散が次のように得られる.

=

{ (1一五) R�(f;X,

Y)

+合的(f+1;X,y)}

+((l-UR丸山アーげX)+古川(N

-C-1;Y,X)

}

(6.45 ) さらにKを{L21 ・.

)

11{

-

l}に値を取る確率変数とし,

川Iピ=吋k叫} =

走古,

k円 円斗 = 0)?

と定める.ユfが十分大きいとき,

( 6.46)

-E九[1 川口]]

=

7れ (6.47)

(30)

を得る. ただし,EPI-.:は確率変数Iピの分布に関する期待値を表し,

rx,γ= 2

2二Cs({;X, YY� + L

Cs(l:x. y)c.v(t

+ l:X, Y).

(6.-18) である. 7・X.γ はAIPと呼ばれる. ここで,

である.

I R��;

(

(: X. Y)

Cs(t;

x.

Y) = < ( =

O. 1. 2,

• • . J.V - l

l R:�(_\-

- 1(1;

YうX), (=

- 1. -2

、・

. . ,1一入ア (6.49)

方,

X =

{

..

Xη)之。およびY

=

{九)之。を{-1,1}に値を取る定常確率変数列とす る. XとYを2次の推移行列Pで表される2状態マルコフ連鎖とし,

P1'ob{

.. Xn二一1} =

P1'oh{l�1二一1}

二日{ "\'"n二1}二川{1;1=1}= j

と定める. 簡単のため,既約で非周期的な連鎖 を考える. このとき,

E以[-,yη] =E川町=0、

E川[.. Xn 1'�1 +r]二Epx [..!\n] Ep), [1 �I] =

0 fo1' {三Oう

(

6

.

5 0

)

(6.51) ( 6.52)

Epx[./\n./\叶e] =入{ I

>

for tどO. (6.53)

Epì' [}� Y"n +c] 入( J

が成り立つ:2 ただし,入(1入1< 1)はPのl以外の固有値を表す. ここで,Pは2次の正方 かつ確率行列であるので,1以外の固有値入は一意に定まる. (6.52)によって,非周期相 相関関数の期待値は

EpX Y [土 R57( (1f +k:J ξY )] =

0 for (三O

Y入} l1\1

となる. これより,偶および奇の相互相関関数の期待値が直ちに得られる.

E JPXXY l [」-J1 Ri11(fjf+k:文、Y)]

- Em,11-Rb(falf+l ;文、デ)]二0, fo1' (三O 111

2(6.53)ーP…=

j

(1

(6.54)

(6.55)

参照

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