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武田, 深幸

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

東アフリカ・ヴィクトリア湖の沖合性及び沿岸性シ クリッド科魚類の遺伝的構造

武田, 深幸

https://doi.org/10.15017/1441023

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

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氏名:武田(井下) 深幸

論文題名:Genetic Structure of Pelagic and Littoral Cichlid Fishes from Lake Victoria (東アフリカ・ヴィクトリア湖の沖合性及び沿岸性シクリッド科魚類の遺伝的構造)

区分:甲

論文内容の要旨

東アフリカの大地溝帯にある3つの湖—ヴィクトリア湖、タンガニイカ湖、マラウィ湖—では、シ クリッドとよばれる魚の仲間が、爆発的な適応放散をしていることが知られている。これらの3つ の湖には、それぞれの湖に固有なシクリッドが、数百種ずつ生息している。また、地質学的なデー タと分子的なデータから、それぞれの湖のシクリッド種群の年代も推定されている。

その中でヴィクトリア湖は最も新しい湖だが、形態的にも生態的にも多様なシクリッド種が見ら れ、爆発的種分化が起こった、もしくは起こりつつあると考えられている。ヴィクトリア湖に棲む およそ700種もの種の全てが、10万年以下の非常に短い期間に共通の祖先から進化して来た事が 分子データから示唆されており、最も大規模な適応放散の一つの例として知られている。しかしな がら、種群形成が最近起こった為に、種間の遺伝的分化は弱く、中立な遺伝子マーカーを使って、

系統関係を推定する事は難しかった。近年、AFLP マーカーや RAD マーカーを用いた研究で、少 数の個体について大規模な解析を行う事で、ようやくヴィクトリア湖のシクリッドでも種間の有意 な遺伝的分化が示された。しかし、これらの研究は、一つの生息環境に棲む数種についての調査で、

生息環境と遺伝的分化の関係については、まだ調べられていなかった。ヴィクトリア湖のシクリッ ドの、目を見張るような放散過程を理解する為には、これらの種の現在の遺伝的構造を推定し、こ の構造がどのようにそれらの適応を引き起こした生息環境と関係するのかを解明する必要がある。

本研究では、異なる生息環境に棲むシクリッド9種について、約900個体という大規模な採集を 行い、進化に中立な遺伝子マーカーを用いて、適応放散の初期段階での種間及び種内の分岐パター ンを推定する事を主な目的とした。具体的には、(1)ヴィクトリア湖のシクリッドでは、階層的な 遺伝的構造は存在するのか。(2)もし存在するならば、その階層的な遺伝的構造は生息環境に関係 しているのか。(3)また、本研究で用いたシクリッド種内には、遺伝的な構造(集団構造)は存在 しているのか、そして存在するならば、その構造は種とどのように関係しているのか。の3つの解 明を目的とした。その為に、ミトコンドリア DNA 制御領域の塩基配列とマイクロサテライト12 遺伝子座を遺伝子マーカーとして使用し、ヴィクトリア湖の南東部のムワンザ湾とスピーク湾で採 集された2種の沖合性種と7種の沿岸性種(岩場性種)の遺伝的構造を解析した。

ベイズ法に基づくクラスタリング手法を用いて、マイクロサテライトのデータを解析し、本研究 ではこれらの9種を4つのグループに分けた。:1番目のグループは、沖合性の種からなる。その他 の3つのグループは主に岩場性の種から構成されていた。つまり、この解析結果からは、生息環境 に関係した遺伝的構造の存在が示唆された。また、ミトコンドリア DNA 制御部位の塩基配列を用 いて、ハプロタイプネットワーク解析を行なった。その結果、先行研究でも指摘されていたように、

幾つかの種はネットワーク上でハプロタイプを共有した。しかしながら、種によってネットワーク 上でのハプロタイプの分布の仕方に特徴がある事も分かった。少なくとも生態の異なる種どうしで、

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遺伝的な違いがあることが、この解析からも明らかになった。

次にマイクロサテライトのデータとミトコンドリア DNA のデータの両方を使って、分子分散解 析(AMOVA)を行い、クラスタリング解析で分けた各々のグループ内で、種間と種内にどの程度 の遺伝的変異が存在するのかを推定した。その結果、どちらのマーカーもグループ内の種間で有意 な遺伝的変異を示し、各グループ内で種は遺伝的に分化していることがわかった。実際、両マーカ ーのデータを用いて、遺伝的分化の指標である FST値とRST値を9種の種間で推定したところ、ほ とんど全てのペアで有意な値が得られた。またAMOVAから、種内の集団間にも有意な遺伝的分化 があることがわかった。最後に、複数の集団のサンプルが得られた8種それぞれについて、種内の 集団間でFST値と RST値を推定したところ、有意な分化が見られなかった種と、一部の集団が他か ら有意に分化して集団構造を持つ種が有ることがわかった。

本研究では更に、9種それぞれについて、様々な集団遺伝学的な統計量を推定し、種の歴史につ いても推定した。その結果、9種中7種では過去に集団の拡大が起きた事が示唆された。

多くの先行研究から、ヴィクトリア湖のシクリッドでは遺伝的な分化が弱いという事が示唆され ていたが、本研究ではヴィクトリア湖のシクリッドでも明らかな階層的遺伝的構造が見られるとい う事が示された。興味深い事に、各グループは属レベルのクラスタリングとほとんど一致しており、

少なくとも部分的には遺伝的分化は生息環境の違いに関係していることがわかった。また、各グル ープ内でほとんどの種は分化しており、更に、各々その種に特有の遺伝的構造を持っている ことも わかった。最近形成されたヴィクトリア湖のシクリッド種群の解析により、適応放散初期の種形成 過程の一端を明らかにすることが出来た。

参照

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