九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
日米同盟における日本の自律性に関する研究 : 非対 称同盟論を中心に
李, 鍾成
http://hdl.handle.net/2324/1931682
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(法学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)
(様式3)
氏 名 :李鍾成
論 文 名 :日米同盟における日本の自律性に関する研究―非対称同盟論を中心に―
区 分 :甲
論 文 内 容 の 要 旨
本稿の主たる課題は、二国間で締結される非対称軍事同盟関係を説明する米政治学者ジェイムズ・モ ロー(James D. Morrow)の「自律性―安全保障の交換モデル」が、冷戦期とポスト冷戦期にかけて 存在する同盟に対して有効性を有するか否かを検証することにある。その際、日米同盟を主たる事 例として検討する。以上を通じて、冷戦期に形成された同盟が冷戦の終焉後も維持されている理由 を明らかにした。
現実主義国際政治理論での同盟理論は、「現状維持」と「勢力均衡」の観点から同盟形成に関す る有効な説明を提供しているが、同盟の「維持」と「変化」には関心を払っていない点が理論上の 弱点として指摘されてきた。その弱点を補完するための「非対称同盟理論」は、主に二国間の同盟 関係で、同盟構成国間の力の差に着目し、力の差が多ければ大きいほど、同盟の結束力が強くなり、
また維持期間も長くなると主張した。その理由についてモローは、非対称同盟では大国による「安 全保障」と小国による外交・安全保障上の「自律性」が交換されるからであると主張した。1991 年 に発表された、モローの「自律性―安全保障の交換モデル」は、今日に至るまで非対称同盟の維持 と変化を説明する理論として有効性を持つと評価されている。日米同盟では、日本がアメリカに安 全を保障される代わりに、基地を提供することによって外交・安全保障上で自律性が制限されると 理解されてきた。
しかし、本稿が日米同盟の事例を通じて、モローが提示する同盟変化条件を検証した結果、少な くともポスト冷戦期にはモローの非対称同盟論は有効ではないことが明らかになった。モローは、
外部環境に脅威が存在する限り、同盟を変化させ、同盟の在り方を規定するのは、大国が小国に提 供する「安全保障」であるため、小国による「自律性」の提供が同盟へ及ぼす影響はほぼ無いと見 なす。しかし、冷戦期にも小国が自律性のために行動し、脅威の定義が変わるポスト冷戦期には同 盟変化のためのイニシアティブが小国にもあり、小国主導で同盟が変化する可能性も高くなってい たことを明らかにした。以上から、本稿は「大国―小国」の関係の在り方によって「自律性」と「安 全保障」の交換のパターンが異なる点を強調し、新たなる非対称同盟論(「新」非対称同盟論)を 提示した。