1.はじめに
「企業行動の法的・非法的要因に関する実 証的研究」をテーマとする企画I−c,すな わち企業行動研究センターは,具体的には企 業行動に対する企業内外の弁護士の役割を研 究対象としてきた。その初年度である 2004 年度の成果としては,2004 年3月 18 日に開 催した国際シンポジウム「企業行動に対する 弁護士の役割―その現状と展望―」があり,
その内容は本紀要に分割掲載中である1。 第2年度である 2005 年度は,その発展と して,日本国内の企業不祥事事例における社 内弁護士の役割を分析することによって,実 証分析に着手しようと考えた。しかし,チー ムメンバー(約 15 名)の日程調整と,適切 な事例の発見に手間取ったため,適切な事例 を発見して実際の研究会を実施したのは,
2005 年 12 月になってからであった。その事 例とは,2005 年 2 月と 10 月の2度にわたって 金融庁から業務停止命令を受けた明治安田生 命の保険金不当不払い事件である。本件は,
取締役法務部長である社内弁護士の活動があ る程度一般に入手しうる資料で把握しえたの で,適切な事例と考えられたのである2。
分析は,2回にわたって行われた。第1回 は,2005 年 12 月 15 日に開催され,高柳一男 会員が,「明治安田生命保険金の不当不払い
事件における企業法務対応―メディア報道/
インターネット情報ベースでの考察―」と題 して,社内体制と社内弁護士の組織上の地 位・権限について事実の整理と問題点の分析 を行い,第2回は,2006 年 1 月 23 日に開催さ れ,柏木俊彦会員が,「会社の違法行為と社 内弁護士の弁護士倫理上の諸問題」と題して,
第1回の研究会で確認された事実を前提とし て法曹倫理上の論点について検討を行った。
以下に掲載するのは,これらの研究会におけ る報告要旨を公表用に修正したものである。
論文として書き改めたほうがより大きな貢献 となることは明らかであるが,プロジェクト の記録として迅速に公表することにも意義が あると考え,要旨の形で公表することとした。
2006 年度においても具体的事例の発掘・分 析に取り組み,実証研究を蓄積したいと考え ている。
注
1 宮澤節生「国際シンポジウム 企業行動に 対する弁護士の役割−その現状と展望−¸」 およびロバート・ローゼン(宮澤節生・原口 佳誠訳)「社内弁護士のプロフェッショナル としての力」季刊企業と法創造第 1巻第 4号
(2005年)。
2 本件については,桐蔭横浜大学コンプライ アンス研究センター企業不祥事検討チーム
「最近の企業不祥事 明治安田生命の不当不 払い問題」コーポレートコンプライアンス季 刊第5号(2005年)がある。ただし,社内弁 護士の役割は分析対象となっていない。
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201
―企業不祥事における社内弁護士の責任
―明治安田生命の不当不払い問題について―
宮澤節生
** 大宮法科大学院大学教授,早稲田大学臨床 法学教育研究所客員教授。企画I−cリー ダー。