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博士学位論文審査報告書

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Academic year: 2021

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2009年7月9日   

博士学位論文審査報告書 

 

大学名        早稲田大学 

研究科名      スポーツ科学研究科  申請者氏名    大西  孝之 

学位の種類    博士(スポーツ科学) 

論文題目      スポーツ・スポンサーシップにおける企業の社会的責任:CSR の知覚の先行要因と結 果要因 

論文審査員    主査  早稲田大学教授  原田  宗彦  Ph.D.(ペンシルバニア州立大学) 

副査  早稲田大学教授  中村  好男  教育学博士(東京大学) 

副査  早稲田大学教授  彼末  一之  工学博士(大阪大学)医学博士(大阪大学) 

 

1.本論文の主旨 

スポーツビジネスの根幹をなすスポーツ・スポンサーシップ研究について、これまで多くの研究が 行われてきたが、その多くは、企業がスポーツに協賛することによって得るメリットや広告効果とい ったベネフィット論が中心であり、本研究のテーマである「企業の社会的責任」(Corporate Social  Responsibility:CSR)や「社会貢献活動」といった非営利的動機に関する研究の数は限られている。

本論文では、スポーツ・スポンサーシップにおける CSR の知覚に焦点をあて、それがどのような心理 的要因によって影響を受け、そして企業にどのような便益をもたらすのかを明らかにすることを目的 としている。そのため、先行研究のレビューよって、CSR の知覚を誘発する先行要因と結果要因を包 含する理論モデルを構築し、要因間の因果関係を類推する 18 の仮説を設定した。本論文は、以下の 5 章から構成されている。 

第1章  研究の背景  第2章  仮説の設定  第3章  研究方法  第4章  結果  第5章  考察   

2.本論文の概要

第1章では、先行研究より、スポーツ・スポンサーシップの定義を明確にするとともに、Jリーグ のスポンサーを対象とした予備調査によって、企業が行うスポンサーシップの目標を調べた。その結 果、企業の社会的責任である CSR が最も重要な目標であることが明らかになった。本論文では、この ような状況を認識しながら、スポーツ・スポンサーシップをめぐるどのような活動が CSR 活動となり 得るのか、そしてどうすれば、企業が行う CSR 活動を消費者に知覚させることができるかという二つ の問題に取り組んだ。ただし、スポーツ・スポンサーシップが CSR 活動であるかどうかについては、

研究者の間でも議論が分かれているが、現実には、社会貢献活動や CSR 活動は、すでに企業のマーケ ティング活動に組み込まれており、企業は CSR 活動を通じて、社会的便益と経済的便益を同時に求め るなど、スポーツ・スポンサーシップの社会的側面を否定することはできない。 

第2章では、丹念な先行研究のレビューを行い、仮説の設定を行っている。その結果として、前述 1

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のように、CSRの知覚の先行要因として、①チーム・アイデンティフィケーション(TI)、②スポー ツチームとスポンサーの一致度の知覚、③スポンサー企業の動機、そしてCSRの知覚の結果要因とし て、①スポンサー企業に対する態度(他利的・営利的)と②スポンサー製品/サービスの利用/購買意 図を導き、変数間の因果関係を矢印で示した仮説モデルを構築するとともに、モデル内に生起する18 の仮説を設定した。 

第 3 章では、研究方法について概説している。データの収集は、J リーグの 4 試合においてスタジ アム内での訪問留置法による質問紙調査を実施した。質問は、アウェイクラブの応援者を除くホーム の観戦者を対象に、各ホームクラブの胸スポンサーについて尋ね、最終的に 916 サンプルを用いた。

また本研究で用いた測定尺度はすべて英語であったが、原文のニュアンスを維持し翻訳を行い、尺度 をすべて日本語化した。 

第 4 章では、測定尺度の信頼性と妥当性の検証を行った。測定モデルについて確認的因子分析を行 った結果,先行研究で示された基準値を十分に満たす値であった。次に,因子負荷量,クロンバック のα係数,合成信頼性、平均分散抽出、因子間相関などを検討した結果、信頼性と妥当性が確認され、

仮説の検討に進むことができた。さらに構造方程式モデリングによる分析の結果、仮説モデルの適合 度は十分な値を示した。 

TI から CSR の知覚への直接的な影響を検証する仮説 1 については、負の影響が認められたが、信 頼区間が 0 に近いことから、有意な影響はないと指摘している。しかしながら、TI から CSR の知覚 への総合効果を検討したところ、両者の間には有意な関係が存在することが明らかにされた。TI が 一致度に直接的な影響を与えるとした仮説 2 も支持されている。一致度は、CSR の知覚に強く影響す る重要な変数であることからも、TI が一致度に影響を与えるという結果は特筆に値する。次に、高 い TI を示すファンは、スポンサー企業に対して好意的な態度を持つ(仮説 3)ことも明らかになっ た。同時に、TI が高くなればなるほどスポンサー企業の商品・サービスの利用と購買意図が高くな るとした仮説 4 と仮説 5 も支持されている。 

一致度の知覚もまた、CSR の知覚に影響を及ぼす重要な要因であることが認められた(仮説 6)。さ らに一致度は、動機の知覚によって媒介されることにより、CSR の知覚へより大きな効果を与えるこ とになる。動機の知覚への影響に関しては、仮説 7 と仮説 8 の通り、一致度が高いほど利他的動機を 知覚させ、一致度が低いほど営利的動機を知覚する結果となったが、一致度の態度への影響といった 仮説 9 は支持されなかった。一致度の利用/購買意図への影響(仮説 10)に関しては、直接的な影響 は認められなかった。 

利他的動機の知覚が、CSR の知覚に正の影響を与えるという仮説 11 は支持されている。その一方、

営利的動機の CSR の知覚への有意な影響は認められず、仮説 12 は支持されなかった。すなわち、利 他的な動機を知覚すればするほど CSR の知覚は高まるが、営利的な動機を知覚しても CSR の知覚への 影響はないことを明らかにしている。 

利他的動機の知覚はスポンサー企業に対する態度に負の影響を与えるという結果が得られ、仮説 13 は支持されなかった。この負の影響について、理論的な根拠を示すことはできないが、消費者は 利他的動機のみを知覚すると、企業の製品やサービスの研究開発などに対する努力がおろそかになり、

品質が下がると知覚し、企業に対する態度が否定的になると指摘している。 

一方、営利的動機の知覚についても、スポンサー企業に対する態度への影響は認められず、仮説 14 を棄却している。動機の知覚の利用/購買意図への影響については仮説 15 と異なり、利他的動機 を知覚しても、営利的動機を知覚しても、利用/購買意図への直接的な影響は認められなかった。CSR の知覚は企業に対する態度へ影響するという仮説 16 は、正の関係が確認され、多くの先行研究の結

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果を追認する結果となった。  

本論文のポイントとなる、仮説 17(チーム・スポンサーの CSR の知覚が、スポンサーの製品やサ ービスの利用/購買意図を高める)については、直接的な影響は認められず、仮説は棄却されたが、

仮説 18 である、態度と利用/購買意図の間には直接的な関係が確認された。これによって、CSR の知 覚は態度を通じて間接的に利用/購買意図へ影響することを明らかにした。つまり、チームのスポン サーに対する態度が好意的であった場合、CSR の知覚が、スポンサー企業の製品・サービスの売上に 結びつく可能性の強いことが判明したことになる。 

以上の結果から、CSR の知覚に先行要因と結果要因の包括的な関係が明らかとなった。先行要因に 関して、TI は CSR の知覚へ直接的に影響を与えないが、一致度や利他的動機の知覚を通じて、正の 有意な影響を与えることが示された。また先行研究と同様に、TI から態度や利用/購買意図への有意 な影響が認められた。一致度は CSR の知覚へ有意に影響することが示されたが、利他的動機が媒介す ることにより、さらに正の効果が加わることが明らかとなった。また、利他的動機は CSR の知覚に正 の有意な影響を及ぼすことが示されたが、営利的動機は CSR の知覚に影響を及ぼさないことを確認し ている。 

なお、本論文に用いられた主な学会誌掲載論文およびプロシーディングは以下の通りである. 

[1]  大西孝之,原田宗彦(2008)プロスポーツチームが行う地域貢献活動の消費者に与える影響:大学生の 観戦意図とチーム・アイデンティフィケーションの変化に注目して.スポーツ科学研究,5,253-268. 

[2]大西孝之,原田宗彦(2007)J リーグクラブのユニフォーム・スポンサーに関する研究:スポンサー企業の基 本情報とアンケート調査から.日本体育・スポーツ経営学会第 30 回大会号,11-12. 

[3]  Ohnishi,  T.  and  Harada,  M.  (2007)  Football  Sponsorship  in  Japan.  Taiwan  Association  of  Sport  Management Annual Congress 2007: Conference Proceedings [CD]. 

[4]大西孝之,原田宗彦(2007)スポーツ・スポンサーシップにおけるステイクホルダーの企業の社会的責任 の知覚に関する研究動向.日本スポーツ産業学会第 16 回大会号,119-120. 

[5]  Ohnishi,  T.  and  Harada,  M.  (2008)  Antecedents  of  consumer  perception  of  corporate  social  responsibility  in  sport  sponsorship.  Proceedings  4th  Asian  Association  for  Sport  Management  Conference, 96-100. 

[6]大西孝之,原田宗彦(2009)スポーツ・スポンサーシップと企業の社会的責任:CSR の知覚の先行要因と 結果要因.日本スポーツマネジメント学会第 1 回大会号,18. 

 

3.本論文の評価 

本研究は、スポーツ・スポンサーシップの研究において、CSR の知覚が、どのような心理的要因 によって影響され、企業にどのような便益をもたらすのかを明らかにするために、CSR の知覚の先 行要因と結果要因を検討したものである。本研究では、丹念な先行研究のレビューを行い、仮説の設 定に基づいた理論モデルを構築した。そしてJリーグ観戦者を対象とした調査の結果に基づいて構成 概念の信頼性と妥当性を検証し、構成概念間の直接効果、間接効果、そして総合効果を検討した。そ の結果、CSR の知覚と利用/購買意図の間に有意な効果は認められなかったが、CSR の知覚は態度を媒 介して利用/購買意図へ有意な影響を与えていることが明らかになるなど、今後企業が、スポーツ・

スポンサーシップを実施する上で有用な知見が得られたと考えられる。 

以上の点から、本論文は博士(スポーツ科学)を授与するに十分値すると認める。 

以上 

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参照

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