早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科 博士学位論文
企業における環境経営戦略の 動向分析に関する研究
Research on trend analysis of the corporate eco-management strategy
2013 年 2 月
早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科 環境配慮デザイン研究
伊藤 由宣
目次-1
目 次
第 1 章 序 論 ··· 1-1 1.1 本研究の背景と必要性 ··· 1-1 1.1.1 企業をとりまく経営環境の変化 ··· 1-1 1.1.2 企業における環境経営戦略の必要性 ··· 1-2 1.1.3 環境経営戦略の分析に関する動向と従来研究 ··· 1-3 1.1.4 環境経営戦略の動向分析で明らかにすべき事項 ··· 1-9 1.2 本研究の目的 ··· 1-10 1.3 本論文の構成 ··· 1-10 第 2 章 環境と財務の高パフォーマンス企業に関する特性の解析 ··· 2-1 2.1 目的と従来研究 ··· 2-1 2.1.1 研究の目的 ··· 2-1 2.1.2 従来研究の概要 ··· 2-1 2.2 環境と財務の両パフォーマンスに関する検証 ··· 2-3 2.2.1 検証アプローチ ··· 2-3 2.2.2 サンプルデータについて ··· 2-4 2.2.3 業種について ··· 2-5 2.2.4 検証結果 ··· 2-6 2.3 環境経営に関する個別企業の状況の類型と考察 ··· 2-8 2.4 企業属性ごとでの特性の解析 ··· 2-9 2.4.1 業種別での特性 ··· 2-9 2.4.2 産業グループ別での特性 ··· 2-13 2.4.3 企業規模別での特性 ··· 2-13 2.4.4 企業付加価値ランク別での特性 ··· 2-15 2.5 時系列での特性の解析 ··· 2-15 2.5.1 個別企業の時系列推移 ··· 2-15 2.5.2 純粋持株会社の時系列特性 ··· 2-16 2.5.3 年度別での状況推移 ··· 2-17 2.6 まとめ ··· 2-17 第 3 章 企業に求められる環境経営の要件と現状の解析 ··· 3-1 3.1 目的と従来研究 ··· 3-1 3.1.1 目的 ··· 3-1 3.1.2 従来研究の概要 ··· 3-1 3.1.3 データとアプローチ ··· 3-2 3.2 環境要件におけるパフォーマンス影響要因に関する検証 ··· 3-2 3.2.1 検証アプローチ ··· 3-2 3.2.2 モデルの設定 ··· 3-3 3.2.3 サンプルデータ ··· 3-4 3.3 解析結果 ··· 3-4 3.3.1 企業の環境施策と財務パフォーマンスの関係 ··· 3-4 3.4 企業属性ごとの特性 ··· 3-5
目次-2
3.4.1 業種による影響度合いの比較 ··· 3-5 3.4.2 企業規模別での特性 ··· 3-6 3.4.3 企業価値ランク別での特性 ··· 3-6 3.4.4 産業グループ別での特性 ··· 3-7 3.5 まとめ ··· 3-8 第 4 章 企業内部の最適資源配分をもたらす投資評価モデルの構築とその検証 ··· 4-1 4.1 目的と従来研究 ··· 4-1 4.2 企業価値向上の評価フレームワークの定義 ··· 4-1 4.2.1 従来研究の概要 ··· 4-1 4.2.2 従来研究との関係性 ··· 4-2 4.2.3 環境イノベーションと企業価値の関係 ··· 4-3 4.3 投資評価モデルの構築 ··· 4-3 4.3.1 基本モデル構造の設定と理論 ··· 4-3 4.3.2 19 パタンのモデル構造策定 ··· 4-4 4.3.3 検証アプローチ ··· 4-5 4.3.4 データとサンプル ··· 4-5 4.4 企業の類型による投資評価モデルの検証 ··· 4-7 4.4.1 企業規模別での特性 ··· 4-7 4.4.2 産業グループ別での特性 ··· 4-9 4.4.3 業種別での特性 ··· 4-11 4.5 まとめ ··· 4-13 第 5 章 外部資金の調達のための企業における環境経営戦略の解析と提案 ··· 5-1 5.1 目的と従来研究 ··· 5-1 5.1.1 先行研究と仮説の設定 ··· 5-1 5.2 従来研究との関係性 ··· 5-2 5.3 収集データの概要 ··· 5-3 5.3.1 選定企業の抽出 ··· 5-3 5.3.2 企業のパフォーマンス評価指標 ··· 5-4 5.4 実証分析のアプローチ ··· 5-4 5.5SRI 選定企業の特性 ··· 5-5 5.5.1 環境・財務評価項目での比較 ··· 5-5 5.5.2 SRI 選定対象の企業価値の主成分分析による比較 ··· 5-6 5.5.3 SRI 選定対象の企業価値の時系列比較 ··· 5-7 5.5.4 回帰分析での企業価値の影響要因 ··· 5-8 5.6 企業選定要因分析 ··· 5-9 5.7 まとめ ··· 5-10 第 6 章 結論および今後の展望 ··· 6-1 6.1 結 論 ··· 6-1 6.2 環境経営戦略の策定を支援するシステムの開発 ··· 6-1 6.3 今後の展望 ··· 6-3
目次-3
6.3.1 ツールとしての高度化に向けた研究 ··· 6-3 6.3.2 研究成果の社会への還元を目指して ··· 6-7 参考文献
謝 辞 APPENDIX
日経環境経営度調査での調査項目 モデルシミュレーション結果の詳細 本論文に関わる研究業績
第 1 章
序 論
第1章 序 論 ··· 1-1 1.1 本研究の背景と必要性 ··· 1-1 1.1.1 企業をとりまく経営環境の変化 ··· 1-1 1.1.2 企業における環境経営戦略の必要性 ··· 1-2 1.1.3 環境経営戦略の分析に関する動向と従来研究 ··· 1-3 1.1.4 環境経営戦略の動向分析で明らかにすべき事項 ··· 1-9 1.2 本研究の目的 ··· 1-10 1.3 本論文の構成 ··· 1-10 図 1-1 本研究の背景 ··· 1-2 図 1-2 環境経営戦略の全体像 ··· 1-3 図 1-3 動向分析で明らかにすべき事項 ··· 1-9 図 1-4 本論分の構成 ··· 1-12 表 1-1 環境対策と財務の関係にかかわる従来研究 ··· 1-4 表 1-2 環境要件におけるパフォーマンス影響要因に関する従来研究 ··· 1-5 表 1-3 環境投資とイノベーションの関係に関する従来研究 ··· 1-7 表 1-4 SRI 選定企業の特性に関する従来研究 ··· 1-8
1-1 第1章 序 論
1.1 本研究の背景と必要性
1.1.1 企業をとりまく経営環境の変化
企業はさまざまなステークホルダーからの要請や期待に応えつつ継続的な利益を 確保や企業価値向上が求められるが、環境経営戦略の立案にあたり意思決定に必要 となる動向は、現状においては経営者に対して必ずしも十分提供されているとはい えない状況である。これまで企業の評価は財務的観点である売上や利益などが共通 の指標として利用されてきたが、近年は環境会計をはじめとして様々な観点で環境 負荷や環境配慮を測定する新たな視点が定着し始めている。しかしながら、企業と してどのようにこれらの情報を積極的に活用し、環境経営戦略を策定しうるのかに ついては検討の余地が残されている現状である。
企業経営は、その時代の状況に応じた意思決定の連続であるが、将来の世の中の 動向や企業の存在意義などを常に意識しながら継続的に価値を提供しつづける経済 活動であるといえる。慢性的な人口増加や新興国を中心とした急速な経済成長や都 市化などから派生する社会問題として、経済的な不確実性と常に直面している。ま た、同時に、環境汚染をはじめ地球規模での資源枯渇や温暖化などの環境問題も深 刻化しつつある状況である。
このような社会の動向のなかで、近年においては具体的な事業活動に影響を与え るさまざまな要因変化が考えられる。経済活動においては、人口構造の変化や新興 国マーケットの台頭により消費者層自体がこれまで以上に大きく変わりつつある。
また、昨今の画期的なネットワーク技術の革新により社会全体もあらたな社会構造 が構築されつつある。これらの変化は確実に産業構造そのものに刺激を与え、企業 活動においても常に新たな事業の創出なくして事業を継続できない状況といえる。
地球温暖化などの環境問題についても、企業への要請はさらに高まり、物言う ステークホルダーといわれるように外部からの圧力は益々増加し、また各種 NGO からも社会的責任として寄付の要請や人権保護の要請が高まるなど、企業の対応は 今まで以上に考慮する必要があると考えられる。これからの企業活動は、これらの 適度な非財務的対策も講じつつ、継続的な経済的な成果を残していく必要に迫られ ている。変わりゆく世の中で、企業が他社に比べて存在意義を示すためにも、常に これを実現するためのイノベーションも欠かせず、その模索のためにも限られた資 源最適配分を実現するための的確な投資行動を続けなければならない。現在の企業 は図 1-1に示すような状況において、より先進的な環境経営という発想での戦略立 案が欠かせない状況に直面しているといえる。
1-2
図 1-1 本研究の背景
1.1.2 企業における環境経営戦略の必要性
それでは、このような状況において企業は環境経営戦略として何を具体的に検討 しなければならないのであろうか、その全体像を図 1-2に示す。企業への要請とし て市民や株主など多くののステークホルダーが存在するなか、国からは環境規制、
市民からは環境配慮などの対応や従業員への配慮や取引先との関係維持、また、株 主や金融市場からは出資に対する配当などの経済的対価がもとめられる。また、企 業自身は日々の事業活動において継続的な企業価値を高めていくことを目指す必要 があり、ここで企業はこれらの要請に対していかにバランスよく対応できるかが重 要といえる。必要となる要件を4つに整理すると、まず、高い企業価値を維持でき ること、環境政策と財務のバランスが取れること、最適な資源配分ができること、
また、環境配慮企業として選定されること、について言及していく必要があるとい える。
環境経営戦略の動向分析においては、これらの要件に対して必要となる情報を定 量化し、体系的な手法として整理していく必要があり、このように環境、財務、イ ノベーションなどの状況把握をできることで、企業内のみならず、外部においても より有効なSRIファンドの評価も可能となりえる。
1-3
図 1-2 環境経営戦略の全体像 1.1.3 環境経営戦略の分析に関する動向と従来研
環境経営に関する研究はこれまで内外で様々な取り組みがなされてきている。
環境経営戦略の動向分析を構造的に検討するにあたり、先の要件に照らし合わせ、
高い企業価値を維持する企業の特性、環境要件と財務のバランスの関係、環境投資 とイノベーションの関係、そしてSRI選定企業の特性の4つの領域における従来研 究についてその内容を以下のとおり整理している。
(1)高い企業価値を維持する企業の特性にかかわる従来研究
高い企業価値を維持する企業の環境と財務パフォーマンスの関係については、環 境規制がイノベーションを誘発して企業競争力を高めるというポーター仮説をはじ め、既にこれまで内外で多数の報告がなされている。そのなかで、環境と財務のパ フォーマンスは双方で正の相関があるという説と、パルマーなど否定的な報告も存 在しているのが現状である。この領域では多種多様なテーマでの実証がなされてい るが、現時点では依然として体系として確立しているとはいえない状況であり、関 連する従来研究を表 1-1に示す。
それぞれの論点を整理してみると、最初のPorter、Palmer et al.(1991, 1995)によ れば、環境規制が適切に設計されると費用節約・品質向上をもたらすような技術革 新を刺激し企業競争力は高まるという説を主張している。また一方で、Parmer, Oats and Portney (1995)では、企業は利潤の最大化を目指すものであり、環境負荷低減の 技術があったとしても利潤を下げるものである限り採用されない、新技術で利潤を 高める事はありえず厳しい規制遵守は企業にとって費用を高め利潤を減少させると いうような否定的な議論もなされている。
また、さまざまな仮説において過去データを使用して実証分析した報告もいくつ か確認することができる。Russo, M.V. and P.A.Poits (1997)は仮説として、環境パ フォーマンスは財務パフォーマンスにプラスの影響を及ぼし、環境パフォーマンス 変数の導入により相関係数は有意に改善、また産業成長率が高いほど環境パフォー
1-4
マンスの財務パフォーマンスに及ぼす影響が確実になるということを実証において 明らかにした。また、Konar,S.,and M.A. Cohen (2001)は、環境パフォーマンス(無 形資産価値)は財務パフォーマンス(有形資産価値)にプラスの影響を及ぼす。特 に化学、紙、金属などの産業が環境パフォーマンスの向上が企業業績向上に大きく 影響を与えると仮設を設定し、実証により明らかにした。その他にも中尾悠利子、
天野明弘、松村寛一郎、玄場公規、中野牧子 (2004)では、企業の環境への取組がコ スト要因の認識からもっとも重要な戦略のひとつとしての位置付けへと変化しつつ あり、同時に市場の側も高い環境パフォーマンスが企業価値を高める要因として評 価するようになるのではないかと提言している。
表 1-1 環境対策と財務の関係にかかわる従来研究
年度 研究題名 研究者 概 要
1991 America’s Green Strategy
Porter 、 Palmer et al.
環境規制が適切に設計されると費用節約・品 質向上をもたらすような技術革新を刺激し企業 競争力は高まる。
1995
Tightening Environmental Standards
Parmer, Oats and Portney
企業は利潤の最大化を目指すものであり、環 境負荷低減の技術があったとしても利潤を下 げるものである限り採用されない、新技術で利 潤を高める事はありえず厳しい規制遵守は企 業にとって費用を高め利潤を減少させる。
1997 A
resource-based Perspective on Corporate
Environmental Performance and Profitability
Russo, M.V.
and P.A.Poits
環境パフォーマンスは財務パフォーマンスにプ ラスの影響を及ぼし、環境パフォーマンス変数 の導入により相関係数は有意に改善、また産 業成長率が高いほど環境パフォーマンスの財 務パフォーマンスに及ぼす影響が確実になる。
2001
Does the market value
environmental performance?
Konar,S.,and M.A. Cohen
環境パフォーマンス(無形資産価値)は財務パ フォーマンス(有形資産価値)にプラスの影響 を及ぼす。特に化学、紙、金属などの産業が環 境パフォーマンスの向上が企業業績向上に大 きく影響を与える。
2004
環境パフォーマン スと財務パフォー マンスの関係性:
日 本 企 業 に つ い ての実証分析
中尾悠利子、
天野明弘、松 村寛一郎、玄 場公規、中野 牧子
企業の環境への取組がコスト要因の認識から もっとも重要な戦略のひとつとしての位置付け へと変化しつつあり、同時に市場の側も高い環 境パフォーマンスが企業価値を高める要因とし て評価する。
(2)環境政策と財務のバランスに関する従来研究
また、同様に環境要件に基づく政策と財務をいかにバランスとるかという論点に ついてのサマリーを表 1-2に示す。Klein and Rothfels (1999)は、新技術の導入は費 用増大による価格上昇からシェア減少つまり利潤が減少するが、汚染物質を排出す る投入要素の節約や独占企業が生産拡大により参入を阻止するような場合には利潤 が高まることがありえる。というものや、またMohr, R.D. (2002)では、個々の企業
1-5
による技術革新投資において効果は限定的であるものの、規制に基づく産業全体で の適用は長期的には相乗効果をもたらし一定の効果を期待することができるとして いる。
さらに、Orlizky, M., F.L.Schmidt and S.L. Rynesy, C.J. (2003)では、環境・財務 パフォーマンス相互の相関は明らかであり環境基準の優れる企業は収益率が優れて いる。環境規制の法遵守企業は株価企業価値の成長で優れている。汚染防止技術革 新投資は株価収益率を押し上げ、土壌汚染・化学物質の漏出・原油流出要因は環境 面のマイナスを加重する。環境パフォーマンスの改善は財務指標を改善するが環境 賠償責任の開示が不適切な場合マイナスを加重するので先進的環境管理戦略は財務 パフォーマンス評価につながるとしている。
また、国内での実証の観点からは中尾 他(2005)においては、環境政策の推進によ り環境パフォーマンスが財務パフォーマンスに影響するとすれば規制的手法での政 策の推進による効果と情報的手法による効果の2つの力の総合的な結果であると考 えられるとまとめている。
表 1-2 環境要件におけるパフォーマンス影響要因に関する従来研究
年度 研究題名 研究者 概 要
1999
Can Environmental Regulation of X-Inefficient Firms Create a Double Dividend?
Klein and Rothfels
新技術の導入は費用増大による価格上昇からシェア 減少つまり利潤減少するが、汚染物質を排出する投 入要素の節約や独占企業が生産拡大により参入を 阻止するような場合には利潤が高まることがありえ る。
2002 学習効果と外部的な
規模の経済 Mohr, R.D.
個々の企業による技術革新投資において効果は限 定的であるものの、規制に基づく産業全体での適用 は長期的には相乗効果をもたらし一定の効果を期待 することができる。
2003
Corporate Social and Financial
Performance
Orlizky, M., F.L.Schmid t and S.L.
Rynesy, C.J.
環境・財務パフォーマンス相互の相関は明らかであり 環境基準の優れる企業は収益率が優れている。環 境規制の法遵守企業は株価企業価値の成長で優れ ている。汚染防止技術革新投資は株価収益率を押し 上げ、土壌汚染・化学物質の漏出・原油流出要因は 環境面のマイナスを加重する。環境パフォーマンスの 改善は財務指標を改善するが環境賠償責任の開示 が不適切な場合マイナスを加重するので先進的環境 管理戦略は財務パフォーマンス評価につながる。
2005
環境政策が企業の環 境・財務パフォーマン スの関係に及ぼす影 響
中 尾 悠 利 子、中野牧 子 , 天 野 明 弘、國部克 彦、松村寛 一郎、玄場 公規
環境政策の推進により環境パフォーマンスが財務パ フォーマンスに影響するとすれば規制的手法での政 策の推進による効果と情報的手法による効果の2つ の力の総合的な結果であると考えられる。
1-6
(3)環境投資とイノベーションの関係に関する従来研究
環境投資とイノベーション効果の関係についてはアルパイやキャンベルが排出権 売買など環境に関する規制が強まると革新投資が促される可能性を提示し、ポップ は規制の有無によって革新の条件は変わり、研究開発投資が大きいほど利益を上げ る可能性が高いとしている。しかしながら、現時点においても不確実性が伴うこと や、収集データの定量化が困難まこともあり、ここも標準的なモデルの確立にまで は至っていない状況といえ、関連する従来研究を表 1-3に示す。
Murphy, C.J. (2002)のように、環境・財務パフォーマンス相互の相関は明らかで あり環境基準の優れる企業は収益率が優れており、環境規制の法遵守企業は株価企 業価値の成長で優れている。汚染防止技術革新投資は株価収益率を押し上げ、土壌 汚染・化学物質の漏出・原油流出要因は環境面のマイナスを加重する。環境パフォ ーマンスの改善は財務指標を改善するが環境賠償責任の開示が不適切な場合マイナ スを加重するので先進的環境管理戦略は財務パフォーマンス評価につながる。とい うような規制とイノベーションの関係を肯定するような議論が続いている。また、
環境と経済の循環という観点においては、Alpay (2001)より、排出権売却利益のため に削減を強化する企業がありえる。また規制が強まると権利価格が高騰することか ら革新投資が促進される。(排出権利益の目的においては規制そのものが技術革新を もたらすともいいきれない)と報告されている。さらに、Ambec,S., and P. Barka (2002)では、組織の失敗モデルから①研究開発費によって高生産性低環境負荷技術 が得られる確立が高いほど②投資が成功した場合の生産性向上率が高いほど③環境 規制による生産量削減に比べて企業全体としての利潤低下が大きくないほど、この ような状況が生じる可能性が高い。Campbell (2001,2003)では、所有と経営の分離 に伴い、不確実な革新投資による経営者の期待報酬が規制後に高まる期待から環境 政策の結果として技術革新が実現される。利潤は規制前とは相対的に高まる(とも いいきれない)。としている。
生産関数モデルによりシミュレーションした例では、Popp, D. (2005)が、環境規 制が行われている状況では研究開発投資を行う方が利潤は高く、規制がない場合に は研究開発投資を行わないほうが利潤の平均が高くなる。また革新的に研究開発支 出が大規模なほど高い利益をあげる可能性が高いとし、Batz,C., and A.Plattner (2000)では、資源効率性を高め環境リスクを下げると財務パフォーマンスが向上す る。環境費用を内部化しない企業は低評価され、法遵守を超えた先見的環境行動を 行う企業にはプレミアムが支払われるにいたる。環境以外の社会パフォーマンスに ついては有意な関係はみられない。また、Molloy, L., H.Erekson and R.Gorman (2002)では、環境パフォーマンスはリスクや将来のキャッシュフローから株価収益 率に影響を与える、経営品質は環境・財務の双方に影響があり相互関係がある。パ フォーマンスの改善は利潤の増加よりはむしろ組織の高度化、意思決定の透明化、
外部の信頼性向上などの要因が重要であるとしている。
1-7
表 1-3 環境投資とイノベーションの関係に関する従来研究
年度 研究題名 研究者 概 要
2002
Technical
Change, External Economics, and the Porter Hypothesis
Murphy, C.J.
環境・財務パフォーマンス相互の相関は明らかであり 環境基準の優れる企業は収益率も優れている。環境 規制の法遵守企業は株価企業価値の成長で優れて いる。汚染防止技術革新投資は株価収益率を押し上 げ、土壌汚染・化学物質の漏出・原油流出要因は環 境面のマイナスを加重する。環境パフォーマンスの改 善は財務指標を改善するが環境賠償責任の開示が 不適切な場合マイナスを加重するので先進的環境管 理戦略は財務パフォーマンス評価につながる。
2001 Can
environmental Regulations be Compatible with Higher Int ‘ l Competitiveness
Alpay
排出権売却利益のために削減を強化する企業があり える。また規制が強まると権利価格が高騰することか ら革新投資が促進される(排出権利益の目的におい ては規制そのものが技術革新をもたらすともいいき れない)。
2002 組織の失敗
Ambec, S., and P.
Barka
組織の失敗モデルから①研究開発費によって高生産 性低環境負荷技術が得られる確率が高いほど②投 資が成功した場合の生産性向上率が高いほど③環 境規制による生産量削減に比べて企業全体としての 利潤低下が大きくないほど、このような状況が生じる 可能性が高い。
2001 /200 3
CFC Prohibition and the Porter Hypothesis
Campbe ll
所有と経営の分離に伴い、不確実な革新投資による 経営者の期待報酬が規制後に高まる期待から環境 政策の結果として技術革新が実現される。利潤は規 制前とは相対的に高まる(ともいいきれない)。
2005 革新投資の不確
実性 Popp, D.
環境規制が行われている状況では研究開発投資を 行うほうが利潤が高く、規制がない場合には研究開 発投資を行わないほうが利潤の平均が高くなる。また 革新的に研究開発支出が大規模なほど高い利益を あげる可能性が高い。
2000
Socially Responsible Investment: A Statistical
Analysis of Returns
Batz,C., and A.Plattn er
資源効率性を高め環境リスクを下げると財務パフォ ーマンスが向上する。環境費用を内部化しない企業 は低評価され、法遵守を超えた先見的環境行動を行 う企業にはプレミアムが支払われるにいたる。環境以 外の社会パフォーマンスについては有意な関係はみ られない。
2002
Exploring the Relationship between Environmental and Financial Performance
Molloy, L., H.Ereks on and R.Gorm an
環境パフォーマンスはリスクや将来のキャッシュフロ ーから株価収益率に影響を与える、経営品質は環 境・財務の双方に影響があり相互関係がある。パフォ ーマンスの改善は利潤の増加よりはむしろ組織の高 度化、意思決定の透明化、外部の信頼性向上などの 要因が重要である。
1-8
(4)SRI 選定企業の特性に関する従来研究
SRI の領域での研究に関しては、特に国内においては依然広く浸透していないと いう状況にあり、従来研究も実証などを含めると限定的な状況である。花田(2004) の報告書は国内企業の社会的責任についての開示状況の調査結果を行なっており、
未成熟状況について報告をしている。一方、海外においては GS SUSTAIN (2008) などに見られるように企業の環境施策から、さらに社会(CSR)に発展させた体系
をESG(環境、社会、ガバナンス)として提唱し始めている。その後国内において
も ESG 視点での SRI に関する報告がいくつか見受けられるようになっているが、
その概要を表 1-4に示す。
表 1-4 SRI 選定企業の特性に関する従来研究
年度 研究題名 研究者 概 要
2004
日本におけ る環境報告 書の動向 – 企業の社会
的 責 任
( CSR) の 観 点からの考 察-
花 田 眞 理 子
日本の企業がトリプルボトムラインを包含するようなサ ステナビリティ報告書を公開する方向にあるが、日本 におけるステークホルターの期待の未成熟度合いに対 して問題提起を促している。
2008 GS
SUSTAIN:
Challenges in ESG disclosure and
consistency
Goldman Sachs Global Investment Research
市場は持続可能な差別化要因による利益と報酬で企 業を評価している。GS SUSTAIN では新興業種の探索 と長期的勝者を選択する ESG を含めている。ESG 単体 と財務指標や株価との相関はないものの興味深いパタ ンが発見された。本方法論によれば 72%の成功率でパ フォーマンスを創出するとしている
2009
企業価値分 析 に お け る ESG 要因
宮井博他
アナリストの視点から ESG(環境、社会、ガバナンス)に 関する認知アンケートをまとめ、CSP(ソーシャルパフォ ーマンス)と CSFP(ファイナンシャルパフォーマンス)の 関係を整理し、投資プロセス上での ESG 活用に関する 課題と改善提案がなされている。
2010
SRI 関連株 の中長期パ フ ォ ー マ ン スの特徴に ついて
白須洋子
SRI の投資対象にはハイクオリティーな優良企業が多 く、中長期投資の観点からみると、金融危機等を経験 しても SRI 関連企業の株式リターンは相対的に高くなっ ている。金融危機等で経済が大きく変動した時期、SRI 関連企業の超過リターンも大きく低下したが、いわゆる 優良企業が相対的に良いパフォーマンスを実現させて いるケースもある、また、エコ等では SRI スクリーニング が株式リターン向上に貢献している。
2010
社会的責任 投資(SRI)フ ァンドのパフ ォ ー マ ン ス
浅 野 礼 美 子、佐々木 隆文
本研究は日本における SRI ファンドのα(リスク調整後 のリターン)が伝統的ファンドよりも劣っているかどうか 明らかにするための検証をおこなった。その結果 SRI フ ァンドのαは統計的にゼロから有意に異ならないこと
1-9 に 関 す る 実
証研究
や、同一運用機関の伝統的ファンドのαと比較しても 統計的に優位に異ならないことが示唆された。わが国 では SRI ファンドのパフォーマンスへの懸念が根強い が本稿の分析結果では既存の SRI ファンドのパフォー マンスが必ずしも伝統的ファンドに劣っていないことを 示唆している。
2010
ESG 情報開 示 の 課 題 と 今後の動向
小 黒 由 貴 子
企業の ESG 情報は CSR 報告書など自主的な文書で開 示されてきたが、同業種内でも他社比較しにくいことや 社会的側面にも焦点があたりだしたことなどを背景に 開示ガイドラインの改訂・新設や財務情報と統合した 報告書の検討が始まっている。欧米では投資家保護な どのために年次報告書などでの義務的な開示が要請 されるようになってきており開示のあり方については今 後も議論が続いている。
1.1.4 環境経営戦略の動向分析で明らかにすべき事項
これらの従来研究の内容を体系的に整理したうえで、本研究では、個々の企業が 環境経営戦略を検討するにあたり明らかにすべき事項を具体的に定義していく必要 があり、その全体像を図 1-3に示す。
持続可能社会に向けての企業の環境経営戦略の高度化を目的とし、それに貢献す るための4つの要件を先に示してきた。これらの要件に対して戦略テーマをそれぞ れ掲げている。さらに、動向分析として実態をより体系的に把握するために、各企 業の属性や業績の種別ごとに明示すべき事項を丸印で示した。
企業属性とは、その対象企業が属する業種や産業グループ、また個別企業として その企業規模、HD(ホールディングス)企業、あるいはSRI選定企業などの形態や 特性を含めるものとする。さらに、業績に応じて特性を把握する目的から、企業価 値ランクや時系列での推移などにも着目して分析を行う。
図 1-3 動向分析で明らかにすべき事項
HD SRI
1-10 1.2 本研究の目的
本研究では、個々の企業における環境規制や環境配慮などの対策に関する指向に 対して、企業の過去データを使用して実証分析の結果に基づいた適切なモデル化や 定量化のための手法を開発し、これらを統合することで環境経営戦略立案にまつわ る動向分析に関して一定の有用性があることを明らかにすることを目的とする。
企業の環境経営戦略の構成要因の全体像を把握し、広く市民という観点では、環 境対策をはじめとした企業の社会的責任に関する要請や期待に対応するかであり、
一方株主などの出資者からは、投資に対してのリターンをいかに維持するかを要請 される、という要件や構造において、企業側としては、これらの要請や期待という ものがどのようなものであるかを把握し、それぞれの期待度合いと提供レベルがど のように測られているのかを整理しておかなければならない。既に定量的に定義さ れるものについては,ステークホルダーの反応から期待値を中心として対応できる ようコントロールしていると思われるが、双方において定量化できないものは極め て感覚的な対応に終始している可能性が考えられ、これらをいかに測定し、最適化 できるかが求められている。
これらの要請や諸規制に応えるために、その要件を整理し現状の対応レベルを把 握する必要がある。また、株主などの出資者への対応に関しても、いかに有利な資 金調達を促進できるかとう観点でその現状や対応の可能性を確認し、体系化してお く必要がある。これらの外部への対応に加え、内部要因として企業価値自体を高め る施策として、環境パフォーマンスと財務パフォーマンスの関係性を把握したうえ で、企業としての最適な資源配分や投資計画がなされる必要がある。
環境対応と財務パフォーマンスはトレードオフの関係にあるなか、企業が最終的 に価値を高めるための最適行動を促すのが環境経営戦略であるとすれば、企業がど のような方向性でどのよう戦略オプションを選択するかが先決事項となる。利益追 求指向であれば短期的に財務指標を高めるものの、長期的には環境配慮を怠ること で企業価値を毀損する可能性がある。また、過度の環境配慮を指向し過大投資をす ることは出資者の短期的配当を損ねる可能性がある。このような状況において最終 的に企業が向かう方向性を示し、動向分析の結果からバランスのとれた最適な解を 見いだせる状況を確立することを目指している。
1.3 本論文の構成
本論文は、図 1-4に示すとおり6章から構成されている。
第1章では主に本研究の背景・目的を明確にする。世界規模でみれば新興国を中 心とした人口増加、経済成長や都市化現象が起きると同時に資源枯渇や環境汚染、
地球温暖化などの環境問題に直面している時代である。現在の企業が直面するこの ような経営環境の中で、社会との関わりなどについてその推移を振り返り、どのよ うなステークホルダーがいかなる要請を求めているのか、また、将来の持続可能社 会における企業の役割ということでの要件と、本研究の必要性についてまとめてい る。
第2章では、企業活動の成果としての環境パフォーマンスと財務パフォーマンス がどのように影響し合うのかの関係性を明らかにすべく、国内の製造業約400社 の過去6年間の実績データを用い、様々な視点から分析をすることで従来モデルの 追試と検証の中で各企業の環境経営に関する特性や位置づけを明らかにすることを 試みている。分析の結果から、従来研究での傾向を確認するとともに、個々の企業
1-11
が環境配慮指向と企業価値向上の関係において大きく4つのパタンで分類されるこ となどについて検証を行った。
第3章では、企業の環境に関する要求事項を確認し、関係する要素を抽出するこ とで相互の影響状況を明らかにしている。環境対策には規制に対する汚染対策や資 源循環対策や、それを製品レベルにまで組み込むというような具体的なものの他に、
企業として環境配慮を指向していることをステークホルダーに対して主張する為の 情報発信的施策も考えられる。これらのモデルの構築にあたっては潜在変数を扱う べく共分散構造分析手法を適用し、企業の財務指標に対して、環境規制対応要因が マイナスの影響で、環境情報開示要因がプラスの影響をもたらすことを確認した。
また、要件や対応方法は業種毎で異なり、それぞれの特徴を明らかにすると同時に、
企業価値向上に向けての施策の検討に有用な情報として提供できる考え方である。
第4章では、環境経営戦略の立案にあたり、どのような投資行動が高パフォーマ ンスをもたらすのかについて、その要因をモデル化し、企業属性毎に検証すること でその特性を明らかにしている。また、同様にこれらの投資行動や環境対策がどの ようにイノベーション効果として影響しているかについても着目している。モデル の潜在変数としてここでは環境対策、投資行動、イノベーション効果および財務パ フォーマンスの4つを設定し、双方の影響度合いの組み合わせとして19通りの基 本パタンについて企業属性毎のシミュレーションを行うことで特性を明らかにしよ うとした。このなかで、企業規模においては、大企業が環境対策に注力する一方で 中堅企業は投資行動がマイナスの財務影響を及ぼしていることが確認された。また、
業種分類において基礎素材型業種は大規模企業とモデルが類似しており、双方とも にマイナス影響をだしつつも環境対策を施しており、組立加工型業種と中堅企業は 双方共に投資行動が財務パフォーマンスに対してマイナスの影響をもたらしている などの類似した特性を観察することができた。
第5章では、環境経営戦略策定にあたり、検討しておくべきより有利な外部資金 調達に関する方針についての実態を、社会的責任投資に選定されているか否かとい う観点で明らかにしようとしている。まず、財務・環境評価項目での比較と同時に 企業価値の時系列での推移について選定企業がパフォーマンスを上回っていること を確認した。また、企業価値を従属変数として双方について各評価項目での回帰分 析を行ったところ選定企業は製品配慮や温暖化対策により影響を及ぼしているのに 対して、非選定企業は利益率や研究開発費売上比率が影響を及ぼしていることが解 った。このことは選定企業が感興対策などの長期的視点での施策が影響しているこ とと一方で、非選定企業は利益などの短期的視点での対策が中心になる傾向にある ことを示している。さらに、どのような企業が選定される要因であるかを決定木で の分析をしたところ、やはり比較的投資資金に余力のあると思われる大規模企業を 中心として選定される割合が高いが、一方で小規模であっても割合は低いものの環 境要因を含めた要因の中で選定されるケースの特性を検証することができた。
第6章では、本研究の結論と今後の展開を述べる。ここまでは検証してきた環境 経営戦略を策定する為の要件を統合的に捉えてきたが、今後、企業の目指すべき最 適施策を検討する支援システムとして構成する必要があると考えている。具体的な 内容としてここでは境対策や財務利益確保について高パフォーマンスを維持する企 業の特性、ステークホルダーに向けての情報発信の必要性とその効果、環境対策に 対しての最適な投資配分の検討、そしてより有利な資金調達を促すための方針など の4つの要件を取り上げてきた。また、企業が目指すべき方向としては大きく環境
1-12
対応、財務利益確保、そして企業価値向上の3つの要素をそれぞれの最適レベルで いかにバランスをとれるかという点であると考えられる。このようなシステムでは 各企業の特性や前提条件に応じてその環境戦略立案方針を決定するにあたり、具体 的にどのような対応施策を講じるべきかの方向性を明らかにする必要がある。前提 条件としては業種、企業規模(売上、従業員数)、海外売上比率、ホールディングス 形態などの企業特性などがあげられる。また、各企業特有の環境戦略立案にあたっ ては、環境対策指向、バランス指向、あるいは利益重視指向など企業としての方針 を明確に決めておく必要がある。これらの情報から対応施策として、個別の環境対 策に対する対応レベル、情報開示のレベル、環境投資への資源配分、資金調達方法 の検討などの施策の決定を促進していくことを想定している。
環境経営戦略の策定をより実践的に支援するために、これまで扱えきれていなか ったような多種多様なデータや十分な過去情報も取り込み、更に実態に即したモデ ルの検証と、支援システムとして精度向上に向けての研究を継続し実務に活用し、
継続的社会に貢献しうるツールの確立を目指したいと考えている。
図 1-4 本論分の構 成
第 2 章
環境と財務の高パフォーマンス企業に
関する特性の解析
第2章 環境と財務の高パフォーマンス企業に関する特性の解析 ··· 2-1 2.1 目的と従来研究 ··· 2-1 2.1.1 研究の目的 ··· 2-1 2.1.2 従来研究の概要 ··· 2-1 2.2 環境と財務の両パフォーマンスに関する検証 ··· 2-3 2.2.1 検証アプローチ ··· 2-3 2.2.2 サンプルデータについて ··· 2-4 2.2.3 業種について ··· 2-5 2.2.4 検証結果 ··· 2-6 2.3 環境経営に関する個別企業の状況の類型と考察 ··· 2-8 2.4 企業属性ごとでの特性の解析 ··· 2-9 2.4.1 業種別での特性 ··· 2-9 2.4.2 産業グループ別での特性 ··· 2-13 2.4.3 企業規模別での特性 ··· 2-13 2.4.4 企業付加価値ランク別での特性 ··· 2-15 2.5 時系列での特性の解析 ··· 2-15 2.5.1 個別企業の時系列推移 ··· 2-15 2.5.2 純粋持株会社の時系列特性 ··· 2-16 2.5.3 年度別での状況推移 ··· 2-17 2.6 まとめ ··· 2-17 図 2-2 検証アプローチの概要 ··· 2-4 図 2-3 業種および産業グループ ··· 2-5 図 2-4 個別企業ごとの現状把握 ··· 2-9 図 2-5 業種ごとの環境評価 ··· 2-10 図 2-6 環境評価項目ごとの比較 ··· 2-10 図 2-7 業種別での個別企業の状況 ··· 2-11 図 2-8 業種別での業種比較 ··· 2-12 図 2-9 業種別での分類 ··· 2-12 図 2-10 産業グループ別での個別企業の現状 ··· 2-13 図 2-11 企業規模別評価比較 ··· 2-14 図 2-12 企業規模別での特性 ··· 2-14 図 2-13 企業付加価値ランクでの特性 ··· 2-15 図 2-14 個別企業の時系列推移 ··· 2-16 図 2-15 純粋持株会社の時系列での比較 ··· 2-17 図 2-16 年度別での状況推移 ··· 2-17 表 2-1 従来研究との関係性 ··· 2-3 表 2-2 記述統計(2010 年度) ··· 2-5 表 2-3 環境と財務の相関係数(2010 年度) ··· 2-6 表 2-4 特性区分ごとの環境指標との関係(2010 年度) ··· 2-7 表 2-5 産業グループごとの重回帰分析の結果 ··· 2-7 表 2-6 主成分分析の成分行列 ··· 2-8 表 2-7 企業規模の定義 ··· 2-14
表 2-8 純粋持株会社との指標価格(2007 年度) ··· 2-16
2-1
第2章 環境と財務の高パフォーマンス企業に関する特性の解析
2.1 目的と従来研究
2.1.1 研究の目的
企業は不確実な事業環境やさまざまな規制に常に直面しながらも継続的に一定の 成果を残さなければならない状況にある。新興国の進展やそれに伴うグローバルでの 経済や社会問題から新たな規制が科せられ、環境問題に関しても企業が倫理的観点か ら社会的責任を果たすなどの要請が強まりつつある。このような状況において、いか に最適な意思決定をしていくかが経営者にとって重要な役割となっている。財務利益 の確保はこれまでも会計制度の中で共通の指標として計られてきているが、環境関連 についての企業活動の評価は限定的な状態であるなか、いくつかの従来研究がなされ てきた状態である。
一般には財務実績と環境パフォーマンスにトレードオフの関係にあるが、環境規制 が技術革新と企業競争力の増加を刺激し、新たなイノベーションと企業価値向上がな されるというポーターの仮説についての議論がさまざまな観点よりなされている。本 研究は、これまで議論されてきている仮説に対して、国内で上場している製造業の 2005年から2010年の公開データにより追試による検証を行っている。
以下従来研究の概要をまとめ、第2節では検鏡仮説野設定と分析のアプローチにつ いて説明している。また、第3節では検証結果とそれぞれについて考察を行い最終節 はまとめである。
2.1.2 従来研究の概要
環境パフォーマンスと財務パフォーマンスの関係
(1)
従来研究のひとつとして中尾ら(2004)の国内データでの実証では、企業の環境へ の取組が市場においても企業価値に対して好影響をおよぼしているという仮説を実 証している。データは財務パフォーマンスについて売上や研究開発比率などの一般的 な財務指標で、環境パフォーマンスについては日経経営度調査の結果を用い、企業の 収益性や市場価値などへの影響を重回帰分析や時系列も含めた手法で検証をおこな っている。結果として環境パフォーマンスと財務パフォーマンスの双方向での影響が 確認されており、環境政策が普及し各社の公的、自主的な取組が相互促進することで 環境と経済の好循環がうまれていることを示唆していると結論づけているが、その概 要を図 2-1に示す。
データとアプローチ
(2)
(a)検証データ
分析内容としては製造業19業種に属する国内上場企業278社で1999年から2003 年の5年間を対象としている。被説明変数として、企業収益性で総資産利益率(ROA)、
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図 2-1 環境と財務の好循環
2-2
無形資産値の代理変数としてトービンq-1、また 1 株当たり営業利益を使用して いる。また、財務パフォーマンスを表す説明変数としては、公開財務諸表から企業規 模として連結売上高、成長力として増収率(対前年比)、消費者関連度として広告宣 伝比(広告宣伝費/売上高)、研究開発力として研究開発比(研究開発費/売上高)、負 債依存度として財務レバレッジ、そして売上資産比率(売上高/総資産)を使用してい る。
一方、環境パフォーマンスの説明変数としては日経環境経営度調査の結果を使用し ている。主な調査項目としては国内・海外総合スコア、国内・海外運営体制、国内・
海外汚染リスク、国内・海外温暖化対策などが含まれる。
(b)検証アプローチ
まず、以下重回帰分析により諸要因の影響とともに環境パフォーマンスが財務パフ ォーマンスにプラスの影響を及ぼしているかを検証する。
引き続き、時系列データとクロスセクションデータを統合した標本から環境・財務 パフォーマンス間の相関関係を以下グレンジャー因果性テストで検証する。
結論と考察
(3)
本検証において得られた主な結果は以下のとおりであり、これらの結果から、経済 学的には環境問題を内部化するための公的取組と自主的な取組が相互促進的に作用 しながら市場メカニズム全体として改善をはかる方向がみえつつあることを示唆し ている。と提唱している。
環境パフォーマンスが財務パフォーマンスに影響をあたえ、逆の関係も裏づけられた。
またこれは比較的最近になって明確な傾向がみられる。
同様に、これはパフォーマンスが上位の企業だけでなく日経環境度調査の対象企業
には一般的に観察される。
ROA, トービンq-1、1 株当たり営業利益などの指標は検証において有用であるとい
える。
環境度調査は海外のほうが、パフォーマンスをよりよく反映している。
環境度調査の 10 ポイント向上は長期的に 40~60 億円の無形資産価値向上を促す。
財務パフォーマンス=(定数項)+売上高+増収率+広告宣伝費/
売上高+研究開発費/売上高+財務レバレッジ+売上高/総資産
+環境経営度スコア+誤差項 (1)
財務パフォーマンス=(定数項)+Σβ(財務パフォーマンス)+Σγ
(環境パフォーマンス)+誤差項 (2)
財務パフォーマンス=(定数項)+Σβ(財務パフォーマンス)+誤 差項 (2’)
F=[(RSS2-RSS1)/z]/[RSS1/(n-k)] (3)
2-3
2.2 環境と財務の両パフォーマンスに関する検証 2.2.1 検証アプローチ
従来研究で明らかにされた内容に基づき、ここでは国内でのより新しいデータを 用い基本的な確認を行うと同時に、環境経営戦略の実態をより詳細に把握するために 追加的な手法と切り口で解析した。従来研究では環境パフォーマンスと財務パフォー マンスの関係性を統計的に明らかにするのを主目的としているのに対して、本研究で は環境経営戦略の動向を把握するために、価値を高める企業の特性と属性ごとでの傾 向を明らかにすることを主眼としており、従来研究との主な対比を表 2-1に示す。具 体的な検証においては戦略の動向を把握する観点からいくつかの切り口で以下のと おりその特性を明らかにしていくこととし、その概要を図 2-2に示す。
個別データでの結果の妥当性
(1)
データの基本的な記述統計から、財務関連データと環境関連データでの相関をそ れぞれの要因間で確認する。さらに、企業属性毎での特性についても確認する。これ らの結果から以下の事項が妥当であることを確認する。
・ 環境および財務要因の間には正の相関が存在する。
・ 企業規模と環境指標には正の相関が存在する。
・ 純粋持ち株会社やグローバルを指向するような戦略性はより高いパフォーマンスを示 す。
合成指標による企業の特性分類
(2)
企業間の類似性を把握する為に主成分分析を行い、どのような項目において相違 が発生しているのかを明らかにすることで、環境経営に関する企業や業種毎でのパタ ン性を確認するものとする。
・ ・大きな企業規模や高い環境評価を持った会社群はその戦略性から企業価値を高める 傾向にある。
モデル構築による予測値の推計
(3)
企業価値はどのような要因が影響し合うことで構成されているかを分析するため に、企業価値を従属変数として、環境要因、財務要因そして企業のその他の基本属性 を多変量のステップワイズ法での線形回帰分析を実施しモデル化を試みる。
表 2-1 従来研究との関係性
比較項目 従来研究 本研究
目 的 環境パフォーマンスと財務パフォ
ーマンスの関係性を統計的に明ら かにする。
価値を高める企業の特性と属性ごと での傾向を明らかにする。
データ 環境は日経経営度調査、財務は
公開、国内製造業
従来研究とほぼ同様
対象期間 1999-2003 年の5年間 2005-2010 年の6年間
手 法 重回帰分析、グレンジャー因果性
テスト
相関分析、主要因分析、クラスタ分 析、重回帰分析
切り口 環境総合スコア上位下位 産業グループ、業種、企業規模、企
業価値、HD 企業、年度
結 論 双方向での影響が確認された。ま
た環境スコア上位のみならず下位 でも同様の傾向がみられた。
経営支援の有用な情報となりうるこ とを確認。
2-4
図 2-2 検証アプローチの概要 2.2.2 サンプルデータについて
使用するデータは国内上場の製造業の約400社を対象とし2006年から2010年 の6年間を含めており、環境関連指標は日経環境経営度調査の結果を使用し、企業の 環境対策に関する質問項目を大きく5つに分類し 100 点満点でスコアリングしてい る。5つの評価項目は、以下のとおり環境経営度、環境汚染対策、廃棄物資源対策、
温暖化対策、そして製品対策から構成されている。
(a)環境経営度:ISO など環境管理システムの導入、情報公開、環境教育など制度面に関 する設問を中心に構成、環境負荷削減への長期的な目標設定状況、および実効性を高め る取り組みの有無に関する設問で構成
(b)環境汚染対策:生物多様性対応、化学物質管理の状況、大気汚染対策、土壌汚染対 策、アスベスト使用状況などのテーマで構成
(c)廃棄物資源対策:生物多様性対応、化学物質管理の状況、大気汚染対策、土壌汚染 対策、アスベスト使用状況などのテーマで構成
(d)温暖化対策:主力商品の環境負荷低減対策状況、容器包装材への取り組みなどのテ ーマで構成(業種によって評価に使用する設問を決定)
(e)製品対策:事業活動で使用するエネルギー量、排出した温暖化ガスの排出量、物流段 階で排出する CO2 量等のテーマで構成
財務データや株価情報については、日経 NEED-FAME より主要項目も合わせて 抽出を行った。グローバル化を示す海外売上比率や純粋持ち株会社などの属性はダミ ーフラグとして設定した。また、企業価値は株価をベースとした市場価値から算出す るトービンのQ-1という指標を使用しており、市場での株価で算出される企業価値を
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2-5
意味し、企業売却時に総資産をどれだけ上回っているかという指標でゼロを基準とし てプラス・マイナスで価値の大きさをあらわしている。データの記述統計は表 2-2 に示したとおりである。
表 2-2 記述統計(2010 年度)
2.2.3 業種について
対象業種は国内製造業 19 業種であるが、業種ごとの特性を解析するにあたり、
類似する産業グループとして生活関連、基礎素材、加工組立の大きく3つに区分した 内訳を図 2-3に示す。製造業が中心でもあり約半分が加工組立型の企業となっている。
図 2-3 業種および産業グループ
2-6 2.2.4 検証結果
まず、環境系と財務系での各指標間の相関を表 2-3に示す。中の数値は上から相関 係数、次にその確からしさを表す有意確率、そしてNは標本数を表している。ここで 読み取れる特徴としては、まず、環境経営度を表す5つの評価指標間の相関は 0.55
~0.79 であり、いずれも高くなっています。また、ROA と市場価値を表すトービン
のQ—1との相関は高く(0.46)、企業の当期における財務成果である利益と、市場価値
とが関係していることが表れている。一方で、ROA と環境経営度の各環境指標との 相関は低く、環境経営への取り組みは短期的な事業上の業績とはあまり関係しないこ とが示されている。研究開発費売上比は環境指標のなかでも製品対策(0.21)および、
長期的市場価値(0.21)に影響をもたらしており、また、設備投資費売上比は環境指標 のなかでも相対的に汚染対策0.068)、短期成果であるROA(0.15)および長期的市場価 値(0.149)に影響をもたらしているといえる。
表 2-3 環境と財務の相関係数(2010 年度)
さらに企業規模、特許申請数、SRI採用数などの変数との関連も表 2-4に示した。
係数は全体的にそれぞれ0.3から0.5と高くはないものの、相関自体は有意であ り多少なりとも影響を及ぼしていることが見て取れ、解析により、さらに詳細を明ら かすることが可能と考えられる。
2-7
表 2-4 特性区分ごとの環境指標との関係(2010 年度)
最後に、企業価値(トービン Q-1)を従属変数に、残りの変数を独立変数にと り、変数増加ステップワイズ法による線形回帰分析により予測モデルを構築した結果 を表 2-5に示す。全体のモデルに対して産業グループごとに実施した結果を示してい るが財務要因の影響も大きいものの環境要因においても加工組立では環境経営推進 体制と資源循環、基礎素材は資源循環と温暖化対策などが企業価値に影響を及ぼして いるといえる。2009年度で組立加工を例にとれば予測式は以下のとおりとなる。
表 2-5 産業グループごとの重回帰分析の結果
加工組立: 企業価値(トービン Q-1) = -0.232 + 3.697 X 研究開発比 +3.604 X ROA + 0.0015 X 資源循環 + (-0.18) X 推進体制
2-8
2.3 環境経営に関する個別企業の状況の類型と考察
個別企業がどのような位置付けにあるかを確認するために、主成分分析で2つの主 成分を抽出した状況を表 2-6に示す。成分1は主に環境配慮に関する要因と売上など の企業規模に関する要因が含まれ、成分2は主に利益や企業価値など財務的な業績に 関する要因が多く含まれていることが確認できる。
表 2-6 主成分分析の成分行列
2009 年度の電機機器に固定し、さらに2つの主成分で散布図を描いたところ負 の相関を持ちつつ4つの特性に分類された。縦横双方の指標を両立させている第1象 限のいくつかの企業は戦略的な配慮がなされていると考えられる。第2象限の企業は 利益や配当などの財務指標面での指標において株主などのステークホルダーへの要 請に応えている現状が伺えるが、一方第4象限は環境配慮を十分に志向している反面 企業価値を毀損しているグループと考えられる。このように表現することで、各企業 の現状や目指すべき方向を明確にし、時系列での推移、業種内や他社との比較など、
支援ツールとしても定量的・視覚的に検討できるようになる。なお、個別企業のなか でも大規模企業を黒丸で示しているが主成分1である環境配慮系が高い傾向を示し ていることがわかる。
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2-9
図 2-4 個別企業ごとの現状把握
2.4 企業属性ごとでの特性の解析
2.4.1 業種別での特性 業種ごとの環境評価比較
(1)
次に業種ごとの特性を把握するために、先ほどの環境経営度調査の内容につき業種 ごとのスコアを図 2-5に箱ひげ図で示す。5つの指標で500点満点となり、箱ひげ の箱は 25%から 75%の範囲で、両端は10%と 90%の範囲を示す。横線は中央値で ある。環境ランクに関してはその特性から業種毎に大きく乖離があり、総合評価の中 央値では自動車、電機、石油などが上位に位置している。
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2-10
図 2-5 業種ごとの環境評価 環境評価項目ごとの比較
(2)
環境評価項目の内訳を同様に業種ごとに箱ひげ図で図 2-6に示す。鉄鋼業は環境経 営推進体制や温暖化対策などが平均を上回るのに対して、他の環境対策要因は下回っ ている。温暖化対策は自動車業界が、汚染対策は石油業界が大きく上回っており、ま た、資源循環対策については電機機器や軽工業などが配慮を高めている。全体的に加 工組立型産業は業種によりバラツキが大きいといえる。
図 2-6 環境評価項目ごとの比較
2-11 業種別での個別企業の現状
(3)
さらに業種別での個別企業の対応動向を解析するために2009年度で一部の業種で の個別企業の状況を図 2-7に示す。ここでは食品、医薬品、精密機器、窯業の4業種 を例として示しているが、食品は中心に集約し業種内でのバラツキが少なく、医薬品 は戦略的ポジションに多く存在している。精密機器と窯業においては各社でバラツキ が大きいといえる。また、医薬品を除いて業種にかかわらず大規模企業は環境配慮を 高めつつも企業価値の毀損傾向が伺える。
図 2-7 業種別での個別企業の状況 業種別での状況比較
(4)
すべての業種について各象限の企業数と割合を図 2-8に示す。理想的と思われる第 1象限には医薬品や精密機器が位置付けられているが、医薬品については金融危機後 の経済低迷状態においても比較的影響が少なかったことで市場価値が維持できてい たことと、精密機器については各社で業績に広くバラツキがあるなかでバランスを保 つ企業が多く存在していたと考えられる。
2-12
図 2-8 業種別での業種比較 業種別での分類(類似度)
(5)
環境・財務それぞれの要因でクラスタ分析により業種ごとの分類を実施しました結 果を図 2-9に示す。業種は基礎素材型、組立加工型、生活関連型で大きく3つの産業 グループに分類し、業種間での類似性の確認をしたところ環境、財務単独では分散さ れていたものが、両者の統合においては類似度が高まる傾向となり、このことから産 業グループごとに類似した行動特性があることが考えられる。
図 2-9 業種別での分類
2 4 3
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2-13 2.4.2 産業グループ別での特性
産業グループ別の個別企業の現状
(1)
2009 年に固定して個別企業を3つの産業グループごとに分割したグラフを図 2-10に示す。加工組立型は先の環境評価でばらついていたことも含め各象限全体に大 きく分散しており、第4象限の毀損傾向も多くみられる。生活関連は平均的で各象限 に平均的に分散しており、基礎素材については他と比べて戦略不備とされる第3象限 にも多く存在している状況が確認できる。
図 2-10 産業グループ別での個別企業の現状 2.4.3 企業規模別での特性
企業規模による各要因の状況を確認するにあたり、表 2-7に示すとおり、企業の 連結売上によって5つのグループに分け、それぞれの要因の標準値の平均を図 2-11 に示す。売上2.5兆円規模を最上位とし、以下5つに分類しています。①全体的には 企業規模と評価ランクは正の相関にありますます。企業規模が大きいほど環境・財務 ともに高い評価をつけています。そのなかで②財務系指標では最上位の企業規模にお いて急激に数値が上回り、③環境系指標では資源循環が下位以下から大きく下回るな どの傾向が見られました。ここで売上1000億円くらいを境にして対策が極端に低下 するなどの傾向が確認された。
2-14
表 2-7 企業規模の定義
企業規模グループ 連結売上平均
最上位 2.5 兆円 (大規模)
上位 4,000 億円
(中堅)
中位 1,800 億円
下位 860 億円
最下位 292 億円
図 2-11 企業規模別評価比較
2009 年度で全企業を対象として同じ主成分の散布図において売上が1兆円以上の 大規模企業を強調したものを図 2-12に示す。大規模企業の殆どが横軸でプラスを維 持し、幾つかの企業は理想的な第1象限に存在するものの、毀損傾向がみられる第4 象限に多く存在している傾向がみてとれる。
図 2-12 企業規模別での特性
2-15 2.4.4 企業付加価値ランク別での特性
ここでは同じ主成分の散布図において企業の市場価値を示すトービンのq−1を2 分割し上位を高付加価値企業、下位を低付加価値企業とし、上位を図 2-13に示して いるが、横軸に関係なく縦軸で広く2分された状況となっている。全企業で見た場合 高付加価値企業が必ずしも横軸である環境対策が十分とはいえない状況である。
図 2-13 企業付加価値ランクでの特性
2.5 時系列での特性の解析 2.5.1 個別企業の時系列推移
特定の業種として食品業5社の時系列でのポジションを確認した様子を図 2-14に 示しているが、同一企業においては概ね同一の象限内で推移している様子が確認でき る。このチャートはこのように企業の動向から目指すべきポジションへの推移や他社 との比較など位置づけを明確に把握することで、戦略策定において有効と考えられる。
2-16
図 2-14 個別企業の時系列推移 2.5.2 純粋持株会社の時系列特性
純粋持ち株会社(ホールディングス)は、より戦略的な志向から子会社をグループ として束ね効果をあげることが想定されている。ホールディングスグループとして環 境評価と企業価値を比較した2007年度の内容を表 2-8に示しており、各指標につい て時系列で示したものが図 2-15である。環境評価では概ね優位であるが、企業価値 は必ずしもそうではない状況である。これは実態としてグループ規模での過剰な環境 投資から価値を毀損している可能性が推察され、一方で、2008 年の状況下において もホールディングス企業は下落率が低い点は効果のひとつと考えられる。
表 2-8 純粋持株会社との指標価格(2007 年度)
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