労働者側の協定当事者として予定していたが,組織率が非常に高かった当時の状況 下では労働組合が締結当事者として基本的に想定され,過半数代表は,例外的に労 働組合が過半数を獲得していない職場において,労働者の意思を形式上表現するた めの便宜的な法的道具立てとして位置づけられていた16。 上限規制については1982年に時間外労働の限度に関する指針17が作成され,行政 によるチェックを予定する延長可能上限が設けられた。しかしこの時点でも上限の 遵守は努力義務であり,特別な事情が生じた場合にはさらに労働時間を延長するこ とができるなど,前述の仕組みは基本的に維持された。 この仕組みは,その後形成される日本的雇用システムの下で,内部労働市場で労 働力量を調整する基礎となる18。法定労働時間は,厳密な意味での労働時間の上限 ではなく,割増賃金を支払う基準としての役割とこのような社会的認識をその後の 時代の経過を経て強めるようになる19。 (c)労働時間規制の期間的単位の拡大 また,工場法では1日とされていた労働時間の原則的な規制単位に「週」が加え られ(労基32条1項),4週4休日の変形休日制(労基35条)や4週間単位の変形 労働時間制(労基32条2項)が導入されるなど,法定労働時間計算の基礎となる期 間が拡大された。これらは,工場の隔日勤務などに対応するとともに20,企業によ り効率的に労働時間を配分することを認めることを通じて,法定労働時間の短縮が 企業に与える影響を緩和する意味も有していた。ある期間の総量的な労働時間を規 律することにも着目されたことで,1日単位で形成される労働者の一般的なライフ サイクルが労働時間法の視野の中心から外れるようになる。 16 同書99頁。 17 「労働基準法36条の協定において定められる1日を超える一定の期間についての延長するこ とができる時間に関する指針」(昭57労告69号)。
してきた96。判例が労基法上の労働時間制の判定においてメルクマールとしてきた
指揮命令の実際の内容が労働のサービス化やICTの発達によって変化していること も,この問いへの取り組みを必要とする要因となっている。