九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
高精度可視化計測のための基礎技術の開発に関する 研究
竹原, 幸生
https://doi.org/10.11501/3123113
出版情報:Kyushu University, 1996, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
爪 山
V
高精度可視化計測のための基礎技術 の開発に関する研究
平成 8 年 10 月
竹 原 幸 生
目 次
第 1 章 序 論
1. 1. 本研究の目的・
1. 2. 本 論 文 の 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2
第 2 章 高 速 ビ デ オ カ メ ラ の 開 発
2. 1. はじめに・
2. 2. 4, 500枚 / 秒 の ビ デ オ カ メ ラ の 開 発 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 (1) 基 本 仕 様 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ... 4 (2) 土木工学および関連分野への適用例・
(3) 問 題 点 と 改 良 の 方 向 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 10 2. 3. 既 存 お よ び 開 発 中 の 機 器 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 11 (1) 既 存 の 機 器 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 11 (2) 開 発 中 の 機 器 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 (3) 高 速 撮 影 機 器 の 用 途 と 選 択 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 14 (4) 今 後 の 方 向 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 16 2. 4. ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 17
第 3 章 P T Vの た め の 新 ア ル ゴ リ ズ ム の 開 発 . . . . . . ..
23 3. 1. はじめに・3. 2. 画像解析速度計測に関する既往の研究・
(1) 手法の分類・
(2) 主要な手法・
(3) 土木工学分野での応用・
円ベ
U a 4 a 4 4 A F h d n H U
ワ ' 臼
n L η L n /
副ワ 臼
3. 3. カ ル マ ン フ ィ ル タ ー と X2検 定 に よ る 自 動 粒 子 追 跡 ア ル ゴ リ ズ ム ・ ・ 28
‑KC法‑
3. 4.
(1) (2) (3) (4)
3. 5.
(1) (2) 3. 6.
(1) (2) (3) (4)
KC法の概要・
カ ル マ ン フ ィ ル タ ー に よ る 粒 子 情 報 予 測 ‑ X 2検 定 に よ る 同 一 粒 子 の 対 応 付 け
新 た に 現 れ た 粒 子 に 対 す る ド ゥ ロ ー ネ三角形網を・
用 い た 粒 子 情 報 の 推 定 法
矩 型 透 明 水 槽 中 の3次 元 粒 子 位 置 計 測 ア ル ゴ リ ズ ム 既往の研究・
カメラ定数の同定法・
空気,水,透明壁の屈折率を考慮、した粒子光路の式の導出・
カ メ ラ の 光 軸 方 向 精 度 向 上 と 複 数 の ビ デ オ カ メ ラ で . 得 ら れ た 画 像 間 で の 同一粒 子 の 同 定 法
キャリプレーションの例・
適用例・
熱 対 流 乱 流 場(2次元計測〉
回 転 棒 上 の 点 の 運 動(3次元計測〉
まとめ・
n k u n同 u t l i n ノ 臼 n L Q L q u n d
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円ベ
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4 4 A
(5) nHutpA
旬lianTFhd44・
a a Aヨ4斗
A d Aす
﹄ 斗
A
第 4 章
4. 1. 4. 2.
(1) (2) (3) (4) (5) 4. 3.
(1) (2) (3) 4. 4.
(1) (2) 4. 5.
第 5 章
5. 1. 5. 2. 5. 3.
(1) (2) (3) 5. 4.
(1) (2)
流 れ の 可 視 化 に 必 要 な 関 連 技 術 の 開 発 . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 54
‑ 比 重 整 合 ・ 屈 折 率 整 合 ・ 多 波 長 計 測 ‑
はじめに・
水 と 比重の等しいトレーサー粒子 ・ トレーサーの条件・
マ イ ク ロ カ プ セ ル ト レーサー・
高機能マイクロカプセルトレーサー・
比重調整されたトレーサーの例・
適用例・
水と透明体の屈折率整合・
高屈折率水溶液・
低屈折率透明材料・
適用例・
多波長計測技術の開発の現状・
定量計測と波長による画像選択・
計測原理と既往の研究・
まとめ・
水 表 面 で の 気 体 輸 送 に 関 す る 可 視 化 実 験 へ の 適 用 ・ . はじめに・
既往の研究・
水 表 面 に 衝 突 す る 渦 輪 の 可 視 化 実 験 ・
水 表 面 衝 突 に よ る 渦 輪 の 崩 壊 過 程 の 可 視 化 ・
EVAマ イ ク ロ パ ー テ ィ ク ル に よ る 表 面 水 の 連 行 の 可 視 化 フルオレセインによる炭酸ガス濃度場の可視化・
水 表 面 で の 水 滴 の 衝 突 お よ び 気 泡 の 崩 壊 過 程 の 可 視 化 ・ 水 表 面 に 衝 突 す る 水 滴
水 表 面 で 崩 壊 す る 気 泡
5. 5. ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 102
主 早
1 2 6 6 6
第 結 論 . . . . .
本研究の成果・
今後の課題・
44・AFhdFhd円︐a
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白 内 ペ
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門iウt円i可t門i円i勺tウt門i 問01
3 3 9 2 5 5 9
4 4 n x u n 6 0 6 n H U n k U Q U Q u n u n u
104 104 105
謝 辞 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
.・・・・・・・ 107第 1 章 序 論
1.1. 本研究の目的
流体連動の予測や制御は,人々の生活に密接に関係してくる!日j題である。これらの問題の解決に向け て,これまで絶え間ない努力が続けられてきた。例えば,気象学,海洋学が対象とする地球規模の問題 から,機械工学,化学工学等で取り扱われるミクロな流体運動まで広範囲の分野で研究が行われており,
これまでに目覚ましい発展を遂げてきた。特に,電子計算機の発達には討を見張るものがあり,ある限 られた条件下では,スーパーコンビュータを用いてDNS(DirccLNumerical Sinlulation)法により直接流 れ場を解くこともできるようになってきた。しかしながら,土砂や気泡を含む流れや自由表面をもっ流 れ等,工学上興味のある複雑な流体運動を対象とした場合,計算機の能力や境界条件の複雑さ等の放に,
数値計算で直接流れ場を解くことは困難となる。従って,数値シミュレーションにおいても何らかのモ デル化が必要となり,そのモテ、ノレイヒのための基礎データやモデル検証のためのデータは実験に頼らざる
を得ないのが実状である。 一方,科学技~~jの進歩に伴い流れ場の計浪Ij技術も急速に発達し,高精度の定
量計測が可能となってきた。これらの計測技術の開発は流体力学の進歩に大きく貢献し,新たな研究分 野を拓いてきた。特に,ホットワイヤー (ホットフィルム〉流速計の出現は乱流の計測を可能とし,乱 流モデルの開発に重要な役割を果たしてきた。
数値計算の検証を目的としてデータを収集する場合は,時々刻々の3次元空間の流速分布が必要とな る。しかし,現,在使われている計測装置は基本的には固定された1点の計測点で計測するものであり,そ の計測点を時々刻々に通過する流体粒子の速度が計測される。また,そのような計測法の多くはセンサ一 部分を流れの中に入れて測定するため,流れ場を乱す恐れがある。現在,流体力学の課題の1つに,数 値計算結果を検証するための高精度な3次元時系列流速分布の言│訊Ijデータベースを構築することが挙げ られる。そのための最も有力な計測手法の1っとして可視化計測法が注目されており,現在活発に研究・
開発が進められている。
流れの可視化画像をコンビュータで処理することにより,流れ場全体を同時に計測しようとする試み は1970年代頃から始められた。これは画像処理装置の性能向上,高速化,処理アルゴリズムの発達,お よびビデオ撮影装置の発達と普及によるものであり, 一部実用化されているものもある。流れの可視化 計測法の最大の利点は,上述したようにこれまでの計測装置では原理的に1点の計測であったものが,流 れ場全体を同時に観測できることである。さらに可視化計測には次の2つが利点として挙げられる。
‑画像を用いた計測法では撮影する光の波長域帯を分離することにより,温度,物質の濃度等も流速場 と同時に計測できる。例えば,フルオレセイン水溶液の蛍光強度がpHに依存することを利用して,直 接炭酸ガスの溶入過程を可視化計測することができる。これを利用して撮影波長域を分離撮影し, 1 台のカメラではフルオレセインの蛍光波長域を, もう 1台でトレーサー粒子の散乱光波長域を同期撮 影することにより,炭酸ガス濃度分布と流速場の同時計測が可能となる。
‑画像計測では水表面のように界面が運動する場でも,水表面付‑近の水運動が画像中に写っている限り,
界面近傍の流れ場の計測が可能となる。これは上記の点計調Ij器では困難である。しかしながら,現時 点での可視化計測法では,精度,解像力等の面で数値計算結果との比較,検証に耐え得るだけの十分 な精度を持っていない。
本論文の目的はDNS等の高精度の数値計算により得られた結果と同等以上の精度と解像力を持つ可視 化計測法を開発することである。本研究で開発された技術は以下の通りである。
①高速ビデオカメラの開発
家庭用のビデオカメラでは 30pps (picturcs per second)のフレームレートであるため,遅い流れ場 の計測にしか使えない。特に,界面近傍の詳細な水運動を計測する場合,拡大撮影しなければならず,
遅い流れでも計測が不可能となる。例えば,流速30cm/secの流れ場の1cm角の領域を撮影する場合,
30 ppsのフレームレートでは,ある時刻jに写っていたトレーサー粒子は次の画面では画面の外にでて しまい,追跡することができない。従って,例えば水表面での気体輸送に関する計測等を行う場合,
高速ビデオカメラが必要となる。本研究では,このような流れの可視化計測を目的として4,500ppsの 高速ビデオカメラを開発した。
②PTV(Particlcτ'racking VelocimeLry)のための自動粒子追跡アルゴリズムの開発
可視化計測では画像中の多数の粒子をl時々刻々追跡する必妥がある。 10個程度の粒子であれば人の手 によって追跡することは可能であるが,数百 数千イ問の粒子を数時刻にわたって人の手で追跡するの は実際上不可能である。本研究では,カルマンフィルターとχ2検定を用いて画像中の多数の粒子を自 動追跡するアルゴリズムを開発した。これは,これまで提案されてきた手法とは異なり,確率統計学 的基礎に基づいたものであり,同一粒子の同定に経験的な判断を用いない点で優れている。
①ステレオ画像法による水糟中の粒子の3次元位置計測法の開発
流れ場の3次元計測を行う場合,複数台のビデオカメラを用いて水槽中の粒子の3次元位置を同定す る必要がある。また, ビデオカメラを用いることによって生じるいくつかの間題に対処しなければな らない。本研究では,透明平面壁を通した水糟中の3次元粒子位置計測法として, ビデオ画像による ステレオ法を開発した。
①トレーサー粒子と水の比重整合法の開発
可視化計測においてはトレーサーの追随性が計測精度を大きく左右する。本研究では,比重,比熱が 水と等しいトレーサー粒子として,芯物質が水で,股が水の比重に等しい物質で構成されるマイクロ
カプセルを開発した。
⑤透明体と水の屈折率整合法の開発
水理構造物周りの可視化計測を行う場合,構造物により光が巡られ,構造物の反対側の流れ場を計測 することが困難となる。木研究では,水と透明固体の屈折率整合法を開発した。この技術を用いるこ
とにより水理機造物周りの3次元可視化計測が可能となった。
①水表面からの炭酸ガスの溶入過程の可視化法の開発
水表面て。の気体輸送のメカニズムを画像計測するには,気体の溶入過程を可視化する必要がある。本 研究では,炭酸ガ月スの溶入過程についてフルオレセイン水溶液の蛍光強度のpH依存性を利用する方 法を開発した。
1.2. 本論文の概要
第2章では,流れの画像計測を目的として開発された4,500ppsの高速ビデオカメラ,およびその土木 工学分野への適用例を示すo 実際の計浪Ijへの適用を通して生じた問題点を整理し,対処法等を整理する。
また,現在市販もしくは提案されている高速度撮影装置について紹介し,性能を比較し,今回開発された 高速ビデオカメラの位置付けを明らかにする。また,さらに高速の織影装置(106pps程度)を提案する。
第3章では, ビデオ画像中の多数のトレーサー粒子を自動追跡するために開発されたカルマンフィル ターとが検定からなる自動粒子追跡アルゴリズム(KC法)について述べる。また, 3次元計測への拡張 で必要な透明平面壁を通したステレオ画像法による水中粒子の3次元位置計測法,およびビデオ画像を 用いる場合の問題点,対処法についても述べる。さらに,開発された計測法を熱文ナ流乱流場の計測(2次 元場)および回転棒上のマーカーの運動の計部Ij(3次元場)に適用した例を示す。
第4章では,関連して開発された一連の可視化計調Ij技術について述べる。 水とトレーサー粒子の比重
整合法,水と透明休の屈折率整合法,および流速場と温度場や濃度易き等の同11寺可視化計担Ijのための多波 長計測法について述べる。比重整合法として,比重,比熱が水と等しいマイクロカプセルトレーサーを 提案する。屈折率整合法に関しては,低屈折透明体と高屈折率水溶液を用いる}j法を提案する。また,
多波長計測法の一例として蛍光物質とレーザーを用いる方法を紹介する。
第5章では,開発された技術の水表面で、の気体輸送に関する可視化実験への適用例を示すO 水表面の 気体輸送を規定する物理的素過程と考えられる,水中の乱れの水表面への衝突,水表面への水滴の衝突 および、水表面で、の気泡の崩壊を取り上げる。まず,水中の乱れが水表面に衝突する場合を考え,水中の 乱れのモデルとして単一の渦輪を発生させ,水表面に衝突させた場合の水表面付近の乱れに関して可視 化実験を行った結果を述べる。実験では,開発された高速ビデオカメラを用いて水表面付近で、の渦輸の 崩壊過程と水表面に浮遊したマイクロパーティクルの渦輪衝突による述行過程を可視化し,その結果に ついて述べる。また,フルオレセイン水溶液の蛍光強度のpH依存性を利用した炭酸ガスの水中への輸 送過程の可視化法について示す。次に,雨滴の水表面衝突および気泡の水表面で、の破裂についても,高 速ビデオカメラを用いて観察している。
第6章では,本論文で得られた結果をまとめ,今後の展望を述べる。
第 2 章 高 速 ビ デ オ カ メ ラ の 開 発
2.1. はじめに
科学・工学全般において可視化法は非常に有効な研究手段で、ある。しかしながら,これらの用途にお いては特殊な条件下での撮影が要求されることが多い。このような撮影を一般的に特殊撮影と呼ぶ。特 殊撮影には超高速撮影,微光量撮影,超高倍率織影,超高解像度撮影,可視光以外の搬影等がある2)。超 高倍率撮影としては,可視光による高倍率撮影の他に各種電子顕微鏡撮影等がある。可視光以外の撮影 としては赤外・紫外線撮影, X線撮影,マルチノくンド線影等がある。また,天体撮影等では微光量,超高 倍率,可視光以外の撮影等が同時に要求される。 一方,撮影環境としても高温,超低温,高重力下,強 い電磁波中での撮影等,特殊な環境下での撮影が必要となる場合もある。
このような数多くの特殊娠影のための技術が従来より開発されているが,ここでは超高速撮影を取り 上げる。高速撮影は高速フィルム撮影を出発点とし,これまで色々な煩影手法が開発されてきた。また,
近年の電子機器の発達により多くの電子式高速撮影装置も開発されている。特に,国体撮像素子を用い たビデオ撮影装置では画像信号をデジタルで記録・再生できるようになり,電子計算機で直接処理でき るようになってきた。高速撮影の歴史の詳細に関しては植村・山本3)4)の解説論文にまとめられている。
本章で、は流体運動の可視化計測を目的として開発された高速ビデオカメラとその適用例について概説 する。次に,既存および現在開発中の高速撮影技術全般とその土木工学への適用可能性等について紹介 し,今回開発したビデオカメラの位置づけを明らかにする。また,より高速の撮影装置として自動トリ ガー付き画素内メモリー型撮影装置を提案する。
2.2. 4ヲ500枚/秒のビデオカメラの開発
(1) 基本仕様 a) 前提条件
PTV (Particleτ'racking Velocimetry)による流体の3次元計測には通常3台〈以上〉のビデオカメラ が必要である5)。複数の画面上の視差から3次元位置を推定するので,カメラ聞の同期は完全でなけれ ばならないし,カメラごとに特性が変わったり, I時間変化するおそれのある画像歪があってはならなl'10
また,高速撮影においては光量不足が決定的な障害になることが多い。さらに, PTVでは撮影後,電子 計算機により大量のデータを処理しなければならないために,画像情報はデ、ィジタル情報として記録さ れる方が望ましく,多数の粒子を識別するためにはできる限り解像力が高い方が良い等, ビデオカメラ 自体においても多くの解決されなければならない問題が残されている。従って, PTV用高速ビデオカメ ラの基本仕様を決めるための条件として高速,完全同期,無歪,高感度(I1内蔵),デ、ィジタル記録,高 解像力の6つの条件が挙げられる。
この他,高速撮影ではカラー化,再生の容易さ,総フレーム数,現象の生起との同期撮影,コンパク トさ,などの課題もあるが,高速ビデオカメラの場合,これらの課題はそれ程大きな障害とはならない。
従って,上記の6つの条件が基本仕様を決める際の検討項目となる。しかしながら,後にc)項で説明す るように,高速および高感度と高解像力を同時に実現することは困難である。本研究では,高解像力を 犠牲にして,残りの 5 つの項目,つまり,高~,完全同期,無歪,高感度,デ‘ィジタル記録を満足する
ビデオカメラを開発した。
写真‑2.1開発されたビデオカメラ
著者がPTVの開発を始めた 1989年頃に既に市販されていた高速ビデオカメラには,これらの条件 の多くを満たしているものは無かった。止むを得ず,上記の基本方針に基づくビデオカメラを独自に開 発することにした。高速ビデオカメラの用途は広いので,近畿大学の中に機械,電気・電子,化学,土 木などを専門とする 13名の教員からなる研究会を作り,情報収集・討議・検討を行いながら,カメラ の基本仕様を決めた。完成した高速ビデオカメラを写真~-2.1 に示す。
b) フレームレート
今回開発されたビデオカメラか寓速となりうる理由は, 16本の信号読み出し線からの並列読み出し,
高い信号読み出し周波数, ICメモリー上への上書き連続書き込み,部分撮影という 4つの技術を採用・
開発したことによる。通常のビデオカメラからの画像信号の読み出しは,画素を1列づつ走査すること により行う。本機では,信号読み出し線を16本とし, 16本づつの走査線を同時に走査する。これはコ ダ、ック社の特許であるが,この技術を用いることにより,速度は16倍となった。
ハイビジョン用撮像素子の画素数は106個程度と非常に多いので,通常のフレームレートである30 ppsで1枚の画像を読み出すためには,開発当初の通常のテレビ用撮像素子に比べて信号読み出し周波数 を1'""'2桁上げる必要があった。これを上げると読み出しノイズが急増する等大きな問題があったが,ハ イビジョン開発競争で, 1990年代初め頃にはこの問題が解決された。従って,本機でも 1つの画素の読 み出し周波数を2x107Hz近くまで上げることが可能となった。読み出した信号をすぐAD変換し,画 像構成することなく IC上に上書きし,撮影停止後に, IC上に記録されている信号からゆっくり画像構 成することにした。これにより機械部分が全く無くなったため,画像構成に必要な時間等も省略できた。
もし, 256x256の全画素のうち一部の画素だけを使うことにすれば,信号読み出し量が減るのでさらに 高速化することが可能となる。
以上より標準のフレームレートは画素数256x256に対して4
,
500pps,最も小さい領域(1画面64x64 画素〉の場合では, 40,
500ppsの撮影が可能となった。c) 撮像素子
全画素数は256行x256列の65
,
536個である。画素ピッチを40μmとしたので¥受光面のサイズは1辺 10.24mm( = 256 x 0.04 mm)の正方形である。最近の撮像素子の画素ピッチは10μm程度であるから,これと比較するとかなり大きな画素面積となっている。また開口率(各画素の面積に占める有効受光面 積,すなわちフォトダイオードの面積の割合〉は83%と特別に大きくし,残りの17%に,各画素で必要 な回路を組み込んでいる。これらは,経験上高速撮影においてフレームレート(撮影速度〉の方は十分
であっても, 1フレーム当たりの露光時間の不足が原因で織影が困難になる例が多いという点を考慮し て,できる限り明るい娠像素子を作ろうとしたためである。また,顕微鏡下での搬影などにおける光町 不足に対処するために,設計当初からMCP型
r
I(Micro Channel Platc Type Image Intcnsifier)を内蔵 できる装置の開発を計画していた。従って,受光面のサイズは,浜松ホトニクス社製の標準的MCP型I Iの出力窓〈有効径ゆ 17mm)の内側に入るように, 12mm (~ 17/ y'2)より少し小さい値 (10024mm)とした。やや小さくしたのは,光学系のケラレや受光面周辺での回路組み込みを考慮したためである。
画素ピッチは, MCP型11と撮像素子をl直接ファイバー結合した場合の総合解像力も考慮して決めた。
著者の試算ではこの総合解像力は,最良の条件下で,画素ピッチで'30μm程度と推定された(補遺II)o 最終的に画素数を256x256,画素ピッチを40μmにした理由を,具.体例を用いて分かりやすく説明す る。例えば,線形解像力を2倍とするために画素数を線形で2併の512x512にしたとする。 MCP型11 の出力窓のサイズの条件より,受光面サイズが同じであるとすると画素ピッチは線形で半分の20μmと なる。このとき関口率は1/10以下となる(補遺III)。また, MCP型11を撮像素子にファイパー結合す ることを前提とすると,解像力はこちら側で規定され(最高岡素ピッチ換算で;.30"'"'40μm), 256x256の 場合の解像力(画素ピッチ40μm)とさほど変わらないことになる。さらに画素数は4倍になるので,信 号読み出し総数(16本)と読み出し周波数が同じであれば,
t
最影速度は1/4となる。以上より,線形解像力を256から512に上げても総合解像力は殆ど変わらないのに,撮影速度は1/4 に,感度は1オーダー程度低くなる。このように,高解像力と高速および高感度とは相容れない性質と なっている。
d) イメージインテンシファイヤー
MCP型11は,コンバータ型のイメージインテンシファイヤーと違い〈補遺1),画像歪みを生じな い。これにより数100mlxという非常に暗い条件下でも4,500ppsで撮影できる。また,高速ゲーティン グ〈シャツタリング〉も可能である。本機の場合では100ns(10‑7秒〉のゲーテイングが可能である。ま た本機の撮像素子はMOS型であるためフォーカルプレーン効果が生じるが,本機の100nsのゲーティン グにより,これを防ぐことができる。
今回開発した高速ビデオカメラにイメージインテンシファイヤを内蔵させるためには,蛍光面の残 像を無くす,繰り返し周波数を上げる,という2つの点において市販のrvICP型1I(浜松ホトニクス社製 C2925)を改造する必要がある。市販のMCP型11にはP20という蛍光材料が用いられているが,これは 222μs (4,500pps)で6%,25μs (40,500pps)で30%程度の残光を生じる6)。これを防ぐために,より残光 の少ないP24を用いることにした。 P24を用いると発生蛍光強度が低下するが,これを補うためにMCP 出力面と蛍光面の距離を0.5mmから1.0mmに200倍程度広げ,ゲイン電圧も6kVから8kVに上げた。こ れにより蛍光面に衝突する電子のエネルギーは50"'"'100%増加することになる。ただい解像力は若干 低下する。
ゲーテイングを行った後,次にゲーティングを行うまでに,溜まっている電荷を排出する必要があ る。このため,ゲーテイングの繰り返し周波数はゲーティング速度に比べて数桁低くなる。市販品で は最大10kHzであったが,今回は最高4005kHzまでの撮影を行う必要があるので,ここまで上げること が可能であるかどうか検討した。その結果, 15kHz程度が限界であった。 128x128の領域の撮影速度が 13.5kHz( 13,500pps)であるので,ここまで・はカバーで、きるようにゲーティング周波数を15kHzに改造し た。ゲーティングを行わないでイメージインテシファイヤーを開けたままにしておく場合は,撮影速度 を上げても問題はない。ただし残像が出る可能性がある。
e) ICメモリーによる記憶装置
撮影された画像信号は撮影後すぐにAD変換され画像構成することなく,いわば垂れ流しのデ、ィジ タル信号としてICメモリーに記録される。この方式は高速化に寄与する。画像は撮影終了後に内蔵のマ イコンで構成され,直ちに再現することができる。ビデオテープを用いる場合は,テープの巻き戻し ・ 早送りにより現象が写っている部分を探し出して再生することになり,かなり面倒である。しかし,こ
のシステムで、は写っている部分を一皮探し出せば何度でも繰り返すことができ, しかも自由な再生速度 で画像を再生することができる。記録されたデ、ィジタル信号をそのまま出力し, 電チ計算機で処理する ことも可能である。
記憶枚数は標準で1,000枚であり,ボードの追加により 5,000枚まで拡張することができる。従って,
記録時間は4 , 500ppsに対して原準で‘約 0.22(~1,000/1,500)秒¥段大で約1.1秒となる。ただし,フレー
ムレートはコマ落としにより小さくできる。例えば, 500 ppsとすれば最大10秒間の撮影が可能となる。 f) 上書き操作と画像トリガー
記録はエンドレス上書き方式である。したがって,記録枚数が1,000枚のとき, 1,001校目の画像は1 枚目のメモリー上に上書きされる。 トリガーがかかるとこのような上古き操作が停止する仕組みになっ ている。停止にはトリ力、、一信号が出た瞬間に停止させる方法(エンドトリ力。ー:トリガ一信号の前1000枚 の画像を記録), トリガ一信号が出て1000枚画像を記録した後停止させる方法(スタートトリガー),お よびその中間の方法(センタートリガ、ー:トリガ一信号前後の画像各500枚を記録する方法)の3種類を選 択することができる。
いずれの場合においても現象生起の前後 0.22秒間の内にトリガ一信号を発する必要がある (1,000枚 記憶の場合〉。強い光, 電気信号,音等を生ずる現象では,これらをトリガ一信号として利用することが できるが,そうでない場合,例えば,顕微鏡下のいつ起こるかわからないような現象では適当なタイミ
ングでトリガ一信号を出すことはきわめて難しい。本研究では,この問題を解決するために画面の指定 された領域で平均輝度の変化があると電気信号を発する装置(ビデオトリガー)を取り付け,画像をモニ タリングしながら画像変化があると上書き操作が停止するシステムにしている。 この技術により,撮影 を同期させるために別途トリガ一信号をモニタリングする必妥がなく, トリガーのタイミングの問題は 大きく改善された。
g) 同期装置
フィルム撮影の場合,シャツタリングは機械的に行わざるを得ないので, μsオーダーでの同期は困難 である。通常のビデオカメラでも, ビデオテープの回転部の制御精度が充分とは言えないので¥複数台 のカメラの同期に問題が生じる。それに比べて, ICメモリー型のビデオカメラは娠影から記録まで機械 部分が全く無く,完全に電気的に同期がとれるため,複数台のカメラの撮影時刻を容易に精度良く合わ せることができる。これにより 3次元撮影や異なる波長域の光を別々に分けて同時撮影すること等が可 能となった。
h) 撮像部の交換
ICメモリー型ビデオカメラは通常のビデオカメラと異なり,撮像素子からの出力信号をそのままメモ リーに記録し,撮影終了後に画像構成するので¥出力信号‑の電気的イ上段さえ同じなら,撮像素子もしく は撮像部を異なる種類のものに交換しても回路上問題はない。よって今の素子はモノクロであるが,こ の上にカラーフィルターを付けてカラー化したり, 512x512の高解像度の素子と付け替えることも可能 である。現在のところ標準素子とMCP型11付きのものが交換装着可能である。
i) 3台の高速ビデオカメラによる撮影
3次元撮影, 3断面撮影,カラー
J
最影(3波長撮影),遅延同期による超高速速続撮影等のために3台の 高速ビデオカメラを同時に製作した5)0 3次元織影では,ステレオ法により 2台のビデオカメラのレンズ 光軸が約900 で交わるように織影すれば,原理的には高精度での位置計測が可能となる。しかし粒子 追跡により流れ場を計測する場合,画像中には多数の粒子が写っており,それぞれの画像間での同一粒 子の同定が困難となる。そこで2台のビデオカメラのレンズ光軸が約100 で交差するようにセットし,もう1台のレンズ光軸が他の2台のレンズ光軸と約900 で交差するようにセットして煽影すれば,比較 的簡単に同一粒子を同定することができる。しかも高精度で粒子位置を計測することも可能である(第3 章4節参照)。
3断面撮影としては,ある現象をミクロ,ローカル,マクロに同時服影する場合がある。このために
表‑2.1土木関連分野における適用例
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は3台のビデオカメラが必要となる。カラー撮影は, 1つのレンズでとらえた同ーの画像を3方向に分け る装置を作り,各光路に R,G, Bフィルターを入れることにより可能となる。また, RGBフィルター ばかりでなく,各種波長域の光学フィルターを準備すれば多波長計測が可能となる10)。例えば,本研究 ではアルゴンイオンレーザーを使って, 青(光波長488nm),緑(514nm),蛍光(520nm以上の波長)での 同時撮影に用いている。遅延同期による超高速連続撮影は, MCP型11の超高速ゲーティング機能を使 い,ゲーティングのタイミングを1/(10万'"'‑'1)000万)秒程度ずらすことにより, 1/(10万'"'‑'1)000万)秒の フレームレートで3枚の連続画像を得る方法である。
(2) 土木工学および関連分野への適用例
表‑2.1には,開発された高速ビデオカメラを用いて得られた撮影例のうち,土木関連分野における ものを示す。対象としては土木関連分野のなかでも流体力学(燃焼等を含む〉に対する適用例が多い。
トンネルの切り羽の崩壊実験に使った例もあるが, このような土砂崩壊実験や地震による液状化などの 実験に使われるケースは今後さらに増えると忠われる。 一方,材料破壊の撮影例もあるが,クラックの 進展の状況などの撮影には,本機はまだやや速度不足であった。表からわかるとおり,失敗例のほとん どは速度不足が原因である。土木工学における衝撃破壊の研究については,専門の研究グループによる 研究報告がまとめられており,その中で画像計測技術についても解説がなされている7)。以下に開発さ れたビデオカメラを使って得られた研究成果の例を示す。著者の専門の関係で、流体計測への適用例が多
くなっている。
表‑2.2愛丸谷らによる衝撃破壊実験に用いられた材料の特性
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a) 振動流の乱流浪IJ定
井田ら9)の研究に協力して織影したものである(第4章 図 ‑'1.12参照)0テトラポッド模型を組み上げ て作られた構造物中の振動流による乱れの画像計測を行った。テトラポッドの模型は低屈折率透明体で 作り,ヨウ化ナトリウムを溶解させることにより水の屈折率を上げ,両者の屈折率を一致させて,可視 化を可能にした10)。このとき,最大流速は100cm/s程度であった。この流れを1個のテトラポッドのス ケーノレで撮影すると,撮影領域は7.6cm四方程度となる。このとき娠影速度は最低でも130pps程度の速 度を必要とするため,高速ビデオカメラによる撮影が不可避となった。今回の計測では750ppsで撮影を 行っている。
b) トンネル切り羽の崩壊
久武らによる成果である11)12)。標準砂の砂j函に直径 13cmのトンネルを作り,支え板を手前にヲ│し、
て前面を崩壊させる実験を行って計測し, CEM CConta.ct Elcmcnt Metbod
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今回高速ビデオカメラを用いることにより,急激な崩壊の計測が可能になり,数値計算結果との直接的 な比較ができるようになった。また崩壊範囲のみならず,崩壊の進行過程まで撮影することができた。
c) 硬石膏板の衝撃破壊
蓋丸谷らの研究に協力して撮影したものである13)。石膏板の材質,形状,基本物性などを表‑2.2に 示す。写真‑2.2のA点に衝撃力を加えると,その衝撃力の大きさや試験体の形状等によって種々の破壊 パターンが現れる。これまでは破壊後の破片を組み合わせて元の形状を再現することにより,最終的な 破壊ノぞターンを調べていた。衝撃破壊実験では彼壊は一瞬のうちに生ずるため,破壊線〈複数)の発生 順序を知ることは困難であった。破壊線の発生1)防亨は次のような理由から非常に重要である。破壊線が 1本生じると,弾性波の伝達はその破壊線で阻害されるため,次の破接線の発生は第一の破壊線の位置 や形状に左右される。
高速ビデオカメラによる撮影により,破壊線の発生)1民序をおおむね確認することができた。各破壊線 はクラック(亀裂〉として進展するが,それが試験片のどちらの端から発生するかについても得られた 画像よりおおよそ推定できた。ただし,個々の亀裂の発生や進行までは捉えきれなかった。理由は撮影 速度と解像力不足による。亀裂の進行を追うには最低でも105 "'‑' 106 ppsの織影速度が必要である。ま た亀裂先端部の隔は理論的には分子間距離のサイズであり,通常のレンズ系では撮影不可能である。
表‑2.3問題点と改良の方向
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実際的な意味での亀裂幅であってな高精度の干渉縞撮影などの技術を併用しないと,亀裂先端部の進 行状況は撮影できない。
現在,亀裂先端部の進行過程の撮影法は次のような方法を用いるのが一般的である。亀裂先端部では 亀裂が生じる前にわずかに厚さが薄くなるという現象がある。よって破壊する材料を透明体で作り,平 行光を透過させると凹レンズ効果で円形の光の広がりが撮影できる。その位置と円の直径から亀裂先端 の位置と変形の程度を計測する14)。また,亀裂進行過程の撮影には干渉縞法も有効である。干渉縞撮影 については,著者も現在技術開発を行っている。
d) その他の応用例
開発されたビデオカメラはプラズマ溶射15),マイクロフレーム16)等の研究にも現在使われている。ま た,スポーツ工学は日本では遅れているが,世界的には急速に進展している分野である。土木工学の分 野でも今後スポーツ工学と関連の深い研究テーマが生じてくると思われる。例えば走者の足首の運動と 舗装の関係等は今でも重要な研究課題である。近畿大学においても,今回開発された高速ビデオカメラ がテニスボールおよびラケットのガットの変形,アーチェリーの弓と矢および選手の4肢の動き,膝関 節内の組織の衝撃吸収機能などの研究に使われている17)。
(3) 問題点と改良の方向
上記のような適用経験から表‑2.3に示される問題点と改良の方向が明らかになってきた。撮影速度 不足が最も大きな問題である。しかし,本機の改良ではこの問題の本質的解決には至らない。これにつ いては後節で改めて検討する。それ以外の点については,本機の方式を採用して,改良することにより 解決することができる。これらの改良案については表‑2.3の右欄に説明している。
表‑2.4高速ビデオカメラの比較検討
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2.3. 既存および開発中の機器
(1) 既存の機器
a) 高速映画用フィルムカメラ
フィルムを用いる高速映画撮影では,フィルムは通常ドラム上に固定し, ドラム自体を高速回転させ る方法や, レンズの後ろのプリズムを回転させて光路を高速回転させ,扇状の面に貼られたフィルム上 に結像する方法,これらを組み合わせた方法等がある。わが国では植村,山本らにより技術開発が進め られた。高速フィルム録影の長所としては,解像力が比較的高い,連続 100枚程度の撮影が可能であり,
動画像による再生も可能,カラー撮影も可能等が挙げられる。 一方,欠点は,感度が不十分で?郎、照明 が必要,現像するまで写ったかどうかを確認できない,現象生起とシャツタリングとの周期が困難,複 数カメラ聞での撮影同期が困難,写るまで多量のフィルムを消費する等が挙げられる。
b) 高速ビデオカメラ
高速ビデオカメラの長所,欠点については前節2.2.に述べた。本研究で開発された高速ビデオカメラ は市販のものとしては現在でも世界最高速である。しかしながら表‑2.3に示したような改良すべき点が ある。この表を最初に提示したのは1993年12月であったから,その後これらの点を改良したビデオカメ ラが開発・市販されはじめている。それらと本研究で開発されたビデオカメラの特徴の比較を表‑2.4に 示している。最新のものはMEMRECAM(NAC社製)である。 260x234の高解像力に対して2
,
000pps の高速撮影を達成している。カラーで,カメラ部とコントロール部を一体化するなど,コンパクト化に も成功し,かつ高G
(重力〉仕様となっており,本研究で開発されたシステムより格段に改良されたも のとなっている。高速,高解像力にもかかわらず,実用的な範囲の高感度を維持できたのは,オリンパ ス光学で実用化を進めてきたCMD型撮像素子によるところが大きい。これはMOS型素子の高速性を生 かしながら,電荷の排出による信号読み出しのかわりに,電圧変換して信号を読み出すことにしたもの である。これにより,電荷の移動を制御するためのMOSトタンジスタースイッチのスイッチングの際 に生ずるノイズ、の影響を最小限に押さえることが可能となる。現時点でも本研究で開発されたシステムが優れている点は,初めから, MCP型11を撮像素子に直結 するように設計している点である。これにより,画質は少し荒れるものの数100mluxという微光下で,
4
,
500 ppsの高速撮影が可能となっている。通常, 1,
500 ppsを達成しようとすれば,少なくとも数100 lux程度の光が必要で、ある。これでは顕微鏡撮影や,蛍光や;燐光などを利用して可視化された現象の高 速撮影なと科学技術計測でよく現れる微光量撮影には使いにくい。 一方,従来, 11を付けるとカラー 化が困難になるとされてきたが,著者はICヘのデ、ィジタル記録機能を使ったMCP型11付きビデオカメ ラのカラー化技術も提案している19)。これが成功すれば,本研究で開発されたシステムに高速カラー撮 影できるという大きな特徴が加わる。上記のCl¥IID型素子にMCP型11を付ける場合はどうなるかという疑問も生じるであろうが,より高
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図‑2.1 マノレチフレーミングピンホールカメラ(Kitayamaら21)による)
解像の撮像素子を使っても,総合解像力は変わらなし'¥(補遺II参照)。
c) イメージコンバータ型マルチフレーミングカメラ
イメージコンバータ型マルチフレーミングカメラは,光を光電面で電子流に変え,電子レンズで結像 面である蛍光面の一部に結像させ,電子レンズ、の水平,鉛直方向制御電圧を急変させることにより,蛍 光面上の結像部を移動させ,複数の連続画像を1枚の蛍光面上に結像させるという機構である。イメー ジコンバータ型マルチフレーミングカメラの長所としては, 107ppsの高速撮影が可能,通常電子流の経 路中にMCPを内蔵させているので,極めて高感度であり,メガヘルツ連続織影においても過度の照明が 不必要等が挙げられる。また,欠点としては,枚数に逆比例して蛍光面上の1枚の画像のサイズが小さ
くなることによる解像力の低下,連続撮影枚数が10枚程度で動画像を構成できない,カラー化が困難,
同期が困難,画像歪が生じる等が挙げられる。
d) クランツシャルデンカメラ
10個程度の光源と同数の独立のカメラを持ち,光源1から撮影対象物を通過した光はカメラ1に入る ように,光源2からはカメラ2に入るようになっている。各光源の光る瞬間とカメラのシャツタリングを 同期させることにより, 10枚程度の高速連続撮影を行う。最近では, CCDカメラを並べた電子式クラン ツシャルデ、ンカメラも開発されている20)。
e) マルチフレーミングピンホールカメラ
土木工学分野で利用される可能性はないが,世界最高速のマルチフレーミングカメラであるので紹介 しておく21)。図‑2.1に示すように数個のピンホールによりMCP上に数個の画像を結ばせておく。結像 位置を結ぶ形で、ベルト状に電極が付けられている。この電極を電流が流れている状態のときのみMCP が働いて像が写る。この電極に 330ps程度の非常に短し'1/¥)レス電流を流す。この短いパルスが結像面1