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保 険法 におけ る保 険契約 の概 念 鈴木達次 著

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【論 説 】

保 険法 におけ る保 険契約 の概 念

鈴木達次 著

一 は じ め に

周 知 の よ う に平 成20年5月30日 に保 険 法 が 可 決 ・成 立 し(6月6日 公 布)、

平 成22年4月1日 か ら施 行 さ れ て い る(以 下 、 新 保 険 法 とい う)。 明 治 32年 の新 商 法 施 行 以 来 、 明 治44年 に部 分 改 正 が な さ れ た だ け で 、 ほ とん ど手 つ か ず の ま ま と な っ て い た 保 険 契 約 法 の全 面 改 正 ・新 法 典 化 で あ る (第2編 商 行 為 第10章 保 険 。 な お 、海 上 保 険 に 関 す る第3編 海 商 第6章 保 険 は 除 く)。 政 府 の 説 明 に よ れ ば 、 そ の 法 案 提 出 の 理 由 は 「社 会 経 済 情 勢 の 変 化 に か ん が み 、 保 険 契 約 に 関 す る 法 制 に つ い て 、 共 済 契 約 を そ の 適 用 の対 象 に含 め る こ と とす る ほ か 、 保 険 契 約 締 結 に際 して の 告 知 、 保 険 給 付 の履 行 期 等 に 関 す る保 険 契 約 者 の 保 護 に資 す る た め の規 定 を 整 備 し、

傷 害 疾 病 保 険 に関 す る 規 定 の 新 設 等 を行 う と と も に、 国 民 に理 解 しや す い 法 制 とす るた め こ れ を現 代 用 語 の 表 記 に よ る もの とす る必 要 が あ る」 と い う 点 にあ る と さ れ て い る1。 こ の よ う な理 由 に よ り制 定 さ れ た 新 保 険 法

に 関 し て は 、 法 制 審 議 会 保 険 法 部 会 に お い て 長 期 間 に わ た っ て 審 議 が な され たが 、新 立 法 の 宿 命 と して 、今 後 右 部 会 にお い て は 予 想 だ に しな か っ た 様 々 な 疑 問 が 生 じ、 抽 象 的 な 条 文 を、 い わ ば 生 き た 法 と し て 具 体 的 な 事 件 に適 用 す る に は 困 難 が 伴 う こ と もあ りえ よ う。

そ の よ う な 困 難 の 中 に は 、 個 別 具 体 的 な そ れ か ら、 抽 象 的 な 理 念 にか か わ る もの ま で 様 々 な も の が 考 え られ る が 、 い ず れ に せ よ、 そ の よ う な 問 題 を解 決 す る に あ た っ て 、 根 本 を な す の が 「保 険 契 約 」 と い う概 念 で

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あ り、 ま た 「損 害 保 険 契 約 」 な ど そ の 内 包 を なす 各 種 の 保 険 契 約 概 念 で あ る 。 そ こ で 、 本 稿 で は、 か か る観 点 か ら、 新 保 険 法 にお け る保 険 契 約 概 念 を明 確 化 す る よ う試 み た い 。 もち ろ ん、法 の改 正 は 、これ まで の判 例 ・ 学 説 を基 礎 と して 行 わ れ る以 上 、 本 稿 で の 検 討 は、 これ ま で の 判 例 ・学 説 の 成 果 を超 え る もの とは い い が た く、い わ ば、これ らを確 認 した うえ で 、 新 保 険 法 が ど の よ う な見 解 に依 拠 し て 立 法 され て い る か とい う こ と を 明 ら か にす る 作 業 に終 始 す る こ と に な ら ざ る を え な い 。 しか し、 先 に 述 べ た よ う な観 点 か らす れ ば 、 な にが しか の 学 問 的 ・実 際 的 意 味 が 見 い だ せ ない で は な い と考 え る 。

な お 、 今 回 の 改 正 は、 平 成18年9月6日 の法 制 審 議 会 第150回 会 議 に お い て法 務 大 臣 の 諮 問 を受 け た こ とが 始 ま りで あ り、 右 審 議 会 の 下 に保 険 法 部 会 が 設 け られ 、 具 体 的 に は そ こ で 法 案 が 審 議 ・作 成 され て きた2。 他 方 、 そ れ 以 前 に学 界 ・実 務 界 にお い て保 険 契 約 法 の改 正 につ い て様 々 な試 み が な さ れ て きた こ とは い う まで もな い 。 そ の よ うな 試 み の 中 で作 成 され た 改 正 試 案 とい っ た もの が 、今 回 の改 正 と直 接 の繋 が りが あ る か 否 か は必 ず し も明 らか で は な い が 、 そ の よ う な試 み の 中 で も、 た と え ば 昭 和39年 に発 足 した 「保 険 法研 究 会 」(そ の 後49年 に 「保 険 法 制 研 究 会 」 と、62年 に 「損 害 保 険 法 制 研 究 会 」 と改 称)、 同62年 に発 足 した 「生 命 保 険 法 制 研 究 会 」 お よ び 平 成12年 に発 足 した 「傷 害 保 険 契 約 法 研 究 会 」 の 研 究 成 果 につ い て は、 直 接 ・間接 に参 照 さ れ た こ とは 間 違 い ない で あ ろ う。 け だ し、

これ らの研 究 会 は 国 内 の保 険 法 ・保 険 学 研 究 者 お よび 実 務 家 が 網 羅 的 に参 加 してお り、 そ の意 味 で は 無 視 で きな い 性 質 の もの だ か らで あ る 。

そ れ ゆ え、 こ れ ら の研 究 会 が 作 成 した 試 案 に つ い て も適 宜 ふ れ な が ら、

新 保 険法 の立 場 につ い て 考 察 す る こ と と した い 。

二 「保 険 契 約 」(2条1号)の 意 義

1そ もそ も、 ロ ェ ス レ ル 草 案 お よ び こ れ を も と に起 草 さ れ た 明 治23 年 旧 商 法 は 、 法 典 上 の 立 場 と し て損 害 保 険 一 元 論 を採 用 して い た3。 そ こ で は 、生 命 保 険 等 もす べ て 「損 害 」 保 険 と位 置 づ け られ 、 した が っ て 、保

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保険法 における保険契約 の概念(鈴 木達次)

険 法 総 則 は こ れ ら に も当 然 に 適 用 され る と解 さ れ て い た 。 そ の 意 味 で は 、

「保 険 契 約」 と は 「損 害 保 険 契 約 」 を指 す と され て い た わ け で あ る。

これ に対 して 、明治32年 新 商 法 は 、い わ ゆ る 「二 元 論 」の立 場 に立 ち 、「損 害 保 険 契 約 」お よ び 「生 命 保 険 契 約 」そ れ ぞ れ につ い て規 定 を置 くだ けで 、

と くに保 険 契 約 総 則 と い っ た もの は規 定 し て い な い 。 当 然 、 保 険 契 約 の 定 義 規 定 も な い 。 こ れ は 、 損 害 保 険 契 約 と生 命 保 険 契 約 と が 「其 性 質 ヲ 異 ニ シ テ二 者ニ 同 一 ノ規 定 ヲ 適 用 ス ル コ ト能 ハ サ ル モ ノ 多 キ ヲ以 テ 既 成 商 法 ノ 如 ク 第 一 節 総 則ニ 掲 ケ タ ル規 定 ヲ損 害 保 険 及 ヒ生 命 保 険ニ 通 シ テ 適 用 ス ヘ キ モ ノ ト為 ス ハ 其 當 ヲ得 タ ル モ ノ ニ ア ラ ス 」 と考 え ら れ た こ と に よ る4。 そ の 後 、 こ の 点 は 明 治44年 の 商 法 改 正 を経 て も変 更 さ れ る こ とな く、 平 成20年 改 正 前 商 法 に引 き継 が れ て い る 。

以 上 の立 法 を前 提 に 、そ の後 の 学 説 で は 理 論 上 あ るべ き 「保 険 契 約 」 概 念 を 明 らか にす る試 み が 行 わ れ て きた 。 これ は 純 理 論 的 な 問 題 を 突 き詰 め る とい う学 問 的 な 意 味 の ほ か に、 保 険 法(平 成20年 改 正 前 商 法 第2編 第10章 お よび 第3編 第6章)の 規 定 が 類 推 適 用 され る 「無 名 」 の 「保 険 契 約 」 の 限界 を画 す る 、 とい う実 践 的 な意 味 を持 っ て い た 。

2そ もそ も、 平 成20年 改 正 前 商 法629条 と673条 と に よ れ ば、 保 険 契 約 者 の 負 担 す る債 務 の 目的 は 「報 酬 」(=保 険 料)の 支 払 で あ り、 他 方 保 険 者 の負 担 す る債 務 の 目的 は危 険 負 担(条 件 附 保 険 金 支 払 義 務 負 担)で あ る。 後 者 の うち 、 条 件 事 実(保 険 事 故)に つ い て は 「相 手 方 又 ハ 第 三 者

ノ生 死 」(673条)は 「偶 然 ナ ル一 定 ノ 事 故 」(629条)に 含 め て 考 える こ とが で きる か ら、 結 局 そ の 異 同 は 条 件 成 就 後 の 保 険 者 の 給 付 内 容 に か か わ る。 す な わ ち 、 「損 害 」 の 「填 補 」 と 「一 定 ノ金 額 」 の 「支 払 」 と を 共 通 の概 念 で括 る こ とに で き るか 否 か にか か っ て い る とい うわ けで あ る 。 そ こ で 、 学 説 は 、 い わ ゆ る 「保 険 本 質 論 」 と して 主 張 さ れ る損 害 填 補 説 、 入 用 充 足 説 お よび 経 済 生 活 確 保 説 を前 提 と して 、何 らか の 意 味 で 、 生 命 保 険 契 約 の 保 険 者 の 給 付 内容 も損 害 の填 補 と評 価 で き る とか 、 損 害 保 険契 約 にお け る損 害 の 填 補 も生 命 保 険 契 約 にお け る一 定 の金 額 の 支 払 も、 そ の 本 質 は 金 銭 的入 用 の 充 足 あ るい は将 来 にお け る経 済 的 生 活 の 確 保 で あ る と主 張 し

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た の で あ っ た 。 しか し、 これ らは 、保 険 者 の負 担 す る債 務 の 内 容 を十 分 に 表 現 して い る と は い え ず 、 い ず れ も 「保 険 契 約 」 の 定 義 と し て は 不 十 分 で あ る5。

そ こで 、 損 害 の 填 補 にせ よ、 一 定 の金 額 の 支 払 い に せ よ、 保 険 事 故 が 生 じ た場 合 に金 銭 が 支 払 わ れ る こ と は 間違 い ない か ら、保 険 契 約 とは 「保 険 者 が 相 手 方 か ら報 酬 を徴 収 して 、 一 定 の偶 然 の事 故 が 生 じた 場 合 に、 相 手 方 ま た は第 三 者 にあ る金 額 を支 払 うべ き こ と を約 す る 契 約 を い う」 とい う 見 解 も主 張 さ れ た6。 しか し、 これ は、 あ ま り に抽 象 的 で 無 内 容 とい っ て よ く、 論 者 自 らが 認 め る よ う に、 これ で は保 険 契 約 と他 の 類 似 の 契 約(賭 博 な ど)と の 区 別 が 不 可 能 とな っ て しま う7。 先 に述 べ た よ う に 、保 険 契 約 概 念 を定 立 す る こ との 実践 的 意 義 が 「無 名 」 の 「保 険 契 約 」 の 限 界 を画 す る とい う点 にあ る とす れ ば 、こ れ で は 不 十 分 で あ る とい わ ざ る を え な い 。

以 上 の よ う な 検 討 の 結 果 、 も と も と、 商 法 典 が 二 元 論 の 立 場 か ら立 法 を行 っ て い る 以 上 、 保 険 契 約 の 定 義 を 一 元 的 に 表 す こ とは で き な い 、 そ の 意 味 で損 害 保 険 契 約 と生 命 保 険 契 約 とは 別 種 の 二 つ の 契 約 で あ る、 た だ し、 そ れ らが 「な お と も に 『保 険 』 契 約 で あ る の は 、 そ れ ぞ れ が 保 険 制 度 と い う経 済 制 度 を形 成 す る た め の 法 形 式 で あ る か らで あ る 」 と説 明 す る見 解 が 有 力 に主 張 され て い た8。

3こ れ に対 して 、 先 に 述 べ た 各 研 究 会 で の 試 案 に つ い て は ど う か 。 ま ず 、 「保 険 法 制 研 究 会 」 に よ っ て 昭 和57年 に公 表 され た 「損 害 保 険 契 約 法 改 正 試 案 」(以 下 、 「損 保 試 案 」 とい う)お よび 「傷 害 保 険 契 約 法(新 設)試 案 」(以 下 、 「傷 害 試 案 」 とい う)に お い て は 、 一 元 的 定 義 は な さ れ て い な い 。 そ の 理 由 と して は 「保 険 一 般 につ い て の 通 則 的 規 定 を設 け る こ と に した 場 合 で も、 『保 険 』 に つ い て の包 括 的 な定 義 規 定 自体 に は、

そ れ ほ ど多 くの意 味 は な い 。 け だ し、 イ タ リア 民 法1882条 、 ドイ ツ保 険 契 約 法1条1項 の例 にみ られ る よ う に 、 『保 険 』 に つ い て の 包 括 的 な定 義 規 定 とは い っ て も、 結 局 、 損 害 保 険 の 定 義 と生 命 保 険 そ の 他 の 人 保 険 の 定 義 と を機 械 的 に 結 び つ け た に す ぎ な い の で あ っ て 、 も しそ れ で 満 足 せ ず 、 無 理 に 内 容 的 に も統 一 さ れ た 定 義 規 定 を設 け よ う とす れ ば、 例 え ば、

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保 険法 にお ける保 険契約 の概念(鈴 木達次)

『保 険 契 約 は 、 当 事 者 の 一 方 が 保 険 料 を支 払 う こ と を約 し、相 手 方 が 保 険 金 の 支 払 そ の 他 の 給 付 を す る こ と を約 す る こ と に よ っ て そ の 効 力 を生 ず る 。』 とい う よ うな 、 ほ と ん ど無 意 味 な規 定 に な っ て し ま う … 。 した が っ て 、… 『保 険 』 一 般 につ い て の 定 義 規 定 は、 保 険 に関 す る 通則 的規 定 を 設 け る こ と に した 場 合 に い わ ば そ の 形 を 整 え る とい う以 上 の 意 味 は な い」

か らで あ る 、 と説 明 され て い る9。

つ ぎ に、 右 の 各 試 案 の 修 正 とい う形 で 、 「損 害 保 険 法 制 研 究 会 」 が 平 成 7年(1995年)に 公 表 した 「損 害 保 険 契 約 法 改 正 試 案 」(以 下 、 「損 保 試 案 95年 版 」 とい う)お よ び 「傷 害 保 険 契 約 法(新 設)試 案 」(以 下 、 「傷 害 試 案95年 版 」 とい う)も 全 く同様 で あ っ て 、 そ の理 由 に つ い て も変 わ り は ない10。

ま た 、 「生 命 保 険 法 制研 究 会 」 が 平 成10年(1998年)に 公 表 し た 「生 命 保 険 契 約 法 改 正 試 案(1998年 版)」(以 下 、「生 保 試 案98年 版 」 とい う)、

「傷 害 保 険 契 約 法 新 設 試 案(1998年 版)」(以 下 、「傷 害 試 案98年 版 」とい う) お よ び 「疾 病 保 険契 約 法 新 設 試 案(1998年 版)」(以 下 、「疾 病 試 案98年 版 」

とい う)に つ い て も 同様 で あ っ て 「保 険 契 約 」 一 般 に つ い て の 規 定 を 設 け て い な い 。 そ の理 由 も先 に述 べ た各 試 案 につ い て と 同様 で あ る11。

最 後 に 、「傷 害 保 険 契 約 法 研 究 会」が 平 成15年(2003年)に 公 表 した 「傷 害 保 険 契 約 法 試 案(2003年 版)」(以 下 、「傷 害 試 案03年 版 」 と い う)で も、

や は り保 険 契 約 に つ い て の 定 義 規 定 は置 か れ て い な い 。 そ の 理 由 は 右 試 案 の 「理 由 書 」 中 に は 明 らか に さ れ て い な い が 、 右 研 究 会 が 、 傷 害 保 険 契 約 法 の 立 法 化 作 業 の ため に 、前 述 した 傷 害 試 案95年 版 と傷 害 試 案98年 版 と を調 整 ・一 本 化 す る た め に発 足 した もの で あ る以 上12、 当 然 で あ ろ う。

4こ れ に対 し て、 新 保 険 法2条1号 に は 「保 険 契 約 」 そ の もの の 定 義 規 定 が 置 か れ て い る。 そ れ ゆ え、 法 典 上 、 一 応 一 元 論 を採 用 し た もの とい え る。 も しそ う で あ る と す れ ば 、 こ れ は 、 こ れ ま で 述 べ て き た 各 研 究 会 の検 討 結 果 とは 正 反 対 の もの で あ る とい え よ う。

も っ と も、 一 元 的 定 義 を した と い っ て も、 法 典 の 構 成 ・内 容 と して は 、 非 常 に 中 途 半 端 で あ る 。 と い う の は 「第1章 総 則 」 は 、 趣 旨(第1条)

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と定 義(第2条)を 定 め る 二 箇 条 しか な く、 第2章(第3条)以 下 は損 害 保 険 契 約 等 各 種 の 保 険 契 約 に つ い て 定 め る規 定 で あ っ て、 保 険 契 約 一 般 に 共 通 して 適 用 され る規 定 は皆 無 だ か らで あ る。 前 述 した よ う に保 険 法 制 研 究 会 の 損 保 試 案 の 理 由 書 で は 、保 険 に 関 す る 「通 則 的規 定 」 を設 け た とこ ろ で 、 保 険(契 約)一 般 に つ い て の 定 義 規 定 は、 い わ ば そ の 形 を整 え る とい う以 上 の意 味 は な い とい う指 摘 が な され て い るが 、新 保 険 法 に は そ の 「通 則 的 規 定 」 もな い わ け で あ る。 もち ろ ん 、 保 険 契 約 の 定 義 を 明確 化 す る こ と は、 前 述 した よ うな学 問 的 な い し実 践 的 な意 味 は あ る。 ま た 、損 害 保 険 契 約 、 生 命 保 険 契 約 お よび傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 とい う各 種 の保 険 契 約 の 定 義 規 定 は 「保 険 契 約 の う ち … 」 と して 、右 定 義 を援 用 して い るか ら、 こ れ らの 契 約 の 定 義 を明 ら か に す るた め の前 提 とい っ た意 味 もあ る。 しか し、あ る契 約 を典 型 化 す る意 味 は 、当 事 者 が 右 の よ う な 目的(内 容) の 契 約 を締 結 した 場 合 の意 思 表 示 を補 充 す る こ と(任 意 規 定)や 、 意 思 表 示 の 限界 を画 す る こ と(強 行 規 定)に あ る 以 上 、 定 義 だ けお い て 契 約 の 中 身 を規 制 す る条 文 が ない とい うの は法 典 と して は 中 途 半 端 感 が否 め な い。

5そ れ で は 、 い っ た い なぜ 、 右 の よ う な 「保 険 契 約 」 の 定 義 規 定 が 置 か れ る こ と と な っ た の か 。

そ も そ も、 新 保 険 法 の 立 法 過 程 に お い て は、 当 初 保 険 法 の 適 用 範 囲 の 明確 化 とい う観 点 か ら 「保 険 契 約 」 で は な く 「保 険 」 の 定 義 に つ い て 定 め る こ とが 検 討 さ れ て い た 。 こ の 点 、 平 成19年8月8日 に 法 制 審 議 会 保 険法 部 会 に お い て決 定 さ れ た 「保 険 法 の見 直 しに 関 す る 中 間試 案 」(以 下

「中 間 試 案 」 とい う)の 「第1保 険 法 の 適 用 範 囲」 に お い て は つ ぎの よ うに 記 述 され て い る 。

現 行 商 法 の保 険 契 約 に 関す る規 定 が適 用 又 は 準用 の対 象 と して い る もの(保 険 を営 業 と してす る者 を保 険 者 とす る保 険 と相 互 保 険)だ けで な く、 契 約 と して実 質 的 に

これ ら と同様 の もの(共 済 等)も 、 適 用範 囲 に含 め る もの とす る。

(注1)保 険法(第2以 下 の各 規律)の 適 用 の対 象 と なる 『保 険 』の 意義 につ い て は、

例 えば、 『保 険 、共 済 そ の他 い か な る契 約 の類 型 で あ るか を問 わ ず 、発 生 す る か ど

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保険法 における保険契約 の概念(鈴 木達次)

うか 又 は発 生 の時 期 が 不 確 定 な 一定 の事 故(一 定 の 偶 然 の 事故)が 発 生 す る危 険 に備 え る た め に、 多 数 の 者 が そ の危 険 に応 じて保 険 料 を拠 出 し、事 故 が 発 生 した 場 合 にそ の拠 出 を受 けた 者 が 金 銭 の支 払 そ の他 の給 付 を し、危 険へ の備 え を実現 す る こ とを 内容 とす る仕 組 み 』 をい う とす る こ とが 考 え られ る が 、 こ れ を法 文 上 規 定 す る こ との 当否 を含 め 、 なお 検討 す る」

右 の 中 間 試 案 に よ る と、 「保 険 」 の定 義 を新 設 す る こ と につ い て は、 新 保 険 法 の 適 用 対 象 と して 、(一 定 の 要 件 を充 た し た)共 済 等 を も含 め よ う

とい う意 図 が 伺 え る 。 こ の 点 、 右 中 間試 案 の 補 足 説 明(法 務 省 民 事 局 参 事 官 室 「保 険 法 の 見 直 しに 関 す る 中 間 試 案 の 補 足 説 明 」)で は、 非 常 に多

くの 部 分 を 共 済 との 関係 に割 い て い る こ とか ら も明 らか で あ ろ う。

しか る に、 こ れ を も と に意 見 募 集(パ ブ リ ッ ク ・コ メ ン ト)に 付 した と こ ろ 、 共 済 等 を適 用 対 象 に す る こ と につ い て は賛 成 の 意 見 が 多 か っ た もの の 、 「保 険 」 に 関 す る 定 義 規 定 を設 け る こ と に は 否 定 的 な意 見 が 少 な くな か っ た よ う で あ る13。 ま た、 実 は 、 事 務 局 と し て は、 保 険 法 部 会 で の 審 議 が ス タ ー トした 時 点 で は 保 険 の 定 義 規 定 を お く こ と に は消 極 的 で あ っ た14。 さ ら に 「保 険 」 の 定 義 を規 定 し よ う に も 「す べ て の 要 件 を過 不 足 な く規 定 す る こ と は 困難 で あ る」 とい う認 識 も あ っ た15。 この 点 に 関 連 し 「保 険 の制 度 の技 術 的構 造 は 、 保 険者 の 運 用 に依 存 す る と考 え られ 、 法 律 上 、 こ れ を保 険 の 要 素 と して規 定 した 場 合 、 あ る 保 険 類 似 の 契 約 が 、 か か る 技 術 的構 造 を有 さ な い もの と し て、 保 険 契 約 者 の 予 期 に反 し保 険 法 の 規 律 の 適 用 対 象 か ら除 外 さ れ る な ど とい う こ と も生 じか ね ず 妥 当 で な い 」 とい う こ と も指 摘 さ れ て い る16。 そ こで 、 保 険 法 部 会 で は、 保 険 の 定 義 規 定 を 設 け る とい う方 針 は採 用 しな い と い うこ と に な っ た17。

しか し、 も し、 「保 険 」 につ い て の 定 義 規 定 を置 か な い と い う こ とに な る と、 共 済 等 につ い て 、新 保 険 法 の 適 用 対 象 か 否 か 、 法 典 上 不 明 確 とな る こ とは 否 定 で き な い 。 も ち ろ ん、 従 来 か ら一 定 の 要 件 を 充 た した 共 済 に つ い て は保 険 法 の 規 定 が 類 推 適 用 さ れ る と解 釈 さ れ て き て お り、 か か る 形 式 論 理 の み に立 脚 して い え ば 、 そ の 点 を取 り立 て て 明 文 化 す る こ との 意 義 は 乏 しい も の と もい え よ う。 しか し、 た と え一 定 の 要 件 を 充 た した

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共 済 契 約 が 保 険 契 約 そ の もの で あ る こ と が 理 論 上 明 ら か だ と し て も、 国 の 立 法 の あ り方 と し て は 、 これ を 明 文 に お い て示 す こ とに 意 義 が あ る こ と は 当然 で あ ろ う。 そ こで 、 事 務 当 局 と して は 、 た と え 「保 険」 の 定 義 を 示 さな い ま で も、 この 点 を明 確 化 す る 必 要 は あ る と考 え て 保 険 法 部 会 資 料25・ 保 険 法 の 見 直 し に関 す る要 綱 案(第1次 案 ・下)16頁 に 「これ と 関連 して 、 契 約 の 規 律 に つ い て 定 め る 保 険 法 の 規 定 が 共 済 等 に も適 用 さ れ る こ と を明 確 化 す る こ とを検 討 す る」と付 け 加 え た わ け で あ る。 そ の 後 、 同 じ く事 務 当 局 が 示 し た資 料 で は、 む し ろ こ れが 原 則 と さ れ て い る18。

そ の 後 、 右 の よ う な立 法 目 的 を達 成 す る た め 、 第2条 中 に 「保 険 契 約 」 の 定 義 が 置 か れ る こ と とな っ た よ う で あ る 。 そ れ ゆ え 、 そ の 成 り立 ち か

らい っ て、 右 規 定 の 実 質 的 存 在 意 義 は 「保 険 契 約 、 共 済 契 約 そ の 他 い か な る名 称 で あ る か を 問 わ ず 」 と して 、 原 則 と して 共 済 契 約 も保 険 契 約 概 念 に含 ま れ る と し た点 に あ る19。

6そ の よ うな 経 緯 で 置 か れ た と して も、 法 律 上 は これ が 「保 険 契 約 」 の 定 義 で あ る20。 前 述 した よ う に 、 「第 一 章 総 則 」 に は 保 険 契 約 を規 律 す る条 文 は な く、 右 定 義 に よ っ て 、 「保 険 契 約 」 の 限界 が 画 され る こ との 意 義 は 多 くな い もの と思 わ れ る が 、 損 害 保 険 契 約 とい っ た 各 種 の 「保 険 」 契 約 の 定 義 が こ れ に よ って 定 ま るの で あ る か ら(2条6号 等 の文 言 を参 照)、

そ の意 味 す る とこ ろ を確 定 して お く必 要 は 大 き い21。

第 一 に、 保 険 者 の 負 担 す る債 務 か ら見 て い く と、 そ の 目 的 は 「一 定 の 事 由 が 生 じた こ と を条 件 と して 財 産 上 の 給 付(生 命 保 険 契 約 及 び 傷 害 疾 病 定額 保 険 契 約 に あ っ て は 、金 銭 の 支 払 に 限 る 。 以 下 「保 険 給 付 」とい う。〉

を行 う こ と」 と され て い る 。

こ の うち 、 そ の 条 件 事 実(保 険 事 故 〉 に つ い て は、 損 害 保 険 契 約 の 定 義 規 定(2条6号 〉 と比 べ て み れ ば 明 ら か な よ う に 、 条 文 上 「偶 然 」 性 が 要 求 さ れ て い な い 。 そ こ で 、 一 部 の 学 説 は 、 同 項 の 「一 定 の事 由 につ い て は 必 ず し も 『偶 然 の 事 実 』 で あ る こ と は要 求 さ れ て い な い 。 こ れ は 、 損 害 保 険契 約 につ い て は・・・偶 然 性 の概 念 が 要 件 化 され てい る もの の(法

2条6号)、 他 の類 型 の保 険 契 約(生 命 保 険 契 約 、 傷 害 疾 病 定 額 保 険契 約 〉

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保険法における保険契約の概念(鈴 木達次)

に つ い て は給 付 の 条 件 につ き 『偶 然 性 』 を絶 対 的 な 構 成 要 因 とは して い な い こ と に よ る(法2条8号 ・9号)」 と主 張 して い る22。

しか し、 この よ う な見 解 に は 疑 問 が あ る。

な る ほ ど、 偶 然 性 の 意 義 に つ い て 、 事 故 が 発 生 す る か 否 か(条 件 が 成 就 す る か 否 か)が 不 確 実 で あ る と い う意 味 に 限 定 して 考 え る な らば 、 終 身生 命 保 険 契 約 の よ う な場 合 に は偶 然 性 は な い(人 は 必 ず 死 ぬ)。 しか し、

も と も と保 険 事 故 の 偶 然 性 に つ い て は 「そ の 時 期 の み が 不 確 定 な場 合 を も保 険 事 故 と な し う る 」 と さ れ 、 か つ 、 そ の よ う な 偶 然 な事 故 の 場 合 も 含 め 、保 険事 故 に偶 然 性 が 要 求 され る の は 、 生命 保 険 契 約 に 関 して は 「法 文 上 は 明 に され て い な い が 、 保 険 制 度 の 性 質 上 当 然 の 要 請 で あ る」 と い わ れ て きた23。 そ れ ゆ え 、 前 述 の 学 説 が 、 右 の よ う な 意 味 で の 「偶 然 性 」 す ら必 要 な い とい う主 張 で あ る とす れ ば 賛 成 しが た い 。

も っ と も、 そ れ で は なぜ 、 損 害 保 険 契 約 との 問 で そ の文 言 が 異 な る か 、 換 言 す れ ば 、 損 害 保 険 契 約 の 定 義 に お い て の み 、 な ぜ 保 険 事 故 の 「偶 然 」 性 が 明 文 化 され て い る の か 、 とい う疑 問 は生 じ よ う。 こ の 点 に つ い て は 必 ず し も 明 ら か で は な い が 、 損 害 保 険 契 約 に お い て は 、 生 命 保 険 契 約 と 異 な り、 事 故 発 生 の 時 期 だ け が 不 確 定 な も の に つ い て ま で 保 険 事 故 とす

る わ け に は い か な い 、 とい う考 え方 に基 づ く もの で あ ろ う。 換 言 す れ ば、

損 害 保 険 契 約 に お い て は 、 そ の よ う な形 で 「偶 然 性 」 の 意 義 を 限 定 す る とい う こ とな の で あ ろ う24。 とい う の も、 も し、 事 故 発 生 の 時 期 だ けが 不 確 定 な もの も損 害 保 険 契 約 に お け る保 険 事 故 の 偶 然 性 を充 た す とす れ ば、

「保 険 ノ 目的 ノ性 質 若 ク ハ瑕疵 、 其 自 然 ノ消 耗 」(平 成20年 改 正 前 商 法 641条 前 段)と い っ た もの ま で 、保 険 事 故 た り う る とい う こ とに な っ て し

ま うか らで あ る。

7つ ぎ に、 保 険 事 故 発 生 後 の 保 険 者 の 給 付 で あ るが 、 こ れ に つ い て は 「財 産 上 の 給 付(生 命 保 険 契 約 及 び 傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 にあ っ て は、

金 銭 の 支 払 に 限 る …)を 行 う こ と」 と規 定 さ れ て い る。 括 弧 内 に お い て 生 命 保 険 契 約 お よ び傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 に つ い て 一 定 の 限定 は付 され て い る もの の 、 保 険 契 約 一 般 の もの と し て は 「財 産 上 の 給 付 」 と さ

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れ て お り、 非 常 に漠 然 と して い る。 先 に述 べ た 、 平 成20年 改 正 前 商 法 の も と で 主 張 され た 「… 相 手 方 ま た は 第 三 者 に あ る 金 額 を 支 払 うべ き こ と を約 す る契 約 をい う」 とい う学 説 で も、 「あ る 金 額 を 支 払 う」 こ と と され て い る の に 、 そ れ 以 上 に曖 昧 な 表 現 とな っ て い る 。 そ れ ゆ え、 こ れ で は ま さ に無 内 容 で あ っ て 、 新 保 険 法 の 適 用 の 限 界 を 画 す とい う実 践 的 機 能 が 果 た せ な い 、 とい う批 判 が 妥 当 し よ う。 実 際 そ の 文 言 上 は、 賭 博 行 為 もや デ リバ テ ィ ブ も入 っ て くる余 地 が あ る の で は な か ろ うか25。

ま た 、 立 法 形 式 上 非 常 に問 題 な の は 、 括 弧 内 に お い て 「生 命 保 険 契 約 及 び傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 に あ っ て は … 」 と され て い る点 で あ る。 と い うの は、 後 述 す る よ う に 、 こ れ ら の各 保 険 契 約 の 定 義 規 定(2条8号 ・ 9号)に お い て は 、 い ず れ も 「保 険 契 約 の うち … 」 と さ れ て お り、 そ の意 味 で 「保 険 契 約 」 の 定 義 中 に 「生 命 保 険 契 約 」 お よび 「傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 」 と い う文 言 を用 い る こ と は 、 結 局 トー トロ ジ ー と な る可 能 性 が あ るか らで あ る。

8第 三 に 、 保 険 契 約 者 が 負 担 す る債 務 の 目 的 と して は 「当 該 一 定 の 事 由 の 発 生 の 可 能 性 に応 じた も の と して 保 険 料(共 済 掛 金 を含 む 。 以 下 同 じ。)を 支 払 う こ と」 と され て い る。 こ こ で注 目す べ き は 「当 該 一 定 の 事 由 の 発 生 の 可 能 性 に 応 じた も の と して 」 と い う 点 で あ る26。 右 の 文 言 はや や 難 解 で あ る が 、 「保 険 料 が 、 給 付 ・反 対 給 付 均 等 原 則 に 従 っ て 算 出 さ れ る も の で あ る こ と」 を意 味 す る とす る見 解 や27、 「大 数 の 法 則 が 基 本 的 な要 素 で あ る こ と を示 して い る」 とす る見 解 が あ る28。 も し、 前 者 の よ

う に考 え た 場 合 に は 、 一 定 の 共 済 に お い て み ら れ る よ う に 、 給 付 ・反 対 給 付 均 等 原 則 に従 っ て保 険 料(共 済 掛 金)が 算 出 さ れ て は い な い 場 合 に

は右 の 要 件 を充 足 しな い もの と解 され よ う29。 ま た 、 後 者 の よ う に考 え た 場 合 に は 、 平 成20年 改 正 前 商 法629条 の も とで 解 釈 論 上 損 害 保 険 契 約 概 念 に含 ま れ る か否 か 問 題 と さ れ て きた個 別 の損 害 担 保 契 約 が 「保 険 契 約 」

に は該 当 しな い とい う こ とが 明 確 化 され た こ と にな る。

ま た、 規 定 の 文 言 と して 「報 酬 」 で は な く 「保 険 料 」 と さ れ て い る点 も 注 目 さ れ る 。 これ は、「新 法 は 、適 用 対 象 を営 利 保 険 に 限 定 して お らず 、『報

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保険法 にお ける保 険契約 の概念(鈴 木達次)

酬 』 の 用 語 を維 持 す る の は妥 当 で な い と考 え られ るた め」 とい われ30、 加 え て 、事 務 当 局 か らは 、保 険料 を 「報 酬 」 と称 す る こ と に違 和 感 が あ る とか 、 旧 商 法629条 で は 「報 酬 」 と され て い る の に 同637条 にお い て は 「保 険料 」 と され て い る な ど、 文 言 の 不 統 一 が あ る とい っ た 点 も指 摘 され て い る31。

しか し、 「報 酬 」 とい う コ トバ は民 法 の 雇 用 ・請 負 ・委 任 の 各 契 約 に お い て 用 い ら れ 、 会 社 法 上 も発 起 人 や 取 締 役 等 に 関 して使 用 さ れ て い る が 、 い ず れ にせ よ、 これ は役 務 な い し職 務 の 執 行 の対 価 を意 味 す る 。 したが っ て 、 新 保 険 法 の 適 用 対 象 が 営 利 保 険 に限 定 さ れ な い と して も、 この コ トバ を用 い る の に不 都 合 は あ りえ ない 。 もち ろ ん 、文 言統 一 の必 要性 とい う点 に つ い て は首 肯 で き な い で は ない が 、前 述 した よ う な 「報 酬 」 の 一 般 的意 義 か らす れ ば 、 保 険 料 を 「報 酬 」 と表 現 す る こ と に違 和 感 が あ る と い う主 張 は理 解 で き ない 。 む しろ 、 保 険 契 約 者 が 負 担 す る 債 務 が 保 険 者 の危 険負 担 給 付(義 務 〉と対 価 性 を もつ とい う こ と を 明 らか にす る とい う点 で は 「報 酬 」とい う コ トバ を用 い る ほ うが 優 れ て い た とい え よ う32,33。い ず れ にせ よ、

こ こ で 「保 険 料 」 とい うの は 、 保 険 者 の 危 険 負 担 に対 す る対 価 を意 味 す る こ とは 間 違 い な い 。

三 「 損害保険契約」(2条6号)の 意義

1新 保 険 法2条6号 は損 害 保 険 契 約 の 定 義 を定 め て い る 。 もっ と も、

同 号 で 明 示 さ れ て い るの は保 険 者 の 給 付 の 部 分 だ け で あ っ て 、 「保 険 契 約 の う ち」 と され て い る こ と か ら明 らか な よ う に 、 右 給 付 の 記 述 以 外 は2 条1号 の規 定 が 援 用 され る。

そ こ で 、 そ れ ら を 合 わ せ て 、 損 害 保 険 契 約 を 定 義 す る とす れ ば つ ぎ の よ う な もの と な る 。

保 険 契 約 、 共 済 契 約 そ の 他 い か な る名 称 で あ る か を問 わ ず 、 当 事 者 の一 方(保 険 者)が 一 定 の偶 然 の 事 故 に よ っ て 生 ず る こ との あ る損 害 を て ん補 す る こ と を約 し、相 手 方 が こ れ に対 して 当 該 一 定 の 事 由 の発 生 の 可 能 性 に応 じ た もの と して 保 険 料(共 済 掛 金 を含 む 〉 を支 払 う こ

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と を約 す る契 約 をい う。

2こ の 「保 険 者 が 一 定 の偶 然 の 事 故 に よ っ て 生 ず る こ との あ る損 害 を て ん 補 す る こ と を約 す る」 とい う表 現 は 、 平 成20年 改 正 前 商 法629条 を 口 語 化 した も の にす ぎ な い か ら、 基 本 的 に は 、 新 保 険 法 に い う損 害 保 険 契 約 の 意 義 も平 成20年 改 正 前 商 法 の そ れ と 同 様 で あ ろ う34。 こ の 点 、 被 保 険利 益 に 関 し、 平 成20年 改 正 前 商 法630条 を 口語 化 した 規 定(3条) が 設 け られ て い る こ と と併 せ 考 えて み れ ば 、損 害 保 険 契 約 とは損 害 を填 補 す る こ と を 目的 とす る 契 約 で あ る とい わ ざ る を え な い で あ ろ う(絶 対 説 〉。

も っ と も、 同様 の 文 言 を用 い る 平 成20年 改 正 前 商 法 の 解 釈 論 と して も、

こ の ほ か 、 相 対 説 お よ び修 正 絶 対 説 が あ っ た か ら、 新 保 険 法 の も とで も、

被 保 険利 益 を め ぐっ て は 同様 の争 い が 続 くこ と とな る と思 わ れ る35。

3つ ぎ に 、保 険 契 約 の 意 義 にお い て 言 及 した よ う に 、 損 害 保 険 契 約 の 定 義 中 には保 険 事 故 の 偶 然 性 を示 す 文 言 が 挿 入 さ れ て い る。 こ こで 保 険事 故 の偶 然 性 と は 「保 険 契 約 の成 立 の時 に お い て、保 険 事 故 の発 生 と不 発 生 とが い ず れ も可 能 で あ っ て 、 そ の い ず れ と もい ま だ確 定 し て い ない こ と」

を 意 味 す る 。 決 して 、 具 体 的 に 生 じた 保 険 事 故 が 「被 保 険 者 の 故 意 に よ る もの で な い 」 と い う こ と を指 す わ け で は な い36。 こ の 点 は 平 成20年 改 正 前 商 法629条 の 解 釈 論 と して も争 い は な か っ た と思 わ れ る が 、 保 険 法 部 会 の 審 議 で は 「偶 然 」 とい う文 言 を挿 入 す る と そ の よ う な誤 解 が 生 ず

る とい う懸 念 も指 摘 され た37。

い ず れ にせ よ、平 成20年 改 正 前 商 法 と同様 「一 定 の 偶 然 の 事 故 」 とい うの み で 、 損 害 保 険 契 約 で は 保 険 事 故 の 目的(対 象)な い し種 類 につ い て は 限 定 が な さ れ て い な い 。

もっ と も、文 言 上 限定 が ない とは い え 、平 成20年 改 正 前 商 法 の も とで は 、 人 の 生 死 を保 険事 故 とす る もの(人 の生 死 に よ って 生 ず る こ と あ るべ き損 害 を填 補 す る こ とを 目的 とす る契 約)が 損 害 保 険 契 約 た り う るか に つ い て は疑 問 も あ っ た38。 とい うの は、人保 険=定 額 、物 ・財 産保 険=不 定 額(損 害) とい う結 び つ き を認 め39、 か つ 、 これ が 絶 対 的 な もの で あ る と理 解 す る 場

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保険法 にお ける保 険契約 の概念(鈴 木達次)

合 に は、 人 の 生 死 を保 険 事 故 とす る保 険 は損 害 保 険 た り得 ず 、 ま た、 か り にそ の よ うな 論 理 的 関係 は 絶 対 の もの で は な い と して も、 人 の 命 の値 段 そ の も の を金 銭 的 に評 価 して そ の損 害 額 を算 定 す る こ と は不 可 能 で あ り、 そ れ ゆ え そ の よ う な損 害 保 険契 約 は成 り立 た な い か らで あ る。

しか し、 新 保 険 法 の も と で は、 人 保 険 で あ りな が ら損 害 保 険 契 約 で あ る もの と して、 「傷 害 疾 病 損 害 保 険 契 約 」 を認 め て お り(2条7号)、 前 述 の よ う な論 理 的 関係 を絶 対 視 す る こ とは で きな い 。 平 成20年 改 正 前 商 法 の も と で は、 典 型 化 さ れ た 保 険 契 約 の 種 類 が 損 害 保 険 契 約 と生 命 保 険 契 約 だ け で あ り、 そ の よ う な法 制 度 の も と で は 人 保 険 な い し生 命 保 険 は 定 額 保 険 で な け れ ば な らな い と い う考 え 方 も成 り立 ち え な い で は な か っ た が 、 新 保 険 法 で は 困 難 で あ ろ う。

ま た 、 人 の命 の値 段 云 々 とい う点 で あ る が 、 た しか に、 「人 の 命 は全 地 球 よ り重 い 」 とい わ れ る よ うに 、 人 の 命 の値 段 は無 限大 で あ っ て算 定 不 能 な もの で あ る こ と は 間違 い ない40。 しか し、 こ れ は 、 物 保 険 にお い て そ の 物 自体 の 価 値 を算 定 す る の と同様 の 意 味 で 人 の 命 の価 値 を算 定 し よ う とす る か ぎ りにお い て で あ る。 他 方 、 人 の 死 亡 と相 当 因果 関係 あ る損 害 に は遺 失 利 益 ・葬 儀 代 等 もあ りう る 。 か つ 、 不 法 行 為 責 任 に お け る損 害 の 認 定 な どで 明 らか な よ うに 、 か か る損 害 の 算 定 が 可 能 で あ る こ と は疑 い の余 地 は な い 。 そ うで あ る とす る と、 こ れ を填 補 す る 契 約 は 有 効 に 成 立 し う る し、

もち ろ ん そ れ は損 害 保 険 契 約 に属 す る とい う こ とが で き よ う41。

これ に対 し、 「損 害 て ん補 方 式 の 生 命 保 険 を 許 容 す べ き か否 か に つ い て は 立 法 過 程 にお い て も議 論 は され て お らず 、 む し ろ か か る タ イ プ の 契 約 が保 険 法 の 規 律 対 象 とは され な い こ とは 当 然 の 前 提 と考 え られ て い た 」 と 指 摘 す る見 解 も あ る42。 しか し、 議 論 の 対 象 に な ろ う と な る ま い と、 保 険 法2条 の 規 定 に該 当 す る もの は 「保 険 契 約 」 と して 新 保 険 法 の 適 用 を受 け る。 た と え、 そ の よ う な 「契 約 類 型 は 実 務 に お け る ニ ー ズ や 実 現 可 能 性 が 乏 し く、議 論 す る 実 益 が 乏 しか っ た 」 と して も43、 そ の こ とが か か る 契 約 が 損 害 保 険 契 約 に該 当 す る か 否 か と い う点 に影 響 を 及 ぼ す こ と は あ

り得 ない で あ ろ う。

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四 「 生命保険契約」(2条8号)の 意義

1新 保 険 法2条8号 は 生 命 保 険 契 約 の 定 義 を 定 め て い る。 も っ と も、

損 害 保 険 契 約 の 場 合 と 同様 、 同 号 で 明 示 さ れ て い る の は 保 険 者 の 給 付 の 部 分 だ け で あ っ て 、 「保 険 契 約 の うち 」 と され て い る こ とか ら明 らか な よ

う に、 右 給 付 の 記 述 以 外 は2条1号 の規 定 が 援 用 され る。

そ こで 、 そ れ ら を 合 わせ て 、 生 命 保 険 契 約 を定 義 す る とす れ ば つ ぎ の よ う な もの とな る。

保 険 契 約 、 共 済 契 約 そ の 他 い か な る 名 称 で あ る か を 問 わ ず 、 当 事 者 の 一 方 が 人 の 生 存 又 は死 亡 に 関 し一 定 の 保 険 給 付(金 銭 の 支 払 に か ぎ る)を 行 う こ と を約 し、 相 手 方 が これ に対 し て 当 該 の 生 存 又 は 死 亡 の 発 生 の 可 能 性 に応 じた もの と して保 険料(共 済 掛 金 を含 む 。 以 下 同 じ。)

を支 払 う こ と を約 す る契 約 を い う(傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 に該 当 す る もの を除 く)。

2生 命 保 険 契 約 の 定 義 に つ い て も、 損 害 保 険 契 約 の 場 合 と 同 様 、 基 本 的 に は平 成20年 改 正 前 商 法(673条)を 口語 化 した もの と な っ て お り、

した が っ て 、 新 保 険 法 に お い て も、 生 命 保 険 契 約 は 、 人 の 生 存 ま た は死 亡 を保 険 事 故 とす る定 額 保 険 で あ る こ とは 明 らか で あ ろ う44。

も っ と も、 厳 密 に は2条1号 お よ び8号 の 文 言 に よ っ て 定 額 保 険 で あ る こ とが 表 わ され て い る か 疑 問 の 余 地 が な い で は ない 。 とい う の は 、2条 8号 の 「一 定 の」 とい う の は 保 険 給 付 に か か っ て い るの で あ り、 「特 定 の」

とい う意 味 で あ る と解 さ れ る か ら、 こ れ と2条1号 の 括 弧 内 と併 せ て読 ん で も 「金 銭 の 支 払 」 が 一 定 の 額 で あ る こ と は 明 示 さ れ て い な い と もい い う る か らで あ る 。 そ の 意 味 で 若 干 気 に な る部 分 で は あ る が 、 審 議 過 程 そ の他 か ら して 、 定 額 保 険 と して 規 定 され た こ とは 明 らか で あ ろ う45。

3ま た 「…(傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 に 該 当 す る も の を 除 く)」 と い う表 現 が あ る こ とか ら、傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 と の 関 係 が 問 題 とな る。

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保 険法における保険契約の概念(鈴 木達次〉

あ る 定 額 保 険 契 約 が 生 命 保 険 契 約 か 、 傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 か に よ っ て、

被 保 険者 の 同 意(38条 、67条)お よ び保 険 者 の免 責(51条 、80条)の 点 で 差 異 が あ るか ら、 この 点 は極 め て 重 要 で あ る。

そ もそ も、 一 口 に傷 害 保 険 契 約 、 疾 病 保 険 契 約 とい っ て も様 々 な もの が あ り うる が 、そ の う ち 、新 保 険 法 は定 額 保 険 と して な され る もの だ け を 、

と くに傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 と呼 ん で い る(2条9号)。 しか も、 か か る 傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 に つ い て は 、 現 実 の 保 険 商 品 と して は、 傷 害(な い し疾 病 〉 とい う事 実 の 発 生 だ け で保 険 金 を 支 払 う とい う約 款 に は な っ

てい な い の が 普 通 で あ っ て 、傷 害(な い し疾 病)の 直 接 の結 果 と して 、死 亡 、 後遺 障 害 、 入 院 等 の 事 実 が 生 じた 場 合 に の み 、 保 険 金 が 支 払 わ れ る もの と さ れ て い る。

そ れ ゆ え 、 そ の よ う な保 険 商 品 を 前 提 と した 場 合 、 死 亡 に よ っ て支 払 わ れ る保 険 金(死 亡 保 険 金)に つ い て は 生 命 保 険 契 約 と の 関 係 が 問 題 と な らざ る を え な い 。 なぜ な ら、実 務 学 説 に お い て右 の保 険 商 品が 「傷 害(な い し疾 病)保 険 」 と よば れ て い よ う と も、保 険 金 支 払 の契 機 と な る事 実(条 件 事 実)は 「人 の 死 亡 」 で あ る か らで あ る。 こ の 点 に つ い て 様 々 な見 解 が あ るが 、 そ もそ も定 額 保 険 契 約 に つ い て は 、 「保 険 事 故 」 と は具 体 的 な 金銭 給付 義務 を発 生 させ る条件 とな る事 実 を指 す もので あ るか ら、 理論 上 死 亡 保 険金 の 部 分 に つ い て は 、 生 命 保 険 そ の も の で あ る と い わ ざ る を え な い46(な お 、 こ れ ら の点 につ い て は 、 傷 害 疾 病 損 害 保 険 契 約 ・傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 の箇 所 で詳 し く検 討 す る)。

新 保 険 法 は 、 理 論 的 分 類 と して は 右 の 見 解 が 正 しい こ と を前 提 と しつ つ(特 段 の 断 り書 き を入 れ な け れ ば、 こ れ は生 命 保 険 契 約 に(も?)属 す る とい う こ と に な る)、 立 法 政 策 的 に これ を 生 命 保 険 契 約 に関 す る条 文

の適 用対 象 か ら外 した もの で あ る47。

五 「 傷害疾病損害保 険契約」(2条7号)・ 「 傷害疾病定額保険 契約」(2条9号)の 意義

1新 保 険法 で は、従来 第 三分野 と呼 ばれ て きた傷 害保 険 契約 ・疾病

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保 険 契 約 につ い て の 規 定 を置 い た こ とが これ ま で に な い 特 徴 で あ る。 し か も、 そ の う ち 、傷 害 疾 病 に よ っ て 生 ず る こ と あ るべ き損 害 を填 補 す る もの は損 害 保 険 契 約 の 一種 と され(2条7号 。 傷 害 疾 病 損 害 保 険 契 約)48、

他 方 定 額 保 険 の 場 合 に は 、 損 害 保 険 契 約 、 生 命 保 険 契 約 に 続 く第 三 の 類 型 と さ れ て い る(2条9号 。 傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約)。 従 来 の各 試 案 で は 、

い ず れ も これ ら を合 わせ た傷 害(疾 病)保 険 契 約 を 、 損 害 保 険 契 約 、 生 命 保 険 契 約 に続 く第 三 の類 型 とす る よ う提 案 して い た の で あ り、 新 保 険

法 の よ う な分 類 は 見 られ な か っ た。

新 保 険 法 の立 場 は 、 基 本 的 に は 、 契 約 の 目的(効 果 意 思 の 内 容)を 基 準 と して 理 論 的 な 分 類 を行 っ た もの と思 わ れ る が 、 そ の 点 を検 討 す る に あ た っ て は 、 ま ず 傷 害 保 険 契 約 ・疾 病 保 険 契 約 とい う概 念 を整 理 して お く必 要 が あ ろ う。 け だ し、 こ れ ら の コ トバ は 、 も と も と論 者 に よ っ て 曖 昧 な ま ま用 い られ て きた か らで あ る 。 そ こで 、 平 成20年 改 正 前 商 法 の も とで 、 契 約 法 理 論 上 どの よ う な 議 論 が な さ れ て きた か 、 概 観 して お くこ と と した い 。 な お 、 説 明 の便 宜 の た め に 、 以 下 で は も っ ぱ ら傷 害 保 険 契 約 につ い て述 べ る49。

2一 般 に傷 害 保 険 契 約 と は 「被 保 険 者 が 急 激 か つ 偶 然 な 外 来 の 事 故 に よ っ て 身体 に傷 害 を 被 っ た と き に保 険 金 を支 払 う こ と を 目的 とす る保 険契 約 」 で あ る と定 義 づ け られ て き た50。

そ も そ も、 平 成20年 改 正 前 商 法 は 、 保 険 契 約 を 「偶 然 ナ ル一 定 ノ事 故 ニ 因 リテ 生 ス ル コ トア ル ヘ キ損 害 ヲ填 補 ス ル コ ト」 を 目的 とす る損 害 保 険 契約(629条) と、 「(相手 方 又 ハ 第 三 者 ノ)生 死 二関 シ一 定 ノ金 額 ヲ支 払 フヘ キ コ ト」 を 目 的 とす る生 命 保 険 契 約(673条)と に分 類 して い た(前 述)。 しか し、 身体 に傷 害 を被 る こ とが 偶 然 の 事 故 で あ る こ とは 間 違 い な

い か ら、傷 害 保 険 契 約 に よ っ て 支 払 が 約 束 さ れ て い る給 付 が 「損 害 ノ填 補 」 の性 質 を持 つ もの で あ る とす れ ば 、 これ は損 害保 険 契 約 の一 種 とい うこ と にな る51。 これ に対 して 、 約 定 の 給 付 が 「一 定 ノ金 額 」 の支 払 で あ る場 合 に は損 害 保 険 契 約 で は な い 。 こ の 場 合 に は 定 額 保 険 契 約 の 一 種 で あ る と い う こ と に な る が 、 傷 害 とい う事 実 と人 の 生 死(生 存 ま た は 死 亡)と い

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保 険法 にお ける保 険契約 の概念(鈴 木達次)

う事 実 は 明 らか に異 な る もの で あ る か ら、 字 義 通 り、 人 の 身体 に 「傷 害 」 が 発 生 した とい う こ と‑そ れ だ け‑を 理 由 と して 保 険 金 が 支 払 わ れ る と す れ ば 、 そ れ は 生 命 保 険 契 約 で は な い 。 した が っ て 、 そ の よ う な 傷 害 保 険 契 約 は損 害 保 険 契 約 で も生 命 保 険 契 約 で も ない とい う こ とに な る52。

しか し、 わ が 国 の 実 務 で 取 り扱 わ れ て い る もの の 多 くは、 そ の 字 義 と は 異 な り、人 の 身体 に傷 害 を生 じた だ け で は保 険 金 が 支 払 わ れ な い。 傷 害 の 結 果 と して 一 定 の期 間 内 に被 保 険 者 が 死 亡 した こ と(死 亡 保 険 金)、 重 大 な後 遺 障 害 が 生 じた こ と(後 遺 障 害 保 険 金)、入 院 した こ と(入 院保 険 金) ま た は 通 院 した こ と(通 院 保 険 金)等 が 必 要 で あ る。 しか も、 支 払 わ れ る金 額 は そ れ ぞ れ 生 じた 事 由 ご と等 に異 な っ て い る。 この よ う に、 定 額 保 険 で あ る と は い っ て も、実 際 に給 付 され る保 険 金 額 は一 律 で は な い(段 階 式 定 額 保 険)。

つ ぎ に、 そ の 保 険 事 故 で あ る が 、 ま ず 損 害 填 補 を 目 的 と し て い る もの お よび 定 額 保 険 で も人 の 身 体 に 「傷 害 」 が発 生 した とい う こ と‑そ れ だ け‑を 理 由 と し て保 険 金 が 支 払 わ れ る もの に つ い て は 、 そ の 保 険 事 故 は

「傷 害 」(身 体 的 損 傷)と い う事 実 で あ る こ と は 間違 い な い で あ ろ う。

こ れ に対 して 、 段 階 式 定 額 保 険 につ い て は 単 純 に は 考 え られ な い 。 そ も そ も、 傷 害 保 険 約 款 で は 、保 険 金 が 支 払 わ れ る た め に は、 ① 急 激 か つ 偶 然 の 外 来 の で き ご と(事 故)が 生 じ、 ② こ れ に よ っ て(で き ご と と 身体 的 損 傷 と の 因 果 関係)、 ③ 身体 的 損 傷 が 発 生 し、 ④ こ の 身 体 的損 傷 の 直 接 の 結 果 と して(身 体 的 損 傷 と死 亡 等 との 因果 関 係)、 ⑤ 被 保 険 者 が 死 亡 しま た は 後 遺 障 害 を生 ず る こ と等 が 必 要 で あ る と さ れ る。 これ ら五 つ の こ とが らの うち 、 ① か ら③ の 事 実 を 一 つ の 事 実 と理 解 した う え 、 こ れ を保 険 事 故 と解 す る の が 通 説 で あ る53。 これ は先 に述 べ た傷 害 保 険 契 約 の 定 義 、 す な わ ち、 「被 保 険 者 が 急 激 か つ 偶 然 な外 来 の事 故 に よ っ て 身体 に傷 害 を被 っ た と き に保 険 金 を 支 払 う こ と を 目的 とす る 保 険 契 約 」 か ら 素 直 に導 か れ る解 釈 とい え よ う。

しか し、 保 険 金 が 支 払 わ れ る た め に は 、保 険 期 間 内 に 生 じ た保 険 事 故 で あ る必 要 が あ る 。 他 方 、 上 述 した ① の で き ご と と③ の 身 体 的 損 傷 は概 念 的 に別 個 の 事 実 で あ る う え、 ① の で き ご と か ら③ の 身 体 的損 傷 が 生 ず

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る ま で は 、‑物 理 的 に は ほ とん どな き に等 し い が 、 少 な く と も理 論 的 に は‑、 時 間 的 な 幅 が あ る。 そ れ ゆ え 、通 説 の よ うに 、か か る一 連 の 事 実(急 激 か つ 偶 然 の 外 来 の事 故 に よ っ て 身 体 的 損 傷 が 生 ず る こ と)を 保 険 事 故 で あ る と把 握 す る こ とは 正 当 で は な い 。 ま た 、 こ の 見 解 に よ る と、 身 体 的損 傷 が 生 じた 後 、そ の 直 接 の結 果 と して 、被 保 険者 が 死 亡 す る こ と等(上 記 ⑤)は 、 保 険 金 支 払 の 契 機 に は な っ て も、保 険 事 故 そ の も の で は な い と い う こ と に な る。 しか し、 も と も と保 険 契 約 は 約 定 の 保 険 事 故 の 発 生 を条 件 と し て具 体 的 な金 銭 給 付 義 務 が 発 生 す る 射 倖 契 約 で あ る か ら、 契 約 の構 造 上 「保 険 事 故 」 と は具 体 的 な金 銭 給 付 義 務 を発 生 させ る条 件 と な る事 実 を指 す の が 原 則 で あ る。 平 成20年 改 正 前 商 法673条 を見 れ ば 明 ら か な よ う に、 定 額 保 険 契 約 に お い て は 、 こ の こ と は そ の ま ま あ て は ま る。 今 こ こ で 検 討 して い る もの も定 額 保 険 契 約 な の で あ る か ら、 そ の 原 則 通 り、 保 険 事 故 は 、 具 体 的 な 金 銭 給 付 義 務 を発 生 させ る 条 件 と な る 事 実 を指 す とい わ ざ る を得 な い 。 した が っ て 、 段 階式 定 額 保 険 と し て の 傷 害 保 険 契 約 につ い て は 身体 的 損 傷 の 結 果 と して 生 じた 事 由(上 記 ⑤ の 事 実)が そ れ ぞ れ 保 険 事 故 で あ り、 上 記 ① か ら④ の 事 実 は、 約 定 に よ る 危 険 の個 別 化 を 意 味 す る とい うべ きで あ ろ う54。 そ れ ゆ え、 そ の う ち死 亡 保 険 金 の 部 分 に つ い て は 、 人 の 死 亡 を保 険 事 故 と す る も の で あ る か ら、 生 命 保 険 契 約 そ の もの で あ る とい う こ と に な る55。

3以 上 の よ う な理 論 的 な分 析 を 前 提 と して 新 保 険 法 をみ る と、 ま ず 、 損 害 填 補 を 目 的 とす る もの は 、 理 論 通 り損 害 保 険 契 約 に位 置 づ け られ て

い る。 た だ し 「当 該 傷 害 疾 病 が 生 じた 者 が 受 け る」 損 害 を填 補 す る も の だ けが 傷 害 疾 病 損 害 保 険 契 約 で あ り(2条7号)56、 こ れ 以 外 の も の は 通 常 の 損 害 保 険 契 約 の一 つ と位 置 づ け られ て い る57,58。損 害 保 険 契 約 の 下 位 概 念 と して 傷 害 疾 病 損 害 保 険 契 約 とい う範 疇 を認 め た 趣 旨 は、 「人 保 険 と して 傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 と共 通 の性 質 を有 す る損 害 保 険 契 約 に つ い て 、 人 保 険 で あ る こ と をふ まえ た特 則 を設 け る こ と に あ」 る以 上59、 こ れ につ い て は 当 該 傷 害 疾 病 を受 け た 者 の 損 害 を 填 補 す る もの に 限 定 せ ざ る を 得 な い 。

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保 険法 における保険契約 の概念(鈴 木達次〉

こ れ に対 して 、 定 額 保 険 につ い て は、 第 三 分 野 と して 、損 害 保 険 契 約 ・ 生 命 保 険 契 約 と は別 の 種 類 の 保 険 契 約 と して位 置 づ け られ て い る(2条9 号 。 傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約)。 そ の 定 額 性 の 意 味 に つ い て は 先 に述 べ た生 命 保 険 契 約 と同 様 で あ り、 ま た 、 現 物 給 付 も認 め られ て い な い 。

た だ し、 右 の傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 に関 し注 意 す べ き点 は 、 生 命 保 険 契 約 と異 な る文 言 が 使 用 さ れ て い る とい う こ とで あ る。 す な わ ち、 生 命 保 険契約 につ いて は 「人の生存 又 は死亡 に関 し一定 の保 険給付 を行 う」(傍 点 は 筆 者)と され て い る の に対 し、 こ こ で は 「人 の 傷 害 疾 病 に基 づ き一 定 の保 険 給 付 を行 う」(傍 点 は筆 者)と さ れ て い るの で あ る。 実 は 「保 険 法 の見 直 し に 関す る 中 間 試 案 」(平 成19年8月8日)の 段 階 で も、 「保 険 法 の見 直 し に 関す る要 綱 」(平 成20年2月13日 〉 の 段 階 で も、 生 命 保 険 契 約 と 同様 「関 し」 と い う コ トバ が 使 わ れ て お り、 保 険 法 部 会 に お い て も右 の文 言 の 当 否 が 議 論 さ れ る こ とは なか っ た よ うで あ る60。 ど うや ら法 案 提 出 の段 に な っ て文 言 を変 更 した もの ら しい。

右 の 書 き分 け に つ い て は 、 傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 に は、 傷 害 疾 病 とい う事 実 が 発 生 し た だ け で 保 険 金 が 支 払 わ れ る 契 約 が あ る の み な らず 「傷 害 ・疾 病 を原 因 と し て さ ら に死 亡 ま た は後 遺 障 害 等 の事 由 が 生 じた 場 合 に保 険 給 付 をす る 契 約 が あ る こ と」 が そ の 理 由 で あ る と解 さ れ て い る61。

前 述 した よ う に、 私 見 に よ れ ば 、 傷 害(ま た は疾 病)と い う事 実 が 生 じ た だ け で は保 険 金 が 給 付 され な い タ イ プの 傷 害 疾 病 保 険 契 約 に お い て は 、

「傷 害(ま た は疾 病)」 そ の もの は 保 険 事 故 で は な く、 そ れ ゆ え、 これ を定

義 づ け る に あ た っ て は 、 生 命 保 険 契 約 と同 様 に 「傷 害 疾 病 に 関 し」 と表 現 す る こ と は で き な い 。 「傷 害(ま た は 疾 病)」 とい う事 実 は 、 保 険 事 故 た る人 の 死 亡 等 の原 因 事 実 に止 ま る点 に 注 意 す べ きで あ る62。

4こ の よ う に 「傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 」 に は、 傷 害 疾 病 と い う事 実 が 保 険 事 故 の 原 因 に止 ま る も の が 含 ま れ る。 そ うで あ る とす る と、 そ の 類 型 の 契 約 に 関 して は 「保 険 事 故 」 が 他 の 保 険 契 約 と同 一 で あ る、 とい う こ と も考 え ら れ よ う。 先 に述 べ た よ う に 「傷 害 に よ る 死 亡 」 を保 障 す る傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 と死 亡 保 険 契 約 と は い ず れ も保 険 事 故 が 人 の 死

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亡 で あ っ て 、 保 険 事 故 を 基 準 とす る か ぎ り前 者 も、 理 論 上 は生 命 保 険 契 約(死 亡 保 険 契 約)に ほ か な らな い 。 そ うす る と、 これ につ い て は、 何 ら の 断 り書 きが な け れ ば 生 命 保 険 契 約 に 関 す る規 定 と傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 とが 双 方 適 用 され る こ と とな っ て し ま う。 そ こ で 、 生 じ う る不 都 合 を避 け る た め 、2条8号 は、 生 命 保 険 契 約 の 定 義 か ら、 これ を わ ざ わ ざ 除 外 して い る63。

六 定額物(財 産)保 険契約の擬律‑む すびに代 えて

こ こ ま で 、 不 十 分 な が ら も、 新 保 険 法 に お け る 保 険 契 約 概 念 を検 討 し て きた 。 こ れ を 終 え る に あ た り、 これ まで 一 般 に不 適 法 とい わ れ て き た 定 額 物(財 産)保 険 契 約 が 新 保 険 法 に お い て どの よ う に擬 律 され るか 見 て お くこ と と し た い 。

す な わ ち 、 平 成20年 改 正 前 商 法 の も と で は 、 一 般 に 「保 険 契 約 が 損 害 保 険 契 約 と して 構成 さ れ るべ きか 、 定 額 保 険 契 約 と して 構成 され るべ き か は 、 保 険 救 済 の 対 象 た る事 故 発 生 の 結 果 と して の不 利 益 の 態 様 に よっ て 決 定 さ れ る も の とす れ ば 、 物 保 険 な い し は財 産 保 険 は 、 す べ て 損 害 保 険 契 約 と し て の み構 成 さ れ な けれ ば な ら ない 」 と主 張 さ れ て き た64。 この よ う な見 解 に よ れ ば 、 物(財 産 〉 が 滅 失 した こ と に よ っ て 一 定 額 の 金 銭 を支 払 う こ と を 目的(内 容)と す る契 約 は 保 険 契 約 た り得 な い 、 とい う こ とに な る。

しか し、 以 下 に述 べ る よ う に これ に疑 問 を投 げ か け る見 解 もあ った65。

な る ほ ど、 物 保 険 な い し財 産 保 険 で 保 険 事 故 が 発 生 し た場 合 、 利 益 主 体 に生 ず る不 利 益 は、 原 則 と して 「物 に化 体 さ れ た利 益 の 滅 失 とい う確 定 損 害 」 で あ る。 これ を保 険 とい う経 済 制 度 で 対 処 し よ う とす れ ば、 そ の 不 利 益=損 害 を填 補 す る とい う方 式 を採 用 す る の が 基 本 とな る。 しか し、

か か る場 合 に は 、物 利 益 の 喪 失 に か ぎ らず 「生 活 維 持 の 機 能 的 価 値 を失 う」

とい う不 利 益 を被 る 可 能 性 も否 定 で きな い 。 か つ 、 そ の よ う な不 利 益 は保 険事 故 の 際 に具 体 的 に評 価 し うる もの で は な い 。 そ う で あ る とす る と、 こ の よ うな不 利 益(損 害)に つ い て は 、損 害 保 険 契 約 とい う方 式 を とる こ と

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保 険法 にお ける保 険契約 の概念(鈴 木達次)

が で き な い 。他 方 、 生 活 維 持 の 機 能 的価 値 に 関 して は 「人 が 、 現代 社 会 に お い て、あ る特 定 の レベ ル の 生 活 主 体 と して 生 きて い る以 上 、『ハ ウス ホ ー ル ド ・ミニ マ ム 』 とで も よぶ べ き もの 、 つ ま り、 そ の 所 有 す る 個 々的 な財 貨 の 多 少 に か か わ らず 、 生 活 資 材 が有 機 的 な一 体 と な っ て作 り出 す 生 活 維 持 の 機 能 の最 小 限 とい う もの が 通 念 的 に存 」 在 し う る。 そ の 場 合 に は 、 そ の 生 活 維 持 利 益 の 「額 の 範 囲 内 で保 険 給 付 が 約 束 され た と して も、 当然 に そ の 給 付 を受 け た 者 が 不 労 利 得 をす る とい う こ と に は な ら」な い 。した が っ て 、 そ こ に定 額 物(財 産)保 険 を認 め るべ き根 拠 が 見 い だ され る 、 と。

ま た、 損 害 保 険 契 約 に お い て被 保 険 利 益 の 要 件 や 利 得 禁 止 原 則 が 強 行 法 的 に存 在 す る 理 由 を 「保 険 給 付 に よ り利 得 が 生 ず る 可 能 性 を事 前 に排 除 す る こ と に よ りモ ラ ル ・ハ ザ ー ドを抑 止 す る」 こ と に あ る と し 「定 額 保 険 を ど こ ま で 認 め る か は モ ラ ル ・ハ ザ ー ドを抑 止 す る有 効 な 手 段 が あ る か ど う か の 相 関 で決 ま る」 と説 明 す る見 解 もあ る66。 こ の よ うな 見 解 を前 提 とす れ ば、 要 は 「利 得 が 生 ず る 可 能 性 を事 前 に排 除 す る こ と に よ りモ ラ ル ・ハ ザ ー ドを抑 止 す る」 こ とが で きれ ば よい の で あ る か ら、 そ れ が 可 能 で あ れ ば 、 定 額 物(財 産)保 険 契 約 を否 定 す る根 拠 は な い 。

か りに 以 上 の 二 つ の う ち の い ず れ か の 見 解 が 採 用 で き る とす れ ば、 新 保 険 法 の も とで 、 物(財 産)が 滅 失 した こ と を 理 由 と して 一 定 額 の 金 銭 を支 払 う こ と を 目的(内 容)と す る契 約 も保 険 契 約 とい う範 疇 に 含 ま れ る可 能 性 が あ る、 と い う こ と に な ろ う。 そ れ ゆ え、 物(財 産)が 滅 失 し た こ と に よ っ て 一 定 額 の 金 銭 を 支 払 う こ と を 目 的(内 容)と す る 契 約 が 保 険 契 約 た り う る か 、 とい う こ と は純 粋 に 新 保 険 法2条 の 要 件 を充 足 す

るか 、 とい う点 に か か っ て くる こ とに な る 。

そ こ で これ を検 討 して み る と、新 保 険 法 の も と で は 、定 額 物(財 産)保 険 契 約 も保 険 契 約 に含 ま れ る とい うべ きで あ ろ う。 け だ し、 こ の よ うな 契 約 も2条1号 の 「一 定 の 事 由 が 生 じた こ と を条 件 と して 財 産 上 の 給 付 を行 う こ と を 約 」 す る も の で あ る し、 定 額 保 険 が 人 保 険 に か ぎ られ る と い う趣 旨 の 条 文 文 言 も存 在 しな い か らで あ る67。

もっ と も、 定 額 物(財 産)保 険 契 約 が 、 新 保 険 法 上 の 「保 険 契 約 」 概 念 に包 含 され る と して も、 新 保 険 法 の規 定 す る損 害 保 険 契 約 、 生 命 保 険 契

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約 傷 害 疾 病 損 害 保 険 契 約 お よ び傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 の い ず れ に も該 当 しな い(無 名 保 険 契 約)。 しか も、 前 述 した よ うに 「第 一 章 総 則 」 に あ る規 定 は、 趣 旨(1条)と 定 義(2条)だ け で あ る 。 した が っ て 、 法 典 上 右 契 約 に 直 接 適 用 さ れ る 条 文 は な い 。 そ の 意 味 で 、 各 保 険 契 約 の 規 定 を 類 推 適 用 す る 可 能 性 が 残 る だ け で あ ろ う。 また 、 い う まで も な く、 新 保 険 法 上 の 保 険 契 約 に該 当 す る と して も、 具 体 的 に不 労 利 得 が 生 ず る もの や モ ラ ル ・ハ ザ ー ドを抑 止 す る こ とが で き な い よ う な も の は 「無 効 」 な 契 約 で あ る とい わ ざ る を え な い が 。

【註 】

1こ の点 につ い て は、萩本 修 ほか 「保 険法 の制 定 の経 緯 と概 要 」萩本 修編 著 ・ 保 険法 立案 関係 資料‑新 法 の概 説 ・新 旧 旧新 対 照表‑(商 事 法務 ・平 成20年)2頁 な ど参 照 。

2こ の 点 につ い て は、 萩本 ほか ・前 掲 「保 険 法 の制 定 の経 緯 と概 要」1頁 な ど参 照。

3ロ ェス レル商 法 草案 で は 、 「第11巻 保 険」 の第1款 を総 則 と した うえ で 、第2款 火災 震災 保 険、第3款 地産 物 ノ保 険、第4款 運送保 険 、 第5款 生 命 保 険病 患保 険 年金 保 険 、第6款 保 険 営 業 ノ公 行 と規 定 し て お り、損 害 保 険 と生命 保 険 とい う分 類 は採 用 され てい な い。総 則 の 冒 頭 の規 定 で あ る686条 で は、保 険 者 は被 保 険者 が 「… 損 失 ヲ被 ム リ タル財 産上 ノ利益 ヲ賠償 ス ル ノ義務 」 を負 う と し、つ い で687条 で は 「保 険 シ得 可 キ危 険 ハ 主 トシテ … 死 亡其 他 身 上 ノ災 害 トス … 」 と し

てお り、生 命 保 険 もまた損 害 保険 で あ る と構 成 され てい た こ とは 明 らか で あ る(詳 細 につ いて は ロ ェス レル氏 起 稿 ・商 法草 案 下巻(司 法省 ・明 治17年 、復 刻 ・新 青 出版 ・平 成7年)73頁 以 下等 を参 照)。 また 、明 治 23年 旧商法 で も同様 の法 典構 成 を採用 し(「第1編 第11章 保 険」 は第 1節 総則 か らス タ ー トし、 第5節 は生 命 保険 、 病傷 保 険 及 ヒ年 金 保 険 で あ る)、 総則 の 冒頭 の2条 文(625条 お よび626条)の 規 定 内容 も同 じ

であ る。

4商 法修 正 案理 由書(博 文館 ・明治31年)319頁 。

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保 険法における保険契約の概念(鈴 木達次〉

5以 上 の論 争 につい て は、大 森 忠夫 ・保 険法[補 訂版](有 斐 閣 ・昭和60年) 33頁 以 下 、倉 澤 康 一郎 ・保 険 法通 論(三 嶺 書 房 ・昭和57年 ・復 刻 ・新 青 出版 ・平成16年)24頁 以下 な どを参 照 。

6大 森 ・前掲 保 険法35頁 、石 田満 ・商 法IV(保 険法)[改 訂 版](青 林書 院 ・ 平成9年)35頁 な ど。

7大 森 ・前 掲保 険 法35頁 。

8倉 澤 ・前 掲 保 険 法通 論25頁 、 西 島梅 治 ・保 険法[第3版](悠 々社 ・平 成10年)5頁 。

9保 険 法制研 究 会 編 ・損 害 保険 契 約法改 正 試案 ・傷 害保 険 契約 法(新 設)試 案 ・ 理 由書(損 害保 険事 業研 究所 ・昭和57年)2頁 。

10損 害 保 険法 制研 究会 編 ・損 害保 険契 約法 改 正試 案 ・傷 害 保 険契約 法(新 設) 試案 ・理 由書 ・1995年確 定版(損 害保 険 事業 総合 研 究所 ・平 成7年)2頁 。 11生 命 保 険 法 制研 究会 編 ・生命保 険契 約 法改 正試 案(1998年 版)理 由書 ・ 傷害 保 険契 約法 新 設試 案(1998年 版)理 由書 ・疾 病 保 険契 約法 新設 試案

(1998年 版)理 由書(生 命 保険協 会 ・平 成10年)40頁 以 下 。

12傷 害 保 険契 約 法研 究 会編 ・傷 害保 険契 約 法試 案(2003年 版)理 由書(生 命保 険 協会 ・日本損 害保 険 協 会 ・平 成15年)は しが き1頁 。

13萩 本 修 ほ か 「『保 険 法 の見 直 しに関す る 中 間試 案』 につ い て の意 見 募 集 結 果 の概 要」 萩本 修 編 著 ・前 掲保 険 法 立案 関係 資 料158頁 。具 体 的 な内 容 と して は 、保 険法 部会 資料18‑1「 『保 険 法 の見 直 しに関す る中 間試案 』 の意 見 募集 の結 果概 要 」11頁 以下 参 照。

14「 『保 険』 とい う用 語 につ い て は、現行 法 と同様 に解釈 に ゆだね る 、 とい う こ とを提 案 してお ります 。 現行 法 上 、保 険 の意 義 につ い て は、1つ の 考 え方 として、 参考 資料1と して事 前 に送付 いた しま した保 険 法研 究 会 取 りま とめ の1頁 目の 第2の(前 注)に 記載 いた してお ります い わ ゆる 5要 素 が 挙 げ られ る こ とが ご ざい ます。 仮 に この考 え方 を前 提 といた し ま して も、 それ ぞ れ の要 素、例 え ば収 支相 等原 則 、給 付 反対 給 付均 等 原 則 な どに は濃 淡 が あ って 、 これ らを法 文上 定義 付 ける こ とは困 難 で あ り ます し、相 当 で もな い よ うに考 え られ ます 。 また 、明 治32年 の現 行 商 法 制 定 時 の法 典調査 会 に お け る議論 で は、 『保 険 ノ文 字 ガ慣用 ノ語 トナ

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