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生徒同士の対話を重視した学習の効果について

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Academic year: 2021

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*  千葉科学大学

** 早稲田大学教育・総合科学学術院

【実践研究】

生徒同士の対話を重視した学習の効果について

―高校生の協働性とソーシャルスキルに注目して―

熊谷 圭二郎*  河村 茂雄**

本研究は高等学校の国語古典Bにおいて,生徒同士の対話を重視した学習を行い,学習達成度や協働性に対す る意識,ソーシャルスキルにどのような影響を与えたかを検証することを目的とした。その結果,協働的な学習 クラスの学習達成度は向上し,ソーシャルスキルの一つであるかかわりのスキルについては協働的な学習クラス と一斉授業クラスとの間に交互作用がみられ,前者においてかかわりのスキルが増加することが明らかになった。

今後の課題としてアクティブ・ラーニングに必要なソーシャルスキルを調査し,育成のあり方を検討することや 教育現場における多くの実践研究の必要性を挙げた。

キーワード:対話,問い,課題解決志向集団,協同作業,ソーシャルスキル

【問題と目的】

2012年8月の中央教育審議会において大学教育の 質的転換として「アクティブ・ラーニング」の必要性 が提唱され,学生が主体的に問題を発見し,解を見出 していく学修の必要性が指摘された。さらに平成29 年告示の学習指導要領においても「アクティブ・ラー ニング」は取り上げられ,教育現場ではこの言葉が急 速に注目されるようになってきた。

文部科学省はこの「アクティブ・ラーニング」につ いて2012年には「学修者が能動的に学修することに よって,認知的,倫理的,社会的能力,教養,知識,

経験を含めた汎用的能力の育成を図る」学修(能動的 学修)と定義づけした。その後,2014年「初等中等 教育における教育課程の基準等の在り方について(諮 問)」では,アクティブ・ラーニングについて「課題 の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」と 述べ,2016年の「次期学習指導要領等に向けたこれ までの審議のまとめ(確定版)」では「主体的・対話 的で深い学び」と表現を変えている。この用語の変化 は,初等中等教育段階の教育方法の改新の趣旨が学校

現場などに適切に伝わらず,手段が目的化するなどの 問題が生じ,現場が混乱しかねないという懸念があっ たためであり(教育再生実行会議,2015),形式的に 対話型を取り入れた授業や特定の指導の型を目指した 技術の改善にとどまるものではないことを意図するた めであった。つまり,アクティブ・ラーニングに関す る表現が変わってはいるが,主体的な学習活動や他者 との対話を通した協働的な活動によって,深い学びの 学習過程を実現することが求められているのである。

特にこのアクティブ・ラーニングに関しては大学受 験のために知識獲得に重点が置かれていた高等学校に おいてその必要性が指摘されている(河合塾2015,

小林2015,西川2015,溝上2016)。また,大学入試

においても知識偏重であると指摘されてきた現在のセ ンター試験は廃止され,2020年度から記述式問題を 含む「大学入学共通テスト」が導入されることになっ ている。これは「知識・技能」を問う問題が中心(コ ンテンツ・ベース)であった内容から「知識・技能を 活用して,自ら課題を発見し,その解決に向けて探求 し,成果等を表現するために必要な思考力・判断力・

表現力等の能力」を中心(コンピテンシー・ベース)

とした内容に改めようとしていることを表している

(文部科学省,2015)。つまり,大学教育の質的転換か らその必要性が指摘されたアクティブ・ラーニングは,

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現在,大学受験のために知識獲得重視に偏りがちだっ た高等学校においても重要視されている。コンテンツ・

ベースからコンピテンシー・ベースの学力を育成する ために協働的な活動を通した深い学びが求められてい るのである。

以上を踏まえると今後,高等学校では学習指導の中 で生徒の主体性だけでなく,協働性も必要とされ,教 科担当の教師も授業内容の教授のみならず生徒同士の 協働的な活動を促進させる学習集団の育成が求められ ているといえよう。杉江(2011)は,Bass(1962)が 示した「人間関係志向集団」と「課題解決志向集団」

を取り上げ,前者の仲良し関係の集団と後者の課題を よりよく達成させる集団は異なることを指摘し,学校 では課題解決行動がその中心であり,課題追求を効果 的に行える集団づくりが必要だと述べている。そして 課題解決志向集団は業績だけを追求するのではなく,

メンバー相互への気遣い,個性に応じた役割,一人ひ とりの達成感を満たすための配慮が必要だと指摘して いる。また,河村(2001)は,子ども同士が建設的に かかわり合い,学級が集団として成立するためにソー シャルスキルが必要であり,高い満足感を持っている 学級では「配慮のスキル」と「かかわりのスキル」が 高いことを指摘している。つまり,協働的な活動を促 進させる集団育成のためには課題解決志向集団の育成 や子どもたちのソーシャルスキルの育成が必要だとい える。

しかし,これらを育成する上で大きく2つの問題が 挙げられる。

一つは「高校生の授業に対する意識」である。高等 学校の授業では知識のインプットに重きが置かれ,“チ ョーク&トーク ” の入力中心の授業が多い(田村,

2017)といわれるように,高等学校の場合,小中学校 と比較し,グループ等を使った協働的な学習活動は少 なく,一斉授業による知識の伝達が中心であった。こ れは小中学校と比べ学習内容がより高度化し,身につ けるべき知識が増えることや,これまでの知識重視の 大学受験の影響だと考えられる。そのため現行の学習 指導要領で示された習得・活用・探究という考え方の 中でいえば,高等学校では習得に力を入れざるを得な

かったといえよう。それは学習者が「主体的に問題を 発見し,解を見出していく」という能動的な学習では なく,教師によって解説され,答えが用意されている 問題を解くという受動的な学習であり,他者とかかわ る上でのソーシャルスキルをあまり必要としない授業 である。そのためグループ活動を取り入れても形式的 な対話型の授業となったり,できる生徒ができない生 徒に教授するといった授業になったりする可能性があ る。つまり,教師が生徒の協働的な活動を促進するよ うな働きかけや授業構成をしなければ次期学習指導要 領で求めている「主体的・対話的で深い学び」の実現 が難しくなるのである。苅谷(2012)は伝統的な授業 を受けることではキー・コンピテンシーが求めている ような「新しい能力」を育成することはできないと指 摘しており,久保田(2014)は従来型の学びを「ため 込む学び」と指摘し,アクティブ・ラーニングのよう な新しい学びを「つながる学び」と名づけその違いを 指摘している。また,溝上(2014)が指摘しているよ うにアクティブ・ラ―ニングでは,受動的学習から能 動的学習へと大きく転換することを意図しており,そ れを実現するためには教授学習のパラダイムシフトが 必要になってくる。知識は教えることはできるが,能 力は教えること以上に,学習者自らが主体的に,他者 と協働しながら身につけていくことが必要になってく る。そのため高等学校の授業は,知識の伝達だけでは なく,汎用的能力も育成する能動的学習の場であると いうように授業そのものに対する考え方や意識を変え る必要があろう。

また,もう一つに「青年期の人間関係の問題」が挙 げられる。文部科学省(2011)は,現在の子どもたち は人間関係が希薄となり,等質的なグループや人間関 係の中でのみコミュニケーションをとる傾向がみられ,

異質な人々によるグループ等での課題を解決すること が苦手であったり,回避したりする傾向があることを 指摘している。特に青年期については30年前くらい から青年期の閉鎖的,表面的な人間関係が指摘され続 けている(岡田1991,1993;榎本1999,2000;松尾・

大西・安藤・坂元,2006;大谷,2007)。先に挙げた「人 間関係志向集団」と「課題解決志向集団」の分類でい

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えば,現代の青年は閉鎖的で表面的な「人間関係志向」

の集団となっており,「課題解決志向」の集団を形成 することを苦手としているのである。高校生は,まさ にこのような傾向が指摘されている青年期の初期にあ たる。

以上の点を踏まえると,高等学校での学習指導にお いて協働的な活動を促すのは容易でないことが考えら れる。そこでこの問題の解決として学習活動を通した 課題解決志向集団の育成,ソーシャルスキルの育成が 求められる。その具体的な方法として生徒同士による

「問い」をもとにした対話による学習活動が挙げられる。

例えば,学びの共同体を提唱している佐藤(2012)は 子どもたちの協働的な学び合いは「問いを発すること から」出発すると指摘している。小谷(2016)は協働 的な学びを活性化させるために「問い」を相手に問う ことを重視している。つまり,教材等を通して生徒同 士が互いに疑問を持ち,それを仲間に問いかけること によって協働的な学習活動が始まるのである。また,

もう一つは協同学習(Johnson, Johnson, & Houlbec,

2002;杉江,2011)や協調学習(佐藤,2012;三宅・

飯窪,2016)など生徒の相互作用を活用した授業の展 開である。教授・学習法の研究の動向を概観し,主張 等を整理した熊谷(2017)は,生徒同士の互恵的な相 互作用を活用した授業には「授業の構造」「児童生徒 のグループ・人間関係」「教師に求められる働きかけ と能力」「授業に対する学習者の意識」の4つの特徴 があると指摘するとともに互恵的な相互作用を活用し た教授・学習法の流れを提示した(Figure 1)。その 授業の流れでは学習目標のみならず,汎用的能力の育 成にかかわる態度目標も挙げられている。

そこで本研究では,学習活動を通した生徒の協働性 の育成を目指し,熊谷(2017)が指摘した教授・学習 法の流れを参考にした上でさまざまな学習方法を取り 入れながら,グループ活動において生徒同士が互いに 問いを持ち,それをもとに対話しながら授業を進める。

その結果,生徒の学習の達成度や協同作業に対する意 識,ソーシャルスキルが向上するのかを調べていきた い。なお,授業を行う教科に関しては言語活動を重視 する国語とし,科目としては,その中でも知識の習得

場面が多い古典Bを対象にする。また,本論文で使 用する「協働的な学習」とは生徒同士の対話などの相 互作用を活用した授業全般を指す。

【方 法】

1.対象生徒

公立X高等学校2年生,習熟度別に分かれた古典 の少人数クラス計115名のうち8ヶ月間一貫して協働 的な学習(以下,協働的な学習クラス)を受講した 32名を実験群,および8ヶ月間一貫して講義中心型 の一斉授業(以下,一斉授業クラス)の36名を統制 群とした。2つのクラスの違いを明らかにするため,

9ヶ月の間,協働的な学習と一斉授業の両方を体験し た生徒47名については対象外とした(Table 1)。なお,

習熟度別クラスは5月,7月,10月の定期考査ごとに 教員が機械的にメンバーを入れ替えている。また,実 験群,統制群ともに習熟度の高いクラス,低いクラス,

どちらも入っており,学力については大きな差はなか った。

2.調査時期と授業回数および手続き

本研究は20XX年4月中旬~12月上旬に実施した。

授業は週3回のペースで行い,約8ヶ月間の授業の回 数は全部で63回である。質問紙に関しては4月下旬 と12月下旬に行った。なお,本研究については対象 校の管理職からの了解を得るとともに,生徒には授業 の効果を調べながら,今後,よりよい授業方法を実施 することを伝えた上で実施した。また,生徒に対する 質問紙の実施の際には,成績に関係しないこと,質問 への回答は自由意志であること,調査の趣旨などを説 明した上で実施した。

3.使用教材

『古典B古文編・漢文編』(筑摩書房)を使用。教

Table 1 古典のクラスと人数

A組 B組 C組 計

協働的な学習を一貫して受

けた生徒 11人 7人 14人 32人 一斉授業を一貫して受けた

生徒 13人 11人 12人 36人 両方の授業を体験した生徒 15人 20人 12人 47人

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材選定,使用順序および各単元の授業時数は対象者の 高等学校で年度当初に決められた年間計画に従った。

4.授業展開

1)協働的な学習の授業の流れ

授業については熊谷(2017)が指摘した教授・学習 法の流れ(Figure 1)を参考にして多様な学習方法を 取り入れながら,以下のように展開した。

①導入

授業の導入として単元および本時の「目標確認(学 習目標と態度目標)」「見通し確認」を行うとともに 学習規律確認として「仲間の話を聞くこと」「互い の意見を尊重すること」などを伝えた。また,前回 の授業の復習や振り返りシートに記載された感想や 質問を取り上げた。

②展開

授業の展開として教授場面では,教師から単元内 容に関する講義を短時間で行うとともに本時におい てグループで解決してほしい課題(教師からの問い)

の提示を行った。また,生徒による学習活動ではは じめに個人作業として教師から与えられた課題につ いて考えるだけではなく,本時の学習内容に関連す る自分自身の問い(疑問)を持つことを指示した。

その後,グループ活動では教師からの課題や各自が 持ち寄った問いをもとに対話することで学び合いを 進めるように指示した。なお,グループ活動におい てはパターン化した流れを避けるために,熊谷

(2017)の教授・学習法の流れを参考にしながら,

生徒チーム学習法(Slavin,1985)やジグソー法

(Aronson, Blaney, Stephan, Sikes, & Snapp,1978),

バズ学習(塩田,1989)などの要素も適宜取り入れ

た(Table 2)。また,グループ活動の際は話し合い が進むように教師はファシリテーター(グループ活 動の促進者)としてクラス全体やグループ,個別に 声かけを行うように心がけた。なお,授業において 教師からどのような課題が出され,生徒からどのよ うな問いが出たのかを示すためTable 3に「使用教 材と教師・生徒の問いの例」を示した。

③まとめ

授業のまとめでは教師からの課題に対する答えや 仲間から出た質問をグループの代表者に話してもら い,それに対し教師が評価・解説を行った。また,

生徒主導の学習であったため,間違って覚えてしま Table 2 使用した主な学習法と進め方

学習法 進め方

生徒チーム学習法 Slavin(1985)

①一斉指導の方式で教師から学 習内容に関する情報が伝えられ る。②小グループに分かれ,生 徒相互に教え合ったり,問題を 出し合ったりして学習内容を学 ぶ。③その後,個別にテストを 実施し,個人の成績やグループ 内での成績の結果によって報酬・

評価が得られる。

ジグソー法 Aronson, Blaney, Stephan, Sikes, & Snapp

(1978)

①文章をいくつかに分けて,そ れぞれのグループに渡す。②各 グループで与えられた文章を読 解する(エキスパート活動)。③ 次に違う文章を読解した人が一 人以上いる新しいグループで互 いに読解した内容を伝え合い,文 章全体の理解を深める(ジグソ ー活動)。④本文に関する課題に ついて個人およびグループで話 し合う。

塩田(1989)バズ学習

①教師から学習内容に関する課 題が伝えられる。②個人で課題 について考える。③グループに なって課題について話し合う。④ 全体で課題について話し合う。⑤ 教師による学習内容のまとめを 行う。

【導入】

【展開】

○目標確認

○見通し確認

○学習規律確認

【まとめ】

○評価○振り返り

○講義,説明

○課題提示 個人

作業 グループ 活動 教授(教師主体) 学習(児童生徒主体)

Figure 1  互恵的な相作用を活した教授・学習法の流れ(熊谷,2017)

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っているものがないかを確認するために,単元終了 時には簡単な小テストを行い,内容の確認を行った。

さらに,振り返りとして授業を通して感じたことを 話し合ったり,振り返りシートに記入させたりした。

ここでの感想内容や疑問点などについては次の授業 で紹介したり,取り上げて解説したりした。

2)講義中心型一斉授業の流れ

講義中心型一斉授業は教師による発問とそれに対す る生徒の発表を織り交ぜながら,単元の内容および文 法事項の解説を中心に授業を行った。一部にプリント を活用した班別学習を取り入れているが,宮坂(2002)

が一斉授業として定義している「学級に編成された多 数の子どもを一人の教師が同一教材,同一進度で同時 に指導する授業形態」で進められた。

5.効果測定の方法 1)学習達成度

学習達成度を測定する質問紙調査として熊谷(2016)

の尺度を使用した。質問内容は,「意欲的に学ぶこと ができた」「深く考えることができた」「他者の意見を しっかり聞くことができた」など計10項目で構成さ れており,回答は「とてもそう思う」から「全くそう 思わない」までの5件法で求めた。

2)協同作業認識尺度

学習前後において生徒の協働活動の意識の変容を検 証するため,長濱・安永・関田・甲原(2009)の協同 作業認識尺度を用いた。この尺度は「協同効用(9項 目)」,「個人志向(6項目)」,「互恵懸念(3項目)」の 3因子,18項目から構成されている。「協同効用」は「た くさんの仕事でも,みんなと一緒にやればできる気が する」などの項目からなり,得点が高いほど協同作業

への効用感の強さを表す。「個人志向」は「みんなで 一緒に作業をすると,自分の思うようにできない」な どの項目からなり,得点が高いほど協同作業に対する 個人志向の強さを表す。「互恵懸念」は「優秀な人た ちがわざわざ協同する必要はない」などの項目からな り,得点が高いほど協同作業をすることで互いの利益 が生まれるとは限らないとする互恵懸念感の強さを表 す。つまり,「協同効用」の9項目は協同作業に対す る肯定的な認識を,「個人志向」と「互恵懸念」の計 9項目は協同作業に対する否定的な認識を示すもので ある。回答は「とてもそう思う」から「全くそう思わ ない」までの5件法で求めた。

3)ソーシャルスキル尺度

ソーシャルスキル尺度として学校現場向けに作成さ れた河村(2001)の「日常の行動を振り返るアンケー ト(中学生用)」を使用した。この尺度は中学生用だが,

内容として高等学校でも使えると判断し使用した。質 問項目は28項目あり,「友達の気持ちを考えながら話 をしていますか」「自分がしてもらいたいことを,友 達にしてあげていますか」といった「配慮のスキル(14 項目)」と「みんなと同じくらい話をしていますか」「わ からないことがあるとき,友達や先生に聞いています か」といった「かかわりのスキル(14項目)」の2要 因で構成されている。回答は「いつもしている」から

「ほとんどしていない」の4件法で構成され,各下位 尺度の単純加算によって得点化される。

Table 3 使用教材と教師・生徒の問いの例

実施 教材 教師が与えた問いの例 生徒から出た問いの例

6月 古文:更級日 記「 源 氏 の 五十余巻」

(文章全体を把握が前提)

・「后の位も何にかはせむ」の作者の心情を答えよ。

・最後の「あさまし」の作者の心情を答えよ。

・文章における品詞分解

・「はしるはしる」などの単語の意味

・登場人物とその関係

・源氏物語のどこが面白いのか?

・当時の生活(娯楽)とは 9月 漢 文:「 四 面楚歌」

(文章全体を把握が前提)

・ 「四面楚歌」とはどのような状況か。またその 状況は項羽にとってどのような意味を持つか。

・漢字の読み

・漢文の文法的構造

・「乃ち」以外の「すなはち」の違い

・「可奈何」と「奈若何」の構造の違い

・なぜ悲しいのに歌うのか

・この場にいるのは誰か

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【結 果】

1.学習達成度への影響について

学習達成度の平均と標準偏差およびt検定の結果を

Table 4に示した。協働的な学習クラスの実施前の平

均および標準偏差は3.67(.35)であったが協働的な 学 習 実 施 後 は3.96(.55) と 有 意 に 増 加 し て い た

(t=3.25,p<.01)。

2.協同作業の認識への影響について

協同作業認識尺度のクラス別人数,平均,標準偏差,

および分散分析の結果はTable 5に示した。協働的な 学習クラスと一斉授業クラスの実施前後の協同作業認 識尺度の3つの下位尺度(協同効用,個人志向,互恵 懸念)の変化を調べるために実施時期(前・後)×群

(クラス)の2要因の分散分析を行った。その結果,

個人志向に関して交互作用が有意(F(1.66)=5.77,p

<.05)であり,単純主効果の検定の結果,一斉授業 クラスにおいて個人志向が有意に増加することが示さ れた。その他,協同効用,互恵懸念ともに交互作用,

および主効果は有意ではなかった。

3.ソーシャルスキルに対する影響について

ソーシャルスキル尺度のクラス別人数,平均,標準 偏差,および分散分析の結果はTable 6に示した。協 働的な学習クラスと一斉授業クラスのソーシャルスキ ルの変化を調べるために,実施前後の配慮のスキルお よびかかわりのスキルについて実施時期(前・後)×

群(クラス)の2要因の分散分析を行った。その結果,

「かかわりのスキル」に関して交互作用が有意(F(1.66)

=15.19,p<.01)であり,単純主効果の検定の結果,

協働的な学習クラスはかかわりのスキルが有意に増加 することが示された。また,配慮のスキルについては 時期の主効果が有意(F(1.66)=7.97,p<.01)であ り,下位検定から実施前よりも実施後の方が高いこと が明らかになり,協働的な学習クラス,一斉授業クラ スともに配慮のスキルが高まったことが示された。

【考 察】

1.学習達成度について

本研究の結果,協働的な学習を行ったクラスの学習

Table 4 協働的な学習クラスの学習意欲の平均値と標準偏差およびt検定の結果

人数 実施前の平均 実施後の平均 t値 協働的な学習クラス 32 3.67(.35) 3.96(.55) 3.25**

**p<.01

Table 5 協同作業認識尺度の平均,標準偏差,および分散分析の結果 人数 実施前の

平均 実施後の

平均 主効果

時期(F) 主効果

群(F) 交互作用

(F)

協同効用 協働的な学習クラス一斉授業クラス 3236 3.84(.54)3.89(.65) 3.95(.56)3.85(.69) .57 .18 2.75 個人志向 協働的な学習クラス一斉授業クラス 3236 2.99(.43)2.98(.54) 2.93(.55)3.20(.71) 2.22 .99 5.77

互恵懸念 協働的な学習クラス一斉授業クラス 3236 2.17(.49)2.17(.79) 2.26(.64)2.17(.74) .28 .11 .28

p<.05,**p<.01

Table 6 ソーシャルスキル尺度の平均,標準偏差,および分散分析の結果 人数 実施前の

平均 実施後の

平均 主効果

時期(F) 主効果

群(F) 交互作用

(F)

のスキル配慮 協働的な学習クラス 32 48.25(4.73) 48.75(4.33) 7.97**

前<後 2.69 1.54 一斉授業クラス 36 50.14(4.25) 50.33(4.26)

かかわりのスキル 協働的な学習クラス一斉授業クラス 3236 42.53(6.64)42.17(6.91) 43.41(6.47)41.83(6.76) 3.1 .33 15.19**

p<.05,**p<.01

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達成度が有意に向上していることが明らかになった。

Schunk(1987)は,友人は学習を促進するための技能 やコンピテンスを向上させる上でモデルの役割を果た している可能性があることを指摘し,熊谷(2016)も,

生徒同士が互いに教え合うことで学習のやり方に関す るモデルになったり,互いを認め合ったりする場面が みられたと指摘している。協働的な学習を行った生徒 は互いに学び合うことを通して友人をモデルにしなが ら積極的に学習に取り組めたのではないだろうか。ま た,中谷(2002)は友人からの受容によって教科学習 に対して意欲的に取り組むようになるということを指 摘しているが,本研究では自分たちが持った問いをも とにグループメンバーと対話するという体験を通して 友人からの受容につながったと思われる。以上のこと によって生徒同士の相互作用が促され,学習達成度が 高まったと推測される。

2.協同作業に対する意識について

本研究では協同作業認識尺度における個人志向だけ に交互作用がみられ,一斉授業クラスは個人志向が増 加し,協働的な学習クラスはあまり変化がないことが 明らかになった。対象校の生徒は全員大学進学を目指 しており,これまで高等学校の授業においてグループ 学習が行われることがほとんどなく教師による発問,

解説で進められることが多かった。そのため学習は協 働して行うというよりも個人で他者と競争して行うと いう意識が高い。また,対象校の生徒は,2年生の夏 休み以降,受験を意識し塾や自宅等での学習時間が増 える傾向がある。つまり,生徒は2学期以降,一人で 勉強する時間が増えるため,個人志向が高くなったと 考えられる。しかし,協働的な学習クラスについては,

授業の中で話し合うなど協働的に進めることで授業が 成り立っていた。そのため協働的な学習クラスでは個 人志向は高まらなかったと推測される。佐藤(2012)

が問いを発することから協働的な学び合いが出発する と指摘しているように,生徒同士の問いをもとに対話 をすることは,協働的な活動に向かう土台づくりにな ったと考えられる。生徒同士が互いに問いを持ち寄っ て話し合ったことで,できる生徒・できない生徒とい う関係を越え,共に疑問を持つ者としてフラットな関

係を生み出すのではないだろうか。

一方,個人志向と同じように協同作業に対する否定 的な認識を示す互恵懸念については交互作用がみられ なかった。互恵懸念は個人での学習時間が増えてもあ まり影響を受けない質問項目であり,また実施前にす でに平均値が低かったため,変化がみられなかったと 考えられる。

同様に協同効用についても交互作用がみられなかっ た。この結果については,今後,より詳細に調べてい く必要があるが,その原因の一つとして,教材の難易 度が上がり話し合いだけでは解決できない問題が増え たことが挙げられるのではないだろうか。9月から受 験を意識した授業となったため,教材の難易度や教師 から与えられる課題の難易度が高くなったため,生徒 同士の協働的な学習だけでは解決できず,教師による 解説を求める声が増えていった。協同作業認識尺度の 協同効用には「協同することで,優秀な人はより優秀 な成績を得ることができる」「一人でやるよりも協同 した方が良い成果を得られる」という質問項目がある が,授業を進める中で自分たちで行うことの限界も感 じたため協同効用については交互作用がみられなかっ たと考えられる。河村(2017)は成果を挙げるチーム として「個々のメンバーがセルフリーダーシップをと れ,かつ,チームの目的や価値観を共有し,お互いに 尊重し合い,相互依存関係を保ち,チームとして自律 的に意思決定し,責任を持って行動できる」ことを挙 げている。Johnson et al.(2002)は協力的な活動を成 功させる協同技能としてTable 7に示した4つのソー シャルスキルを挙げている。そしてこれらの技能を高 めるためには,「信頼し合い,長期にわたってお互い の成果を観察し合い,その技能を実行する際の間違い を見つけ出すよう助け合う『学習パートナー』が必要 である」と指摘している。つまり,生徒の信頼関係を 高め,目標に向かって長期にわたって協働的な技能を 高めるよう生徒同士が助け合える関係を育成する必要 がある。協同効用を高めるためには,一つの教科での 授業という限られた時間・場だけではなく,教育活動 全体を通して長期にわたって意識的・計画的に協働性 の育成を進めていく必要があるのかもしれない。

(8)

3.ソーシャルスキルについて

本研究ではソーシャルスキル尺度のかかわりのスキ ルが協働的な学習クラスと一斉授業クラスにおいて交 互作用がみられ,前者がかかわりのスキルの増加がみ られた。協働的な学習クラスでは個人で考える時間も あるが,多くは他者とのかかわり合いの中で学習が進 められる。特に本研究における授業の流れでは生徒が 各自の問いを持ち,他者に働きかけることにより授業 を活性化することをねらいとした。また,授業におい て態度目標が設定され,「人の話を聞く」「わからない 点は積極的に尋ねる」「自分の役割に責任を持つ」な ど人とかかわる上で必要となってくるスキルの獲得も 目標の一つとした。さらに協働的な学習を効果的に進 めるために話し合う,学び合うといった他者とのかか わりの重要性を教師から伝え,働きかけた。以上のよ うに授業における他者とのかかわり合いの重視,ソー シャルスキルといった態度目標の設定,学び合うこと の重要性の指摘によって,かかわりのスキルが向上し たと考えられる。

また,配慮のスキルについては協働的な学習クラス,

一斉授業クラスともに向上している。これは新クラス となった4月当初と比べ,授業や学校行事などを通し て互いのことを理解し合い,話し合うことも増えたた め,配慮のスキルが高まったと考えられる。

しかし,協同作業に対する意識のところでも指摘し た通り,協同効用を十分に高めることができなかった ことを考慮すると,協働的な学習に必要なソーシャル スキルを身につけさせるという点では不十分であった と考えられる。Archer-Kath, Johnson, & Johnson(1994)

は生徒に褒める,支援する,質問する,情報を与える などといったソーシャルスキルの訓練を実施した上で,

授業においてそれらを目標にして個人,およびグルー プ全体でどのくらい行ったのかをチャート図にしてフ ィードバックを与えた結果,生徒たちの達成度が向上 したと指摘している。また,Johnson et al.(2002)は 生徒の協同の技能を継続的に改善させる必要性を述べ,

その方法として生徒などから改善係を選び,グループ 活動におけるソーシャルスキルについてのチェックを 行うことを提唱している。つまり,協働的な学習に必 要なソーシャルスキルを育成するためにはソーシャル スキルを学習する時間の設定,ソーシャルスキルの使 用に関する十分なフィードバックが必要だということ である。その点において本研究では不十分であったと 考えられる。

【今後の課題】

本研究によって問いをもとに対話を進めた協働的な 学習がソーシャルスキルにおけるかかわりのスキルに プラスの影響を与えることが明らかになった。ただし 協同作業に対する意識を十分に高めるだけのソーシャ ルスキルを身につけることはできなかった。河村

(2017)は問題解決につながる能力には認知的スキル だけではなくソーシャルスキルも不可欠であると指摘 している。そこで今後の課題としては以下の点が挙げ られる。

第1にアクティブ・ラーニングに必要なソーシャル スキルを調査し,どのように育成するかを検討するこ とである。協働的な学習に必要なソーシャルスキルに Table 7 協同学習におけるソーシャルスキル

形成する1.

1.静かにグループに入る 2.グループにとどまる 3.静かな声で話す 4.順番に交代する 5.その他

機能させる2.

1.意見やアイデアを分かち合う 2.事実と推論根拠を尋ねる 3.グループの学習に方向性を与える 4.みんなに参加を呼び掛ける 5.援助や意味の明確化を求める

6. 相手を指示し受け入れていることを表現

7.より具体的な説明を申し出る。する。

8.分かりやすく言い換える 9.グループの意欲を換気する 10.自分の気持を述べる 定着する3.

1.声に出してまとめる 2.正確さを追求する 3.推敲をする

4.記憶を助ける方法を編み出す 5.理解度をチェックする

6.計画を声に出して言うように求める

醸成する4.

1.人ではなく意見を批判する

2. メンバー間の意見や考えの違いをはっき りさせる。

3.別々の意見を一つにまとめる 4.正しいと判断する根拠を尋ねる 5.結論や考えを拡げる

6.綿密な質問をして徹底的に検討する 7.さらに進んだ答えを出す

(9)

ついてはいくつかの研究で指摘されているが,それら は整理されていない。そこで国内におけるアクティブ・

ラーニングを推進していく上で生徒にどのようなソー シャルスキルが必要なのかを整理し,どのように育成 するかについて検討していく必要があるだろう。

第2にアクティブ・ラーニングを校内全体で取り組 んでいる学校での協働性やソーシャルスキルの調査の 必要性である。本研究では一部の生徒を対象に,限ら れた時間での研究であった。そこで校内全体において アクティブ・ラーニングを行っている学校における協 働性やソーシャルスキルの変化を調べ,アクティブ・

ラーニングを効果的に進めるために必要なことを明ら かにする必要がある。

第3にアクティブ・ラーニングの実践的研究の蓄積 である。国内におけるアクティブ・ラーニングは昔か ら初等教育を中心に進められているが,そこでの生徒 同士のかかわり方やソーシャルスキルの発揮,効果な どについてはまだ十分だとはいえない。今後,教育現 場において多くの実践研究の蓄積が必要であろう。

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(11)

Learning Effect of Student Interaction Facilitation:

Focus on High School Students’ Collaborative and Social Skills

Keijiro Kumagai (Chiba Institute of Science) Shigeo Kawamura (Waseda University)

The purpose of this study was to examine how much high school students taking Classical Japanese B learn the subject, become cooperative and gain social skills through activities emphasizing student interactions in class. The results showed that cooperative class groups achieved higher results. In terms of relational skills (one of the social skills) there was interaction between cooperative class groups and non-cooperative class groups, and the former achieved more relational skills. Future research should focus on social skills required for active learning as well as its training methods, and practical research related to those skills.

Keywords : student interactions, questioning, problem-solving activity groups, cooperative learning tasks, social skills

Appendix 利用した尺度等について

【学習達成度】(「とてもそう思う」5点~「全くそう思わない」1点の5段階評価)

1.意欲的に学ぶことができた。

2.学ぶべき目標がはっきりしていた。

3.深く考えることができた。

4.新しい気づきを得ることができた。

5.他者(先生・友人)の意見をしっかり聞くことができた。

6.わからないところを他者(先生・友人)に尋ねることができた。

7.知的な刺激を得ることができた。

8.互いに高め合うことができた。

9.多くのことを学ぶことができた。

10.内容を深く理解することができた。

【協同作業認識尺度】(「とてもそう思う」5点~「全くそう思わない」1点の5段階評価)

◎協同効用

2.グループのために自分の力(才能や技能)を使うのは楽しい。

3.一人でやるよりも協同した方が良い成果を得られる。

6.協同はチームメートへの信頼が基本だ。

7.みんなで色々な意見を出し合うことは有益である。

8.能力の高くない人たちでも団結すれば良い結果を出せる。

10.グループ活動ならば,他の人の意見を聞くことができるので自分の意見も増える。

15.個性は多様な人間関係の中で磨かれていく。

16.協同することで,優秀な人はより優秀な成績を得ることができる。

17.たくさんの仕事でも,みんなと一緒にやればできる気がする。

◎個人志向因子

1.みんなで一緒に作業をすると,自分の思うようにできない。

4.グループでやると必ず手抜きをする人がいる。

5.周りに気遣いながらやるより一人でやる方が,やり甲斐がある。

9.みんなで話し合っていると時間がかかる。

(12)

11.人に指図されて仕事はしたくない。

13.失敗した時に連帯責任を問われるくらいなら,一人でやる方がよい。

◎互恵懸念因子

12.優秀な人たちがわざわざ協同する必要はない。

14.協同は仕事のできない人たちのためにある。

18.弱い者は群れて助け合うが,強いものにはその必要がない。

参照

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