九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
分子組織体を感応物質に用いる電気化学計測法の研 究
中野, 幸二
https://doi.org/10.11501/3075570
出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
川一ν
分子組織体を感応物質に用いる 電気化学計測法の研究
平成5年1 2月
中 野 幸 二
目次
第1章 はじめに
1.1 有機分子の組織化 1
1.2 化学計測法と分r組織体との関わり 3
1.2.1 化学計測法と分析試薬 3
1.2.2 化学計測法における分子治i織体の利用 5
1.3 分子組織体による化学計測 6
1.3.1 二分子膜組織体を用いる化学計調ij 6
1.3.2 多相系高分子膜を用いる化学計測 9
l.4 本論文の概要 10
参考文献 14
第2章 二分子膜修飾電極の交流特性と湿度センサへの応用 16
2.1 緒言 16
2.2 実験 18
2.2.1 膜物質の令成 18
2.2.2 修飾電極の調製 19
2.2.3. 電気化学測定 21
2.3 結果と考察 23
2.3.1 修飾電極の交流特性とその温度依存性ーキャスト膜修飾電極系 23
2.3.2 修飾電極の交流特性とその温度依存性一LB膜修飾電極系 25
2.3.3 周波数応答分析法による解析-電気化学系の複素インピーダンス 28
2.3.4 周波数応答分析法による解析-修飾電極の複素インピーダンス 30
2.3.5 湿度センサへの応用 34
参考文献 37
第3章 多相系高分子修飾電極を用いるバイオミメティックセンサ 38
3.1 緒言 38
3.2 実験 41
3.2.1 ピニル/ポリペプチドプロック共重合体の合成 41
3.2.2 修飾電極およびIR測定試料の調製 42
3.2.3 電気化学測定 42
3.2.4 IR測定 42
3.3 結果と考察 43
3.3.1 多相系高分子の分子設計 43
3.3.2 加水分解処理によるミクロ相分離構造の形成 44
3.3.3 修飾電極のカルシウムイオン応終
3.3.4 マーカーイオンの効果
参考文献
司I 'i fO A斗 戸、J ζJ
-
日 次
第4章 二官能性長鎖チオールによる分子修飾電極.
クラウンエーテル誘導体を用いるアンモニアガスセンサ
4.1 緒言
4.2 実験
4.2.1 試薬および修飾試薬の合成
4.2.2 修飾電極の調製と溶液系での電気化学測定
4.2.3 センサセルおよびガスフロー系の構成
4.2.4 ガスセンサ系での電気化学測定
4.3 結果と考察
4.3.1 修飾電極の特性
4.3.2 各種ガスに対するインピーダンス応答
4.3.3 センサセルの交流特性-未修飾銀電極系
4.3.4 センサセルの交流特性一修飾銀電極 系
参考文献
7 7 9 9 9 0 1i 2
2
5 8 0 4 FD
,コ
《J ζJ ζJ ζU ζU ぷU ぷU ぷU ぷU 寸I 勺I
第5章 DNA修飾電極. 二重鎖DNAの末端修飾による箇定化と DNA結合性物質センサへの応用
5.1 緒ニ
5.2 実験
5.2.1 試薬およびDNAフラグメントの調製
5.2.2 末端修飾DNAの調製
5.2.3 末端修飾DNA中のチオール基の定旺
5.2.4 FT-IR測定
5.2.5 水品発振子重みセンサによるDNA国定化量の定亙
5.2.6 電気化学測定
5.3 結果と考察
5.3.1 末端修飾DNA中のチオール基の定量
5.3.2 FT-IRによる検討
5.3.2 DNA問定化量の定量と被覆率の見積り
5.3.3 DNA修飾電極のボルタンメトリー特性
5 5
7
7 8 9 9 0 1 2 2 4 6
7
マf 寸J 守I 守I 勺I 円/
寸I nxU 00 00 00 00 00 00
5.3.4 DNA修飾電極のキナクリン応答 88
5.3.5 キナクリン応答の機構-DNA二重鎖との相互作用について 89
5.3.6 キナクリン応答の機構一修飾電極の特性変化について 92
参考文献 98
第6章 まとめ 100
謝辞 103
-II -
第1章
1.1
有機分子の組織化
はじめに
分子が一定の規則性を持って集合体を形成すると、 それまでにはない新しい機 能が生まれる。 この考えに基づく分子組織体の包括的な研究活動は、 生体の本質 ともいえる自己組織化の原理を明らかにしつつある1)。 分子工学や分子設計とい う言葉に象徴されるように、 化学の多くの分野では、 個別の分子構造とその機能 発現に焦点が置おかれている。 また、 さまざまな現象を分子レベル理解するため に、 対象を分割して部分部分を解析する方法論がとられてきた。 このような意味 では、 「分子組織体Jの化学は、 一種のパラダイムシフトといえよう。
分子組織化の考え方は、 その拠りどころを生物にその見ることができる2)。 分 子レベルから出発し、 分子集合体-超分子構造を経て細胞に至る階層構造性(ヒ
エラルキー)は、 自己組織化の究極的な例といえる。 また、 形態形成と複製、 エ ネルギ一変換や情報処理、 さらには運動といった生きものらしさの多くは、 タン パク質分子やその集合体が担っている。 この集合体、 つまり超分子組織体の特徴 は、 複数個の分子が集まってより大きく複雑な構造を形成する過程で、 それぞれ の分子単独には見られない機能を獲得するところにある。 これは、 個々の分子機 能の単純な和を超えるともいえよう。 連続した反応を触媒する複数の酵素がひと つの超分子系を組めば、 全反応のスループットが著しく向上することは容易に推 察できることである。 このような現象の基礎を理解するうえで、 化学の立場から
は、 天然のタンパク質の活性部位だけを抽出したり3)、 新規な物質を合成して 類似の機能 を持つ人工的なシステムを構築するといったアプローチがとられる4)。
いずれにせよ、 生体系の特質であ る分子の組織化を、 非生体系においても一般的 な原理として確立することが重要であり、 これ は生命科学の見地からも興味が持 たれる。
分子組織化の概念は、 有機材料を用いた電子 -光機能性素子の研究においても 重要といえる。 テトラシアノキノジメタンに代表される、 有機伝導体の研究が契 機となり、 1980年代に提案された分子エレクトロニクスの概念では、 有機分子の 持つ物性を機能として積極的に活用する ために、 分子を積木細工のように組み立 てて、 さまざまな電子 ・ 光機能性素子を形づくる考えに基礎を置く5)。 近年では、
タンパク質などの生体成分を利用した電子デバイスも提案され、 これらはバイオ エレクトロニクスと総称されている。 こ れらの概念の具体化は、 現実的な分子の
サイズ/nm
104
(
生体成分〉
骨宅一一 磁一一 一波一一
一の 一波一 一長一10 103
102
0.1
図1.1 代表的な有機化合物と比較した生体組織および電子素子のサイズ
組み立ての方法や分子問の電気的な接合など、 むしろ周辺技術の面で、 今後の展 開に依るところが大きい。 現在では、 ひとつひとつの分子よりはむしろ分子組織 体レベルで機能する素子、 または生体の電子・ 光機能に関わる組織を模倣した素 子設計といった方向に、 研究の流れが変わりつつある5,6,7)。
分子レベルでの組織構造の重要性は、 今日、 無機材料の分野においても比重を 高めつつある8,9)。 例えば無機超格子、 つまり複数の原子からなる積層構造をナノ メートルスケールで制御し、 未知の現象の発見や新機能の発現をめざす研究があ る。 このようなレベルの積層構造は、 電子の量子力学的な振る舞いを利用した量 子効果デバイスとも結びついている。 さらに、 走査トンネル電子顕微鏡の技術を 利用した原子のマニピュレーション10)など、 分子系への応用といった立場からも 興味深い報告がなされている。 以上に述べた研究との関連からも、 分子組織化の 概念はこれまでにない研究分野を拓くものと期待される。 前述したように、 化学 の分野においては、 対象を分割して部分部分を解析する方法論がとられる。 分子 組織体の研究は、 このようなアプローチから逆に進むものである。 そこでは、 マ クロな物性とミクロな特性との境界領域、 いわゆるメゾスコピック系が研究の対 象となる。 生物を例に挙げるまでもなく、 このような系で未知の現象が発見され る可能性は高いといえよう。 またそれは、 新たな応用展開にもつながる。
1.2 化学計測法と分子組織体との関わり
1.2.1 化学計測法と分析試薬
ある未知試料が手元にあるとする。 このとき、 物質やエネルギーの存在形態を 自在に変換するといった化学的な興味、 ないしは立場からは、 試料中に含まれる 物質の種類や量が情報といえる。 自然科学における物質情報の重要性は強調する までもなし このため現在では、 単純な種類や量からより進んで、 物質の存在状
態も含めたかたちで情報を得る努力がなされる。
ここ で、 ある試料から物質情報を得る方法について考えてみる。 試料はある安 定状態にあるから、 そのままでは必要な情報は得られない。 そこで光などのエネ ルギーに対する応答 (吸収・発光)を観測した り、 他の物質(試薬)と反応させ るなどの手段がとられる。 いずれも、 試料にエネルギー的な摂動を与え、 その応 答を観測することで情報を得てお り、 あらゆる分析法に共通のアプローチとなっ
ている11)0 y線からマイクロ波にわたる、 電磁波と目的物質との相互作用に着目 するのが物理分析法 (機器分析法)、 また試薬 との反応を利用するのが化学分析 法とされているが、 互いに相補的な関係にあることはいうまでもない。
従来の化学分析法では、 比較的低分子量の有機試薬が主に利用されてきた12)。
今日では、 関連する諸分野の進歩に伴い、 複雑な分子構造を持つ大環状化合物か ら高分子化合物まで、 合成系物質や生体成分を問わず利用されるに至っている11,
13 )。 目的とする物質と選択的 に反応し、それを適切な物理量として捉えられる(二 次情報への変換)性質があれば、 あらゆる分子が利用の対象となり得る。 この考 え方は、 化学平衡が基本となっているが、 もちろん、 目的物質と試薬との反応速 度からも物質情報は得られる。 つまり、 反応の ある定常状態のもとで生成する分 子、 あるいは消費さ れる分子の量に着目する。 酵素反応を利用したバイオセンサ は、 この考え方の典型例である14)。
バイオセンサの例 に見られるように、 今日の化学分析法において、 生体分子は もはや特殊なものではない。酵素とともに代表的な生体高分子である抗体も、 モ ノクローナル抗体の出現や各種の標識法の開発が契機となり、 その応用領域を拡 大している15, 16)。 さらには、 遺伝子組換え技術を利用した分子構造の改変3)、 触 媒機能を持たせた半合成の抗体触媒17)など、 それらの利用に弾みをつける研究も 精力的になされている。 ただし、 酵素や抗体も分子であり、 あくまで1個の分子 が行う反応に着目しているに過ぎない。 本研究で対象とする分子会合体系、 つま りミセルや二分子膜についてみてみると、 これらが目的物質と相互作用して直接 二次的な情報をもたらす、 ないしはその変換に寄与するようにデザインされた例 は、 ごく少ない18 - 21)。
1.2.2 化学計測法における分子組織体の利用
従来の化学分析法において、 分子会合体は反応のメディアとして用いられてき た。 ミセルによる可溶化現象を利用して、 難溶性の化合物を水溶液系で取り扱う 方法はその代表例であり、 ミセル相は疑似 的な有機相として作用している22)。 そ の他には、 イオン性界面活性剤ミセルや逆ミセル系に見られる、 光吸収や発光の 増感現象23, 24)があり、 この系では、 室温リン光分析法25)なども報告されている。
後者の例が示すように、 ミセル系では均一系とは異なった現象がしばしば見られ る。 微視的に見れば、 ミセル系は不均一系である。 さらにイオン性界面活性剤 で は、 親水部の電荷がミセル表面に集中し特異な反応場の形成につながる。 これら の特徴が、 前述の現象と密接に関連することが指摘されている。 しかしこれらの 例においても、 ミセルは反応のメディアとしての域を出ていないといえよう。
界面活性剤ミセルは、 本質的には分子のランダムな集合体 である。 可溶化現象 の例に見られるように、 ミセル相は、 溶液系に類似した等方的な環境ないしは場 を提供するにすぎない。 生体の超分子組織のような精綴な構造、 および高い次元 での機能と比較すればごく低いレベルではあるが、 人工の分子会合体系でも物質 情報の変換作用、 つまり分子会合体が共存する他の物質と相互作用して二次的な 情報をもたらすような過程を実現できょう。 しかしランダムな分子集合体では、
複数の分子が協調的に作用して二次情報を発生するプロセスを具現化するうえで 限界がある。 この目的に沿った素材として、 本研究では合成二分子膜、 および多 相系高分子に着目した。 後述するように、 いずれも、 自発的な組織構造の形成に 加えてダイナミックな構造変化を起こす特徴がある。
ここで、 もし分子を1伺ずつ持ち運び組み立てることができれば、 物質情報の 変換機能を備えた分子組織体の実現は容易であろう。 必要な分子群、 例えば物質 を認識 ・識別する分子、 そのプロセスを二次情報に変換する分子などを自在に操 って組織体を構築できれば、 生物の超分子構造に迫る機能の実現も不可能ではな い。 このような観点からは、 走査トンネル顕微鏡を応用した原子のマニュピレー
ション ・加工10, 26)は極めて魅力的である。 しかし、 現時点では一般的とはいえず、
加えて原子よりも複雑な分子のマニュピレーションに拡張できるかは今後の課題 である。 そこで自己組織性が鍵となってくる。 脂質分子が形成する二分子膜は、
空間的な秩序構造の代表例である27)。 一方で高分子には異種の分子鎖は混じり合 いにくいという特徴があり、 多相系高分子膜ではミクロ相分離構造の形成につな がる28) 。 加えて、 二分子膜は結品相と液晶相との あいだの相転移現象、 多相系高 分子では高分子鎖のコンホメーション変化といった、 ダイナミックな構造変化を 起こす特徴がある。 このような構造変化が二次的な情報を生み出すよう に設計す れば、 化学計測への応用の道が開ける29)。
1.3
分子組織体による化学計測
1.3.1
二分子膜組織体を用いる化学計測
ここでは、 単分子膜 や二分子膜、 多相系高分子 といった分子組織体を、 化学計 測法に応用するうえで参考となる研究について概説する。 またそれらの研究と対
比して、 本研究でのアプローチについても触れる。
まず、 天然の脂質により構成した黒膜(適当な支持体に直径1 mm程度の細孔 を開け、 この細孔内に形成させた平面膜。 脂質分子の二層構造で形成され、 膜厚 が50 Å程度であり光の反射が起こらない。 この ため黒っぽく見えこの名がある) 系での、 Castilloらの研究がある30)。 彼らの系では、 膜面に接した溶液中に抗体や 酵素が添加してあり、 抗原-抗体反応や酵素一基質反応に伴って膜のインピーダ ンスが変化すると報告している。 このような現象について、 その機構の解釈や定 量的な検討はなされていないものの、 彼らは、 脂質膜のトランスデューサーとし ての機能を指摘している。 類似の系は、 Thompsonら31 )、Janataら32)によっても研 究されており、 膜の表面電位測定33)、 膜を介してのキャリア輸送34)と組み合せた 研究などが報告されている。
また、 天然の脂質を利用 するという立場からは、 栗原らの報告35)も興味深い。
この研究では、 ウシ喚細胞上皮組織から脂質成分を抽出し用いている。 抽出した 脂質から単分子膜を形成させると、 膜の表面張力がにおい物質の共存により変化 すると報告している。
一方、 合成系の二分子膜物質は、 その発見以来、 多種多様な膜形成化合物が報 告されている。 合成二分子膜は、 天然の脂質分子と比較して化学的な安定性が高 く、 さ らには自由な分子設計が可能といったメリットも持っている。 これらの特 徴により、 単分子膜や二分子膜、 またはそれらの累積膜系で、 各種の応用研究が 精力的に研究されているし6, 7, 36, 37)。 それらのひとつひとつについてここでは触 れないが、 化学計測の立場から興味深い研究も数多い。 例えば、 岡畑らの化学受 容モデルとして研究38, 39)、 栗原らによる両親媒性ホスト分子からの単分子膜を用 いたゲスト認識40)、Langmuir- Blodgett膜修飾電極系でのゲスト応答20)、 生体膜の イオンチャンネル機構を模倣した、 梅津らのイオンチャンネルセンサ19, 41, 42)な どが代表例である。
合成二分子膜に関するさまざまな研究のなかで、 発色団を含む二分子膜系で興 味深い研究が報告されている37, 43)。 二分子膜を特徴づける現象のひとつに、 結品 相から液晶相への相転移現象がある。結晶相にある二分子膜では、 膜分子は一定 の配向で綴密にパッキングしているが、 温度の上昇に伴い液晶相に転移すると、
その運動性が高まり膜全体が流動性に富むようになる。 発色団を含む膜物質では、
このとき吸収スペクトルが変化する。 つまり、 相転移現象が膜の吸収スペクトル に反映される。 これは、 膜内での発色団の配向や発色団どうしの相互作用が、 膜 の会合状態と密接に関連するためである。 膜物質が蛍光性の発色団を持っときに は、 膜の蛍光スペクトルについても同様の挙動が見られる。 また、 複数の物質か ら構成した混合膜系では、 混合状態の変化、 例えばそれぞれの成分が相分離して
ドメインを形成するような場合にもスペクトルは変化する。
このような系では、 もしある物質との相互作用によって膜の会合状態が変化す るならば、 スペクトル測定からこれを直ちに検知できることになる。 相転移や相 分離現象はon-offの変化であるから、 シグナルの増幅といった可能性も秘めてお
不斉中心を持つ膜分 中嶋らは、
り、 膜ならではの特徴を活かせる系といえよう。
およびリン酸アニオンを親水部とする の増感現象
(CD) 子に見られる円二色性
不斉二分子膜系における、 CD 強度の金属イオン応答を報告している18, 44)。 この これを分光学的な ここでは 金属イオンの濃度になるが、
研究は、 ある物質情報、
このときの金属イオン 二次情報に変換するための重要な原理として注目される。
中でも、
いくつかの物理化学的なプロセスが関与すると考えられるが、
応答には、
膜のリン酸基と金属イオンとの静電相互作用が重要といえよう。
ホスト分子を埋め込んだ混合膜系について 我-々はこのような現象をヒントに、
膜に包埋したホスト分子とゲストとの相互作用を、 膜自
(図1.2)
45)。検討した
身のCD強度として検知できるならば、 その一般性は飛躍的に高まる。 ホスト(2)
r-"\
山;・0国ι::)
...し一' \,___/CH
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Z J ,E' H
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-
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H(〉 0 0 ト刊ト什 2 2
H H
F〉 pu
4、 r寸 qu qu Uハ uH ハU PU
1
20・'C;イオン強度. 0.1 (沼化テトラメチルアンモニウム)
CNa+ ] 10-2 5)( 10 -3 10 -3 10 -L,
5 x 10-5 10-5 M
2
。
- 20E 一 υω℃NFF』UOω℃ちF 、 MWE 準 伴 余
熱 A
または l 計測対象物質 占
none
にd
300
図1.2 合成二分子膜の構造変化を利用した化学計測 |さlは相似移刻象の場介であり、 転移の 前後で発色団間の相互作川に廷が(l:.じ、 これがスペクトル変化につながる。 このような変化をもた らす物質であれば、 二分子股をトランスデユーサとしてInちに検知lできる。CDスペクトjレは、 膜(1) に包埋したホスト(2)とナトリウムイオンとの以j必とらえた例である。
波長Inm
200
は、 Na+イオン選択性のニュートラルキャリアである。 これを包埋した不斉のマ トリックス膜(1 )は、 CDスペクトル変化のかたちでNa+イオン応答を示した。
またその応答はNa+イオンに特異的であり、 他のイオンではlO-2Mまで応答しな かった。 ここで、 膜(1)それ自身はホストーゲスト相互作用には関与すること はなく、 ホスト(2)はCD不活性である。 両者が協調的に作用することで、 金属 イオン応答性が発現していることを強調したい。
1.3.2 多相系高分子膜を用いる化学計測
生体膜は、 脂質二分子膜中にタンパク質がモザイク状に分布した構造が特徴で あり、 超分子構造の端的な例である。 生体膜では、 その超分子構造と多様な膜機 能が深く関わり合っていることはいうまでもない。 しかし生体膜では、 高分子化 合物のダイナミック な特性が重要な役割を担っていることに気づく。 ゲートやチ ャンネルと呼ばれる、 膜タンパク質の可逆的なコンホメーション変化がそれであ り、 物質やイオンの特異的な膜透過を制御 している46)。 このような機能を、 合成 高分子膜で実現した研究が報告されている47, 48)。
高分子には、 異種の分子鎖、は混じり合いにくいという特徴がある。 このため、
複数のセグメントから成る多相系高分子膜では、 同種のセグメントどうしが凝集 してドメインを形成する(ミクロ相分離構造の形成)。 いずれかのドメインで物 質の受容が起こるとか、 ドメインが透過チャンネルとして作用するように分子設 計すれば、 生体膜を模倣した高分子膜が実現できょう。 このような観点から、 前 田らはピニルポリマー/ペプチドグラフト共重合体を合成している。 さらに、 固 体膜系でも、 ペプチド鎖の自由なコンホメーション変化を利用して、 膜透過性が 制御できることを報告している47)。
第4章で述べるように、 我々は新たにピニルポリマー/ポリペプチドブロック 共重合体(3)を合成した。 ピニルポリマーが疎水性であるのに対し合成ポリペ プチドは親水性が高いといった性質の違いが、 キャスト膜のミクロ相分離構造を 誘起するであろう。 ポリペプチド鎖が形成する親水性ドメインは、 水溶性物質の
寸?H- CH2 行寸?H一 CH2 tsCH 2・日 -NHCH2CH2 NH寸Q一?H-NH十7
� CN
0け H2
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1=ぬm
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↓
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0.5 0.4 0.3 0.2 0.1
電位/V vs
Ag
/AgCI
。
-0.1
図1.3 多相系高分子修飾電極を用いたバイオミメティックセンサ ミクロキ日分離構造 (濃い部分がピニルポリマ一、 薄い部分がポリペプチドドメイン)を形成する高分子膜では、
ポリペプチドのコンホメーションが変化すると、 マーカーイオン(鉄シアノ錯体)の透過性 が変化する。 サイクリックボルタモグラムは、 尿素(タンパク質の変性剤)応答の例。
透過チャンネルとなり、 ポリペプチド鎖のコンホメーションが膜透過性変化に反 映されるはずである。 このような材料を修飾電極に応用し、 カルシウムイオン49,
50)、 尿素51)に感度良く応答する電気化学センサを確立している(図1.3)。
1.4 本論文の概要
本論文は、 6章より構成される。 第2章以降の内容について以主にまとめる。
前節で述べたょっに、 我々は、 不斉二分子膜に見られる円二色性の増感現象に
着目し、 長鎖クラウンエーテル包埋した組織体系で金属イオン応答が発現するこ とを見い出した。 一方、 二分子膜は、 水中に分散させた状態での構造や特性を保 持したまま固定化できる。 これは固体表面の修飾に都合が良い。 さきの円二色性 の増感現象は、 その後の検討により、 国定化二分子膜系でも見られることが確認 された52)。 このような系の電気化学計測への拡張を目指し、 第2章では二分子膜 修飾電極の電気化学特性について検討した。 前述のCD系はやや特殊な印象が拭 えないが、 電気化学 系で類似のシステムを笑現する意義は大きい。 その結果、 二 分子膜が結晶相から液晶相に相転移するとき、 電極の交流特性が劇的に変化する ことを発見した。 残念ながら、 現在のところこの現象を積極的に利用した化学計 測法の確立には至っていない。 本論文では、 湿度センサへの応用53)について報告 するにとどめる。
第3章では、 多相系高分子修飾電極を用いた化学センサについて検討した。 前 節で述べたように、 疎水性のビニルポリマーと親水性の合成ポリペプチドからな るブロックコポリマーを新たに合成した。 この材料からのキャスト膜は、 それぞ、
れのブロックの性質の相違により、 自発的にミクロ相分離構造をとる。 合成ポリ ペプチドドメインは、 さまざまなイオンや分子を受容しそのコンホメーションを 変化させる。 これは、 ポリペプチドドメインを介しての透過性変化につながる。
この材料を修飾電極系に応用し、 イオンチャンネルセンサ41)ー酸化還元活性なイ オンの電極反応を指標とするボルタンメトリックセンサの手法を適用し、 生体膜 のイオンチャネル機構に準じたカルシウムイオンセンサを開発した。 ここでは、
赤外分光法を用いた作業仮説の検証についても触れる。
以下の章では、 電極表面の修飾試薬ないしは官能物質についての拡張を図った。
研究を遂行するうえでの指針は、 第2章および第3章での成果と密接な関連があ ることは言うまでもない。
はじめに第4章では、 分子組織体による表面修飾の発展として、 二官能性アル カンチオール誘導体による電極表面の分子修飾、 および修飾電極を用い る化学計 測について検討した。 合硫黄化合物が、 水銀や金電極に吸着する現象は古くから
研究されている54, 55)。 近年、 長鎖アルキル基を持つチオールないしはジスルフイ ド類について、 金属表面への吸着に伴う自己組織的な単分子膜形成が指摘された。
この現象は、 国体表面での有機分子の自己来11織化 現象という観点からも注目され ている6, 56)。 さらに、 このとき の吸着機構として、 金属-硫黄配位結合の関与が 示唆されている57, 58)。 金属一硫黄配位結合の不活性さ、 自己組織化による均ーな 単分子膜の形成という点を考慮すると、 この現象は電極表面の修飾法として有望 といえよう。 このような観点から、 我々は二官能性チオールによる分子修飾法を 提案し、 系統的な研究を行ってきた59 - 62)。 本章では、 末端にクラウンエーテル を導入した長鎖アルカンチオール誘導体を新たに合成した。 この化合物を、 電極 表面の修飾に用い、 交流電気化学的な測定法と組み合せること でアンモニアガス
センサの開発に成功した。
シトs-o-…-C,),J
~ ベl1Ul111111110
図1.4 二官能性長鎖アルカンチオールによる分子修飾
CH,5H
合硫黄官能基がアンカーとなり、 分子全体が金属表而にrll,1定化される。
CH,5H
CH.SH
第5章では、 DNA二重鎖のバイオアフィニティーを利用した化学センサにつ いて検討した。 生体内においてDNA は、 二重鎖のか たちでさまざまなバイオア フイニティー反応に関与している。 例えば、 個体の遺伝情報 を担うのはDNAの 塩基配列であるが、 遺伝情報の発現、 つまり遺伝子スイッチのon-offは、DNA二 重鎖中に含まれる特定の塩基配列部位(オペレーター)へのタンパク質( リプレ ッサー)の結合によって制御されている63)。 したがって、 DNA二重鎖 をアフイニ ティーリガンドとすれば、 さまざまな DNA 結合性物質の計測が可能と考えられ る。電気化学センサ系でこれを実現す るには、 金属電極表面への DNA二重鎖の 固定化が鍵である。 しかし、 適切な手法はこれまでに提唱されていなかった。 そ こで、 DNA二重鎖の末端をチオール前駆体で修飾し、 金表面への化学吸着を利用 した固定化法を新たに開発した。 さら に、 第3章で検討したイオンチャンネルセ
ンサを基礎に、 DNA結合性物質センサを確立することができた62, 64)。
第6章 は終章であり、 本研究で得られた成果についてまとめる。
仔牛胸腺DNA (超音波照射により切断)
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0, 一0・十O-c山-s-s-c州OH
。
DNA層の形成
精製
(ゲル漉過による分取) および 金表面への化学吸着
図1.5 含硫黄化合物によるDNAの末端修飾と化学吸着を利用した固定化
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第2章
2.1 緒言
二分子膜修飾電極の交流特性と 湿度センサへの応用
前章で述べたように、 不斉中心を 持つ二分子膜 にクラウンエーテル誘導体を包 埋すると 、 二分子膜の円二色性(CD)における金属イオン応答が発現した1)。 こ の系で用いた二分子膜は、 第四アンモニウムイオンを親水部に持ち、 同じカチオ ン性の 金属イオンと結合するとは考えにくい。 したがって、 金属イオンとの相互 作用に 関わるのはク ラウンエーテルだけであり(銭形成反応)、 二分子膜はこの 反応に関する情報、 具体的には生成した錯体種の分率をω強度に反映させてい る。 このように、 化学計測のための機能が、 組織体を形成する分子相互の協調的 な作用 により発現している系は他に類例がない 。 ただし、 円二色性スペクトル測 定は、 化学計測法で汎用される機器分析法としてはやや特殊である。 また、 二分 子膜を分散させた水溶液系での結果であり、 化学センサとしての用途に結び付け るためにはいくつか の工夫が必要といえる。
一方、 二分子膜は、 水中に分散させた状態での構造や特性を保持したまま固定 化できる2) 。 これは固体表面の修飾に都合が良いO 固定化法としては、 二分子膜 水溶液からのキャスト法、 多孔質性の支持体への担持といっ た単純な方法から、
膜分子と反対の荷電を持つ高分子 とのイオン対(ポリイオンコンプレックス)を 形成させる方法などがある。 これらの方法により調製した膜 は、 固定化二分子膜 と総称されている。 間定化二分子膜は、 基本的 には二分子膜の多層ラメラ構造を
とり、 水中に分散させた状態と同様に、 結晶相から液晶相への相転移現象を示す。
このときの相転移挙動は、 もちろん溶液系とは異なってくる。 しかし、 固定化二 分子膜を用いれば、 相転移に代表される膜の構造変化を化学計測の原理に取り入 れることが可能といえる。 これを支持する結果として、 ポリイオンコンプレック スとした不斉二分子膜は、 キャスト膜状態でも CD 強度の増感現象、 および膜の 相転移に由来するCD強度の温度依存性を示した3)。 そこで本章では、 電気化学的 な測定系への拡張について検討した。 前述のように、 CD 系はやや特殊な印象が 拭えないが、 電気化学的な測定系で類似のシステムを実現 する意義は大きい。
電気化学的な測定系として、 ここでは、 化学修飾電極の手法に交流測定を組み 合わせた。 化学修飾電極は、 固体電極表面に特定の機能を持つ物質を固定化し、
電極表面に化合物選択性を発現させる考え方であるが、 化学センサへの応用を計 るうえで都合が良い。 固定化二分子膜の調製法のうちいくつかは、 支持体を必要 としない単独のフィルム形成も可能であるが、 やはり強度的には不充分である。
このような場合でも、 固体電極を膜の支持体として利用できる。 ここでは、 二分 子膜の固定化法としてポリイオンコンプレックス化法的を用いた。 これは、 イオ ン性の膜物質について、 反対の電荷を持つ高分子イオンと高分子錯体(イオン対) を形成させ不溶化する方法である。 形成されるポリイオンコンプレックスは有機 溶媒に可溶であり、 有機溶媒からキャストするだけで二分子膜を固定化できる。
一方、 このような修飾電極系に適した測定法は少ない。 電気化学に汎用される 測定法は、 酸化還元活性な化学種を対象にしたアンペロメトリー、 イオン性化学 種についてのポテンシオメトリーの二種である。 二分子膜は基本的に絶縁体であ る。 これは、 電極反応の阻害につながり前者の手法は適用し難い。 また、 イオン 選択性を持つ膜であればポテンシオメトリーが適用できるが、 ポリイオンコンプ レックス 膜は無荷電であるため、 これも適用が困難である。 このような観点から、
ここでは、 修飾電極の交流電気化学特性5・7)に着目した。
本章では、 はじめに、 キャスト法で調製した修飾電極の交流 特性について検討 した。 一対の修飾電極を支持電解質水溶液に浸漬し、 この状態でインピーダンス
の温度依存性を測定した結果、 ある温度を境にインピーダンスが劇的に変化する ことを発見した。 このときの温度は膜の相転移温度と良く対応し、 インピーダン ス変化と相転移が密接に関連することがわかった。 キャスト法で形成される膜は 多層ラメラ構造であり、 修飾層の構造に不明瞭さがある。 そこで、 電極表面の修 飾に Lan伊luir-Blodgett (LB)法を適用した。 ポリイオンコンプレックス膜を累積
した修飾電極でも、 膜の相転移に対応して電極のインピーダンスは変化した。
交流測定法は、 周波数に関する情報が得られる利点を持っている。 測定に用い る周波数を連続的に変化させると、 得られる情報はインピーダンスのスペクトル となる。 一般に、 誘電体の性質には分子、 または分子の集合体レベルでの分極現 象が関与する。 例えば高分子化合物では、 双極子モーメントの配向による誘電 性 がインピーダンスとして観測され(配向分極)、 高分子鎖の運動性が反映される。
このような現象を詳細に解析するうえで、 インピーダンススペクトルは有力な情 報を与える。 ここでは、 周波数応答分析の手法を用いて修飾電極のインピーダン ススペクトルを測定し、 分子論的な立場から、 修飾電極の交流特性と相転移に伴 う変化を理解する検討を行った。 しかしこの点については、 現在までのところ機 構の把握、 および明解な説明づけには至っていない。
このような不充分 さはあるものの 、 修飾電極系で二分子膜の相転移現象を検出 できるという知見も他に類例が無い。 これは、 CD系と同様のシステムが、 基本 的には、 修飾電極系でも実現できることを意味している。 このような可能性につ いても、 残念ながら具体的な成果を得るには至っていない。 本章では、 修飾電極 を感応素子に用いた湿度センサについて報告するにとどめる。
2.2 実験
2.2.1 膜物質の合成
本研究で用いた化合物は、 いずれも汎用される膜物質であり、 既報2,8)に準じて
合成した。 なお、 ポリイオンコンプレックスの調製4)には、 対イオンとしてポリ スチレンスルホン酸(徳山曹達, 平均分子量2.22 x 106)を用いた。 これらの化合 物について、 元素分析、 lH-nmrおよびIR測定の結果は既報と良く一致した。
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2.2.2
修飾電纏の調製 キャスト膜修飾電極
電極には白金線(直径0.5 mm x 30 mm)を用いた。 電極の前処理は常法に準じ た。 はじめに、 アルミナにより電極表面を鋭面に研磨した。 純水中に浸漬し超音 波照射により洗浄したのち、 減圧下にて乾燥し用いた。 電極の修飾は以下の手}II真 で行った。 前処理した電極をポリイオンコンプレックス(2)のクロロホルム溶
液(10 - 50 mg cm-3)に浸漬し、 次いで電極を溶液から引き上げ溶媒を気散させ る(1分程度)。 これを数回繰り返したのち、 60 CCの温水中で1時間程度コンデ
ィショニングする。 電極を室温まで放冷し、 そのまま測定に使用する。
LB膜修飾電極
電極は白金板(10x 10 x 0. 5 mm)とし、 2.1.1に準じて前処理した。 単分子膜の 表面庄一面積等温線(π- A曲線)測定、 および膜の累積には、 サンエス計測製 FSD・20型、 またはFSD-23型フィルムバランスを用いた。
ポリイオンコンプレ ックス 型単分子膜の調製は、 既報9)に準じた。 単分子膜を 展開する水相(サブフェイズ)は、 ポリスチレンスルホン酸(PSS)カリウム水 溶液(10・2unit mo1 dm-3)とした。 (1)のベンゼンーエタノール(体積比 8 : 2) 溶液(1.3x 10・3
M)
0.08 cm3 を水面に展開し、 そのまま 10分間放置し溶媒を気 散させた。 この処理の段階で、 気液界面に(1 )と PSS アニオンのポリイオンコ ンプレックスが形成される。ポリイオンコンプレックス膜の累積に先だち、 膜の π-A曲線を測定した。 気 液界面に形成させたポリイオンコンプレックスを、 0.4mm sec-1の速度で圧縮した とき、 表面圧20mN m-1付近で液体膜から凝縮膜へと転移し、 40mN m-1程度ま で安定に存在する挙動を示した。 このような結果に基づき、 表面圧30 mN m-1 の 条件下で単分子膜を累積した。 累積は垂直浸漬法によった(浸漬の速度は10 cm min-1) 0 1回の浸漬につき、 基板が膜面を下降方向に通過する、 または上昇する いずれの過程においても基板上に膜が移しとられ、 Y 膜(両親媒性分子が形成す る膜の親水面、 および、疎水面どうしが隣り合った二層構造の膜)の形成を確認し
た。 なお、 膜の累積比(基板の幾何学的な面積と基板に移しとられた単分子膜の 面積との比)は、 0.6から1.6であった。 調製した電極は、 10分間程度減圧下に て乾燥させたのち使用した。
湿度センサ素子
電極には、 セラミックス基板表面に、 2極構成のくし状パターンを形成させた 金アレイ電極を用いた。 基板サイズは 15 x 18 mm、 電極の実効面積(アレイ形状 部の幾何学的な面積)はそれぞれの極につき17.5 mm2である。 基板の表面全体に、
膜物質(3)の水溶液(10・3 mol dm-3) 0.04 cm3 をキャストし、 減圧下で乾燥した。
測定に際しては、 このセンサ素子を温度30 CC、 相対湿度100 %の雰囲気下で2時 間程度コンデイショニングしたのちに使用した。
2.2.3 電気化学測定
溶液系における修飾電極の交流特性とその温度依存性
キャスト膜修飾電極およびLB膜修飾電極の二種類の系について測定した。 測 定にはHewlett-Packard社製4192A型、 またはWayne-Ke汀社製6425型LCRメータ ーを用いた。 測定セルは2極構成とし、 支持電解質水溶液(0.1 mol dm-3塩化カリ
ウム)中において、 一対の修飾電極が示す電極インピーダンス、 およびその温度 依存性を測定したO 測定溶液中の溶存酸素については、 窒素置換操作の有無によ る変化は特に見られず、 本測定では窒素置換処理を省略した。
ここで観測されるインピーダンスは、 単純に、 系に印加した交流 (交番電場) に対する電気的な抵抗 である。 測定系のインピーダンスに関す る分子論的な理解、
具体的 には、 化合物の構造や物性、 反応、などとの関連づけには、 次項で述べるよ うな測定を行う必要がある。 また電気回路的は、 測定系のインピーダンスは容量 成分(キャパシタンス)、 および直流的な意味での抵抗成分(レジスタンス)と の組み合わせによって等価的に表現される。 このように取り扱った場合でも、 得 られる交流特性値は、 分子論的な特性値と関連がないことを指摘しておく。 なお ここでは、 容量成分と抵抗成分との並列回路を用いて、 それぞれの特性値を算出 している。 この取り扱いは便宜的なものであり、 その意味では、 直列回路を仮定
しでもさしっかえない。
周波数応答分析法による解析
前項で述べたように、 測定系のインピーダンスは、 単に電気回路的な抵抗に過 ぎず、 二分子膜の物理化学的な性質、 現実の電極反応過程とは何ら関連しない。
この点を考慮し、 現象のより詳細な理解を目的に検討した。 このための測定法と してはいくつかの方法があるが、 ここでは周波数応答分析6)の手法を用いた。 こ
れは、 測定系に微小な交流(正弦波)を印加し、観測される応答波形から系のイ ンピーダンスを算出する方法である。
ほとんど全ての電気化学的な系は、 電極反応に由来する電気的な抵抗成分や容 量成分を持っている。 したがって、 系に正弦波交流を印加したとき、 理想的な条 件下では、振幅の低下と位相のずれを伴った正弦波応答が観測されることになる。
この応答波形は、印加した正弦波とその余弦波との組み合わせ に他ならないから、
観測された応答波形にこれらの基準波を相関させれば系のイ ンピーダンスを算出 できる。 また、 正弦波などの波動は、 それぞれの三角関数形と等価な指数関数形 (複素表示)に置き替えることができる、電気工学では、 後者の複素表示が主に 用いられ、 本研究でもこれに準じた。
測定は、 Solartron1250A型周波数応答分析器、同1286型ポテンシオスタットを 組み合わせて行った。 測定セルは、 対極に白金網製の筒状電極 (ウインクラー型,
直径30mm x 50 mm)、参照極に銀一塩化銀電極を用いた三極構成とした。 支持電 解質は塩化カリウム水溶液(0.1 mol dm-3)であり、 測定前に30分間窒素置換し て溶存酸素を除去した。 この条件下では、 修飾電極、電解質水溶液いずれも酸化 還元活性な化学種を含んでいないO このため、 電極電位は有意の一定値をとらな いが、 通常は、 何らかのかたちで(電極表面の不純物, 酸化皮膜など)ある値を 示すことが多い(自然電位)。 このため、観測された電位に電極電位を固定し、
これに正弦波交流(50 mVrm
)
を印加し、0.1 HzからのkHzにおける複素インピ ーダンスを測定した。 前項と同様、周波数特性の温度依存性についても検討した。湿度応答の測定
交流測定は 2.3.1 に準じて行った。 測定セルは密閉式のガラスセル(容量500 cm3)とし、セル内に電極をセットし、 純水または各種無機塩の飽和水溶液を共 存させて気相中の相対湿度を調節した10)。 純水を用いたときがほぼ湿度100 %に 相当し、 それ以外は、無機塩の種類を適宜変えて湿度を調節した。 なお、 測定セ ルを恒温水中に浸し、 セル内の混度を一定に保った(25 <C)。
2.3 結果と考察
2.3.1 修飾電極の交流特性とその温度依存性ーキャス卜膜修飾電極系
電気化学的な測定系は、 固体電極と電解質溶液 からなる不均一系である 。 この ような系は、 電極と溶 液との界面に形成される電気二重層由来の電気容量を持ち、
一方、 溶液内での電気伝導(イオン伝導)に付随するエネルギーの損失が電気抵 抗につ ながる。 電極反応の素過程 、 つまり反応活性分子が電極表面に拡散する過 程、 活性分子と電極とのあいだで の電子移動反応についても エネルギー の損失が 伴い、 それぞれ拡散抵抗、 電荷移動抵抗と呼ばれる。
化学の立場からは、 電気化学的な 測定系は電極と溶液、 および酸化還元活性な 物質と支持電解質イオンから形成される系であるが、 電気的には、 ここ に挙げた ような特性値が結びあった回路と見なせる11 )。 したが って、 このような系に一定 周波数の交番電場、 例えば正弦波交流を印加すれば、 交流の振幅低下と位相のず れが必ず伴う。 この応答を具体的に取り扱ううえで、 系を電気的に表現する回路 一等価回路が必要と なる。 もっとも簡単には、 測定系と等価な抵抗成分と容量成 分とをそれぞれ一つ ずつ、 直列または並列に組み合わせた回路が用いられる。 測 定系か らの応答を電気的に取り扱うためだけであれば、 系にあてはめる回路が、
化学の立場(分子論)から見た実情とどの程度一致しているかは問題とならない。
この点を明らかにするためには、 後述するように全く別の検討が必要である。
図2.1に、 測定系の特性値として容量成分に着目したときの、 交流特性の温度 依存性を示す。 この容量イ直は、 測定系に容量成 分と抵抗成分の並列回路をあては めて算出している。 図から明らかなように、 二分子膜修飾電極では、 ある温度を 境に容量値が急激に増加する挙動が認められる。 この変化は、 はじめの昇温過程 とその後の降温過程 の両方で再現性良く起こった。 測定系のインピーダンス、 ま たは並列回路におけ る等価抵抗に着目した場合には、 これら 特性値が急激に減少 するといった、 図2.1とは逆の挙動になる。 一方未修飾の白金電極は、 昇温過程 ではほぼ一定のキャパシタンス 値をとるのに対して、 降混時には単調に減少して
ゆく挙動を示した。 一般に、 国体電極表面の二重層容量は、 不純物の吸着や酸化 二重層容量を精度良く決定するのは困 このため、
皮膜の形成を敏感に反映する。
難である。 滴下水銀電短は唯一の例外であり、 滴下に伴う表面の更新が新鮮な状 態の維持につながっている12)。 白金電極のキャパシタンス値に見られた温度履歴
このような表面状態の変化に関連するものと考えられる。
は、
変化の前後の温度領域ではほ に示した等価容量の温度依存性をみると
図2.1
ぽ一定の容量値をとっており、 急激な容量値の変化が、 ある狭い領域で起きてい さまざまな相変化に特有の挙動である。 そこで、 二分 ることに気づく。 これは、
示差走査熱量分析法の結果では、
子膜の相転移現象との関連について検討した。
この値は、 修飾電極の容量値が変化する温度 の相転移温度は54 <Cであり、
(2 )
領域と良く一致している。 修飾電極の交流特性値の温度依存性は、 固定化した二 分子膜の相転移現象と密接に関連すると結論づけられる。
•
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12
10
8
6
4
2
出占
\
剛MW担昨0
20 30 40 50 60 70
温度,OC
白金電極およびキャスト膜修飾電極の等価容量の温度依存性 (く))白金電極(昇温過程), (φ)白金電極(降温過程), (0)キャスト膜修飾 電極(昇温,降温過程);電極,白金線( sh0.5x30 mm);支持電解質溶液,
0.1 M KCI;測定周波数,10Hz (50 mV).
図2.1