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アメリカにおける学校財政制度訴訟と財政制度改革

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榊召in‑;こ学‑ノくV‑≡;完孜ヂf‑T:研究科紀安Ik第15号 2005勺三3 fi

アメリカにおける学校財政制度訴訟と財政制度改革

‑ニュージャージー州の事例(1) ‑

75

白 石   裕

はじめに

生徒が通学する学校の経済的基盤を成す学校財政制度が,合衆国憲法や州憲法の定める平等保護条 項に違反するとして提訴される訴訟,すなわち,学校財政制度がアメリカ合衆国において裁判で争わ れるようになったのは1960年代の後半になってからである。その後,学校財政制度が州憲法の教育 条項にも違反するという訴えも加わって,今日ではほとんどの州で訴訟が起こされており,すでに結 審して,その後,訴訟が起こさjtていないところや,州によっては本論で取り上げるニュージヤ‑ジ ー州の事例のように,結審したはずの訴訟がまた提起され,継続して行われているところもあるoそ うした全米をおおう学校財政制度訴訟の動向について裁判所の主たる判断基準を基にして,平等保護 条項の審理が中心であった第1の波(1971年‑73年)から,平等保護条項と教育条項の審理が入り 混じった第2の波1973年‑89年)を経て,教育条項の審理が中心となっている現在の第3の波 (1989年以降)への移行ととらえる見方が州.般的になっている。

ところで,問題とされる学校財政制度を改善し,改革を図ることは,本来,立法府あるいは行政府 の権限であるにもかかわらず,訴訟を提起してまで改革を促さなければならないのはなぜか。 1970 年代当初のニュージャージー州のロビンソン訴訟を研究したレーン(Lehn,Richard)によれば,公 共政策の形成にあたって権力を握っている集団が司法的介入の脅威がなければ力のない集団とは交渉

しようとしないこと,かといって提訴しなければ現状を認めるほかはない等の理由をあげているlき。

学校財政制度訴訟の原告のほとんどがアフリカ糸アメリカ人,あるいはメキシコ糸アメリカ人などマ イノリティに属する人々であることを思えば,レーンの指摘するとおりであろう。いわば,人種と貧 困という2つの問題を併せ持った訴訟が学校財政制度訴訟である。

かくて,問題とさゴ1る学校財政制度の改革を求めて提訴されることになるが,原告勝訴の違憲判決, 敗訴の合憲判決は裁判所によってさまざまであり,また訴訟の効果もさまざまである。そうしたなか

で本論で取り上げるニュージャージー州の訴訟は裁判所が原告らの主張を認め,州議会や行政当局に 長期間にわたって,執掬に,学校財政制度改革を迫った事例である。その意味で裁判所の果たした役

割ならびに訴訟の効果は大きい事例といえよう。

ニュージャージー州における学校財政制度訴訟は,上で示した第1,第2の波に入るロビンソン訴 訟と,第2の波の後半以降のアポット訴訟の2つより成るが, 2つの訴訟を合わせると,中断の時期

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も含めて約25年の歳月をかけて,しかも同一の貧困な都市学区を舞台として争われた裁判であった。

そして後のアポット訴訟自体は第1判決から第6判決に至る約15年の歳月をかけて争われ,ようやく 2000年5月に結審をみた裁判であった。

裁判所の違憲判決,それに伴う新たな学校財政制度の制定,という繰り返しの過程を辿ったニュー ジャージー州の学校財政制度訴訟であった.それを時代順にいえば,一連のロビンソン判決(1973 年1976年)とそれに伴う「公立学校教育法」の制定(1975年),アポット第2判決(1990年)とそ れに対応した「質の高い教育法」の制定(1990年),アポット第3判決(1994年)とそれに伴う「総 合教育改善・財政法」の制定(1996年),アポット第4 ・第5判決(1997年・ 1998年)とそれに対応 するための「学校全体改革規則」の制定(1998年)という過程である。その方向性をいえば,より 実体的な教育内容の保障の歩みともいえよう。

本論では,以上のような経緯を辿った判決(とりわけ州最高裁判所の判決)と判決に従って行われ た学校財政制度の改革に焦点をあて,それらがどのようなものであったのかについて述べる。そして, まとめとして,ニュージャージー州の学校財政制度訴訟の特徴とその問題点について考察する。なお 本論を(1)と(2)に分け, (1)の今回はロビンソン判決に始まり,それに伴って制定された「公立 学校教育法」から「質の高い教育法」に違憲判決を下したアポット第3判決までのことについて述べ る。

l ロビンソン判決と公立学校教育法(PubIicSchool EducationActof1975)の制定 1ロビンソン判決とその経緯

始めに,アポット訴訟の前史となったロビンソン訴訟とその判決についてみておこう。

ロビンソン訴訟は,ニュージャージー州ジャージー市などのロビンソンら住民が,地方財産税を教育 費の主な財源としている州の公立初等中等学校財政制度を生徒1人あたり教育費の学区間格差を生

じ,また粗税負担の学区間格差をもたらしているがゆえに合衆国憲法修正14条とニュージャージー 州憲法1条1項の平等保護条項ならびに州憲法8条4節1項の教育条項に違反すると訴えたことから始 まる。そしてこの事案を上級審として審理したニュージャージー州最高裁判所は1973年4月3日にロ ビンソンらの訴えを認め,同州の学校財政制度を合衆国憲法や州憲法の平等保護条項ではなく,州憲 法の教育条項に違反するとの判決を下した2)。

このように,ニュージャージー州最高裁判所が,合衆国憲法や州憲法の平等保護条項ではなく,州 憲法の教育条項に基づいて教育費の学区間格差の問題を裁定したことは,合衆国最高裁判所によるロ

ドリゲス判決(1973年)3)によって当面,訴訟への道が閉ざされたと思われた学校財政制度訴訟に新 たな道を拓いたのであり,その意味で画期的な判決であった。その後の各州における学校財政制度訴 訟は,ロビンソン判決に倣うがごとく,州の裁判所を舞台として州憲法の教育条項を根拠として争わ れるようになった。

ロビンソン訴訟はその後,第7判決にまで継続される。その背景には,同州の都市学区の財政状況

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ァメリカにおける学校財政制度訴訟と財政制度改革‑ニュージャージー州の事例(D一 白石) 77

が悪化し,またそこで学ぶ生徒の学業達成度がきわめて低いということがある。そのために最高裁判 所は州議会に同州の学校財政制度の改革を強く迫ったのである。第7判決までのそれぞれの判決内容 を簡単に述べると,第1判決は当時の学校財政制度に違憲判決を下し4),第2判決は新しい学校財政 改革について期限を設定し5),第3判決は州議会がその期限までに改革案を示さなかったので当時の 制度の実施の停止を命じ6),第4判決は暫定的救済措置としていくつかの州補助金(一律最低基準補 助金と損失補助金など)の再配分を命じた7)。そして第5判決は1975年に議会が制定した公立学校教 育法(Public School Education Act of 1975)の合憲性を規定の上では認め,ただし一定の期限までに そのための財政措置を講じなければならないとし8),第6判決は,議会がその期限までに財政措置を 講じなかったためニュージャージー州の公立学校‑の財政支出を禁止し9),第7判決は,議会が州所 得税による財政措置を決定したため公立学校‑の財政支出を認める判決を下した10)○

わずか3年間の間に7つ最高裁判所の判決が下され,第7判決に至って学校財政制度が容認された が,そうした財政措置の制定に伴って改革されるはずの学校財政制度がなおも貧困な都市学区の問題 に応えるものとなっていないとして,再び控訴された。それがアポット訴訟である。

2 公立学校教育法の意義と州の財政責任

アポット訴訟の始まりは,公立学校教育法に定められた財政規定が不十分であるとの理由に拠るが, 公立学校教育法は,ロビンソン第5判決では文面上は合憲性が認められた法律である。そこでここで は同判決において合憲性の判断の基となった公立学校教育法の意義について述べておこう。

第1に,州最高裁判所が公立学校教育法を合意裁定したのは,同法が州憲法の教育条項により求め られている州の責任を明確にし,そのための具体的な方策を盛り込んだものとなっているからである。

そこに公立学校教育法の第1の意義が認められよう。すなわち,公立学校教育法では,教育条項の定 める無償の公立学校制度における「ゆきとどいて効率的な教育」 (thorough and efficient education)

とは, 「社会経済的な地位あるいは居住地に関わりなく,ニュージャージー州のすべての子どもが民 主社会において政治的,経済的,そして社会的に役割をはたすように準備させることである」との定 義を示し,次いでそのための具体的な方法や内容として以下の10項目を掲げた0 1・州と地方のレベ ルにおける教育目標の確立, 2.教育目標の確立にあたっての公共の関与の奨励, 3.合理的な水準の 基礎的なコミュニケーションスキルと計算スキルを獲得できるような授業, 4.生徒の個々の才能・

能力を発達させる広範なプログラムの実施, 5.すべての生徒,とりわけ教育上不利な立場に置かれ ている,あるいは特別な教育ニーズをもっている生徒のためのプログラムと支援サービス, 6・適切 な設備,衛生的で安全な物的施設,適切な教材と備品, 7.資格をもった教職員, 8・効率的な管理運 営, 9.適切な州の研究・開発プログラム10.州と地方のレベルにおける評価・監視(monitoring)

プログラムである11)。

このように,公立学校教育法は,憲法の教育条項の定める「ゆきとどいて効率的な教育」とはなに かについて定義をし,そのための公立初等中等学校教育の目標を具体的に示し,それゆえに「実体的

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な教育内容」 (substantive educational content)の保障を詣っていること,そしてまたその実施を州 の責任とすることを詣っており12)その点が裁判所に評価されたのである。

州の責任ということに関連して注目すべきは,上の第10番目の項目である。この項目は,公立学 校教育法の規定では州教育長が地方学区の管轄下にある各学校の教育を評価・監視し,それが適切で

ないと認めらjtる場合に,州教育長が学区に是正・救済措置を命ずることを定めている。この規定に より州が学区の教育に介入し,学校のあり方を決定するという州の強い関与が定められたことになり, 州の責任が明確に示されたといえよう。

公立学校教育法の第2の意義は,同法がロビンソン第5判決において「十分に財政措置がなされる ならば」13)という条件を付して合憲性が認められていることである。そして同判決は, 「学区が教育 費の負担を十分にできないのであれば,州がそれに代わって負担すべき」143と州の財政責任を強調し ている。そうした判決文によれば,公立学校教育法の実施については州が十分な財政措置をとらなけ れば同法に違反することになる。

また,そのことに関連して,同法では学区教育委員会に不適切な財政処理が見出された場合に,州 教育長は教育予算の再配分や増額などを求める介入措置も定めている。

公立学校教育法の制定に伴う具体的措置についていえば,同法により州補助金の算定基準が一部改 められ,懸案となっていた州の財政支出も増加した。ニュージャージー州においては教育費の学区負 担の割合が他の州の場合に比べて非常に高く,そのことが生徒‑‑^あたり教育費の学区間格差の原因 となっているとして訴訟が提起されたのであるが,公立学校教育法の実施によって,州均等化補助金 の算定基準(生徒1人あたり教育費)の割合が州の平均値からその1.3倍の数値に引き上げられた (その後, 1. 35倍に変更)。その結果,補助総額の増加はもとより公立学校教育法以前の州法「州学 校奨励均等補助法」 (State School Incentive Equalization Aid)のときよりも均等化補助金交付対象の 学区数も増加し,全体として州の教育費負担割合も以前の28% (1975年)から40%台‑と大幅に増 加することになった。また,それに関連して,学区間の教育費の均等化を図るために学区の教育予算 の増加率にも制限が設けられた15)。

かくて,公立学校教育法は学校財政の改革につながる法制定であったが,問題点も残されたCたと えば,州学校奨励均等補助法において問題とされた均等化補助金を交付されない学区(富裕な学区) への1'f最低基準補助金や前年度までの補助実績を考慮する損失補償の措置はそのまま継承されたし (ただし損失補償については年次を追って段階的に解消さゴ1ることになった),ロビンソン第1判決以 莱,原告が訴えていた都市の過重負担の問題についてもなんら言及されることがなかった。

こうした問題点についてニュージャージー州最高裁判所は,一律最低基準補助金については新法の 下では大幅に削減されることになったことを指摘し,都市の過重負担の問題についてそれは議会の権 限に属する問題であるとして,それ自体は違憲の疑いはないとの見解を示した王6)0

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ァメリカにおける学校財政制度訴訟と財政制度改革‑ニュージャージー州の事例(1)一泊石) 79

ll アポット訴訟・判決と学校財政制度改革

1アポット訴訟とアポット第月判決

公立学校教育法の実施から約5年後の1981年に,再び貧困な都心学区の財政問題が提訴されるこ とになった。原告はキヤムデン,ジャージーシティなどの都市学区で学ぶアポットら生徒たちである。

彼らは,州教育長のバークらを被告として,ニュージャージー州の教育財政制度は重大な教育費支出 格差を生じており,貧困な都市学区の財政資金と教育プログラムの不足は都市学区をして生徒の教育 ニーズを充たすことを不可能としており,それは州憲法の「ゆきとどいて効率的な教育」条項と平等 保護条項に違反すると地方裁判所に申し立てたのである175。

原告らの提出した調査によれば公立学校教育法の実施後,すべての学区の生徒1人あたり教育費は 増額したものの学区間の格差はむしろ拡っておりIS)それゆえロビンソン判決で違憲とされた学校 財政制度が未だに克服さゴ1ていないという。また,そうした原告らの都市学区には,都市特有の問題 (低所得層の家庭や英語を話せない子どもが集中している,失業率が高いなど)に加えて,教育上の 問題(生徒の低学力,貧弱な教育プログラム,有資格教職員の不足,施設・設備の劣悪など)を抱え ており,そうした問題を克服すべく一一・層の財政支出が必要とされているにもかかわらず,州補助金は その必要性に応えていないという19き。

こか吊二対して被告である州は,教育費の学区間格差は認めつつも,原告らの学区の教育上の問題は 学区の不適切な努力と誤った管理によるものであると反論し,原告らの学区に対する補助金配分の水 準とメカニズムは適切であり,学区を監視する州の制度は「ゆきとどいて効率的な教育」の規定を実 現できるほど十分なものであると主張した。そして公立学校教育法の財政措置に憲法上問題があると いうのであれば,法令上の措置が教育上の不平等を改善するに十分なものかどうかを審査せずには言

えないとして,原告は行政上の救済を尽くすべきだと述べた2010

第1審の地方裁判所(Chancel‑y Division, MercerCounty)は,原告らは行政救済を尽くしていない として原告らの訴えを却下した。そこで原告らは控訴したところ控訴裁判所は地方裁判所の判決を覆

した。そこで州が上訴したところ,川最高裁判所は1985年7月23日に判決を下し,本件は適切な行 政機関によって考慮されるべき事柄であるとして,控訴裁判所の判決を破棄して,本件を行政法審判 官(administrative law judge)による聴聞等の措置を前提に州教育長に移送するとの裁定を行った。

これがアポット第1判決である。

2 公立学校教育法の下での問題とアポット第2判決 1)実体的な教育内容の保障の問題

ァポット第1判決後,本件の差戻しによって行政法審判官が学校財政の実態と行政措置の関連につ いて審査をしたが,行政法審判官は, 8ケ射こわたる聴閃等による審査を経た後, 1988年に以下に示 すような問題を生み出す公立学校教育法とそれに基づく財政措置は違憲であるとの結論を出した。ニ

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ユージャージー州最高裁判所の判決は,原告らの再度の訴えに基づき,この行政法審判官の結論を認 める形で違憲判決を下している。

公立学校教育法の制定に伴い,ニュージャージー州の学校財政の焦点は,学区間の教育費の格差の 問題から実体的な教育内容の保障の問題にシフトされることになったといわれるが21)行政審判官 の審査も実体的な教育内容の保障の問題が中心となっている○そして審査は結論として,提供科目, 教職員,生徒1人あたり教育費など教育インプットにおいて依然として学区間格差が存在しており, それは学区の財産に関連していること,それゆえ原告の学区その他の都市学区は憲法の定める「ゆき とどいて効率的な教育」を行うまでに至っていないこと,また州全域にわたる教育機会の不平等は,

「ゆきとどいて効率的な教育」の実施を妨げていること,かくて,そうした組織的な問題を生み出す 公立学校教育法とそれに基づく財政措置は違憲であると裁定した22)。

州教育長は,こうした行政審判官の裁定を拒否し,以下に述べるような理由をあげて,公立学校教 育法の下における学校財政制度は合憲であると決定したため,貧困な都市学区の生徒たちが州教育委 員会の決定を訴えたのである。

実体的な教育内容を保障としていないという行政審判官の結論に対する州の反論は,次のようであ る。なるほど教育費の学区間格差はあるが,公立学校教育法,州教育委員会の規則,州教育長の活動, 州の教育プログラム(カリキュラム,科目,報告・評価等)は実体的な教育内容を与えるものとなっ ている。また学区が州の基準に従って教育を行っているかどうかその評価も次のような指標に従って, 1983‑84年度以来,実施している。すなわち, 1・学区の教育計画, 2.コミュニティとの関係, 3.

総合的ながノキェラムと教授, 4・生徒の出席状況, 5.施設, 6.スタッフ, 7.法令に定められたプ ログラム, 8・定められた基礎スキルについてのテスト, 9.平等な教育機会とアファーマテイブ・ア クション, 10.財政事項である。そして州は,学区が基準に従っていれば,その学区は「ゆきとどい て効率的な教育」を行っているとして承認するが(ほぼ98%の学区が承認されている),承認できな い学区があれば,学区の対応によって,レベルⅢ (学区に改善を求める)‑レベルⅢ (カウンティ教 育長による矯正とそれに伴う州教育長による学区予算再配分・増額の命令) ‑州教育長による全面的 な調査‑州による学区の直接運営という段階の矯正措置を設けていると述べる。事実,アポット第2 訴訟のこの時点で,州はジャージーシティを直接の管理下に置いている(教育委員会は,地方学区教 育委員会に代えて,州学区教育長を任命し,学区の運営を指揮させた,23)。

こうした州の主張に対して,行政法審判官は,公立学校教育法や州教育委員会あるいは教育長の措 置にもかかわらず,原告らの学区の生徒のテストの結果について他の学区の生徒の結果と比較もなく, そもそも学力評価の絶対的基準も設けていないなど州教育委員会や州教育長による管理には重大な欠 陥があると指摘した24)いわば,行政法審判官は,なるほど州は実体的な教育内容を保障すべきさ まざまな基準を設けているが,それらの基準が実際に充たされたかどうかを検討する評価方法や基準 がないことを問題としたのである。

ニュージャージー州最高裁判所の判決は,公立学校教育法の意義を評価しつつも,行政法審判官の

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ァメリカにおける学校財政制度訴訟と財政制度改革‑ニェ‑ジャージー州の事例(1)一泊石) 81

結論を敷宿して,以下のような2点から公立学校教育法の下で原告の学区の生徒が実体的な教育が保 障されていない問題点を指摘した。 1つは,が)キュラムや教育条件(生徒対教員,教員の経験など) の基準とその達成に関する評価基準との関連が不明なままであるという点である。そうした問題があ

るためか,州は各学区のが)キュラムが「ゆきとどいて効率的な教育」を達成するに適切なものかど うかの評価は実際には行っていない。こうした点は貧困な都市学区の場合にとくに問題となることか ら,判決は,公立学校教育法は,子どもが将来,労働市場において市民として競争者として準備させ るに必要な準備をさせるような「ゆきとどいて効率的な教育」を貧困な都市学区において与えるよう になっていないと判示した25)。

もう1つの点は,実態面からの問題であるo判決は,貧困な都市学区と裕福な郊外学区との比較を し,貧困学区における教育水準は悲劇的ともいえるほど不十分であると指摘する。判決では,それを 教育条件・教育プログラムの面と生徒の学力の面での両方にわたって比較している。そして教育条件 や教育プログラムの面では貧困な都市学区の劣悪な状況を指摘し,また,生徒の学力水準の面におい てニュージャージー州ハイスクール学力テストにおける裕福な学区と都市の貧困学区の生徒の学力差 (たとえば,裕福な学区の生徒の読み書き算の合格率鰐0%の得点朝は90%以上であるのに対して, 都市の貧困学区の生徒の合格率は30%から40%台にとどまっている)を示す26)

州は,こうした学力水準の問題について貧困な都市学区の生徒はまず基礎的スキルの集中的トレー ニングが必要であり,裕福な学区のが)キュラムから彼ら生徒が得るものはないと抗弁した。この抗 弁に対して,判決は,そうした考え方は公立学校教育法の規定に違反しているだけでなく,憲法の定

める「ゆきとどいて効率的な教育」の規定にも違反しているという。すなわち,公立学校教育法は

「ゆきとどいて効率的な教育とは,社会経済的な地位あるいは居住地に関わりなく,ニュージヤ‑ジ ー州のすべての子どもが民主社会において政治的,経済的,そして社会的に役割をはたすように準備 させることである」と定めており,そうしたことからすれば憲法の定める「ゆきとどいて効率的な教 育」が意味するのは, 「労働市場で競争するに必要なスキルを教える以上のことを意味するのであっ て,それは投票するにとどまらない市民としての役割をはたし,社会やコミュニティの活動に参加で き,音楽・美術・文学を鑑賞し,それらを友人と共有できる能力」27)である。したがって,貧困な都 市学区の生徒がミニマムな基礎的スキルの習得でよいというのは明らかにそうした意味を軽視してい

るし,また貧困な都市学区の子どもも他の子どもたちと同じくそうなれる能力を有するというのが判 決のいうところである。

そして貧困な都市のチビもたちのニーズは暴九貧困,絶望といったものに表されるコミュニティ のなかで起こっているものであり,教育の範囲を超えるニーズがあるというO

かくて,判決は,通常の教育は都市の貧困者の特別な問題に取り組むにはまったく不十分であり,質 困都市学区の生徒に対する憲法上の基準を成し遂げるには,裕福な郊外学区で行われている教育に一 定の要素を加えた教育が必要であること,換言すれば,貧困な都市学区の生徒は裕福な学区の生徒よ

りももっと多くの資源を必要とするという28)。

(8)

2)貧困な都市学区と財政問題

そこで問題となるのが財政措置の問題である。ロビンソン第5判決は「十分に財政措置がなされる ならば」という条件を付して公立学校教育法を合憲と認めている。この点については公立学校教育法 の制定に伴い,州の補助金算定基準を引き上げ,補助総額を増加させるとともに,学区間の教育費格 差を是正するために学区の教育予算の増加率にも制限が設けられる等の措置が定められた。

しかしながら,貧困な都市学区への財政措置は十分とは言い難く,州からの補助総額が全体として 増加したとはいえ,貧困な都市学区の財政資金の不十分さ,貧困学区と裕福な郊外学区との教育費支 出の差の拡大などが原告によって申し立てられた29)なおアポット訴訟においてキーワードともいう べき『貧困な都市学区』という概念が本訴訟の過程において州教育省によって定義され, 28学区が

それに相当するとされK.30)。そしてそれらの学区は,本訴訟では通称, 『アポット学区』とよばれる)。

こうした訴えに対して,州は,学区の資産と教育の質とは無関係である,あるいは効果的学校 (effective school)の例を出して必ずしも費用が学校の成果を決定しているものではないと主張する。

むしろ貧困な都市学区の教育問題は,無能九政策の間違い,運営の悪さといった学区の誤った管理 によるものだと反論した。とりわけ,州は学校教育の質と教育費との関係を強く否定L k,31)。

学校財政訴訟においても学校教育の質と教育費との関係については論争のあるところであり,未だ に結論の出ていない問題である。しかながら,判決は,ロビンソン第1判決を引用して,他の証拠が ない限り,教育費は教育の質の唯一の決定要因であると述べ,教育費と教育の質との相関関係を認め る。また,効果的学校の例についてはニェ‑ジャージ弓刊の貧困な都市学区でそれを実践すれば現在 の支出水準で「ゆきとどいて効率的な教育」が成し遂げられるという証拠がないという行政法審判官 の認定を支持する。そして判決は,資金は教育の質に差を生み出すという「通念」 (conventional wisdom)を支持すると述べた上で,にもかかわらずそのニーズが大きい貧困な都市学区の場合には 利用可能な資金はきわめて不十分であると判示する。

また,判決は,ロビンソン第5判決では裁定を下さなかった都市の過重負担および均等化補助金を 受け取らない裕福な学区に対するミニマム補助についても判断を下し,そのなかで,都市の過重負担 については教育資金の徴収を妨げているとは述べたが,都市の過重負担そのものが違憲であるとの裁 定はしなかった。しかしながら,ミニマム補助については貧困学区との教育費格差を広げる反均等化 作用をもつとして初めて違憲裁定を下した。

なお原告らは貧困な都市学区のみならず,その他の学区についても公立学校教育法の下における財 政措置では「ゆきとどいて効率的な教育」が実施されていないと訴えたが,判決は貧困な都市学区以 外の学区については証拠が不十分であるとして訴えを斥けた32)。

3)違憲判決と新しい学校財政方式制定命令

かくて,判決は, 1990年6月5日,公立学校教育法は都市の貧困学区の生徒に「ゆきとどいて効率 的な教育」を与えておらず,そうした学区に適用されるかぎりにおいて憲法違反であると判決を下し

(9)

ァメリカにおける学校財政制度訴訟と財政制度改革‑ニュージャージー州の事例(D一泊石) 83

た。そして次のような基準にかなう新しい,あるいは現行制度を改正をした財政制度を講ずるように 州議会に命じた33㌧

l 貧困な都市学区(28アポット学区)と最も裕福な学区の通常のjegular)教育プログラムの経 費を均等にすること,もし州が裕福な学区に教育費の支出増を認めるのであjtば,貧困学区の教 育費についてもそれに見合う支出増をすること。

2 貧困な都市学区の不利益を改善するために都市学区の特別な教育ニーズを充足するように追加資 金を与えること。

3 貧困な都市学区の財政支出が毎年確保され,それは地方学区の予算あるいは課税決定に左右され ないようにすること。現行の地方課税基盤を上げるだけでは憲法の要件を充たすことはできない。

また都市の過重負担を考慮すること。

4 裕福な学区に対するミニマム補助を廃止すること。

5 199卜92学年度から新しい財政方式を実施すること○新しい制度は段階的に移行させること。

この命令以降,州は再び学校財政制度の改革を迫られることになったが,上の命令でとりわけ注目 すべきなのは,貧困な都市学区と最も裕福な都市学区の生徒1人あたり教育費を均等にせよという第 1の命令である。教育費と教育の質の相関関係を認めた学校財政制度訴訟の判決のなかでも学区間の 生徒1人あたり教育費を均等にせよと命令した判決はなかっただけに,このアポット第2判決は異色 である。換言す狛ざ,アポット判決はこの時点では教育費の学区間格差を主要な問題点とした訴訟で あったのである。

3 「質の高い教育法」 (QualtityEducationActof1990)とアポット第3判決

ァポット第2判決で違憲判決が出されたため,裁判所の命令に従う形で新たな学校財政法が1990 年7月3日に制定さjtた。そゴ1が「質の高い教育法」 (QualityofEducationActof1990。以下, QEA という)である。 QEAは,しかしながら,制完後まもなく租税の増収等の措置に反対する市民団体 等からの反対により,約半年後の1991年3月に改正されることになった(以下,当初のQEAをQEA

I,改正さjtたQEAをQEAHという¥3V

QEAの主な内容は以下のとおりである。第1は,地方学区への州教育補助方式を課税基盤方式 (guaranteed tax base)から標準教育費方式(foundation program)に変えたことであるoこの補助方 式の変更については,学区の課税基盤の強化よりも,生徒1人あたり教育費補助を直接的に各学区に 一様に保障する制度によって,憲法の定める「ゆきとどいて効率的な教育」に応えようとしたのであ

・y、

また,貧困な都市学区の教育費を裕福な学区の教育費と均等にせよという最高鋸噺の命令に従い, QEAは「特別ニーズ学区」を定義し,それらの学区に対しては標準教育費について生徒1人あたり 0.05の加重積算(5%)を行うことにしたoこの5%増額措置により特別ニーズ学区の生徒1人あた

り教育費は他の通常の学区よりも高く設定された○なお「特別ニーズ学区」とはアポット第1判決の

(10)

なかで示された「貧困な都市学区」のことであるが, QEAにより,以下のいずれかの要件を充たす 学区として法定化された。すなわち, (1)州教育省によって「大都市学区」と分類された学区のなか で社会経済水準カテゴリーが最下位層及び準最下位層に位置づけられた学区,もしくは(2)生徒の 15%が要保護子ども家庭補助金(Aid to Familieswith DependentChildren)の受給者であり,そうし た生徒が少なくとも1, 000名在籍している学区であるoこうした特別ニーズ学区は29学区(後に30 学区)とされた。

また,この標準教育費方式においては学区間の教育費支出の均等化を図るという観点から学区の教 育費予算増額に対して制限が設けられた。この制限は標準教育費のみの場合と標準教育費を含めた教 育費総額の場合とがあり,標準教育費のみの場合には,各学区が毎年増額できる標準教育費相当額は 州の住民所得収入の3年間の平均増加率相応分だけに限定される。また教育費総額については学区に よって扱いが異なり,標準教育費を超えて教育費を支出している学区(通常は,富裕学区)の場合に は住民所得収入の3年間の平均増加率相応分だけ増額でき,標準教育費どおりの教育費支出をしてい る学区は住民所得収入の平均増加率相応の2倍までの増加が,また標準教育費を下回る学区の場合に は学区の前年度の教育費の30%増の支出をしてもよいというものである。こうした措置によって, 少なくとも制度上は,貧困な学区の教育費の底上げを可能としたのである。

QEAの第2の内容は,州補助金の算定基準である学区の資産測定を改めたことである。これは, 学区の資産を測定するにあたって土地・家屋などの財産に対する資産だけではなく,住民の個人所得 を測定の基準に含めることにしたのである。これはニュージャージー州の個人所得が,急速に上昇し つつある財産価値に追いつかなくなり,低い所得の家庭がその所有する財産価値が急騰したため学区 の財政力が不当に高く評価されるような事態が生じるようになったからである。

第3の内容は,補償教育プログラムである特別なニーズをもつ生徒に対する特定補助金プログラム categorical aid)を経済的社会的に危機的状況にある生徒たち(at risk students。以下,危機に立つ 生徒という)への補助プログラムへと変えたことである○これは,従来の補償教育を廃止し,連邦の 無償ランチ・プログラムやミルク・プログラムの受給者である子どもを対象にしたプログラムに代え たのである。いわば,家庭の所得を反映した援助への代えたのである。もっともこの事項は, QEA

Ⅲの改正に伴い・補助額が減額される一方で,補償教育補助に損失補償条項(生徒数の減などにより 州補助金の受取額が少なくなる学区について,当該学区の受ける損失を段階的に減らしていくこと) が設けられた。

QEAの第4は,裕福な学区へのミニマム補助を廃止したことである。これは,その補助制度が裕 福な学区と貧困学区の財政力格差を温存させるものになっているとして廃止されることになったもの である。州教育補助制度のなかで長年の懸案であったミニマム補助の廃止がようやく実現されたので ある。

第5は,教員年金の支払いと社会保険のコストを地方学区の負担とした。この2件については地方 学区の責任とすべきものと考えられたからである○もっともこれについては教員組合からの反対が強

(11)

ァメリカにおける学校財政制度訴訟と財政制度改革‑ニュージャージー州の事例(D‑ (白石) 85

く, QEAHにおいて実施が2年延期されることになったo 第6は,州の教育補助総額を増やした。

QEAは,州の学校財政制度の公平を増し,標準教育費補助プログラムを適切な教育プログラムに するための財政援助の基盤を確立することを目的にして制定されたのである。しかしながら, QEA は当初のQEAIから,州の教育補助の滅額を図ったQEAHに改正されたことも関連して,再び提訴 されることになった。すなわち, 1991年6月12日,原告らは最高裁判所が管轄をとるようにと,そ

してQEAが違憲であることを宣言するように申し立てたのである。最高裁判所はQEAの実施に伴い 改善された点も多いことに鑑み,本件を事実調査のため大法宮部(ChanceryDivision)に差し戻し た。

1993年8月31日,大法宮部は, QEAは特別ニーズ学区(30学区)の通常の教育費を合理的な期限 において黄も裕福な学区の教育費と実質的に同一にしていない,また危機に立つ子どもへのプログラ ムは,アポット第2判決で確認された不利益なチビもたちの特別なニーズを処理するには不十分であ るなどとの裁定を下した35)。

QEAの制定により,特別ニ‑ズ学区と最も裕福な学区の教育費使徒1人あたり)の比率はQEA 以前の70あるいは75%から約84%にまで改善された○それでもなおQEAが教育費の学区間格差を より均等化することになぜ失敗していると判断されるのか。その理由として以下のことが指摘されて いる36)。

第1は,特別ニーズ学区への不十分な資金の配分である。 QEAは,本来,州の援助資金の大部分 を貧困な都市学区に配分することで設けられたものであるが, QEAで増加した8億ドルのうちその 35%である2億8700万ドルが特別ニーズ学区に配分されたにとどまり,残りの65%の援助資金は貧

困な農村学区と中流所得の学区に配分された。

第2は,教育費均等のために設けらゴ1た上限と州の標準教育費補助との関連性を欠いていることで ぁる。 30の特別ニーズ学区は最も裕福な学区との教育費支出の差をなくすために教育費支出の上限 がそれにふさわしい額にまで支出することが認めらjtているo Lかながら,実際には当時の州財政の 逼迫により補助金総額自体が削減されたこともあって,州からの特別ニーズ学区に対する補助金は十 分でなく,その上限に到達する教育費の支出は,特別ニーズ学区の税収入をあげるしかないoところ がすでに高い税率で課税しているそれらの学区にはそれ以上の税収入をあげることは容易なことでは

ない。このように均等化のための高い上限設定と標準教育費設定との間の保障メカニズムが設けられ ていないのである。

第3に,特別ニーズ学区の積算加重が不十分なことである。すなわち,特別こ‑ズ学区に対する標 準教育費の設定において,特別措置として通常の学校の生徒1人あたり経費に0.05 (5%;の加重措

置がとられたが,格差是正のためにはそれだけの加重では不十分であったのである。

第4は,州補助金の総額に上限が設けられたことである。 QEAIの制定時には州からの学区に対 する補助総額は10億1500ドルであったが, QEAHでは8億ドルに減額された。それに関連して標準

(12)

教育費の生徒1人あたりの教育費基準も減額されたのである。

ニェージャージー州最高鋸酢ま,大法宮部の裁定を受けて,通常の教育における生徒1人あたり 教育費について特別ニーズ学区と最も裕福な学区との間に実質的な均等が確保されていないこと,そ

して実質的な均等を成し遂げられない理由として,それに見合う資金交付の保障のないことだとして, 裁判所自身の判断として以下のような問題点をあげた37)。

第1は, QEAには基本的な欠陥があるoすなわち,上の第2の間数窯でも示したように, QEAは 学区の教育費上限設定と標準教育費との間の連関を欠いていることである。州の専門家の証言によれ ば特別ニーズ学区と裕福な学区の均等化はQEAの下で数学的に可能である。しかしながら,特別ニ ーズ学区の積算加重のためには行政府や立法府による決定が必要であり,それは両者の裁量行為の事 項になっていて,適切な財政支出を保障するものとはなっていない。貧困な都市学区が上限設定しよ うとすれば,自己財源に大幅に頼らざるをえない。かくて,そうしたQEAの制度は,アポット第2 判決の命令(『QEAは,特別ニーズの学区の支出水準は地方学区の財政力に依存することが許されな

い,そしてまた州によって保障され,命令されなければならない』)に従っていない。

第2に, QEAは特別ニーズ学区が教育改善計画を立てる際に,州教育長をして各学区がその計画 を実施するに適切な資源をもつかどうかを確認することを命令しているが,地方裁判所での記録には そうした監視がなされたという記録も,また特別ニーズ学区への追加財政措置と個々の学区との関連 性を示す州の証拠も出されていない。

第3に,州は,アポット第2判決が求めた貧困な都市学区の特別ニーズに適切に対応していない。

QEAは危機に立つ生徒の援助プログラムを算定するにあたっての方式を定めているが,当時者たち が認めているように,危機に立つ生徒への加重援助の額を決定するにあたって,それらの生徒のため のサービスの提供に関する追加コストについて研究をしていないo教育省と州教育長が特別ニーズ学 区の子どもたちのための特別な補充プログラムとサービスを見出し,実施しないかぎり,成功は期待 できない。

そうした問題点を指摘して,ニュージャージー最高最高裁判所は, 1994年7月12日に, QEAは特 別ニーズ学区への適用に関しては違憲との裁定を下し, 1997‑98年度までに特別ニーズ学区と最も 裕福な学区の生徒1人あたり教育費を実質的に均等なものにすることなどを命令した38)かくて,再 び州議会に学校財政制度の改革が求められることになったのである。

1) Richard Lehn, The QuestforJustice, 1978, p. 3.

2) Robinson v. Cahill, 62 N.J. 473, 303 A.2d 273, cer. denied414 U.S. 976 (1973).

3) San Antonio Indepent School District v. Rodriguez, 411 U.S.I, rehearing denied 959 (1973).

4) Robinson'. Cahill, op.cit (Robinson I).

5) Robinson v. Cahill, 63 NJ. 196, 306A.2d 65 (1973), (Robinson H).

6) Robinson v. Cahill, 67 N.J・ 35, 335A.2d 6 (1975). (Robinson IE).

(13)

アメリカにおける学校財政制度訴訟と財政制度改革‑ニュージャージー州の事例(1)一泊石) 87

7) Robinson v. Cahill, 69 N.J. 133, 351 A.2d 713, cer.denied, 423 U.S.913 (1975). (Robinson Iv).

8) Robinson v. Cahill, 69 NJ. ∠149, 355A.2d 129 (1976). (Robinson V).

9) Robinson v. Cahill, 70 NJ. 155, 358 A.2d 457 (1976). (Robinson VI).

10) Robinson v. Cahill, 70 N.J. 464, 360A.2d 400 (1976). (Robinson 1).

ll) Abbott v. Burke, 495A.2d 376 (N.J. 1985), pp.383‑384.

12) Margaret Goertz and Malik Edwards, …In Search of Excellence for All: The Courts and New Jersey School

Finance Reform",Journal of Education Finance Vol. 25, No. 1 (Summer, 1999), p. 9・

13) Robinson V, op.cit.,p. 129.

1∠1) Ibid,p. 137.

15) Ibid.

Margaret Goertz and Malik Edwards, op. cit, p. 6 16) RobinsonV, op.cit,,p. 138.

17) Margaret Goertz and Malik Edwards, op. cit・, p. 10

18)原告らは,ニュージャーv‑州の学区を冨祐度別にグループ日もっとも裕福な学区)からグル‑プ7 (もっ とも貧困な学区)に分類し,グル‑プlとグループ7の生徒1人あたり教育費坪均値)の差を比較した記 録を証拠として提出した。それによると両者の差は, 1975‑76年度では309ドルであったが, 1979‑80年

度では6O9ドルとなっている Abbottv. Burke,∠主95A.2d376 (NJ. 1985) (Abbott I ), p.385 (Footnote2).

19) Abbott v. Burke, ibid., pp.383‑385.

20) Ibid.,p.383,p.386.

21) Abbottv. Burke, 575A.2d359 (NJ. 1990) (Abbott D), p.371.

22) Ibid.

23) Ibid., p.390 (Footnoot 23), pp.391‑392.

2∠1) Ibid., p.392.

」51 llJill.

26) Ibid,p. 394‑loo.

27) Ibid.,p.398.

28) Ibid., p.′103.

29)原告らは,注21)の証拠の後に,次の証拠として州の学区を冨神変別にseptilel もっとも鋸刃な学区)か らseptile7沌っとも裕福な学齢 までに分類し,生徒トリ、あたり教育裾こおいて1984‑85年度において septile lの学区では932‑2, 634ドルの範囲であるのに対して, septile7の学区では4, 055‑10, 103ドル となっている記録を提出しているCなお州教育省による分頗(判決文のなかにおける引用については注33参 照)でも2つの学区の差が拡大していることが示されているIbid.,p.388.

30)当時,州知串であったKeanは, 198∠雄,貧困な都制也域における教育問題の改裾二取り組むため,都市学 区(56学区)を富裕度に応じた分類をするように州教育省に命じた。その結私つくらjtたのがDFA (もっ

とも貧困な学齢 からDFG もっとも裕福な学区)の学区分類である。本訴訟の原吉らの学区(29学区) は,そのなかでDFAとDFBに分類されているIbid.,pp.386‑388.

31) Ibid.,p.364,p.375,p.406.

二Ll、1 ll)kl.. I)p. 101‑日丁.

33) Ibid., p. 359,pp.408‑412.

34) QEAの内容については,以下の文献による。

Abbott by Abbott v. Burke, 643 A.2d 575 (N.J. 1994)

Robert K.Goertz and Margaret E.Goertz, ̀The Quality Education Act of 1990: New Jersey Responds to Abbott v.

Burke",Journal of Education Finance 16 (Summer, 1990), pp. 104‑114.

Margaret E.Goertz, "School Finance Reform in New Jersey: The Saga Continues.", Journal of Education Finance

(14)

18 (Spring, 1993), pp. 346‑365.

竺沙知章「アメリカ合衆国ニュージャージー州における学校財政制度改革」, 『兵庫教育大学研究紀要第23巻 第1分冊』所収, 2003年3月, 11頁‑18頁。

35) AbbottbyAbbottv. Burke, 693 A.2d 417 (NJ. 1997), p. 423一生24.

36) Margaret Goertz, op.cit, pp. 356‑362.

竺沙知嚢,前掲論文, 13頁。

37) Abbott by Abbott v. Burke, 643 A.2d 575 (NJ. 1994), pp. 577‑579.

38) Ibid.,p. 572.

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