様式8の2の1 別紙1
論 文 の 内 容 の 要 旨
氏 名 加藤 太朗
イネもみ枯細菌病菌Burkholderia glumaeは、育苗期の苗に苗腐敗を、出穂期のもみ に も み 枯 症 状 を 引 き 起 こ す 。 本 菌 に よ る 病 害 が 世 界 的 に 増 え つ つ あ り 、 ま た 高 温 を 好 む 菌 で あ る こ と か ら 近 年 注 目 さ れ て い る 地 球 温 暖 化 や 気 候 変 動 の 影 響 に よ る 発 生 の 拡 大 が 危 惧 さ れ て い る 。 本 菌 は 自 然 突 然 変 異 を 起 こ し や す い こ と が 知 ら れ て お り 、 継 代 培 養 中 に 病 原 性 の 低 下 を 伴 っ た コ ロ ニ ー が 出 現 す る こ と が 報 告 さ れ て い る が 、 コ ロ ニ ー 変 異 菌 の 病 原 性 低 下 機 構 に つ い て は 明 ら か に さ れ て い な い 。 自 然 突 然 変 異 の 起 こ し や す さ は 本 菌 の 大 き な 特 徴 で あ り 、 自 然 突 然 変 異 株 の 解 析 は 本 菌 の 病 原 性 発 現 機 構 や 環 境 適 応 機 構 に 関 す る 新 た な 知 見 の 取 得 に 有 用 で あ る と 思 わ れ る 。 ま た 、 本 菌 の 病 原 性発現はN-acyl-L-homoserin lactone (AHL)を介した細菌間情報伝達機構であるquorum sensing system (QSS)によって密度依存的に制御されていることが報告されている。
本論文は、B. glumaeの病原性発現機構の解明に資する知見を得ることを目的として、
種々の自然突然変異株の様々な特性評価を行っている。さらに、QSS関連形質に関する 解析結果についても述べている。
本論文は全5章で構成され、各章の概要は以下の通りである。
第1章は、緒論であり、研究の背景と研究目的を提示している。
第2章は、B. glumaeの継代培養中に出現したコロニー変異菌の特性評価について述 べ て い る 。 ジ ャ ガ イ モ 腐 敗 能 、 苗 お よ び も み に 対 す る 病 原 性 、 増 殖 量 、 phytotoxin生 産能、運動性、シュウ酸生産能、AHL生産能、LB培地のpH変化、プラスミドプロファイ ル、QSS関連遺伝子であるtofI、tofR、qsmR 配列など、それぞれについて、野生株と3 種 類 の コ ロ ニ ー 変 異 株 と の 比 較 を 行 っ て い る 。 コ ロ ニ ー 変 異 株 の phytotoxin生 産 能 、 シ ュ ウ 酸 生 産 能 、 運 動 性 お よ び 病 原 性 が 野 生 株 よ り も 低 下 し て い る こ と を 明 ら か と し 、 こ れ ら 、 自 然 突 然 変 異 株 の 解 析 知 見 は 本 菌 の 環 境 適 応 機 構 に 関 す る 新 た な 知 見 を 得 る ために有用であることを明らかにしている。
第 3 章 は 、B. glumaeの LB培 地 に お け る pH低 下 現 象 の 解 析 に つ い て 述 べ て い る 。B.
glumaeの野生株をLB培地で培養した場合、pHの低下が引き起こされ、一方、3種類のコ ロ ニ ー 変 異 菌 は い ず れ も pHが 上 昇 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。 こ れ ら の 知 見 か ら 、 アミノ酸が主要炭素源として存在する環境において野生株のB. glumaeは酸性環境を作 り 出 す こ と が 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に す る と と も に 、 生 産 す る シ ュ ウ 酸 の 関 与 に つ いて明らかにしている。
第4章は、日本各地で分離されたB. glumaeのQS変異株の解析について述べている。こ れまで、韓国分離株においては病原性やphytotoxin生産能とQSSとの関連の存在が、一
方 、 ア メ リ カ 分 離 株 に つ い て は そ の 関 連 性 が 無 い こ と が 報 告 さ れ て い る 。 日 本 各 地 で 分 離 さ れ た 14株 のB. glumaeの QS変 異 株 の 特 性 を 調 査 す る た め に 、 AHL合 成 遺 伝 子tofI 破 壊 株 を 作 製 し て い る 。 QS変 異 株 の phytotoxin生 産 能 を 調 べ た 結 果 、 14菌 株 中 12菌 株
( groupI) に は 変 化 が な く 、 一 方 、 2菌 株 ( groupII) は phytotoxin生 産 能 が 消 失 す る ことを明らかにしている。これらの結果から、QSS依存性は日本国内で分離された菌株 間でも異なること、QSSによってphytotoxin生産能が失われる菌株は日本分離株ではマ イ ナ ー で あ る こ と を 明 ら か に し 、 groupIの 菌 株 に は QSSと 同 じ 標 的 遺 伝 子 を 制 御 す る additional regulatorが存在することが示唆されたとしている。
第5章は、総括であり、論文内容全体をまとめ、さらに、B. glumaeのゲノム解読に よる病原性解析の展望についても述べている。