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大阪湾堆積物への重金属元素の蓄積

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(1)

01.  19  (1982)  近畿大学原子力研究所年報

論 女

大阪湾堆積物への重金属元素の蓄積

合 田 四 郎 , 山 崎 秀 夫

Heavy M e t a l  P o l l u t i o n  i n  Osaka Bay S e d i m e n t .  

S h i r o  Gohda and Hideo Yamazaki 

(Received September, 22, 1982) 

For the determination of multi elements activation analysis, X‑ray fluorometry and atomic  absorption  spectrophotometry  were examined

, 

and 28  elements  in  sediment  sample  could  be  determined. 

The vertical distributions of these elements  have been determined in  Osaka Bay sediment  core that has been dated using 210Pb method. The higher contents of zinc, copper and chromium  in upper sediment layer may be caused by the discharge through  human activities, and havey  metal pollution in  Osaka Bay apparently increased from 1930. 

In order to  estimate  the chemical  states  of havey metals  in  sediment, partitioning  of 18  elements  into  three  fractions  CHOAc‑NHzOH.HCl soluble, HNOs‑H202 soluble  and silicate  fraction)  of core sediment has  been determined with a selective  chemical  leaching  technique.  The contents  of these  elements  of the silicate  fraction are almost constant with depth.  Most  of copper and zinc in  the  polluted surface layer are  distributed in  both hydroxide and sulfide  fractions.  This suggests that these hydroxides transformed to  sulfides under anoxic conditions  within the sediment.  A large amount of chromium is  fixed  in hydroxide  fraction.  Manganese  is  apparently  enriched  in  hydroxide  fraction  of  surface  layer  due  to  the  postdepositional  migration  of  manganese within  the  sediment. 

KEYWORDS 

Activation Analysis, X‑Ray Fluorometry, Atomic Absorption Spectrophotometry, Heavy Metals,  Marine Sediment, Selective Chemical Leaching Technique 

1 .

響を与える。したがって,沿岸域における水質変化の 全てではないにしても,部分的な記録を保害している 堆積物を採取し,各種成分を分析する乙とにより,諸 河口域では, pHや塩分濃度など物理化学的環境が 成分の過去から現在への蓄積の歴史的変遷と現状を把 変化するため,河川 lとより搬入される懸濁物質K付随 握する乙とができる。

する多くの微量元素が溶脱したり,逆に溶寄微量元素 本研究では 210Pb法で堆積年代1,2)を測定した堆積 が新たに河口域で生成した懸濁物(金属水和酸化物や 物中の多元素を分析するため,放射化分析法,原子吸 炭酸塩を含む〉に吸着,共沈して海底に堆積される。 光法,けい光X線分析法を検討した。また,乙れらの 沿岸水域は人聞の諸活動の影響を受けやすく,環境 分析法を併用して元素の蓄積と移動,堆積物中での元 の時間的変化は外洋とは比較にならない速きで進行 素の存在状態を解明するための基礎検討をお乙なっ し,水質の変化は底質IC:,さらには生態系に大きな影 た。

m m

(2)

社製, YHP 5422B型波高分析器に ORTEC社製,

HPE型 Ge半導体検出器 (60cι)を連結して使用 した。

けい光X線分析には理学電機社製エネルギ一分散型 けい光X線分析装置を,原子吸光分析には日立製作所 製518型原子吸光分光光度計を使用した。

2.2分析法

堆積物中の主要元素および微量元素について多く情 報を得るために,放射化分析法,けい光X線分析法,

原子吸光法および吸光光度法を検討し,応用した。そ れぞれの分析操作法について述べる。

2.2.1  放射化分析法 (1)  短寿命核種の分析

堆積物試料約30mgを正確にポリチレン容器l乙封入 し,京都大学原子炉 (KUR)の圧気輸送管(熱中性 2.1.1試 料

本研究には大阪湾泉南沖 (34o24'N, 135012'E)で 採取した柱状堆積物(直径20cm,長さ2m)を使用 した。採取試料の最上部1 mについては冷凍して固結 後,その他の部分についてはそのまま押し出し,鉛直 方向に 5cm厚さに切断し,プラスチック容器に収納 して, ‑10'Cで凍結保在した。保存試料の一部を自然 解凍し, 105'Cで約20時間乾燥した。乾燥試料はメノ

ウ乳鉢で粉砕して粒度を80メッシュ以下に調製したの ち,四分法を5回繰返し,成分を均質化して分析試料

とした。

2 .

1.

2

装 置

T線スペクトJレの測定にはヒューレットパッカード

a ‑a

・ ・ ・ ・ 目 崎

HH HH

H汁.

iB EE EE HH HH HH HH H川 る

ω

ω

( ω { M N M 的句︒

{ ) H g d

ω ω

3

2

500  ]000  r‑ray energy  (ke 

V  ) 

lrradiation  5 hrs. 

Cooling time:  15",,20 days 

Gamma ray spectra of each fraction leached from Osaka Bay sediment.  1500 

Fig.l 

(3)

01. 

1 9  

(1

9 8 2 )  

近畿大学原子力研究所年報 子東:

2 . 3 4 x  1 01   njcm2 3 .  s e c )

1‑2

分間照射し, 元素の高純度酸化物あるいは硝酸塩を溶解して混合標 数分間冷却したのち ,

r

線スペクトロメトリーによ 準溶液を調製して,岩石標準試料 JG‑lとともに使用

り,ナトリウム,マグネシウム,アルミニウム,パナ した。

ツウム,マンガンを非破壊で分析した。標準試料とし 解析に利用した核データーを

T a b l e1 

~?:示した。

て地球化学用岩石標準試料, ]G‑l (花筒閃緑岩)を

試料と同時に照射し,それぞれの生成放射性核種の放

2 . 2 . 2  

けい光 X線分析

射能強度を試料のそれと比較定量した。 マトリック効果を無視できるような条件下では試料 (2) 畏寿命核種の分析 を非破壊で分析できるので,エネルギ一分散型けい光 堆積物試料

30‑50mg

を石英管に溶封し,

KUR

の X線分析装置を用いてカリウム,ルピジウム,カルシ 水圧輸送管(熱中性子東:

8 . 1 5 x l 01 3   njcm2 .  s e c )

で ウム,ストロンチウム,チタンなど堆積物中の主要元 5時間照射し,約4日間冷却した。放射能測定時のジ 素の分析をおこなった。 2.1.1で調製した堆積物試料 オメトリーを一定に保つため,測定試料は溶液として をさらに

1 0 0 ‑ 2 0 0

メッシュ程度に粉砕した後,堆積物 使用した。測定試料の調製はつぎのようにおこなっ 約

5g

を圧力

1 5

トンで直径

20mm

のコイン状に加圧 成形し, ]G‑1試料を標準試料としてけい光X線スペ 話料中の成分元素含量の鉛直分布を推定するとき クトルを測定し,標準試料の各ピークの計数値と比較 は,試料をポリエチレン遠沈管に移し,硫酸ー硝酸一 定量した。

フッ化水素酸混合溶液で試料を溶解 ,25ml K定容し,

その一部を放射能測定用試験管にとり ,

r

線スペクト

2 . 2 . 3  

原子吸光分析,眼光度分析

ロメトリーをお乙なった。

2 .

1.

1

で調製した試料

0 . 5 g

を白金ノレツボにとり,フ 試料中の成分の脊在形態を推定する場合には

2 . 3

~乙 ッ化水素酸を加えてケイ酸塩を加熱分解し,硫酸水素 示した分別溶解法に準じて照射試料を化学処理し,そ カリウムを加えて溶融する。溶融塩を

2N

硫酸で溶解 れぞれの溶解フラクションK r線スペクトロメトリー して50mlK定容し,成分元素含量の分析試料とした。

を適用した。(各フラクションのr線スペクトルのー アルミニウム,マグネシウム,マンガンは分析試料 例を

F i g .1  I

乙示した。〉標準試料には,それぞれの を適当に希釈し,標準添加法による原子吸光法で定量

T a b l e .  1 N u c l e a r  d a t a  f o r  e l e m e n t s  d e t e r m i n e d  i n   s e d i m e n t .  

│ 山 川 H a l ( f d  l )   i f e   ( k E e V r  )  N u c l e a r  r e a c t i o n  

Na  0 . 6 2 5   1 3 6 8 . 6   2 8 N a  ( n

, 

r )  2 4 N a  

dze

ω E 

Mg  9 . 5  (m)  1 0 1 4 . 1   2 6 M g ( n

, 

r )   2 7 M g   Al  2 . 3  (m)  1 7 7 8 . 9   2 7 A l  ( n

, 

r )   2 8 A l   V  3 . 8   (m)  1 4 3 4 . 4   S l V   ( n

, 

r )   S 2 V  

3 Mn  2 . 5 8 ( h )   1 8 1

1.

0  UMn(n

, 

r )   s 6 M n   C r   2 7 . 8   3 2 0 . 0   S O C r  ( n

, 

r )  

5l

Cr  Fe  4 5 . 6   1 0 9 8 . 6   5 8 F e  ( n

, 

r )   5 9 F e   Co  5 . 2 6 (  Y)  1 3 3 2 . 4   5 9 C O  ( n

, 

r )   6 0 C O   Rb  1 8 . 6 6   1 0 7 6 . 6   8 5 R b  ( n

, 

r )   8 6 R b  

'u z

eeh  

C s   2 . 0 5 ( Y )   7 9 5 . 8   1 3 3 C S  ( n

, 

r ) 1 3 4 C s   S c   8 3 . 9   8 8 9 . 4   4 5 S

( n

, 

r ) S c   La 

1.

6 8   4 8 6 . 8   1 3 9 L a  ( n

, 

r ) 1 4 0 L a   a 

Ce  3 2 . 5   1 4 5 . 4   ωCe ( n

, 

r ) 1 4 1 C e   Sm 

1.

9 5   1 0 3 . 4   1 5 2 Sm( n

, 

r ) 1 5 3 Sm 

~

Eu  1 2 . 7  (Y)  3 4 4 . 2   1 5 1 E u  ( n

, 

r ) 1 5 2 E u   Tb  7 2 . 1   2 9 8 . 6   1 5 9 T b  ( n

, 

r ) 1

Tb Yb  4 . 2 1   2 8 2 . 5   1 7 4 Y b ( n

, 

r ) 1 7 5 Y b   Lu  6 . 7 4   2 0 9 . 6   1 7 6 L u  ( n

, 

r ) 1 7 7 L u  

‑ 3 1

(4)

した。 本研究では, Chesterら4)および Presleyら5)の万 銅および亜鉛はアンモニウムピロリジンジチオカJ 法を改良し, Fig. 2 ~r.示した操作法にしたがって堆

パミン酸 (APDC)塩としてメチルイソプチルケトン 積物を三つのフラクションに分別しに。

に抽出する標準添加法iとより原子吸光法で定量した。 堆積物試料0.5gを共栓付遠沈管にとり, 25%酢酸 鉄は分析試料を希釈後,鉄(][)I乙還元して,オルト ‑0.5M塩酸ヒドロキシルアミン混合溶液 30mlを加 フェナントロリン法で吸光度定量した。 え,超音波照射により30'Cで 1時間浸漬する。この操 クロムは鉄その他の妨害元素を除去したのち,ジフ 作で堆積物中の主して炭酸塩と鉄やマンガンなどの水 ヱニカルパジド法8)で吸光度定量した。 和酸化物が溶解する (HOAc‑NH20H.HCl可溶性フ 堆積物中の乙れら元素の分析精度については,多く ラクションと呼ぶ)。さらに,乙の残査にO.OlN硝酸 の研究機関でおこなわれた NBS堆積物のクロスチェ ‑30%過酸化水素水混合溶液を加え,超音波処理する ックで精度よく定量できる乙とを確認した。まに,元 こと Kより,硫化物や有機態成分を溶解する (HNOa

素の存在状態の推定には分別溶解試料K本法を適用し H202可溶性フラクションと呼ぶ)。乙のような処理で

2.3  堆積物の分別溶解法

溶解しない不溶性残澄は粘土鉱物などのケイ酸に由来 する成分(ケイ酸塩フラクション)である。

沿岸域の堆積物の化学組成,鉱物組成は複雑である が,堆積物中の微量元素は粘土鉱物などのケイ酸塩,

3 . 結 果 と 考 察

鉄やマンガンの水和酸化物,炭酸塩,硫化物などの自 3.1  堆積物の放射化分析

生鉱物および腐植物質などの有機物などに関与,保持 近年,高分解能半導体検出器の出現により,複雑な

される。 r線スペクトルの解析が容易となり,環境試料などの

微量元素の乙れら成分への分配,すなわち,微量元 多元素を非破壊で定量する機器的放射化分析が広く利 素の堆積物中での寄在形態を知ることは,沿岸域にお 用されるようになった。しかもデーター処理のコンピ ける微量元素の挙動を理解する上で重要である。その ューター化により迅速,簡便化されるようになった。

ためには,堆積物を構成する個々の鉱物種や有機物相 しかし,試料のマトリックス,照射条件,測定条件を を化学的に分別溶解し,微量元素の分配を調べる乙と 充分吟味,設定して解析しなければ分析核種によって が必要である。この様な目的のため分別溶解法は多く は大きな誤差の原因となる。

の研究者Kよって提案されている←"。 そこで各種元素の分析精度を検討した。

Sediment Samtle(O.5 g) 

25% CHaCOOH‑0.5M NH20H

HClmixed  solvent 30 ml 

ultrasonic irradiation  (300C, 1 hr)  centrifugation (2500 rpm, 20 min) 

Solution 

(HOAc‑NH20H

HClsoluble fraction) 

Solution 

Residue 

… 

N問叫叩O

α3

2 f2ρ22α25 m0 1 m

ultrasonic irradiation  (300C, 1 hr)  centrifugation  (2500 rpm, 20 min) 

Residue  (HNOa‑H20soluble 

fraction] 

(Silicate fraction) 

Fig. 2 Flow diagram for the chemical leaching techniqe of sediment. 

(5)

0 1.19 (1982) 

短寿命核種の分析には堆積物試料と比較的組成が類 似している]G‑1を標準試料として用い, 1分間中性 子照射した場合の定量可能元素とその分析精度を検討 した。その結果,ナトリウム,マグネシウム,アルミ ニウム,パナジウムおよびマンガンの5元素が顕著に 検出されたので,乙れら元素についての繰返し実験の 結果を Table2 IC.示した。

]G‑1については照射終了時の計数値で,大阪湾堆 積物試料については,それぞれの元素の含有率で示し た。半減期の短いマグネシウム,アルミニウム,パナ ジウムでは試料間での変動が大きく,それが分析値の 変動に現れた。個別K照射した試料間では分析値の変 動係数が大きいが,同時に照射した試料開では変動係 数が小さくなる。しかし乙れら元素についても変動係 数を10%程度見込めば実試料の分析は十分可能であ

近畿大学原子力研究所年報 り,他の方法で求めた値ともよく一致した。照射時聞 をこれより短かくすると,特ζl半減期の短い元素で誤 差が大きくなり,定量が困難となる。

比較的半減期の長い核種は 5時間照射して 4日間冷 却したのち,目的K応じて2.2.1の方法により試料を 化学処理し,適当に冷却時間をおいて 2ヶ月間に数回 放射能測定をおこなった。

]G‑1は地球化学用岩石標準試料として多元素分析 用標準試料のーっとして利用するために地質調査所で 調製されたものであるが,元素によっては信頼性に欠 けるものも多い。そこで]G‑1試料中の微量元素を分 析するとともに本放射化分析法の信頼度を確かめた。

合成標準試料を用いて]G‑1の微量元素の定量をお こない,その公称f直川および他の研究者11)の定量値と して Table3 IC.示した。

Table. 2 Reproducibility of elements determined in  ]G‑1 and Osaka Bay sediment by the  1 minute irradiation. 

Er  ]G‑1  (n=5)  Osaka Bay sediment  (n=3)  Element  (keV)  peak area 

C.V. 

(cp100sj30mg sample)  (%)  content  (%)  (%)  Na  1368  2.33X 108士2.50x101 1.1  2.21土0.02 0.9  1731  2.68x102:1: 9.78x10 3.7  2.06土0.17 8.3  Mg  1014  2.48 X 10:1:  5.28 X 10 21.3  0.83土0.05 6.0  Al  1779  4.57x 105土7.98x104 17.5  9.15土0.62 6.8  V  1434  1.31 X 103土 1.74x 10 13.3  87.1土2.2(ppm)  2.5  Mn  847  4.91x108土2.32X10 4.7  0.080土0.001 1.3 

1810  5.62x 102土 1.75x 10 3.1  0.083土0.001 1.2  Table. 3 Accuracy and reproducibility of 13 elements determined in ]G‑1. 

Concentration (ppm)  Element 

S. V.   H amaI四聖u?echi ‑s  ll1 vy  '  e  i 

l k aw a sh i m d value  This work 

Fe  1.53土0.05(%) 1.52  1.47  1.59土0.05 1.5土0.1 Cr  41.2土5.4 53  56  69.7 :1:20 

Co  4.11士0.02 6.4  3.9  3.05士0.3 3.8土0.1 Rb  183  士16 181  192  土15 180  :1:10  Cs  10.7士0.5 10  6.3  10.3土0.5 9.0 :1: 0.8  Sc  6.45土0.21 6.5  6.4  6.54:1: 0.80  5.9 :1: 0.4  La  22.4土1.3 22  21.5  22.1 :1: 0.7  24  :1: 1  Ce  53.0土2.6 43  40  55  土6 56  士2 Sm  4.55土0.05 4.6  5.4  5.6士0.4 4.2 :1:  0.3  Eu  0.81土0.09 0.69  0.9  0.46土0.03 0.72士0.05 Tb  2.5土0.18 0.63  0.68土0.10 Yb  1.88士0.08 1.5  2.0  3.08士0.4 2.1士0.2 Lu  0.45士0.03 0.23  0.44  0.64士0.08 0.44士0.06

S.  V.:  standard value 10

(6)

から,この柱状堆積物は地質学的に同じ鉱物組成から 構成されていると推定できる。

一方,微量成分についての鉛直分布を Fig.4K示 した。

微量成分では元素によってその鉛直分布パターンが 異なる。マンガン,クロム,銅および亜鉛について は,深さ 25cm附近から表層に向って著しい濃度の増 加が認められる。

海洋l己負荷された成分が,そのまま堆積層K記録さ れているとすると,表層での濃度の増加は人間生活に 伴う人為的負荷量の増加を反映してものであり, 25 ...  30cmより深い堆積層で見られる成分濃度の一定値は 自然負荷量を示すものと考えることができる。しか も

2 1 0 P b

法による堆積年代から,乙れら元素の人為 的負荷は1930年頃からはじまり,その後現在に向って 著しく増加していることがわかる。

しかし, コバルト, ヒ素, アンチモン, パナジウ ム,スカンジウムおよび希土類元素では深さによる顕 著な濃度変化が見られない。

底質への元素の残存性は各元素のもつ化学的性質,

特に酸化還元電位と溶解度i乙関係づけられる。水圏に おける微量元素の除掃担体として重要な鉄やマンガン の存在状態と挙動は微量元素の固定や溶出に大きく関 与する。溶存酸素の豊富な酸化環境では,マンガンは 水和二酸化マンガンを,鉄は水酸化鉄(1)を形成して 堆積物l乙固定される。その際,コバルトやヒ素なども 本実験結果をみると,クロム,ユーロピウムの変動

係数はそれぞれ13%,11%と大きいが,他元素の変動 係数は10%以内で再現性は良好であった。また,クロ ム,コバルト,セリウム,ユーロピウム,テルピウム およびルテチウムでは報告者によって分析値にかなり の差が見られる。特にクロム,ユーロピウム,ルテチ ウムでその差が大きい。このような研究者間で、の分析 値の差は測定データーの解析方法によって生ずるもの と考えられる。全般的にみて, クロム, ユーロピウ ム,テルピウムを除い

τ

は,本法はかなり信頼性の高 いものと考えられた。

3 . 2  

大阪湾堆積物中の元素の鉛直分布と存在状態 沿岸海域における堆積速度は外洋に比べて非常に大 きい。天然放射性核種である

2 1 0 P b

(半減期22.2年) の鉛直分布から堆積速度を推定する方法は,沿岸域の ように堆積速度の速い場合K適用すると有効で,過去 100年程度の堆積年代を知る乙とができる。

本研究に用いた堆積物について

2 1 0 P b

法で推定した 堆積速度は 0.33cm/年であり,表層から深さ 1 mの 聞に過去300年の歴史が刻まれていることになる。し たがって,各種元素含量の鉛直分布と堆積年代を対比 することにより,その場における元素の蓄積の歴史的 推移を解析した。

堆積物の主要元素の鉛直分布を Fig.3I乙示した。

いずれの元素含量も深さに関係なく一定であること

ε  三25 ..c: 

0. 

50 

Rb(ppm)  Cs(ppm)  Mg(%)  Ca(%)  Sr(ppm)  100  10  100 

25  (E υ) ZE UQ  

Vertical distribution of major constituents, alkali metals and alkaline  earth metals in Osaka Bay sediment core. 

50 

Fig.3 

(7)

近畿大学原子力研究所年報 V(ppm)  Mn(%) Cr(ppm) Co(ppm) Cu(ppm) Zn(ppm) As(ppm) Sb(ppm) 

100  0 0.1  0 50 100  0 10 20  0 30 60  0 300600  0 10 20  0 1 2  O F

一 一 ← 一 一 一 一 ‑ ‑ ‑ r ‑ 一 一 ‑ ‑ " T 一 一 ‑ ‑ . ‑ ‑ ‑ ー . . . . . ‑ ‑ ‑ r ‑ ‑ r ‑ 十 → = r = ヰ

Z

( 一 一 一 一 一 一 一 一

E  1 1 r‑1  1  .J  1 ,J  1 ~〆.-J 1 ,.J 

11 .J 

..c:  11  O. 25 

r' 

I  r  I  I  I 

~

I I 

Q)  11  1 1 

11 

  .,

1 ¥  ¥  1 ' 

50 I

01.  19 (1982) 

Sc(ppm) La(ppm) Ce(ppm)  Sm(ppm) Eu(ppm)Tb(ppm) Yb(ppm) Lu(ppm) 

10  0  20  0  50  0  5  0  1  0  2 0  0  0 . 8 

o  r ; =

一‑‑‑.‑‑r ‑ ー 十 ‑.r......‑r‑ー‑‑‑‑r‑‑rr‑r‑一一←‑F=FE

( 一 一 一 一 一 一 一 一

υ 1 1  E  11  J r 1 1  J 1  1 1  J 1  l 1  [1  L  1 1 

,  , 

缶25

r l 1 1  

~

1  r 1 

~

1  rl  r 1 r 

D 11 

  .,

1 i r 1

ω 11  J  .-J〆~ .' 

11  11  1 1  11  50

Fig. 4:  Vertical distribution of trace elements in  Osaka Bay sediment core. 

分別溶解法を適用した。各分別フラクションへの元素 パターンを Fig.5 tr.示した。

図から明らかなように,ケイ酸塩フラクションの成 分濃度は深さに関係なく一定値を示している。逆に,

マンガン,クロム,銅,亜鉛は最初の二段階の溶解操 作でかなりの部分が溶出し,溶出量は表層に向って著 しく高い。このことから,最初の二段階の分別操作で 溶出した部分が人為的負荷成分あるいは初期続成過程 で堆積物に固定された成分と考えられる。

ルピジウム,セシウムなどのアルカリ金属元素は,

その大部分が粘土鉱物などのケイ酸塩に由来するもの である。鉄,アルミニウムおよびマグネシウムの溶出 吸着共沈により固定される。しかし,硫化水素が存在

する還元環境では,鉄,マンガンともに還元されてマ ンガン(1),鉄 (1)となり,マンガン (1)は溶出さ れ,鉄(1)は硫化鉄を生成して銅や亜鉛とともに固定 される。このような還元環境ではコバルトやヒ素は再 び溶解する。スカンジウムや希土類元素はこのような 環境の影響を受けない。

このように堆積層での元素の固定と再溶解,元素の 寄在形態l乙関する知見は,沿岸域における元素の挙動 を知る上で極めて重要である。

ここでは,微量元素が堆積物構成成分にどのように 分配,固定されているかを知るために,

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率は小さいが,溶出量としては比較的多く,堆積物1 を調査し,その結果と鉛‑210法による堆積年代から大 g当り鉄で 10mg,マグネシウムで3mgIr.達する。 阪湾の重金属汚染の歴史的変化を推定した。さらに鉱 溶出したマグシウムは炭酸塩として固定されたもので 物組成の化学的分別溶解法を適用して,堆積層内にお あり,鉄については水和酸化物や硫化物態あるいは寓 ける元素の帯在形態,挙動に関する重要な基礎的知見 植物質などに関与する成分が複雑に共寄している乙と を得ることができた。

が推定される。

マンガンの可溶性部分,特に HOAc‑NH20H.HCl 可溶性成分が表層で高濃度を示すのは,マンガンの水 和酸化物の溶解一再沈殿の結果,水和酸化物として表 層で固定されたものと考えられる。しかし大阪湾のよ

うな還元環境にある堆積層では,その酸化還元ポテン シャルからマンガン(町)の存在の可能性は小さく,む しろマンガン(][)として炭酸塩に固定されているもの と推定される。

一方,微量重金属元素では,最初の二段階の溶解操 作で,それぞれの元素含量の30'"'‑'80%が溶出される。

しかし,その溶出パターンは元素によってかなり異な る。

銅と亜鉛では堆積物中での存在形態が異なり,亜鉛 の大部分は水和酸化物ー炭酸塩相に分配され,硫化物 ー有機物相に少ない。銅は逆に,むしろ硫化物一有機 物相で高し水和酸化物ー炭酸塩相で低い。

コバルトは先にも触れたように,還元性堆積物中で は動き易い元素であるため,深さによる濃度変化は小 さいが,可溶性部分の大部分は水和酸化物相に分配さ れている。

河川から流入した鉄,亜鉛,銅,クロム,コバルト の大部分は沿岸域で水和酸化物として堆積し,亜鉛や 銅の多くは堆積層内で硫化物として固定される。その ような過程でコバルトの大部分は溶出する。クロムは 水和酸化物として固定される。スカンジウムや希土類 元素は環境の酸化還元反応を受けないので,水和酸化 物として堆積,固定される。

このような沿岸域における微量元素の存在状態,挙 動を明らかにする乙とは地球化学,環境化学の立場か ら極めて重要であり,さらに詳細な検討を推進中であ る。

4 . ま と め

沿岸堆積物中の多元素を同時定量するための放射化 分析法の基礎的条件を検討し,試料を化学分離する乙 となく18元素を精度よく定量する乙とができた。放射 化分析法とけい光X線分析および原子吸光法などを併 用して,大阪湾柱状堆積物中の多元素の鉛直分布を布

謝 辞

本研究に際し,試料を提供して頂いた神戸大学理学 部安川克己教授に厚く感謝します。けい光X線測定装 置を利用させて頂いた奈良教育大学三辻利一教授,放 射能測定装置の使用に種々御援助頂いた本学の堀部治 助教授,水本良彦講師,日下部俊男助手に感謝しま す。本研究の一部は京都大学原子炉実験所の原子炉を 利用したものであり,関係各位にお礼申し上げます。

終わりに,本研究は文部省科学研究費並びに近畿大 学研究助成費の援助によったものであり,ここに謝意 を表します。

(本研究の一部は日本地球化学会(1980)において 発表したものである)

文 献

1)松本英二,横田節哉,地球化学, 11, 51‑57  (1977) 

2)松本英二,横田節哉,日本海洋学会誌, 34, 108‑ 115 (1978) 

3) T. Shigematsu, S.  Gohda, H. Yamazaki and  Y. Nishikawa, Bull. Inst.  Chem. Res., Kyoto 

Univ., 55, 429‑(1977) 

4) R. Chester and M. 

J .  

Hughes, Chem.  Geol.,  2, 249‑262 (1967) 

5) B. 

J .  

Presley, A. Nissenbaum and 1.  R. Ka‑

plan, Geochim.  Cosmochim.  Acta 36, 1073‑ 1090 (1972) 

6) N. Takematsu, ]. Oceanogr. Soc.  ]apan 34,  242‑249 (1978) 

7) Y. Kitano and R. Fujiyoshi, Geochem. ]. 14,  113‑122 (1980) 

8) Y. Kitano and R. Fujiyoshi, ibid, 14, 289‑301  (1980) 

9) Y. Kitano, M, Sakata and E.  Matsumoto, ].  Oceanogr. Soc. ]a

ρ

an 37, 259‑266 (1981)  10)安藤厚,ぷんせき, No. 8, 38‑47, (1978)  11)河島達郎,第43回分析化学討論会講演要旨集,

p .95‑96 (1982) 

Fig.  4 :   V e r t i c a l  d i s t r i b u t i o n  o f  t r a c e  elements i n   Osaka Bay sediment c o r e

参照

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