生物理工学部での学生相談の紹介
1.はじめに
生物理工学部は、近畿大学Ⅱ番目の学部として1993年に創設された、農学・工学・理学・
医学の4分野を融合させたオリジナルな研究分野をつくり出している学部である。学生は、
学部生、大学院生あわせて約2000名が在籍。キャンパスは、深い緑の樹々に囲まれた和歌 山県の山の上に建っている。筆者は、校庭でミヤマクワガタを捕まえている学生と出会った ことがあり、また、駐輪場までの道でイノシシを見かけたこともある。そのくらい自然が豊 かなキャンパスである。一方で、そのような立地でアクセスがあまり良くないためか、学生 の約半数が下宿生活だと聞いている。
開室日数は、 2008年度は週4日、
2009年度以降は週5日である。開室 時間は、基本的に 10時から 16時だが、
相談がたてこみ延長している日も少 なくなし、。
相談は予約が優先である。しかし、
予約なしの来談でも空いている時間 帯であれば随時受付、面接を行なって いる。また、保健管理室で対応の難し い学生がいる場合などには、こちらか 近畿大学生物理工学部学生相談室
(KANBE, shusaku) (TSUJIKAWA, suemD
Ⅱ.学生相談室の概略
相談室は平日の週5日開室しており、非常勤の臨床心理士2名が相談にあたっている。じ つは、7年目となる筆者の一人(神戸)が勤務する以前の数年間にも週1回勤務してぃた方 があった。しかし、全く何のデータも残されていなかったので、今回は2008年度から2013 年度までのデータをもとに学生相談室の活動を紹介させていただくことになる。
作美
崇末
戸川
神辻
ら出向いてもいく。指導教員の研究室や就職情報室に出向くことも多く、要請があれば、
議やその他の話し合いにも参加している。
Ⅲ.学生相談室の活動 1.相談業務
相談業務は、3つに分類している。学生本人との面接が「面接」、教職員・保護者と学生 の対応を相談する「コンサルテーション」と、学生本人と電話でおこなう「電話相談」である。
面接は、基本的には50分だが、インテークなどでは1時問以上とることも多く、また次の 授業が始まるまでの20分間で相談、という場合もある。コンサルテーションも、じっくり 相談することもあれば、多忙な教員から連絡を頂いて学生の状態や対応を10分以内で伝え るときもあり、時問的には様々である。電話相談には、予約受付の連絡などは含めていない。
主として、ひきこもりゃうつ状態で相談室に来れない場合に行なっている相談形態である。
2.広報活動・講座など
広報活動としては、学生相談室のたよりを毎月発行、しおりの設置、新入生のオリエンテー ションで相談室を紹介、健康診断時に利用案内のり一フレットを全員に配布、などしている。
全学生向けの公開講座(心理テストやストレスについて)を過去数回行なったが、あまり に人の集まりが少なく、また、相談業務が年々多忙になってもいることから、現在はやって いない。その他の活動としては、2010年に学生の現状を把握するためのアンケートを教員 に依頼して、学生の心理的傾向や問題を調査した。調査結果は、問題を共有し、今後の対応 にいかせるように考え、まとめた文書を学内の教職員に配布している。
Ⅳ.相談業務の状況
昨年度の2013年度では、在籍者に対する利用率は5.4%(約19人に 1人)で、男子学生 が4.8%、女子学生が69%。年間の相談回数はⅡ36回、延ベ1197人が来談し、 1日平均で は5.46件と、いずれもこの6年間で最多の数字であった。
次ページでは、 2008年度から2013年度までのデータを示しつつ、これまでの相談業務の 状況についてみていきたい。
1.相談回数(=延ベ件数)
相談回数(表1)は、面接、コンサルテーション、電話相談、合計、いずれもが年々増加 している。週5日開室となった2009年度と2013年度を比較しても相当な増加であり、学生 相談室がとてもよく機能している状況が分かる。ちなみに、 2010年度でコンサルテーショ
ンが大幅に増えたのは、本人が来談しない場合でも教員や保護者と相談を重ねたり、学生の
会
れる。
相談業務
コンサルテーション 面接
電話相談
2008年度
合計
205
2.相談件数
新規/継続相談の件数(表2)でも、年度を追うごとに継続相談と合計が増えており、学 生相談が根づいていった経過が読み取れる。このことは、来談経路(表3)で最も多いのが 友人の紹介であることにも表れているだろう。また、保健管理室や教員の紹介も多く、教職 員とよく連携しながら、学生の対応をしていることが示されている。
学年(表4)は年度によって様々だが、 4年生が比較的に多いといえる。4年生は研究や 就職活動をする時期だが、研究室内での人間関係や、就職活動をきっかけに調子を崩すケー スが毎年みられる。ちなみに、表4の2012年度から「卒業生」が登場するが、これは継続 相談していた学生が卒業後、来校した折に相談室に寄って近況を話すなどのフォロー的な相 談である。件数としては多くみえるかも知れないが、相談回数としては平均1回程度である。
相談室としては、在学生の相談を優先して行なっていることをお断りしておきたい。
2009年度
郭 46
521
306
2010年度
62 70
490
653
20Ⅱ年度
171
表1.相談回数
30
535
691
2012年度
236 25
643
796
2013年度
273 80
741
996
301
新規相談
舛
継続相談
1136
2008年度
合計
37
2009年度
38
54
2010年度
12
表2.新規/継続相談の件数
66
68
20Ⅱ年度
20 89
65
2012年度
31 96
63
2013年度
34 97
46 57 103
保健管理室 教員 事務
2008年度
就職情報室 掲示・配布物 オリエンテーション
Ⅱ
2009年度
Ⅱ 3
友人
6
その他
2010年度
8
不明
5
2
6
合計
20Ⅱ年度
Ⅱ
0
14
2
7
7
17
2012年度
18
0
27
12
10
38
2
3
Ⅱ
1年生
19
2013年度
5
3
H
2年生
18
16
66
2008年度
3年生
2
3
18
表3.来談経路
8
2
4年生
2
17
26
大学院生
14
17
88
2009年度
2
4
7
Ⅱ
卒業生
5
7
31
39
不明
14
96
2010年度
9
5
13
合計
Ⅱ
0
4
3.相談内容
相談内容は以下の5領域と、それぞれに下位項目を設けて分類している。
①心理相談(性格/対人関係/異性問題/家庭/ひきこもり/精神衛生/その他)
②修学相談(学業・履修/転部・転学科/留年・休学・退学/課外活動/その他)
4
28
19
97
20Ⅱ年度
10
4
19
0
4
22
38
12
103
2012年度
24
18
0
5
21
66
26
2013年度
38
H
0
表4.学年
7
19
88
13
27
23
0
6
18
96
5
35
0
4
97
10 0 103
④生活・健康相談(健康・身体一般/経済・アルバイト/事件・事故/その他)
⑤その他(居場所/友人の付き添い/その他)
相談内容(表5)では、心理相談が最多である。心理相談の下位項目(表6)では、性格 が最も多く、次には対人関係や精神衛生が多い。一方で、相談回数からみると、2013年度 では、性格、精神衛生、ひきこもりの順に多かった。そこで、以下にそれぞれの相談の実際 について簡略に記述しておこうと思う。
心理相談 修学相談 進路相談
2008年度
生活・健康相談
24
その他
2009年度
8
合計
3
44
2010年度
3
17 4
53
認
20Ⅱ年度
12
性格 対人関係
23
54
66
2012年度
異性問題
2008年度
9
表5.相談内容
10
家庭
63
ひきこもり
認
5
2013年度
12
2009年度
8
精神衛生
5
Ⅱ
7
3
80
その他
96
8
12
2010年度
2
9
△,十
7
7
8
2
97
9
7
3
20Ⅱ年度
10
2
3
2
24
103
17
5
2012年度
3
H
21
3
表6.心理相談の下位項目
44
31
8
2013年度
3
10
21
5
53
39
12
16
6
6
54
H
2 7
63
10
80
精神衛生は、精神科医療を並行して必要とするケースである。最も多いのは、やはりうつ で、パニック障害も多くみられる。対人的には過敏、あるいは回避的になったりするので、
例えば研究室に行きづらくなる場合も多くあり、担当教員とのコンサルテーションも必要で ある。重いケースでは面接期間も長く、なかには3 4年間通っている学生もいる。一方、
軽いケースでは数回で症状が消失し、通院の必要がなくなる場合もあるが、それ以降も相談 が継続する場合には分類を性格に変更することが多い。
性格には、症状があっても医療にかかっていない場合、あるいは、症状はなくても深い心 理的問題を抱えている場合も含まれている。その他に、学生本人の意識としては「とくに悩 み事はないけど何となく話をしに来た」というようなケースもあって様々である。しかし
「とくに悩み事はない」と始めに言ったとしても、来談するからには何らかの心理的問題を 抱えているものである。このような場合でも、自覚の度合いをみながら話し合い、本人なり のぺースで成長していけるように援助している。
対人関係は、研究室における対人関係が問題となっている場合が多いようである。なかに は、教員とのコンサルテーションによって現実的な環境調整をしてもらい、問題が改善する こともある。そうなると、相談回数としては 2・3 回で終了することも少なくない。また、
心理的に言っても、周囲の人との関係が主訴の場合には、自分自身の心理的な問題として捉 えられることが少なく、相談として深まりにくい傾向があると思われる。
ひきこもりは、こころに起こる葛藤を抱えることができないため、それを引き起こす現実 的状況を回避し、引いてしまうケースである。程度は様々だが、抑うつ状態にあることが多 い。それまでは指示されたことをこなし、話しかけてくれる友人に合わせることもできた が、主体的に動かないといけない局面(就職活動など)で顕き、消極的に続けていた学習や 交友もできなくなってしまう。対応としては、本人の主体性が育ってくるように援助してい
くが、保護者や教員、時には友人とも相談し、現実的に働きかけていく場合もある。
V.おわりに
生物理工学部の学生相談の活動について、過去6年間のデータをもとに紹介してきた。こ の数年間を振り返ってみると、まるで樹がそうなるように、生物理工学部に学生相談が根づ き、育ってきたというような感慨を覚えた。毎日の相談業務にまぎれて、なかなか振り返る ことがなかったが、今回このような機会を頂けたことに感謝したい。
生物理工学部のキャンパスは大きくはない。だからこそ、本学の二ードを細やかに汲みとっ た援助活動が可能だろうと思っている。今後も、ーつひとつの相談を大切にして、さらに質 の高い援助ができるよう地道にがんばっていきたい。
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