− −17 工学部図書館のご紹介(松冨)
工学部図書館のご紹介
工学部メディアセンター長松 冨 達 夫
1 . はじめに 工学部メディアセンターは、広島キャンパ スの研究・教育棟区域のほぼ中央に位置し、 キャンパス内の移動の際には、学生も教職員 も必ずと言って良いほどその傍を通るという 絶好の場所に配置されている。研究棟とは配 色も異なり、キャンパスに来ると必ず目に入 る現代的なデザインでその計画・設計に携 わった多くの教職員の思いの籠った建物であ る。1 階は情報教育センターで、PC 教室、メ ディア教室、PC オープン利用室、ラウンジ、 事務室、研究室等が入る。2階、3階の全フロ アを図書館が占める。 今回近畿大学中央図書館報「香散見草」に 工学部図書館の紹介をさせて頂くことになっ たが、図書館としては近畿大学中央図書館と のシステム統合を図ることで基本機能の充実 を進めてきており、特別なものではないと感 じている。ただ、工学部のキャンパス移転の 過程を経て、今の工学部図書館が存在するこ とを思うと感慨深いものがある。 本稿では、工学部の歴史と図書館の変遷な らびに現状をお知らせすることにより、今の 広島キャンパスの様子の一部でも紹介するこ とが出来れば幸いである。 2 . 工学部図書館の歴史 工学部は、昭和 34(1959)年に呉市に工業 化学科、機械工学科の 2 学科で設置した。そ の後昭和 40(1965)年までに経営工学科と建 築学科を設置し 32年間 4学科の体制で運営し てきた。 キャンパスの敷地問題と学科増設の計画か ら、平成 3(1991)年に現在の東広島キャンパ ス(現広島キャンパス)を開設、工業化学科、 建築学科の 2学科を移転した。その後、電子情 報工学科、機械システム工学科(現ロボティ クス学科)の 2 学科を新設、大学院の修士課 程、博士課程を平成 8 年(1996)までに設置 し、現在の学部 6 学科と大学院博士課程まで の体制となった。平成 13(2001)年 8 月には、 呉キャンパスの 2 学科を東広島キャンパスへ 全面移転を完了した。 今年、平成 28(2016)年で工学部は創設 57 年目を迎えた。現在の工学部学生数は 2,077人、 大学院生 73人、合計で 2,150人である。 また、昨年末での卒業者数は、24 ,052 人を 輩出している。 工学部図書館は、学部創設の昭和 34年に当 時の本館の一室に設けられた「図書室」とし て発足した。その後昭和 38年に工学部で最初 の鉄筋コンクリート建造物となる 4 号館の竣 工により、3階部分に「図書館」と呼べる部屋 が出来た。その後、昭和 54(1979)年には工 学部創設 20周年事業として、新棟 8号館の竣 工により、その 1・2階を「新図書館」として 移転した。 平成 3 年の東広島キャンパス開設にあたっ ては、当時全面移転の計画が呉キャンパスに 2 学科が存続することになり、東広島キャン パスに移転となった 2 学科に関係する図書の みが教室棟(C 館)の 1・4 階部分に「東広島 キャンパス図書室」として運営することとな る。 平成 13(2001)年 8月に呉キャンパスは閉鎖、 全面移転となったが、呉の図書館資料は当時 受け皿がなく、数年、民間倉庫へ預ける運営 をした。− −18 香散見草:近畿大学中央図書館報 No.49, 2016 − −18 平成 17(2005)年 10月、念願の東広島キャ ンパスの図書館が入る「メディアセンター」が 竣工され現在の体制になるのである。 3 . 現在の工学部図書館 現在の工学部図書館は、平成 17(2005)年 10 月に竣工したメディアセンターの 2階と 3 階部分にある。延床面積 3, 208 ㎡を擁し、開 放的で明るい館内は快適に勉学・研究できる 空間になっている。 まず 2 階の入口前のロビーは、在学生の作 品の展示コーナーとして活用しており、来館 者に見てもらっている。写真は建築学科の卒 業研究の優秀賞の作品の一部を展示している。 入口の入退館ゲートを入ると、サービスカ ウンター・ABC 自動貸出機、蔵書検索端末が あり、その先が AV 資料・新書・雑誌棚と新 聞・雑誌をゆっくり閲覧できる「ブラウジン グコーナー」がある。 さらに 165席の閲覧席、「AV コーナー」14 席、「研究個室」5 室、「グループ研究室」3 室 2階入口ロビーの学生作品展示 メディアセンター外観 ブラウジングコーナー 2階グループ研究室 2階書庫 工学部図書館 2階レイアウト図
− −19 工学部図書館のご紹介(松冨) (12 名収容:3 室を 1 室としても利用可)があ る。近年、このグループ研究室で宿題やゼミ 討論などをする学生が増えており、ほぼ満室 の状態である。 開架書架には一般教養図書、参考図書、授 業関連図書、大型本、文庫本、資格・就職関 係図書を約 3. 8万冊配架し、さらに奥の書庫に は古い図書、洋雑誌、研究報告・紀要など約 12万冊を収めた電動書庫があり、こちらも常 に開架の状態で自由に利用できる。 学生による選書も行っており、特設の展示 コーナーを設けて配架し、やはり学生の人気 も上々である。 つづいて、2 階の中階段から上がった 3 階 はフロア全体が専門図書の開架閲覧室であ る。工学系の「化学、機械、電子、情報、建 築」の図書、和洋の雑誌(バックナンバーの 製本雑誌含む)が約 7. 4万冊配架している工学 部専門書の心臓部である。閲覧席は 224席あり、 静かに集中して勉強できる空間である。 また、館内にあるパソコンで蔵書検索はも ちろん、近畿大学(工学部独自の契約もある) で契約の電子ジャーナル、データベース、電 子ブックも検索・閲覧が可能である。 近年雑誌の電子化が急速に進んでいるのは 周知の事実だが、工学部においても新刊雑誌 の棚の約 3 割は空になっており、電子ジャー ナルへの移行した紙が貼ってある状態である。 電子書籍においても平成 27年度から工学部も 導入を開始している状況である。 また 3 階のフロアから屋外へ出られるテラ 工学部図書館 3階レイアウト図 学生選書(企画展示) 中階段~新刊雑誌棚 3階書架 3階テラス
− −20 香散見草:近畿大学中央図書館報 No.49, 2016 スもあり、気候のよい日はゆっくり閲覧可能 なスペースである。 4 . 工学部図書館の利用状況 上述してきたように、工学部図書館は施設 としては大変立派なものであり、資料による と 6 つ有る近畿大学中央図書館並びに各分館 の中で学生一人当たりの蔵書冊数は最も多く、 施設規模に関する数値データは学生一人当た りにすると上位に並ぶ。では、肝心の利用状 況はどのようになっているかを、幾つか紹介 したい。 メディアセンターの 1 、2階は吹抜けとなっ ている。そのため 1 階のメディアラウンジで の動きが 2 階に届き、静寂な環境を損なうと 危惧する声もあるが、行動的で活気に満ちた 1階の動の雰囲気を感じつつ、一方静の雰囲気 の中で勉学に励むのも学生にはそれなりに心 地良さそうである。いやなら、3階に移動すれ ば完全な静寂の中に身を置くことができる環 境が整っている。 今年から中止となったが、毎年行われてい たメディアラウンジで地域貢献を兼ねて開催 されていたコンサートの際には、この吹抜け を利用した 2 階席はコンサート鑑賞の特等席 であった。 在 学 生 達 の 利 用 実 績 を 数 値 で 見 て み る と、他学部の各分館と比べても、あまり芳し くない。絶対数が少ない上に、減少傾向にあ る。このことは、情報系 2 学科を擁し、情報 機器を気軽に活用する傾向の強い工学部であ り、インターネットによる情報検索システム が発展している現状を考慮しても、いささか 気になる。キーワード 1 つを入力すれば膨大 な情報が単体として得られることに簡単に満 足してしまうと、1冊 1冊の本(電子書籍や電 子ジャーナルでも構わない)を丁寧に調べて、 そこに詰まった多様な情報をまとめる過程で 得られる様々な能力を養う機会を失う。 数年前の本学図書館委員会で紹介された 「図書館をよく利用する学生の能力は、そうで ない学生の能力より高い」(表現は違っていた と思うが)とのイギリスの調査研究結果があ る。私もそのように感じる。インターネット の利活用が様々な分野にますます広がる社会 にあっても、学生達の学業は広く浅くであっ ていいものとは思えない。今後の重要な検討 課題である。 大学図書館であるので、在学生や教職員が 利用者の大半であるのは当然であるが、広く 外部への利用公開は大学の使命の一つである と同時に、公開提供する大学にもメリットを もたらすものである。平成 27年度近畿大学中 央図書館年次報告書によると本学部の一般公 開登録者数はここ数年 20 人~ 40 人で推移し ており、他の学部分館と比較して、ほぼ同程 度の数である。しかし年間の延べ入館回数を 見ると、他の分館を大きく上回る状況にある。 この理由の一つは、近隣の企業の方が専門的 な文献が手に入ると喜んで利用されているこ と、もう一つには勉強のために気楽に入館さ れる他大学等の学生さんが増えていることに ある。なんと嬉しいことではないか。愛され、 信頼される図書館に育ちつつあるようである。 5 . おわりに 本年度第 1 回工学部オープンキャンパスに おいて、初めて図書館見学をオープンにした。 すると、参加者の 8 割以上(重複もあると思 われる)が見学をされた。やはり、大学にお ける図書館への期待・関心は大きく、その責 任は重たいものだと改めて感じた。 この「香散見草」において、工学部図書館 を紹介する原稿を作成することにより、工学 部図書館の素晴らしさを改めて感じる。この 恵まれた環境の工学部図書館設立に情熱と努 力を傾けられた多くの先人達並びに教職員、 またその設立を決断され支援された学校法人 近畿大学に深謝する。 拙稿の執筆にあたり、情報提供を頂いた図 書館職員の皆さんは日々工学部図書館のより 良い運営に努力をされている。心から敬意を 表して、この稿を終えたい。