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出題と解説

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Academic year: 2021

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出題と解説

真 田 寧 皓 加 藤 天 美

近畿大学医学部脳神経外科学教室

症例:6歳 女児 主訴:嘔吐,意識障害 既往歴:特記すべきことなし

現病歴:平成21年10月6日嘔吐,腹痛,背部 痛があったが自然に軽快した.10月9日再度 嘔吐が出現し,近医小児科受診.点滴処置を 受け,経過観察とされた.翌日になっても症 状が軽快しないため他院を受診し,頭部 CT を施行されたところ異常を認めたため,同日 当院搬送となった.

入院時神経所見:意識レベル JCS 1.四肢に 明らかな麻痺を認めず,その他異常所見は認 められなかった.

入院時の CT(Fig.1)所見を示す.

Q1:まず疑うべき原因疾患はどれか.一つ 選べ.

a.脳動脈瘤破裂 b.脳動静脈奇形 c.脳腫瘍 d.髄膜炎

Q2:次に行うべき検査はどれか.すべて選 べ.

a.頭部 MRI

b.3D‑CT血管造影 c.脳血管造影 d.腰椎穿刺

入院後,精査を行うも頭蓋内に明らかな出 血源を特定できなかった.徐々に意識レベル は改善し,一旦退院となった.しかしながら 同年12月26日,夜中に背部痛が出現するよう になり,以後毎日症状が出現するため12月30 日当院受診.腰背部痛以外に明らかな異常は 認めず,精査のため脊髄 MRIを施行した.

(Fig.2)

Q3:診断は以下のうちどれか.一つ選べ.

a.脊髄腫瘍 b.脊髄硬膜外血腫 c.脊髄動静脈奇形

Fig.2

 

Fig.1

近畿大医誌(Med J Kinki Univ)第36巻1号 57〜59 2011 57

(2)

d.化膿性脊椎炎

解答と解説 Q1:正解 b.

橋前槽,第四脳室に高吸収域を認め,クモ 膜下出血と診断できる.一般にクモ膜下出血 の原因としては脳動脈瘤破裂が最多である が,若年者の場合は脳動静脈奇形がまず疑わ れる.脳腫瘍による出血もありうるが,発症 が比較的急性であることからは,まずは血管 障害を考える.重症髄膜炎では CTでクモ膜 下出血様に見えることがあるが,その場合本 症例のような軽微な神経症候ではなく,重度 の意識障害などを伴う.

Q2:正解 a.,b.,c.

脳血管障害を疑った場合,現在でも脳血管 造影が golden standardと言える.しかしな がら近年の画像診断の進歩により,3D‑CT 血管造影でも診断のみであれば脳血管造影 と比較して遜色ない結果が得られるように なっている.また脳腫瘍の診断や,動静脈奇 形の診断に頭部 MRIは有用である.本症例 では CT上側脳室下角がわずかに拡大して おり,水頭症を呈している.従って頭蓋内圧 が亢進していると考えられ,安易な腰椎穿刺 は行ってはならない.また,CTでクモ膜下出 血が明らかであり,特に腰椎穿刺を行う理由 もない.

Q3:正解 c.

脊髄 MRIで,胸髄周囲に flow  voidを認 め,脊髄動静脈奇形に特徴的な所見である.

結局この脊髄動静脈奇形が,初めのクモ膜下 出血の原因であった.

脊髄動静脈奇形は比較的まれな疾患であ り,その中には脊髄硬膜動静脈瘻や髄内動静 脈奇形などが含まれ,現在まで画像所見に基 づく分類や病変局在部位に基づく分類など,

様々な分類がなされてきた.しかしながら,

世界的な consensusはいまだ得られていな いのが実情である.治療方針を組み立てる上 で実用的な分類が,2000年に北海道大学より 発表されたので紹介する.(Fig.3)

①脊髄硬膜動静脈瘻

動静脈短絡が椎間孔近傍の硬膜表面にあ り,流出静脈が根静脈を逆流し,脊髄表面の 静脈に還流するもの.静脈圧の上昇により脊 髄症状を呈し,中高年の男性に多い.

②脊髄硬膜外動静脈瘻

硬膜外静脈に動静脈短絡があり,前述の① とは異なり,硬膜内への逆流はみとめられな いもの.

③脊髄辺縁部動静脈瘻

流入動脈は後脊髄動脈あるいは前脊髄動 脈からの脊髄辺縁の小動脈であり,動静脈短 絡は脊髄表面に存在し,しばしば静脈瘤を合 併する.頸髄レベルではクモ膜下出血あるい は髄内出血を起こすことが多いが,胸腰髄レ

Fig.3

 

Fig.4 真 田 寧 皓他

58

(3)

ベルでは静脈灌流障害による症状を呈する ことが多い.

④髄内動静脈奇形

動静脈短絡,nidusが髄内に存在するもの.

若年者に多く,クモ膜下出血または髄内出血 で発症する.

本症例は北海道大学の分類でいう③であ

った.(Fig.4)

脊髄動静脈奇形は,個々の病型により治療 戦略が異なり,また治療に際しては血管内手 術,直達手術,放射線治療などを選択,組み 合わせた集学的治療が有用である.

参考)脳外誌 pp20‑28,20(1),2011

出題と解説 59

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