• 検索結果がありません。

トシリズマブが奏功したステロイド治療抵抗性成人発症スティル病の1例

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "トシリズマブが奏功したステロイド治療抵抗性成人発症スティル病の1例"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

仙台医療センター医学雑誌 Vol. 11, 2021. 1.はじめに 成人発症スティル病(Adult Onset Still’s Disease:. AOSD)は高熱、関節痛、皮疹を主症状とする原因 不明の全身性自己炎症性疾患である。希少疾患であ. るため、初期治療としての薬剤間の比較検討したエ. ビデンスは存在しないが、副腎皮質ステロイド(以. 下ステロイド)により治療されることが多い。疾患. 活動性や合併症、再燃・再発などによって、メトト. レキサート(Methotrexate: MTX)、シクロスポリ ン(Cyclosporin A: CyA)などの免疫抑制薬が併用. される 1)。さらに、従来の治療に抵抗性の場合に、. 生物学的製剤、特に IL-6 阻害薬であるトシリズマ ブ(Tocilizumab:TCZ)の併用が有効であると報 告されるようになり 2)、本邦では 2019 年の 5 月に 保険適応となった。今回、ステロイド治療抵抗性の. AOSD に対し TCZ が奏功した 1 例を経験したので 報告する。. 2.症例 症 例:84 歳、女性. トシリズマブが奏功した成人発症スティル病. 症例. トシリズマブが奏功したステロイド治療抵抗性 成人発症スティル病の 1例. 宗像沙耶 1)、高橋広喜 1)、高橋裕一 2)、今村淳治 3)、中川孝 1)、石沢興太 4). 1)国立病院機構仙台医療センター 総合診療科 2)国立病院機構仙台医療センター 膠原病内科 / ゆうファミリークリニック 3)国立病院機構仙台医療センター 感染症内科 4)東北大学病院 総合地域医療教育支援部. 抄録. 症例は 84 歳、女性。発熱、体動困難を呈し、炎症反応高値と肝逸脱酵素上昇を認めたため精査加療を目的 に当科へ紹介となった。当院へ転院後、当初は敗血症を疑ったが抗菌薬に不応な高熱を呈し、左肘・手関節. の関節腫脹、後日フェリチン値高値(15,242ng/ml)を認めたため、成人発症スティル病(AOSD)を疑い、 入院 10 日目から 3 日間ステロイドパルス療法を施行した。その間は解熱したが、ステロイド漸減したところ 発熱や炎症所見が再燃したためシクロスポリン(CyA)を併用した。しかし、発熱や炎症反応は持続し、フェ リチン値もさらに上昇したため CyA を中止し、トシリズマブ(TCZ)投与を行った。その後は速やかに解熱 したため、ステロイドを漸減しながら TCZ を 2 週間に一度投与を継続したところ、再燃なく退院となった。 退院し 10 か月が経過しているがプレドニゾロン 6mg/ 日の内服と TCZ を 3 ~ 4 週間隔で投与し寛解を維持 している。近年、治療抵抗性の AOSD に対し、IL-6 阻害薬である TCZ が有効であるとの報告がなされている。 今回、ステロイドパルス終了後にステロイドの漸減とシクロスポリン併用加療でも再燃を認めたため、TCZ 導入したところ速やかに改善を認めた 1 例を経験したので報告する。. キーワード:成人発症スティル病、トシリズマブ、IL-6 阻害薬、ステロイド抵抗性 (2020 年 11 月 28 日受稿、2021 年 2 月 5 日受理、連絡先:高橋広喜・仙台医療センター 総合診療科). 46. 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 11, 2021. 主 訴:発熱 家族歴:息子 脂質異常症 既往歴:高血圧、脂質異常症、脳梗塞、認知症 生活歴:飲酒・喫煙なし 現病歴:20XX 年 12 月 Y 日より倦怠感を自覚し、 Y + 2 日に 38℃の発熱を認めたため、前医を受診 した。解熱薬としてアセトアミノフェンを処方され. たが、同日夕方には 40℃まで上昇し、体動困難と なったため、前医へ救急搬送となった。前医入院後. に尿路感染が疑われミノサイクリンを投与された. が、CRP 9 mg/dl、AST 150 IU/L と炎症反応高値・ 肝逸脱酵素の上昇を認めたため、Y+11 日に精査加 療を目的に当科へ紹介となった。. 初診時現症:PS 3、身長 150 cm、体重 47 kg、体 温 36.8℃(入院直後 38.5℃まで上昇)、血圧 91/57 mmHg、心拍数 84 回 / 分であった。JCS1。眼瞼 結膜:貧血様。眼球結膜:黄染なし。咽頭:発赤な. し。口腔内:異常所見なし。体表リンパ節:触知せ. ず。呼吸音:清、左右差なし。心音:整、雑音聴取. せず。腹部:平坦かつ軟、肝・脾は触知せず。四肢:. 左肘・手関節に腫脹、圧痛、熱感あり。皮疹なし。. CVA 叩打痛なし。項部硬直なし。神経学的所見に 特記事項なし。. 入院時検査所見:好中球優位の白血球増多を認め、 CRP は 31.6mg/dl と異常高値を呈していた。凝固 能に明らかな異常なく、軽度の貧血、肝逸脱酵素の. 上昇を認めた。抗核抗体、抗シトルリン化ペプチド. 抗体等は全て陰性であった。血清フェリチン値は. 15,242 ng/ml と高値を呈した。血液培養 2 セット、 尿培養はすべて陰性であった(Table 1)。. 入院時画像所見:胸腹部 CT 検査では悪性腫瘍や感 染症を示唆する所見なく、Ga シンチグラフィー検 査でも、異常集積は認めなかった。心電図は Sinus rhythm で電位変化も認めなかった。 経過:当院へ転院後、当初は敗血症を疑い、メロペ ネム 2g/ 日、バンコマイシン 750mg/ 日を開始した。 一旦解熱したが再度熱発し、抗菌薬の不応な高熱が. 続き、左肘・手関節炎症状も悪化した。さらに好中. 球優位の白血球上昇と CRP 値の異常は持続してい た。全身状態不良であり、Yamaguchi らの診断基 準の大項目 3 項目、小項目 2 項目を満たしたため、 AOSD と診断し、感染症の治療と並行して入院 10 日目から 3 日間ステロイドパルス療法を施行し た 3)。その間は解熱し、関節症状も軽快し、炎症反. 応の低下を認めた。入院 13 日目からプレドニゾロ ン(Prednisolone: PSL) 60mg/ 日、 さ ら に CyA 50mg/ 日を併用した。しかし、発熱、炎症所見、血 清フェリチン値が再度上昇(20,346ng/ml)し、症 状の悪化を認めたため入院 15 日目に CyA を中止 し、TCZ 400 mg(8mg/kg)を開始した。その後は 速やかに解熱し、関節炎症状が消失した。TCZ は 2 週間隔で投与を継続し、その後感染症の合併や症 状の再燃なく、PSL を 20mg/ 日まで減量し退院と なった (Figure 1)。退院後、外来で TCZ 投与を継 続し、PSL を更に漸減したがフェリチン値は正常 範囲内を保っていた。TCZ は開始から約 7 か月後. 白血球数 12400 /μl γ-GT 157 IU/L プロカルシトニン 0.625 好中球 87.3 % BUN 13 mg/dl PR3-ANCA (ー) 血小板数 287000 /μl Cre 0.90 mg/dl MPO-ANCA <1.0 Hb 10.7 g/dl 尿酸 6.7 mg/dl フェリチン 15242 ng/ml Dダイマー 6.9 μg/ml Na 142 mEq/l 尿培養 陰性. PT-INR 0.99 K 3.2 mEq/l 血液培養 陰性 APTT 27.1 秒 Cl 103 mEq/l アルブミン 2.7 g/dl Ca 8.2 mg/dl AST 94 IU/L P 4.0 mg/dl ALT 128 IU/L CRP 31.6 mg/dl. LD 750 IU/L ALP 806 IU/L. Table 1 入院時検査所見. トシリズマブが奏功した成人発症スティル病. 15242. 20346. 5691体温. フェリチン. CRPCRP mg/dl. 体温 (度). MEPM2g/日+VCM750㎎/日 PSL1000㎎/日. CyA50㎎/日. PSL60㎎/日. TCZ400㎎/日. PSL50mg/日. 関節炎 症状. Figure 1:入院後経過 MEPM:Meropenem VCM:Vancomycin CyA : Cyclosporin A PSL : Prednisolone TCZ : Tocilizumab. 47. 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 11, 2021. に 3 週間隔に変更し、PSL は 6mg/ 日まで漸減し た。退院後 10 か月が経過しているが AOSD の再燃 を思わせる症状なく、CRP 陰性、フェリチンは正 常範囲内を保っている(Figure 2)。. 3.考察 AOSD は明らかな病因は不明だが、ウイルス感. 染やアレルギーが契機となり、マクロファージや T リンパ球が異常に活性化し、高サイトカイン血症を. きたすことにより発症すると考えられている 4)。特. に IL-6、IL-18 は、発熱、皮疹、関節炎症状、フェ リチンや急性期炎症性蛋白の生成に密接に関与し疾. 患活動性と相関すると報告されている 5,6)。. AOSD の治療は、軽症なら非ステロイド性抗炎 症剤(NSAIDs)が有効な例もあるが、NSAIDs 投 与による病態改善効果は 0 ~ 13.6%と有効性が低 いという報告もある 1)。AOSD と診断されたほとん どの症例において、ステロイドが用いられ、プレド. ニゾロン換算で 1 日 0.5mg/kg より開始する。 AOSD による漿膜炎、間質性肺炎、血球貪食症候 群や播種性血管内凝固症候群などの重篤な合併症が. ある場合、全身状態が不良で血清フェリチン値が. 3,000ng/ml 以上を呈するなど高い疾患活動性を認 める場合は、中等量から高用量のステロイド(プレ. ドニゾロン換算で 1 日 1mg/kg 以上)を用いる。高 用量のステロイド治療に抵抗性を示す場合、ステロ. イドパルス療法を行うことにより臨床症状と病態の. 改善効果が期待される 7)。また、ステロイド治療抵. 抗性(プレドニゾロン換算で 0.4mg/kg 以上のステ ロイドに治療抵抗性)の場合は、MTX、CyA など の免疫抑制薬の併用も検討される 1)。. IL-6 阻害薬である TCZ は、小児の全身型特発性. 関節炎(juvenile idiopathic arthritis: JIA)に対し、 高い有効性が報告され、2008 年に保険適応になっ ている 8)。AOSD は JIA と同様の病態と推定され、 TCZ はステロイド抵抗性や、ステロイドと CyA 併 用治療に対し抵抗性であった難治症例に対し有効例. が報告されるようになった 2)。しかし、AOSD に対 し TCZ を投与した症例の長期報告はまだ少なく、 副作用としては、一過性血小板減少 12)、易感染性、. 肝機能障害、マクロファージ活性化症候群 13)など. が報告されている。安全性に関しては判然としない. 部分もあり、今後の症例の集積により明らかになる. と思われる。. IL-6 は、TGF-βとともにナイーブ CD4 陽性 T 細胞に作用すると、Th17 細胞(ヘルパー T 細胞の サブセット)への分化を促進し、TGF-βにより誘 導される制御性 T 細胞(Treg 細胞)の分化を抑制 する。持続的な IL-6の過剰産生は、自己抗原を含め、 種々の抗原に反応する T 細胞から Th17 細胞への 分化を促進させる。TCZ は、IL-6 によるアンバラ ンスを是正することで、様々な自己免疫疾患に効果. を発揮すると考えられている 14)。国内での TCZ の 適応疾患は、関節リウマチ、JIA、AOSD、キャッ スルマン病、腫瘍特異的 T 細胞輸注療法に伴うサ イトカイン放出症候群が挙げられる。. 自験例は、初期治療のステロイドパルス療法には. 非常に良好な反応性を示していたが、その後ステロ. イドを漸減し CyA を開始したところ、再度熱発し、 関節炎症状の悪化、CRP 値、フェリチン値の上昇 を認めた。そのため、ステロイド治療に抵抗性の症. 例と判断し、高齢発症で感染症合併のリスクも考慮. し、TCZ を導入した。TCZ 開始後は、速やかに疾 患活動性は低下し、PSL の漸減が可能となった。 また TCZ 投与時、前述したような副作用の出現は 認められなかった。TCZ は、ステロイド治療抵抗 性の AOSD に対し、症状の改善効果、ステロイド 減量効果、AOSD の再発抑制効果があり、治療の 選択肢の一つとして有効であると思われる。. 4.結語 高齢発症ステロイド抵抗性の AOSD に対し、. TCZ を投与し良好な結果を得た。高齢者ではステ. PSL20㎎/日 15㎎/日 12.5㎎/日 10㎎/日 9㎎/日 8㎎/日 7㎎/日 6㎎/日. Figure 2:退院後経過. トシリズマブが奏功した成人発症スティル病. 48. 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 11, 2021. ロイドの長期投与は望ましくないため、TCZ の早 期導入が望ましいと思われた。. 本症例の要旨は、第 22 回日本病院総合診療医学 会学術総会(2020 年 9 月、大宮)にて報告した。. 5.文献 1)成人スチル病診療ガイドライン(2017 年度版). . https : / /minds. jcqhc .or. jp /docs /g l_pdf / G0001020/4/Adult_Stills_Disease.pdf:2020 年 11 月 6 日アクセス. 2) Ortiz-Sanjuan F, Blanco R, Calvo-Rio Y, et al. Efficacy of Tocilizumab in Conventional Treatment-Refractory Adult-Onset Still’s Disease Multicenter Retrospective Open- Label Study of Thirty-Four Patients. Arthritis Rheum 2014;66:1659-1665. 3) Yamaguchi M, Ohta A, Tsunematsu T, et al. Preliminary criteria for classification of adult Still’s disease. J Rheumatol 1992;19:424-430. 4) Efthimiou P, Kontzias A, Ward CM, et al. Adult-onset Still's disease: can recent advances in our understanding of its pathogenesis lead to targeted therapy? Nat Clin Pract Rheumatol 2007;3:328-35. 5) Ohta A, Yamaguchi M, Tsunematsu T, et al. Adult Still's disease: a multicenter survey of Japanese patients. J Rheumatol 1990;17:1058- 63. 6) Saiki O, Uda H, Nishimoto N, et al. Adult Still's disease reflects a Th2 rather than a Th1 cy tok ine pro f i l e . C l in Immunol 2004;112:120-125. 7) 三村俊英:成人 Still 病 . 内科学 . 第 11 版 , 朝 倉書店 . 2017;p1244-1245. 8) Yokota S, Imagawa T, Mori M, et al. Efficacy. and safety of tocilizumab in patients with systemic-onset juvenile idiopathic arthritis :a randomized, bouble-blind, placebo-controlled, withdrawal phase III trial. Lancet 2008; 371:998-1006. 9) Song ST, Kim JJ, Lee S, et al. Efficacy of tocilizumab therapy in Korean patients with adult-onset Still's disease: a multicenter, retrospective study of 22 cases. Clin Exp Rheumatol. 2016;34:S64-S71. 10)Nishina N, Kaneko Y, Kameda H, et al. The effect of tocilizumab on preventing relapses in adult-onset Still’s disease: A retrospective, single-center study. Modern Rheumatology 2014;17:1-4. 11)Kaneko Y, Kameda H, Ikeda K, et al. Tocilizumab in patients with adult-onset still’s disease Refractory to glucocorticoid treatment: a randomized, Double-blind, placebo-controlled phase Ⅲ trial. Annals of the Rheumatic Diseases 2018;77:1720-1729. 12)矢坂健、吉川和寛、三森明夫、他 : 成人スチル 病のトシリズマブ治療:開始後にみられる一過. 性血小板減少 Clinical Rheumatology and Related Reserch 2019; 31:300-306. 13)Ma Y, Wu M, Zhang X, et al. Efficacy and safety of tocilizumab with inhibition of interleukin-6 in adult-onset Still's disease. A meta-analysis Modern Rhuematology 2018;28:849-857. 14)Tanaka T, IL-6 blockade therapy for inflammatory diseases: current perspectives and future directions. Zthe Japan Society for Clinical Immunology 2015;38(6)433-442. トシリズマブが奏功した成人発症スティル病. 49

参照

関連したドキュメント

We were able to assess the dose distributions of the radiotherapy plan with setup errors and found the following: the setup errors affected the dose around the beam edges; the

 スルファミン剤や種々の抗生物質の治療界へ の出現は化学療法の分野に著しい発達を促して

Neovastat (AE-941) in refractory renal cell carcinoma patients: report of a phase II trial with two dose levels. Phase I/II trial of the safety and efficacy of shark cartilage in

4)詳しくは,野村真理「正義と不正義の境界    ナチ支配下ウィーンのユダヤ・ゲマ インデ」 (赤尾光春・向井直己編『ユダヤ人と自治

patient with apraxia of speech -A preliminary case report-, Annual Bulletin, RILP, Univ.. J.: Apraxia of speech in patients with Broca's aphasia ; A

 ROP に対する抗 VEGF 療法として,ラニビズマブの 国際共同治験,RAINBOW study(RAnibizumab Com- pared With Laser Therapy for the Treatment of INfants BOrn

〈びまん性脱毛、円形脱毛症、尋常性疣贅:2%スクアレン酸アセトン液で感作後、病巣部に軽度

Mindfulness-based stress reduction in patients with interstitial lung diseases: A pilot, single-centre observational study on safety and efficacy. 糖尿病 こころのケア,