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認知症の早期診断と軽度認知障害 (MCI) 認知症は高血圧などの生活習慣病と同様に 最もありふれた慢性疾患の一つといっても過言ではありません 社会の高齢化にともない認知症患者数は今後も増え続けると予想される状況の中 認知症をより早期に発見しその症状進行をいかに遅らせるかということが重要視されつつあり

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(1)

N P O法   認 ー﹁ 。未 R in g a B e ll﹁ 2﹂

特集

認知症の早期診断と軽度認知障害

M

C

I

について

認知症に取り組む人々の輪を支える温かな心

【スプリングマインド】

2011

no.

5

(2)

2 認知症の早期診断にはさまざまな利点があります。ま ず、認知症の原因疾患の第1位であるアルツハイマー病 (AD)については治療薬があり、できるだけ早く使用開始 すれば症状の進行を遅延することが示唆されています。 さらに最近の研究から、アミロイド沈着や神経原線維変化 などのADの脳内病変は、臨床症状が出現するよりもかな り前から出現しており、原因療法となるような薬物治療は 早く開始するほど効果が大きいと考えられています。血 管性認知症(VaD)の前駆状態では記憶障害よりも意欲低 下や遂行機能障害が目立つことが多く、小刻み歩行などの 歩行障害や尿失禁などの神経症候が早期から出現するこ とが特徴です。この時期に危険因子への治療を行い、虚血 性病変の進行を抑制できれば認知症への移行を遅延でき る可能性があります。レビー小体型認知症(DLB)の場合 は、もの忘れ、抑うつ、幻視、パーキンソン症候、起立性低血 圧による失神など多彩な症候が早期から出現し、前頭側頭 型認知症(FTD)の場合は記憶力が保たれていても、性格変 化や脱抑制による異常行動が出現します。例えば、万引き 宇高 不可思 (うだか ふかし) 1977 年京都大学医学部医学科卒業、1987 年同大学大学院医 学系研究科博士課程修了。京都大学付属病院、東京都養育院 附属病院を経て、1988 年より住友病院神経内科。 専門は神経内科学、老年医学。

早期診断を行うことで医療従事者にとっても、

ご家族にとっても適切な対応が行いやすくなります

財団法人住友病院 副院長 

宇高 不可思

認知症は高血圧などの生活習慣病と同様に、最もありふれた慢性疾患の一つといっても過言ではありませ ん。社会の高齢化にともない認知症患者数は今後も増え続けると予想される状況の中、認知症をより早期 に発見しその症状進行をいかに遅らせるかということが重要視されつつあります。本稿では、認知症の早 期診断と軽度認知障害(MCI)について詳しく述べたいと思います。

認知症の早期診断と軽度認知障害(MCI)について

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3 で逮捕されて免職になった人がFTDの早期であることが判 明したおかげで名誉を回復した、という例があり、患者さん の権利擁護のためにも初期症状を見逃さないように注意す る必要があります。その他、認知症の中には稀ながら外科 的手術や内科的治療で治癒できるものがあります。さらに は、今後の生活支援の心構え、準備のためにも早期に診断さ れたほうが医療従事者にとっても、ご家族にとっても適切 な対応が行いやすくなります。以上のような理由から、認 知症の早期診断が重要と考えられているのです。

MCI(mild cognitive impairment)という用語は1988年頃 から用いられていますが、この用語が一般的になったのは Petersenらが1999年に提唱した概念1)(表1)以後です。現 在でもこの概念は変わっていませんが、MCIは必ずしもAD の前段階だけではなく、進行しない例や回復する例もある ことが分かっています。また、記憶障害以外の認知機能障 害を主症状とするものもMCIに含めて、新しい分類がなさ れるようになりました。現在のMCIの診断基準は、本人や 家族から①認知機能低下の訴えがあり、②認知機能は正常 とはいえないが認知症の診断基準は満たさない、③複雑な 日常生活動作に最低限の障害はあっても基本的なADLは正 常、の3点が基本です。これを、記憶とその他の認知機能(言 語機能、遂行機能、視空間機能)の障害の有無により4つの サブタイプに分類しています。まず、amnestic MCIかnon-amnestic MCIに分け、さらにそれぞれを単一領域の障害か 複数の障害かにより、single domain MCI、multiple domain MCIに分けています(図1)。なお、それぞれのサブタイプ がどの認知症疾患に進展するかの予想もある程度は可能 です。

軽度認知障害(MCI)とは、

複雑な日常生活動作(ADL)に “最低限” の障害が

あっても基本的な日常生活動作が

正常な状態をいいます

表1 MCIの分類と認知症への進展予想 図1 MCIの分類と認知症への進展予想

認知症の早期診断と軽度認知障害(MCI)について

◯ 主観的なもの忘れの訴え ◯ 年齢に比べ記憶力が低下(記憶検査で平均値の 1.5SD 以下) ◯ 日常生活動作は正常 ◯ 全般的な認知機能は正常 ◯ 認知症は認めない アルツハイマー病など 認知症への 進展予想 アルツハイマー病血管性認知症 前頭側頭型認知症 レビー小体型認知症血管性認知症 認知機能に関する訴え 記憶障害 YES YES NO Amnestic MCI 認知障害は記憶障害のみ NO YES NO Non-amnestic MCI 認知障害は1領域に限られる Amnestic MCI

Single domain Multiple domainAmnestic MCI Non-amnestic MCISingle domain Non-amnestic MCIMultiple domain MCI

認知症疾患治療ガイドライン2010 P189より一部改変

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4 図2 3D-SSP法による血流低下画像 では、MCIとADを臨床像でどのように区別するのでし ょうか。認知症の診断には、認知機能低下のために日常生 活に支障がある、すなわちADLに何らかの障害があるとい うことがポイントです。一般に、ADLは手段的ADL(家事、 買い物、金銭管理、薬の自己管理、交通機関を使っての外出 などの能力)と、基本的ADL(食事、トイレ、歩行、着脱衣、入 浴などの能力)に分けられますが、軽度認知症では手段的 ADLに障害が認められるために生活に支障をきたすよう になり、中等度認知症では基本的ADLも障害されて介護が 必要となります。一方、MCIの場合は、“複雑な日常生活動 作に最低限の障害はあっても基本的ADLは障害されてい ない”と定義されています。複雑な日常生活動作とは手段 的ADLですが、“最低限”の解釈が難しいところです。本人 の置かれた立場や環境にもよりますが、記銘力低下などの 認知機能障害があっても、仕事や家事には困らない、ある いはほとんど困らないという方はMCIと診断されます。 MCIといえばADの前駆状態という印象が強いですが、 本来はあらゆる認知症の前駆状態をいいます。MCIや認 知症に類似したもの忘れの訴えがある病態としては、加齢 によるもの忘れ、抑うつ状態があります。加齢によるもの 忘れはADの前駆状態としてのMCIとは異なり進行性では ありませんが、鑑別が難しく長期の経過観察が必要な場合 も少なくありません。抑うつ状態によるもの忘れは仮性 認知症とも呼ばれ、軽症であればMCIと類似している場合 もあります。仮性認知症と認知症の違いを表2に示します。 MCIの診断には、詳細な認知機能検査で、記憶機能(特に エピソード記憶、論理記憶)、言語機能、遂行機能、視空間認 知機能、推論、注意力などを評価し、年齢、性別、教育歴など を加味した平均値から標準偏差の1.5倍以上低下している ことの確認が必要ですが、認知機能に影響を与える身体疾 患や、向精神薬など薬剤の影響、抑うつ状態などの精神疾 患を除外する必要があります。しかしながら、ここで述べ た方法は主に研究目的での診断に用いられるものであり、 日常診療には適用しにくいのが現状です。 CT、MRIなどの形態画像では、ADの初期あるいはMCIの 場合はほとんど異常を認めないか、あるいは海馬とその 周辺の萎縮により側脳室下角が軽度拡大するという所見 が見られる程度です。VSRADという萎縮評価ソフトを使 えばより明瞭に萎縮の定量的評価が可能で、ADの早期診 断に有用です。SPECTでは3D-SSP法による3次元の脳血 流分布を評価し、ADでは早期から特徴的な内側側頭葉、側 頭葉・頭頂葉、後部帯状回、楔前部などにおける血流低下

AD の早期診断には VSRAD や 3D-SSP 法による

3 次元の脳血流分布が有用です

表2 仮性認知症と認知症の鑑別 もの忘れの自覚 もの忘れに対する深刻さ もの忘れに対する姿勢 気分の落ち込み 典型的な妄想 脳画像所見 抗うつ薬治療 仮性認知症 ある ある 誇張的 ある 心気妄想 正常 有効 認知症 少ない 少ない 取り繕い的 少ない もの盗られ妄想 異常 無効 血流低下の程度 小 大 RT.LAT LT.LAT 頭頂葉(  ) 側頭葉(  ) 後部帯状回・楔前部(  ) RT.MED LT.MED

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所見が認められれば診断特異性は非常に高くなります(図 2)。MCIの段階で実施したSPECT検査でこれらの所見が 認められる場合は、すでにAD病変が始まっていることを 示唆します。PETでは糖代謝の低下部位の分布が血流分 布と同様に役立ちます。まだ研究段階のアミロイドイメ ージングも、ADの早期診断につながることが期待されて います。 ADの診断に有用なバイオマーカーは、脳脊髄液中のAβ 42の低下、タウまたはリン酸化タウの増加、およびこれら の 比 率 で あ り、ADNI(Alzheimer's disease Neuroimaging Initiative)でもMCIからADへの進行の予測に有用であるこ とが報告されています2)。しかしながら、脳脊髄液検査は 保険適応外であり、また一般病院では診断のために脳脊髄 液を採取し研究機関に測定を依頼することをルーチンで 実施することは困難です。このことから、脳脊髄液検査の 代わりに血液検査で診断できるバイオマーカーの研究も 望まれます。 以前は認知症がかなり進行してから家族の方が本人の 周辺症状に困って精神科を受診させるということが多か ったのですが、この10年程で認知症に関する啓発活動が 進んだおかげで、認知症の初期あるいはMCIの段階でもの 忘れ外来や神経内科を受診される方が大変多くなった印 象があります。さらにはMCIにまで至らない、加齢による もの忘れの段階でも大変心配されて精査を希望される方 も少なくありません。 そのような状況の中、早期診断を受けた患者さんへの病 名告知・病状説明は、早期診断における大きな課題です。 本来はきちんと患者さんに告知すべきなのですが、告知に よる精神的ショックがかえって症状を悪化させるという 患者さんの不利益にも配慮する必要があります。不安や 抑うつ傾向のある方にはちょっとした説明の仕方でも良 くない結果を招く恐れがあります。住友病院では、前向き に考えてもらうことが大切だと考え、“脳内でもの忘れの 症状を引き起こす病気のような異常がすでにあるようで すが、進むとしても年単位にゆっくり進行するので、早く 分かったほうが対応策を立てやすいので良かったのでは ないか”と説明するようにしています。ただし、ご家族か ら認知症あるいはアルツハイマー病という病名を決して 告げないでほしいと依頼された場合には、“今はまだ大丈 夫だが脳内に年齢相応よりも強い加齢変化が生じている ので、将来認知症にならないように今からお薬を飲みまし ょう”というような言い方をしています。このように、患 者さんやご家族に十分配慮することが、病名告知・病状説 明における大前提となります。 また、早期診断後の患者さんの継続的なサポートも大切 です。配偶者の死去や大災害などの精神的ストレス、全身 性疾患、全身麻酔による手術など、精神的あるいは身体的 ストレスの後に症状が顕在化することが少なくないので、 健康管理、精神衛生に留意し、ご家族とも協力して極力患 者さんの心身に負担をかけないような対応を行う必要が あると思います。 認知症の患者さんは増え続けています。わが国のよう な超高齢社会では高血圧などの生活習慣病と同様に、最 もありふれた慢性疾患の一つであると言えます。米国の Framingham研究によると、脳卒中または認知症を発症す る危険率は、65歳以上の男性の1/3、女性の1/2と報告され ています。認知症は決して他人事ではありません。医療・ 介護従事者の方々には、患者さんの姿は未来の自分たちの 姿をタイムマシンで教えてくれていると受け止め、診療・ 介護に尽力していただきたいと思います。 5

おわりに

参考文献

1) Petersen RC et al., Arch Neurol, 1999; 56: 303-308

2) Ewers et al., Neurobiology of Aging, In Press, Corrected Proof, Available online 14 December 2010

早期診断を受けた患者さんへの

病名告知・病状説明では、患者さんとご家族に

十分配慮しなければなりません

(6)

認知症の人と家族が集える場 看護の現場で働いていた沖田さんはある身近な体 験を契機に、北欧スウェーデンへホームステイの旅に 出る。 「介護保険制度が導入される前のことです。祖父母 は母が仕事をやめて看ましたが、身近な人が認知症に なり、何の支援もないまま亡くなってしまいました。 日本の福祉に対して『これでいいのだろうか』と疑問を 持たざるを得ない状況でした。そこで、福祉の先進国 といわれる北欧へナーシングホーム(高齢者ケア施設) を見学に行ったのです。北欧では福祉が特別なことで はなく、生活の一環という印象でした。とても強い衝 撃を受けました」 帰国後、いくつかの高齢者介護施設に勤めた。そし て重度認知症患者のデイケアで勤務するなか、一人一 人の利用者の症状が何年もかかってどのように進行 するのかを体験し、その状況に合わせてさまざまに介 護方法を変える必要があることを知る。それは家族 の人たちとともに手探り状態でベストな方法を探る ものであった。そして初めて若年性認知症の患者と も出会う。「このデイケア施設での経験がNPOを立ち 上げる主なきっかけになりました」。こうして沖田さ んは大阪市社会福祉研修・情報センターに勤務をし

絶望ばかりではない。

未来へ希望ある支援を

NPO法人 認知症の人とみんなのサポートセンター 代表 沖田 裕子

(7)

 大阪を拠点とする NPO 法人「認知症の人とみんなのサポートセンター」は、64 歳までに認知症を発症した 若年性認知症の方のサポートを中心に活動している。診断技術の進歩により若年で認知症の初期診断を受ける人 は少なくない。介護や治療期間が長期になり、老年期の認知症とは異なった支援のあり方が要求される。  同センターは、相談を受けるだけではなく本人と家族が通い集う場としても大きな存在感を示している。今回 取材させていただいたのは、そんな若年性認知症支援の現場。代表の沖田裕子(おきた・ゆうこ)さんに お話を伺った。(取材班) ながら、2007年に若年性認知症の患者本人や家族のサ ポートに主軸を置くNPO法人を大阪に設立した。こ れまでにはなかった、若年性認知症や初期の認知症の 本人と家族が集う場、若年性認知症の患者本人の生き がいや楽しみを分かち合う場が誕生したのだ。 若年であるがゆえのさまざまな問題点 それでは若年性認知症にはどのような特有の問題が あるのだろうか。 「年齢が若いということは本人が家族を扶養しなけ ればならない、また家事や育児、介護など家族の生活を さまざまな形で支えていかなければならない時期であ るということです。それが認知症になると難しくなる のです。もう一つは、老年性認知症に比べて利用でき る公的サービスに乏しいことです」と沖田さんは話す。 そして私たちへ、「皆さんも今、デイサービスに行けと 言われると嫌でしょう」と問いかける。「当センターで は相談だけではなく本人の生きがいを見いだせる日常 活動の場を提供し、そのなかで目標を明確化するため に簡単なケアプランを作り、利用可能な公的サービス につなげていくことを考えます」 同センターでの本人支援の活動メニューは、絵を描く アートワーク、本人のボランティア活動、歩く会など。 「デイサービスには行かない方も、ここへは週に何回 もお手伝いに来てくれます。それが生活リズムを整え ることになります。また、本人の様子に変化があれば、 他の支援者たちとの間で情報を共有し、お互いに相談 しあうこともできます。例えば『Aさんが最近休みがち で、誘ってもなかなか来ないのですが、どうしたのでし ょうか?』とか、『このごろヘルパーさんに辛く当たっ ているようですが、そちらではどうですか?』といった ようにです。このようなやり取りをしながら、本人が 抱えている問題を確認し、お手伝いします。一つずつ 積み重ねる気長な作業です」 本人だけではなく、一緒に来た家族の人たちも、お互 いに支援についての情報交換をしたり悩みを打ち明け たりと、家族同士の交流の場にもなっている。「家族の 方も自分を支えてくれる誰かが必要なのです。自分ひ とりだけが苦しんでいるのではないということを知る のはとても大事なことです」

(8)

8 介護生活を送っていたとしても、決して悲観するこ とはないと沖田さんは話す。「その状況の中でも、新し い生き方を見つけ出すことが大切です。病気を持ちな がらも、どのようにして今の生活を、より快適に過ごす ことができるか。少しでも良い暮らしができるように と考えることは、認知症に限らずどんな病気でも一緒 です。特に若年の方はその後の人生が長いですから、 絶望ではなく希望を持って暮らしていただきたい。実 際にそのような人たちがいることを、もっと知ってい ただきたいのです」 しかし、なかには本人や家族の人たち自身が若年性 認知症になったことを受け入れられず、公的支援をあ えて受けないケースもあるそうだ。 「認知症に対する偏見や、もっと進行してから手 立てをすればいいといった意識が依然として 残っていることは事実です。本人も、その ような病気の人ばかりが集まっている ところには行きたくないと拒否する 場合もあります。しかし、できるだけ 早い段階から本人同士や他の家族と の交流の場を作ることが病気の 進行を遅らせたり、上手な介護 を 身 に つ け る こ と に つ な が るのです」 診断とサポートをセットで 若年性認知症と診断された時の不安の大きさは、そ の先の人生が長いだけに想像を絶するものがある。 その点を沖田さんは、「自分がこれまで描いてきた人 生のプランが完全に変わるわけですから、心の葛藤は 大きいでしょう。私は先生方に、診断だけではなく、 その後どのように暮らしていけばいいかということ までサポートしていただきたいと思っています」と話 す。「私たちのような団体を紹介してくださるとか、 診断後の生活に関わる障害年金や精神障害者保健福 祉手帳の申請についての説明など、資源活用のための お手伝いをしてくださるとか。残念なことに、病院で 働く看護師さんのなかには介護保険のことを知らな い人もいます。同じ職種の人間として 私が願うのは、患者さんが病院から帰 ったらどんな生活をしているかとい うことまで想像してほしいという こと。そもそも認知症に興味を 持っている看護師さんは少 ないかもしれません。し かし、認知症の患者さ んは他の病気を併発 することが多く、医

絶望ばかりではない。未来へ希望ある支援を

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9 療的な知識が必要な場面が多い病気なのです。ぜひ もう一歩踏み込んで、認知症のことや認知症の患者さ んにも興味を持ってほしいのです。これは医療・介 護に関わるすべての方にお願いしたいことです。こ の人はもし認知症がなければ何をしたいと思ってい ただろうかと考えると、本人があきらめている部分が 浮かび上がってくるかもしれません。例えば道に迷 うから好きな映画を観に行けないかもしれないし、友 達の家に行くこともあきらめているかもしれません。 それらは少しのサポートがあれば可能になることで す。本人の生活の幅を広げるためのお手伝いが支援 になります。若年性認知症の人への支援は、身体的に 介護することだけではないのです」 仕事以外の生きがい探し  「若年性認知症の場合、ついこの間まで社会の第一 線で働いていたのに、会社を辞めた途端に社会と隔絶 されてしまいます。診断を受けた後、本人が社会とど う関わり、つながりを持つかは、若年性認知症の大き な課題です。とくに仕事が趣味と公言していたよう な人にとっては、社会とのつながりが全くなくなって しまいます。だから、働いているうちに仕事以外の楽 しみや人とのつながりを作り、ボランティアでも何で もいいのでとにかく生活に取り入れていただきたい。 病気になったり障害を持ったりして初めてその大切 さに気付く人が多いので、元気なうちに考えておいた ほうがいいと思います。それはもちろん私自身にも 言えることです」と、沖田さんは訴えかける。ふと私 たちも、耳の痛い指摘を受けたような気がした。 同センター内に飾られた鮮やかな色合いの絵画が 美しい。アートワークや本人ボランティアなどで楽 しみや生きがいをもう一度見つけることは、非常に重 要なことだ。居場所がここにあること自体、本人や家 族にとって大きな支援なのだ。 NPO法人 認知症の人とみんなのサポートセンター  NPO法人 認知症の人とみんなのサポートセンター 〒537-0024 大阪市東成区東小橋1-18-33 ぱーくす倶楽部内 TEL・FAX 06-6972-6490 9

(10)

スクリーニングや画像検査による診断方法の進歩により、多くの認知症が鑑別でき、 それぞれの治療法が選択できるようになりました。正確な診断が、良好な治療効果 への第一歩です。今回は、ガイドラインでも推奨されているそれぞれの評価方法・診 断方法について説明します。

第5回「認知症の検査」

認知症治療の今を知る 参考資料) ●認知症疾患 治療ガイドライン 2010. 監修:日本神経学会 医学書院 ●認知症診療の進め方 ―その基本と実践― 編著:長谷川和夫 永井書店 ●別冊 NHK きょうの健康 認知症 総監修:山田正仁 NHK出版 

主なテストとして、Mini-Mental State Examination(MMSE)と長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)があり、 全般的なスクリーニング検査ができます。診断には、これら言語性のテストに加え、非言語性(動作性)のテストを組み合わせ て判断することが推奨されています。 視空間認知だけでなく、注意・実行機能も検査することができます。 「この紙の上に、紙の大きさに見合った大きさの丸時計の絵を描いて ください。数字も全部書いて、10時10分になるように描いてください」 と、口頭で指示します。

記憶障害、失語、失行、失認、遂行機能障害など認知機能を調べます

●言語性スクリーニングテスト

●非言語性テスト(空間認識機能をチェックする)

設問

MMSE

:設問数11、30点満点で23点以下は認知症の疑い。 質問内容 回答 得点 合計得点(30点満点)

認知機能テスト

血算、血沈、一般生化学(肝機能、腎機能、電解質など)、血糖、アンモニア、甲状腺ホルモン、ビタミン B1・B12、梅毒血清反応の検査項目が推奨されます。

血液検査で、ビタミン B

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欠乏症、甲状腺機能低下症などを鑑別、脳脊髄液検査で、

慢性髄膜炎の鑑別、アルツハイマー病早期診断などを行います

測定項目 一般血液検査 薬物血中濃度測定 各種ウイルス、抗体検査 鑑別疾患 甲状腺機能低下症、肝性脳症、糖尿病性昏睡、低ナトリウム血症 薬剤性脳症、重金属、抗不安薬、睡眠導入薬、有機化合物中毒 など 進行性多巣性白質脳症(PML)、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、進行性風疹全脳炎、AIDS脳症 など

血液検査・脳脊髄液検査

「形態画像」で脳の萎縮を、「機能画像」で脳血流や働きを調べます

画像検査

年 曜日 月 日 病院 県 市 階 地方 今年は何年ですか? 今の季節は何ですか? 今日は何曜日ですか? 今日は何月何日ですか? この病院の名前は何ですか? ここは何県ですか? ここは何市ですか? ここは何階ですか? ここは何地方ですか? 物品名3個(桜、猫、電車) 検者は物の名前を1秒間に1個ずつ言う。 その後、被験者に繰り返させる。正答1個 につき1点を与える。3個全て言うまで繰り 返す(6回まで)。 何回繰り返したかを記せ(  )回 100から順に7を引く(5回まで)。 設問3で提示した物品名を再度復唱させる (時計を見せながら)これは何ですか? (鉛筆を見せながら)これは何ですか? 次の文章を繰り返す 「みんなで、力を合わせて 綱を 引きます」 (3段階の命令) 「右手にこの紙を持ってください」 「それを半分に折りたたんでください」 「それを私に渡してください」 (次の文章を読んで、その指示に従ってください) 「右手をあげなさい」 (何か文章を書いてください) (次の図形を書いてください) 1(5点) 2(5点) 3(3点) 4(5点) 5(3点) 6(2点) 7(1点) 8(3点) 9(1点) 10(1点) 11(1点) 設問

HDS-R

:設問数9、30点満点で20点以下は認知症の疑い。 質問内容 配点 記入 針概念の忘却(67歳 女性 アルツハイマー病) キツネ ハト 1 お歳はいくつですか?(2年までの誤差は正解) 今日は何年の何月何日ですか? 何曜日ですか? (年、月、日、曜日が 正解でそれぞれ1点ずつ) 100から7を順番に引いてください。 (「100引く7は? それからまた7を引くと?」 と質問する。 最初の答えが不正解の場合は打ち切る) 2 3 4 5 6 7 8 9 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみて ください。 (自発的に回答があれば各2点。もし回答がない場 合以下のヒントを与え、正解であれば1点) a) 植物 b) 動物 c) 乗り物  これから5つの品物を見せます。それを隠します ので何があったか言ってください。 (時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に 無関係なもの) 知っている野菜の名前をできる だけ多く言ってください。 (答えた野菜の名前を右欄に記 入する。途中で詰まり、約10 秒間待っても出ない場合にはそ こで打ち切る) 0∼5=0点、6=1点、7=2点、 8=3点、9=4点、10=5点 私がこれから言う数字を逆から言ってく ださい。 (6−8−2、3−5−2−9を逆に言っても らう。3桁逆唱に失敗したら打ち切る) 私たちが今いるところはどこですか? (自発的にできれば2点 5秒おいて、家ですか? 病院ですか? 施設ですか? の中から正しい選択 をすれば1点) これから言う3つの言葉を言ってみてください。あと でまた聞きますのでよく覚えておいてください。 (以下の系列のいずれか1つで、採用した系列に ○印をつけておく) 1:a) 桜 b) 猫 c) 電車  2:a) 梅 b) 犬 c) 自転車

時計描画テスト

(the Clock Drawing Test:CDT)

1.テストをする相手と向かい合って座る。 2.「私の手をよく見て同じ形を作ってください」と一度だけ言う。 3.影絵のキツネの形を10秒間見せて真似をしてもらう。 4.影絵のハトの形を10秒間見せて真似をしてもらう。

キツネ・ハト模倣テスト

年 月 日 曜日 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 2 3 4 5 0 1 2 3 4 5 a: 0 1 2 b: 0 1 2 c: 0 1 2 0 1 0 1 0 1 2 (93) (86) 2-8-6 9-2-5-3

血液検査

脳の萎縮・血腫・腫瘍などを観察する。CT、MRI

形態画像

脳血流、脳の糖代謝の状態を観察する。 脳血流 SPECT(単一フォトン断層撮影)、PET(ポジトロン断層撮影)・FDG-PET(フルオロデオキシグルコース -PET)・アミロイド PET

機能画像

● 慢性の髄膜炎など頭蓋内疾患の鑑別診断 ● クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の補助診断   髄液14-3-3タンパクの出現 ● アルツハイマー病の早期診断のバイオマーカーとしてMCI診断にも有用   脳脊髄液中のAβ(アミロイド・ベータ)1-42の低下とタウの上昇

脳脊髄液検査(CSF)

認知症診療の進め方 ―その基本と実践― p24 10

(11)

スクリーニングや画像検査による診断方法の進歩により、多くの認知症が鑑別でき、 それぞれの治療法が選択できるようになりました。正確な診断が、良好な治療効果 への第一歩です。今回は、ガイドラインでも推奨されているそれぞれの評価方法・診 断方法について説明します。

第5回「認知症の検査」

認知症治療の今を知る 参考資料) ●認知症疾患 治療ガイドライン 2010. 監修:日本神経学会 医学書院 ●認知症診療の進め方 ―その基本と実践― 編著:長谷川和夫 永井書店 ●別冊 NHK きょうの健康 認知症 総監修:山田正仁 NHK出版 

主なテストとして、Mini-Mental State Examination(MMSE)と長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)があり、 全般的なスクリーニング検査ができます。診断には、これら言語性のテストに加え、非言語性(動作性)のテストを組み合わせ て判断することが推奨されています。 視空間認知だけでなく、注意・実行機能も検査することができます。 「この紙の上に、紙の大きさに見合った大きさの丸時計の絵を描いて ください。数字も全部書いて、10時10分になるように描いてください」 と、口頭で指示します。

記憶障害、失語、失行、失認、遂行機能障害など認知機能を調べます

●言語性スクリーニングテスト

●非言語性テスト(空間認識機能をチェックする)

設問

MMSE

:設問数11、30点満点で23点以下は認知症の疑い。 質問内容 回答 得点 合計得点(30点満点)

認知機能テスト

血算、血沈、一般生化学(肝機能、腎機能、電解質など)、血糖、アンモニア、甲状腺ホルモン、ビタミン B1・B12、梅毒血清反応の検査項目が推奨されます。

血液検査で、ビタミン B

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欠乏症、甲状腺機能低下症などを鑑別、脳脊髄液検査で、

慢性髄膜炎の鑑別、アルツハイマー病早期診断などを行います

測定項目 一般血液検査 薬物血中濃度測定 各種ウイルス、抗体検査 鑑別疾患 甲状腺機能低下症、肝性脳症、糖尿病性昏睡、低ナトリウム血症 薬剤性脳症、重金属、抗不安薬、睡眠導入薬、有機化合物中毒 など 進行性多巣性白質脳症(PML)、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、進行性風疹全脳炎、AIDS脳症 など

血液検査・脳脊髄液検査

「形態画像」で脳の萎縮を、「機能画像」で脳血流や働きを調べます

画像検査

年 曜日 月 日 病院 県 市 階 地方 今年は何年ですか? 今の季節は何ですか? 今日は何曜日ですか? 今日は何月何日ですか? この病院の名前は何ですか? ここは何県ですか? ここは何市ですか? ここは何階ですか? ここは何地方ですか? 物品名3個(桜、猫、電車) 検者は物の名前を1秒間に1個ずつ言う。 その後、被験者に繰り返させる。正答1個 につき1点を与える。3個全て言うまで繰り 返す(6回まで)。 何回繰り返したかを記せ(  )回 100から順に7を引く(5回まで)。 設問3で提示した物品名を再度復唱させる (時計を見せながら)これは何ですか? (鉛筆を見せながら)これは何ですか? 次の文章を繰り返す 「みんなで、力を合わせて 綱を 引きます」 (3段階の命令) 「右手にこの紙を持ってください」 「それを半分に折りたたんでください」 「それを私に渡してください」 (次の文章を読んで、その指示に従ってください) 「右手をあげなさい」 (何か文章を書いてください) (次の図形を書いてください) 1(5点) 2(5点) 3(3点) 4(5点) 5(3点) 6(2点) 7(1点) 8(3点) 9(1点) 10(1点) 11(1点) 設問

HDS-R

:設問数9、30点満点で20点以下は認知症の疑い。 質問内容 配点 記入 針概念の忘却(67歳 女性 アルツハイマー病) キツネ ハト 1 お歳はいくつですか?(2年までの誤差は正解) 今日は何年の何月何日ですか? 何曜日ですか? (年、月、日、曜日が 正解でそれぞれ1点ずつ) 100から7を順番に引いてください。 (「100引く7は? それからまた7を引くと?」 と質問する。 最初の答えが不正解の場合は打ち切る) 2 3 4 5 6 7 8 9 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみて ください。 (自発的に回答があれば各2点。もし回答がない場 合以下のヒントを与え、正解であれば1点) a) 植物 b) 動物 c) 乗り物  これから5つの品物を見せます。それを隠します ので何があったか言ってください。 (時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に 無関係なもの) 知っている野菜の名前をできる だけ多く言ってください。 (答えた野菜の名前を右欄に記 入する。途中で詰まり、約10 秒間待っても出ない場合にはそ こで打ち切る) 0∼5=0点、6=1点、7=2点、 8=3点、9=4点、10=5点 私がこれから言う数字を逆から言ってく ださい。 (6−8−2、3−5−2−9を逆に言っても らう。3桁逆唱に失敗したら打ち切る) 私たちが今いるところはどこですか? (自発的にできれば2点 5秒おいて、家ですか? 病院ですか? 施設ですか? の中から正しい選択 をすれば1点) これから言う3つの言葉を言ってみてください。あと でまた聞きますのでよく覚えておいてください。 (以下の系列のいずれか1つで、採用した系列に ○印をつけておく) 1:a) 桜 b) 猫 c) 電車  2:a) 梅 b) 犬 c) 自転車

時計描画テスト

(the Clock Drawing Test:CDT)

1.テストをする相手と向かい合って座る。 2.「私の手をよく見て同じ形を作ってください」と一度だけ言う。 3.影絵のキツネの形を10秒間見せて真似をしてもらう。 4.影絵のハトの形を10秒間見せて真似をしてもらう。

キツネ・ハト模倣テスト

年 月 日 曜日 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1 2 3 4 5 0 1 2 3 4 5 a: 0 1 2 b: 0 1 2 c: 0 1 2 0 1 0 1 0 1 2 (93) (86) 2-8-6 9-2-5-3

血液検査

脳の萎縮・血腫・腫瘍などを観察する。CT、MRI

形態画像

脳血流、脳の糖代謝の状態を観察する。 脳血流 SPECT(単一フォトン断層撮影)、PET(ポジトロン断層撮影)・FDG-PET(フルオロデオキシグルコース -PET)・アミロイド PET

機能画像

● 慢性の髄膜炎など頭蓋内疾患の鑑別診断 ● クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の補助診断   髄液14-3-3タンパクの出現 ● アルツハイマー病の早期診断のバイオマーカーとしてMCI診断にも有用   脳脊髄液中のAβ(アミロイド・ベータ)1-42の低下とタウの上昇

脳脊髄液検査(CSF)

認知症診療の進め方 ―その基本と実践― p24 11

(12)

12

紐解き 認知症研究

∼研究論文ピックアップ∼

前号の「降圧治療は認知症の予防に役立つか」のコラムで、高血 圧治療薬の投与が認知症予防に有効であることを示唆する3つの 研究を紹介した。簡単におさらいすると、カルシウム拮抗薬、中枢神 経作用型のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテン シンⅡ受容体拮抗薬(ARB)による降圧治療で、認知症の発症が抑え られたという報告であった。今回は、中枢神経作用型ACE阻害薬の 一つが、逆にアルツハイマー病を促進する可能性があるという興味 深い報告があったので紹介する。 アルツハイマー病の患者の脳ではAβ(アミロイド・ベータ)とい うタンパク質の沈着が起こっており、Aβ沈着がアルツハイマー病発 症に関わっていると言われている。このAβにはAβ40とAβ42など 異なるタイプが知られており、このうちAβ42は凝集性が高く脳内で 早いうちに沈着し他のAβの凝集を引き起こす核となると考えられ ている。わが国の国立長寿医療センターアルツハイマー病研究部の Zouらは、ACEがAβ42からAβ40への変換を媒介することをマウス とヒトの脳を用いて明らかにした。また、アルツハイマー病モデルマ ウスに中枢神経作用型 ACE 阻害薬の一つであるカプトプリルを投 与すると、Aβ42 の沈着が促進されることを発見した。このことから ACE 活性を上昇させることが新しいアルツハイマー病治療戦略に な る 可 能 性 が あ る と 論 じ て い る(Zou K et al., , 2007;27:8628-8635)。

一方、前号で紹介した米国Wake Forest University のSinkらの 高血圧患者1,054名を対象とした研究では、中枢神経作用型ACE阻 害薬は認知症の発生を65%減少させたと報告している(Sink M et al., , 2009;169: 1195‒1202)。つまり認知症予防に は、Zouらは「ACE活性の上昇が有効」、Sinkらは「ACE阻害が有効」と いう相反する結論を提示したのだ。Sinkらは考察のなかでZouらの 研究との違いについて触れ、ランダム化比較試験による検証の必要 性を述べている。 Zouらはその後、Aβ42からAβ40への変換メカニズムを詳細に 調査し、血圧に影響を与える本来のACE活性とAβ42の変換作用が ACEタンパク質内の異なるドメインに存在することを突き止めた。こ のことより、Aβ42の変換作用に影響を与えずACE活性だけ阻害す る薬をデザインできる可能性を示唆している(Zou K et al., , 2009; 284: 31914‒31920)。  「降圧治療は認知症の予防に役立つか」の問いに対しては、前号 では「降圧治療薬は予防に有効だが、種類による」という解答が示 唆された。また、今回紹介したZouらとSinkらの結果のように、中枢 神経作用型ACE阻害薬では相反する結果が出ている。以上から、「降 圧治療薬=認知症予防に有効」と、安易に認識せず、各治療薬の最 新のエビデンスを追うことが重要であろう。 また、Zouらが提示する「Aβ42の変換作用に影響を与えずACE活 性だけ阻害する」新しい降圧治療薬の開発も期待される。

「降圧治療は認知症の予防に役立つか 2」

編集:株式会社エム・シー・アンド・ピー 〒530-0005 大阪市北区中之島 2-2-2 大阪中之島ビル 12F 06-4706-3315 www.mcp.co.jp 発行 2011年8月作成 RVT-SP05 編集主幹 井原 康夫・同志社大学生命医科学部医生命システム学科教授 編集委員(五十音順) 池田 学・熊本大学大学院生命科学研究部脳機能病態学分野(神経精神科)教授 宇高 不可思・財団法人住友病院副院長 東海林 幹夫・弘前大学大学院医学研究科脳神経内科学講座教授 武田 雅俊・大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室教授 編集委員

参照

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