1. 日本経済の 2012 年を振り返る 1.1 国内景気動向〜年前半は改善するも、後 半は後退局面へ〜 2012年は欧州債務危機問題の再燃、電力不足 に伴う節電要請、中国経済の成長鈍化、米国に おける財政の崖問題など、国内外で経済に悪影 響をもたらす出来事が多く見られた(本稿末資 料参照)。その中で、日本国内の景気動向は、 どのように推移したのか。ここでは、日本銀行 が企業の景況感調査として実施している日銀短 観調査を参考に考察を行う。 2012 年の国内景気動向は前半と後半で明暗 分かれる 2011年3月の東日本大震災を受けて、大きく 落ち込んだ日銀短観DIは、その後12年4 〜 6月 期まで4期連続で改善を見せた。ところが、7 〜 9月期に入ると、日銀短観DIは下降し始め、 13年1 〜 3月期の見通しを含めると、ピーク時 より20ポイント近い下降となった。 このように、国内景気動向は2012年前半ま で、11年4 〜 6月期から続く持ち直し基調にあ ったが、12年後半には、後退・悪化の局面に転 じたといえる。次節では、この局面変化に至っ た原因について考察を行う。 1.2 2012 年の前半・後半でどのような変化 が起きたのか 景気動向指数とは 2012年における景気の局面変化を考察するた めに、ここでは景気動向指数(内閣府)を活用す る。内閣府では、毎月、生産や雇用など様々な 経済活動での重要かつ景気に敏感な指標を統合 することで、景気動向指数を算出している。そ の中でも、鉱工業生産指数や商業販売額、有効 求人倍率などの指標を活用するCI一致指数 は、 景気にほぼ一致して動くことから、景気の基 調判断に活用される。そして、日銀短観DIが 2012年後半以降に下降し始めたように、CI一 致指数についても、12年3月に97.4と近年の最
高値となった後、下がり始めた。 前述の通り、CI一致指数は、生産や雇用な ど様々な経済指標を統合し算出されている。そ のため、CI一致指数の上昇・下降にどの指標↗ 自動車、家電製品などの耐久消費財生産の低迷 が景気後退の主要因 表2からも分かる通り、CI一致指数の下降期 においては、有効求人倍率を除くほとんどの指 標がマイナス寄与となっている。中でも、耐 久消費財出荷指数、所定外労働時間指数(全産 業)、大口電力使用量、鉱工業生産指数のマイ ナス寄与度が大きくなっており、自動車や家電 製品などの耐久消費財を中心とする鉱工業生産 の低迷がCI一致指数の下降の大きな原因であ ると言える。↗ が寄与しているのかについても、内閣府は詳細 に発表している。表1は、各指標がCI一致指数 に対してプラスに寄与したのか、マイナスに寄 与したのかを示したものである。 国内外で鉱工業生産を落ち込ませる事象(超円 高、世界景気の減速など)が多発 2012年3月中旬に83円/ドル(東京外国為替市 場)台にあった円相場は、その後9月には77円/ ドル台の超円高水準となった。このような為替 状況に加え、夏には厳しい節電要請が製造業の 現場を直撃し、年後半には欧州、中国などの世 界景気の減速が深刻化した。さらに、国内の自 動車市場、住宅市場を下支えしてきた各種政策 効果も秋には剥落し、耐久消費財を中心とする 鉱工業生産には厳しい向かい風が吹き荒れた。 図 1 日銀短観から見る国内景気動向の推移 表 1 CI 一致指数に対する各経済指標の寄与度(2012 年) 1詳細は、(財)和歌山社会経済研究所 HP 内「景気動向について」(http://www.wsk.or.jp/report/daimon/03.html)参照 出所)日本銀行「短観」より筆者作成。 注 1)各指標の寄与度は速報段階での値 注 2)マイナス寄与のものは網掛け表示。 出所)内閣府「景気動向指数(速報)」より筆者作成。
建設業、商業がけん引し、県内景況感は年間通 じて持ち直し基調 2011年10 〜 12月 期 か ら2012年10 〜 12月 期 における自社景況BSI値の推移を業種別にみる と、建設業が15.9ポイント上昇、製造業が0.7ポ イント下降、商業が15.0ポイント上昇、サービ ス業が0.1ポイント下降となり、全体では6.3ポ イントの上昇となった。↗ このような状況下で、個人消費にも弱めの動き が見られるようになり、国内景況感は下降を続 けたと考えられる。 2. 和歌山県経済の 2012 年を振り返る 以上のような景気動向の推移が見られた国内 経済を背景に、和歌山県経済の2012年はどうだ ったのか。以下では、当研究所が実施している 景気動向調査に基づき、県内景況感の推移を報 告する。↗ 県内景況感の推移〜建設業、商業がけん引し、 県内景況感はやや持ち直し〜 2012年の県内景況感はどのように推移したの か。図2は、当研究所の景気動向調査における 県内景況感の推移を示したものである。 景気動向調査は、県内事業者1,000社を対象 にアンケート調査を四半期ごとに実施し、自社 の景況について「良い」「さほど良くない」「悪い」 のいずれかの回答を得ている。図中の自社景況 BSI値は、「良い」の回答割合から「悪い」の回答 割合を引いた数値である。 直近 5 年で最多の公共工事請負額を背景に建 設業は大きく改善 2012年において、最も自社景況BSI値を改善 させたのが、建設業である。12年は、台風12号 災害復旧工事の本格化に加え、南海トラフ大地 震を想定した防災・減災に関する公共事業、15 年の紀の国わかやま国体関連の公共工事などが 重なり、前年の1.5倍を超える公共工事請負額 となった(表2)。 図 2 和歌山県景況感の推移 表 2 和歌山県における公共工事請負額の推移(2007 ~ 12 年) 出所)(財)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」より筆者作成。 出所)西日本建設業保証株式会社 資料より筆者作成。
県内製造業の景況感は横ばいで推移するも、売 上・収益は減少傾向 2012年において、自社景況BSI値は横ばいで 推移した製造業であるが、売上・収益は減少傾 向にある。この傾向は、県内の鉱工業生産指数 をみた図3にも表れている。県内鉱工業生産↗ 県内商業の景況感は 15 ポイント改善 年前半は、エコカー補助金等の効果もあり、自 動車販売業で景況感の改善が見られた。また、 卸売業では、コンクリートや鋼材などの建築材料 を取り扱う事業者で景況感が改善している。↗ 指数は3月以降下降を続け、12年11月の生産指 数は、11年平均と比べて10ポイント以上の下降 となった。業種別にみても、11年平均を12年11 月段階で上回った業種は、化学と食料品のみと なっており、繊維で18.2、機械で17.4、鉄鋼で 17.3ポイントの下降となった。 県内個人消費に底堅さ 和歌山県における大型小売店販売額、新車登 録台数、新設住宅着工戸数などにおいて、2012 年合計が、10年合計、11年合計を上回る水準と なるなど、個人消費の底堅さが見られた(表3)。 台風災害からの持ち直しが進む県内旅館・ホテ ル業 県内サービス業に関しては、不動産業、運 輸・通信業で大きな改善は見られなかったも↗ のの、2011年の台風災害からの復旧が期待され る県内旅館・ホテル業では、持ち直しの動きが 見られた。また、和歌山県観光振興課は、12年 度年末年始における主要観光地の観光客入込状 図 3 和歌山県鉱工業生産指数の推移 表 3 和歌山県における大型小売店販売額・新車登録台数・新設住宅着工戸数の推移 出所)和歌山県調査統計課「和歌山県鉱工業生産指数」より筆者作成。 出所)経済産業省「商業動態統計調査」、国土交通省「建築着工統計調査報告」、 一般社団法人日本自動車販売協会連合会和歌山支部資料より筆者作成。
況について、「曜日配列が良く、長期休暇がと れる日程であったため、3日に宿泊される観光 客の増加が反映し、ほとんどの主要観光地で前 年比、前々年比とも宿泊客・日帰客が増加した」 と発表しており、統計上でも県内旅館・ホテル 業の持ち直しが表れている。 3. おわりに 2012年後半以降、製造業を中心に景気後退局 面へと転換した日本経済において、和歌山県内 景況感は、製造業・サービス業に弱めの動きが 見られるも、建設業・商業が持ち直しを持続し、 全体では東日本大震災以前の水準を上回るまで に回復した。 2013 年は県内事業者にとって好材料多し 2013年は、1月より実施されている復興特別 所得税や、4月に予定されている電気料金の値 上げなど、家計や県内事業者にとって、負担増 となりうる事象が控える一方で、大型補正予算 の執行、公共事業費の増額が盛り込まれた13年 度予算案、進む円高修正など、県内事業者にと って好材料も多くみられる。改善、回復が続く 建設業、商業はもちろんのこと、これらの産業 がけん引する中で、横ばい推移となっている製 造業、サービス業も持ち直し基調となることが 期待される。