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リグニンスルホン酸からの菌体生産 I. 酢酸資化性菌の分離と培養-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学虚学部学術報告 第32巻 第2号141”146,1981

リグニンスルホン酸からの菌体生産

Ⅰ.酢酸資化性菌の分離と培養

桑原 正章,鍵村 達夫,村木 周作

PRODUCTION OF MICROBIAL CELLS FROM

LIGNOSULFONATE

IIsolation and cultivation of acetate・aSSimilating

microorganisms

MasaakiKuwAHARA,Tatsuo KAGIMURAand Shusaku MuRAKI

Acetate−aSSimilatlngOrganismswereisolatedfiomsoilsamplesbyanenrichmentculturetechnique Eachorganism

wasculturedinamediumsupplementedwithNa−aCetateaSaCarbonsourceinconcentrationsofO25−80%FLmax

ofyeaststrainsA60l,A1603andA4404were calculatedtobeO25,039andOl23hrql,reSpeCtivelyAGram−

positiverod,A2904assimilated80%acetateandthemaximalgrowthwasobtaincdin40%acetate;grOWthofcell

was89basedonabsorbanceat600nmFLmaxOfthisbacteriumwasO22hr十 ContinuousculturesofA4404and

A2904wereexaminedusingachemostat 酢酸資化性酵母および細菌を土壌中より分離した‖ 刑包子酵母と考えられる蔚株A601,A1603,およびA4404の 最大増殖速度係数〃Ⅰ爪乱Ⅹは・フラスコ培養において,それぞれ025,039,および0‖23hI ̄1となったグラム陽性梓菌 A2904は酢酸ナトリウム8%まで生育を示し,〃m乱Ⅹは022hI ̄1であり,2日間培養で生育度89(吸光度)に達し た連続培養条件においてはA4404では〃m仇Xは014hI ̄1,収盈係数は0078(平均)とをり,A2904では〃m乱Ⅹは 0‖36hI ̄1,収盈係数は0325(平均)となった 緒 ロ リダニンは光合成産物のうちセルロ・−・スに次いで大恩に生産される植物体構成成分であるKiIkの試算によれば, リグニンの年間生産盈は200倍トンに達し,(1)資源的な重要性が指摘される1かe乃0び0に合成されるリグニンととも に,産業廃棄物として未利用のままのリグニンの有効利用を計ることば重要と考えられる本研究はリグニンを微生 物的な手段により有用な物質に変換することを目的とする研究の−・環として行をっているい リグニンはフユニルプロパノールの重合体で,一・般に生物的を作用を受け難く,これが微生物的利用を防げる一・因 とをっている このためまず化学的処理によりリグニンを微生物作用を受けやすい構造に変えた後,微生物による利 用を行なう方式が考えられる酸化剤としてオヅンはリグニンの芳香環を攻撃してリグニンを低分子イヒし,種々の分 子最の分解中間体のほか,酢酸,マレイン酸,シュウ酸,ムコン酸をどの低分子脂肪酸の混合物を生成する‖(28)本 研究はオゾン処理したリグニンスルホン酸を培養原料とし,微生物菌体をはじめ種々の物質を生産することを最終目 的とする本報はまずオヅン分解物中に存在する酢酸に注目し,酢酸資化性菌の生育と培養工学的を性質について予 備的に検討した結果について述べる 実 験 方 法 培養 酢酸資化性菌の分離と培養には,110%酢酸ナトリウム(3水塩)(酢酸として0.44%),0小3%(NH4)9SO4,

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香川大学農学部学術報告 第32巻 第2号(1981) 142 0.1%KH2PO4,0.05%MgSO。・7H20,0.0005%FeSO4・7H20,0.001%酵母エキスからなるpH6・2(酵母用)およぴ 7.5(細菌用)の培地を用いた.また,これに2%塞天を加えたものを固体培地に用いた.回分培養は培地6mJを含 む18mm試験管中および100mJを含む5001nJ三角フラスコ中で,280C,振とう培養条件下で行をった.連続培養 にはNewBrunswickScienti6c社製ケモスクット連続培養装置C−3〔棲旦を用いた 培養液の菌体生育度は600nn一における吸光度により測定し,別に作成した菌体重量と吸光度との関係を示す検量 扱から乾燥菌体重故を算出した. 定盈 培養液中の酢酸ほガスクロマトグラフィーにより定紋した.まず培養液の遠心分離上記液に約1/4亀の

Dowex50×4〔H+〕を加えて酢酸を遊離埋とし,FIDを付置した日立ガスクロマトグラフ163型により次の条件で分

析した.カラム,TenaxGC(ガラスカラム,3mmxlm);カラム温度,1100C;インジェクションポートおよび検 出器温度,1700C;キャリアガス,N2(40mJ/min) 実 験 結 果 1.酢酸資化性酵母および細菌の分離 土壌試料より集積培養により酢酸資化性菌を多数分離したが,このうち良好な生育が認められた酵母A601,A 1603,A4404および細菌A2904の4蘭株を主として実験に用いた 酵母A601,A1603はスライド培養において菌糸および擬蘭糸を形成した(Fig∴トA,トB).また,振とう培養で は卵形,円筒形,棍棒形乳様々の形態を示した(Fig・2−A,2▼B).これらの形態的特徴は両株が罰一言cゐ0ゆOrO乃,G∽− Fig.1.Photomicl・OgraPhsorslidcculturesofacctate−aSSimilatingyeasts,A601(A),A1603(B)andA 4404■(C). Fig.2.Photomicrogl・aPhsoracetatc−aSSimi1atingyeasts,A601(A),A1603(B)andA4404(C) growninliquidmcdiumundcrshakingcondition・

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桑原正章,鍵村達夫,村木周作 リグニンスルホン酸からの菌体生産 143 dオdα,7もr〟J坤∫f∫など無胞子酵母に属することを示している.ま た,A4404では明確な菌糸あるいほ擬菌糸の形成ほ認められず (Fig.トC),振とう培養においては前2株と比べ小型の卵形ある いは紡垂形の細胞を形成した(Fig.2−C).この薗については形態 からの分類上の位置は推測できなかったが,非発酵性酵母に儲す ると考えられる. 一方,細菌A2904はグラム染色陽性,非運動性であり,Fig.3 に示すように0.5∼0.7/∠mXl.0∼1.3/‘111の大童さを持つ梓簡で あったが,同定には至っていない. 2.酢酵培地における酵母の生育 Fig・3・Electronmicrogl・aphofacetate− assimilatlngbacteriumA2904・. 酵母A601,A1603,A4404は窒素源として(NH4)2SO4やNH4NOaなどの無機態窒素を利用し,(NH4)2SO。の場 合0.25∼0.5%添加で生育は最も良好であった.また,初発培益液pH5∼7,リン酸カリウム(KH2PO4+K2HPO4) 0.1∼0.2%で最もよく生育した.次いで酢酸ナトリウム濃度を0.25∼8.0%と変化させ,増殖速度への影響を検討し た.試験管振とう培養においてはFig.4に示すように,A601は4.0%まで生育し,グラフから算出した最大生育速 度係数〃m牲Xは0.2211r ̄1であった.A1603は他の菌株と異り高濃度の酢酸ナトリウムに耐性で,8.0%まで生育で き,〃m∼ばば0.18hr ̄1であった.A4404は2.0%で最もよく生育し,〃Ⅲ11Ⅹほ0.22hr…1であった.3日間培養後の 吸光度で測定した生育皮は,A601では4.0%において1.9,A1603では8.0%で1.3,A4404では4.0%において2.5 であった. フラスコ特番においてはFig.5に示すように,〃m几Ⅹは試験管培養に比べて大となり,A601,A1603,A4404につ いてそれぞれ0.25,0.39,0.23hr ̄1とをった.また,この培養においては,基質消費畳に対する菌体増加盈の関係を示 すAズー』ぶ直線はFig.6に示すようになり,この直線の傾斜から算出された収盈係数y(=』Ⅹ/』ぶ)はA601,A 08 . 1〇 ︵EU00∽ ︸巾 むUU巾qLOSq吋︶エ︸主OLり 0 10 20 30 40

lTime(h。UrS)

10 20 30 0 10 20 30 Fig・4・Efrcctol’acetateconccnLrationongro、へ′thorA601(A),A1603(B)andA4404(C). Mcdiumcontaincdindicated amountorNa−aCCtate,0・3%(NH4)2SO4,0・l%KH2PO4,0.05%MgSO4・ 7HBO,0,0005%FcSO。・7H20,0.001%yeast cxtract(pH6.2)・An aliquot ofthe cellsuspcnsion wasin− OCulatcdinto6mlof’mediumina16・5−mmteSttubc・Culturcwasat280CwithrecIPrOCalshaking・

SYmboIs:−一一○−−−,0.25%; …○−,1.0%; 【 ○…,2.0%; −−−○−−−,4.0ワも;

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香川大学農学部学術報告 第32巻 第2号(19飢) 144 10 08 05 03 ︵∈u00り l可むUU巾qLOSq﹄二享き26 1 2 0 0 1 2 3 ′4 O OO ︵u ︵一∈、ひ∈︶PむU⊃POLd 〓むU︰×勺 Start : : 10 hours Tjme :ニ Fig5GrowthofA601(A),A1603(B)andA 4404(C) Eachstrainwas culturedinlOOmlof mediumin a500−mlnask with rotary shaking.FLmax Were Calculated to be O25,039and O23hr−1fbr A601,A

1603andA4404,reSPCぐtively 0 10 20

AS:Aceticacid consumed(mg/mL) Fig.6h AX−AScurvesofA601(A),A1603(B)

andA4404(C)

Yield coe伍cients(Y)werecalculated tobeO15,020and O”25fbr A 601,A 1603andA4404,reSpeCtively 1603,A4404に対し,それぞれ015,020,025とをっ た 3.酢酸培地における細菌の生育 細菌A2904を酵母の場合と同様,種々の濃度の酢酸 ナトリウムを含む培地で振とう培養した(Fig..7)こ の菌株は025∼80%に生育し,〃m払Ⅹは022hT ̄1で あった また,40%2日間の培養で生育は吸光度89に 達した これは,5mg/mJの菌体収盈に相当するこの 菌株は80%でも約24時間のlogの生育を開始した 4.連続培養 ケモスクット型連続培養装置を用いて酢酸からの酵母 A4404および細菌A2904の菌体生産を試みたまた, 定常状態における各菌株の生育のパラメーターを静出し, 生育のそれぞれの特性について考察したなお,培養液 0 0 8 5 2 10 0 ︵∈u00¢

1 5 0 00

むUu巾qLOSq巾︶エlきO﹂ロ 10 20 30 Time(hours)

Fig7E拝もctofacetate concentration on growth ofA2904

Compositionofmediumwasthesameas

thatfbryeastexceptthatpHwasaqjusted

to75 Symbo】sarethesameasinFig・4 FLJnaXWaSCalculatedtobeO22hrl ̄1

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桑原正章,鍵村達夫,村木周作:リグニンスルホン酸からの菌体生産 Tablel.GrowthparametersofstrainsA440年andA2904incontinuousculture 145 y (打′) β ズゆ S。。 (hr ̄1) (mg/mg) (mg/mJ) 5 0 0 0 1▲ 2 0 0 0 032 0.48 019 210 wash−Out 3:二3;冒‡ ol14 0・84 5 0 1 5 0 ﹂ 2 2 0 0 0 0 1い52 O :3 128 022 106 0′79 wasb・Out 0・58

…………‡036

Abbreviations:D,dilution rate;X呵CCllconcentration at stcady state;S00,aCetic acid conccntration

atsteadystatc;Y,CClllyicldcoefhcient;FLm乱Ⅹ,maXimalgrowthrateconstant;Ks,aCeticacidconcentration

W王1icilgivesβm乱Ⅹ/2

Culturecondition:fhmCntOr VOlume,350ml;aeration,lい51Imin;agitation,500rpm‖ Mcdium:l‖0% Na−aCCtate(044%as acetic acid),03%(NH4)2SO4,01l% KH2PO4,O101% MgSO4∴7H90,00005% FeSO47HBO,0.001%yeastextractThepHoftheculturewascontrolledautomaticallyat6.2fbrA44040r 7.5fbrA2904withlONHClorl・ONNaOH,reSpeCtivcly 中の菌体汲度および残存基賀盈が一L定借を保った時,定常状態に達したものと判定した,さらに溶存酸素盈(DO)が 一・定借を示すことも定常状態の目安とした実験より得られた各パラメ・−タ・−・はTabl占1にまとめた まず酵母A4404について,希釈率(D)を0.05hr ̄1として培地を連続的にフィ1−・ドし,菌体浪度0.06mg/mlの 条件で培養を開始し,160時間後に定常状態を得たついで,希釈率0い10hr ̄1,菌体浪度0、10mg/mgの条件で培養を 行をい,12時間後に定常状態を得た、この2つの培蕃で得た定常状態での菌体濃度(&)と残存濃度(βつ の億を Monodの経験式から誘導された定常解を与える式 (1) (5ァ:制限基質濃度,044mg/ml) (2) (私:〃mほ/2を与える基質濃度) に代人した.まず,(1)式より,か=0、05(hI ̄1)の時y=0−079,か=0..1(hr ̄1)の噂y=0,.077が得られた、次いで (2)に各希釈率での£を代人し,連立方程式を解き,〃m乱Ⅹ=0.14(hI・ ̄1)および芯=084(mg/mZ)を得た −・方,A2904も同様に連続培養を行なった.希釈率005hI ̄1,初期菌体漉度0け50mg/mgで培養を開始し,25時間 後に定常状態が得られた.希釈率0‖1hI ̄1,菌体浪度1い52mg/mJでは29時間後に,また,希釈率0.21hIL ̄1,菌体濃度 ユ.鮎mg/m7では16時間後に定常状態が得られた,なお,0√√25h・ ̄1以上の希釈率では洗い出しの状潜とをった.これ らの値をそれぞれ(1)に代人し,yを静出し,平均値0325を得たまた,(2)に各値を代人し,〝m乱Ⅹ=0い3(hr ̄1) および&=058(mg/mZ)の倍が得られたこれらの数値は,生育速度,最大生育盈および菌体収率のいずれにおい ても,A2904はA4404などの酵母よりも優れていることを示している 考 察 酢酸を発酵原料とする物質’生産は,非糖質原料の利用の点から重要であり,生産物としては,微生物菌体やアミノ 酸その他の通常の糖からの発酵生産物が恩定されているL緒方ら(4)はα乃d去ゐ,乃d最α,比和ざβ乃〟ゎなどの各属に酢 酸資化性の菌株を報告したまた,パン酵母のある株にも酢酸資化能が示されている小(5)EdwaI・dsら(8)は(k乃dよゐ α蛾ゞを用い,酢酸に対する菌体増殖について検討し,〃m8Ⅹ:054hr・ ̄1の倍を得ているわれわれの得た値はこれよ りも低い−・方,細菌については励ぞぴまあαCおγよαク乃やCorッ乃βみαCおr・壷α∽屈の菌殊に酢酸資化能が認められ,グルタミ ン酸の生産が試みられている(7)本実験で得られたA2904はBrevibacleTiumやCbrynebacteT・iumの610nmで測定 した生育皮が0、8以下であるのに対し,より高い生育皮を示した。、分離した酵母,細菌いずれの菌株も,培養条件特 に良好を窒素源と栄養要素の選定により,増殖速度,菌体収盈ともに増加するものと考えられる

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香川大学農学部学術報告 第32巻 第2号(19飢) 146 樋口らによれば,リグニンスルホン酸をオ・ゾン分解すると酢酸5mMに相当する揮発酸が生成する.($〉リグニンか らの有機酸の生成苔積盈は有機酸の生成反応と分解反応の平衡状態に左右されると考えられ,音横盈の増加のための 条件が現在検討されている∫本紛では特に酢酸資化性菌について取り上げたが,マレイン酸標品自体に生育する菌株 も分離しているので,これらの菌株を併用して,リグニンスルホン酸あるいはそのオゾン分解物から菌体を生産する 方法を検討中である. 謝 辞 酢酸資化性菌の連続培養については金沢大学工学部化学工学教室沢田達郎教授にご助言をいただいた..また,電子 顕微鏡観察には本学徳田孝技官にご助力いただいたり 併せて謝意を表したい.本研究の一−・部には文部省科学研究助成 金(環境特別研究「根物廃棄物の有効利用に関する研究.)を用いた 文 (1)KIRK,T小K.:βわ毎よcαgかe友如絢αfよ0ナちWeyeI・− haeuseI・,p31(1976). (2)畠山兵衛,外岡塵穂,中野準三,右田仲彦:工化 71,96(1968) (3)HtGUCHT,T.:NtcTObio[qg)lJbT EIJ乙,iTOJJme71t aeaning,ed、K.ARIMA,P.550(1978) (4)緒方清一・,西川英郎,大杉匡弘:醗工,48,478 (1970). (5)松浦懐胎,高橋治男,真鍋 勝:醗工,53,258 献 (1975) (6)EDWARDS,VLH。,GoTTSCHALK,M.J.,Noo.JIN, AいY.,ⅠⅠⅠ,TuTHTLL,L.B.andTANNAHILL,A…L: βよbおC加g.βゐe7堵…,12,975(1970) (7)TsuNODA,T”,SHTIO,Ⅰ,.and MITSUGl,K.:]. Gβ乃‖4j坤J.ル独和あわ乙,7,18(1961) (1980年10月31日 受理)

参照

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