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わが国果樹園芸の発達と将来の動向-香川大学学術情報リポジトリ

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フ6 香川大学農学部学術報普 わが国果樹園芸の発達と将来の動向 (香川大学定年退官記念講演) 黒 上 泰 治

TaijiKuROXAMl

目 次 7 7 7 7 (1)拉 の 発 (2)貿 の 向 78 78 78 78 79 79 (3)国民1人当年果実?匡 (4)果実の輸出入鼠‥…」 (5)果実の単位面積当り (6)果実の需給 2.わが国果樹園芸の欠陥 (1)経営面精の零細性 (2)栽培技術の過集約 79 80 80 80 81 81 (3)外観的品貿の過座視 (4)栽培技術の非科学性 (5)計理的反省 (6)共同態勢の (7)米英の単位価格の高いこと 5,.わが国果樹園芸の将来の動向 818181 82 髭 82 82 鈷8584 糾84 85鮎鮎87 A..生 産 技 術 (1)種類の導入と品種の改善 (2)環境の改善 (3)災 害 防 除 (4)樹形と好走技術 (5)栄 養 (6)果樹の保艶聞過 (7)結 実 調 節 (8)採取及び処理 (9)作濃能率増進 B∴輸送及び貯蔵 C.流 通 過 程 Dい経 Eい果実の価格 4.結

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第10巻第2号(1959) フ7 1.わが国果樹園芸の発達 明治初年以降太平洋戦争勃発直前に至るまでのわが国果樹園芸の発達過程についてほ,既に多くの文献(ユ)(2)(3)(4)(6) に.依って解説されて居ります.これ等を要約しますと,明治以前に於て:は月本の果樹園芸業は数腿的にも,技術的に も見るべきものほ秘めて少なかったのでありますが,明治初年に至り勧業寮が欧米並に支那から果樹の俊良品種の苗 木を輸入し,広くわが国各地に配布し,これが栽培を勧奨したのを契機として,ニ,三の果樹の局地的生産の礎石が 据え付けられ,その後わが国文化経済の向上に伴なう果実詣要の増進と,果樹生産技術の飛雌的進展が行われ,昭和 1る(ノ17年頃にはわが壬別封園芸の哉金時代を築くことに成功したのであります.しかしながらこの状動は太平洋戦争の 勃発と共に脆くも崩壊し,終戦数年の後にほ.,乳質共に惨憺たる状態に.追い込まれたのでありますが,その後栽培 者の努力と,国力の・】次数とにより急速な進展を見るに至ったことは..誠軋喜ばしいことであります.次にこれを鼠, 賀両面から観察して見たいと思います. (1)放 の 発 達 わが国の主要果樹(みかん,準呆,葡萄,梨,桃,枇杷,莱,梅,柿の9種)の大正1∼5年の平均栽培蘭磁場9 万1千町歩やで,生産額は1億5千8百万買であったのでありますが,昭和化∼17年にほ面敲紅於て12カ明歩を超え, 生産額ほ5億5千万買に・達しているのであります・そ・の後昭和51年に至る14句欄に凝樹の栽培面積と生産額とは,罪 1医lに示すような消長を辿っているのであります. 界1図によりますとわが国の重 要果樹の栽培面机並に生産額は太 平洋戦争開始後急速に低下し,栽 培面租は昭和22年臥生産額は昭 和21年度に.滋低に達したのであり 第1図 わが国主要果樹の生産消長 (昭和て6,17両年度の数字を100とした場合の比数) ー_−・一一面.稽 Q._.__べ生産者艮

ますが,その後急速な増強の一途 比140

を辿り,昭和52年既にほ,昭和1る

∼17年に比し,面租において50 100

%,生産額において88%内外の増 数8D

加を見ており,この傾同ほ今後 dO 更に.強化され,上記9種を含む15 40 種の米樹ほ10年後(6)に」は現在の 20 1‖75倍の実需に応じ得る程度に.増 0 大されるものと.推定せられており ます.次に果樹の柾頬と生産の消 長との関係を知るため,昭和17年

1る171819 20 2122 25 24 25 2る 27 28 29 505152

年 皮(昭和) 備考:昭和52年皮は梅の面軋またほ生産額を除く 皮の数値を100として,昭和52年度のものを比数と.して計算して見ますと,次のような数値が得られるのであります. 第1表に.よりますと,生産額 が昭和17年既の5倍以上に∴増加 したものほ準弟,洋梨などであ り,5∼2倍の閲にあるものは 桃であり,2∼1倍のl粗にある ものは葡軌蜜柑,延焼,柿, 枇杷,桜桃,日本梨,釆などで あり,雑柑とネーーブル・オレン 男1表 果樹の種類による生産消長衣 (昭和17勾三度の数他を100とした場合昭和52年毘の比数)

両軍画面函可頑表面函完云

十・ミい・.・:・・・・

生産額 面 精 二;:12…; 三;…fl;喜 備考:生瞳額の比数の高いものから順に並べているu (1)Tomochicalkeda:Fruit CultureinJapan,Seibido,1907 (2)日本園芸研究会編:明治園芸史,甘木閲芸研究会,1915 し3)日本園芸中央会編:巨l本間芸発達史,軌倉二.棚f,1940 (一4)全国罠共学校長協会編纂:ヒl本農業発達史,罠業図お刊市会,1940 5三:のにる ()木泰治本邦果樹園芸進歩関す展望,農業と経済る(1,2) 算 この中には釆の栽培面鋸を欠いでいる… (6J園芸自沓,農林省,昭和33年1⊥月29日発表

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香川大学農学部学術報告 フ8 ヂのみは1倍以下で昭和17年度に㌧比し減少していることが示されており,面積では2倍以上のものが柿,桃,葡萄な どであり,2∼1倍のものが平果,夏橙,釆,日本梨,枇杷,蜜柑,雑柑などであり,桜桃と洋梨とは1倍以下でそ の面私を滅しているのであります. (2)貿 の 向 上 果実の品貿の向上ほ明治以前は勿論,明治,大正期に比べて現在甚だ顕著であります.桃の如き明治以前にほ小形 で果肉の硬いものが殆んど全部を占め,明治,大正に入りまして:も,天津,その他品質劣等のものが相当多く市販さ れて:いたのでありますが,現在では,草生,中生,晩生を通じて多くの優良品種が官庁及び民間に於て育成せられ, その中倉方早生,砂子早生,白胤箕島白桃,高陽白桃,神玉,白桃などほ,外観またほ品貿に於て群を抜いてお り,最近賞肉の伍桃にも農林2号,5号,12号,14号, 明星など,外国産の品種湛比べて遜色を見ないものが,既に・ 実際生産の域に入っているのであります・・華果,柑橘,柿,梨,葡萄\栗,枇杷,その他に於ても同様であり,わが 国果樹の品撃iの向上についてほ,欧米各国に比しきわめて顕著なものがあるのであります∧ この事ほ果樹育種事業の 発達と,栽培技彿の向上とに依るものでありまして,わが国光夫の外観品質の勝れているこ.とほ,世界においても最 右翼の系列に入る資格があるものと云うことが出来るのであります.・ (3)国民−=人当年果実消費量 日本人1人当りの年果実消費量ほ陀周12年に.は17.9kgぐらいであったものが,終戦の年にほはば半分に減ってお り,その後再び増加して昭和51年度にほ19..7kg内外に増加しております・しかし博罪の主要文l州司に比べると,果実 の消費鼠は甚だ少く,昭和7∼11年間の一担朋の主要国の勾三平均1人当り果実消夏聖昆を比較しましても,米国の8る一2kg, 独乙58.1kg,英国の55けるkgに調し,日本はわずかに.て5・7kgであ′つたのであります・勿論このこと.は便男各国の食生活 の内容により著しく影響を被むるものでありまして,わが国ほ疏某な副愈として,比校的豊富に擬取する関係上,ビ タミンCや鉱物成タブの補給の上に果実に依存する捏度は欧米に比しやや掩いものと.も云えますが,跳莞の調理法,収 穫後乃至貯蔵中の不完全な管理法によるそれ等の栄養裁の損壊率,それ等の生産物の供給の季節的不均等なとの点を 考慮します・と.,日本人町阻実消費掻ほ国旧ガ慄養の上から見て決して充分なものであるとほ云えないのであります… 特に蜜柑,準果などの消費昆は世才銅こ於ける妓大泊矧≡凱例えば華果ではデンマーク,1甘独乙,スウェーデンなどの 1/5∼1/d,柑橘では北アメリカ,アルゼンチン,メキンコなとのリム∼1/5にしか当っていないことを考えますと.,わ が国民1人当年果実消費嵐ほ今後さらに増加する必盤があることな認めざるを得ないのであります・・ (4)果実の輸出入競 わが国の当主実の輸出入一道は太平洋戦争の前後により著しく変貌して参りまし■たが,駁近にほ柑橘な黄体として著し く輸出超過の状勢を現しております.最近の統計表によりますと.,果実の輸出入昆ほ儲2衷の通りであります」・ 罪2表わが国果実の■納脚三脚命出入鶴 男2泰によりますと,果 (単位100万円) 実の輸出入差引金額は4る億 一 一 夏量 5千8百万円の出超になっ 蜜柑1軍凋ミ 梨 L莞奈】レモンバナナヨ 粟 ているのでありまして,こ 7109 れをわが国輸出の大宗であ 2451 る生糸の150億4千占百万 −−【一 円に対し約1/5をこ当ってい 輸 出 輸 入 ノ0 5 5 さ 9 774 るのでありまして,今後も蜜柑の生私仕i詰等町輸出の躍進と,桃なと■の缶詰の海外市場に倒する進出を考えると, 果実に.よる外貨の損得ほある程度の期待を持ち得るものがあろうと.考え.られるのであります∪ (5)果実の単相■血租当り生慮混 嘗て私ほわが国主要果樹に属する柑橘,梨,升果,葡萄,桜桃の5穫につきまして大正元年から5年隔てに昭和1D 年に至る25年間の灰当平均収量の消長について計印したことがありますが,上記5種の黒磯の平均数佃ほ大正元年を 100としますと,大正7年92,大正10年112,椚和元句185,昭和5年202,職札10年225となっており,このり4世紀の 間に約2倍の増加値煽ているのであります‖勿論果樹の姓産面私儀に生産機に関する統計表の数値の信頼度ほ相当低 いものであり,その上果実の反当牲渾触ま隔年紆乳附こより著しく歪められる矧輪の多いものではありますが,果樹 の反当収星ほ種類及び品種の導入,優良品種の育成,適地適作力災の俣透,栽培技術相に果樹園管理の改普と病害虫 防除法の進歩等により,栄樹の生産力の向上に著しい克夢響を与えていることは,明らかな事実であります・特に最近

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欝10巻第2号(1959) 79 に於て果樹の反当収量ほ著しく向」二しており,和梨,蜜柑等に於て10ア−ル当り7…5噸(反当2,000賃)を挙げること も可能であることが立証ゼられ,他の果樹に於ても10アール当り5.8噸(反当1刀00買)を挙げることほ左程困難でな いことを考えますと,わが国栄樹の単位面槌当り生産力の向上が如何に顕著に向上しているかを知ることが出来るの であります. (6)果 実 の 需 給 わが国の果樹の鎮座二宗は,昭和17年度に15る万噸であったものが,昭和52年既にほ254万噸に増加しており,現在果 樹の新棉の状況から考えると10年後(1)には595フ弼主の推定需要を充たして余りある程度に達すること.が予想せられて おります.この数昼を円滑に消費するためには,国民一人当年消費昆の増加と,加二Ⅰ二及び貯蔵により消費の調節を図 ること.に努力するは勿論,海外需要の開拓増進を力強く推進するこ.とが必要であり,−L方生産費の低下と経営の合理 化により,果実の単位価格の低下に備えなくてほならないことは云うまでもないのであります“なお荷造要望,輸送 塑,市場及び仲冒<の手数料を減じ,庭先価格と小売価格の差を極力狭めること.が必要であり,それ等を綜合実施す ることにより,果実の需給関係をより円滑に進めること.が出来るのであります. 2‖ わが国果樹園芸の欠陥 わが国の果樹閉芸ほ上に.述べましたように過去1世紀に足らぬ短期間に急速な発展を見たのでありますが,その内 容について仔細に検討して見ますと,若干の基本的な欠陥を包蔵していることが判るのであります.次にその中の雷 雲なニ,三の間道億解明して見たいと思います. (1)経習両横の零細僅 わが国の果樹園ほノ専業のものがきわめて偶少でありまして,その大部分ほ副業と.して経営せられて−いるのでありま す1従って経営面桔別の農家戸数を調査したもの軋よりますと,第5表のようになります 第5表・−・戸当り栽培而積の広さ別農家戸数 (昭和25年2月現在)

二度二姓巨三重臣表芸証亘匝■霜

戸 数 比 率 (%) 97,980 100 5,4占0 515 即ちわが国の1戸当り栄枯開面積ほ川丁歩以下のものが全戸数の54%であり,1∼2町のもの5占%,2町以上のも のほわずかに残りの10%を占めている紅過ぎないのであります,また(2)同じ昭和25年の農業センサスによる神奈川 県,外12府県∴75市Itl]村の合計58,488戸の平均柑橘閲栽培両石一汁ま2リ8∫交碁であり,その中1町歩以下のものが全戸数 の‘75%,1∼2町のものが24%,2町歩以上のものほわずか紅5%であります.また柑橘専業地掛で未結果構及び5 畝以下のものを除いて計算すると,神奈川県片浦,静岡県西浦,愛媛県立間,熊本県小天等でほ5∼て5反歩を経営す る畏家の階層が48∼る5%を占めており,広島慣大鳥の完全巧業地でも1町以下の階層が79%であ.ったが,これにほ県 外他町村濫対する山作が除かれています小 また愛媛県享けくの柑橘専業地■ご;j:でほ5反以下の経鞘ヨ数は8d%を占めてい るのであります・而も以上の各栽培地を通じて1竺f!;の面鵜が小さくて,平均て5反に過ぎず,柑橘業者ほ5∼川個所 にその経営する関が分散するため,言桐毎設の建造紅よる経禦が増大し,作業能率ほ著しく低下する状態に追い込まれ ているのでありますけ 以上ほノ柑橘を例としてわが国果樹開芸の経甘面桁の零細性を示したものでありますが,他の果 樹に於ても全く同様であり∴軋捉病害虫防塵,荷造班荷等の面で英同経営を行うものが相当増加してはいますが,こ れを全体の面精濫比べると九年の一・毛紅も如かない状態であり,このことがわが国果樹園芸の非能率と非科学性の重 要な原状はなつて−いることを見逃す訳にほ行かないのでありますh 〔2)栽培吸硝の週集約件 わが国の果樹閑がきわめて零細であるために,その栽培技術ほ遇慮準灘献で,磯械を中心とし,訪力的にほきわめ て糾放な緯デモな行っている米国と良い対照を示しているのであります、.一例を桃の成木の栽培に要する1ェ.−カー当 りの労力に.ついて−比較して見ますと,第4衷のような結果が得られるのでありますい (1)園芸白書,農林省,昭和55年11月29日発表 (2)高橋郁郎:柑橘,(第4次改著)養曹蓋→1958年

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香川大学農学部学術報告 果樹栽培に必要とす−る男力の中,日本でほ男定, 施肥,耕転除軋摘果,袋掛,死刑撒布,荷造選 別なとに特に多くの一男力を投入しているのに対 し,米国でほ男定,採収など人力を以てしなけれ ほどうにもならないものほ別と.して,能率の高い 機械力を全面的に利用して,作兼を手際よく推進 しておるのであります.最近わが国にも機械の導 入ほ著しく盛んになって来ましたが,まだまだ人 力に依存して過集約な栽培を行ってこいる両が多い 事実を否定すること.ほ出来ないのであります。 (3)外観的品惣の過重祝 わが国の消蘭者並に苗場に於てほ,果実の大 小,形態等の外紙的な品貿を過重祝し,繭品価値 80 の り衣 当校 一比 力九 二労 工牒 1す る要 けに 於培 に栽 国木 両成 米の 日桃 第4表 (単位は時間とす)

日 本 人 力

5820.0 12L.7

米 国 亡二車上三重王i:至‡ 項 目 1ェ−・カー当 1 本 当 詳 労力ほ男定‖男根焼印(米国のみ),被覆作物栽培(米国の み),施肥,薬剤撤祁j其他,潅漑(米国のろ),桝転除苛,袋描 及び除袋(日本のみ),摘果,支柱建(米国のみ),採収,荷 造,選別,搬出,其他等の項目紅ついて調香計上した. 尚1ェ−・カーの植イ」樹数は日本500本,米国9D本である1 をそれ等に偏して決定する習慣があります小 一例を温州蜜柑に取って市場の卸売価格を等級別に・示しますと次の通り であります. 嘩イ立重畳に対する価格の割合ほ., 果形の大きい階級はど著しく高いこ と.が此衷により明かに示されている のであります然るに米国に於ける オレンヂの価格ほ中果が最も高く て,大果と小異が低く,英国でも1 第5家 温州蜜柑の等級に.よる苗場卸売価格 (特大を100と.して比数で示す)(高橋)(1) 斎計\竺鱒 平均偏屈 (g) 価格比数 特大l大薫l鶴 竺 三三こ岳1;≡ 箱100個入がl‡果は200個入のものよりも安価でありますけ このように裸実の色沢,大きさなどの外観的品暫を遇薫 祝して,風味,香気,肉質,貯蔵力,栄養分などの内容的品質を軽補することは,わが国果粗膣芸に課せられた欠陥 の一一つであります. (4)栽培技循の非科学性 最近わが国果樹l∃はの栽培技術は技術普及別荘の改善と,試験研究組織の整備とに・より著しく向上して来ました が,それは少数の篤農家の階層の間に留まり,深く一般栽培家の生慮内捌こ立入って頼剖しますと,非科学的な多く の面を持って居るものが相当見られるのであります‖ 土壌借倒脛つきましても,大部分傾斜地に設けられている果横 間に於て,佼蝕による地力の消耗は依然として大きいものがあり,反当植イ」本数ほ.僻棉のものが大部分を占めて居る と云って−も過言でないのであります 施肥の方法についても輪弛法によるものが相当多く,過肥による不経済恍を反 省するものは比較的少ないのであります.要は果樹の娃瀾生態に供する≠.ら礎的知識が当業者の間に普及して屈ないた めに,栽増技術の非科学性を品蓋して伸らないものと云うこと.が出来るのであります (5)引理的反省の欠除 わが果樹園芸家にほ農柴特記をつけるものが極めて少なく,従って年々閉の経営上の欠陥について反省する機会を 持つものが非指■に柿であります,云うまでもなく果樹園の経営についてほ.,肥料その他の経さ1王墓端について年々偵或 な検討を加え,栽培の合理化を図ることが必要であります,蜜柑,平果,郁,桃,葡葡,梨の占種の異相紅ついて反 当支出金額の各蟄用の割合を調査したものを,次に一例として−示すこととしますい 第る衣 主要果樹の反当文才_h金額の 米国化.於てほ州立農科大学で捷産地に凱在員を派遣し,勅封の生 名塑月の判合(%) 産跡こつき,各婆引]にわたり多数の栽層老につ計詳細な訳査を行な い,標準と.なるべき俊男腰骨孝例を分析して発表しており,各栽培 者ほtI己経営の開催.於て精細な特記根を記−!吏kし,その姑果な標準事 その他の 贅 材 40 例と・比較検討して,年々その経営に慨するl]己反省を行っておりま す,この称の計理的反省こそは,わが国果樹園芸の企業と.して向上 する重要な鍵となるものと考えられるのであります (1)高橋価廊:柑橘(第4次改著),養督堂,1958年

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81 第10巻第2号(1959) (6)共同態勢の推進 わが国果樹園の経営面蘭が余りに零細であるために,経営上多くの不利益な蒙むって−いることほ既に述べた通りで あります.世界の果横座届地として経営上最も進歩していると云われている米国加州に於ては,その大部分は■掛業的 経営紅属しており,柑橘栽培者の経営面積ほ,繭加州の海岸地帯に於て10∼15エ−カー,内陸地滞に於て20エーカー であると云われ,北部乃至中郡の落莫果樹栽培地帯阻於ては,面積さら紅増大して20∼50エ−・カー・のものが高い割合 を占めているのでありますわが国の柑橘専業経営の適正規模ほ1∼115ヘクタール,副共経営のそれほ015∼0‖5ヘ クタールとせられていますが,各農家の一戸平均経営面積ほ適正規模を遥か紅下廻るものが大部分を占めている現況 の下にほ,作業の種類に.より出来得る限りこれを共同化し,出荷,販売等についても極力之を共同にすることが,今 筏の市場関係の改善に即応し,有利な成鍛を挙げる上に於て,きわめて大切であると.思われるのでありますい既に病 害虫防除,濯漑,荷造,出荷等についてほ,相当その共同化が広く普及しているようでありますが,果樹生産地の相 当の部分が零細経営の殻の中に閉じこ.もり,生産物の処理も商人の手を通ずることにより個々の利益を追及せんとす る因習に囚われているものが多いことは,わが国異相園芸の進歩のためにl嘆くべきことと云わねぼならないのであり ます−。 (7)果実の単位価格の高いこと 主要文明国の果実価格を調査したものに.よると,日本の果実の価格ほ−・般に高いと云われております・これを平果 に.ついて比較しても,米国でほ575gにつき57円50銭で生活程度ほ日本の10′}12倍,英国では27∼る2円,平均48円で生 活程度ほ口本の5倍,独乙でほ15∼40円平均52円で生活程度は日本の5倍となっていることを考えると,日本の果実 価格は相当高いこと.が判りますい この事ほ現時に於ける国民の栄養保健の上から見て屈要な問題であると.云わなくて ほならないのであります.邦相生活者がその子弟の健康を護るために,ビタミン及び鉱物成分を摂取する上に大きい 障害となるもので,今後果実の召ざ産額を増加すると.共に.,生産費の低下と.,流通経要望を節減すること.により,果実の 価格の櫓下を図らなくてほならないと思うものであります・ 以上日本の果樹関芸の包蔵す−る欠陥について−その一端を申し述べたのでありますが,今後果樹閉業の進歩を図るた めにほ,それ等の諸問題について充分な検討な加え,近代胴学を基礎とする経営の合理化と,技術の改善を実現せわ ばならないのであります。 5.わが国果樹園芸将来の動向 わが国果描闇雲将来の動向については,生産技術,輸送貯蔵,流通過程,経常並に価格等の面から検討を要する事 項が多いと思われます.次に限られた時間の範囲において,それ等の問題の一つ一・つにつき,簡単に述べて見たいと 存じます。 A 生 産 技 術 (1)樺類の導入と品種改良 既に.述べましたようにわが国では明治初年に働共寮,開拓使などの手に.より,欧米支那などから果樹の像良品種 の酋木を四百数十種輸入しまして,各地に配布したのでありますが,日本と環境を異にする場所で育成せられたそ れ等の種類品種は,わが国の環境の下に・,充分な生産力と品質,外観と.を併せ発揮し,経済的果樹としての役割を 果し得たものは,きわめて柿であったのであります・結局日本の果樹としてこは,日本の環境を基礎とし,これに適 応して牲藤力,外棚,品暫,輸送力,貯蔵性等の特性を発揮することが要求せられるもので,この線に沿うて今1] までに育成せられた一果樹の種類,品種ほ相当の数に.達しております先ず種知としては華果,桜桃,洋梨,胡桃,支 那栗,欧州称葡萄などがあり,欧州種と東洋種との交雑により育成したものほ桃,葡萄などがあり,わが邦原産の ものについて優良品椰の矧或に成功したものにほ和梨,温州蜜柑なとがあります・桃でほ神奈川,岡山,その他に 於て萬庁並に民聞人の手に.より古くほ日月桃,楠ギ生,伝十郎,離彪水蜜,白鳳,白桃,高倉’,大久保,神玉,饗 島白桃,高暢白桃など,近くは倉方,布目,砂子早生,大和早生,中津早珪,斑桃2号,5号,12一宇,14号などが 育成せられ,それぞれの分野濫於て,その持味を活かして屠るのであります 梨(1)では八雲,菊水,新興,新肘・ 紀,ホ雪月,雲井,翠星など,蜜柑では.変異枝として発見されたものに,早生でほ宮川,井関,松山,中生では長柄,南村 20号,河津,米沢など,また普通温州の系統と.してほ早出用にジルバ−ヒル,林∴石川,発師寺,谷川,宮迫,貯蔵用 (1)梶浦共編:園芸新品種大鑑,養質堂,195る..

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2 香川大学農学部学術報告 として望月,大岩などがあり,坪三茶では育成品種として登録された.ものに恵,陸奥,壬鈴などがあるが,経済品種 として成立したものなく,薫として外国から導入したものに依存しておりますまた葡萄でほ生食用としてネオマ スカット,生食 醸造兼用品種と.してマスカット・ベリーA.醸造用品種と.してブラック・クイ−ンなどが育成せ られ,それ以外の経済品称としてほ欧米の既成品種を導入して二実際栽培に供用しております1以上ほ種狩の導入と 新品種育成の一灘掩儲介したものに.過ぎませんが,将来の動向としてほ商品としての要求と,わが国の環境条件に 適応し,生産費を軽汲するための栽培技術にマッチすることの出来る品種の育成にその一切を指向すべきものと思 われます例えば和梨に於て二十世紀の肉質,風味を存し,長十郎の外概,生産力,耐病性を備え,無袋琴培に耐え る赤梨の優良品種の育成の如きほ,その日標の−・部を示すものと.云えます なお仝果樹を通じて生産力,外観,品質 共に虜憩な不艮系統のものを,優良系統に眉き換えることは,きわめて大切なことと考えられるのであります」・ (2)環境の改善 わが国の果樹は平地部が食材作物の壁産首こ幸として利用せられている関係上,傾斜地の畑地が果樹園として供用 せられており,一般に:l地碍子1:野で,夏季の乾鳩に侵され易く,二1二壊侵蝕による地力の消耗もきわめて政著でありま す.従って閑の環境要素を改善するための栽培技術ほ,わが国異相の牲産力な維持し,高揚するための必須要件で あるこ.とほ,現存も,将来も変ることのない鉄則であります深耕,疏柿,苛生,敷革,禎贋作物の栽培,濯漑等 々,今日行われている多くの技術を,将来も園の実状に応じ一周有効に適用することが望ましいのでありますい た だこれ等の接産技術を果樹園に適用する場合,果樹の生理珪態を充分に探究し,園の二L性,地下水位,気温,地 軋土壌水分等に関する的確な知識を把掛すること.は,生産力を発押する上に於てきわめて大切であり,それ等の 基礎に立って環境改善の有効な芋を打つことを考えなくてこほならないと」駅うのであります・ただ蜜柑などのように 成木に達する期間の長いものでは,計画的な間伐を伴なう鮮植栽培な行ない,経済的生産を早期から挙げるための 企画が行われているこ.と.も無視し得たいものがあります. (3)災 害 防 除 剰揖の災矧鋸徐についてほ今日まで相当努力が払われていますが,将来に於ても一層これを回避するための方策 が誹究されねばならないのであります晩箱防止のためには従来燥脚法,漕減法,被覆法等の間接またほ直接防除 法が採用されて:いたのでありますが,米国でほ関内紅雷柚ヒーターを整備して産油な燃焼することにより気温を上 昇せしめて被害な防除する情火注が実施せられて効果なあげて−おり,わが国でも最近この方法に倣い,反当重油 110∼150リットルを小型の石油任;で燃焼させること.により,関内気温を摂氏5∼55腰上昇せしめて被害な免れる ことに成功しておりますまた晩滞の被害の多い地方では柿平無核のような発芽の・早い品種を植えないこと,石古木 として乾害またほ寒害に抵抗件の弓d言いものを選択すること,風害による落果,落葉,新梢の折損等を防ぐために・防 風林,破夙林等を設置することなどがもっと現地に於て広く普及せられること.が必要と思われるのであります・ (4)梯形と男■定技術 わが国に於ける果樹の甲走準枝の技術ほ非常に集約であり,かつ密枯せられております関係上,強度の努定が加 えられ,夏季の男定法も剰封の程矧こより相当強く行われているのであります今後の動向として−ほ風害恕考慮す る必要ほありますが,−戯に樹形を大にして結果面積を増大すること,常在ほ努めて軽く行い,贈定万能の概念か ら脱即すると共に,自然の習性に応じて樹形を調闇し,夏季男走も特殊の果樹の外ほ早期の芽掃き,捻曲などな−主 とし,占月以後ほ努めてこれを実施することを避けること,葡萄などの花振いし易い品種では,樹の落付を保つた めに樹形を大きくし,強度の鶉定な髄けるようにしなくてほならないのであります (5)栄 養 最近果棉の栄養勾三矧こ関する研究ほ急速に進歩し,特定の果樹(1)についてほ肥料5要素の吸収昂と.その季節的変 化,肥料5要素蔓の潰度と樹体の社長,花芽の形成並に結実に.及ぼす静轡,施肥読,施肥胤施肥法,土壌条件と要 素の吸収,集面撒布,粕殊成分の欠乏症とその対策なとについて多くの研究業紙が発表されております・しかし果 樹は永年作物であり,多年にわたり旺捕な樹勢を裡持すると共に,要請三の適撞,適期施用により栄養生長と生殖生 長との間に削こ適鑑の均衡な保ち,品惣,外触共に優良な果実な毎年平均して経営の成り_青“つ程度に生産せねばな らないのであります.しかも果樹の肥料ほ全生産費の5D%内外を占めている関係上,肥利の種板特にその形態につ いては多くの問題を実際栽培の上に残しているのであります例えば馬取県の二十世紅,和歌山県の温州蜜柑に於 8 (1)小林茸:果樹の栄養生理,朝倉沓店,1958年

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83 欝10巻畢2号(.1959) てほ多と妄…の高価な有機質肥料を施用しており,前召の如き合成分鼻の■70%内外に及んでおり,無機質肥料を主用し ている産地との間に潔実の色沢,品質,枝梢の伸長昂その他の形質の上にある種の差が見られるこ・と.を主張してお りますが,これを実証する科学的根拠ほ何にも掴めていないのであります・従って果樹の栄養年頭に関する研究に っいてほ一層その内客な充実し,世界の果樹生産地の中で多肥栽培の汚名を馳せているわが国果樹の施肥問題をよ り合理化し,経営にマッチした耳犬態にまで高めて行くよう努力しなくてほならないのであります (6)果樹の保謹問題 わが国ほ異相の珪長期間中の気滝比較的高く,湿度もまた高い関係上,病害虫の被害甚だ劇甚であり,薬剤撒布 の回数ほ欧米各国に比しきわめて多いのであります最近病虫害防除用の機具器械も相当進歩し,能率の高い動力 噴霧機,.スピードスプレー・ヤー肇が果樹の車産地紅多数導入せられ,顕著な効果を挙げております一方,各種の効 力の弓飢、新農薬ほ㍍うて生産地に普及し,数年前に比し病害虫防除暦のJ.に眉膵耶勺な変化が見られているのであり ます一 しかしながら栽培者の多くの者には病害虫の経過習性に関する科学的知識が乏しく,果樹の壁理生儲と施用 薬剤との関係についても証■しい注意が払われていない結果,不測の薬害を惹き起して∴生産」二甚大な損失な棄むっ た実例ほ,至る所に周られるのであります今後病害虫の共同防除ほ果樹の卓彦他に於て急速に進展している現状 の下に,果樹の主要病害虫に関する知言葉の普及を図り,新農薬の性質と之が施用法紅ついて栽培者の啓蒙を促進す ることは,きわめて緊要でありますまたわが国に於て梨,平果,桃,枇杷,李,葡萄などの果樹に,果実の生長 中袋韓豚行なうことが慣行として行われており,その目的は病害虫から果実を保護する・−・万,その外概を同上せし め,ある稗の果樹でほ果皮の破写2を防ぐためにも用いられております しかしながらこの秤の慣行は多くの袋掛資 材を必要とするのみでなく,これを実姉するために多くの労力を必要と.し,しか竜一その実旅の時期が水和の挿秩, 安野庭刈取等の農き繁期と儲合し,その」:有袋果実ほ無袋果実に比しどタミンC,糖分等が少いためl消費者の側か らも相当非難を乎什てヽ、るのであります.結局袋珊な旅さなくてほ病害虫を防ぎ,また優良な外観を保ち得ない和 勲の二十仰臥畢釆のゴールデソデリシャス,中,晩熟覇の桃など以外のものについて,無袋栽培の普及励行を促 准することほ,経常の合理化な図り,市場の要求に答える上に於て牒要なことと考えられるのであります・ (7)紆 実 調 節 果樹の卦培ほ栄華の頓に於て述べましたように兼希堕長と捜渾哩長との均衡を適当に保つことに・その風見を凱、 で抑推されなくてはならないのであります従ってある年に異常な結実を′営み,次年にほ殆んど結実しない,所謂 隔年結果の現象の起ることを極力凋けるよう.∃封宍管押の上から結実の調節を図らなくて−ほならないのでありま すその草味で結実を櫛探するための将粉と,過度の結実による樹の栄静消耗を昨滅するための摘果が実施せられ ているのであります授粉についてほ宵有柿のように.単為結果力は弱小が樺子形成力の強いもの,梨,平果,李, 粟などの多くの品秤のように自家授粉による場合年理的落果が多く,充分な結実を営み得ないもの,白桃及びその 系統のように花粉を欠くか,またほ花粉の生産力が弱いために他晶魔の授粉を必要とするものなどに,是非とも実 施しなくてはならないものでありますが,最近の間贋としてほ限られた花粉昂で多くの授粉を行うために・,花粉稀 釈剤として何を;巽び,どの梓辟の稀釈率を以てすべきか,花粉の採放とその貯蔵方法,授粉の方法特に器具を用い 比較的高所にある日的の花に授粉する方注などについて多くの試験が行われ,有効な方法が相次いで発表されてい るのであります.ただ余りに少環の花粉な・用いて梨に搾扮する場合(1),受精後の果実細1胞の分裂に及ばす影響が 正常持粉の場合に比し弱く。.果実の肥大塾長にも不良な結果が現れることを考えると,ある特定の果樹の授粉につ いては,花粉稀釈の比率について相当細心の注計を払わなくてはならないのであります小 摘果の方法については今 日も依然として人間の指鮒⊂しよる摘果が行われているため,その必要な詰めながら之を実施する上に徹釈を欠く場 合が..温州蜜柑∴村などの成り年にしばしば見られ,果実の大きさに不良の影響苧を及はす−・方,次年度の貯蔵養分 を消耗して,豊科斐の花芽の形成を減じ,隔年結果の塀象を惹き起しているのであります・最近ナウタレン酢酸, ディニトロ札その他の薬剤な瀾価して摘果を行うことが実験されていますが,この方法による場合は除去しよう とする果実及びその才拍淵附について人為的に選択することは不可能であるのみならず,天候,樹勢その他の条件 により異なった成鎖が得られる場合も多く,種類及び品種に応じて薬剤の濃度を如何にするかについても多くの問 題が残されているのであります… なお草果の成熟耐翻こ起る落果を防1ヒするために柵物生長ホルモン剤の撒布が行 われており,八机伊予賓紺等の貯読売または輸送中の琴の落下及び槌色を防ぐためにも,採収晒前及び佑後に植物 (1)遠山正鉄外:園芸芋会秋季大会研究発表,1958年

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4 香川大学農学部学術報告 生長ホルモン剤の撒布が行われて,有効な成果を収めて:おります (8)採政教 び処理 果実の採収ほ凡て人力により行われておりまして−,巣実の外皮を傷つけ・ることなく,過熱のものを安全に接収す るためには機械による採坂ほ今後と雄も考慮の余地ほ少ないものと考えられます.ただ果実採収の後に商品として: の外観,色沢,耐久性を保持し,腐敗からこれを護るためにほ,−・,二の問題が考えられ,既に実用的に英雄せら れておるのであります例えば柑橘のワックス処理の如きはその一つであり,これほ果実の表面にワックスを塗布 することにより,果皮の収縮と水分の兼散を防ぎ,消費者の芋に洩るまでの閣外槻の美を保ち,義認の減少を少く するために行われるものでありまして∴米国で最初に行われたものを,わが国に導入したものであり,未熟の早生 温州でほ,輸送中の着色の進行を遅くする不利もありますが,夏橙その他の晩熟種に応用するとその効果顕著であ ると.云われています…また成熟期の気温が高いために.,果肉ほ成熟しているが,巣南の着色の不充分なものに対して ほ,人工染料を用いて濃橙色に着色するか,またほエチレン瓦斯の組英二を?ど気の20万力の1の割合とした室内に密 封し,摂氏28貯ぐらいまでの気漏に5∼81]放置することにより,果皮の葉緑素を破壊して着色させており,また 未着色の状態で専ら果実の直径がある限度に達すると採収されるレモンについても同様の人工着色が行われており ます..ただし人工染料を用い着色する場合にはその旨を環面に.スタンプを以て印刷表示されることとなって∴おりま すり わが国の柑橘では人為的に着色法を施すことほ行われておりませんが,成熟濾前に準果が生理的落果を生じた 場合,樹間に倣いた賃の上に果実を並べ】一定期間太陽光線に暴蕗することに・より,アントレアン色素を発現させ て,商品としての外観を附与することが行われております∴ (9)作業能率増進 零細経営な行って−いるわが国の果樹園芸では,能率の高い農機具を用いた場合,共同作業を行わない限り,所期 の目的な達するこ.とは周掛であります‖ 例えばスピ−・ドスプレー・ヤーを用いて華果儲の薬剤撒布な行った場合,そ の撒布儲力(1)は機械の種類,運転技術及び畑の立地条件により異なって来ますが,1日の行程ほ8へノ12へクター・ ルであるとせられています一然るに関が1肇10∼15アールぐらいの割合で諸所庭分布している場合,到底この種の 機械に依存して薬剤撒布を実施することほ不可能でありますい従/⊃て機械によるn潔儲率の増進は,共同による面 積の適正な増加と伴なうことほ必至の条件であります..急傾斜地帯に於ける索道の架設も簡易無動力のものから, 数馬力の動力用のものまで,わが国各地に潜没せられておりますが,これも1ヘクタールにも足らない狭少な園を 対象として,個人所有のものな建設することほ,単紅作業を早く片付けると云うだけで,経営の上から見て畏の意 味の能率増進と認め得ない場合が多いと思われるのであります.従って今後の果樹園経営は病害虫防除,濃漑,選 果,荷造・その他共同の力により能率の高い機械を利用して真にその目的を達成し得るもののみにつき,高能率の器 具機械を利用するように推進することが大切であると考えるのであります 以上ほ4産技術の改普向上に.閲しわが国果樹園芸今後の動向についてこ考察したものでありますが,果樹の経営が 現在行われているように零細な主穀作物の副業として行われている限り,各個の農家の経瞥規模が過少紅過ぎ,之 が改善について所期の効果なあげることは甚だ困難であります従つて果樹生産技術の発展を図るために・ほ専業経 営農家の戸数を増加するか,共同管群の力式を採用することにより,現在行われている非能率かつ不合理の栽培法 な根本的に変革することこそ,わが国果樹園芸将来の発展を図る雷要なキーーポイントであることを強調したいと思 うものであります. B 輸送及び貯蔵 (1)輸 送 果実の輸送について現在の問題点ほ,わが国の輸送方渋がきわめて乱暴であり,出荷後市場に到達するまでに, 器械的損傷による果実の損壊が相当大きいことでありますり特にわが国の市場でほ微細の押傷その他外観上の汚染 損傷に.神経野であり,それ等の職庇な牒藁なく拾い上げて価格を侶く評価する習慣があるのでありますその上果 実な輸送するための賃串も冷蔵車,通風中等ほ比較的少く,普通の有蓋貨ヰに・よるものが大部分を占めている現状 の下にり果実の輸送は多くの障害に盾面しているものであります1米国では果実のヨ三産地であるカリフォルニア, オレゴン,ワシう/トンなどの西部諸州から,中部乃至東部の消至宝相似こ到達するのに7∼10日の期間を必要として おりますが,果実は精込前に荷造のまま摂氏零度の予冷窒に1櫻夜収納して果肉温皮を摂氏4∼5度に低下せし 8 (1)蕾森県りんご試験場:閲芸学会昭和55年皮秋季大会研究発表要旨,1958年

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85 罪10巻第2号(1959) め,これを冷蔵頚の平に搬入しで輸送するとととしており,しかも積込の際にほ箱をきわめて町寧に取扱い,内容物 に徽撃を与えるような動作を絶対に.行わないため,果実は安全に目的市場に到達するのを満としています・その上そ れ等の輸送機関ほ多く私設であり,荷主は損傷に・対しては厳重な補償を要求する習慣があるためプラットホ−・ムから 質肇への街込のためにもリフトコンペイヤーを用いる等細心の注意を払っているのであります・・また消費者や満場 の側でも微小な押傷などに必要以上の神経奄使うことがない点も,わが国と大分趣を異にしている点であります・わ が国に於てほ輸送中腐敗その他の荷傷みの起り易い桃等の果実について,岡山,京都等から北海道またほ東京都への 輸送試験が数次にわたり行われており,予冷,透し箱,通風尊,冷蔵頚等を利用すること.ほ,之等の損傷し易い果樹 の遠拒離輸送を行う上粧於てきわめて有効なことを実証しており,最近.には平果,温州蜜柑,梨,桃等についてダン ボール箱その他各種様式の荷箱を剛、た輸送試験が行われ,詳細な科学的調査が行なわれております・従って:今後わ が国の果実の愉送については従来のりんど箱,石油箱その他の様式から離れた新様式のものが採用せられ,貨車の内 容,途中の取扱い等に裁ても劉期的な変葦が行われる機会が多く実現することを展わないものであります・ (2)貯 蔵 果実の貯蔵濫ついてはわが国でほ大部分空気貯蔵が行われ,特に柑橘についてほ全国の各産地に比較的完全な貯蔵 辟や簡易貯蔵設備が建設せられております.また準果についてほ北海道,青森などにおいて天然の雪またほ氷を利用 した冷蔵庫や,アン軋ニア瓦斯,フレオン瓦斯などを利用する冷蔵庫が設置せられております・また特定の地方では 炭酸瓦斯檻よる柿の軒封瓦斯冷蔵を行っているものもあります−果実の貯蔵に関する研究は英国などでほケンプリッ チ大学附設の低温研究所と之に値域するデイツトン実験所があり,金品に関する払樅的朝究ほ専ら前者に於て行い, 応用に関する研究は童として後者に於て行っでおり,特に.平只の瓦斯冷蔵に関する研究ほ完膚なきまでに追究されて いるのであります.その業海■壬をそのま剖芯用して,イー・ストモーリング研究所に.ほ平果の呼出する炭酸瓦斯を利用し た大規模の実用的の≠斯冷職種が建設せられて.、経済的な貯蔵が行われておりますし,オーストラリアからの英本国 市場濫至る貨物船による果実の長拒灘輸送にも,瓦斯冷蔵の原理を利用して1カ月に余る期間の航海に成功している のであります∴ この様に考えますとわが国の果実の輸送貯蔵にも,果実の損傷老化を防ぎ,優良な商品として消費市 場に君臨するために検討すべき多くの研究課題が残されているこ.と.は申すまでもないと.思うものであります・ C 流 通 過 程 果実の生産技術,輸送貯蔵等について改革を加えても,農家の収益を増進するにほ、その流通対策の合理化を図ら ない限り,目的を迫することほ不可能であります小 現在大都苗の果実の小売価格に対する生産者の所得は,仲買及び 小売の所得に及ばないことほ.,節7衣によりはっきり知ること.が出来るのであります,. この衣によりますと,生産者所得について− ほ静岡蜜柑でははば仲買小売の儲けと匹敵し ておりますが,準果では後者が著しく多いこ と.が示されており,平果については木箱及び 籾憩を充牒材料として用いる関係上,小売価 格に比し荷造費が著しく高い比率な[当めてい ること.が判るのであります 従って今後の問 題と.してほ,流通過程に.おける仲買・小売の 所得を如何にして低下するかと.云うことと, 準果の場合にほ荷造蟄をさらに低減するため 第7家 来京都の小売価格から見た名按用の内訳(1) \ぞ 静岡蜜柑 詩森JlりR 岩手準異 備考 蜜柑の小売価格100匁25円(市場卸価格1箱7買入1,000円) 升果小売価格100匁20円(市場卸売価格4‖8員入550円) 昭和51年11月=園速胡査 の方法を如何にするかと云うことが検討の中心となると思われるのであります岩手県農業試験場の調査によります と,今1]までの実験の結果では∴現恭一一舶に.行われている輸送の方法で粗放無しの・輸送を而うと,華果ほ荷箱中の仝 果英が著しい損傷を蒙むり,商品価値を失うこと,以上の輸送中の損傷ほ貨車中で受けたものでなく∴潰み下しの際 の祖難な取扱いによって起ったものであり,従って墳充利料として粗穀の使用を1ヒめるためには,荷扱いの改善を行う ことが前提と.なること,籾澱無しの輸送による果実の損傷は,箱板と果実の接触面に於て著しいので,箱板ほ現在の 仙 森英男編:りんご栽培全乱朝倉書店,1958年

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86 香川大学農学部学術報告 ような悍板を用うるよりも,坪板,ベニヤなどが良く,特に.ダンボ−・ルが罷も損傷が少く,かつ賢材の節約と.なり, 価格も安いこと,粗難な取扱いを止めれほ\50員ぐらい道入る大形容器にバラ詰にして:も掛傷ほ少いこ.と,ホーク・ リフト,コンペイヤーなどを用いた機械荷役ほ能率的で∴果実の損傷ほ少いこと.などが報悪されており,以上の結果 により,乱暴な取扱いを止めさせ,バラ詰輸送を行うことが実際に.行われ始め,容器も木枠付ダンボール,あるいほ ダンボ−ル・コンテイナーなどを用いた新しいものがエ夫され,着々と実用化に進んでおり,荷役の研究(特に.機械 化)と相倹って,近い将来に聴視在の抜乃至兢の荷造費で,しかも良い平果の果実が消費地に出せる見込が着いたと 云うのであります一一・方仲買小売の中間搾取の問題に.ついてほ,これを軽減することばきわめて蓮要なこ.とであるに 拘らず,従来ほとんど着手されていない困難なものであります..特に市場価格が低い豊産な年はど生産者所得率が低 減し,小売商の利益率が増加すること.が実証されていることを考えますと,流通過程における中間経費を出来得る限 り少なくして,生産者所得を多くするための宥効な方策を採るよう,今後の努力を進める必要があるものと考えられ るのであります D 経 営 果樹園の経営についてこほ噂業経営と潮業経営の問題がある−カ,わが国の果樹栽培にほ単独経営と.草間経営の問題 があります 既軋述べましたように,わが国の果樹閏ほ−・般紅.零細であるのみならず,−肇毎に狭小の閤が地域内に. 幾つか分散しているのが多く,しかもそれ等は平蛸地よりも傾斜地に多いため愈々経営上の困難を増しているのであ りますい しかも経営形態が大部分別業であるため,主菜としての穀作のために作業の上で従属的紅取扱われ,主作の 作業が繁忙である限り,如何に果樹間作業が重要であり,これを処理するためにある程圧の労力を要するとしても, 主作物の作業が終了しない限り,果樹園作業紅着手すること.ほ閃難であり,なお臨侍の雇傭労力をそれに振り向けよ うと.して:も,それをその地域に於て磯村することほほとんど不可能であります.従.って現布の副業経営の形態を持続 する限り,わが国の果樹闘芸の飛躍的発展を期待することは甚だ困難であります.−・方果樹の専業栽培ほ一朝の経営 力をこれに集し卜するものであるため,そ・の運用を誤らない限り,栽培技術も,経営力針も夕用;の披乱を受けることな しに,円滑適正に推進すること.が出来るのであります∴ 現在温州蜜柑の尊業経営の適正相模凝,わが国の現状の下に 1∼1ノ5ヘクタールとせられていますが,一地帯にそれだけの雨量守を求めることは,開拓地あるいほIJ_働こ業の開墾地 でない限り,容易でないのであります兼業とした場合,温州蜜柑庖ヰ作どするものの適正規模ほ1ヘクタールと云 われていますが,この程梗の辟骨頂㈲沌磯雄するこ.と.ほ愈々l邪推であります.この困難を打破するために新たに考案 せられたものほ共同の形紅於て\果樹閲の主要作業を進める方法であります\この中主要作業としで選ばれるものにほ 病害虫の共同防除,共同純水,共同荷造及び栗岡出荷等があり,今後果樹の禦闇栽培が行われる場合にほ,同定資産 として償却に.多くの費ノ召を要する梨,葡萄の棚,共同作業場,共同防風林等の設帯等を芙萌するこ.とが出来るのであ りますい なお果樹園を経営する蔦家ほ農用箱記の記帳を行い,年度の終りにほ塾産費な椛脱する肥軋薬剤,その他 の資材,農具,雑蟄,労力,償却費等についてその支出を明かにすると共紅,単樺儲ぷ当りの生産費を算出する一 カ,生産した果実の等級,単価等を集倒して,単位蔓ぷ当りの純収故に1ヘクタール当りの手取金額を算出すること が必要でありますこの椰の経7等分析を正確に行うことにより,企業としての果樹栽培の内容を明かにするにとは, 多年生作物として−の果柑の栽培に欠くことの出来ない大切なととであり,専業たると別業たると/を問わず,必らずこ れを実地するように.せねはならないのでありますい E 果 実 の 価 格 現在わが国の果実珪産額は,栽培而精の増加と単イカ面精当りの収昂の向上とにより急激に上界しており,これ紅伴 ない将来における果実の価格ほ下落のカ向に向うこと.が憂慮されております..H本間芸ぷ隻某協同組合(1)が主要果樹 の苑京市場の1ヱヨ当り平均価楕濫つき昭和25年∼52年にわたり調査したものによりますと、太平洋戦争磯の果実の消 費ほその増産と共に増加したが,近年草異,桃∴葡豹及び梨ほ価格の下ラ苓敵許で,これ等の果実ほ加工,輸出に対し て窮極的施策を講ぜない限り,価格ほさらに.下落し工生産の調節を必要とするものであります,柑橘知ほこれに.反し, 年と.共に値」二りの傾向で,東京の蜜柑ほ米田ニューヨ−ク市のフロリダ。オレンヂよりも高く,巾需.1言及びジーユ∴−ス加 工原料とすることが困難な実状で,叫屑の堆産を必要とする−L力,桜桃,枇杷及び発の伸上りもまた壁産の不足を訴 えていると云っております.第8衷で明かな通り客果実の東京市場に点ける価格の平均は昭和2r5年以来年々上昇し, 特に昭和28,29両年の値上りは顕著であったが,この両年の叩均に比べて昭不i152年ほさらにる%の上昇となってお (1)日本園芸農業協同組合:果実産業の現状と振興策,果実日本15(9),1958年

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り,このことは果実の消費が全体を通じてなお増加し,増産の必要を示しているが,戦前を通じて増産率の最も高い 隼果ほ昭和28,29両年の平均に,比べて,昭和52年は2る%の ̄F落と.なり,また近年増産速度の速い桃,葡萄は同期間に 19%の下落,梨ほ.15%の低落を示しているのであります しかしながら今後の果 実の増産ほさら紅現在の 生産状況に拍車を拭ける ものであること.は,10年 後(1)の昭和42年度に於 て果実に.対する需要額 第8表 主要果実の近.年濫於ける凍京相場の1買匁当り価格の推移 (昭和28,29両年の平均100とした場合の昭和52年の比数) l l ほ,昭和52年度の生産研 に対し,1フ5倍の595万噸に達することが推測されて:いることからも考えられます1・従って今後の果実の価格の推移 に対し厳許な注意を払うと.共に,将来の下落に備えて,生産費の低下匿つき一個の努力を致さねばならないと思うも のであります. 4り 結 以上限られた時間に於てわが国果樹園芸の発達概況と,過去に於ける欠陥,将来の動向等につき一・通り述べる所が あったのであります・け わが国の果樹園芸は明治初年以後に・創始せられたものと云っても過言でないのでありまして, その間わずかに百年に充たないものであります・・その上わが国の環墟条件ほ果樹の生長期間中に於て−・般に高温多 湿,しかも占∼7月頃には年降雨量の兢∼一紙及ぶ多量の降雨があり,夏季は高温乾燥の比較的良い期間を有してい るのであります..その上果樹園の相当多くは傾斜地で,桁薄な地帯も決して少なくはないのであります・・この様な比 較的息まれない立地条件の下に,世胡の栄樹園芸界に伍して遜色のない外観品質の果実を生産しつつあること.は,一 っの驚異とも云うべきものでありますと.共に,わが国民の等しく誇りと.している所であります小しかしながらわが国果 樹園の実磯濫ついて詳細な検討を行って見ますと,生産の歴史が短かいだけに・全体を通じて多くの欠陥があり,これ が故老と向上を図るために一個の努力を必安とするものであります‖特に経営規模が窄柵に過ぎ,しかもそれ等が副 業の形態に於て取り行われていることほ,閲の合馳付経常を推進する上に於て致命的の欠陥であり,今後集団果樹園 として,作業,荷造,集荷等に関し一層共同の威力を発揮し能率増進と,生産増強に舶車を掛けなくてほならないと 思うものでありますいなお果樹園芸に関する実験研究ほ近年長足の勢いを以て進展していますが,実際栽培と研究蓋 との間の関連が碑接でないため,謹要なr2り題が見落されているものも少くなく,実際栽培と.値按接触している試験機 閑ほ設備,研究陣各不足のために・卜思わしい成果を挙げ得ない恨みなしとしないのであります‖ 大学,試験場,技術 普及機闘の5茎が一條となって,有能な多数の研究者を排し,果樹闇芸の力弓飢、研究を推進する一方,その成果を実 際我慢界に佼透せしめている米国の行き方ほ,わが国でも範と.すべきものと思われますが,現状の下にこれを如何と もすべからざるものがありますい結局研究者と技術・致及機供と実際栽培者が一価となつて剛陸な多くの問題を処理す ると共に,栽培当某省の享引士年屑に果樹の生理生優に関する知識の佼透を医lり,平素の周到な観察により自ら問題の 核心を掴み,これを研究機快の手紅移して解決の途を促進すること.こそ,現下に於て取るべき最薯の途と考えられる のであります.長時間濫わたる御静聴を感謝します… (1)園芸白乱農林省,1958年11月29軒発表

参照

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