金融論 第3章 投資の収益率と利子率 中村学園大学 吉川卓也 1
1 収益と収益率
キーワード: 収益、収益率、 利子、利子率、複利 指数関数 2重要なセンテンス
• 利子率が預金(という投資)の収益率 • 利子率=お金の貸し手にとっての収益率 • 利子にも利子が付くのが複利の仕組み。 • この仕組みがあるために,資産や借金に手を 付けないでいると,一定の増加率で増え続け ます。とくに借金には注意しましょう。 3駐車場のビジネス
• 1000万円の初期投資をする。 • 収入から費用を引くと100万円が手元に残る。 4QUESTION
1. この駐車場ビジネスで1年後の駐車場の売 却価格が1,000 万円の場合,ビジネスの収益と 収益率はそれぞれどうなるでしょうか? 1年後の売却価格が900万円の場合はどうで しょうか?Answer
「投資した金額」は 1,000 万円で固定されてい ます。異なるのは「将来手にする金額」です。 駐車料金等からの収入 100 万円に売却価格 を加えたものが「将来手にする金額」にな るの で,売却価格が 1,000 万円の場合,「将来手に する金額」は 1,100 万円ですので,(純) 収益と(純)収益 =将来手にする金額 1,100 万円 -投資した金額 1,000 万円 =100 万円 7 収益率 =(純)収益100万円÷投資した金額1,000万円 =0.1 すなわち10%となります。 8 売却価格が 900 万円のときは,「将来手にす る金額」が 100 万円少なくなるので, (純)収益 =将来手にする金額 1,000 万円 -投資した金額 1,000 万円 =0 円 9 収益率 =(純)収益 0 円÷投資した金額 1,000 万円 =0 10 すなわち0%。つまり,収益は生まれないとい うことです。さらに売却価格が 900 万円よりも 下がると,(純)収益,収益率ともにマイナス,つ まり損失が発生することになります。 その原因は駐車場の価格の下落に伴う損失, キャピタル・ロスにあります。 11
QUESTION
2. あなたの銀行預金の利子率を調べてみま しょう。わからない場合は銀行のホームページ で調べられるので,銀行ローンの利子率も チェックしてみましょう。 12Answer
第 1 章の 5 ページの QUESTION と同じ問題 ですが,利子率=貸し手の収益率という視点か ら,もう一度,利子率の違いに関心を持って,調 べて欲しいと思います。 13POINT
• 利子率=お金の貸し手にとっての収益率 14QUESTION
3. 10万円を1%の利子で1年間預金すると、1 年後には10万1000円になります。そのまま預金 を引き出さずに,さらに1年が経過すると,預金 残高はどうなるでしょうか? 15QUESTION
4. 10万円を10%の利子で1年間借りると、1年 後には11万円返さなければならなりません。そ のまま返済をしないでいると,借入から5年後に は,借金はいくらになっているでしょうか? 17 1年経つと最初の借金10万円に10%の利子1万円 が付いて11万円になるのですが、利子の1万円は、 利子(1万円)=最初の借金(10万円)×利子率(0.1) と書けるので、1年後の借金を式で表すと, 1年後の借金 =最初の借金(10万円)+利子(1万円) =最初の借金+最初の借金×利子率 =最初の借金×(1+利子率) と書き表すことができます。利子率が0.1なので、 1年経つと借金が1.1倍になることがわかります。返済をしないでさらに1年が経過するとまた 10%増えるので、2年後の借金は、 2年後の借金=1年後の借金×(1+利子率) =最初の借金×(1+利子率)×(1+利子率) =最初の借金×(1+ 利子率)2 となります。 21 一般に、 年後の借金=最初の借金 1 利子率) という公式が成り立ちます。 22
QUESTION
4. そのまま返済をしないでいると,借入から20 年後,30年後には借金はいくらになっているで しょうか? (計算をする前に予想をしてみましょう) 23 • 上の問題はいずれも本文中に解説がありま すが,より詳しい解説が「[発展]複利の計算: なぜ借金は大きく増えてしまうのか?」(39 ページ)にありますので,そちらも読んでみて ください。 25 • 計算の過程がわかったら,自分で計算してみま しょう。電卓を使っても良いですし,最近では Microsoft 社の表計算パソコンソフト Excel など を使って簡単に計算ができるようになりました。 金融実務の現場では,こうしたパソコンソフトの 使用が必須となっていますので,金融機関で働 きたい人はぜひチャレンジしてみてください。 26 27POINT
• 利子にも利子が付くのが複利の仕組み。 • この仕組みがあるために、資産や借金に手を 付けないでいると、一定の増加率で増え続け ます。とくに借金には注意しましょう。 282 なぜ収益そのものよりも収益率のほう
が大事なのか?
29 最終的な収益率 = 最終的な収益 投資資金QUESTION
あなたは100万円のお金を将来のために投資 しようと考えています。以下の5つの投資対象 があるとき,どのように投資をするのがよいで しょうか? 30 ただし,AからDまでのビジネスは,それぞれ 指定された金額以上の投資はできないものとし ます。また,すべての投資の収益は確実であり, 複数の対象を組み合わせての投資も可能とし ます。 31 A いま10万円投資すると、1年後に1万円の収 益をもたらすビジネス B いま40万円投資すると、1年後に3万円の収 益をもたらすビジネス C いま60万円投資すると,1年後に4万円の収 益をもたらすビジネス D いま80万円投資すると,1年後に5万円の収 益をもたらすビジネス E 1年当たり7%の利子が付く定期預金POINT
• 収益ではなく,収益率を見て投資を判断しな ければならない。 • 収益率の高い対象に,より多くを投資するこ とで全体の収益率は高くなる。 383 収益率を使った高度な投資判断
キーワード: 機会費用、資本コスト、 内部収益率、キャッシュフロー、 イールド 39POINT
• ある投資機会の収益率が,資本コスト(犠牲 となる収益率)を下回るならば,それに投資す べきではない。 • 投資期間が異なるときには,期間をそろえた 収益率を比較して投資判断をしなければなら ない。 40QUESTION
あなたは100万円のお金を将来のために投資し ようと考えています。以下の4つの投資対象がある とき、どのように投資をするのがよいでしょうか? ただし、AとBのビジネスは、それぞれ指定された 金額以上の投資はできないものとします。また、す べての投資の収益は確実であり、複数の対象を組 み合わせての投資も可能とします。 41 A いま50万円投資すると、1カ月後に1万円の 収益をもたらすビジネス B いま50万円投資すると、1年後に5万円の収 益をもたらすビジネス C 1年当たり12%の利子が付く定期預金 D 1カ月当たり1%の利子が付く定期預金 42QUESTION
• ある駐車場ビジネスは、最初に100万円初 期投資すると、1年後に20万円、2年後に20 万円、3年後に20万円の料金収入をもたら すという。3年後には駐車場を100万円で売 却できるとする。 48表3.1 駐車場ビジネスのキャッシュフロー
現在 (初期投資) 1年後 2年後 3年後 -100万円 20万円 20万円 120万円 49 • この投資から得られるお金の流れ(キャッシュ フロー)を銀行預金で再現できるとしたら,そ の銀行預金の利子率はいくらでしょうか? 50 銀行預金の利子率が20%なら、 • 現在 100万円を預金 • 1年後 100万円×(1+0.2)=120万円 20万円引き出すと、預金残高は100万円 51 • 2年後 100万円×(1+0.2)=120万円 20万円引き出すと、預金残高は100万円 • 3年後 100万円×(1+0.2)=120万円 120万円引き出すと、預金残高は0 52 • つまり、駐車場ビジネスの収入(キャッシュフ ロー)は、預金利率20%の定期預金と同じ。 • したがって、駐車場ビジネスの(内部)収益率 は20%と考えることができる。 • 利付債の内部収益率をイールドという。QUESTION
1. 第1章1節で紹介した凸凹自動車の利付債 をもう一度見てください(6 頁)。額面価格が100 万円で、利率が3.0%と書いてあります。この利 率は額面価格100万円に対する利払いの額3万 円の比率で、しばしばクーポンレートと呼ばれま す。将来のキャッシュフローを表にまとめると、 以下のようになります。1年後 2年後 ・・・ 9年後 10年後 3万円 3万円 ・・・ 3万円 103万円 55 ⑴ この利付債が現在100万円で売られている としたら、イールドは何%でしょうか? ⑵ この利付債が現在130万円で売られている としたら、イールドは何%でしょうか?
Answer(1)
現在 1年後 2年後 ・・・ 9年後 10年後 -100万円 3万円 3万円 ・・・ 3万円 103万円 56 • 結論としては、上の表のように、1年あたりの 利子率が3%の銀行預金があれば、このお 金の流れを再現できますので、イールド(内 部収益率)は3%となります。 • 確認してみましょう。 • まず、現在時点で100万円を預金します。利 子率が3%なので、1年後には103万円になり ます。そこから、3万円だけ引き出すと、預金 額は100万円に戻りますから、2年後には再び 103万円になります。 57 • このように毎年3万円の利子が発生するごと に、その3万円を引き出すことで、預金額を 100万円に戻していけば、10年後には103万 円の預金残金があるので、これを引き出すこ とで、利付債とまったく同じお金の流れを再現 できることがわかります。 58 • この問題では、債券の現在の価格が額面価 格と等しい100 万円で、そのイールドはクーポ ンレートと等しい3%になることがわかりました。 • このケースのように額面価格と債券の価格が 同じ場合、債券のイールドはクーポンレートと 等しくなります。 59Answer(2)
60 現在 1年後 2年後 ・・・ 9年後 10年後 -130万円 3万円 3万円 ・・・ 3万円 103万円 • 10年間でもらえる金額の合計は130万円で 現在の債券の価格と一致しています。 3×10+100=130万円• 利子がない銀行預金でも、今130万円を預け れば、利付債がもたらす収入分130万円を引 き出すことが可能です。 • つまり、利子率0%の銀行預金と同じなので、 イールド(内部収益率)は0%となります。 61