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HOKUGA: アラブ首長国連邦の中古車・中古部品流通に関する実態調査

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タイトル

アラブ首長国連邦の中古車・中古部品流通に関する実

態調査

著者

浅妻, 裕; 阿部, 新

引用

開発論集, 83: 121-143

発行日

2009-03-30

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アラブ首長国連邦の中古車・中古部品流通に

関する実態調査

浅 妻

裕 ・阿 部

全体の構成> 1.はじめに 2.統計から見る UAE 向け中古車流通 3.中古車輸入に関する規制 4.DUCAMZ における中古車流通 5.中古車の中継貿易拠点形成と近年の動向 6.中古部品流通 7.UAE 研究の論点

1.はじめに

近年,日本からの中古車輸出台数が増加し 続け,国際的な廃車流通が活発化している。 これらはどこでリユースされ,最終的にリサ イクル・廃棄されるのだろうか。リユースや リサイクルに関わる環境負荷を軽減する観点 から,日本を中心とした中古車や廃車の流通 を明らかにするための研究が進んでいる。筆 者らもこの観点から,阿部・浅妻(2008)や 浅妻(2006)などの研究を行ってきている。 しかし,依然として不明な部 は多い。日 本から輸出される段階までは把握できても, その先,実際に現地で利用されているのか, さらに別の国や地域に移動しているのかなど の疑問もある。特にペルシャ湾岸のアラブ首 長国連邦(以下,UAE)は,古くから中古車 の中継貿易を行っていることで知られている が,実際にそれらの中古車が最終的にどこで 利用され,そして廃棄されるのか十 な研究 は進んでいない。 そこで,2008年 11月,我々は UAE を訪問 し,中古車・中古部品の流通に関する調査を 行った。 日本から UAE には 1970年代から中古車 が輸出されており,輸出市場にとって古くか ら重要な国である。貿易統計から中古車輸出 台数が把握可能となった 2001年以降 2007年 までは,ニュージーランド,ロシアとともに 上位3位を独占してきた。ニュージーランド 向け輸出が落ち込みはじめ,ロシア向け輸出 が急増期にあった 2004年には全体の第一位 となっている。若干の増減はあるものの,近 年は 10万台を越える水準を維持している。そ こで筆者らは,この UAE 向け輸出について, 実際に,現地でどのように扱われ,最終的に どこに向かうのか,流通に関わっている企業 は何社くらいあり,どのような形態なのか, いつ頃から始まったビジネスなのか,といっ たことを中心に調査した。 また,中古車だけでなく中古部品の再輸出 ビジネスも活発である。UAE は7つの首長 国から構成されているが,特にドバイ首長国 (あさづま ゆたか)開発研究所研究員,北海学園大学経済学部准教授 (あべ あらた)山口大学教育学部准教授

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に隣接するシャルジャ首長国で中古部品ビジ ネスが盛んなことが知られている。日本から も中古部品が輸入されているが,これらがど こへ向かっていくのかは不明であった。よっ て,今回,中古部品の貿易輸出入に関する企 業が何社くらいあるのか,どこに再輸出され るのか,ということを中心に調査した。本稿 はこれらの調査報告である。 調査の基本日程を表1で示した。

2.統計から見る UAE向け中古車流

まず,関連する統計を見てみる。表2に日 本からの主要な輸出先国への中古車輸出台数 を示す。これによれば,UAE はロシアに次ぐ 主要な輸出先となっており,全体の1割程度 のシェアとなっている。また,同じ上位のロ シアやニュージーランドと比べるとトラック の割合が多いことがわかる。 時系列的には,2001年以降,常に上位3カ 国に入っており,2004年には合計 144,090台 を記録して第一位の輸出先国となっている (図1)。なお,この 2004年の輸出台数は, これまでの UAE 向け輸出で最も多い台数で ある。 UAE 向け輸出をバス・乗用車・トラック別 に見たのが図2である。これによれば,乗用 車がこの間最も多く輸出されていることがわ かる。ただし,2004年のピーク以降,減少し 始める年が現れてきており,それに対して, トラックは 2006年まで増加傾向である。 次に,輸出される中古車一台当たりの価格 を見る(図3)。これによれば,UAE 向けの 1台あたり輸出価格は,2004年以降は高く なってきているものの,他の国に比べて低位 で推移している。 UAE 向け輸出はトラックの割合が多いの 表 1 調査日程表 日 時 場 所 等 内 容 備 11月7日 22:30 大阪 関西国際空港 集合,出発 EK317 11月8日 5:55 ドバイ ドバイ国際空港 到着

7:00 Hotel Ibis World Trade Centre Dubai 休憩

9:30 CAAI 調査 DUCAMZ 内中古車オークション業者 12:00 シャルジャ Japan Coast Used Cars & Spare Parts 調査 中古部品販売

14:00 中古部品街 調査 カレッジ裏,アルハン,JNP 地区 19:30 ドバイ Hotel Ibis World Trade Centre Dubai 宿泊

11月9日 8:00 ドバイ 移動

9:00 シャルジャ 中古部品街 到着,調査 カレッジ裏,アルハン地区 11:00 移動

12:00 ドバイ JETRO Dubai 調査 日本貿易振興機構事務所 13:30 HUSSAIN TRADERS 調査 DUCAMZU 内中古車ディーラー 14:30 Car Dealers Association 調査 DUCAMZ 内業界団体 16:30 PARADISE Used Cars 調査 DUCAMZ 内中古車ディーラー 17:30 ハンドル付け替え工場 調査 DUCAMZ 内工場 18:30 ドバイ市内 市内視察,懇談など 23:00 ドバイ国際空港 到着 11月10日 2:50 ドバイ国際空港 出発 EK316 16:40 大阪 関西国際空港 到着,解散 (注)時間はすべて現地時間。日本との時差は+5。

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で,乗用車のみの単価も算出してみた(図4)。 20万円台前半にとどまっている傾向がわか り,UAE 向け輸出は相対的に低年式中古車 が多いと推測できる。 一方,UAE 側からみた中古車輸入統計が 表3である。日本からの輸入台数が他国に比 べて非常に多いことがわかる。第2位以下に は左ハンドルの国々が並んでいるので,右ハ ンドル車の輸入市場を日本車がほぼ独占して いるといえる。また,一台当たりの価格は, 日本車が他と比べてかなり安いことがわか 表 2 日本からの主要国向け中古車輸出台数(2007年) 台数 シェア トラックの割合 ロシア 478,802 36.80% 7.80% アラブ首長国連邦 122,518 9.40% 31.80% ニュージーランド 101,236 7.80% 8.00% チリ 96,844 7.40% 20.70% ケニア 42,341 3.30% 24.40% 南アフリカ共和国 38,679 3.00% 26.00% ペルー 28,619 2.20% 55.10% フィリピン 27,400 2.10% 55.60% シンガポール 24,669 1.90% 12.30% イギリス 24,253 1.90% 1.50% 合計 1,302,481 100.00% 17.50% 出所:財務省貿易統計より集計・作成 図 1 中古車輸出台数の推移(主要5カ国向け,単 位:台) 出所:財務省貿易統計より集計・作成 注:2001年は4月∼12月,2008年は1月∼11月の実 績である。また,2008年は確報値である。 図 2 日本からの UAE向け輸出(車種別) 出所:財務省貿易統計より集計・作成 注:2001年は4月∼12月,2008年は1月∼11月の実 績である。また,2008年は確報値である。 図 3 主要3カ国向け輸出中古車1台当たりの価格 (単位:千円) 出所:財務省貿易統計より集計・作成 注:2001年は4月∼12月,2008年は1月∼11月の実 績である。また,2008年は確報値である。 図 4 主要3カ国向け輸出中古車(乗用車)1台当た りの価格(単位:千円) 出所:財務省貿易統計より集計・作成 注:2001年は4月∼12月の実績である。

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る。右ハンドル車の場合は後述するように東 アフリカ方面の発展途上国への再輸出が多 い,つまりドバイ現地で販売される中古車が 少ないためであると えられる。 なお,ドバイに限っての事情であるが,新 車も含めた自動車全体でみると,近年急激に 輸入台数が増加している。乗用車(ガソリン 車)で見ると,2005年には 183,523台であっ たものが,2006年には 234,201台,2007年に は 297,993台となっている。しかもこれはフ リートレードゾーン(後述)に輸入されるも のは含まない数値だという。新車マーケット は日本車が強く,毎年 14万台の自動車新規登 録のうち,7割程度が日本車とのことであ る 。

3.中古車輸入に関する規制

3.1. 従来の輸入規制 浅妻裕(2008)でも触れられているように, 中古車の輸入規制が流通の動向に与える影響 は極めて大きい。よって,ここでは UAE にお ける従来からの輸入規制を整理しておきた い 。 UAE の国内市場向け中古車に関しては, イスラエル以外はどの国からでも,またどの ようなブランド・モデルでも輸入可能である。 もちろん,一定の規格基準を満たす必要はあ る。ただし,UAE には自動車に関する包括的 な規格基準は存在しないので,湾岸標準化機 構(GCC Standardization Organization,略 称 GSO)が作成した規定(ガルフ・スタンダー ド)にしたがっている。 まずは,左ハンドルであることが義務付け られている。これを定めているガルフ・スタ ン ダード が,M otor Vehicle General

独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)ドバイ 事務所へのヒアリングによる。 表 3 アラブ首長国連邦における中古車輸入台数 2005年 2006年 国 価格(AED) 台数(台) 一台あたりの価格 価格(AED) 台数(台) 一台あたりの価格 日本 1,598,707,581 137,832 11,599 1,851,129,952 121,379 15,251 アメリカ合衆国 323,240,609 13,886 23,278 582,505,394 24,943 23,353 ドイツ 352,400,366 20,197 17,448 307,035,636 14,865 20,655 韓国 63,575,597 3,886 16,360 67,677,930 3,306 20,471 シンガポール 6,771,000 361 18,756 33,385,433 1,804 18,506 イギリス 21,027,969 312 67,397 22,384,764 298 75,117 フランス 14,148,086 370 38,238 8,666,935 262 33,080 その他 45,410,157 1,334 34,041 71,530,884 3,054 23,422 合計 2,425,281,365 178,178 13,612 2,944,316,928 169,911 17,329 出所:ドバイ税関統計を元に JETROドバイ事務所作成 本調査の主要目的は中古車・中古部品の再輸出で あるが,ここでいう輸入規制は UAE 国内へ持ち 込む場合に適用される規定である。ただし,再輸 出であっても,後述するフリーゾーン以外での取 引にはこの規定が適用されると えられるので, ここで整理しておいた。なお,後述のように,こ の規制は 2008年 12月以降変 されている可能性 がある。

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Requirements(GS42/2003)による自動車の 規格基準である。GS42/2003の 15.1項目に, ステアリングホイールは左側であることと規 定されている。すなわち,日本から現地に中 古車として輸入される可能性があるのは,左 ハンドル車のみである。現地で把握した情報 では,日本などから右ハンドル車を輸入して, 左ハンドルに改造してもこの規定を満たして いないと判断されるようで,登録はできない。 例外として,後述するように,再輸出を目的 としたフリーゾーンでは右ハンドル車の輸入 が認められている。 排ガス基準については,同じくガルフ・ス タンダードの Motor Vehicles Allowable Limits of Gaseous Pollutants Emitted to the Atmosphere from Unleaded Gasoline Engined Vehicles(無 ガソリン車を動力と する自動車から大気中に排出されるガス状汚 染物質の許容限度,GSO1680/2003)などによ り定められている。排出許容量以外にも,エ ンジン状態が良好である等の要件が必要に なってくるようである。 輸入を行う企業に関する規制もある。輸入 が可能なのは,UAE 国内でトレードライセ ンスを取得し登記されている企業に限られ る。この登記が可能な企業は UAE 国 民 が 51%以上出資する企業でなければならないと いう制約がある 。 最後に関税であるが,輸入時に,関税とし て CIF 価格の5%が課税される 。 なお,ここで記載した事項は中古車独自の ものではなく,新車の輸入と同様の規制であ る。従来は中古車独自の規制は存在しなかっ た。 3.2. 自動車登録と中古車輸入規制の変 2008年,UAE における中古車輸入規制の 導入計画やいくつかの自動車検査・登録に関 する規制の変 について各メディアで取り上 げられた。 2009年1月から,排ガス中に含まれる二酸 化炭素や炭化水素,窒素酸化物の含有率が厳 しくなる。これは2段階での規制であり,2010 年からは に厳しくなる。同時に輸入中古車 に関する年式規制が導入される。乗用車につ いて製造後5年超,トラックについては7年 超のものが登録できなくなる。 この規制とは別に,2008年 12月1日から は,経年数が 20年を超えた自動車について は,登録やその 新ができなくなる。この規 制によって 2008年 12月には 76,000台の自 動 車 が 路 上 を 走 れ な く な る と の こ と で あ る 。2010年1月からはより厳しくなり,15年 を超えたものに適用される。さらに経年数 10 年を超えた自動車については所有権の移転を 目的とした登録が禁止される 。 この規制が導入された理由として,古い自 動車から排出される排ガスを減少させること による環境改善,自動車台数増加による 通 システムの問題改善,ドライバーや大衆の安 日本貿易振興機構貿易投資相談センター 貿易投 資相談課(2008)による。 CIF 価格とは商品価格以外に,輸入港までの運賃 と保険料を含んだ価格。World Tariffによる。 (http://www.worldtariff.com/) UAE Interact 2008年 11月 24日号記事による。 UAE Interact 2008年 11月 25日記事,Khaleej Times2008年6月 18日記事による。

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全確保,といった理由があげられている 。自 動車台数の増加は近年の急激な経済成長によ りもたらされたものであるが,筆者らが訪問 した際もドバイからシャルジャ間,わずか 10 km の移動に1時間程を要し,問題の深刻さ を実感した。 この規制の影響はどのように予想されてい たのだろうか。現地の自動車ディーラーに よって,いくつか指摘されている。まずは, 国内で古い自動車の流通がなくなる代わり に,再輸出ビジネスは活性化するという見方 がある。規制対象の自動車保有者は必ずしも スクラップにする必要はなく,アフリカ諸国 や近隣中東諸国への再輸出が可能だからであ る。また,新車への需要が高まり新車市場に 好影響を与えるとの見方がある。ただし,国 の経済発展によって,これまでも新車市場の 相場が上昇しており新車価格に影響を及ぼす ほどではないようである。さらに,規制導入 の目的どおり,環境的に良い影響を与えると いう見方もある。これらの現地ディーラーの 見解を見ると,現地の自動車業界でもさほど 問 題 視 さ れ て い る 様 子 は な かった と い え る 。

4.DUCAMZ における中古車流通

4.1. ドバイのフリーゾーン UAE は,7つの首長国から成り立ってい る。原油の生産に関しては,首都のあるアブ ダビ首長国が UAE 全体の9割を生産してい る。UAE 最大の都市ドバイを有するドバイ 首長国は,石油以外の産業での発展を目指し てきた経緯があり,不動産部門,IT 部門,通 信部門や観光 野といったところを強みとし てきた。 貿易部門の振興を図ることも可能である が,UAE では法的な規定により,現地法人を 設置する場合,海外資本 100%での進出がで きないという問題がある。UAE 側で 51%以 上出資していなければならない。また小売が 外資に開放されていないなど UAE 全体での 規制が多い。ドバイについては,法人税や所 得税が存在しないので,海外企業にとってこ の点は魅力に感じられるであろうが,上記の 制約が障害となってしまう。 そこで,ドバイ政府が行ったのがフリー ゾーンの設置である。1985年に初めてのフ リーゾーンとなるジュベル・アリ・フリーゾー ンが開設された。このフリーゾーンは,当初 19社の立地でスタートしたが,2008年時点で 5,600社が立地し,中東・湾岸地域の一大企業 集積拠点となっている。現在, 設中や計画 中も含めて 19ものフリーゾーンがあり,ドバ イ経済での重要性を増しているといえる 。 なお,世界的な金融危機の中,ドバイにお ける不動産部門を中心とした経済成長が行き アラブ首長国連邦における 通事故の 30%が古 い車の様々な欠陥によって発生するとされる。 UAE Interact 2008年 11月 17日号記事,Khaleej Times2008年7月 14日記事による。 現地発行の新聞 bussiness24-7,2008年6月 22日 号記事による。なお,規制導入後の状況は現時点 (2009年1月)ではフォローできていない。今後 の課題である。 ㈶中東協力センター(2008),pp.29-35,を参照し た。

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詰まり,バブル崩壊といった様相を見せはじ めている。サブプライム問題と原油価格急落 の影響で,欧米の投資ファンドや通力銀行が 一斉に投資資金を引き上げたため,数多くの 開発計画が 挫している状況のようだ 。フ リーゾーンの計画にも影響が出ている可能性 がある。 上記のジュベル・アリ・フリーゾーンの傘 下に,再輸出される中古車の取り扱いの 宜 を図るため中古車中継貿易市場(Dubai Cars and Automotive Zone,以下 DUCAMZ)が 専門エリアとして設置されている。

DUCAMZ はドバイの中心部から自動車で 約 30 ,市郊外に立地する Al Aweer Indus-trial Aria の一角にある。空港や港湾へのア クセスにも恵まれた場所である。Al Aweer Used Car Complex とあわせ,ドバイにお

ける中古車取り扱いの拠点となっている。大 きさはほぼ1km 四方であり,この中に 371 の店舗区画(現地ではショールームとよばれ る)とハンドル付け替え工場(後述),事務所 などがある。エリアは大きく4つにわかれて いるが,これは開設後,徐々に拡張されてき たためである(写真1)。DUCAMZ の正門を 入ると,規格化された外観の事務所が 々と 並び,事務所前のヤードや歩道にまで中古車 が展示されている。展示されている中古車の 中には砂を被って真っ白になっているものも 多く見られた。(写真2,3) このエリアは上記の外資に関わる出資要件 が不要で,100%外国資本での進出が可能と なっている。また,国外への再輸出が目的で あることから,上記のハンドル規制や排ガ ス・騒音等に関する要件は課されない。さら に,再輸出が目的であれば5%の輸入関税も 免除される。実際の手続きとしては,輸入時, 通常の関税と同様に輸入価格の5%に相当す る金額を預託し,その後 180日以内に再輸出 例えば,ダイヤモンド・オンライン「やっぱり「砂 上の楼閣」だった ドバイ不動産開発バブルの崩 壊」(2008年 12月 5 日)な ど。(http://zasshi. news.yahoo.co.jp/article?a=20081205-00000002-diamond-bus all) DUCAMZ に隣接する施設である。現地の人々の 中古車の売買に際し,いわゆるワンストップサー ビスを可能とするため,行政が設置したエリアで あり,DUCAMZ とあわせ,中古車売買の拠点エリ アとなっている。幅 460メートル,長さ 310メー トルと DUCAMZ よりは小規模であるが,中古車 取引をワンストップで行うために必要とされる各 種の施設を有する。まずはオークション企業の立 地が見られる。ゴールデンベルオークションとい い,毎週水曜日の午後 6:00−9:00の間に開催さ れている。ヤードも有しており 300台ほどを留置 できる。次に,DUCAMZ と同様,中古車を扱う ショールームが 126ある。さらに車検場もあり, オークション出品前の車両はここでチェックされ る。事務所施設には自動車登録を行うための行政 の 通部門事務所,保険会社のオフィス,オーク ション会社事務所,自動車ローンの手続きなどを 行う銀行が入居している。以上は The Emirates N e t w o r k ホ ー ム ペ ー ジ ( h t t p://w w w. theemiratesnetwork.com / auto / al aweer.

htm),Golden Bell Auction ホーム ページ (http://www.goldenbellauctions.com)より。 写真 1 DUCAMZ の案内図。大きく4つのエリアに

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された場合にはこの預託金が返還されるとい うものである 。立地企業には 50年間法人税 が免除されるという優遇措置もある 。 通常エリアとフリーゾーンでの貿易を比較 すると表4のようにまとめられる。 4.2. DUCAMZにおけるビジネスの実際 我々は,調査2日目の午前と3日目の午後, 2度にわたって DUCAMZ 内を調査し,複数 の企業にインタビューを行った。この結果を 利用して現地におけるビジネスの状況を紹介 する。 まず,DUCAMZ 内の業者によると店舗区 画を上回る 421の中古車販売業者が存在して いるようだ。そのほとんどがパキスタン人経 営のものであるが,インド系やスーダン系の ものも1%程度存在する。同じオーナーが複 数の店舗を所有したり,逆に複数の会社が一 つ の 店 舗 を シェア し た り す る ケース も あ る 。 日本貿易振興機構貿易投資相談センター 貿易投 資相談課(2008)

現地の開発組織 Economic Zone World(EZW) のホームページにおける DUCAMZ に関する記 載 よ り。(http://ezw.ae/en/businessunit/daz/ dubai-auto-zone.htmi)。 写真 2 DUCAMZ内の様子。規格化された店舗が並ぶ 写真 3 砂にまみれた展示車両 表 4 UAEにおける通常エリアとフリーゾーンでの貿易の比較 通常エリアでの貿易 フリーゾーンでの貿易 貿易の目的 国内販売,再輸出 再輸出のみ ハンドル規制 あり なし 排ガス規制 あり なし 騒音等に関する要件 あり なし 輸入関税 5% なし(ただし,輸入時に5%預託) 法人税 あり 50年間免除 現地法人の設立 UAE 側で 51%以上出資していなければならな い 100%外国資本での進出が可能 DUCAMZ 内のみならず,ドバイで日本人が経営 する中古車再輸出関係の店舗は存在しない。中古 車部門の流通についてはパキスタン人が独占して いる状況で,彼らの独特のネットワークに入り込

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現地の関係者の話を 合すると,DUCAM からの輸出先国として主要なところでは,ケ ニア,タンザニア,ウガンダ,コンゴ,モザ ンビーク,アンゴラ,スーダン,リビア,南 アフリカなどがあげられる。シェアが大きい のはケニア,タンザニア,ウガンダ向けで, ウガンダ向けの伸びに勢いがある。また,ケ ニアやタンザニアで導入された輸入の際の年 式規制も関係して,再輸出される地域ごとに 商品に特徴がある(表5)。 DUCAMZ は中東やアフリカ諸国が再輸出 の対象となっているため,戦争・ 争や経済 制裁など社会情勢の変化が仕向け先国の大き な変動をもたらすことも多いようだ。例えば, 2004年は復興需要に関連してイラク向けの 輸出が活発化した。現地では,翌 2005年にか けて「イラクの年」とも呼ばれている。ここ 1年,再輸出業者にとって有力な市場となり つつあるアンゴラも同様の状況で,2002年に 内戦が終わり,その後武装解除が進む中で治 安が安定してきたことが関係しているといえ る。また,2008年の春先に見られたケニア向 け輸出の減少も社会情勢と関係がある。2007 年に行われた大統領選の結果をめぐり,2008 年初頭から暴動・政情不安が起きたこともあ り,2008年春にかけて輸出が減少した。 なお,図4で示されるように UAE 向けの 中古車(乗用車)平 単価がロシアやニュー ジーランドに比べると相当安価であり,2001 年以降,20万円台前半を中心に価格が小幅に 変動していた。したがって,現地での販売価 格帯も以前は 2,000ドルより安いものが主流 だったという。しかし,近年のアフリカ諸国 における年式規制の導入や DUCAMZ の賃 料高騰,さらには 2008年まで観察された日本 の中古車オークション市場の高騰といった要 因 と 推 測 さ れ る が,11月 時 点 で 平 し て 3,000−5,000ドル程度と上昇傾向にある。 現地では夏季は酷暑のため,中古車流通量 が減少するそうだ。6月∼9月の時期がそれ にあたる。例年だと,10月以降は再び流通が 活発となるようだが,2008年は例年と異な り,活発化する動向はみられていない。この ことから 2008年 10月以降,ドバイの中古車 流通が落ち込んでいるという話も聞いた 。 表 5 再輸出先国別に見る輸出中古車の特徴 再輸出先 特 徴 アンゴラ 年式規制がなく,93∼94年のトヨタ車がよく売れている ウガンダ 価格帯が非常に広い ケニア 年式規制(8年未満のものしか輸入できない)のため 2001年位の中古車が多い タンザニア 製造後 10年超の中古車には追加課税されるため,1998年−2001年までの中古車が売れている モザンビーク 年式規制はないが,最近は高年式車が輸出されるようになっている 出所:ヒアリングから筆者作成 むのが難しい。この参入障壁が日本人にとっては 高いようだ。かつてジュベル・アリ・フリーゾー ンには日本人中古車輸入業者がいたそうだが,す でに撤退している。なお, 機については,再輸 出ビジネスを行っている日本人業者が存在する。 現地での 機レンタル業を営んでいる日本人もい るとのことである。(JETROドバイ事務所への聞 き取りから) 特にハイエンドの高級車の売れ行きが落ち込んで

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これには次のような原因があると えられ る。第一に,ドバイへの中古車の輸入段階で, 為替レートの変動を受けていることがあげら れる。現地通貨の ADH(ディルハム)はドル と連動しているため,この間の円高ドル安傾 向によって,日本車を購入することが現地の ディーラーにとっては厳しくなってきている と えられる。第二に,2008年夏以降,アフ リカ通貨の下落が激しく,ドルに対しても非 常に弱くなっていることがあげられる。アフ リカの主要通貨の一つであるケニアシリング の場合,2008年8月までは1ドル=60シリン グ台だったが,我々の訪問時,11月には1ド ル=80シリングほどに変動した。第三に,ア フリカ各国から UAE への入国のために必要 となるビザの価格が上昇していることであ る。以前は 4,500円ほどだったのが,我々の 訪問時には 30,000円へと変 されていた。 時間帯も関係あったと思われるが,我々の 訪問時 DUCAMZ 内にはバイヤーの姿はほ とんどなかった。アフリカからのバイヤーも よく見られると聞いていたのでいささか拍子 抜けであった。我々が訪問した業者の一人は, 日本から輸入するのは難しくないが,再輸出 す る の が 大 変 で あ る と いって い た。 DUCAMZ で主流となっていたビジネススタ イルは,アフリカからのバイヤーが,中古車 とその他雑貨(靴や洋服など)を購入して持 ち帰るというものである。アフリカからバイ ヤーが来訪することが事業成立の前提条件と なっているため,現状には相当の危機意識を もっているようにも思われた。 4.3. 左ハンドル市場の存在 現地の複数の事業者に確認したところ, DUCMAZ では実はかなりの数の左ハンドル 車を扱っていることがわかった 。しかも,ほ ぼすべての店舗にあたる 400社ほどが扱って いる。輸入元としては,日本,アメリカ,韓 国,台湾,シンガポールであるが,特にアメ リカが多い。中国からは輸入されていないが, 韓国からの中古車は 2,000ccクラスの性能 が向上したため流通量が増えているのが現状 だ。UAE や周辺諸国全体が経済成長してい るので左ハンドル中古車へのニーズは高いよ うである。 現地の関係者からの聞き取り結果を 合す ると,再輸出先は近隣中東諸国や CIS 諸国, アフリカ諸国(西海岸)である。サウジアラ ビア,イラン,イラクといった湾岸地域の国 の人々の場合,購入後そのまま乗って帰って しまうケースも多い。日本からの中古左ハン ドル車の流通に関しては,流通過程における 不確実性を嫌い 2004年以降減少傾向にある とのことだ 。アメリカ車の人気が低いイラ ンでは,日本車への需要が高いが主に新車が 対象で中古車はさほど流通していない。左ハ いることと,顧客が特定のブランドにこだわらず に購入する傾向が出てきているとい う。(Gulf News,2008年 12月8日付け記事による) web 上 で も こ の こ と が 確 認 で き る。例 え ば, RIZVI トレーディング(http://www.ebiz.co.jp/ cgi-bin/out1.cgi?name=comp&value=so-hail1)では,左右量ハンドル車を扱っていると記 載されている。なお,この会社では 機なども扱っ ているようだ。 流通過程の不確実性の原因はいくつか えられる が,例えば絶対的な発生台数の少なさがあげられ る。また現地のヒアリングでは,日本から中東向 けの 舶が新車優先であるため,中古車のスペー スが確保できないことが不確実性としてあげられ た。半年も港で待たされたケースもあったそうで ある。逆に言えば,右ハンドル車はその不確実性 を補って余りある需要があったといえる。

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ンドル車を販売台数全体の半数くらい扱って いる業者によれば,イエメンは中古車輸入規 制がないため輸出しやすいとの声もきいた。 なお,DUCAMZ も含めた UAE のフリー ゾーン全体の中古車再輸出に関連するデータ が表6である。フリーゾーンからの輸出統計 であることから,再輸出であると思われる。 これによれば,第1位のイラク,第3位のア ンゴラ,第7位のアフガニスタンなど,上位 に位置する国では左ハンドルが多い。日本側 からの視点で調査をすると,中古右ハンドル 車の流通への関心が高くなるが,実際には左 ハンドル車の流通が相当多いことに留意する 必要がある。一方,日本の貿易統計によれば, 2007年には,日本から UAE 向けに左ハンド ル車も含めてであるが 12万台超の中古車が 輸出されており,表6に示される数値で再輸 出される中古車がカバーできているのかどう か疑問が残る。今後,この資料の確実性につ いて確認を行う必要がある。 4.4. ドバイを経由したケニア向け輸出につ いて 日本からケニアへは 2007年で 42,341台の 中古車が輸出されている(表2)。しかし実際 の日本からケニア向け輸出台数はもっと多 い。なぜならドバイ経由の再輸出が多いとみ られているからである。 日 本 か ら の ケ ニ ア 向 け 輸 出 に つ い て は 1980年代半ば以降,年 1,000台を超える数値 が記録されている。その際信頼性の問題が懸 念されたため,1998年,財団法人日本自動車 査定協会(JAAI)の要請により,ケニア政府 が日本国内で JAAI による 積み前輸出検査 を義務付けた。この検査をクリアすることで ケニア政府の定める運行用件を満たすことが 証明される。隣国のタンザニア,モーリシャ スでも同様の検査が始まった。 その後,この検査を避ける目的と思われる が,ケニア,タンザニア,ウガンダといった 国で日本から UAE を経由して輸入される中 古車が見られたようで,各国で再び中古車に 対する品質への懸念が生まれた。そこで各国 は JAAI に対してドバイでの検査場開設を要 求した。その結果,2004年 12月から JAAI が Cars Auto Appraisal Centre(CAAC)に業 務委託する形でドバイ検査場での検査実務が 表 6 UAEにおけるフリーゾーンからの中古車輸出 実績(2007年) 順位 国 名 輸出台数(台) ハンドル 1 イラク 17,627 左 2 タンザニア 7,372 右 3 アンゴラ 6,282 左 4 タジキスタン 5,250 不明 5 イラン 4,275 左 6 ケニア 4,053 右 7 アフガニスタン 3,939 左 8 ウガンダ 3,905 右 9 トルクメニスタン 3,885 左(一部右) 10 コンゴ共和国 3,846 右 11 ソマリア 3,835 両方 12 ザンビア 3,466 右 13 イエメン 2,443 左 14 コンゴ民主共和国 1,921 不明 15 カザフスタン 1,836 左 16 スーダン 1,725 左 17 エチオピア 1,606 左 18 グルジア 1,462 不明 19 アルメニア 1,439 左 20 マラウイ 1,421 不明 出所:国際自動車流通協議会(iATA)による。(国際 自動車流通新聞,2009年1月号,掲載) 注:ハンドルの左右は湊(2008),P.171,現地でのヒ アリングに基づいて記載した。

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開始された 。開設当時,月間 200−300台の 輸出検査が期待されたが,シンガポールから の輸入が増えたことと,この時点でケニアに おけるドバイ経由の輸入の信頼性が落ちてし まっていたため,月間 100台前後の検査と低 迷した 。 2008年2月には検査機関が JAAI から㈱ 日本輸出自動車検査センター(JEVIC)へと 変わった。これについては,JEVIC のホーム ページ(http://www.jevic.co.jp/jevic japanese/news/index.html)にも書かれてい る。具体的には,ケニア基準局(The Kenya Bureau of Standard,略称 KEBS)が,ケニ ア国内での 用を目的とする日本ならびにド バイからの輸出中古自動車に関して,輸出前 検査機関として JEVIC を指名したとある。 そして,2008年2月1日よりこれまで JAAI が実施してきた輸出前検査を,JEVIC が代 わって行うことになった,という趣旨のこと が記載されている。これは,日本,ドバイと も共通の変 である。 ところで CAACは 合 設業を中心とする ETA スターグループ(http://www.etaascon. com/Nascon/index.asp)の傘下企業であり, 主要な業務はタクシー運行業である 。現在 は JEVIC の下請けとしての位置づけとなっ ており,検査水準も日本と同等となるように 配慮されている。ケニア向けについては床面 のサビの規制が厳しいので,ドバイ現地でサ ビの上から塗装するなどの軽作業も行ってい るようだ。 なお,当初の検査機関であった JAAI はケ ニア向け以外にも輸出前検査事業を行ってお り,同協会の「平成 19年度事業報告書」によ れば,タンザニア,モーリシャス,バングラ デシュ向け等に対して JAAI による輸出前検 査が実施されているとのことである 。 4.5. ハンドル付け替え工場 先述の通り,DUCAMZ は,日本を中心とし た中古車の再輸出市場であるが,この敷地内 の片隅に〝Workshop"と名づけられたエリア がある。ここには,主として右ハンドルを左 ハンドルに付け替える工場があった(写真4, 5)。 この〝Workshop"にある工場数は,現地で のヒアリング先企業からは 14社から 15社ほ どあると聞かされていたが,我々が見た限り では6社だった。ハンドルを付け替える理由 は,輸入国でハンドル規制があるからにほか ならない。そのため,右ハンドル車が輸出さ れるような国とは必然的に異なってくると思 われる。 そこで,我々は,6社のうち,5社を訪問 し(1社は代表者が不在だった),ハンドル付 け替え後の行方に焦点を置いて聞いた。主と して若いアフガニスタン人が切り盛りしてお り,多くの従業員が一生懸命ハンドルを付け 替える作業を行っていた。表7が付け替えら れた中古車の行き先である。 khaleej times,2005年2月 13日記事による。 日本からケニア向け中古車輸出の動向については 財団法人日本自動車査定協会(2007)を参 にし た。 具体的には,エムシー・トレード・ミドルイース ト(三 菱 商 事 ㈱ の 100%子 会 社),現 地 ETA ス ターグループの一員であるカートレードとのジョ イントベンチャーである。(Khaleej Times,2005 年2月 13日記事による) 同報告書はJAAIのwebサイトに掲載されている。 (http://www.jaai.or.jp/pdf/42jigyouhoukoku. pdf)

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これらを見ると,コンゴ,タジキスタン, カザフスタンなどの名前が目に付く。また, ナイジェリアのように西アフリカの国もあ る。しかし,様々な国の名前があることがわ かえる。これは,右ハンドル車の貿易と同じ である。 特定国ではなく,様々な国に輸出されてい るということは,輸出会社が自ら特定の販路 を開拓したというよりは,仕向け地のバイ ヤーが中古車を求めて UAE に集まってきた 結果のように思える。実際に DUCAMZ を訪 れたバイヤーが,同地の販売店で購入した中 古車のハンドル付け替えを依頼するようであ る。 先述の通り,筆者らが DUCAMZ を訪れた ときは,敷地内の店舗を見ても,バイヤーは あまり目にせず,極めて閑散としていた。対 照的に,ハンドル付け替え工場は,多くのア フガニスタン人が次から次へと車を改造して おり,活気に満ち れていた。バイヤーから の注文はあることはあるのだが,そのギャッ プ は 一 体 何 だ ろ う か。本 当 に バ イ ヤーは DUCAMZ 現地を訪れ,購入しているのだろ うか。あるいは,販売会社との信頼関係で, 現車を見ずに車を注文しているのだろうか。 このようなハンドル付け替えビジネスは, ハンドル規制がなければ生まれない。また, 同じ規制でも安全の観点からのハンドル付け 替え車の 用制限もこのビジネスのネガティ ブ要因である。さらに,現在は,部品の費用 や手間をかけても,その中古車が生む 益の ほうが大きいのだが,安価な新車が流通する ことにより,相対的な価値は下がる。いずれ にしろ,ハンドル付け替えビジネスは,中長 期的に成立するとは言いがたいものがある。 写真 5 ステアリングホイールがはずされている。 写 真 4 DUCAMZ 内 の ハ ン ド ル 付 け 換 え 工 場。 STEERING CHANGEの文字が見える。 表 7 ハンドルが付け替え後の中古車の輸出先 A社 アンゴラ,エチオピア,コンゴ,ジブチ, グルジア,その他右ハンドル国(ケニア, マラウィ) B社 アフガニスタン,カザフスタン,タジキス タン,グルジア,ウクライナ C社 中央アジア諸国,アフリカ D社 コンゴ,ケニア,ガボン,アンゴラ,シエ ラレオネ,アゼルバイジャン,タジキスタ ン E社 コンゴ,アンゴラ,ナイジェリア,カザフ スタン,タジキスタン,ロシア 出所:現地ヒアリングより著者作成 注:コンゴはコンゴ民主共和国,コンゴ共和国のどち らを指すかは確認していない。

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4.6. 中継貿易拠点としての DUCAMZとド バイの今後 DUCAMZ は UAE における中古車中継貿 易の拠点であるが,4.2.で述べたように現在 厳しい状況に直面している。このような状況 下で,DUCAMZ から撤退するケースもある と見られ,現地のディーラーによるとショー ルーム全体の5%ほどが空き店舗になってい る状況だ。これまでは見られなかった事態で ある。 4.2.で取り上げた為替レートの問題,入国 ビザの問題のほかに,世界金融危機の余波を 受けている,といった見方もあるかもしれな い が,こ れ ら を 原 因 と す る の で あ れ ば, DUCAMZ における流通量の減少は短期的な ものと見ることもできなくはない。しかし, 次に述べるように,DUCAMZ における中古 車流通量の減少はより構造的な問題を含んで いる。 それは,ドバイを経由しない直接輸入の流 通ルートが広まりつつあるということであ る。これまで再輸出先であったアフリカ諸国, 中央アジア諸国へドバイを経由せずに輸出さ れる傾向が出てきている。アフリカについて は,港湾の開発やその設備の充実などによっ て,輸送ルートが いやすくなってきている ことが一つの理由とされる。現地バイヤーは わざわざドバイに中古車を買いに来る必要は ない。アメリカや日本に直接アプローチすれ ば中古車を輸入できるのである。同様に,ド バイにおける中央アジア圏への向けた中古車 取り扱いも一時期は好調であったものの,現 在は急減速している 。 ケニアについては,中古車ディーラー協会 (Car Dealers Association)でのヒアリング で,日本からの直接輸入が普及する個別の理 由を確認している。ケニアにおいて日本から の直接輸入が盛んになったのは2年前からと される。当時,ケニア政府が日本からの直接 輸入を関税政策によって奨励し始めたためで ある。 通常,関税は CIF 価格に対する課税なので 運賃にもかかってくるが,ケニア政府は,ド バイからの再輸入の場合,日本からドバイの 運賃,ドバイからケニアの運賃いずれにも課 税した。一方,日本からの直接輸入であれば, 当然運賃にかかる関税は安くなる。これが日 本からの直接輸出を促進しているようだ 。 ケニア政府がこのような政策を実施している 理由は,環境政策として現地で導入された輸 入中古車の年式規制が,ドバイを経由した高 年式中古車の市場価格高騰を促し,中古車輸 入・販売ビジネスが落ち込むことを懸念した のではないかと えられる。実際,DUCAMZ の中古車ディーラー協会からも,ケニア政府 は,ケニアのビジネスの発展にとって直接輸 入が望ましいと えている,との説明を受け た。 なお,日本にも支店を持つある現地ディー お,この記事では,中央ヨーロッパ向けについて ドバイを経由せずに輸出されるようになったとの 趣旨がみられるが,同記事内で中央アジア向け輸 出に言及していることに加え,表6からはもとも と中央ヨーロッパ向け輸出は盛んではなく中央ア ジア向け輸出が盛んであると把握できるため,誤 植と思われる。 中古車ディーラー協会によると,日本からケニア にドバイを経由すると,トータルの輸送料にも課 税される関係で,直接輸出する場合に比べて 15% 関税が高くなるとのことである。 Gulf News,2008年 12月8日付け記事による。な

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ラーは,2001年にケニア(モンバサ)に事務 所を立ち上げ,ケニア向け輸出の3割を日本 から直接輸出するようになった。また,当然 ながら,4.4で述べたように 1980年代からケ ニア向けにまとまった台数が輸出されている ので,新規に日本からケニア向け直接輸出の ルートが開拓されたというよりは,直接輸出 が相対的に有利な状況になったということで ある。 いずれにしろ,今後 DUCAMZ 内のディー ラーの中には,店舗を内部に留めるのではな く,再輸出先国にも店舗を設け,現地におけ る直接輸入をはじめとした新たな流通ルート を開拓するなどの動向が活発になってくるで あろう。これにより輸送コストの削減が可能 になる。 もちろん新たな再輸出先を開拓することも 方向性としてありうる。これまでも UAE か らの中古車再輸出先は大きく変動してきた。 今回聞き取った中ではウガンダを筆頭にまだ まだ有望な市場はあり,中にはソマリア向け 中古車輸出も有望である,との返答もあった。 日本製中古車の再輸出拠点としてなおも中 継地としての役割を果たしていくのか,直接 日本と最終需要地を結ぶ流通にシフトしてい くのか,ドバイの再輸出市場が世界的な経済 危機の中で今後どうなっていくのか,注視し ていく必要がある。

5.中古車の中継貿易拠点形成と近年

の動向

4.で述べたようにドバイ(あるいは後述 するシャルジャ)は中古車の中継貿易の拠点 となっているが,これが形成されたのはいっ たいどのような経緯で,その後どういった変 遷をたどってきたのだろうか。福田(2008) に DUCAMZ 開設に至る経緯が記されてい る。 UAE は 1971年にイギリスから独立した 国であるが,1960年代からインド人やパキス タン人など南アジア各国から労働者や技術者 を大量に受け入れていた。その中で 1970年代 にはパキスタン人移民の一部がシャルジャ首 長国の Abu Shagara地区に自然発生的な中 古車販売業者の集積地を形成した。その後, 1993年から 1994年にかけて,当時日本から 多くの中古車が輸出されていたパキスタンで 輸入規制が強化された。これによって現地で の中古車輸入ビジネスを失ったパキスタン人 企 業 家 た ち が,新 た な 市 場 と し て Abu Shagara 地区に移住してきた 。約 700件と される 。従来からパキスタン人の集積が見 られた Abu Shagara地区ですでに中古車販 売が行われているという資源を活用して,右 ハンドル市場専門の中継貿易拠点を形成して いったのである。 その後,集積が進んだことにより駐車ス 日本自動車査定協会(2007)によると,1978年, 当時年間 25,000台の輸出を記録していたパキス タン向け輸出中古車がカラチ港で滞貨した。これ により が発生するもの,部品盗難に遭うものが 多発し,外貨の損失につながるとして同年 12月に 中古車輸入が禁止された。ただし,個人の持ち帰 り貨物としての中古車輸入のみが認められていた ため,ドバイ経由での輸入にシフトしていったと ある。要するに,1970年代末期から UAE におけ る中継貿易が始まっていたとみることもできる。 この数値に,国内向けの中古車販売店と輸出向け の中古車販売店両方を含むのかそうでないのか不 明である。ただし,この時期,左ハンドル車の輸 出専門の中古車販売業者はほとんど存在しなかっ たと思われる。(Gulf News,2001年5月 20日付 け記事より)

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ペースが不足する問題などが発生したためと 思われるが,現地の中古車ディーラー協会 の要請を受けたドバイ首長国政府が貿易拡大 に よ る 財 政 安 定 化 を 目 指 し て 1997年 に DUCAMZ を 設開始し,2000年に開設され たという経緯である 。 DUCAMZ 開設後,取引量は順調に増加し たようだ。入居企業,取引台数とも順調に伸 び,2000年から 2001年にかけて DUCAMZ 経由の中古右ハンドル車再輸出が 39,271台 か ら 46,338台 へ と 増 加 し た。2001年 で は ショールームが 235箇所,400−500台/日の 取引であり,2002年には,400社,500−600 台の取引があった。年間では 10万台超の取引 となった。この急成長は,4割を占めるアフ リカマーケットが大きく貢献しているが,ア フガニスタン,イラク向けの輸出の増加も影 響している 。 2003年に入っても取引量は順調に増加し, 上 四 半 期 で み る と,前 年 の 17,000台 か ら 29,000台となった 。ところが,イラク戦争開 始後の時期,UAE での中古車販売が2割も 減ったという報道も見られ,DUCAMZ も少 なくない影響を受けたようだ。イラクからの 需要も多くあったためその が目減りしたこ とが影響しているのであろう。この結果,2004 年6月時点はショールームの数は 342箇所と 減少している 。 ただ,開戦当初の激しい戦闘を経て,連合 国の占領下におかれるようになるとマーケッ ト回復基調が見られてはいる。2003年も夏季 に入るとイラクとヨルダンの顧客が急増し, UAE 中 古 車 マーケット の 価 格 を 短 期 間 で 20%も引き上げたという状況が見られた。彼 ら は 左 ハ ン ド ル 車(日 本 か ら 輸 入 さ れ た BMW 等の外車)を購入しに来たため,BMW は市場から消失し,左ハンドル車の在庫が極 端に減った。そこで,バイヤーは購入した日 本車(右ハンドル車)を左ハンドルに付け替 えるようになった。費用は変わらなかったと される。多くのイラク人がハンドル 換用の 部品を購入するという状況もみられた 。 再びシャルジャについて述べる。すでに述 べたように,シャルジャにおける中古車輸出 ビジネスは DUCAMZ よりも古い歴 を持 ち,1990年代半ばには Abu Shagara地区に おいて中古車輸出業者が集積していた。2000 年の DUCAMZ 開設の影響は大きく,それま で中古車貿易の中心であったシャルジャから 多くの業者が移転し,空洞化といえるような 状況となった。当時右ハンドルを扱っていた 約 185の業者のうち,175が DUCAMZ へ移

Khaleej Times,2004年 6 月 14日,Gulf News2003年3月 28日付け記事より。 Gulf News,2003年6月 10日付け記事より。 この組織について,福田(2008)では「パキスタ ン人中古車販売組合」としているが,本稿では中 古車ディーラー協会に統一している。 以上,福田(2008)による。DUCAMZ 開設の時期 は資料によって異なっており,例えば中本 一 (2003)によれば,1999年から本格的に運営が始 まったとされている。なお,これによれば,この 市場にはパキスタン人ばかりでなくイエメン, UAE,アフガニスタン,インド,バングラディッ シュ,タンザニア,スーダン,ケニア,エチオピ ア,カナダ,といった様々な国籍の企業が入居し ていたようであり,我々が中古車ディーラー協会 で確認した「DUCAMZ 内の店舗経営者は 99%パ キスタン系」という状況とはかなり異なっている。 この間パキスタン系以外の企業が撤退した可能性 も えられる。 中本(2003)と,Gulf News,2002年2月 12日号, 2002年6月15日号,2003年3月28日付け記事より。 Khaleej Times,2003年6月15日付け記事より。

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転したという 。しかし,2001年に入るころか ら,シャルジャにも回復傾向が見られ,5月時 点では 200以上の業者が店舗を構えるまでに 回復したようだ。ドバイに進出した業者の中 にも再びシャルジャに出店する業者もある。 シャルジャ復活の要因は,海外からの顧客 がスクラップマーケットからの中古部品を購 入するようになった(市場ができた)ことと, 左ハンドル車も扱う業者が出始めたことであ る。右ハンドル車については,アフリカ諸国 からのバイヤーが目立つドバイと異なり,ア フガニスタン人が多く見られる 。ドバイ (DUCAMZ)とのすみわけにより,シャル ジャが存続・発展してきたものと思われる。 シャルジャは 2001年のアメリカ合衆国に よるアフガニスタン侵攻でも大きな影響を受 けた。ある業者によれば顧客の3−4割はア フガニスタン人であり,かれらは自国の他, 近隣の例えばパキスタンへの輸出もしていて いたとのことである 。同時期にはアフリカ からシャルジャ(ドバイ)への客も減少し, ソマリアやイエメンからの客で細々とビジネ スをする状況であった 。 DUCAMZ 開設による空洞化やアメリカ合 衆国のアフガニスタン侵攻による影響から回 復後のシャルジャでは面白い現象が見られて いる。左ハンドル車の市場について,パキス タン人に加えインド人やアラブ諸国など非常 に多くの国からバイヤーがやってくるように なったのである。ただし,一店舗当たりの売 り上げ台数は,1993−1994年のピーク時に比 べ半減している。当時と比べると店舗数が5 倍であり,競争が激しいためである。2002年 4月時点で,シャルジャとドバイあわせて 500もの輸出業者があり,これはその2年前 には 200以下であったのに比べ大きく増えて いる 。いずれにしろ DUCAMZ 開設が UAE における中古車貿易を大きく成長させたのは 疑う余地がないだろう。 シャルジャの中古車市場が長く抱える問題 と し て 駐 車 ス ペース の 問 題 が あ る。Abu Shagara 地区については,元々の居住地域に 中古車貿易業者が進出してきたので,駐車ス ペースの問題が深刻であった。1994年時点で は右ハンドル車専門の中古車貿易業者はわず か 35しかなく,その時点であれば業者も駐車 場問題に対応可能であっただろうが,1996年 の終わりには 80,1998年には 200まで増加し た よ う だ。2000年 に は 中 古 車 市 場 の DUCAMZ 移転でこの問題が解決したという 見方もあったようだが,2001年時点では,増 加する企業と住居用のビルのため,行政によ るこの問題の解決は依然困難な状況であっ た 。 こういった問題の深刻化をうけて,近年は Abu Shagara からのマーケット移転が計画 されている。2010年までにシャルジャ国際空 港近くの Riqqa Al Hamara地区にある敷地 Gulf News,2001年5月 20日,2002年4月 25日 付け記事より。 Gulf News,2001年5月 20日付け記事より。 日本のあるパキスタン人業者の話によれば,パキ スタン北部出身のパシュトゥーン人(アフガニス タンで最大の人口を持つ民族)たちがアフガニス タン経由で中古部品輸入規制よく変 される(= 厳しい)パキスタンへの輸入を行っているとのこ とであった。コンテナ積みにして持ち込んでいる。 Gulf News,2001年 10月2日付け記事より。 Gulf News,2001年5月 20日,2002年4月 25日 付け記事より。 Gulf News,2001年5月 20日,2002年4月 25日 付け記事による。

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面 積 877,495平 方 メート ル の Auto Zone Market に移転する予定である。シャルジャ 地 区 に は,従 来 か ら の 集 積 が あ る Abu Shagara に別の集積地である Bu Danig も加 え る と 440の 中 古 車 販 売 店 が あ り 年 間 186,000台の取引を数える。中東で最大の中 古車マーケットとも言われる。そういった集 積状況を背景として顧客やディーラーからの 行政に対する苦情が大きくなったのである。 また,中古車販売業者の集積は住民にとって も安全性の面から深刻な地域問題となってお り,このこともマーケットの移転の原因と なっている可能性がある。 マーケット 設の第一フェーズでは,400 店舗を準備し,従来から Abu Shagaraで店 舗を経営している業者が優先的に入居する。 第二フェーズでは 800店舗まで拡張し,その 他の業者も入居する予定である 。 なお,3.で述べた 20年超の乗用車の登録 禁止については,シャルジャには大きな影響 がでるとの見方がある。現地で販売されてい る大多数の中古車は経年数が 10−15年と低 年式のものが多いためである。それに対して ドバイでの主要な扱いは5−10年と比較的 高年式だ。現地での登録に限った規制のため, シャルジャにおける特に左ハンドル車の中古 車販売には影響がでてくるであろう 。

6.中古部品流通

前節で述べたシャルジャは,中古車よりも 自動車の中古部品の販売店が圧倒的に多い。 その多くは日本から輸入された中古部品であ り,中古車と同様に,アフリカや中央アジア に再輸出されている。ドバイのフリーゾーン は,自動車本体のみを扱い,部品はない。そ のため,UAE における中古部品貿易の拠点 は,筆者の知る限り,シャルジャである。 日本から輸出される中古車は,輸出先また は第三国で車として 用されることがわかっ てきた。つまり,解体・部品取りされる目的 で車が輸出されることはあまりない。中古部 品を調達する場合は,車そのものが国境を越 えるのではなく,往々にしてバイヤーが日本 を訪れ,解体された 用済自動車から必要な 部品を輸入するという形態をとる。 このような形態は,シャルジャの中古部品 貿易も同様である。店舗を見るとノーズカッ トなどのものも目にするが,解体工場が並ん でいるわけではない。多くが日本で解体され, 部品として輸入されていることがわかる(写 真6)。 筆者らが今回のシャルジャの調査で った テーマは,⑴中古部品販売業者は何社ほどな のか,⑵どこに再輸出されているかであった。 ⑴については,歩いて地道にカウントするこ とを想定しており,⑵についても可能な限り 歩き回り聞き取るつもりでいた。 しかし,予想が大幅に外れ,⑴⑵ともに十 な調査ができなかった。まず,シャルジャ の集積地に着いたときに,その地域の広さに 驚いた。 熱の中,半日で回れるほどの広さ ではなく,業者数を一つ一つ数えることはで きなかった。⑵についても,15社ほどは回れ のである。 Gulf News,2008年4月9日,9月 12日付け記事 による。 Khaleej Times,2008年6月 17日付記事より。 本章の内容は,阿部(2009)を加筆・修正したも

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たものの,輸出先はどこかという質問にまず 出てきたのは,「All countries」という回答ば かりであった。さらに具体的な国名をあげる ように求めてもありとあらゆる国名が出てき た(表8)。日本の富山県の中古車輸出業者が ロシアに特化しているように,特定国の名前 が出てくるわけでもなく,シャルジャからの 流通について,どの国が重要なのかが見えて こなかった。 このようなシャルジャの集積地には,パキ スタン人やアフガニスタン人に囲まれて,日 本人が一人で切り盛りしている中古部品販売 会社があった。この会社は,名古屋に本社を 置く3WM(スリー・ダブリュ・エム)の現 地法人であり,現地ではジャパンコーストと いう看板を掲げている。筆者は,以前ニュー ジーランドに拠点を持つ日本企業について調 査したことがあるが ,日本の自動車リサイ クル会社が国外に店舗を持つことは少ない。 この3WM によると,シャルジャの集積エ リアは,大きく3つに けられているという。 それらは,カレッジ裏(写真7),アルハン(写 真8),JNP と呼ばれており,カレッジ裏,ア 表 8 シャルジャの中古部品の輸出先 会社の規模 輸 出 先 国 A社 アフリカ諸国,ロシア,オマーン 大規模会社 B社 タンザニア,ウガンダ,マルタ,アフガニスタン,イラク C社 ルワンダ,ケニア,タンザニア,コンゴ D社 全ての国 E社 アフリカ諸国 F社 ケニア・タンザニア・エジプトを始めとしたアフリカ諸国,サウジアラビア,国内同業者 G社 国内同業者 H社 サウジアラビア,イラク,レバノン,タジキスタン,ウズベキスタン,ナイジェリア I社 アフリカ諸国,ロシア,ウズベキスタン,タジキスタン,カザフスタン,イラク,イラン 小規模会社 J社 マリ,コンゴ,タンザニア K社 国内同業者 L社 パキスタン,アフガニスタン M社 ロシア,時々アフリカ諸国 N社 ナイジェリア,ケニア,コンゴ,エジプト,ヨルダン,アフガニスタン,パキスタン O社 ナイジェリア,ケニア,アンゴラ,マリ,セネガル 出所:現地ヒアリングより著者作成 注1:店舗正面にヤードを有するものを大規模会社,店舗のみのものを小規模会社とした。 注2:コンゴについてはコンゴ共和国,コンゴ民主共和国のどちらを指すか確認していない。 阿部(2006)に記述がある。 写真6 日本から到着した中古部品コンテナに集ま るバイヤー

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ルハンにはアフガニスタン人が,JNP にはパ キスタン人が集積している。3WM の独自の 調査によると,シャルジャの中古部品販売会 社の数はおよそ 600社(カレッジ裏 150社, アルハン 150社,JNP 300社)とのことだっ た。 また,3WM によると,このエリア内には, 同じように見える中古部品販売業者が無数に あるが,彼らには役割 担があるという。大 きく けて4つあり,⒜輸入会社,⒝大規模 会社,⒞小規模会社,⒟ブローカーに けら れる。輸入会社は,コンテナで中古部品を輸 入し,ブローカーや小規模会社がこれを買い 取る。輸入会社のコンテナ前には,ブローカー や小規模会社の従業員が集まり,簡単な競売 が行われる。ブローカーは,調達した部品を シャルジャ内の販売会社に販売する。小規模 会社は,それぞれ扱う部品を特化しており, それをアフリカや中央アジアなどの顧客に販 売するほか,シャルジャ内の同業他社に売る。 大規模会社は日本から輸入もするし,自ら輸 出もする。輸出の際には,シャルジャ内のブ ローカーや小規模会社から部品を買い取って 品を揃えることも多々ある(図5)。 実際に,カレッジ裏の大規模業者を訪れる と,日本(千葉や名古屋の名前を聞いた)に 買い付けに行き,部品を調達していると述べ ていた。彼らの敷地は広く,部品だけではな く,中古トラックや 設機械も並んでいた。 さらに,解体も行っているとのことだった 。 経営は,アフガニスタン人であり,この地に 来て 15年から 20年とのことである。聞き取 これは,部品取り目的で輸入された車, 用目的 で輸入されたが販売できず解体される車,UAE で 用された後に解体される車などが えられる が,どの割合が多いのかは定かではない。なお, スクラップディーラーも集積しているとされる。 図 5 シャルジャの中古部品市場における経済主体 の関係 出所:3WM とのディスカッションより筆者作成 写真8 中古部品街の様子。(アルハン) 写真7 中古部品街の様子。ノーズカットが見える。 (カレッジ裏)

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りの最中には,オマーンから来た客や,欧州 のマルタから調達に来た客にも会った。 このような役割 担の中,3WM は⒜の輸 入会社の位置づけである。たまたまわれわれ が訪れたときに,同社の前には日本から送ら れてきたコンテナが置かれており,税関当局 の立会いのもと,そのコンテナが開かれる状 況だった。コンテナの前には,ブローカーや 小規模会社の従業員が多く待っていた(写真 6)。アフガニスタン人とも思えたが,皆若く, 10代のように見えた。 ところで,このような地になぜ日本企業が 立地するのか。3 WM によると,「情報」で あるという。マーケットの状況などの日本で 入らない情報が入ってくるし,それを瞬時に 把握することが可能であるという。また,日 本人が経営していることは,行政側にとって も信用があるようで,特別な優遇はないにし ろ,日本人ということで対応が変わることも 多々あったという。同様に,現地では,日本 企業というブランドが作用し,取引上の信用 を得やすいというメリットもあるという。 ただし,そのような状況になるまでには多 大な労力を要する。店舗を設けるにしろ,ま ず,行政との折衝がある。どのようにして土 地を借りるのか,どのようにして顧客との ネットワークを築いていくのかなどの多国籍 企業が向き合わなければならない課題があ る。それを克服することによって,他の企業 にはない優位性が生まれる。

7.UAE

研究の論点 今回,我々は UAE を訪問し,中古車・中古 部品の流通の実態を調査した。既述の通り, 同国は,ロシアやニュージーランドとともに, 日本の中古車の主要輸出先である。ただし, ロ シ ア や ニュージーラ ン ド と 比 べ る と, UAE は異なった特徴を持っている 。まず, 中古車または中古部品が再輸出目的で輸入さ れ,自国では われない点(中継貿易拠点) があげられる。これについては,同国の国内 市場に流入しないという事情,顧客がアクセ スしやすく市場が形成されやすいという事情 があげられる。また,貿易を担っているのは ほとんどが外国人である点も他国と比べた重 要な特徴である。これについては,外国人を 受け入れる土壌があったこと,移住者の本国 での戦火・ 困問題が えられる。 これらの特徴を 慮し,我々は,今後,ど のような視点で同国の市場を見ていく必要が あるだろうか。以下では,その論点をまとめ ておく。 ⑴ 再輸出先の経済事情や為替 中古車貿易には,相手国の経済事情や為替 の影響を強く受けるが,中継貿易国の場合, 対輸入国のみならず,対輸出国の経済事情や 為替の影響を大きく受ける。つまり,日本の 立場から見れば,アフリカや中央アジアなど の再輸出先の経済事情や為替を 慮して, UAE 向けの中古車市場のトレンドを 析し なければならない。再輸出先で自動車需要が あるとしても,為替の影響で日本からの輸出 中古車市場が縮小する可能性はある。 ロシア,ニュージーランドについては,寺西編 (2007)のほか,浅妻・中谷(2007),阿部・浅妻 (2008),阿部・木村・外川(2007)などでまとめ られている。

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⑵ 再輸出先の中古車貿易政策 同様に,UAE のみならず,再輸出先のアフ リカや中央アジアなどの貿易政策の動向を フォローしていく必要があるだろう。中古車 輸入の貿易障壁は,ハンドル規制,年式規制, 関税,登録規制など様々である。しかも,突 然,障壁が設定されることもあるし,政策が 頻繁に変わることもある。常に最新事情を追 うことは簡単ではないが,事後的にその動き を整理しておくことは重要である 。 ⑶ UAE の政策の動向 具体的には,フリーゾーンに対する経済政 策がある。現在は,再輸出されるということ で,関税は免除されているが,それがどう変 わるかわからない。また,DUCAMZ で営業を するために,賃料,手数料がかかっているが, その負担の大きさにもよる。さらに,外国人 に対する対応も重要である。国の労働を担っ ている外国人が去るようなことがあれば,集 積の利益もなくなってくる。外国人の入国管 理政策や住環境,ビジネス環境に対する政策 の動向を見ていく必要があるだろう。 ⑷ 他の中継貿易拠点の存在 カタールやバーレーンなど周辺国でも同じ ようなフリーゾーンを 設しないとは限らな い。また,シンガポールや香港,マレーシア のような別の地域の中継貿易国・地域もある。 ドバイやシャルジャの市場での売買が高コス トであるならば,外国人のフットワークの相 対的な軽さを えれば移転する可能性はなく はない。 ⑸ 中継貿易を経由しない状況 再輸出先の住環境やビジネス環境の影響も 受ける。現在は,ドバイやシャルジャを中継 地として輸出されているが,輸送効率,時間 効率,マージンに関しては,再輸出先にとっ ては,日本から直接輸入したほうが良い。昨 今では,インターネットにより,日本の輸出 業者と直接コンタクトを取ることができるよ うになっている。そのため,中継貿易拠点を 経由せず,直接アフリカや中央アジアに輸出 される状況がある。信頼関係が重要な貿易に おいて,日本の輸出業者が発信する情報の信 頼性が増すことによって,このような状況が 広がる可能性はある。 ⑹ 得意先を限定した取引 今回の筆者らの調査では,UAE に立地し ている輸出業者にとって,顧客は不特定多数 であり,得意先を定めている様子はなかった。 引き合いがあれば輸出するという受動的な印 象だが,今後,得意先を求めて開拓する状況 も えられる。その際に,ドバイやシャルジャ に立地する 益はあるのかという課題が生ま れる。 このように,UAE 向けの中古車市場には, 他の国とは異なる様々な論点が見えてくる。 中継貿易拠点としての同国の状況は,今後変 わってくるのか興味深い。それを見る上で, マレーシアやシンガポールなどの他の中継貿 易拠点との比較も重要である。また,日本で も東京都墨田区の立川のように自動車解体業 者が集積し, 散した歴 がある。集積と 中古車貿易政策については,浅妻(2008)でまと められている。

参照

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