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製品含有化学物質規制への対応

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製品含有化学物質規制への対応

Management of Chemical Substances Contained in Products

あ ら ま し 富士通グループでは,2003年に欧州で制定されたRoHS指令をはじめとした,製品含有化 学物質の規制への対応として,鉛を含まないはんだ材料の開発など先進的な活動を推進して きた。昨今,製品含有化学物質の規制は,日本や中国,韓国においてRoHS指令に類似した 法律が制定され,北米など様々な国や地域において新たな法規制の動きが見られ,世界的に 広がりつつある。これらの製品含有化学物質の規制に対応するためには,組織的な推進体制 が重要である。 本稿では,富士通グループがこれまでに進めてきた「製品含有化学物質の管理」に関し て,製品含有化学物質の規制対応で構築した富士通グループの組織体制や化学物質含有デー タの管理方法など,特徴的な取組みを中心に紹介する。 Abstract

The Fujitsu Group has promoted such progressive activities as the new development of lead-free solder for managing restrictions on hazardous substances contained in products ever since the EU’s RoHS directive was enacted in 2003. In recent years, RoHS-like regulations have also been enforced in Japan, China, and South Korea, along with a trend toward new regulations being enacted in various countries and regions such as North America. As a result, there are growing restrictions being imposed worldwide on hazardous substances in products. The scheme to systematically ensure and promote the “non-containment” of restricted substances is very important in order to properly comply with worldwide regulations governing the restricted substances in products. This paper introduces our internal organization, management method, and other specific measures that have been established to address restrictions on hazardous substances in products, with regard to the “management of chemical substances contained in products” that we have been advancing. 今村孝志(いまむら たかし) 環境技術統括部 所属 現在,RoHS指令などの製品含有規 制化学物質対策の推進に従事。 永宮卓也(ながみや たくや) 環境技術統括部 所属 現在,RoHS指令などの製品含有規 制化学物質対策の推進に従事。 山田真理子(やまだ まりこ) 環境技術統括部 所属 現在,RoHS指令などの製品含有規 制化学物質対策の推進に従事。

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製品含有化学物質規制への対応

ま え が き 化学物質の規制は元来,化学物質や薬品自体を取 り締まる化学物質審査規制法や化学物質管理促進法 などの法律と大気汚染防止法,水質汚濁防止法など, 人や環境への直接的な被害を防ぐための公害規制が 主流であった。 近年,使用済み製品の不法投棄や不適切な処分に よりその中に含まれる有害物質が環境汚染としてク ローズアップされ,欧州では化学物質の規制を制定 する上で「予防原則」という概念が盛り込まれるよ うになった。予防原則とは,人や環境に重大な影響 を及ぼす恐れがある場合,規制の制定や改正を検討 するという考えである。つまり,不法投棄されても 有害物質が漏出しないように,機器に含まれる物質 を前もって規制するという考えである。この考えの もとに制定されたのが,鉛・水銀・カドミウム・六 価 ク ロ ム の4 重 金 属 と ポ リ 臭 化 ビ フ ェ ニ ル (PBB)・ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) の2臭素系難燃剤の使用を制限したRoHS指令(注 )1 ELV指令(注 )2である。電気・電子機器に適用される RoHS指令などへの対応には,規制化学物質が購入 する部品・部材に含まれていないかを管理する「源 流管理」が重要となる。 本稿では,富士通グループが進めてきた「製品含 有化学物質の管理」について,特徴的な取組みを中 心に紹介する。 製品含有化学物質管理の枠組み 富士通グループは,製品含有化学物質の管理に関 して,図-1のように製品の事業責任を負う製品事業 部門を中心に,品質保証部門,購買部門,環境部門 を含めた組織的な活動体制となっており,2005年 12月より,この体制で推進している。 詳細は以下のとおりである。 (1) 非含有の要求 製品事業部門は新たに製品を設計する際に,その

(注1) Restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipmentの略。電気・電子機器 などに含まれる特定有害物質を規制するEU(欧州連 合)の指令。

(注2) End of life vehiclesの略。自動車の材料・構成部品に含 まれる特定有害物質の規制と使用済み自動車のリサイク ル率に関する規制を定めたEUの指令。 製品に使用する部品・部材に規制化学物質が規定値 以上とならないようお取引先に要求する。具体的に は,製品を構成する部品・部材のすべての設計図面 などに,規制化学物質の対応要求を記載している。 (2) 適合証明の入手 製品事業部門は規制化学物質の非含有要求に対し て,お取引先より適合証明を入手する。 (3) お取引先監査 品質保証部門はお取引先の監査を行う。監査は, お取引先が会社として適合証明を適切に提出できる 仕組み・体制があることが重要であると考え,会社 単位の評価として実施している。また,監査の内容 はJGPSSI(注 )3 により策定された「製品含有化学物 質管理ガイドライン」(2)に準拠しており,化学物質 規制に対する管理体制の確認のため,取組み方針, 基準類,工場の整備体制などについて監査を行い, 必要により改善を実施していただいている。 (4) 法適合確認 環境部門は製品事業部門で,その製品に使用され るすべての部品・部材について適合証明を入手し, すべてのお取引先の監査を終了していることを確認 する。 (5) 受入検査 製品事業部門はお取引先から納入される部品・部 材の抜取り検査により現品確認を行う。 (6) 社内製造工場定期監査 品質保証部門は社内における製造プロセス内で規 制化学物質が混入しないような体制になっているか の監査を行う。 (7) 出荷判定 製品事業部門は製品出荷可否確認の一環として, (1)~(6)のすべてが適切に実施されていること を確認する。 この枠組みの特徴は,従来からの製品開発手順に RoHS指令を順守するための手順を追加し,設計者 がRoHS指令の順守を意識した上で,製品を開発・ 設計する仕組みにしていることである。 また,お取引先は富士通グループからの要求に応 じて部品・部材を納入していただくことになるが,

(注3) Japanese Green Procurement Supply Survey Initiative の略。国内のグリーン調達調査共通化協議会(1)のことで,

電気・電子関連メーカの有力各社が集まり,グリーン調 達の共通化の取組みをするために組織化された協議会。

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製品含有化学物質規制への対応

お取 引 先 お客 様 富士通グループ 環境部門 法適合判断 購買部門 (1) 非含有要求 (2) 適合証明 製品事業部門 品質保証部門 (3) お取引先監査 納入 (5) 受入検査 (6) 社内製造工場  定期監査 (4) 法適合確認 出荷 (7) 出荷判定 図-1 製品含有化学物質管理の枠組み

Fig.1-Framework on management of chemical substances contained in products.

構成素材 六価クロム PBB/PBDE 鉄鋼材 アルミ材 金属素材 銅材 マグネシウム材 そのほか NiPめっき めっき Znめっき そのほか はんだめっき 表面化成処理 熱可塑(CHON系) 熱硬化(CHON系) 金属素材 塩素樹脂(PVC) フッ素樹脂(テフロン) シリコーン樹脂 塗装 樹脂系塗装 ガラス セラミックス 梱包材(紙,インクを含む) ランク1:まだ使用(代替進行中) ランク4:実用上ありえない ランク2:まれに使用(代替材料普及) ランク5:原理上ありえない ランク3:極めてまれ(過去の材料) 除外用途 水銀 鉛 カドミウム 黄銅 接点 4.0 wt% 0.4 wt% 0.35 wt% 色物のみ 色物のみ 電子部品 電子部品 図-2 素材の含有リスクマップ

Fig.2-Containment probability chart for RoHS-prohibited substances in various materials.

富士通グループではこの部品・部材に対し部品・部 材単位,会社単位という複数の側面から評価し判断 していることも特徴の一つである。 次章より,富士通グループにおける具体的な活動 について,いくつかのトピックスを紹介する。 含有リスクマップによる効率的な検証 RoHS指令においては,均質材料レベルでの最大 許容濃度が規定されている。このため,対象物質の 管理は「部位」ごとに行わなければならない。部品 を部位ごとに展開するということは,ケーブルでは, 被覆,銅線,シールド紙,めっき部などとなり,こ れらを使用したユニット品となると確認箇所が膨大 となる。この確認を効率的に行うために,富士通グ ループでは規制化学物質の含有リスクの程度を部位 ならびに規制化学物質ごとに調査し,「含有リスク

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製品含有化学物質規制への対応

マップ」(3)を作成した(図-2)。 この含有リスクマップを用い製品に使用する部 品・部材を検討する仕様化の段階で,含有リスクが 高い部位を特定する。この方法で規制化学物質の効 率的な含有検証を行い,含有リスクの低減を図って いる。 サプライチェーンでの情報収集とデータの管理 電気・電子機器メーカの多くはお取引先から部 品・部材を購入し製品を製造している。したがって, 製品に含有する規制化学物質の含有状況を把握する には,サプライチェーンを通じて情報収集を行うこ とが必要となる。富士通グループにおいても電気・ 電子機器業界統一フォーマットであるJGPSSI調査 フォーマットを活用している。 RoHS指令のように,最大許容濃度が物質ごとに 定められている規制では,製品ごとの含有量の管理 が必要となってくる。つまり,先に述べた製品含有 化学物質管理の枠組みの中で,購入品中の規制化学 物質の含有量を把握することが必要である。 この規制化学物質の含有調査を各社が,物質や調 査フォーマットを統一せずにばらばらに行うと,お 取引先が混乱し調査回答の収集が極めて困難となる。 そのため業界を通じた連携が必要不可欠である。 富士通グループでは,お取引先から入手した規制 化学物質の含有情報を,以下のような利点を持つ GIDB(注 )4 という富士通グループ独自のデータベー スシステムにより一括管理している。 (1) 調達する部品・部材の調査依頼から回答まで の進捗状況などの一元管理が行える。 (2) 自 社 の 製 品 に 関 す る 含 有 物 質 を 集 計 し , RoHS指令などの法規制およびお客様のグリーン 調達要求への対応評価が容易になる。 (3) JGPSSI調査フォーマットでは,RoHS指令の 規制物質以外の含有情報も収集しており,新た な化学物質が規制された場合において,当該物 質がどの製品のどの部品に含まれているかを把 握できるため,代替物質の検討などにも大いに 活用することができる。 このような社内におけるノウハウをパッケージソ フ ト 化 し た の が , 環 境 情 報 管 理 シ ス テ ム

(注4) Green Information Data Baseの略。富士通グループに おける調達品の含有化学物質管理データベース。 “PLEMIA/ECODUCE”(4)である。PLEMIA/ECODUCE は,JGPSSI調査フォーマットによるデータファイ ル入出力を可能にするだけでなく,自動車業界にお ける部品の材料および含有物質情報の収集システム であるIMDS(注 )5にも対応しており,様々な業種の 会社においての含有化学物質管理ツールとして利用 されている。 分析技術の開発 お取引先から入手した情報の信 憑ぴょう性を確認する ため,またお取引先自身が非含有を保証するための 一つの手段として分析が挙げられる。富士通グルー プでは,規制内容や国際標準化動向などを考慮した 上で,効率的な分析方法を確立し,「富士通グルー プ指定化学物質の含有分析に関する指針」(5)として 公開している。そのほかにも富士通では,従来の分 析方法では精度の高い分析が不可能であった分野に おいて新しい分析技術を開発した。それら新技術に ついて以下に紹介する。 ● 六価クロムの高精度分析技術 従来の方法では,クロム元素の有無について,ま ずエネルギー分散型の蛍光X線を用いてスクリーニ ング分析を行う。そこで,クロム元素が検出された ものは,「熱水抽出(JIS H8625附属書2に準拠)」 や「アルカリ抽出(EPA 3060Aに準拠)」といった 公定法に準じた溶出を行い,吸光光度法やイオンク ロマトグラフィーなどで定量する方法が一般的であ る。しかし,この方法では,つぎのような課題があ り,クロメート膜の状態で六価クロムを検出する方 法が必要とされていた。 (1) クロメート膜中の六価クロムの全量抽出 (2) 抽出時の六価クロムの価数変化の防止(六価 クロム⇔三価クロム) (3) 共存元素による定量妨害の対策 2005年9月に放射光分析(XANES:X線吸収端近 傍構造)を用いた高精度な再現性の良い分析方法(注 )6 を開発した。(6) この方法を定量基準として活用し,一

(注5) International Material Data Systemの略。自動車を構 成する約3万点の部品の材料および含有物質情報を収集 するためのシステム。 (注6) ほぼ光速で直進する電子が,その進行方向を磁石などに よって変えられた際に発生する電磁波(X線)を利用し, 六価クロムにのみ特徴的な波長のX線吸収ピークを利用 する非破壊分析法。

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製品含有化学物質規制への対応

アルミナ レジン はんだめっき(規制対象) 保護膜 断面 電極 レジン銀 ニッケルめっき 抵抗体 鉛ガラス(除外用途) 銀 図-3 チップ抵抗電極部断面(例)

Fig.3-Example for cross-section of electrode in chip resistors.

般的な化学分析の定量値を校正することにより,上 記の課題を克服し,化学分析により六価クロムを高 精度に定量することができる。このほかにも六価ク ロムの分析方法として,ラマン分光法(注 )7などを用 いる方法についても検討した。いずれにしても,効 率良く高精度な分析を行うには,分析対象や目的, 状況に応じた,より適切な分析方法や条件の選択が 必要である。 ● 部品電極はんだめっきの高精度で容易な分析 技術 従来,図-3のチップ抵抗のように,保護膜や抵抗 体などに使用される鉛ガラス中の鉛はRoHS指令の 除外用途として使用が認められているが,隣接する 電極のはんだめっき中の鉛は規制対象となる。しか し,チップ抵抗のように複合材料で構成され,とく に薄い層が重なった電極部分のはんだめっきを効率 良く高精度で分析することが困難であった。 2007年9月に蛍光X線分析装置を用いて,はんだ めっき中の鉛を効率的に分析する方法を開発した。(7) この方法は部品のはんだめっき部分を,ラッピング フィルムで研磨し,フィルム上に移った粉末状のは んだめっきをフィルムごと測定試料とすることで, 除外用途の鉛の影響を排除した分析を行うことが可 能である。 (注7) ラマンスペクトルを利用する分析方法。物質に短波長の 可視光線や紫外線を照射すると分子振動のうち分極率の 変化を起こすものに起因して,入射光は波長の変化を受 けて散乱される。この散乱強度が物質固有であるのを利 用した分析法。 また,広く使用されている蛍光X線分析装置と安 価なフィルムを使用し,特別な工具などを必要とし ないため,製造現場や購入品の受入現場で,低コス ト,短時間,高精度な分析として活用されている。 む す び 本稿では,富士通グループが欧州RoHS指令への 対応として開始し推進してきた「製品含有化学物質 の管理」に関する取組みと特徴的な活動を紹介した。 RoHS指令は欧州にとどまらず,日本や中国,韓国 へと影響を広め,さらに世界中の様々な国や地域で RoHS指令に類似した法律が準備されてきている。 また,欧州では2007年に新たな化学物質政策とし て「REACH規則(注 )8」が施行された。REACH規則 は,RoHS指令のように製品中に使用されているこ とが既知である化学物質を廃絶するための法律では なく,まず危険な化学物質が製品中にどの程度使用 されているかを把握し,当該化学物質の評価結果に よって,有害と判断される物質はRoHS指令などの ように製品中に含まれる当該化学物質を廃絶してい こうという法律である。 このように製品中に含まれる化学物質への規制は, まず規制化学物質の使用量の「管理」を求めるもの へと移り変わってきている。その変化にも対応でき るようサプライチェーンの管理強化も含めて,製品

(注8) Registration, evaluation, authorisation and restriction of chemicalsの略。化学物質について,製造・輸入する 事業者に事前登録と評価を義務付けるEUの規則。

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製品含有化学物質規制への対応

含有化学物質の管理体制を随時見直し市場の要求に 瞬時に応えるべく活動していく。 参 考 文 献 (1)JGPSSI:グリーン調達調査共通化協議会のページ. http://210.254.215.73/jeita_eps/green/ (2) グリーン調達調査共通化協議会:製品含有化学物 質管理ガイドライン. http://210.254.215.73/jeita_eps/green/green8.htm (3) 富士通クォリティ・ラボ:リスクマップの紹介. http://jp.fujitsu.com/group/fql/services/rohs/column/ 7th/ (4) 富士通:PLEMIA/ECODUCE紹介ページ. http://jp.fujitsu.com/solutions/plm/pdm/plemia/ ecology/ (5) 富士通:富士通グループ指定化学物質の含有分析 に関する指針. http://procurement.fujitsu.com/jp/ gr_guideline_yuv2.0.pdf (6) 富士通研究所:六価クロムの高精度分析手法開発 に関するプレスリリース. http://pr.fujitsu.com/jp/news/2005/09/29.html (7) 富士通研究所:チップ部品のめっき中に含まれる 鉛の効率的な分析手法の開発に関するプレスリリース. http://pr.fujitsu.com/jp/news/2007/09/14-1.html

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