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PDF/開催および演題募集のお知らせ

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Academic year: 2021

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緒 言 ミューラー管遺残組織の化生により発生する とされる後腹膜の深部子宮内膜症は,直腸,腟, 膀胱・尿管といった周囲の後腹膜臓器に浸潤す ることが知られている.今回われわれは後腹膜 に発生した子宮内膜症が腹腔内へN胞状に進展 したと思われる1例を経験したので,若干の文 献的考察を加えて報告する. 症 例 患 者:42歳,0回経妊,0回経産. 主 訴:月経困難・頻尿. 家族歴:特記すべき事項なし. 既往歴:特記すべき事項なし. 月経歴:初経13歳,周期28日. 現病歴:検診にて骨盤内腫瘤を指摘され,当院 紹介となった. 現 症:身長155.0cm,体重53.2kg(BMI22.1). 体温36.5℃,血圧122/72mmHg,脈拍数76bpm. 腹部は平坦かつ軟で腫瘤を触れず.表在リンパ 節の腫大なし. 内診所見:腟分泌物は白色少量.子宮腟部にび らんなし.子宮は腫瘤にて触れず,内診指にて 腟部は可動性良好で,挙上痛を認めなかった. 付属器は小児頭大・軟・可動性のある腫瘤を触 知した(左右不明),ダグラス窩に圧痛・硬結 等の所見なし. 血液検査所見:血算・肝機能・腎機能に明らか な異常所見は認めず,腫瘍マーカーにおいては CA19―9 47.3U/ml,CA125 299.8U/ml と高値 を示していた. 超音波断層検査所見(図1):骨盤内に多房性腫 瘍を認め,一部に充実成分を認めた. 骨 盤 MRI 所 見(図2):約12cm×12cm×15cm の多房性N胞性病変を認め,N胞内は T1/T2WI で多様な信号強度であり,漿液性から粘液性の 成分を反映していると考えられた.一部,造影 効果を伴う不整な充実部分(50×38mm)を含 み,悪性が疑われた.病変は左卵巣と接してお 米山 剛一1),明楽 重夫1),川本 雅司2),竹下 俊行1) 表1 血液検査所見 WBC RBC Hb Hct 6800 461 14.1 41.3 /µl ×104/µl g/dl % Plt GOT GPT LDH 27.2 16 8 152 ×104/µl IU/l IU/l IU/l T-Bil Na Cl K 0.5 140 108 4.3 mg/dl mEq/l mEq/l mEq/l BUN CRE TP Alb 12.3 0.61 7.6 4.6 mg/dl mg/dl g/dl g/dl CRP CEA CA19―9 CA125 <0.1 0.6 47.3 299.8 mg/dl ng/ml U/ml U/ml 図1 超音波断層検査

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uterus ovary Posterior broad ligament of the uterus Solid tumor cyst rectum り,卵巣由来の悪性腫瘍と思われた.対側の卵 巣および子宮は正常大であり,病的な腹水貯留 やリンパ節腫大は認めなかった. 術前細胞診:子宮腟部・頸部細胞診 NILM, 子宮内膜細胞診:Class¿. 上部・下部消化管内視鏡:異常なし 臨床経過:上記所見から,卵巣癌疑いにて,開 腹手術を行った. 手術所見(図3):術中所見では,子宮および 両側卵巣は正常大で,腫瘍との連続性は認めな かった.腫瘍は単房性N胞が多数連なるように 存在し,その基部は子宮左側後腹膜,左基靭帯 の外側より発生し,子宮広間膜後葉を貫き腹腔 内へ進展していた.N胞の解剖学的関係を(図 4)に示す.腫瘍の摘出を行い,術中迅速病理 組織検査にて子宮内膜症性N胞の診断であっ た.悪性所見は認めなかったため,術式は腫瘍 摘出術のみに留めた.また,腹腔内は腫瘤を覆 うように炎症性のきわめて軽度の癒着を認める のみで,ダグラス窩の閉鎖や blue berry spot 等 明 ら か な 子 宮 内 膜 症 性 病 変 は 認 め ず,r― ASRM スコアは0点とした. 摘出標本(図5):矢印 A で示す充実部分が, 図5 摘出標本 矢印 A:充実性部分(後腹膜埋没部),点線 B: N胞部分(腹腔内部分) 図4 N胞の解剖学的関係 図2 骨盤 MRI T2 強調画像 左:水平断,右:矢状断 図3 開腹所見

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後腹膜に埋没していた腫瘍の基部であり,同部 位に連続して点線 B で示すN胞部分が腹腔内 へ進展していた.N胞の内溶液はチョコレート 様であった. 術後経過 術後経過良好にて,術後10日目に退院となっ た. 術後の病理診断においても子宮内膜症性 N胞の診断であった.現在外来にてフォローア ップ中であり,術前に上昇を認めた CA19―9お よび CA125も正常範囲内となり,子宮内膜症 の再発兆候も認めず,順調に経過している. 病理診断 HE 染色では,線維結合織の壁を有する腺構 造を認め,内面は子宮内膜腺に類似する立方上 皮に被覆されており,出血やヘモジデリンの沈 着を認め,子宮内膜症性N胞と診断された(図 5).さらに各種免疫染色を追加したところ, CD10染色では腺管周囲の間質は CD10で染ま り,子宮内膜腺間質様であった(図6).また, CK―7/CK―20染色においては腺管上皮ではCK―7 で陽性,CK‐20で陰性であり,子宮内膜症の 像として矛盾しなかった(図7).特筆すべき は,腫瘍の充実性部分の SMA 染色においては, 子宮内膜腺周囲に SMA で染まる領域を認め, このことから本症例は平滑筋組織を伴った子宮 内膜症性N胞と証明された(図8).一方,N 胞性部分成分においては,N胞壁は菲薄化し, 拡張した血管内の血液鬱滞と広範な変性を伴 い,明らかな平滑筋組織は認めなかった. 考 察 今回われわれの経験した症例は後腹膜側に小 さな充実成分を有し,腹腔内部分は多数の単房 性N胞から成る巨大なN胞性病変であった.N 胞成分は周囲の腹膜との癒着は乏しく,後腹膜 の実質成分と唯一連続性が認められたため,手 術所見では後腹膜発生の腫瘤と考えた.後腹膜 に発生する深部子宮内膜症についてはすでに多 くの報告があり,ダグラス窩および仙骨子宮靭 帯からの発生が最も多い〔1―3〕.Koninckx ら が 提 唱 す る RVE(rectovaginal endometrio-sis)の概念によると,直腸腟中隔壁に発生す る子宮内膜症は RVE―TypeÁに分類される(図 9)〔4〕.RVE―TypeÁは腹腔内の子宮内膜症 病変に乏しいことを特徴とし,ミュラー管の遺 残が化生し発症すると考えられている〔4,5〕. 今回の症例は,発生部位や r―ASRAM スコアが 0点であったことより,RVE―TypeÁに相当す るものとして矛盾せず,その腫瘤が広間膜後葉 図5 病理組織像 HE 染色 左:4×,右:60× 図6 病理組織像 CD10染色:4×

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D

U

R

V

D

U

R

V

D

U

R

V

U:uterus, D:pouch of Douglas V:vagina, R:rectum

を貫き腹腔内へと進展し,N胞性病変の形態を 呈していたものと思われる. 一般的に卵巣をはじめとする腹腔内発生の子 宮内膜症の大部分はN胞性を呈する一方で,後 腹膜に発生する深部子宮内膜症の多くは比較的 小さな結節性病変の形態をとる.その理由とし て,周囲を線維筋組織に囲まれる後腹膜内にお いては内膜腺および間質細胞が周囲の線維筋組 織に浸潤し,平滑筋の増殖を誘発するためと考 えられている 〔6,7〕.今回の症例でも術後の 病理所見において,後腹膜成分には内膜腺およ び間質の周囲に平滑筋細胞を含む線維筋組織が 豊富に認められた.腹腔内成分については典型 的な卵巣チョコレートN胞のように,N胞性の 発育をしたものと考えられた.すなわち本症例 において腹腔内成分に周囲の腹膜と癒着が認め られないこと,後腹膜に埋没する充実性成分周 囲に豊富な平滑筋の増生が認められたことは, ミュラー管の化生により後腹膜に発生した深部 子宮内膜症が腹腔側へ進展した可能性を示すも のと考える.後腹膜および腹腔内の子宮内膜症 の進展様式を示唆する興味深い症例であると思 われた. 結 語 ミュラー管の化生により後腹膜に発生した子 宮内膜症性腫瘤が,広間膜を越えて腹腔内へN 胞状に進展したと思われる稀な症例を経験し た.卵巣腫瘍の鑑別疾患の1つとして念頭に置 く必要があると考えられた. 文 献

〔1〕Kinkel K et al. Magnetic resonance imaging characteristics of deep endometriosis. Hum Re-prod 1999;14:1080−1086

〔2〕Redwine DB. The distribution of endometriosis in the pelvis by age groups and fertility. Fertil U : uterus, D : pouch of DouglasV : vagina, R : rectum

図9 RVE の分類(Koninckx らより改変)〔4〕 図7 病理組織像 左:CK7染色 60×,右:CK20染色60×

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参照

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