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3T MRI による頭蓋内主幹動脈狭窄症の血管壁描出能に関する検討

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Academic year: 2021

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要  旨

 3T MRI を用いて,中大脳動脈(MCA)狭窄症例の血管壁描出の可否を検討した.片側 MCA 狭窄 12 例および 非狭窄例 10 例を対象とし,両側 MCA 水平部を,3T MRI の T1-CUBE 法で撮像した.狭窄側の最狭窄部と健 常側,および非狭窄例の血管壁描出能とその厚さ,狭窄率との関係を検討した.全症例で動脈壁は高信号とし て描出された.血管壁の厚さは,狭窄例の病変側 1.57±0.27 mm に対し,健常側 1.19±0.08 mm であり,2 群間 に有意差を認めた(p<0.05).一方,非狭窄例は,0.85±0.23 mm であり,狭窄例の病変側,健常側双方と比較し て,有意に低値であった(各々 p<0.001,p<0.05).また,狭窄率と血管壁厚の間には相関関係を認めた (R=0.69,p=0.019).3T MRI により,頭蓋内主幹動脈狭窄症例における血管壁の肥厚が観察され,内膜の動脈 硬化性変化を反映していると考えられた. (脳循環代謝 25:37∼41,2014) キーワード : 3 テスラ MRI,脳動脈狭窄,血管壁,3D-FSE,ブラックブラッド MRI

1.はじめに

 頭蓋内主幹動脈狭窄症は,頸部内頸動脈狭窄などと 同様に,動脈硬化性変化がベースにあると考えられ る.しかしながら,その口径が小さいことに加え,脳 梗塞の原因病変となることは少ないと考えられていた ため,これまで積極的な画像診断は行われていなかっ た1).最近,臨床の現場で汎用されるようになった 3 テスラ(3T)MRI は,高い signal/noise(S/N)比と周波数 分解能を持つため,血管壁を描出できる可能性があ る.今回我々は,頭蓋内主幹動脈狭窄症例において, 3T MRIによる新しいシーケンスを用いて,血管壁の 描出が可能か否か検討した.

対象と方法

 2013 年 3 月から 6 月までの 4 カ月間に,3T MRI を 施行した外来および入院患者のうち,片側中大脳動脈 (MCA)狭窄を認めた 12 症例および同期間内に 3T MRI を施行した非狭窄例 10 症例を対象とした.本研究に 当たり,当院倫理委員会の規定(2009 年改定)に基づ き,患者への使用許可(臨床研究での画像・数値デー タ使用,院外での論文発表など)を十分に得た上で, 患者に対する倫理的配慮を行った.

 MRI 装置は,SIGNA HDxt(GE healthcare UK Ltd: Amersham Place, Little Chalfont, Buckinghamshire HP7 9NA, England)を用いた.MR angiography(MRA)は, time of flight法で撮像した.主要パラメータは以下の 通りである(TR/TE: 25.0/3.1 msec, Scan time: 239 sec, Section thickness: 1.0 mm, FOV: 190×170, Matrix: 512×224, Voxel volume: 0.39 mm3).今回,頭蓋内動脈 壁の評価のために,新しい volume sequence である T1-CUBE法を用いた.T1-CUBE は,GE healthcare 社 の 3 dimensional(3D)- fast spin echo(FSE)のプロトコル で,これに血液シグナルを落とす black-blood(BB)法 を加えることで,血管壁のコントラストをつけること

3T MRI

による頭蓋内主幹動脈狭窄症の血管壁描出能に関する検討

伊賀瀬圭二,松原 一郎,荒井 政森,五石 惇司,貞本 和彦

受付日:2014 年 4 月 20 日,受理日:2014 年 5 月 22 日 和昌会貞本病院脳神経外科 〒 790-0052 愛媛県松山市竹原町 1-6-1 TEL: 089-945-1471 FAX: 089-945-1480

(2)

が可能となる.主要なパレメータは以下の通りである (head 8ch brain coil, coronal plane, 3D, Cube T2, TR/ TE=500/minimum, thickness: 1.0 mm, FOV: 18, BW: 62.5, Freq: 256, Phase FOV: 1.0, NEX: 0.5).撮像された画像 は,リフォーマットされ,短軸および長軸画像が作成 された.狭窄症例(stenosis group)では,長軸画像での 最狭窄部における血管壁厚(wall thickness)を短軸画像 にて計測した(図 1a∼c).非狭窄症例(normal group)で は,両側 MCA の M1 portion 中央部での血管壁厚を計 測し,比較検討した.更に,MRA における狭窄率 (stenosis ratio)を,軸状断の画像上で,狭窄末梢側の径 (A)に対する狭窄部(B)の径の百分率〔狭窄率 =(A−B) / A ×100〕として算出し,血管壁厚と比較した(図 1d).  血管壁厚の数値データは,全て平均値 ± 標準偏差 (mean±SD)で表記した.統計は,血管壁の厚さの比較 には,Student の t 検定を用い,狭窄率と血管壁厚の相 関の検討では,Pearson の相関関数を用いた.

結  果

 全症例において,動脈壁は T1-CUBE にて高信号と して描出された.血管壁の厚さを計測すると,狭窄症 例の病変側は,1.57±0.27 mm であったのに対し,健常 側 で は,1.19±0.08 mm で あ り,2 群 間 に 有 意 差 (p<0.05)を認めた(図 2).  一方,非狭窄症例の血管壁厚の平均値を左右で比較 したところ,paired t- 検定にて有意差を認めなかった (結果非提示).そこで,非狭窄症例の血管壁厚は,10 例 20 側の平均値として算出し,その値は 0.85±0.23 mmであった.この値は,狭窄症例の病変側,健常側 双方と比較して,有意に低値であった(各々 p<0.001, p<0.05)(図 2).  狭窄症例における MRA 上の狭窄率と血管壁厚の相 関をみると,有意な相関(R=0.69,p=0.019)を認めた (図 3). 図 1.(a)右中大脳動脈狭窄症例の MR angirography(MRA).(b)T1-CUBE 画像(長軸画 像):(a)の白枠内に示される狭窄部分の T1-CUBE 長軸画像を示している.再狭窄部を白 線のように定義し,その断面での短軸画像を作成.(c)T1-CUBE 画像(短軸画像):(b)に おける白線の部分の T1-CUBE 短軸画像を示す.血管壁の外周を白線でトレースしてい る.血管壁下方に,血液シグナルに対して著明な高信号が認められ,肥厚した血管壁と定 義し,この部分を再狭窄部の血管壁厚として,両端矢印の部分を計測した.(d)狭窄率の 算出:MRA の軸状断において,A の部位を末梢側の正常血管径として,両端矢印の部分 を計測.また,B の部位を最狭窄部の血管径として,2 本の矢印間を計測.狭窄率 = (A– B)/A × 100 として算出した.

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考  察

 本研究の結果,3T MRI による新しいシーケンスを 用いることで,頭蓋内主幹動脈,とくに中大脳動脈の 血管壁が明瞭に描出できることがわかった.また,狭 窄症例における血管壁厚は,非狭窄症例のそれに比 べ,有意に厚くなっていることがわかり,中大脳動脈 の狭窄は頸部内頸動脈狭窄と同様,動脈硬化性変化に 伴うプラーク形成が原因と考えられる.  しかしながら,本検討には限界があり,MCA の狭 窄部位は,M1 portion の中でも近位から遠位まで様々 であり,非狭窄症例では M1 portion の中央で計測して いることを考えると,単純比較は難しく,誤差を生じ る可能性がある.より正確な比較を行うためには,非 狭窄症例の M1 portion をいくつかの部位に分類し,そ の平均値を使用するなどの補正が必要と思われ,今後 の課題である.  これまで,頭蓋内脳主幹動脈の血管壁およびプラー クは,その口径の小ささゆえに,描出が非常に困難で あった1).しかしながら,3T MRI の登場により,S/N 比の改善および周波数分解能の向上により,血管壁の 描出が可能となってきている1).中でも,中大脳動脈

の描出能に関しては,高解像度 high resolution MRI (HR-MRI)を用いた研究が多くみられる2~6)  Kim ら4)は,HR-MRI におけるプラークの見え方, つまり不均一性と造影があるものを不安定プラーク, それ以外のものを安定プラークと規定し,それぞれ脳 梗塞のパターンが違うことを報告した.Chung ら5) は,HR-MRI におけるプラークの厚さとリモデリング の程度が症候性脳梗塞の発症に関与するとし,いずれ も MCA プラークが脳梗塞の原因として重要であるこ とを報告している.一方,プラークの偏在性に注目し た報告もあり,血管断面の 4 分割におけるプラークの 位置を分類し,症候性脳梗塞は,上方にあるプラーク でより発症しやすいことなどが証明されている6).こ のように,MCA 狭窄に関しては,HR-MRI による血 図 2.各群における血管壁厚の比較:横軸に各群を羅列(右から,狭窄群の 健常側,病変側,非狭窄群)し,縦軸に平均血管壁厚を配置している.狭 窄群の健常側と病変側の間に,有意差を認め,狭窄群の健常側と非狭窄 群, 狭 窄 群 の 病 変 側 と 非 狭 窄 群 の 間 に も 有 意 差 を 認 め る(*p<0.05, **p<0.001). 図 3.狭窄群における MR angiography 上の狭窄率と平均 血管壁厚の関係:縦軸に狭窄率,横軸に平均血管壁厚を プロットしている.両者の間に有意な相関関係(R=0.69, p=0.019)を認める.

(4)

管壁およびプラークの描出に関する研究が盛んに行わ れているが,プラーク性状に関しては,まだ一定の見 解は出ていない.今後は頸動脈病変におけるプラーク 診断のように,その性状まで踏み込んだ診断が可能と なることが望まれる.  これらの HR-MRI の報告と違い,Qiao らは,2D と 3Dの turbo-spin echo(TSE)法を用いたシーケンスで, 脳主幹動脈の血管壁を描出し,その違いを報告してい る7).13 例の健常者と 4 例の頭蓋内主幹動脈狭窄患者 において検討し,3D では 2D と比較して,S/N 比およ び contrast/noise(C/N)比が,改善することを証明して い る. こ の 3D-TSE 法 は, 我 々 の T1-CUBE 法 で の BB-MRIとほぼ同様の手法であり,今回の我々の検討 における血管壁描出能が,より正確なものであること を裏付けると考えられる.  脳底動脈(BA)や椎骨動脈など後頭蓋窩の狭窄病変 に関しても,いくつかの報告が散見される3, 8, 9).いず れも HR-MRI を使用して,症候性病変とプラークの関 係を調べたものであり,プラーク診断が脳梗塞発症に 関連することを証明している.中でも,MCA と BA 領域における,branch atheromatous plaque と脳梗塞発 症の関連を捉えた Chung ら3)の報告は,診断を誤れば 致命的になる可能性がある病変であることを考える と,治療にも非常に有用な画像診断である.  今回利用した T1-CUBE は,3D volume 画像である ため,広範囲に渡るプラークも,リフォーマットする ことで,様々な角度から観察することができる.ま た,同一症例内であれば,プラーク量の計測やその変 化を確認することも可能となり,薬物の治療効果判定 などにも応用できる可能性があると考えられ,今後の 応用が期待される.

結  語

 3T MRI を用いた血管壁描出のための新規撮像シー ケンスにより,MCA 狭窄症例における血管壁の肥厚 が観察できた.これは,頸動脈狭窄におけるプラーク と同様に,内膜の動脈硬化性変化を反映している可能 性がある.その性状を検討することで,将来の脳梗塞 発症の予測につながる可能性があり,さらなるプラー ク性状診断の検討が待たれる. 謝辞:T1-CUBE プロトコルに関し技術提供を頂い た,GE ヘルスケアジャパン研究開発部,三好光晴氏に 深謝する. ワークステーションでの画像作成,計測での援助を 頂いた,和昌会貞本病院放射線部,篠塚史至氏,MRI 撮像に腐心頂いた和昌会貞本病院 MRI 室スタッフ各氏 に感謝する. 文  献

1) Degnan AJ, Gallagher G, Teng Z, Lu J, Liu Q, Gillard JH: MR angiography and imaging for the evaluation of middle cerebral artery atherosclerotic disease. AJNR Am J Neuro-radiol 33: 1427–1435, 2012

2) Busse RF, Brau AC, Vu A, Michelich CR, Bayram E, Kijowski R, Reeder SB, Rowley HA: Effects of refocusing flip angle modulation and view ordering in 3D fast spin echo. Magn Reson Med 60: 640–649, 2008

3) Chung JW, Kim BJ, Sohn CH, Yoon BW, Lee SH: Branch atheromatous plaque: a major cause of lacunar infarction (high-resolution MRI study). Cerebrovasc Dis Extra 2: 36–44, 2012

4) Kim JM, Jung KH, Sohn CH, Moon J, Han MH, Roh JK: Middle cerebral artery plaque and prediction of the infarc-tion pattern. Arch Neurol 69: 1470–1475, 2012

5) Chung GH, Kwak HS, Hwang SB, Jin GY: High resolu-tion MR imaging in patients with symptomatic middle cerebral artery stenosis. Eur J Radiol 81: 4069–4074, 2012 6) Xu WH, Li ML, Gao S, Ni J, Zhou LX, Yao M, Peng B,

Feng F, Jin ZY, Cui LY: Plaque distribution of stenotic middle cerebral artery and its clinical relevance. Stroke 42: 2957–2959, 2011

7) Qiao Y, Steinman DA, Qin Q, Etesami M, Schär M, Astor BC, Wasserman BA: Intracranial arterial wall imag-ing usimag-ing three-dimensional high isotropic resolution black blood MRI at 3.0 Tesla. J Magn Reson Imaging 34: 22–30, 2011

8) Chung JW, Kim BJ, Choi BS, Sohn CH, Bae HJ, Yoon BW, Lee SH: High-resolution magnetic resonance imaging reveals hidden etiologies of symptomatic vertebral arterial lesions. J Stroke Cerebrovasc Dis 23: 293–302, 2014 9) Kim YS, Lim SH, Oh KW, Kim JY, Koh SH, Kim J,

Heo SH, Chang DI, Lee YJ, Kim HY: The advantage of high-resolution MRI in evaluating basilar plaques: a com-parison study with MRA. Atherosclerosis 224: 411–416, 2012

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Abstract

Vessel wall analysis of intracranial major artery stenosis using 3T MRI

Keiji Igase, Ichiro Matsubara, Masamori Arai, Junji Goishi, and Kazuhiko Sadamoto

Department of Neurosurgery, Washokai Sadamoto Hospital, Ehime, Japan

It has been even difficult to delineate a local atherosclerotic focus in cerebral artery stenosis,

because of its smallness of relevant arteries and thinness of that vessel wall. Recently 3T MRI has

shown up, which has a superior S/N ratio and a frequency resolution, enabling main cerebral arteries to

be more clearly delineated. Thus, we have tried to visualize the arterial wall and the atherosclerotic

local lesion with use of a brand-new sequence of 3T MRI. Twelve cases suspected to have a stenosis of

unilateral middle cerebral artery (MCA) on TOF-MR angiography (MRA) were collected as a stenosis

group. For the vessel wall analysis, all cases underwent a new sequence of T1-CUBE using 3T MRI

(SIGNA HDxt: GE healthcare), and images were reformatted to observe both short and long axis

directions of bilateral M1 portion of MCA, on which the maximal wall thickness on a short axis

following after the observation on a long axis in each case was measured. And 10 cases without cerebral

artery stenosis were recruited as a normal group for control. Besides, in the stenosis group the

comparison between stenosis ratio on MRA and mean wall thickness was also performed. The arterial

wall was apparently delineated as high signal intensity on the image obtained with T1-CUBE sequence.

In a stenosis group, mean thickness of the arterial wall in a healthy side was 1.19

± 0.08 mm, whereas

that in a lesion side was 1.57 ± 0.27 mm, where a significant difference was seen between both sides

(p<0.05). Meanwhile, the mean arterial wall thickness in a normal group was 0.85 ± 0.23 mm, which

was significantly smaller than that in both healthy and lesion side of a stenosis group (p

<0.05, p<0.001,

respectively). Moreover, there was significant correlation between stenosis ratio and mean wall thickness

in stenosis group (R=0.69, p=0.019). Given our results the arterial wall in cases with a stenosis of

intracranial main artery should have an atherosclerotic change, which was shown in T1-CUBE image as

a high signal lumen, like carotid artery stenosis. Accordingly, for the next step, it would be crucial to

evaluate contents of the atherosclerotic plaque in that stenotic lesion.

図 1 .(a)右中大脳動脈狭窄症例の MR angirography (MRA).(b) T1-CUBE 画像(長軸画 像):( a )の白枠内に示される狭窄部分の T1-CUBE 長軸画像を示している.再狭窄部を白 線のように定義し,その断面での短軸画像を作成.(c) T1-CUBE 画像(短軸画像):(b)に おける白線の部分の T1-CUBE 短軸画像を示す.血管壁の外周を白線でトレースしてい る.血管壁下方に,血液シグナルに対して著明な高信号が認められ,肥厚した血管壁と定 義し,この部分を再狭窄部

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