であったり、あるいは日本の商社はすべて海 外でそういうことをやっているわけですから、 チャンスがあれば日本でやりたいと考えていま すし、もちろん日本製紙のようなバイオマスを 使った会社も発電事業に入ろうとしています。 日本の
10
年後、20
年後、30
年後のエネルギー の流れを見たら、原発でずっとやっていくとい う道から、これから調整が起こるわけです。1 つは、当面は火力発電をどうやって有効に使う かという話で、中長期的には再生可能エネル ギーをどうやって入れていくかという話になっ てくると、考えてみれば分かりますが、これか ら20
年、30
年、ものすごい投資があるわけです。 投資をすることによって変わっていくのですけ れど、成長戦略のポイントは、その投資のうち、 可能な部分をできるだけ前倒しにする、今、投 資してもらうということだと思うのです。それ をやることによって、民間投資が動けばマクロ 投資が動くわけです。 ちなみに、もっと今動き始めてきているのは、 下流の部分では小売の自由化です。例えば、日 本橋で三井不動産が大きな不動産開発をしてい ますけれども、東京ガスと組んで発電所を地下 に造ると発表しています。これの非常に面白い 点は、10
年前に森ビルが六本木ヒルズで同じこ とをやったけれど、あの時には六本木ヒルズで 使う電力の100
%位の容量を発電事業として要求 されるという、非常に厳しいハードルがあった。 それでも森ビルはやったわけですけれど、今回 の日本橋のプロジェクトは50
%でよいのです。 考えたらそうですよね、万が一、首都圏で大変 な震災か何か起きて電力が止まったときに、そ れでも日本橋が生き残るためには50
%あれば十 分ですから。ということで、非常にハードルが 低くなったものですから、三井不動産が入った わけです。 この前、三井不動産のトップの方と話をして いたら、「伊藤さん、これ、儲かるんだよ」と。 消費に近いところで、最新鋭の効率性の高いコ ンバインドサイクルか、あるいはコージェネ レーションかを使って、おそらく熱も同時に利 用すると採算が合うわけです。デベロッパー事 業にとってみると、これまでは土地を取得して、 その上に建物を建てて、そしてテナントを入 れて利益をあげていく、というオペレーション だったのが、そこに突如、エネルギーマネジメ ントとか、環境だとかいうものが非常に大きな 付加価値で付き始めてきた。こういうようなこ とが、これからどんどん起きてきます。 小売の完全自由化でどういうことが起こり得 るかというと、例えばアグリゲータがどんどん 出てくるわけです。オリックスの宮内氏と話し ていたことですけれど、10
棟の建物があると、 今までは一棟一棟、全部東京電力から電力を 買っていた。けれど、この10
棟をまとめてオリッ クスみたいなところが面倒をみるようになる。 同じように東京電力の電力が東京電力のライン で来るけれど、いわゆる電力系というか、スマー トメーターの数字自身はオリックスが管理す る。そうすると、中にはオフィスのように昼間 使うところもあれば、住宅のように夜使うとこ ろもあるから、10
軒の建物を、例えばスマート メーターでデマンドマネジメントをきちっとや れば、相当簡単に15
%位の電力需要は抑えられ ます。そうすると、ユーザーに10
%電力をディ スカウントしても、自分は5%利益が得られま す。これがいわゆるアグリゲータビジネスと言 われていて、海外では当たり前のように行われ ているのですが、これから小売自由化でどんど ん出てくる。もちろん、例えば大和ハウス工業 とか、積水ハウスとか、トヨタホームのような 住宅メーカーでもそういうことをまじめに考え ている。 だから、これが成長戦略なのです。つまり、 何がポイントかというと、もちろん制度は変え ていったほうがいいのですけれど、制度を変え ることも含めて、社会がこちらの方に向かうん だよということを皮切りに、投資をどうやって 融和するかということです。 東京オリンピックと新たな投資の可能性 そういう意味では、アベノミクスにとってみ ると思わぬ援軍だったのが東京オリンピックで した。東京オリンピックを一つのきっかけにし て、相当大きなプロジェクトがこの東京で可能 になってくる可能性がある。もちろんオリン ピックは東京だけのものではありませんから、 全国とどういうふうに連動するかということも ありますが、そうは申し上げても、首都圏のい わゆる特区だとか大きな改革というのが突如ア ベノミクスの中で非常に大きなウエイトを占め ることになります。 では、何ができるだろうか。これは、これか ら議論するところだと思うのですけれど、例え ば、羽田空港を国際化するというのは極めて重 要です。なぜかというと、もちろん羽田が便利だということもあるのですけれども、せっかく オリンピックをやるということは日本に来て欲 しいわけです。オリンピックが終わったらもう 来ないのでは困るから、来る癖をつけてほしい。 どうせ来るなら、東京に来るだけじゃなくて全 国に来てほしい。けれども、成田空港に来て博 多に行くとか、あるいは成田空港に来て広島に 行くとか、成田空港に来て長野に行くという と、これはなかなか大変です。まず東京に寄ら なければいけない。けれども、羽田空港に来れ ば、国内のハブがすぐあります。長野だったら、 今度は東京駅から新幹線ということもあるかも しれませんけれど、国内のハブとグローバルな ネットワークを考えると、羽田空港をさらに有 効活用するということは極めて重要になってき ます。 ここは非常に難しいイシューではあるのです けれども、結局、横田の空域と、それから東京 都の上を飛行機が飛ぶという、この空域を調整 するということが最大の鍵になると思います。 ロンドンの空港は、日本の空港とそんなに違わ ないキャパシティーでもっとはるかに飛んでい ます。それはロンドンの空港の空の上を飛べる からですよね。だから、そういうことがどこま でできるか。 あるいはインフラ整備も非常に重要になって きます。ここはおそらく大きな議論があると思 いますけれど、今世界の都市の競争を見たとき に、競争に非常に有利になっている都市、例え ばニューヨークでも、ロンドンでも、香港でも、 シンガポールでも、共通項は何かというと、高 い容積率を認めているということです。今日こ の話をやると時間がなくなるのでやりませんけ れども、最近の都市経済学の流れというのは、 アグロメレーション、つまり集積をどこまで高 めることができるかということが、その都市の 競争力に非常に影響があると考えている。考え たらそうですよね、だって産業そのものがそう いうふうになってきているわけですから。フラ ンスのパリのように、いわゆる旧来の観光地を 残すために容積率を上げられないところは何を やっているかというと、行けば分かるのですけ れど、その観光地の外側の容積値をアップして いるのです。 そういう意味では、東京の集積をこの際高め るということをやられるとすると、容積率アッ プが非常に大きな議論になって、すでに諮問会 議で国土交通大臣もそういう議論を出されてい ます。例えば、前の東京オリンピックのために 造った高速道路が非常に古くなっていて、いろ んな補修も含めて何とかしなければいけないけ れど、金がない。ではそれを、いわゆる
PFI
と かPPP
でできないだろうかという議論になりま す。10
年位前の大きな改革で、都内の一部規制 緩和が進んで、東京駅の上の空中権を売却する ことによって数百億円の金がJR
東日本に入っ て、東京駅の改修をすると同時に周辺の丸の内 のビルが高くなった。これは象徴的なケースで すから、同じように首都高の上の空中権を民間 に買い取ってもらうことによって、周りの容積 率を上げることで、利益は全部公的なものに入 りながらも集積を高めるということができるか どうか。どこか、既にそういうプロジェクトが 始まっているのですけれど、それを大々的にで きるかどうかは、非常に大きな議論になるかも しれません。いずれにしても、どうやって投資 を引っ張っていくのかが、成長戦略の大きな話 で、今後の流れが注目されるかもしれません。 財政面の目標と課題 次に、財政についていくつかお話ししたいと 思うのですけれども、ご案内のように、政権の 財政の1つの大きな目標が、2015
年までにプラ イマリーバランスで財政赤字幅を2010
年比で半 減することです。この前の試算によると、国費 ベースで8兆円程度、2015
年までに赤字を減ら すということらしいです。それからもう1つの 目標は、2020
年までにプライマリーバランスを 黒字化して、そのあと着実に政府の公的債務、GDP
比率を減らしていくことです。これは今回 というよりも、これまでも日本政府が言ってき たことです。 この前出てきた内閣府の試算ですが、順調に 政府が成長している成長シナリオに乗れば、ど ういう前提かというと、名目で3%、実質で2% で成長すれば、2015
年までにプライマリーバラ ンス半減は辛うじて実現できるという計算結果 が出てきています。これはポイントが3つあり ます。1つは、消費税を予定どおり来年8%、 再来年10
%まで上げるという前提で計算してい ます。これは言うまでもないことですけれど、 5%消費税が最終的に上がるということは、そ れなりの税収効果があるわけです。 2つ目の大きな前提条件は、アベノミクスが きちっと効果が出て、物価や成長率が上がって いくことです。あるいはもっと言うと、実質で2%、名目で3%で成長するということが2つ 目の条件なんですね。昨年度の決算をしただけ で、1兆円の税収の、いわゆる想定外の予想以 上の税収があったといいます。なぜそういうこ とが起こるかというと、その前の年は相当物価 が下がっていますから、物価が上がらなくても、 下がり方が下がっても、あるいは物価がゼロに 近くなっただけでも、当然名目の効果が働くわ けですから、今後消費者物価が年率1%、2% と上がっていくと、同時にもし実質成長率の 2%ぐらい維持できるとすれば、いろんな説は あるんですけど、それなりの税収の自然増が出 てくるはずであると。これが2つ目の柱です。 3つ目の柱は、にもかかわらず、むやみに歳 出を増やさないということで、今回の内閣府の 試算は、例えば社会保障に関しては何か大きな 手を付けて減らすことは想定していません。ご 存じのように、小泉内閣のときは毎年
2,200
億円 減らすというので大変な話題になって、やるべ きでないというのではないですけれど、ただ計 算上、取りあえず1兆円位、今、毎年増えてい る社会保障費が一応増えるという計算上で、た だ、それ以外の支出も含めてむやみに増やさな いという前提の下で計算すると、ぎりぎりのと ころでこれは実現できると。 そうすると、当面の財政再建のところで大き なポイントになるのは、消費税問題がどうなる か、これがまず第一です。これは10
月の最初に 総理が判断されることになっているわけですけ れど、2つ目は、アベノミクスが想定どおりに 機能して、物価が上昇し、名目GDP
が増えてい くかどうかと、それが想定どおりの弾性値で税 収を増やしていくかどうかというのが2つ目の ポイントです。3つ目は、そういう中でもっと 支出を増やせという圧力で、歳出が必要以上に 増えることを抑えられるかどうかが大きなポイ ントで、これが今後の財政運営の上で非常に重 要です。2015
年以降、2020
年まで、これも内閣府は簡 単なシミュレーションをしていますが、非常に 残念なことに、実質2%、名目3%で成長して も、2020
年の時点ではGDP
比で2%のプライマ リーバランスでの財政赤字が残ってしまうとい います。おそらく金額ベースで10
兆から12
、13
兆円の金額だろうと思います。これは何を意味 しているかというと、今いろんなことをやって いることだけでは2020
年は乗り切れませんよ、 ということです。従って2015
年から2020
年の間 に、1つは、さらに消費税を増やすかの判断だ と思います。2つ目は、これまで以上に踏み込 んだ社会保障改革をするかがポイントで、おそ らく両方やらないと、なかなかうまくいかない だろうというのが直感的な話です。これは今す ぐ議論される話ではなくて、おそらく2015
年近 くなった段階でいろんな議論をするわけですか ら、当面は2015
年のプライマリーバランスをど うするかだと思います。 ただ、1つだけ申し上げさせていただきます と、2015
年から2020
年の歳出を見るときに重要 なのは、これは間違いなく社会保障費です。こ れはご存じかどうか知りませんけれど、教育や 公共投資、公的サービスなどの非社会保障支出 の政府指数をGDP
で割った数字をみると、日本 はなんとOECD
で最下位ではなかったんです。 よかったですね、ビリから2番目なんです。最 下位はどこか忘れました。これはどういうこと かというと、それが良いか悪いかは別として、 教育費もいわゆる公共投資も、その他もろもろ の非社会保障支出は、他国との比較で最低のと ころまで来ています。もちろん、だから増やせ という話ではないのですが、今後の歳出を見た ら、これは誰が考えても、もう社会保障しかな いのです。 ですから、社会保障をどうやって変えていく かが非常に大きなポイントで、この前の社会保 障改革国民会議の中で出てきたいくつかの大き なポイントの一つは、供給体制をどう見直すか ということだと思います。日本はご存じのよう に、急性期医療の病床が非常に多くて、慢性期 は少ない。高齢化すると、急性期よりも慢性期 とか療養期が増えるはずなのですが。急性期医 療は看護師さんもいっぱい付いているし、医療 費もいっぱい付いているものですから、分かり やすく言うと金のかかる病床です。慢性期とか、 あるいは介護をやれば、もうちょっと金がかか らないわけですから、急性期をもっと絞って、 そこの機能をアップして、その分だけ慢性期や 療養の病床を増やしていけば、理論的にはコス トが下がるはずです。諸外国はみんなそれを やっているのですが、ただ、なかなかそれを日 本の制度でやるのは難しいのだろうと思います。 スウェーデンに行ったときに非常に面白いと 思ったのは、県立病院を訪れたら、「今日は運命 の日だ」と言われて、何で運命の日なのかと聞 いたら、「実は今日、自分のところがスーパーホ スピタルになるか、サブホスピタルになるかを県が決める日だ」と言われました。県が決めた ら、すぐに病院の再編が進むわけです。これが 北欧なんですね。アメリカは市場主義ですから、 ニーズがあったところにどんどんお金が集まっ て、そういう病院の再編が行われるわけです。 日本は、一方で公的管理をしながらも、病院 の大半は民間病院で、誰かが命令してやるとい うことができないものですけれど、ここができ るかどうかが非常に大きなポイントで、そうい う点をおそらくこれからきちっと議論していか なくてはならないと思います。それ以外に、も ちろん薬剤をどう見直すかとか、あるいは
ICT
をどうするかという問題もあると思います。い ずれにしても、日本経済は今、第1、第2の矢 から第3の矢に移行する重要なポイントである と思いますので、そこがどう成功するかを見な くてはいけないと思います。 最後にちょっと乱暴な話をしますが、あとで 皆さんの議論に多少かかわるかどうか分かりま せんけれども、日本の財政はサステイナブルな のかという議論についてです。実は1年前ほど のこと、イタリアのある政治家が来まして、彼 とちょっと議論して欲しいと言われたので、出 かけていって話をしました。当時、イタリアは 財政状況が非常に厳しかったわけです。ご挨拶 を兼ねて、私はその人に、イタリアも大変です ね、財政問題で大変でしょう、と言ったら、そ のイタリアの政治家はカチンときたのか、お前 に言われたくない、と。そうは言わないですけ れど、「イタリアはイタリアの仕事をちゃんとし ているんだから、日本は日本の仕事をちゃんと したらどうなのか」と言いました。「ちなみに、 イタリアの公的債務の金額はGDP
の125
%だ、 日本は240
%でしょう」と言って、にやっと笑っ たわけです。つまり、日本の方が悪いと言いた かったわけです。 そのとき私は、外向的に非礼になるので言い たかったけれど言えなかったことがありました。 「イタリアは125
%で財政破綻するような国なの でしょう。日本は240
%でもびくともしません。」 だからといって、日本が大丈夫だということを 申し上げているわけではありません。つまり、 マーケットは何を見ているかというと、ベクト ルの方向だろうと思うのです。今の債務の規模 も、もちろん非常に大きな問題ですけれど、今 後その状況が是正される方向に行く意志と能力 があるのか、それともずるずるといってしまう のかということです。そういう意味では、デフ レから脱却したのは非常に良かった。デフレか ら脱却しない限りは、なかなか是正する道を築 くことはできない。ただ、それは十分条件では ありませんから、今後の政策運営いかんによっ てはマーケットがどう見るかは、また判断しな ければいけないと思います。 少し時間が長くなりましたが、時間が来まし たのでこれで終わりにします。どうもありがと うございました。(拍手)パネルディスカッション
パネリスト: 横浜市財政局財政部長 大木節裕 総務省地域力創造アドバイザー・ 前総務省自治財政局長 椎川忍SMBC
日興証券金融経済調査部 金融財政アナリスト 末澤豪謙 フコクしんらい生命保険取締役財務部長 林宏明 東京大学大学院経済学研究科教授 持田信樹 地方公共団体金融機構理事長 渡邉雄司 司会進行: 関西学院大学大学院経済学研究科教授 小西砂千夫 〇小西 本日の第2回シンポジウムは、これま で寄付講座として行われてきました一連の貴重 な場の一区切りになるところでございまして、 その記念のパネルディスカッションでございま す。地方債制度にかかわる諸改革、特に市場化 の動きをふまえて地方債市場を展望するととも に、将来に向けて前向きのご提言をいただけれ ば幸いです。 先ほど、基調講演では大変勇気づけられるような前向きのお話をいただきましたけれど、こ の場には市場関係者、地方債にかかわる代表的 な関係者の方に集まっていただいておりますの で、同じく建設的なご意見を頂戴したいと思い ます。 それでは、まず現状をどのように認識してお られるかという観点で、パネリストの方々から ご意見を伺ってまいりたいと思います。まず椎 川常務ですが、現在は総務省を退任されました けれども、地方債課長をお務めでございました し、先ほども地方債
IR
の話が出ておりましたが、 その記念すべき第1回を地方債課長として担当 されました。私もその場につらなることができ ました、そういう思い出もございます。また、 地方分権改革の一環としての協議制の導入にも 現職でかかわってこられましたし、特に共同発 行債にも大変かかわりの深い方でいらっしゃい ますので、そういうご経験をふまえまして、地 方債を取り巻く近年の制度改革の経緯や内容に ついてお話を頂戴できればと思います。 〇椎川 私が地方債課長をやっておりましたの は、平成13
年度、14
年度と、かなり昔のことで すが、その後、18
年の夏から19
年の夏には財政 担当審議官として、公的資金の補償金免除繰上 償還と、政府系金融機関改革の一環として機構 法を担当させていただきましたので、最初にそ の経験をふまえて近年の地方債改革の流れをお 話させていただきます。 ここ10
年位の改革の流れの第一は自立・分権 化でして、これはみなさんよくご存じのとおり、 許可制から協議制への移行、さらに届出制が導 入されています。それから先ほど来、みなさん から発表がありましたように、第二が市場化の 流れでありまして、これは非常に強くなってき ていると思います。現在では市場公募債発行団 体が54
団体あるそうです。私が担当していた頃 は28
団体、2兆2,000
億円程度の規模だったので すが、これがすでに7兆1,000
億円という大変な 規模になっています。従って、IR
も格段に充実 してまいりましたし、共同発行も拡大をしまし た。大変思い出深い共同発行債ですけれど、私 が担当した当時は、東京都が入っておりません ので28
団体のうち27
団体の連帯保証ということ になりますから、みなさん大変心配されて、話 をまとめるのに苦労しました。その当時8,500
億 円程度の規模だったのが、今は1兆5,000
億円と いう大きなロットになってまいりましたし、参 加団体も36
団体と、大変な拡大ぶりであり、こ のことをもってしても市場化が進んでいると言 えると思います。ロットの確保が相当進んでき ているので、商品としての魅力も向上している のではないかと思います。 それから、ミニ公募債というのがありますが、 これは少し趣が違ってあります。昭和40
年代か ら、コミュニティ・ボンドということが言われ ていまして、その構想が繰り返し巻き返し議論 はされていたものの、一向に実行される気配が なかったのですが、当時、群馬県さんが非常に 熱心で、是非やりたいということでこれを実現 しました。これはピーク時に3,500
億円を超える 規模まで拡大しましたが、現在は少し落ち着い て1,700
億円程度の規模になっています。ミニ公 募債には一般の地方債の原理とは少し違った、 住民参加という特殊な要因がございます。一般 的には、地方団体が実施する個別の事業につい て、その財源として発行する地方債の適否を市 場が決めるのは好ましくないと言えます。これ は議会制民主主義、あるいは首長さんの判断で 基本的に決めていくべきものですけれども、全 体の地方債の発行規模や発行条件、財政状況は 当然市場が監視していくということになります。 しかし、ミニ公募債については、小さな地域社 会で、この事業をやるために住民のみなさんが どう参加をしてくれるのか、あるいはお金を実 際に出してくれるのかという点で、大変意味が あると思っています。おまけ付きとか、いろい ろなことを工夫されまして、実際に国債よりも 安い金利で発行した団体もあったのではないか と記憶しています。 それからグローバル化も相当進んでいまして、 海外でのIR
も充実してきていますし、海外投資 家への免税措置、非課税措置も拡充をされてき ています。そういう一連の流れの中で、日本の地方団体に は規模の格差が相当あり、
1,700
の自治体の中に は、300
万人超の横浜市から人口1,000
人位の自 治体まで存在することを前提としたときに、小 規模団体対策は当然欠かすことのできない視点 ということになります。このことに対しては、 地方団体同士で自助努力をして解決していくと いう方法もあります。現に、宮城県や、茨城県 や、兵庫県では県市共同発行もされているわけ ですけれども、先ほど江夏さんからもお話があ りましたように、日本においては伝統的に、国 の政策金融で小さな団体の資金調達を支援する という考え方が主流だったわけです。しかし、 平成19
年度にこれを転換して地方共同法人方式 になったのはご存じのとおりで、これは大変大 きな転換であったと思います。それでもなお自 治体間で垂直補完すべきか、水平補完すべきか は、他の事務においてもさまざまな議論があり ますけれども、地方債の世界においてもその議 論は若干残っている感じがいたします。 また、地方交付税が税とともに主要な地方財 源であるわけですけども、地方債は本来、平準 化や資金調達のためにある手段なので、財源と 資金調達の分離の議論が根強くございます。一 般財源が潤沢に確保できる時代になれば、そう いう理屈はきちんと整理されるのでしょうけれ ども、現在のような状況ではなかなか難しいと 思います。また、最近小西先生とも議論してい ることですが、事業費補正は本当に排除される べき交付税の算定方法なのかという問題は残っ ていると思っています。 マクロの財源保障の問題については、協議制、 届出制においてもきちんと担保され、しかも地 方公共団体財政健全化法という立派な法律がで きましたから、現在では破綻リスクは完全に回 避されたのではないかと考えています。 その中で、本来の流れと異なる動きもござい ました。政策金融改革の中で、特に地方関係で は、最も大きな課題であったはずの財政融資資 金の量的縮減は進展したようには見えません。 これが今後どうなっていくのかは大きなポイン トだと思います。 また、高利の公的資金の補償金免除繰上償還 は、必ずしも良い面ばかりではなかったと思い ます。これは、他の機関への貸し付けとのバラ ンスもあって、地方の貸し付けだけ高利のまま 置いておくということは適当ではないというこ とで行われたことですから、一概にマイナス評 価はできません。これはむしろ貸し手側の問題 と考えられます。しかし、地方公共団体のみな さんから、約定を無視する形で高利の公的資金 の地方債について金利の引き下げや借り換えの 要請が非常に強かったということは、地方公共 団体の意識改革の妨げになった面があったこと は、否定できないと考えています。 〇小西 ありがとうございました。それでは、 投資家の立場から見た地方債市場ということで、 末澤部長と林部長にお話を伺ってまいりたいと 思います。特に地方債市場の近年の変化や地方 債の商品性質上の整備状況、本日いろいろお話 がありましたけれど、市場関係者の声、あるい はそもそも地方債が運用対象として魅力がある のか等々につきましてお話をいただければと思 います。 〇末澤 私が本日この場にご一緒させていただ いている背景は、先ほど小西先生からございま したが、今から11
年前になります、2002
年の8 月に、総務省さん、地方債協会さん主催で、第 1回地方債シンポジウムが開かれました。これ には、当時地方債課長でありました椎川さん、 また持田先生がコーディネーターをされまし て、実はそのときのテーマは、「地方債の信用力 を考える」という、当時としてはややびっくり するようなテーマでございましたが、私も参加 しました。またその前の年に、地方債調査研究 委員会の下にワーキンググループを作りまして、 東京都とそれ以外の団体の格差をつけるという ツーテーブル方式や、住民参加型市場公募債、 また共同発行債の制度についての議論を私も参 加して10
回近くやりましたが、けんけんがくが くありながら、いろいろな新しい制度を作って きたという経緯があります。また、私はわりと 経験が長いので、古い地方債市場の話も期待されているのではないかと思ってお伺いさせてい ただいております。 私は
1986
年にこの債券市場に入りまして、債 券ディーラー、機関投資家セールス、あとはス トラテジスト、アナリストをやっています。但 し、1980
年代の私の地方債に対する記憶はほと んどございません。なぜかというと、80
年代は 財政状況が良かったものですから、地方債がほ とんど発行されていませんし、公的資金の引受 比率が7割、8割で、指定金融機関さんの持ち 切りが多かった関係で、ほとんど流通市場が存 在しませんでした。 ただ90
年代に入りますと、私も、えっと思う 事態がたくさんありました。3月頃になると、「縁 故〇×債」という、普段あまり聞かれない債券 や、一部関西の地方公共団体さんの債券だと「特 別〇△債」と書いてある、極めて特殊な債券を 数百億円のロットで急に売りにこられる機関投 資家さんが増えたのです。これはなぜかという と、90
年代は税収が減る一方で、地方財政は余 裕がありました関係で単独事業をどんどんやっ ていたのです。いわゆる縁故地方債が大量発行 されて、これが3月、4月、5月の出納整理期 間に放出される関係で、その局面だけ季節的に スプレッドが急拡大する事態が生まれました。 そのうちに、1997
年アジア危機、98
年ロシア 危機、金融危機が起こり、長期金利は0.7
%台ま で低下するのですが、地方債の金利は全然下が らず、むしろ少し上がるような時代がありまし た。これは、地方財政が国の財政とともに悪化 したのと、当時は中途償還条項がありまして、 一部の議会では、これだけ金利が下がっている のだから、ここで中途償還すれば相当利益が出 るのではないかという議論が出ました。また、 当時は金融危機です。私も当時、都市銀行にお りましたが、当時は民間の銀行が地方債の登録 業務をやっていました関係で、銀行が破綻する のではその地方債はどうなるんだ、ということ で、JB
ネットという決済システムができたので すが、縁故地方債はそれに乗っていないことも ありまして、どんどんスプレッドが拡大しまし た。私の記憶ですと、東京都債と国債のスプレッ ドがピークには大体60bp
、0.6
%まで拡大した。 政府保証公営企業金融公庫債でも、当時0.4
%、40bp
位に拡大するような事態が発生しました。 そのうちに総務省さんも中途償還条項を撤廃 しました。その後、先ほどのいろいろな制度改 革とともに2002
年にIR
が開かれました。そうい う意味では、2000
年前後というのは今から10
年 少し前になりますが、地方債市場が大きく変わ る節目だったと記憶しています。2006
年にはいわゆる夕張ショックがありまし て、これが先ほどの財政再建法の改正につなが りました。もう一段、制度的なバックボーンが しっかりするきっかけになりました。2008
年は、 リーマンショックで一時スプレッドを拡大しま したけれど、これは一時的なものでした。 今年になって、2013
年4月4日に黒田日銀総 裁がいわゆる異次元緩和を導入しました。導入 された4月5日に、長期金利は0.315
%から午後 には0.62
%まで上昇しました。債券先物価格の上 下の値幅は、確か3円34
銭ですが、これは1985
年10
月に債券先物が上場して以来、過去最大の値 幅を具現しています。つまり、かつてない相場 変動があったのですが、地方債のスプレッドは ほとんど変わりませんでした。当然、オファー・ ビッドが開いた局面はあったんですけれども、 国債の金利が安定化してくると、スプレッドは 本当に薄いままで、そういう面では十年一昔と 言いますが、10
年前は特殊な公共債であった地 方債が、いまやもう完全に普通の一般化された、 これは機構債も含めてですけれども、国債と同 等な債券に変化したということです。ある面、 私にしてみれば、やや面白みがなくなったとも 言えるのですけれども、そういう意味では地方 債市場が極めて効率的な市場に変化したこと、 これがここ十数年の動きだと考えております。 〇林 それでは、まず投資家として地方債に対 する基本的な考え方からお話ししたいと思いま す。江夏さんからも海外との比較論がございま したけれども、日本の地方債は世界でも希有な、 非常に安定的で極めて強固なクレジットだと 思っております。おそらく、世界で国債と地方債の距離が一番近い国であると。信用という面 では実質的にはほぼ、国債と同等と考えており ます。 さらに今後は地方の力を引き出す、地方のポ テンシャルを引き出すというフェーズに国自体 が入ってまいります。徴税のポテンシャルや、 国よりもいち早く行財政改革が進捗しておりま すので、そういう意味からも地方債に対する投 資スタンスというのはますます強くなってくる だろうと思います。地方公共団体金融機構の債 券も同様でございますが、そういった形で見て おります。 さらに機関投資家にとっては、昨今の金融規 制の強化、生保でいえばソルベンシーマージン がございますし、金融機関でいえば
BIS
規制が ございますが、その中で国債や地方債のカテゴ リーの投資対象は、ますますニーズが強くなっ てくるわけでございまして、そういう意味でも 地方債に対するスタンスというのは、これから 今以上にニーズが強まっていくと思います。 最近の地方債の市場の状況でございますけれ ども、まず各地方公共団体様の非常なご努力に よって、年限の多様化がみられます。今までは 5年債、10
年債が中心でございましたけれども、 7年や15
年、30
年といった年限も積極的に発行 されて、どんどん新しい投資家層を取り込んで いらっしゃるということがございます。 また、神戸市さんの報告もございましたけれ ども、IR
につきましても非常に一生懸命やって おられます。IR
の姿勢はむしろ民間の事業会社 よりも、極めて真摯で積極的なものがございま した。神戸市さんが報告で触れられました、平 成18
年の第3回債、42bp
の債券ですが、私はこ れを相当買わせていただきまして、最終的には 大変な収益をあげさせていただきましたけれど も、スプレッドがタイト化していくというのを 目の当たりにしていきながら、IR
がいかにマー ケットのプライシングに影響するかを体感した 次第でございます。そういった効果は、今もい ろいろな公共団体が感じていらっしゃると思い ますが、ここ数年は特にそれが強まった時期で あったと思っております。 それからミニ公募債のお話も出ましたけれど も、私は機関投資家として直接関係はしないの ですけれども、今後ますます地方債の規模は大 きくなると思いますが、そのためには住民の力 を糾合するためのミニ公募債は非常に重要だと 思っております。これはレベニュー債ではない のですが、地方債市場全体のインフラを強化す るという意味でも、住民が積極的に参加して財 政に関与するというコンセプトで発行すること によって、住民には財政をリアリティーのある ものとして感じてもらって、財政当局はそれな りの緊張感を持つわけですから、これは極めて 有用なものであると思います。先ほど椎川さん のお話にもありましたが、国債より下の利回り でも瞬間蒸発で売れてしまうというほど、地方 のために役に立つものであれば、利回りと関係 なく投資したいという日本人のメンタリティー も積極的に取り込んで、地方債市場を総合的に 発展させていくことは、私は非常に重要なこと だと考えております。 〇小西 どうもありがとうございました。投資 家の方から厳しい意見のあとで発行体となると お話しにくいと思いますが、比較的優しいご発 言がありましたので、次に発行体である大木部 長からお話を伺いたいと思います。地方債制度 あるいは地方債市場が大きく変わったというこ とを、発行体である自治体から見てどのように 思われますか。特に公募団体でいらっしゃいま すので、公募団体としてIR
活動を行ったり、市 場と向き合ってこられたこと、それから自治体 の場合には、金融リテラシーを自治体職員がい かに磨くかという大きな課題もあります。その あたりをふまえてご発言いただければと思いま す。 〇大木 横浜市の財政部長の大木でございます。 私は平成17
、18
、19
年に財源課長として、一番 大きな転換期に市債の発行を担当していました。 そうした経験を踏まえて、お話をさせていただ きます。私からは2点、市場との対話と、もう 1つは財政健全化努力についてお話をさせてい ただきます。まず市場との対話についてですが、横浜市は 東京に次いで、平成
16
年度に個別条件決定方式 に移行しました。当時は中田市長で、自己決定・ 自己責任できちんとやりましょうという方針の もとで、まず10
年債について共同幹事のシェア を高めるという方向で進んでいきました。その 後、現在では5年債や超長期債も含めて、市場 公募債発行団体ではまれな、全年限で主幹事方 式を採用するに至っていますが、一度にではな く、一歩一歩成功を積み重ねながら、現在のや り方に移行してきています。それも主幹事方式 をとる中で、そのときのいろいろな情勢を含め て、投資家の皆様ときちんと対話をしながら決 めていくことを大事にしたいという方向で積み 重ねてきた10
年間だったと思います。また、フ レックス枠という、対話をする中で条件が折り 合えば柔軟に発行するというやり方も、主幹事 方式を実践していく中で身に付ける形で進めて いった部分もございます。 トピックス的に申しますと、先ほどお話が出 ていましたように、平成18
年、19
年の依頼格付 けの全国に先駆けた取得や財政健全化法の制定 なども大きなポイントだったと思っています。 そういうことも含めて、基本的には対話を重視 してきちんとお互いが納得した上でやっていく というプロセスを経ながら、健全化法にみるよ うな健全化努力もきちんとお示しするというス テップであったと思っています。 対話という部分で欠かせないのが、1つは先 ほど申しました依頼格付けでございまして、平 成18
年に取得しました。自己責任で、というと きに、どのような格付けが取れるのかまずは やってみようと試みたものです。格付けについ ては、位置付けに関して議論がいろいろあった と思うのですが、取得してみて私自身が良かっ たと思いますのは、格付けレポートという形で 横浜市の強みと弱みが外にきちんと出るという 点です。弱みでいうと、横浜市は債務が高いこ とがはっきり出ました。一方で、トップマネジ メントなども含めて、財政規律がしっかりして いるという点や財政情報の開示なども、対外的 にみなさんに納得いただくような言葉で表に出 た点が大きいと思っています。当時は、そのレ ポートをいち早くホームページで公表もいたし ました。 それから次に、IR
活動を挙げたいと思います。 先ほど神戸市さんも評判が良かったので、是非 横浜の評判もお聞きしたいのですが、中田市長 以来、市長の機関投資家向けIR
はずっと行って おりますが、近年では、併せて個別訪問IR
とセー ルスミーティングという、個別にお話しする機 会も非常に大事にしてございます。市長は今回 再選いたしまして、先週の金曜日が市政の所信 表明演説だったのですが、その中で2期目も引 き続き「おもてなし」を最大のキーワードで使 うと宣言をしました。そのためには、個別訪問IR
は対話をしていく中の一番基礎だということ で、今後も大事にしていきたいと思います。待 機児童対策で横浜市の名前が売れたときに、保 育コンシェルジュが個別の相談に乗って出向い ていくのだと説明したように、この個別訪問IR
やアナリストミーティング、セールスミーティ ングは大事にしてきていますし、これからも大 事にしたいと思っています。 2つ 目 が 債 務 削 減 の 取 り 組 み で す。 平 成15
年に外郭団体まで含めた全部の債務を明らかに して、そのうち一般会計が責任を持つ借入金部 分を計画的に削減すると打ち出したことが、大 きなポイントだったと思っています。プライマ リーバランスは国よりも厳しいものを維持する とか、第三セクター等改革推進債を活用すると いうことも、その流れの中でお話をさせていた だいています。そのように、規律をきちんとこ うします、ということを対外的に明示した中期 計画を定めて、これまで何回かローリングして きていることが、市場のみなさんにご理解をい ただく上でもう1つ大事な柱だったと思ってい ます。 〇小西 それでは、ここで地方公共団体金融機 構の渡邉理事長からお話を伺いたいと思います。 機構は地方債の引き受け手であることは当然な のですけれども、発行体でもいらっしゃるわ けであります。地方債の2つの異なったプレー ヤーをしておられるということで、地方債市場 が変化をする中で、機構がこの中でどのような 役割を果たしていくかということを念頭におい て機構の経営に取り組んでこられたと思います ので、そのあたりをお話しいただければ幸いで す。〇渡邉 地方金融機構の理事長、渡邉でござい ます。当機構は東京大学とともに、このシンポ ジウムの主催者でございまして、まずこのよう にたくさんのみなさんにご参加をいただいたこ とにつきまして御礼を申し上げたいと思います。 私ども地方公共団体金融機構は、平成
20
年に 国の機関であります公営企業金融公庫の後継機 関として設立されました。これは小泉内閣の政 策金融改革の一環でございますけれども、当機 構の場合には地方分権改革の理念に沿いまして、 全地方公共団体が出資する地方の共同資金調達 機関として再出発をしたということでございま す。 私自身は平成16
年に公庫の総裁として就任し て、今に至っています。この間、我が国の地方 債市場の変革の動きの真っただ中にいたわけで ございます。 この変革の動きは、徐々にいろいろな自由度 が高まっていくということで、私は「自由化」 というキーワードを使わせていただきたいと思 います。みなさんのお話のとおり、自由化には 2つの側面がございます。1つは地方債制度の 自由化で、地方公共団体の資金調達に関する規 制やルールが徐々に緩和されて自由度が増して います。もう1つは、地方債市場の市場化でご ざいます。地方公共団体の資金調達における民 間資金のウエイトが非常に高まっており、発行 条件の自由化も進んでいますし、銀行借入の分 野でも、いろいろな形で自由化が進んでいるわ けでございます。 こうした自由化は、地方にとっては資金調達 の自由度が高まったり、創意工夫の余地が広 がったり、あるいは地方の自己規律を高めると いう大きなメリットがあると思います。しかし 一方で、資金調達力の弱い団体や金融に関する 知識が乏しい団体にとってみますと、相対的に 今までよりも不利な状況や困難な状況が生じて いく懸念もないわけではないわけでございます。 私どもは、まさにこういう変革のさなかに、 地方の、地方による、地方のための機関として 設立をされたわけでございます。基本的な役割 は地方公共団体に対して長期資金を低利で安定 的に貸し出すということでございますけれど、 その役割を果たしていく上で、2つの点が重要 と考えて業務を進めてまいりました。1つは地 方の共同資金調達機関として、「共助」という観 点から、地方公共団体の「自助」を補完してい くということです。この点では、広い意味での セーフティーネットの役割もここに含まれるも のと思います。もう1つは、地方自身の「自助」 の努力がしっかりと変化に対応できるように、 これをサポートしていくということです。この 役割を果たすために、機構自身、この5年間い ろいろなことを進めてまいりまして、おかげさ まで総じて申し上げると、みなさまのご支援、 ご理解を賜りまして、順調に業務が推移してお ります。それぞれ具体的に何をやってきたかと いうお話は次の発言の機会にさせていただきた いと思います。 〇小西 それでは第1巡目の締めくくりを持田 先生にお願いしたいと思います。時間を厳守す る中で、さまざまなご発言をいただきました。 それぞれをふまえていただきまして、特に学術 的な観点で、近年の地方債市場の動向および地 方債の制度改革、それが意味するところについ てご意見を賜りたいと思います。 〇持田 私からは3つばかり発言させていただ きます。 1つは、現在の地方債市場をどう見るかです。 この点については、今日の冒頭の川崎市のレポートにありますように、基本的には需給環境 がかなり良いことが分かります。従って、市場 は安定しているということになりますし、おそ らく多くの人の意見が一致するのではないかと 思います。私がこの点について敢えて言うとす れば2つ理由があって、1つは民間の投資需要 がまだ依然として弱い、資金需要が少ないとい うことです。もう1つは、地方財政の現状を見 ましても、ここ数年、地方債の起債総額は基本 的には抑制されています。地方債の長期債務残 高を見ても、
2000
年代に入ってからほとんど増 えていません。そういう需給要因が合わさって、 基本的には市場が安定しているというのが地方 債市場の現状ではないかと思います。 この点、地方債の対国債のスプレッドを見ま しても、一時は、先ほど60bp
とか45bp
という数 字があがりましたが、基本的には少し荒れたと きで15
から20bp
だったと思います。しかし現在 は、おそらく2から3bp
にある意味つぶれてお りまして、極めてタイトな水準で推移している というところです。地方団体の方の努力もこれ に貢献しておりまして、減債基金を適切に積み 立てているということが、地方債市場全体とし ての信用力を下支えしているのではないかと思 います。 2番目のポイントは、地方債を地方財政制度 の中でどのように位置付けるかということにな ります。ご存じのように、現在の日本の地方債 は瞬間風速では安定しております。しかし、実 は過去には揺らいだ時期が何度かあったわけで す。 1つは90
年代の後半で、地方債がかなり不安 視された時期がありました。これは地方団体の 方はよくご存じかと思いますけれども、地方議 会で中途償還したらすごく儲かるのではないか という議論がありましたし、これは末澤部長が 一番詳しいわけですけれども、当時はJB
ネット というオンラインはスタートしたばかりで、大 半の地方債は紙ベースで処理をするという時代 でした。そうすると所有権の移転に何日もかか るということになって、銀行が危ないときにこ れが問題視されて、地方債のスプレッドがばっ と開くということがありました。そこで中途償 還を止めるように国から指示があったり、ある いは積極的にIR
が行われたりしました。また、 共同債が発行されるようになったのもこの時期 だと思います。そうしてスプレッドが縮小して、 日本の地方債のBIS
基準のリスクウエイトがゼ ロになったのが1つの山だったと思います。 それからもう1つ危なかったのが、2006
年の 夕張ショックと、2008
年のリーマンショックの 時期でした。この時期は、特に欧米の投資家の 方は「質への逃避」ということで、流動性がか なり志向される時代でありました。ですから、 ポジションを落とすということになると、まず 地方債、国債を売る動きがあり、いろいろな問 題があったのです。 しかしこれに対して、銀行等引受債が日銀の 担保になるような働きかけがあったり、あるい は地方財政健全化法が制定されたりしました。 それから、地方公共団体金融機構が金融面での サポートを補完的に行うというのが、まさにこ の時期に行われています。このように考えます と、日本の地方債というのは単体で見るのでは なくて、機構にしろ、共同発行債にしろ、あく までも全体の仕組みの中に組み込まれて機能し ていると捉えるのが大変重要な点であると思い ます。ヨーロッパではギリシャのソブリン危機 が問題となっていますが、ヨーロッパの国債は ある意味で交付税のない地方債のようなもので、 買い手が付かない状態になっているわけです。 それが、日本の地方財政システムの中における 地方債の位置付けではないかと思います。 それから最後に、3番目の点ですけれども、 地方債の発展を分権と集権の軸でどういう評価 するかということが大きな問題になります。一 言で言えば、政府系資金から民間へ、許可制か ら協議制へ、さらに統一条件決定方式から市場 実勢を反映した条件決定へという変化は、この パネルで繰り返し言われていますように、市場 化、自由化という動きになります。 個人的な意見ですけれども、福祉国家は基本 的に中央集権国家として生成してきたと考えて います。しかし、この分権化、自由化というの は、福祉国家に伴う集権化を完全になくしてし まうのではなくて、最低線は保持して、それを 超えるものについては可能な限り分権化すると いうことだろうと思います。そしてまた分権化 する際には、市場に依存するものだと個人的に は理解しています。 たしかに、日本では社会資本の整備はもう十 分進みましたし、地方債も累積しています。今 も景気は相当悪いのですが、この先もおそらく、 景気政策の下支えの地方債の発行は抑制されざ るを得ない。しかしそれでも、既存のストック の維持や更新は避けることはできないわけで、現時点で言えることは、それは可能な限りマー ケットの規律に従うということになろうかと思 います。問題は、財政力、信用余力の弱い貧窮 で弱体な地方団体にとっては、マーケットへの アクセスは困難なわけですから、場合によって は日本国民が国民として持っている福祉国家の 最低線を割らざるを得ない、そういう事態が発 生する可能性はあります。ですから、大変難し い問題ですけれども、おそらくこれから日本の 地方債にとって必要なのは、集権と分権を賢く 組み合わせていくことではないか、自己決定の 中に共同あるいは共助の要素を組み合わせてい くことではないかと思います。 〇小西 それぞれの方に大変中身の濃いお話を していただきまして、ありがとうございます。 みなさんお気付きになったと思いますけれど、 地方債の話というのは、ギスギスしていなくて 何となく温かいところがありますね。そこが、 このマーケットの良さではないかと思います。 ご登壇されておられる方、みなさんそれぞれお 立場があって、おっしゃりたいことをずばっと おっしゃっておられるわけですけど、その一方 で、みなさん運命共同体であって、この市場を 大事にしっかり育てていこうという共通点があ りました。最後の持田先生のお話も、まさにこ の市場をいかに育てていくかというところでご 示唆をいただきました。 そこで第2巡目では、さらに今後の地方債の 商品性の向上と、地方債市場の発展ということ で、積極的なご提言を頂戴したいと思います。 そうなりますと、まず一番のお客様は投資家で いらっしゃいますので、投資家のお立場の末澤 部長と林部長から、地方債市場の発展および商 品性の向上、それとこの場ですので、地方債に かかわる自治体職員に向けて何か前向きな提言 を頂戴できればと思います。 〇末澤 先ほど縁故地方債という言葉を使いま したが、実は縁故地方債という言葉は
2002
年8 月の、先ほど言及しました総務省さん主催の第 1回地方債シンポジウムで、当時の財政局長が、 縁故ではあまり響きが良くないので今後は銀行 等引受債に名称を変更します、とおっしゃって いましたことを付け加えさせていただきます。 今後の地方債市場の発展に向けた提言として、 私は2点申し上げたい点がございます。1つは 透明性です。先ほど伊藤先生から東京オリン ピック招致の話が出ましたが、あの最終プレゼ ンテーションはいろいろな評価があると思いま すが、私はやはり、従来の日本とは違って、や やオーバーアクションではありましたが、良い ことも悪いこともずばっと言った、これでない と、もう世界には理解してもらえない状況なの だと思います。 同様に、今後のIR
は良い面も悪い面も本当に はっきり出していく必要があると思います。し かも、できれば機関投資家向けのみならず、や はり地元の住民の方に向けると良いと思います。 今、日本の地方債の個人さんの保有者は1.6
%位 です。一方で、利付国債のウエイトは3%位あ るんですね。ちなみにアメリカだと、個人さん と投資信託を合わせると地方債の保有ウエイト は7割を超えます。これは、米国ではかつて連 邦所得税が非課税だったという特殊な要因があ るのですが、身近な債券という面で見ると、こ れは相当の販売力があると思います。そういう 意味では、行政を監視していただく意味でも、 また安く調達していただく意味でも、地元の水 族館の入場券などのおまけを付けるのも手だと 思うのですが、より透明性を持ったIR
で頑張っ ていただきたい。今は金利が低くて財務省も個 人向け国債の販売に苦労していますが、金利が 上がったときにこれは効果が出てまいります。 もう1点、これも同じく東京オリンピックに かけて申し上げるのですが、アンチエイジング が必要だと思っています。2020
年というのは、 日本経済、日本の金融市場にとって大きな分岐 点だと思います。なぜかというと、いわゆる団 塊の世代は今700
万人弱いらっしゃいますが、こ の方々が全員70
歳代になるのが2020
年だからで す。2015
年にみなさん65
歳、2025
年にみなさん75
歳に到達されます。そういう面では、いわゆ る高齢化の問題が本当に日本の経済、金融市場 においてはっきりしてくるのは、2020
年代だと 思っています。 ここで重要なのがアンチエイジング、若返り です。少子化対策も重要ですが、いろいろな意 味で健康寿命を延ばしていただくことが大事だ と思います。先週テレビで長野県の話が出てい ました。私は出身がうどん県、つまり香川県で、 香川県と長野県さんは確か長らく糖尿病1位を 争っていたという記憶があるのですが、最近は 長野県さんは全く下の順位にいかれているそう です。予防的医療といいますか、医療にかかる 前に健康で長生きするための施策をするという ことでした。私はそういう面では、日本が本格 的に高齢化する前に、まずはアンチエイジング、若返りが必要で、国レベルでもやらなくてはい けませんけれど、地方でも、社会保障のコスト を抑える面でも重要だと思っていまして、これ は地方債市場というよりも、地域経済全体の活 性化のために頑張っていただきたいと考えてお ります。 〇林 地方債につきましては、先ほども申し上 げましたが、日本の地方債は世界で最も安定的 な市場だと思っております。もしもユーロ圏が 財政統合するとしたら、まず日本の地方財政制 度と地方公共団体金融機構および共同債の仕組 みをよく勉強するだろうと思います。日本の地 方債市場はそれほど強固なものだと考えていま す。 従って、地方債のプライシングをするときに キーになってくるのは流動性です。信用リスク よりは流動性リスクでありまして、流動性プレ ミアムをいかに設定するかが鍵になってくるわ けですが、そのためにはやはり、先ほど来、い ろいろな方がおっしゃっているように、
IR
が非 常に重要です。IR
というのはイメージの部分も非常に強いの で、なるべく地方独特の、地方公共団体さんが 持っている独特の強さを、メリハリを持って強 調した方が良いと思います。横浜市さんのIR
も 非常に素晴らしくて、私も感銘している部分が 非常に多いのですが、例えば横浜市さんでした ら待機児童対策は国が真似をしたい位の素晴ら しいものがあるわけですから、ここを強調する と、それが結局は徴税のポテンシャルにつなが るわけです。そこに住みたいと住民が思うわけ ですから、これは住民税を通じて徴税のポテン シャルを高めることになります。先ほど北上市 さんもプレゼンテーションでご説明されていた ように、観光資源が多いところはそれを強調さ れるのが良いと思います。地方公共団体はこれ までもIR
を非常に一生懸命やってこられたので すが、今後はより独自性のあるものにつなげて いくことを工夫されたらと思います。 末澤さんがおっしゃったように、私も地方の 役割として、今後、少子高齢化に対応する対策、 例えば女性の活用などと同時に、高齢者に対す る対策を期待しています。セブン−イレブンさ んは、今後10
%位店舗を増やして、シルバービ ジネスを展開するという方針を明確に出してい らっしゃいますが、民間でもそういうところに 着目してやっていらっしゃるわけでありますか ら、地方公共団体さんも当然考えていらっしゃ ると思いますが、そのような取り組みも当然、 徴税のポテンシャルを高めます。高齢者が住み やすいということで、地方公共団体の財政基盤 が強くなると、そういう強みを強調できると思 いますので、積極的にやっていただきたいと思 います。 それから、情報発信がいかにも大事かという 話で言えば、良いことも悪いことも開示するべ きだという指摘は私もまったく同感でございま して、悪いことを先に言って良いことを後から言うと、非常に印象が良いです。これは間違い なくそうで、後から「これはどうなんですか」 と聞かれるよりも、最初から「こういうことは ありますが、こういう部分が非常にポジティブ です」という説明をされた方が良いのではない かと思います。それは、投資家にとってもそう いう情報を得られる意義が深いですし、結果的 には印象が非常に良くなりますから、その点も 工夫されたらと思います。 それから、持田先生もおっしゃっていました が、明治の廃藩置県以来、日本は中央集権で強 さを発揮するというフェーズでしたけれども、 私も今後は地方の力を引き出すフェーズに入っ てくると思います。そういう意味では、地方公 共団体の役割は非常に強くなってくるわけです が、中央の集権的な基盤というのはおそらく不 変なまま、地方分権が担うべきものがどんどん 移っていくフェーズだと思います。ですから、 地方債の信用力に大きな影響を与えるような地 方分権というのは、私はないと考えておりまし て、むしろ地方の強さが発揮されることによっ て、地方債市場がさらに活性化していくと思い ます。そういうことも考え合わせながら、みん なで市場を良くしていこうと私は考えておりま す。 それから最後に、流動性プレミアムはイメー ジも非常に大きいのですけれども、もう1つ大 きなファクターを指摘したいと思います。異次 元緩和のときのように大きく金利が動く場面で は、流動性プレミアムの中に金利のボラティリ ティーの部分も入りますので、発行されるタイ ミングによっては、金利がなぜこんなに高いの かと疑問に思われることがあるかもしれません が、そういう要素もあるということは、是非押 さえておいていただきたいと思います。 〇小西 ありがとうございます。お二人からは、 制度改革の議論よりもむしろ、発行体もっと頑 張れ、改革を進めていることをもっとアピール しなさい、というご意見でしたので、続いて横 浜の大木部長に伺いたいと思います。悪い話か ら入ったほうが良いという話がありましたので、 三セク推進債あたりから入っていただければと 思います。 〇大木 先ほど言いかけました、平成