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チーム医療としての栄養管理・栄養療法を考える

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 675 ~ 676 頁(2015 チーム医療としての栄養管理・栄養療法を考える 年). 675. 合同シンポジウム 5(日本静脈経腸栄養学会). チーム医療としての栄養管理・栄養療法を考える* ─管理栄養士の立場から─ 岡 田 有 司**. 診療科型チームに分類することができる。当院は精神科病院で. はじめに. はあるが,内科常勤医が複数名在籍することから,栄養管理・. 本邦は,今までにない超高齢化が進んでいる。多くの医療機. 栄養療法には内科医師,精神科医師,薬剤師,看護師,管理栄. 関に高齢の患者が受診しているが,高齢患者には身体疾患だけ. 養士で常時対応している。数年前まで当院には理学療法士が不. ではなく精神的疾患,特に認知症を患っている患者が多くなっ. 在であったが,ここ数年で常勤の理学療法士が 2 名在籍するよ. てきている。. うになった。しかしながら NST の構成メンバーにはなってい. 筆者らが勤務する一般財団法人信貴山病院ハートランドしぎ. ない。栄養管理・栄養療法上,理学療法士の介入が必要になっ. さん(以下,当院)は,総合的に高齢者をケアするために,精. た場合,筆者から主治医に理学療法士の介入依頼を上申するこ. 神科病床,認知症病床を多く有し,病院本体のほかに訪問看護. とになる。. やデイ・ナイトケアなどを展開している。当院は地域の認知症. 当院の NST は精神科の主治医からの介入依頼を受けて介入. 高齢者,精神疾患患者を多く受け入れている性質上,患者の平. する形式をとっている。日常的には各病棟の担当管理栄養士が. 均在院日数が長期になる『長期療養型病院』に位置している。. 看護師の行った栄養スクリーニングと 3 ヵ月に 1 度の栄養モニ. 本稿では,チーム医療における栄養管理・栄養療法を管理栄養. タリングから定期的栄養管理計画の作成を行っている 2)。栄養. 士の立場から考察する。. 管理計画の変更が必要になると管理栄養士は具体的な栄養管理. 当院における NST の発足と現状 当院で臨床栄養管理が本格的に起動したのは 2002(平成 14) 年の褥瘡対策未実施減算が新設されたときである。当時の褥. 方法を立案し,主治医に上申する。このため NST への介入依 頼は非常に少なくなってきている。. 高齢患者の栄養管理の実際. 瘡専任医師と筆者が日本褥瘡学会員であったため,この医師. 一般的に低栄養の原因としては,栄養摂取不足や消化吸収障. にチームに招聘される形で褥瘡対策チームに参画することが. 害,栄養素の消失・使用増大,肝臓機能障害などが考えられる. でき,その数年後に栄養サポートチーム(Nutrition Support. が,高齢者の場合はこれらの要因以外に疼痛や不安,新しい環. Team:以下,NST)が正式発足した。当院は精神科病院であ. 境,新しい食事形態,食事時間の変化とおそらく適切でない食. るが,内科系疾患を精神科疾患に合併する患者をフォローする. 事間隔,複数の薬剤などが考えられる。また認知症が高齢者の. ため,内科の常勤医師が勤務している。この内科医師,精神科. 低栄養の原因のひとつともされている 3)。. 医師,薬剤師,看護師,管理栄養士からなる NST を稼働させ. 栄養管理・栄養療法を行ううえで栄養補給量を決めること栄. 1). ることができた 。. 養補給ルートを決めることが重要になる。栄養補給量を特に総. チーム医療とは医療専門職がひとつの目的のために医療チー. エネルギー量を求めるときにハリス - ベネディクトの式がよく. ムを組織して行うが,チームのメンバーの構成から①医師,理. 用いられる。しかし高齢者,特に 85 歳以上の高齢者の場合と. 学療法士,薬剤師,看護師,管理栄養士などで構成された多職. 患者の身長が 150  cm 以下の場合には実際に必要なエネルギー. 種協働(共同)型チーム,②内科,外科,リハビリテーション. 量とハリス - ベネディクトの式で求められるエネルギー量には. 科,精神科などのスタッフで構成された多診療科型チーム,③. 大きな差が生じるため短期間に再評価を行い,栄養量を再算定. すべての診療科・部署からのスタッフで構成された多職種・多. する必要がある 4)。当院ではハリス - ベネディクトの式は使用. *. Consider the Nutritional Management and Nutrition Therapy as a Team Medical: From Registered Dietitians Standpoint ** 一般財団法人信貴山病院 ハートランドししぎさん 栄養部 (〒 636–0815 奈良県生駒郡三郷町勢野北 4–13–1) Yuji Okada, RD, MHSc: Foundation of Shigisan Hospital, Heartland Shigisan, Department of Clinical Nutrition & Food Service キーワード:チーム医療,高齢者,長期療養型医療機関. せず,体重 1  kg あたりのエネルギー量を決めることで総エネ ルギー量を求めている。 栄養補給ルートは腸管が使用できる場合には経口栄養(食 事)を含めた経腸栄養を第 1 選択とする。多くの高齢者の場合, 経口栄養(食事)で栄養管理を行える。しかし高齢者の場合, 実際に食べている食事が全粥食,分粥食,嚥下食,ミキサー食.

(2) 676. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. などが多く,これに小食や食欲不振,偏食,基礎疾患などが加. 割であると考える。今後褥瘡対策や摂食嚥下障害対策において. わり,食事の量と質に制限がかかる要因が増加する。また脳梗. より協働できることに期待している。. 塞後遺症や神経疾患などから誤嚥の危険性が高くなる。管理栄 養士の立場からは経口栄養(食事)から少量で高エネルギー, 加えて嚥下特性の高い物性を有する食事内容を検討することに. 長期療養型医療機関での栄養管理・栄養療法とリハビ リテーションの協働. なる。栄養補給量アップには粉あめや脂身のついた肉やウナギ. 長期療養型医療機関において,安定した患者の療養生活には. の使用を検討し,タンパク質補給には卵,乳製品,肉類での補. どのような場面においてもチーム医療の実践と考え方が不可欠. 給に加えて濃厚流動食の飲用なども検討する。小食や食欲不振. である。. に対しては香辛料の使用,口腔ケア,食欲低下を起こす薬剤の. その中でも基本的ケアである栄養管理と身体機能に応じたリ. 検討,食欲増進効果のある薬剤使用の検討まで考える必要があ. ハビリテーション専門職の介入・コラボレーションは最重要で. る。嚥下障害に対しては凝集性と付着性を調整した食事の提供. ある。栄養管理・栄養療法とリハビリテーションの協働,リハ. を検討する。しかし管理栄養士や調理師が調理した食事では食. ビリテーション専門職,理学療法士と管理栄養士の協働こそが. 物の物性にばらつきが生じる。そのためすべて既成品ゼリーで. 長期療養型医療機関においては患者の重症化予防と ADL 維持. 構成された食事の提供を上申する場合もあり,多くの既成品ゼ. と重症化予防に貢献できるものと考える。. リーも当院では常時備蓄している。. 理学療法士と栄養管理・栄養療法を行うことの意義. 最後に,記念すべき第 50 回日本理学療法学術大会において, 日本理学療法士協会と日本静脈経腸栄養学会との合同シンポジ. 前述のように,ここ数年で常勤の理学療法士が 2 名在籍する. ウムで筆者に発表の機会を与えていただいた第 50 回日本理学. ようになったが,NST の構成メンバーにはなっていない。し. 療法学術大会 内山 靖大会長,日本静脈経腸栄養学会 東口. かしながら当院のような精神科病院では理学療法士の存在は大. 髙志理事長はじめ多くの関係者の皆様に感謝申し上げます。. きく,困難症例での栄養管理・栄養療法を行ううえで理学療法 士との協働は重要になる。特に精神科特有の問題として向精神 薬の副作用で腸管蠕動運動の低下から特に便秘での排便コント ロールが問題になることが多い。このような場合筆者から理学 療法士の介入を精神科主治医に依頼を上申することが多い。協 働で介入を行う場合,骨盤前傾,体幹回旋運動に加えて全身の 身体機能維持・向上を目的としたリハビリテーション強度・活 動量に見合った栄養量を算定することも管理栄養士の重要な役. 文 献 1) 岡田有司:NST 実践事例 ハートランドしぎさん.月刊総合ケア. 2004; 14: 30–34. 2) 岡田有司,澤井照佳:地域における精神科病院・長期療養型病院 の NST.静脈経腸栄養.2009; 24: 923–926. 3) 葛谷雅文:高齢者の栄養管理 そのポイントと up to date.静脈経 腸栄養.2007; 22: 433–437. 4) 井上善文:栄養投与量の決定,静脈経腸栄養ガイドライン.日本 静脈経腸栄養学会(編),照林社,東京,2013,pp. 140–148..

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