理 学 療 法 学 第42 巻 第5号 428
〜
433頁 （2015年 ） 短 報分 枝鎖
ア
ミ ノ
酸
摂 取
を
併 用
した
通所
リ
ハビ リ
テ
ー
シ
ョン
が
要介 護 高齢 者
の
筋 力
と
バ
ラ
ン
ス
機 能
に
与 え
る
影響
＊池
田崇
1）2）＃長 澤
弘
3） 五味 郁 子
3）相 澤 純
也4）久合
田浩幸
2）黒 木 裕 介
2） 石 田邦
子2）神
野哲 也
1）増
田正 5）
森
田定 雄
1） 要旨【目 的】無 作 為化 比 較試 験を 用い て
，
分 枝 鎖ア ミノ酸 （branched
chain amino acid ；以 下，
BCAA
）摂 取 を併用 した 運動療法が身体機 能に及ぼす効果につ い て明 ら か にすること
。
【方法】対象は，
要介 護 高齢 者52例。 無 作 為に BCAA 群27例と対 照 群25例に割 りつ けた。 運 動 開 始 10分 前に BCAA を摂 取し
，
最 大 筋力の 30％負 荷で の筋 力練 習を3セ ッ ト
，
有 酸 素運 動とバ ラン ス練 習と を各1セ ッ ト，
計5セ ッ ト を週 1〜
2回実 施し た。 3 ヵ月 間の運 動介 入と栄 養介 入と を行っ た。 四肢 粗 大 筋 力
，
握 力，
Timed Up and Go test，
Functional
reach test（以 下，
FRT
），
身体 活 動，
介 入回数の評 価 を実 施した。 【結 果 】FRT は BCAA 摂取 と運動 療 法 との併 用の有 意 な効 果 を認 め た
。
他の項 目は効 果 を認 め なかっ た。【結 論 】週2回程 度の頻 度で，
運 動 開 始10
分前にBCAA
を 摂 取 し，30
％負荷 での運 動 療 法 を 中 心 に 実施す るこ とで，
効果 的 にバ ラン ス 機能を改善する こ とが示 唆さ れ た。
キー
ワー
ド 分枝 鎖ア ミ ノ酸 身 体 機 能，
通所リハ ビリ テー
シ ョン は じ め に 近 年t
運 動療 法と栄養の か かわ りが注 目さ れ，
理 学療 法に おいても栄養サ ポー
トの重 要性が認 識さ れ る ように なっ ている。
特 に 低 栄 養 性のサル コ ペ ニ アに おいて は適 切なエ ネル ギー
バ ラン ス の維 持が 重要と さ れ，
運動療法 と 栄養サ ポー
トの両 者 が 必 要 1）で あ る。
サル コ ペ ニ アの予 防 に 関 しては，
エ ネル ギー
バ ラン ス＊
Effect Qf Exercise Combined with Branched Chain Amino Acid Supplementation on Muscle Strength and Balance Function in
Elderly Japanese in Need of Care；ARandomized Controlled Trial l）東 京医科 歯科大学大 学 院 医歯学総合研究科
（〒ll3
−
851e 東 京 都文京区 湯島1−
5−
45）Takashi
lkeda
，
PT，
MS，
Tetsuya Jinno，
MD，
PhD，
Sadao Morita．
MD
，
PhD：TQkyo Medical and Dental University，
Graduate Schoo［ ofMedieal
and
Dental
Sciences
2） 介 護 老人保健 施 設リハ ビ リ ケ ア湘南 か ま く ら
Takashi Ikeda PT
，
MS．
Hiroyuki Kugota，
PT．
Yusuke Kuroki，
OT．
Kunikolshida
MD ：Rehabil
−
care Shonan Kamakura3）神奈川県立保 健福 祉 大 学 大 学 院 保健 福 祉 学研 究 科
Hiroshi Nagasawa
，
PT，
PhD，
Ikuko Gemi．
RD，
PhD：Kanagawa University of Human Services．
Graduate Program in HumanServices
4）東 京 医科 歯科 大学 ス ポ
ー
ッ サ イエ ン ス機構 スポー
ッ医 歯 学 診 療センタ
ー
Junya
Aizawa，
PT，
PhD；Tokyo Medical and Dentat University，
Cllnical Center for Sports Medicine＆Sports Dentistry 5）福 島 大 学 共 生シ ステム理工学 類
Tadashi Masud乱PhD；Fukushima University
，
Faculty of Symbietic System Science＃ EmaiL rotten
＿
apples−
ik＠y5．
dion．
ne．
jp；ikereh＠tmd．
ac．
jp （受 付 日 2014 年5月1日／ 受理 日 2015年4月7日）と は別に分 枝 鎖ア ミ ノ酸 （
branched
chain amino acid ：以 下
，
BCAA ）の 活 用が注 目 さ れて い る。
BCAA は，
運 動 前の摂 取に より筋 内の乳 酸の蓄 積や筋 損傷を 予 防 し，
タン パ ク質 同 化 作 用に影 響2）する ことが 報 告 され てい る。
さ ら に 近年，
高 齢 者は筋 代 謝に若 年 者よ り多 く のBCAA
を要 し3），
ア ミ ノ酸 摂 取に対 する筋タ ンパ ク 合 成反応 も減 弱し4），
遅延 する5）こ とも明 らかになっ た。
Kim ら6）は週 2回の運動 教室 と週 7 日間の BCAA 6g の摂 取の併用 を3 ヵ月 継 続し た サルコ ペニ アを有 す る虚 弱 高 齢 者は，
BCAA の み の者と 比較して，
有意 に 筋 力と筋 量が増 加した と報 告してい る。 こ の ように，
高 齢 者のサル コ ペ ニ ア 予防にBCAA の摂 取が有 効である こと は 明 ら か に な りつ つ あるもの の，
本 邦にお ける理 学 療 法で の利 用 は ま だ 限 定 的 で あ り，一
部の 回復 期 病 院7） での利 用に と どまっ てい る。
高 齢 者の筋 力 増 強 をめ ざ すにあたっ て，
50〜
80％ 1RM の運動 強 度で の ト レー
ニ ン グ実 施が効 果的であ る ことの コ ン セ ンサスはすで に得ら れてお り8），
虚 弱 な 超 高 齢 者 （85
歳 以 上 ）で あっ て も80％ 1RM の 強 度での トレー
ニ ン グ が有 効であっ た と報 告 9）さ れ て いる。一
方，
理学療 法のおもな 対象の ひ とつ である要介 護お よ び 要支 援 高齢 者 （以下，
要介 護 高齢 者 ）に も適応 しやすい 低負荷の 運動で も筋 力 増 強 効 果を得ら れる こ と は報 告 lo）11）が あ り，
Watanabe らll ）は 健 常 高 齢 者 を 対象ア ミ ノ酸を併用した通所リハ が高 齢 者の身体 機 能に与 え る影 響 429 に 30％ 1RM の運 動 強度で スロ
ー
トレー
ニ ング を 行うこ とで，
筋 力 増 強 を得ら れ た と報 告してい る。 低 負 荷の運 動は，
高負 荷の運 動に 比べ て改 善 幅が低い lo）とい う問 題 点がある もの の，
BCAA 摂 取を併 用し た 運動 療 法の 実 施は，
低 負 荷であっ て も筋 力 増 強の効 率を高め得る こ と を 示 唆 してい る。
し か し，
BCAA に関 する先 行 研 究 6）12）で は1回当た りの摂 取 量は 35〜
20g と幅が大 きい うえ，
摂取頻 度 も毎日と高 頻 度で の研 究 結 果である た め，
広く供用 に資する た め に は頻 度 摂 取 量につ い て 検討の余地 が あ る。
特に 運動療法のみ を行っ た場合と 比べ て，BCAA
を併用 し た 運動療法が，
週1 〜2
回程 度の介入 頻度であっ て も，
効 果 的に筋 力増 強 を得 られ る か は無 作 為 化比較 試 験 （以下，RCT
）を実 施し て検証 を してい く必 要がある。 そこ で本研 究はRCT を用い て，
通 所リハ ビリ テー
シ ョン （以下，
デ イ ケア）におい て，
低 負 荷の運 動 療 法 を週1 〜2
回の頻 度で実 施 し，
BCAA
摂 取 を併 用 した際の身 体 機 能 改 善の効 果につ い て検 証 す ること を 目 的とする。
対 象と方 法 1．
研 究デザ インと リ クルー
トメ ン ト 研 究デザ インはRCT と し た。
3
時 間以 上4
時 間未満 型デ イ ケアを利 用し，
高齢 者 用 トレー
ニ ングマ シン （以 下，
高齢 者 用マ シ ン）を用い て運動 介 入の実施が可 能な 要 介 護 高齢 者 を 対象とした。 除外 基 準は，
嚥 下 機 能 障 害，
腎疾 患に よ る食 事 制限，
糖尿病による イン ス リン使用，
認知症お よ び進 行 性の筋 力 低下を 伴う神 経 筋 疾 患と し，
以 上に該 当 する利 用 者 と した。 対象 者80
名の内，
除外 基 準に該 当した 22名 を除いた58
名に対して研 究へ の参 加 依 頼と説 明 を 行い，
同 意が 得ら れた55
名 を無 作 為にtBCAA
を摂 取し て運 動 療 法 を 実 施 す る BCAA 群29 名 とmaltQdextrin （以 下，
MD
）を摂 取して運 動 療 法 を実 施 する対照群26名との 2 群 に 分 類 し た。
研究中の ドロ ップ ア ウ ト3
名 をさら に 除 外し，BCAA
群27
名，
対照群25名 を解 析 対 象 と し た （表1
）。
2，
栄 養 介 入と運動介入の方 法 週1〜
2回程 度の栄 養 介 入と運動 介 入を3
ヵ月 間継 続 して実 施し た。 栄 養 介 入は，
Kim ら 7） の報 告に準じ，
運 動 開 始10
分 前にBCAA
群 は6g
の タブ レ ッ ト型BCAA
サプリメ ン ト （味の素 社 製，
ア ミ ノバ イタ ル タ ブレッ ト）を摂 取し，
コ ン トロー
ル群は同 量の MD を 摂 取し た。 摂 取の際はノ ン カロ リー
の飲 料200ml
を 用 いた。MD
は，
運 動 時の 摂 取エ ネルギー
量に両 群 間に差 を 生 じ さ せ ない 目的で摂 取し た （BCAA
サ プ リメ ン ト6925 ．
5kcal，
MD
6923 ．
4
kcal
）。
BCAA
サ プ リ メン トの成分は
，
lg 中にア ミ ノ酸 500 mg （ロイ シン 105 mg，
イソロイシ ン85mg ，
バ リン70
mg，
グル タ ミン 123 mg，
ア ルギニ ン 117mg ：ロ イシ ン の含 有 率21％）で あ り．
BCAA サ プ リメ ント6g
中に3g
の ア ミ ノ酸が含 まれる。MD
は多糖 類であ り，
アミ ノ酸は含 有しない 。 運 動 介 入は監 視下 で実 施した。
高 齢 者 用マ シン （ミ ナ ト 医科学 社 製，Wel−
tonicL
シ リー
ズ ）を 用いて1
セ ッ ト20
回，3
セッ トの筋 力増強練 習を実施し た。
運動種目は Leg press （以 下
，
LP ），
Hip abduction （以 下，
HA ）
，
Knee extension （以 下，
KE），
Rowing （以 下，
RO）の 4種 目とし
，
Watanabe
ら12）の報 告に準 じ，
高 齢 者用 マ シ ンを用い て 最 大 筋 力の 30％ （maximum voluntary contraction ：以下，
MVC ）で実 施 し た。
運 動 時の教 示 は，
充 分 な 力 積 が 得 られるよう求 心 性 収 縮 お よび遠 心 性 収 縮を3秒 程 度か け ゆっ く りと行 うように指 導し た。 また，
有 酸 素 運 動をエ ル ゴ メー
ター
もしくは四 肢 交 互 運 動 機 器 （NUSTEP
社 製，
NUSTEP
） を用いて，
自覚 的 運 動 強 度Borg scale l2点に相 当 する負 荷 量で 1 セ ッ ト10分間，
バ ラン ス練 習1セ ッ ト15分 間 を実 施し 表 1 利 用者 情 報 BCAA 群 コ ン トロー
ル群 性 別 年 齢 （歳） Co−
morbidity lndex（点 ） デイ ケァ利 用歴 （日） 基 礎 疾 患 分 類 介 護 分 類 性 性 男 女 脳神 経 運動器 内 部 障 害 要 支 援 要 介 護1−
2 要 介 護3−
4 18名 （66．
6％） 9名 （33．
3％） 78．
4 ± 7、
8 4．
3± 2，
3 564．
3 ± 294．
6 19名 （70，
4％＞ 6名 （22．
2％） 2名 （7．
4％） 12名 （44．
4％） 10名 （37．
0％） 5名 （18．
5％） 15名 （60、
O％） 10名 （40．
0％） 80．
4 ± 8．
9 3．
6 ± 2．
7 523．
6 ± 286．
7 12名 （48．
0％） 8名 （32．
0％） 5名 （20D％） 15名 （60．
0％） 9名 （36．
0％） 1名 （4．
0％） 平均値±標準 偏差 両群間に有 意 差 なし430 理 学 療 法 学 第42巻 第5号 た
。
各 種目のセ ッ ト閭を15
分に設 定し た インター
バ ル 制で行い，
合 計3
種目5
セッ トを 目標と し，
利 用者の能 力水 準に合わせ て運動 負 荷とセ ッ ト数を調 整して実 施し た。 また，
クー
ル ダ ウンとして集 団 体 操 を10分 間，
デ イケ ア終 了 時に実 施 した、3．
評 価 項目 介入 開始の1
週 間前 と介 入 開始3
ヵ月後に評価 を 実 施 し た。
対象 者は割りつ け ら れた群を告 知さ れ ない が，
評 価者は対象者が ど ち ら の群に割りつ け ら れ ている か把 握 し たうえで評 価を行っ た （一
重盲検 ）。
利用者情報 （年齢
．
性 別．
Body mass index （以 下，
BMI），
C
（＞morbidityIndex （以 下
，
CMI
），
介 護 分 類 （要 支 援，
要 介 護1−2，
要 介 護3−
4），
基 礎 疾 患 分 類 （脳血管 障害・
運動 器 障 害・
内 部 障 害 ），
デイケア利 用歴 （日数 ）を診 療 録より調査 し た。BMI
は介入 開始1
週間前 と介 入 開 始3
ヵ月 後と を 評 価 し た。
CMI
は 併存症の種別 と年齢 か ら点 数を求 め た。 1）四肢 粗大筋 力 四肢 粗 大 筋 力の測定は高 齢 者用マ シン （ミナ ト医 科 学 社 製，
Wel−
tonicシリー
ズ） を用い て等 尺 性の最 大 筋 力 を測 定 し，
体 重 比 筋 力を算 出し た。 本トレー
ニ ング機 器 は，
等尺性の両 下肢および 両上肢の筋 力 評 価 機 構を有し てい る。 測 定 項目 はLP，
HA，
KE，
RQ を実 施し た。 測 定 肢 位は，
LP およ びKE は測 定 肢 位を膝 関 節 屈 曲90
°，
HA は股 関節 内 転 外 転 中間位，
RO は肩 関 節 屈 曲90°
に て実施した。 2回測 定 して最 大 値 を採 用し た。2
） 握 力 握 力は，
ス メ ド レー
式 握 力 計 （竹 井 機 器工業 社 製，
グ リップー
D
） を用いて測 定した。 左 右 を2
回 ずつ 測 定 し，
最 大値を採用 し た。
3
）バ ラン ス機 能 評価 バ ラ ン ス機 能 評価は，
動的バ ラン ス と してTimed
upand go test （以 下
，
TUG ）とFunctional reach test（以下
，FRT
）を実 施し た。
2
回 実施して TUG は最 小 値，
FRT
は 最 大 値 を採用 し た。4
）日常 生 活 動 作 （ADL
）にお ける身体 活 動の評価身体 活動は
，
過 去3
ヵ月間の 平均的 な 日常生活に おけ る活 動をFrenchay
Activities
lndex
（以 下，
FAI
） を用いて評価し た。
5
） 介 入 回数と栄 養 介入の摂取 率お よび 運動介 入の 実施 率 3 ヵ月 間の介 入 回数を記 録し，
介入時のBCAA
お よ びMD の摂 取 率，
運動内容の実 施率を 評価し た。
運動 内 容の実 施 率は疲 労 等で，
途 中で運動を 中 止 し た 場合 も 含め て，
運 動 介 入にお ける5セッ トの運動メニ ュー
を実 施 で き た 割合 を求め た。 4．
統計学 的 処 理 両群間の比較に は，
年 齢BMI ，
デイケ ア利 用 歴，
介 入 回数と 運動介入の実 施率お よび 栄 養 介 入の摂 取 率は，
unpaired t
−
testを用い た。 四肢 粗 大 筋 力，
握 力，
TUG
FRT お よ びFAI は
，
栄養 介 入の種類 と 栄養 介入 お よび 運動 介 入の実 施 前 後との 2要 因によ る二 元 配置 分 散 分 析を用いて，
各 要 因の効 果の差 と交互作用 を検 定し た。 性 別，
介 護 度 分 類，
基礎 疾患分 類はπ 2 検定を 用い て検 定し た。 各 項 目の有 意 水 準は危険率5％ と し た。
統 計処 理に はIBM
社 製，
SPSS
Statistics
21を用いた。 5．
倫 理 的 配 慮 参 加 者に は，
本研 究のR
的・
内 容・
方 法・
危 険 性，
特 に どの群に属 するか は 選 択 す るこ と はで きない ことを十 分に説明 し た。
本 研 究は，
徳 洲 会 共 同 倫 理 審 査 委 員 会の承 認 （承 認番 号TGEOO324−
024＞の うえ，
ヘ ル シ ンキ 宣言に準じ．
患 者の人格・
権 利と守 秘 義 務に十 分 配 慮して実 施し た。
結 果1
）運動 機 能の評 価FRT
は，2
要 因の うち，
BCAA
群で栄 養 介 入の種 類 に有 意差 を認め （p＝0．
004
），
交 互 作 用 は 認 め な かっ た （表2）。
他の項目 はFRT を 除い て有 意 差は認め ら れな かっ た。
2） 介 入回数と 栄養介入の摂取率およ び運動 介入の実 施 率 介 入 開 始 後の介入 回数は，BCAA
群 ：18．
8
±5，
9
回 （1
週 間 あ た りL56 回 ），
対 照 群 ：16．
6
±7，
1
回 （1週 間あ たり1．
38
回）と両 群 間で 差 を認め な かっ た。
運動 介 入 の実 施 率お よ び栄 養 介 入の摂 取 率は両群間で 差 を 認 め な かっ た （表2）。
ま た，
利 用 者 情 報 およ びFAI も両 群 間で差 を認め な かっ た （表L2
）。
考 察 本 研 究は要 介 護 高 齢 者 を対 象 とし て，
BCAA
摂 取 を 併 用 し た 運動 療 法が身 体機 能 に 及 ぼ す影響 を検 討し，
FRT において BCAA 摂 取と 運動 療 法との併用の有 意 な 効 果 を 認 めた。 BCAA 摂 取と運 動 療 法と を併用 し て の 介入 回数は 3 ヵ月 間で 18．
8± 5．
6回，
1週 間 あ た り1．
56
回 であっ た。 こ の結 果は，
臨 床上 で一
般 的 な外 来 形 式の 理 学 療 法の頻 度に相 当 する介入 回 数 で あっ ても，
BCAA
摂 取と 運動 療 法との併 用 は，
動 的バ ラン ス能 力の 改 善す る可 能性 を示 唆してい る と考え る。
四 肢 粗 大 筋 力は，BCAA
摂 取 と運 動 療 法と を併 用し て の有 意 な 効 果は認め な かっ た。
低 負 荷の運動 効 果に関 する報 告10）11＞は，
運 動歴のない健 常高齢 者を対 象と し，
アミ ノ酸 を併用 した通 所リハ が高 齢 者の身 体 機 能に与 える影 響 431
表2 介 入 前 後の身体 機 能と身体 活 動の変 化
BCAA 群 コ ントロ
ー
ル群Leg press （kgf／kg）
Hip abduction （kgffkg）
Knee eXtenSiOn （kgi／kg）
Rowing （kgf／kg）
握力 （kgf）
Timed up and Go test （秒 ）
FunctiQnal Reach test（cm ）
Frenchay Activities lndex（点 ）
Body mass index （BMI ）
介入 回数 運 動 介 入 実 施 率 （％） 栄 養 介 入 摂 取 率 （％） 介入前 3ヵ月後 介 入 前 3ヵ月後 介入前 3ヵ月 後 介 入 前 3ヵ月 後 介入前 3ヵ 月後 介 入 前 3ヵ月 後 介入前 3ヵ月後 介 入前 3ヵ月後 介 入 前 3ヵ月後 1
，
50 ± 0，
39 1，
64
±0，
46 0．
82 ± 0．
21 0．
83 ± 0．
2 0．
68± 0．
20 0．
71 ± 021 0．
92 ± 027 0，
95 ± O，
28 27．
7± 6．
4 26．
6 ± 6．
2 12，
8 ± 9，
4 12，
3 ± 7．
2 30．
1 ± 5．
4 31．
9± 9．
1 16．
6± 9817．
4 ± 10．
7 23．
6 ± 3．
4 23．
5 ± 3．
5188 ± 5．
6 94，
9 ± 98 100 1，
58 ± 0，
58L63
± 0．
56 0．
81± 0．
21 0，
83 ± 0．
23 0．
66± 0．
24 0、
67± 0．
23 084 ± 0．
3 093 ± 0，
3 24．
4± 9．
1 25、
2 ± 10．
1 13．
9 ± 10，
9 12，
3 ± 7．
6 27．
9 ± 5．
6 27，
8 ± 5，
1 20．
5± 10．
7 20，
6 ± 9921．
9± 3．
4 21．
6± 3．
816．
1 ± 7，
792，
3 ± 13．
6 100 n．
S．
n，
S．
n．
S．
n．
S．
n．
S．
n．
S、
＊＊ n．
s．
n．
s．
n．
S．
n．
S．
n，
s，
n．
S．
平 均 値±標 準 偏 差 ＊ ＊：pく
O．
Ol
n．
s、
：not significant本 研 究で は両 群ともに
，
30％ MVC で の運動 介 入を研 究 開始 前に1
年 半 程 度 実 施してい た。 運 動 歴 と要 介 護状 態 の有 無が先 行研 究 と異 なる た め，
筋 力 増 強 を認めなかっ た可能 性が考 えられる。 ま た，
FRT
と筋 力の関 連は，
膝 伸 展 筋 力お よ び足 関 節 背 屈 筋 力 13）の影 響 を受 けると報 告 されてい るが，
本 研究で は膝 伸展筋 力に対 する効果を認めな かっ た。一
方，LP
時の腓 腹 筋の筋 活 動は，
膝 関 節 屈 曲90°
と比 較 して60°
以 下 で有 意に高 まる14）ことか ら，FR
の向上 に 下 腿三頭 筋の筋 力向上 が 関 与 し ていた 可 能 性 を否 定 で き ない と思 わ れ る。
さ ら に
，
Kim
ら6）はBCAA
摂 取 をロイ シン含 有 率 42％の BCAA3
g を1
日2
回，
毎日摂 取し，
BCAA
と 運動 療 法の全 体のコ ンプ ラ イ アンス70．
3
％ の条件で 下 肢 筋 力 と筋 量が増加し たと報 告し た。
本研 究で は 運動 時の アミノ酸全 体の摂取 量 と し て は 同等で あっ た が，
ロイ シ ンの含有率は21
％ と半 分で あっ た。
BCAA
の摂取 率と 運 動 療 法の実 施 率は高 値であっ た が，
ロ イ シン含 有 率の 差が あ るこ とが 影 響 し た と考 え る。
本 研 究の限界は，
筋 力 増 強 練 習が計 画 通 りの力 積 を 得 ら れ た か否 か，
血 液 学 的 な栄 養 指 標，
日常 生 活 上 の食 事 摂取 量 とエ ネルギー
出 納，
以 上 につ い て検討 で き てい ない点が挙げら れ る。
また，
今 後の課題 はBCAA
の摂取 量 と 配 合 割 合，
運 動 療 法の負荷 強 度 と運 動様式，
両 者の至 適 な組み合わせ を検 討してい く必 要がある。
結 論 要 介 護 高 齢 者 を対 象 者と して，
BCAA 摂取 を併用 し た 運 動 療 法の実 施が身 体 機 能 改 善に お よ ぼす 影 響 を検 討 した。3
ヵ月 間のBCAA
摂 取 と運 動 療 法 と を併 用 する こ と で，
バ ラン ス機 能に 対 する有 意な効果 を認 め た。
臨 床上 で一
般 的な外 来 形 式の 理学 療 法の頻 度に相 当 する介 入 回数であっ て も，
効 率 的にバ ラン ス機 能 を改 善 する 可 能 性 が 示 唆 さ れ た。
謝 辞 ：本研究は，
「平成25
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wagop
fi
tsrc
ee
}:Sik6terv
<Abstract>
433
Effect of Exercise
Combined
with
BranchedChain
Amino
Acid
Supplementation
on
Muscle
Strength
andBalance
Function
in
Elderly
Japanese
in
Need ofCare:
A
Randomized
Controlled
TrialTakashi
IKEDA,
PT,
MS,
Tetsuya
JINNO,
MD,
PhD,
Sadao
MORITA.
MD,
PhD
7bdyoMledicaland DentalUhiversiipy
Graduate
School
ofMedical
and DentalSctences
Takashi
IKEDA,
PT,
MS,
Hiroyuki
KUGOTA,
PT,
Yusuke
KUROKL
OT,
Kuniko ISHIDA, MD Rehabil-careShonan
KttinahuraHiroshi
NAGASAWA,
PT,
PhD,
Ikuko
GOMI,
RD,
PhD
Ktznagawa
U}tiversity
ofHuman
Services,
Graduate
ProgranzinHuman ServicesJunya
AIZAWA,PT,
PhD
7bbyoMedicatand DentalUhiversiq"CginicalCenter
fbr
Sports
b4ledieine&
Sports
Dentistr),
TadashiMASUDA, PhD
Iilthushima
U}ziversiojsfucudyofElytnbiotic
ElystemSciencePurpose: This study examined the effects of exercise combined with
branched
chain amino acid(BCAA)
supplementation on physicalfunction
in
elderlyJapanese
in
need of care.Materials and methods:
This
randomized controlled study enrolled 52 participants.Participantswere randomly
divided
intothefollowingtwo groups: aBCAA
group(n=27)
thatingested
6
g ofBCAA
supplement10
minbefore
starting exercise, and a control group<n=25)
thatingested
6
g of maltodextrin. Exercisesinvolved
muscle strength exercises requiring30%
of voluntarymaximum contraction,
10
min of aerobic exercise, and15
min ofbalance
function
exercise. The 52participantswere
foILowed
for
3
months.We
determined
upper andlower
limbisometric
strength,gripstrength, timed up-and-go test,
functional
reachdistance
{FRT),
Frenchay ActivitiesIndex,and number of rehabilitation sessions.Evaluations
were conductedbefore
starting and after 3months of supplementation.Results:
The
mean number of rehabilitation sessions was18.8
fortheBCAA group and 16,1forthe contro! group.The
twofactor
analysis of variance showed thatFRT was significantly differedin nutritionfactor
atthe
BCAA
group after3
months ef supplementation.Other
factors
didnot differedbetween
two groupsafter
3
months,Conclusion: This study
