CANCER
8
(1999)
,p.21-26
21
インドネシア・東カリマンタンにおける工ビ養殖と加工
安原健允.
A.
S Y
AFEI SIDIK
インドネシア共和 国は ,最近,経済の後退や政 変によ って情勢が安定せず,東チモールの独立運 動や各地に起きている暴動を新聞などは伝えてい る. 群島国家の イ ンドネシア は, 東西5
,000km
, 南北1
,600 km
にもわたり,4
つの大きな鳥, スマ トラ島, ジャワ島,ボルネオ島( インドネシア事責 はカ リマンタン) ,スラウェシ島,イリアンジャ ヤ (ニューギニア島の西半分) の他 に観光地とし て有名なパリ烏,生物地理学的 にも有名なロンボ ック島など中小 の島は13
,600
余もある . インドネシアは ,石油や天然、カ、、ス,鉄鉱石,木 材, ゴム , ダイヤモン ドなど多くの天然資源に恵 まれているが,貧富の差 は大きく ,国民の生活は ボルネオ島 多くが貧困で,G NP
は1
,080
米 $
(1996)
であると 言 われている. 人口は 1億9,000
万人, ジャワ 島にはインドネシア総人口の6 4 %が生活し,特に ジャカルタ首都特別 区には830
万 人 が,人口密度 は1 平方km
あたり 1万4
千人と高い. 国民の87%
はイスラム教徒で あるが,他は華僑を 中心 に仏教 徒,キ リス ト教徒, ヒンズー教徒等である. ボルネオ烏は , ブルネイ国,マ レーシア国 ,お よび,インドネシア固とが領有しており, イン ド ネシア領はボルネオ島の3
分の2
,島の南部73%
を占め , この地域をカ リマンタンと呼んで、いる . カ リマンタンには,東, 西, 南, 中央カ リマンタ ンの4つの汁│ があり ,東 カリマ ンタン 州 には ,北 図ー 1 インドネ シア・ボルネオ島 (カリマンタン島 ) および束力リ マンタン海岸部 (略図)T akenobu Y A S U H A R A and A . Sy AFEl SlDIC : Som e notes on the shrimp m anufacture and the shrimp aqua-cultuer in East K arimanta n. Indonesia
22 インドネシア・東カリマンタンにおけるエピ養殖と加工 からブルンガン県,ブラウ県,クタイ県,パシ ー ル県の4 つの県がある. この何れの県も沿岸は生 物地理学上重要なウオーレスラインとなっている マカッサル海峡に接しており,この沿岸は各地で エピの養殖が行われている. 東カリマンタン州、│の州都はサマリンダ市である が,他に3つの指定都市がある. 石油の積 出港 と して港が管理され,産業 ・工業の中 心地 であるパ リクパパン市,沿岸はデルタ地帯にな って はいな いがリゾート海岸を有しているボンタン市,それ に行政 ・経 済 ・商業 ・文化の中心地のサマリンダ 市の 3 つの市がクタイ県に,北にあるブルンガン 県のタラカン市は海岸リゾート地として,また, 沿岸一帯は河川 か らの堆積土壌の肥沃なデルタ地 帯で,有数のエピ類の漁場である. 今回報告するエビの養殖場は ,東カリマンタン 州の州、│者15サマリンダを流れるマハッカム 川 の河口 に開けたデルタ地域の養殖場,パリクパパンから さらに南の開発 中の養殖場などである . 著者の一 人安原は, 1994年1月から3月まで共 著 者 の S!DICが 勤 務 す る, イ ン ド ネ シ ア 国 立 ム ラワルマン大学農学部水産学科に滞在して共同研 究を行い,多くの経験をすることが出来た . 先に 本誌(1998)に記した報告もその 一つである . 本報 は,同様に,東カリマンタン沿岸部で、近年盛んに 行われているエピ養殖場の開発と集荷されたエピ 類の冷凍加工による製品化の現状を紹介するもの である.
1.
工ビ養殖場の開発 養殖場の造成と養殖方法 エピの養殖池の造成 は,次のような手順で行われている . ま ず,養 殖 場 と し て 開 発 し よ う と す る 適 地 と 区 域 を 選 定 す る. この地域は ,海岸の塩水が流れている水路と これに固まれている平坦な地域である . 主にデル タ地域の肥沃な 土 地で,マングローブやかなり大 きな樹木の生えている土地も対象となっている. 区域が決ま れば,次に簡単なislj
量をして ,水路か ら数メー トル内部に入 った所に池を掘るが,その 聞を掘 った土を盛り上げて土手を作り池の周囲を 土手で囲う . 平行して , その区域内に生えている 立木を燃やし,まだ,燃え残りの木があったり , 煙 の 出 て い る 樹 木 が あ っ て も 池 の 中 に 水 を 張 る (図 -2 ). 水路側の土手の中間部には水門を作り, 通常1 - 2 mの潮位のある潮の干満によ って 水 路 からの塩水( 半断水 ・汽水) が入るようにしてあ るので,池の水は,この水門から流入する( 同-3) .
この水門からは ,天然のエビ( 稚エピ) が流入 ・ 浸入してくるが,種苗場から購入した稚エピを適 当量放流する . 初期には放流した稚エピにはエサ を与えない粗放養殖が行われている . そして,引 き続き立木の根を取り除く作業をするが,この立 木や燃焼した樹木やその根は2 - 5年位かけて掘 り起こし取り除く. この除去作業は若い青年が素i
替りをして行っている . 従って完全な養殖池 にな るのには4 - 5年かかっている. 完成した養殖池 は水深1 - 1 . 5 m,広さは様々である. こ の よ う に し て 開 発 し て い る エ ピ 養 殖 場 の 一 つ,バブルラウ (J{ ッシル区) の開発途上の養殖 場は, 1面4 - 1 2 hrである. セレベスから集団 移住した人によ って 開拓され たもので,セ レベス 出身者 が8 0 %,他はカリマンタン や周辺の移住者 で2 - 3,000人, 4 - 5 0 0家族の新たな村が作られ ている. 開発初期の生産量は少なく 1回の収量 は1 ha当たり250-500 kg位( 頭付き重量) で, 年3
回水揚げしている . こ の村では5
年後には総 面積2,000 hrにする予定との事であったので,今 頃 は 広 大 な 養 殖 場 が 完 成 し て い る こ と と 思 わ れ る. モアラパシーの養殖場集落 この養殖場でも, 同様にエピ養殖場の開拓に住民の集団移住政策が とられ, さらに開拓が続けられている . このモア ラパシー養殖地では,やはり1,200人, 400家族が 集団移住している( 図 5). こ の地はジャワから の移住者が90-85%,東カリ マンタンから10- 15 % の人が入植しており,ニッパヤシの林を伐採して 広大な養殖池ができている( 図 4 - 5). 今後も このような計画があ って,この移住地が成功すれ ばさらに移住政策がとられる予定である. この地 区の養殖池 は大小様々で, 1つの 池の大きさは4 - 8 haであるが,ここも養殖場を造成中( 図-3 ) で数百ヘクタールの広さがある. 1 ha当たりの 収量は250-500 kg (頭付き重量),年2 - 3回水 揚げする . 餌は少し与えている .安原健允 ・A. S Y A F EI SIDIK 2 3 図-2 開発中の養殖池,立木のある内に水を張る 図- 4 ニッパヤ シ林と水路 図- 3 水門と整地中の池
2.
エビ養殖の現状 東カリマンタン 地区の種苗エピの生産は ,主に パリクパパンにある国立種苗センター ,および, 民間の種苗場で行われているが,それぞれの養殖 場でも生産している . 国立の種苗センターでは , 毎月25 日に 膨化 させ体長が 1cm位になった稚エ ピを 1尾
25 Rp で販売している . 種苗場の池の 水温は30-32
0C .
養殖するエビ類は ,w h
ite tiger(Pe地 e山 骨!erg叫 nsis) とbl ack tige r (P. t再開od
側)
である. また ,親エピ (black tiger) のレンタル を行っている業者もある . 1匹の親エビについて 3 回産卵 させるが,この レンタル料は最初の1回 目は
1
尾4
万5000
Rp(図- 6)
,その後2
回 目と3
回 目 の 解 化 には1
万5000
Rp である . ( 当時1. 000
円が2
万ルピア) . エピ養殖場の大きさや収支状況は様々である. 早い時期から養殖事業を始め経験も豊富で,研究 熱心 な養殖業者は経営も安定しているところが多 図- 5 移住者の住居と水路,水門 い. 集約的な養殖事業を行って,実績を上げ安定 した経営をしている古い養殖場の一つ,サンボジ ア地域の養殖組合長をしているアブ氏 の養殖場 (図 7) では, 一 つの 池 の面積は4 hrに統一 区 画 され,約100
日で養成し年3
回水揚げしている . 1 回の収量は 1 ha 当たり 3 - 4 ton,餌料は l 年 に 1 ha 当り 4 ton 位与えているが,こ の餌の量は l 回の収穫量相当分になる . 水揚げしたエピを出 荷した後, 一 回毎にしばらくは 池 を休ま せ, この 間に池の底に貯ま った腐泥を除去したり ,天日に 曝し消毒をしたりしている( 図一 7) . この養殖場 では機械化も 進み ,養殖池の泥土の除去や清掃な どには大型の重機を 用 いている . 養殖場が生産したエビ の大半 は,コ レクター と呼 ばれる集荷業者によって集めら れているが, 小 規模な養殖業者や天然 エ ピを漁獲している漁 師 らは, 直接集荷業者の集荷場に持 ってい って いる .24
インドネシア ・東カリマンタンにおけるエピ養殖と 加工 養殖ウシエピの集荷価格は 1 kg大2 ,500 R p, 小1,700 Rp. ( 当時) ということであった . 集荷 場では ,集めた エピ ( 図- 8 ) を仕訳し計量した 後,大きな 風 日桶のよ うな容器に氷詰めにして 保存し, 三 日に一度位 の 割 合 で 加工場に運搬 し ている . 図-6 レンタル周の親エビ 図ー7 アブ 氏のエビ養殖池 図-8 集荷 されたウシエビ3 .
工ビ の冷凍加工 コレクターや集荷場から集められたエビは,加 工場で異物などを除去し , さらに仕訳し処理され て箱詰めにして大半が 日本 に輸出 されている . サマ リンダにあるエピの加工場,P. T. M IS
AjA
M IT RA C O.
,L
T O
は,Jakaruta
に本社のある日本 の企業との合弁会社で,加工場は東カリマンタン を中心に 4 つの事業所(加工場) を所有している . この加工場では ,従業員の全員が近隣の若い人た ちで,良く管理され衛生上の問題にも大変な配慮 をしている . 集荷されたエピは,まず,殺菌処理をした冷却 水 を流している大きな容器に入れられる . ここで は冷水でエビを良く洗浄し ,水を 切 った後,選別 台に移して大きさをそろえたり ,形状の悪いエピ や異物などを選別する . 中にはむき身にする作業 もある( 図-9 ).エピは図一12の械な規格で分類し , 規格をそろえて( 図 10) 箱詰めにする( 図ー11). 箱詰めのエピは水を張ってから冷凍庫に入れて急 速冷凍する . 箱詰めの冷凍エ ビは冷凍倉庫に移し 保管した後に 出荷 される. イン ドネシアと 言 わず,東南アジアなどで最も 気を 付 けなくてはいけないことは ,飲料水とか加 工用の使用水の衛生面である . 細菌や病原菌など の問題から, 日本からの旅行者などで水道水でも 生水を飲んだり,氷を食したりして病気にな った り,命を落とす人もあるほどで, インドネシアの 人でも常に精製水をペットボ トルに入れて持ち歩 いている . 仮に精製水やミネラルウォーターでウ イスキーの水割りを作ったとしても,この時に入 れた氷が普通の水で 出来ていれば同様なことが起 きるのである エビの加工においても同様で、,最も注意しなく てはならないことは, この時使用する氷と水であ る. 上記の加工場では ,製氷も自社で行い日本式 の衛生管理がなされ,万全を尽くしていることが 伺える . また ,従業員の衛生意識の程度であるが, 便所で用 を足してから ,便器の横に 用意されてい る水瓶の水 を手桶 や柄杓 で左手にと って,その左 手で旺 門を直接洗う習慣がある . トイレットペ ー ノTーは普通は使用しない. 従って ,従業員の衛生 面については特に注意を払い,仕訳などの作業に安原健允 ・A .S Y A F E I SIDIK 25 入る前や, トイレから出た後には必ず両手を石鹸 で洗う習慣を身につけさせること,消毒すること の意味を教育し ,外部と 加工場との履き物の区別, 図-9 作業中の女子従業員 図-10 規格毎の仕訳作業中 食事時間外の飲食の禁止など,徹底を計らなくて はならないことが多い. 加工場の中には,常に紫外線殺菌灯を点灯し, 用水は精製水を使用することや ,水道管の各所に 紫外線殺菌処理機を備え,その中を水道水が通過 する設備や,大型の洗浄容器に水を張 った時など では,その中に殺菌剤を投入するなどの処置がな されている . この加工場で働く女子の従業員は,午前と午 後の 二部制で2 - 300人が働いている . 働く場所 の少ないこの地方の女性に ,働 く場を提供する と言 うことでこの地域に貢献している. 加工場 の幹部や責任者は, 日本の工場に半年くらい派 遣して研修させ, 日本の現場を体験させ教育し ている . 図ー11 箱詰め作業中 図-12 規格表
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インドネシア ・東カリマンタンにおけるエピ養殖と加工4.
エビ 養殖 の今後と課題 の 他. 有 用 水 産 物 と し て , 日 本 で は ヨ シ エ ピ インドネシアの東カリマンタンのエピ養殖場の 開発は ,以上の様 な住民の移住政策によって進め られている. 今後 もこ のような広大なエビ養殖場 の開拓が続き,大量の養殖エビを生産することが 続いた場合,供給過剰 にならないか. また,養殖 場として失敗した場合, この開発が環境破壊を招 き,地域の荒廃が起きないか. 現に養殖池に浸み 出てくる地下水や土壊の成分,茶褐色の腐植成分, 泥炭の溶出成分などがエピや魚の養殖に悪い影響 を及ぼし ,放棄されている 池 も見受けられる. 広 大な沿岸部の肥沃な土地 をエピ養殖場だけでは な く他 に利用し , また ,放棄された養殖池 を他 に転 換できないか. など,移住政策と 一体化 したエピ 養殖の今後に ,多くの課題を残している . い ず れ に し て も , 最 近 は , ウ シ エ ピ ・bl ac k tiger (P. monodoπ) ,やバナナエビとかテンジク ク ル マ エ ピ と 呼 ば れ て い る w hite tiger (P m erguiensis) の他 に,天然のイリヤンバナナエピ(P enaeus m ergωensis) と記し た エ ピ が 日本 で は スーパ ーの庖頭 に安価 で並んで、いる . 養殖物よ り 天然物が好まれるという事からも ,永久的に拡大 して養殖エピが消費されるとは限らない. 天然エ ピとして ,ニュージランド, オーストラリア( ブ ラ ッ ク タ イ ガ ー , 大 正 エ ピ ・コ ウ ラ イ エ ピ P. chinensis) ,中国 (クルマエピ) ,香港( クルマ エピ) ,他. そして世界の各地 で大規模なエピ養 殖事業が展 開 されている 現在,これらの競争に打 ち勝つことは容易な ことではない.人件費が安く , 広大な面積を 確 保できるという事などで拡大した 東カ リマンタンのエピ養殖事業について,移住政 策という国策も ,地域開発という問題の見直しの 時期に来ているのかも知れない . 昨今の日本円に 対するインドネシアの通貨は下落し, 15 1円が1 万R p (1999 .3 . 5 .) になっている . イン ドネシア は, 広大な国土を持ち ,限りない 天然資源に恵ま れた国 である . 多くの固有の生物 が生息し ,農作物も 豊かでLある . この豊かな国の 天然資源の 一つがエピである . 世界各国で養殖し ている淡水産のオニ テナガエビ, ロブスターと 呼 ばれている海産大型エピの代表のイセエピ類, そ
M etapenaeus ensis, クルマエピ Penaeus ja抑 制C U S, コウライエピ( 大正エピ) P. chinensis,テラオク ルマエピ P.teraoi