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精神科ショートケアにおけるマインドフルネスをベースとした治療プログラムによる身体表現性障害患者への介入

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-09 138

-精神科ショートケアにおけるマインドフルネスをベースとした

治療プログラムによる身体表現性障害患者への介入

○山崎 玲子1)、北山 みゆき1)、原 まどか1)、平井 香里1)、上野 優子1)、藤田 欣也2)、藤木 暁1) 松原 三郎2) 1 )野々市こころのクリニック、 2 )社会医療法人財団 松原愛育会 松原病院 【問題と目的】 マインドフルネスは、「意図的に、今この瞬間に、 価値判断をすることなく注意を向けること」と定義さ れている 1 )。このマインドフルネスをベースとした 心理療法的アプローチに関して、特に欧米など諸外国 では1980年代より、様々な対象者に対し、様々な形態 での実践、効果の検証が現代にかけて数多くなされて きており、身体への強いとらわれを持つ身体表現性障 害を含めた身体化障害の患者に対しても、身体感覚も 含めた様々な自己への状態に「気付き」の目を向ける マインドフルネスが、症状の軽減に有効であるとする 報告は幾つもみられる 2 )。ただ、現在のところ我が 国においては、未だ実証的研究が十分に進んでいると は言い難い状況にある 3 )。今回、症状の改善が困難 であった身体表現性障害の患者に対し、心療内科クリ ニックにおける精神科ショートケアの枠組みでマイン ドフルネスをベースとした治療プログラムによる介入 を行ったところ、症状の著名な改善が認められた事例 を報告する。 【方法】 <事例>67歳女性、身体表現性障害。夫と営んでいた 自営業を60歳時に廃業して以降、「胸やお腹がムカム カする」との訴えを主体とした不定愁訴が目立つよう になり、器質的な異常が見つからなかったため精神科 を紹介され、通院加療を開始した。64歳時に 1 回目の 入院治療。65歳時に夫をがんで亡くし以降独居、66歳 時に身体症状の増悪、焦燥感、食思不振にて 2 回目の 入院治療を行った。退院後の日常生活の組み立てとし て外来作業療法、デイケアへの通所を開始。デイケア への週 1 〜 2 回の安定した通所が出来ていた時点で本 プログラムが稼働となり、利用を開始した。 <薬物療法>ヒベルナ5mg、ルボックス150mg、フルニ トラゼパム0.5mg、レスリン25mg、メイラックス0.5mg <介入>プログラムは精神科ショートケアの枠組みで 週 1 回の開催機会を設定、参加者それぞれに任意の ペースで参加を求めた。MBSR(マインドフルネススト レス低減法) 4 )をベースに、立案・実施・運営を臨 床心理士が担当した。主たる参加対象者は原則として 20〜60歳代の、気分の落ち込み、不安・焦燥感、身体 化症状等を主症状に持つ患者で、言語機能や理解力が 保たれており、 3 時間の参加が可能であるだけの一定 の症状の安定性が保たれていることを参加条件とし た。対象疾患としてはDSM-5における抑うつ障害群、 不安症群/不安障害群を主な対象と想定し、他の疾患 群については症状の程度等に応じて個別に参加可能性 を判断した。重度のうつ状態、頻回なフラッシュバッ クや解離症状、集団の維持に関わる易怒性・衝動性が ある患者については除外とした。対象と思われる患者 に主治医よりプログラムを紹介し、看護師が参加希 望・継続の意欲について確認することを参加の手続き とした。プログラムの構成は、回数を限定しないオー プングループの構成で行った。内容は、マインドフル ネスや認知行動療法についての概要的な講義を含め、 MBSRの技法に基づき、咀嚼瞑想、呼吸法、ボディ・ス キャン、静坐瞑想、ヨーガなど、様々なエクササイズ とその後の体験のシェアを、参加者の習熟度や希望な どをその都度確認しながら自由度の高い構成で行っ た。参加時点と、複数回の参加を経た時点での症状評 価のため、BDI-II、STAI状態-特性不安尺度を実施し た。 <介入経過>マインドフルネス・エクササイズとして 呼吸法から導入、# 1 では「お腹が気になって息を吐 く時に苦しかった」とやりづらさを述べていた。# 3 では身体感覚に意識を向けるボディ・スキャンのエク ササイズをごく短時間試行したところ「感覚が分から なかった」と困惑した様子であった。以後数回も呼吸 法を実施すると「やると苦しい」との訴えが続いてい たが、# 6 を過ぎた頃より「何となく楽に出来るよう になった」「ムカムカが気にならなくなってきた」と の訴えが聞かれるようになった。同時期より主治医の 診察の中でも身体症状についての訴えが軽減し、活 気、活動性の増大が認められた。# 9 では「身体が楽 になってきた」「一人でいたら駄目、外に出ないと」 と述べ、身体症状の自覚的な軽減とともに、活動性に ついても維持されていた。#13では、開始当初は数分 の実施でも抵抗感、困難感を訴えていた静坐瞑想につ いて自発的に「15分くらい大丈夫だと思う」と積極的 に述べ、実際に実施が可能であった。#14で行った思 考や身体の不快感を「流れる滝」に受け流すイメー ジ・エクササイズでは、「気持ちよかった、ムカムカ も全部流した」と笑顔で報告され、次回の#15では実 際に自宅での実施を報告されていた。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-09 139 -【倫理的配慮】 本報告に関し、対象者本人より同意を得ている。 【結果】 X 年10月〜 X + 1 年 7 月までの10ヶ月間で、計16回 参加した。参加期間中は 2 〜 4 名の少人数で実施さ れ、年齢幅は30〜60歳代、女性が 8 割を占めていた。 初回参加時点でのBDI-IIは18点、STAI状態不安56点、 「ムカムカ」についての評価はNRS7〜 8 であった。#15 に再評価を行ったところ、BDI-IIが 1 点、STAI状態不 安27点、NRS2〜 3 とそれぞれ大幅な低下を認めた。 【考察】 本症例は、プログラムの利用開始当初はエクササイ ズの実施に対し戸惑いや困難感、抵抗を訴えることが 多かった。本プログラムは構造度の低いオープン・グ ループで、少人数で自由度の高い構成で行っているた め、より個別の状態に合わせてカスタマイズした実施 が可能であり、本症例についても、本人の感覚を丁寧 に確認しながら、あまり無理をせず急がずに少しずつ の実践を重視して進めることが出来た。様々な技法を 組み合わせる中で、ヨーガ・エクササイズについては 毎回45分以上の時間を取っていたが、本症例はこのエ クササイズについては比較的取り組みやすさを持って おり、身体への強いとらわれを持っていた本症例に対 し、全身の各部位において筋緊張と弛緩を繰り返して いくヨーガ・エクササイズの実施が、特定の身体部位 に向けて狭小化されていた注意の焦点を、呼吸全体、 身体全体へと拡大していき、それが特定部位へのとら われを解除して身体症状を軽減させることに繋がった のではと思われる。また各エクササイズの実施だけで なく、音楽やアロマを用いた柔らかい雰囲気の中で、 茶菓を楽しみながらの何でもないグループ内の対話に も時間を使えていることが本プログラムの特徴でもあ り、こうした時間の過ごし方が出来たことが、技法の 習得に戸惑う中でもプログラムにとどまり続けられた 要因の一つでもあったと思われる。本プログラムを構 造度の低いオープン・グループで行ったのは、複数回 の参加が難しく、概論や導入部分についての最低限の 知識を得たいとのニーズもあったことから、待機群を 作らず、参加のしやすさを優先したためであった。こ うした構成が本症例については、少しずつのスキルの 体得や効果の実感に合わせてじっくり取り組める結果 となったと思える一方、そうした実感に至らないまま 参加が途絶えてしまうことは防げない構造であり、今 回は一事例についての報告であるが、今後プログラム 自体の効果検証を行う上でも、そうした構造について の見直しは必要と考えている。また他方、同じ身体表 現性障害であっても、身体感覚の麻痺を強く訴えてい た症例については、 2 回の参加の後、利用中断となっ た。フォロー面接では、エクササイズを実施する中で 身体感覚への気付きを得ていく以前に、「それが今得 られていない」という事実への注意が増し、その感覚 の耐え難さから脱落に至ったことが確認された。身体 への過度なとらわれを持つ身体表現性障害患者にマイ ンドフルネスを適用させていく上では、本人の感覚の 変化を慎重に、詳細に捉えつつ、身体全体へのアプ ローチを重視しながら進めていけることが有用と考え られるが、感覚の麻痺が強い患者にどう抵抗の時期を 乗り越えて継続的にアプローチしていけるかは今後の 課題である。 【参考文献】

1 )Kabat-zinn, J. 1994 Wherever you go, There you are: Mindfulness meditation in everyday life. New York: Hyperion.

2 ) Shaheen E. L. et al. 2013 Mindfulness-Based Therapies in the Treatment of Somatization Disorders: A Systematic Review and MetaAnalysis. PLos One. 26, e71834

3 )佐渡充洋ら 2017 大学病院におけるマインドフル ネス認知療法の取り組み マインドフルネス研究, 2, 58-65.

4 )Kabat-zinn, J. 1990 Full catastrophe living: Using the wisdom of your body and mind to face stress, pain, and illness. Delacorte Press.(カ バットジン, J. 春木豊訳 2007 マインドフルネスス トレス低減法 北大路書房)

参照

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