戦術と構想力
基礎編(1)
「部分的な(局所的な)」という前提はあるが、六段は「どこ に打つのか」を考えたりしない。 六段が考えることは「石のカタチ」と「構想(戦術)」であっ て、自分が描いた「構想」をベースに「打つ手」を選択してい る。「戦術」は、石が置いてない場所だけを見る。
「石のカタチ」は、石が置いてある場所だけを見る。
《補足》 「大局観」は、石が置いてある場所と、ない場所の両方を見る。重要なことは「単純な作戦」をできるだけ複数パターン考える。 策士が策に溺れると、ろくな結果が得られないことを、肝に銘 じてほしい。 プロの先生の「囲碁講座」や「著書」には、長所と短所がある。 プロがアマを指導するとき、最善手を教えたがる。でも、アマ は、悪手を打たないように気をつけ、コンスタントに「60 点」 を目指して打てばいい。できるだけ「囲碁を単純化」し、「正 解はひとつじゃない」と、開き直って気楽に打てばいい。
「カタチ」の急所
基本の
4
型
A
「正攻法型」 相手(黒石)の「カタチ」の弱点を突くB
「フリカワリ型」 「損して得取れ」の考え方C
「サバキ型」 なりふり構わず「活きる」ことを優先【カタチ(急所)の鉄則】
「4 線の石」の急所は「ケイマ(小ゲイマ)」 「3 線の石」の急所は「一間(となりのとなり)」 「眼形」の急所は「二等辺三角形」 【カタチ(急所)の補足】 ※ 相手の石に「ツケない」という前提で 「白石と白石」または「黒石と黒石」の中間地点 「自分の石を補強」する急所は「一間トビ」と「コスミ」【序盤(布石)における鉄則】
石をくっつけてはダメ(例外あり) 自分の石が数的不利になってはダメ 自分の石が重複しては(石の効率が悪くなっては)ダメ【戦術の基本的な考え方】
「大場」 石がまばらなところ 「急場」 石の根拠(活き死に)に関するところ 「ダメ場」 地になりにくいところ【「大場」の見つけ方】
① 碁盤を 4 分割する。 ② 白石と黒石の個数をそれぞれ合計する。 ③ 石数の最も少ない隅が「大場」となる。【「急場」の見つけ方】
① 碁盤を 4 分割する。 ② 白石と黒石の個数をそれぞれ合計する。 ③ 白石と黒石の個数が等しくない隅が「急場」となる。 ④ ただし、白石または黒石が全く存在しない場所は「急場」 とは言わない。【「援軍」の考え方】
数的不利な自分の石の周辺に打つことを「援軍を送る」というが、 「援軍」は必ずしも「カタチの急所」に打つとは限らない。 周囲の状況を鑑みて「石の配置のバランス」を重視した手である。 「なんとなく、この辺に打つのがいい感じ」という、感覚(芸術 性)や、構想力(戦術)が問われる。「勢力線(4 線)」と「実利線(3 線)」の攻防
【結果】
実利線(3 線)で囲うと、見た目以上に陣地が広い。
効率よく陣地を囲うには、実利線(3 線)に打った方が、勢力 線(4 線)に打つより適しているのだろうか?
「戦術と構想力」基本形
「戦術と構想力」の鉄則
複雑な変化を避け、自滅しないことを優先
定石を覚えれば覚えるほど強くはなれない。 なぜなら、定石は碁の本質ではないから。 だから、なるべく定石を打たないように、構想を立てること。【格言】 一に「アキスミ」 二に「シマリ」(「カカリ」) 実利線(3 線)の「小目(白④)」への「カカリ」には要注意 【 ひと目の定石 P221 ~ P226 , P287 ~ P294 参照 】 「小目」の場合、「白 A」 の「シマリ」で隅が陣地 になる。 (「白④」「白 A」ともに 「実利線」) 黒は、「白④(小目)」へ の「カカリ」を優先。 「黒❺」の「大ゲイマガ カリ」が、変化が少ない のでおススメ。
カタチの急所は「黒❶」だが、「白②」などと「ハサミ」を打た れると、一気に接近戦となり、この後の変化は無数に存在する。 高段者でも、理解できない難しい定石の世界が待ち受けている。 「黒❶」の「カカリ」は正解だが、避けた方が無難。 囲碁を単純化(複雑さを回避)することが、上達の第一歩であ る。なぜなら、「複雑さ」は、非効率な石を作る要因であり、囲 碁の本質を見失うからである。 黒石と白石が近づけば近づくほど「複雑さ」は増す。 だから、序盤から接近戦を仕掛けていくのは好ましくない。
「星」は「カタチの急所」が 2 ヶ所あるが、
「小目」は「カタチの急所」が 1 ヶ所しかない
勢力線(4 線)の「星」は、「黒❶」と「カタチの急所」に「カ カリ」、「白②」と「ハサミ」を打たれても、「黒 A(正攻法 型)」の「両ガカリ」または、「黒 B(フリカワリ型)の「サ ンサン」に打てば、分かり易い変化となる。 【 ひと目の定石 P57 ~ P67 , P135 ~ P138 参照 】「カタチの急所」が 1 ヶ所しかない「小目」の
場合は、「カタチの急所」に打たせない作戦で
「白 A」と「カタチの急所」に「シマリ」を打たせない方法は 2 つある。 【直接法】「カタチの急所」に「黒 A」と打つ 【間接法】「カタチの急所」を一路外して打つ(「黒❶」) 白が「カタチの急所」に打つと「ツケ」(悪手)となるので、打てないという発想もし、「白①」と「ツケ」てきたら?(参考図)
小目(実利線)の場合、「カタチの急所」に打つか、「カタチの 急所」に打たせないように打つかを見極める感覚が重要
「カタチの急所」に
打つ
「カタチの急所」
に打たせない
「実利線」は「眼形(石のつながり)」を重視 「勢力線」は「中央の厚みとバランス(援軍)」を重視
「カタチの急所」
「A」
「カタチの急所」
「A」と「B」
「白⑧」の「ウチコミ」には、「黒❺と❼」を連絡(ツナガル) しようとせず、中央の「厚み(勢力)」で勝負する。 簡単な「戦術」を選ぶ。 《ワンポイントアドバイス》 「白⑩」と「ハザマ」を突かれ たら、「黒⓫」と「ケイマ」に 外す。
「白⑧」と「カタチの急所」に打たれたら、「黒❾」と中央へ進 出(勢力を拡大)しながら補強する。
「白⑧」で「黒❺❼」の「カタチの急所」であろ「A」以外に打 ってきたら、「黒❾(次の一手)」は「大場」へ打つ。
左辺の黒は、すぐに攻め られる心配がないので、 これで「一段落」となる。
「一段落」したら「大場」へ
隅の「大場」の見つけ方 碁盤を 4 分割して、石数 の一番少ない隅が、最大 の「大場」となる。 辺の「大場」の見つけ方 碁盤を 4 分割して、石数 の一番少ない辺が、最大 の「大場」となる。「2 間ビラキ」を両側から挟まれたら注意!
「黒❺❼」の眼形の急所 は「白➅⑧」、勢力と攻 守の急所(「1 間トビ」 の位置)は「A」「B」で ある。 仮に「白⑳」までの進行 をたどれば、「黒❺❼⓯」 は一方的に攻められる 石となる。「白⑥⑧⑭⑳」 は、「黒❺❼⓯」の「カ タチの急所」を突いてい る。黒は助けるために、 価値の低い手を打ち続 けることになり、非効率 な石の塊ができる。 勢力と攻守の急所 「A」 と「B」 (1 間トビの位置)「白⑩」を「勢力線」に打つと、攻撃的な展開
「黒⓫」は「勢力」と「実利」のバランスが崩れるので甘い
白は「⑩⑫⑭」と「勢力」を活用し、「黒❺❼❾」を攻める
「勢力」と「実利」のバランスが重要
「勢力」と「実利」のバランスが崩れる
「2 線」は「眼形線(死線)」・・・陣地を囲う効率は悪い 「黒❸」と「勢力線」 に打って、隅の白を 包囲する。 「白④⑥」と生きる ために「眼形線」に 打つが、「黒❺❼」と 「実利線」に打って、 中央の黒の勢力が増 大した。「黒⓫」と「カタチの急所」に迫る作戦も考えられるが、黒石 が分断される(下図)ので、この後の打ち方が難しくなる。
「勢力」と「実利」のバランスが重要
「白⑩」は「急場」。「黒⓫」には「白⑫」と封鎖を避ける。
「黒 A」と隅の白を 封鎖されたら、この 時点で白負け。
「黒⓭」と「2 間ビラキ(実利線)」で「眼形」を確保する。 「白⑭」と黒の「カタチの急所」に迫る。(下図:進行例) 「黒 25」の「ボウシ」 が、白の芯を止める 「手厚い」一手。 右辺からの黒の勢力 圏が増大した。
「黒❶」は実利を稼ぎ過ぎ。「白②」以下、黒は「❸❺❼」と、 白の後から「トブ」ことになる。(白の勢力が黒の実利を勝る) 先に「トブ」方が有 利(後から追いかけ る方が不利)。 石 数 の 少 な い 方 に 「トブ」方が有利(石 数の多い方に「トブ」 方が不利)。
「白⑭」の「ボウシ」は「カタチの急所」だが、「黒⓯」で左辺 の黒は活きている。「黒⓱」と「急場」に打てれば、黒が満足。
「白⑩⑫」と上辺に展開すれば、「黒⓭」の「カカリ」が白石を