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第一章はじめに行政行為(行政処分)はたとえ違法であったとしても 原則として取消訴訟を通じて取消されない限り(1 )有効であり続ける(行政事件訴訟法[以下 行訴法 ]三条(2 )) これは行政救済法によれば 取消訴訟の排他的管轄 であり 行政法総論によれば 行政行為の公定力 である また取消訴訟は 原

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全文

(1)

処分性の拡大と取消訴訟の排他的管轄―仕組み解釈

に対する均衡解釈論

著者

高木 英行

雑誌名

東洋法学

57

1

ページ

51-117

発行年

2013-07

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006016/

(2)

第一章   はじめに   行 政 行 為 (行 政 処 分) は た と え 違 法 で あ っ た と し て も、 原 則 と し て 取 消 訴 訟 を 通 じ て 取 消 さ れ な い 限 り ( 1) 有 効 で あ り 続 け る (行 政 事 件 訴 訟 法[以 下「行 訴 法」 ] 三 条 ( 2) ) 。 こ れ は 行 政 救 済 法 に よ れ ば「取 消 訴 訟 の 排 他 的 管 轄」 で あ り、 行 政 法 総 論 に よ れ ば「行 政 行 為 の 公 定 力」 で あ る。 ま た 取 消 訴 訟 は、 原 則 と し て 違 法 な 行 政 行 為 を 受 け た こ と を 知った日から六カ月以内に提起しなければならず、この期間を過ぎるとその行政行為につきもはや争いえないこと に な る (行 訴 法 一 四 条 ( 3) ) 。 こ れ は 行 政 救 済 法 に よ れ ば「取 消 訴 訟 の 出 訴 期 間」 で あ り、 行 政 法 総 論 に よ れ ば「行 政 行 為の不可争力」である。   ただし「取消訴訟の排他的管轄」という用語には注意を要する。そもそも排他的管轄が認められるのは、取消訴 訟・無効等確認訴訟・不作為違法確認訴訟・義務付け訴訟・差止訴訟等の「抗告訴訟」全般に対してである。それ 《 論    説 》

処分性の拡大と取消訴訟の排他的管轄

――

仕組み解釈に対する均衡解釈論

 

  

 

(3)

ゆえ本来なら「抗告訴訟の排他的管轄」という用語が適切だろう。そして抗告訴訟の種類のうち出訴期間を定める のは「取消訴訟」のみである。よって「取消訴訟の排他的管轄」という用語は、厳密に言うならば、排他的管轄と いう“縛り”のある抗告訴訟の種類の中でも、さらに出訴期間という“縛り”もある「取消訴訟」のみに着目した 表現であ る ( 4) 。   し か し 本 稿 は、 「取 消 訴 訟 の 排 他 的 管 轄」 を、 こ の よ う に'重 複 部 分' 的 な、 厳 密 な 意 味 で は 用 い な い。 む し ろ 便 宜 上、 「抗 告 訴 訟 の 排 他 的 管 轄」 と「取 消 訴 訟 の 出 訴 期 間」 と を 単 純 に 足 し 合 わ せ た 意 味、 い わ ば 両 者 の〈上 位 概念〉として用い る ( 5) 。何ゆえそうするかというと、この用語法により両者を「統合的」に捉える視点と「分離的」 に捉える視点との〈往復〉が可能になるからである。そしてこの視点間の往復こそが、本稿後の論証において重要 な役割を果たすことになるからである。   さて「処分性」のある行政活動、換言すれば「取消訴訟の対象」――厳密には抗告訴訟の対象――となる行政活 動 の 定 義 を 確 認 し よ う。 法 律 上 は「行 政 庁 の 処 分 そ の 他 公 権 力 の 行 使 に 当 た る 行 為」 (行 訴 法 三 条 二 項) と 規 定 さ れ ているが、裁判所はこの種の行為として、基本的には「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、そ の行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」を念 頭 に 置 い て き た (最 判 昭 和 三 九 年 一 〇 月 二 九 日: 民 集 一 八 巻 八 号 一 八 〇 九 頁) 。 そ し て こ れ は 行 政 法 総 論 で 言 う「行 政 行 為」 を 指 す と さ れ て き た (以 下「処 分 性 公 式」 ) 。 こ の こ と か ら 伝 統 的 に 裁 判 所 は、 行 政 行 為 に 当 た ら な い 行 政 活 動に関しては、市民から取消訴訟が提起されても、処分性を欠くとして不適法としてきた。   し か し 近 年 最 高 裁 は、 従 来 の 考 え 方 か ら す れ ば 行 政 行 為 に 当 た ら な い よ う な 行 政 活 動 に 関 し て ま で も、 「仕 組 み 解 釈 ( 6) 」を通じて広く処分性を認める動向にある。これら「処分性拡大判 例 ( 7) 」は、市民の救済ニーズを踏まえた柔軟

(4)

な 判 断 と 好 意 的 に 評 価 さ れ る こ と が 多 い。 他 方 で 無 理 に 処 分 性 を 拡 大 し て ま で も 抗 告 訴 訟 (と く に 取 消 訴 訟) の 利 用 に こ だ わ る 必 要 は な い、 む し ろ 平 成 一 六 年 行 訴 法 改 正 (以 下「行 訴 法 改 正」 ) に よ り そ の 活 用 が 促 さ れ た「当 事 者 訴 訟 (と く に 公 法 上 の 確 認 訴 訟) 」 (同 法 四 条 ( 8) ) を 代 わ り の 訴 訟 類 型 と し て 積 極 的 に 活 用 す べ き と の 議 論 も 根 強 い。 こ の 論 争 は、 〈処 分 性 拡 大 論〉 と〈当 事 者 訴 訟 活 用 論〉 と の 従 来 か ら の 学 説 対 立 と 相 ま っ て、 非 常 に 興 味 深 い 論 点 で ある。もっとも本稿ではこの議論には立ち入らない。   つ ぎ に 処 分 性 の 拡 大 に 伴 っ て、 「取 消 訴 訟 の 排 他 的 管 轄」 ―― な い し「行 政 行 為 の 公 定 力 並 び に 不 可 争 力」 ―― も拡大する、その結果市民に「不測の不利益」という“副作用”が生ずるとの懸念が強く示されてきてい る ( 9) 。確か に、この「取消訴訟の排他的管轄」拡大問題――以下「管轄拡大問題」――は、従来からの処分性拡大論――形式 的 行 政 処 分 論 や 相 対 的 行 政 処 分 論 等 (以 下「両 拡 大 論」 ) ―― を め ぐ っ て も、 “潜 在 的 な” 問 題 と し て は 指 摘 さ れ て き た ( 10) 。しかし今日、処分性拡大判例によりこの問題が“顕在化”し、判例動向への賛否を越え喫緊の問題としてそ の対応策の提示が求められている。にもかかわらず、管轄拡大問題に関しては、学説上これまでまとまった形での 研究がみられない。   そこで本稿はこの管轄拡大問題に対象を絞って考察する。そうすることで処分性拡大という判例動向を踏まえた 行政救済のあり方の一端を模索する。以下第二章では学説の議論状況を展望し、その到達水準を見定めるとともに 課題点を検討する。第三章では管轄拡大問題への対応策について、法原理・法解釈両面から探っていく。第四章で は考察結果をまとめ今後の課題を提示する。

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第二章   学説の議論   本章では第一節において、引き続き「問題の所在」を探るため、処分性拡大判例の中で管轄拡大問題につき言及 する裁判官の意見を検討する。第二節では、学説を通じて広く提案されてきている、処分性を拡大しても取消訴訟 の排他的管轄は適用しないとの議論――以下「排他的管轄『不適用』論」――を紹介する。そして第三節では学説 を横断的に考察していく。 第一節   排他的管轄「拡大」論   ま ず 藤 田 宙 靖 裁 判 官 (病 院 病 床 数 削 減 勧 告 事 件 の 補 足 意 見 ( 11) ) は、 勧 告 に 処 分 性 を 認 め る こ と で、 「い わ ゆ る 公 定 力 を有することになり、取消訴訟以外の方法によって、その適法性を争うことはできないのか、また、取消訴訟の出 訴 期 間 の 適 用 を 受 け、 こ れ を 徒 過 し た 場 合 に は、 も は や 出 訴 の 道 を 塞 が れ る こ と に な る の か (例 え ば、 本 件 に お い て、 勧 告 自 体 を 直 接 に 争 う こ と な く、 後 に、 保 険 医 療 機 関 の 指 定 拒 否 処 分 の 効 力 を 抗 告 訴 訟 で 争 う こ と と し た 場 合、 こ の 後 の訴訟においては、もはや、勧告の違法性を主張することはできないのか) が問題となる。 」という。   この問題につき藤田裁判官は、勧告それ自体の性質は「行政指導」である以上法的拘束力をもたず、したがって 理 論 的 に 厳 密 な 意 味 で の 公 定 力 を 持 た な い と 指 摘 す る。 し か し 同 裁 判 官 は こ の こ と か ら 直 ち に 排 他 的 管 轄「不 適 用」論を導くものではない。むしろ逆に、勧告を行訴法に従って取消訴訟の対象とする以上、それを公定力の名で 呼ぶか否かはともかく、取消訴訟外では争えないという「取消訴訟の排他的管轄に伴う遮断効」が否定できないと する。

(6)

  と は い え 藤 田 裁 判 官 は、 従 来 の 判 例 学 説 上 行 政 指 導 扱 い さ れ て き た 勧 告 に 処 分 性 を 認 め、 「こ れ を 専 ら 取 消 訴 訟 で争うべきものとすることは、国民に不測の不利益をもたらしかねない」と指摘する。そしてこの不利益回避のた め、必要に応じ行訴法四六条に定める「行政庁の教示義務」並びに同法一四条の「出訴期間徒過についての『正当 な理由』条項」を活用した対処を提案する。   つ ぎ に 近 藤 崇 晴 裁 判 官 (土 地 区 画 整 理 事 業 計 画 決 定 事 件 ( 12) の 補 足 意 見) は、 一 般 に 先 行 行 為 が「行 政 処 分」 と 認 め ら れ公定力が働く場合、その行為の違法性については、原則としてその行為を前提とする後続行政処分取消訴訟では 主張しえない、すなわち「違法性の承継」が認められないとす る ( 13) 。そして計画決定に関しては、従来「行政処分」 と認められてこなかったから、その違法性について後続行政処分たる仮換地指定や換地処分に係る取消訴訟で主張 することが認められてきた。しかし本判決を通じ計画決定に処分性を肯定する結果、もはやこのような違法性の承 継が認められなくなる。   し た が っ て 計 画 決 定 の 違 法 性 を 争 う こ と を 欲 す る 者 は、 こ の 決 定 段 階 で 取 消 訴 訟 の 提 起 を 余 儀 な く さ れ る の だ が、 近 藤 裁 判 官 は、 「土 地 区 画 整 理 事 業 の よ う に、 そ の 事 業 計 画 に 定 め ら れ た と こ ろ に 従 っ て、 具 体 的 な 事 業 が 段 階を踏んでそのまま進められる手続については、むしろ、事業計画の適否に関する争いは早期の段階で決着させ、 後の段階になってからさかのぼってこれを争うことは許さないとすることの方に合理性があると考えられる」とし て、その帰結も妥当とする。   もっとも近藤裁判官は、本判決前になされた計画決定について、本判決前の判例状況下では、国民は計画決定に 処分性が認められないと判断し、その決定段階では取消訴訟を提起しなかったであろう、それゆえその出訴期間を 徒 過 し て い る で あ ろ う こ と を 指 摘 し、 「別 途 の 配 慮 を 要 す る」 と い う。 そ し て こ の 配 慮 と し て、 行 訴 法 一 四 条 の

(7)

「正 当 な 理 由」 を 認 め、 出 訴 期 間 を 徒 過 し て も 救 済 を 図 る と い う「経 過 措 置 的 な 解 釈」 を 提 唱 す る。 た だ し、 す で に 計 画 決 定 後、 換 地 処 分 も な さ れ て、 そ の 処 分 の 出 訴 期 間 ま で を も 経 過 し て し ま っ た よ う な 場 合 に は、 「正 当 な 理 由」があるとは言えないとも指摘する。   以 上 両 意 見 と も、 処 分 性 の 拡 大 に 伴 い 取 消 訴 訟 の 排 他 的 管 轄 も 拡 大 せ ざ る を え な い と の 前 提 に 立 つ。 換 言 す れ ば、処分性拡大に伴い市民に「不測の不利益」が生じうると言っても、排他的管轄「不適用」は認められないとす る。 そ の か わ り に、 い ず れ も そ の 不 利 益 へ の 対 応 策 と し て、 「正 当 な 理 由」 が あ る 場 合 の、 出 訴 期 間 徒 過 に 対 す る 救 済 規 定 ―― 以 下「 『正 当 な 理 由』 条 項」 ―― の 活 用 を 提 案 す る ( 14) 。 行 訴 法 の 例 外 的 救 済 規 定 を“工 面 し た” 堅 実 な 対応策である。ただし疑問の余地もなくはない。   まず藤田意見であるが、行訴法四六条と同一四条を並列していることから、行政庁の教示義 務 ( 15) 違反を理由に「正 当 な 理 由」 を 肯 定 す べ き と の 論 理 構 成 ( 16) の よ う で あ る。 し か し そ う す る と、 そ の 前 提 と し て、 「仕 組 み 解 釈」 に よ る 処分性拡大という、場合によっては 行政庁にとっても予測不可能な 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 裁判所の解釈結果が、さかのぼって行政庁の教 示義務の対象だったということにな る ( 17) 。もちろんこうした構成は、原告市民の救済を引き出すための名目論に過ぎ ないのかもしれない。しかしそうはいっても、この種の義務を行政庁に課すことが名目論としても合理的と言える ためには、行政訴訟における教示制度の趣旨についてさらなる検討の必要があるように思われ る ( 18) 。   つ ぎ に 近 藤 意 見 は、 「経 過 措 置 的 な 解 釈」 の 名 の も と、 管 轄 拡 大 事 案 に お い て「正 当 な 理 由」 を カ テ ゴ リ カ ル に 肯定することを念頭に置くようである。しかし個別具体的事情を斟酌して判断される、その限りでは〈衡平〉的観 点から設けられた「正当な理由」条項につい て ( 19) 、その種のカテゴリカルな解釈が認められうるのだろうか。仮に認 め ら れ う る と し て も、 実 際 問 題、 各 裁 判 所 を 通 じ て そ の 種 の 解 釈 が 実 現 し う る の だ ろ う か ( 20) 。 処 分 性 と い う (少 な く

(8)

と も 判 例 か ら す れ ば) カ テ ゴ リ カ ル な 解 釈 問 題 か ら も た ら さ れ う る ( 21) 、 カ テ ゴ リ カ ル な 管 轄 拡 大 問 題 へ の 対 応 策 と し て、裁判所のアドホックな判断を前提とする「正当な理由」条項を活用する議論には、問題解決の方法論として限 界があるように思われる。   さ ら に 近 藤 意 見 で は、 「経 過 措 置 的 な 解 釈」 と「違 法 性 の 承 継」 と の 関 係 が 明 ら か で な い。 例 え ば、 計 画 決 定 の 出訴期間につき経過措置的解釈が妥当な原告市民が、仮換地指定であれ換地処分であれ、取消訴訟をそれら出訴期 間内に提起し、それら訴訟の中で計画決定の違法性を主張する場合には、藤田意見同様、違法性の承継は認められ ないとするのだろう か ( 22) 。言い換えれば、この場合であっても「正当な理由」条項を援用して、別途〈計画決定取消 訴 訟〉 を 提 起、 あ る い は、 同 訴 訟 へ と「訴 え の 変 更」 (行 訴 法 一 九 条 二 項、 民 事 訴 訟 法[民 訴 法] 一 四 三 条 ( 23) ) を せ よ と いうことなのだろう か ( 24) 。   そうだすると、潜在的に多数当事者が関わる計画決定については、出訴期間によってもたらされる法的安定性を 犠 牲 に し て ま で も 、 取 消 判 決 の 第 三 者 効 ( 対 世 効 : 行 訴 法 三 二 条 ) に よ る 統 一 的 か つ 実 効 的 な 紛 争 解 決 を す べ き と の 考えなのかもしれな い ( 25) 。またそれが結果的に見て、原告市民の利益や訴訟経済につながるということでもあろ う ( 26) 。 確 か に 説 得 力 あ る 議 論 な の だ が、 し か し 場 合 に よ っ て は、 原 告 市 民 が 当 初 か ら 主 張 す る と お り 違 法 性 の 承 継 を 認 め、後続行政処分取消訴訟の中で先行行為の違法性を争わせた方が、行政行為の法的安定性、原告市民の自己決定 の尊重、さらには訴訟経済等の観点から、合理的と考えられることもあるのではない か ( 27) 。近藤意見の対応策を「一 般化」するにはさらなる検討の必要があるように思われる。

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第二節   排他的管轄「不適用」論   前節で紹介した、管轄拡大問題に対する実務的立場からする対応策に対して、学説では排他的管轄「不適用」論 を 打 ち 出 し た 上 で、 「違 法 性 の 承 継」 や「併 用 的 構 成」 と い っ た 解 釈 論 を 提 案 す る 向 き が あ る。 本 節 で は こ れ ら 排 他的管轄「不適用」論のうち代表的なものをとり上げて紹介していこう。 一.両拡大論の展開   先に挙げた両拡大論も排他的管轄「不適用」論を主張してきた。その論拠として、原田尚彦氏はじめ「形式的行 政処分」論は、もっぱら「救済の便宜」から裏付けてきた。これに対し阿部泰隆氏を提唱者とする「相対的行政処 分」 論 は、 「救 済 ル ー ル 明 確 性 の 要 請」 、「裁 判 を 受 け る 権 利」 、「予 測 可 能 性」 の 保 障 と い っ た 原 理 的 根 拠 に う っ た え る と と も に、 「違 法 性 の 承 継」 や「併 用 的 構 成」 を め ぐ っ て 各 種 の 解 釈 論 ―― 出 訴 期 間 の 限 定 解 釈 や 訴 え の 変 更 を促す積極的釈明等――を展開してき た ( 28) 。両拡大論に類似する見解は今日でも見られる。   例 え ば 杉 原 則 彦 氏 ( 29) は、 医 療 法 勧 告 事 件 に 係 る 調 査 官 解 説 で、 先 の 藤 田 意 見 を 念 頭 に 置 き 論 ず る。 本 判 決 は、 「勧 告と保険医療機関の指定申請拒否処分とから成る仕組みの全体に着目して、当該勧告を取消訴訟の対象としないこ とは不当であるとしてこれを取消訴訟の対象として認めたものにすぎない。その意味では、この勧告が取消訴訟の 対象となると認めることによって、当然にこの勧告に厳密な意味での公定力が認められることになるわけではない と い う 余 地 も あ る と 考 え ら れ る。 」 す な わ ち 本 判 決 は、 「前 記 の 仕 組 み に 着 目 し て」 「勧 告 を 取 消 訴 訟 の 対 象 と し て 争うみちを新たに認めたものであるが、それは、これまで認められてきたところの、保険医療機関指定申請に対す る拒否処分を取消訴訟の対象として争うみちを閉ざすものではないと考えられる。 」

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  つぎに白藤博行 氏 ( 30) は、行訴法改正による訴訟類型の多元化、またそれを受けた学説動向を踏まえ論ずる。行訴法 が民訴法の特別法的性格をもつことを斟酌するなら、行政の何らかの侵害行為があるのに処分性が認められない場 合、 当 然 に 民 事 訴 訟 ま た は 当 事 者 訴 訟 に 戻 っ た 救 済 が 考 え ら れ る べ き で あ る。 そ し て「あ る 行 政 の 行 為 が、 法 文 上、 『処 分 そ の 他 公 権 力 の 行 使 に 当 た る 行 為』 に 該 当 す る こ と が 明 ら か で な い 限 り、 取 消 訴 訟 を 選 択 す る か、 民 事 訴訟ないしは当事者訴訟を選択するかは、あくまでも原告の選択にゆだねられていると解す」べきである。この議 論の背景には、取消訴訟を通じた裁判が必要ならば、立法者がその手当てをしておかねばならないはずとの考えが ある。もっともいったん自らの意思で取消訴訟を選択した者は、取消訴訟にまつわりつく様々な制限・不利益を受 忍 す べ き で あ る。 か く し て 白 藤 氏 は、 「法 律 が 明 文 で も っ て 抗 告 訴 訟 該 当 性 を 規 定 し な い 限 り、 原 則 と し て、 原 告 適格が認められる原告には訴訟形式選択権が帰属する」と解する。   両 説 と も 排 他 的 管 轄「不 適 用」 論 を 前 提 と し、 杉 原 説 は (文 脈 か ら し て) 「違 法 性 の 承 継」 を ( 31) 、 白 藤 説 は「併 用 的 構 成 」 を 提 案 し て お り 、 両 拡 大 論 と も 共 通 す る 。 ま た も と も と 行 政 行 為 で な い か ら 排 他 的 管 轄 は 及 ば な い と の 杉 原 説 の前提論や、いったん取消訴訟を選択した場合それに縛られるとの白藤説の帰結論も、両拡大論を髣髴とさせ る ( 32) 。 と は い え 杉 原 説 は、 「仕 組 み」 解 釈 と い う 処 分 性 拡 大 判 例 の 採 用 す る 解 釈 手 法 を、 ま た 白 藤 説 も「訴 訟 類 型 の 多 様 化」という行訴法改正の到達点をそれぞれ重視していることが注目されよう。 二.処分の標準装備   以下両拡大論の議論枠組みを超え、排他的管轄「不適用」論を展開する代表的学説を見ていこう。まず塩野宏 氏 ( 33) は、取消訴訟制度が「処分の違法性の確認、違法行為の取消判決という判決手続のほか、公定力、不可争力の付与

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と い う 諸 要 素」 、 さ ら に は 同 じ「処 分」 文 言 の 使 用 を 通 じ た 行 政 手 続 法 や 行 政 不 服 審 査 法 の 規 定 の 適 用 に よ っ て 構 成 さ れ て い る こ と を 指 し、 「処 分 の 標 準 装 備」 と 呼 ぶ。 そ の 上 で 同 氏 は、 処 分 概 念 の 中 核 領 域 ――「定 型 的 行 政 処 分 及 び 定 型 的 実 力 行 使」 ―― か ら み た「周 辺 (フ リ ン ジ) 部 分」 を 取 消 訴 訟 制 度 に 取 り 込 む 処 理 を し た と き ど の よ う な 問 題 が 派 生 す る か と の 問 題 意 識 か ら、 そ の 周 辺 部 分 を 二 種 に 区 別 し、 処 分 の 標 準 装 備 の 作 動 の あ り 方 を 論 ず る。 一 方 で 処 分 性 拡 大 判 例 で も 争 わ れ て き た 各 種 通 知 の よ う に、 「定 型 的 処 分 に 至 る 純 粋 に 手 続 の 一 環 を 構 成 す る」 周 辺 部 分 の 場 合、 「処 分 の 標 準 装 備 を 原 則 と し て 認 め、 違 法 性 の 承 継 と い う 操 作 を 含 め て、 事 柄 の 性 格 上 作 動 させるには親しまないものをはずすという操作も可能である。 」   これに対し医療法勧告事件のように、周辺部分が法律上「行政指導」と性格づけられている場合、処分の標準装 備を作動させることは、相手方市民・行政庁双方にとって負担が大きい。そこでこの負担を免れるため、その周辺 部分は、 「取消訴訟の対象として取り上げる限りの処分であって、標準装備は連動しないとすることになる。 」ただ し こ の 扱 い は、 「制 度 と し て の 取 消 訴 訟 の 運 用 と は ま っ た く 異 な る も の で あ っ て、 取 消 訴 訟 制 度 が 正 面 か ら 予 定 し て い る も の と は い え な い し、 こ れ を 安 易 に 認 め る こ と は 取 消 訴 訟 制 度 を 含 む 行 政 制 度 の 根 幹 を 揺 る が す こ と に な る。 」として、 「仮にこれを認めるとしても、それは実効的救済のため、他に方法がないときの便法と説明する以外 にない。 」と指摘す る ( 34) 。かくして塩野氏は、周辺部分に関しては、 「差止訴訟、確認訴訟など利用可能な救済方法が ある場合にはそれにより、ない場合には当該事案との関係で取消訴訟の途を開くとしても、処分に連動する制度的 効果を働かせないとする」 。

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三.排他的管轄と出訴期間   つ ぎ に 亘 理 格 氏 ( 35) は、 「あ る 行 政 作 用 に つ い て 処 分 性 が 認 め ら れ れ ば、 当 該 行 政 作 用 に は 抗 告 訴 訟 の 排 他 的 管 轄 が 及 び、 ま た 取 消 訴 訟 の 場 合 は、 出 訴 期 間 の 制 限 が 及 ぶ と 解 さ れ る 可 能 性 が あ る。 」 と し た 上、 両 制 度 は「処 分 性 が 認められた場合に通常生じる制度的効果であると考えられるが、かと言って、常に厳格に適用されるべき制度であ る と は 言 え な い」 と す る。 な ぜ な ら、 「排 他 的 管 轄 及 び 出 訴 期 間 の 適 用 は、 法 制 度 上 の 建 前 を 考 慮 す る ば か り で は なく、訴訟を提起することとなる者が置かれた客観的状況をも考慮して判断されるべき」だからである。すなわち 両制度の適用は、 「通常人に対して、 『処分』として認定可能な行政作用が行われた時点で取消訴訟を直ちに提起し なければ、自己の権利利益の保護を確保し得ないと判断することを要求することに、当該通常人が置かれた客観的 状況に照らして合理性を認め得るかにより、決すべき」という。   以上を踏まえ亘理氏は、排他的管轄に関しては行訴法の規定上明示された原則でないので、通常人たる当該私人 が置かれた客観的状況への配慮という現実的考慮によってその適用を免れさせることにも、法解釈として説得力が あ る と い う。 ま た 出 訴 期 間 に 関 し て は、 行 訴 法 上 明 文 規 定 (一 四 条) が あ る 関 係 で、 そ れ と 真 っ 向 か ら 抵 触 す る 法 解 釈 は で き な い も の の、 「正 当 な 理 由」 条 項 に も 着 目 す べ き と す る。 例 え ば い ず れ も 処 分 性 が 認 め ら れ た 二 項 道 路 一括指 定 ( 36) や医療法勧告の場合、通常人に対しその時点で取消訴訟を提起しなければ自己の権利保護を確保しえない と要求することが合理的とは考えられないから、特段の事情がない限りある程度カテゴリカルに「正当な理由」に 該当すると判断することも解釈論として説得力があるという。   さ ら に 亘 理 氏 は、 「抗 告 訴 訟 と 当 事 者 訴 訟 の 連 携」 を は か る べ き と の 問 題 意 識 の も と、 併 用 的 構 成 を 裏 付 け る 以 下三点を指摘する。社会的利害関係が複雑化し、訴訟類型選択が通常人にとって困難になっている現状下、その選

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択の不備の不利益を訴訟当事者に負担させるべきではないこと。いずれの訴訟類型の審判対象も行政判断ないし認 定行為の適法性に変わりない、その限りで両訴訟類型は本質的に共通ないし同質なのであるから、いずれの形で提 起された訴えであっても柔軟に出訴要件を満たすものとして扱うべきこと。抗告訴訟も一面、確認訴訟としての性 格を有する点を想起すべきこと。 四.行政行為と取消訴訟   さ ら に 山 本 隆 司 ( 37) 氏 は、 管 轄 拡 大 問 題 を 考 え る に 当 た っ て、 「伝 統 的 な 公 定 力 観 念 に こ だ わ ら ず に、 行 政 行 為 の 法 的性質・法効果を、行政行為が行政手続の中で果たす具体的な機能に着目して、行政機関の他種の行為と比較しな が ら、 分 節・ 分 析 し て 理 解 す る」 ア プ ロ ー チ を 提 唱 す る。 そ れ に よ る と、 「行 政 行 為 は、 行 政 機 関 が 法 律 を 根 拠 に して一方的に責任を負って定める、私人一般を拘束する具体的な規律であり、こうした規律に法的安定性を持たせ るために、私人からの異議に期間制限を設けるのに適合した行為と見られる。 」   こ の よ う に 行 政 行 為 を 再 定 義 す る と、 「取 消 訴 訟 手 続 も、 排 他 的 管 轄 の 観 念 に こ だ わ ら ず に、 よ り 分 節 的・ 分 析 的に理解することになろう。 」として、いわく。 「取消訴訟制度は、法的明確性および法的安定性を志向する規律と いう行政行為の法的性質に対応した、訴訟手続に関する特則の束として、理解されよう。そして、取消訴訟の対象 を行政行為以外の行政機関の行為に拡張する場合には、取消訴訟手続に関する特則のうち、当該行為の法的性質に 適合しないものは、適用を制限することになろう。取消訴訟に関する行訴法の規定を絶対視するのではなく、取消 訴訟の対象となる行為を実体法・手続法上規律する法律の解釈として、取消訴訟に関する行訴法の適用を制限する ことにな る ( 38) 。」

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  以 上 を 踏 ま え 医 療 法 勧 告 事 件 を 挙 げ つ つ 論 ず る。 「法 律 上、 規 律 力・ 拘 束 力 が そ れ 自 体 に 認 め ら れ て い な い が、 行 政 手 続 上、 規 律 力・ 拘 束 力 を 持 つ 行 政 行 為 の 要 件 (の 一 部) に 関 す る 最 終 決 定 と 位 置 づ け ら れ る 行 政 決 定 に つ い ては、あらかじめ行政行為と同様の手続保障をカテゴリカルに私人に及ぼす趣旨で処分性が認められるとしても、 出訴期間を制限して法的安定性を創出する根拠および趣旨は、基本的に当該行政決定に関する法律に含まれていな い、と解される。出訴期間を制限して法的安定性を創出するのであれば、段階的な行政行為の制度を法律で定める べきであり、法律がそうした制度を定めていない以上、出訴期間を制限する根拠および趣旨を法律から読み取るこ とはできない。 」   か く し て 山 本 氏 は、 医 療 法 勧 告 に 出 訴 期 間 が 適 用 さ れ な い こ と を 前 提 に、 「結 局、 後 の 行 政 行 為 (本 件 で い え ば、 保 険 医 療 機 関 指 定 拒 否 処 分) の 取 消 訴 訟 に お い て、 最 終 決 定 と し て 処 分 性 の 認 め ら れ る 先 行 行 為 (本 件 で い え ば、 勧 告) の 違 法 性 を 主 張 す る こ と が、 原 則 と し て 可 能 と 解 さ れ る。 」 と し て、 〈違 法 性 の 承 継〉 を 認 め る ( 39) 。 ま た「先 行 行 為の取消訴訟の出訴期間が終了してから後の行政行為までの期間においては、訴えの利益が当該事案に即して具体 的 に 認 め ら れ れ ば、 先 行 行 為 の 違 法 確 認 訴 訟 を 提 起 で き る と 解 さ れ る。 」 と し て、 先 行 行 為・ 後 続 行 政 処 分 の 途 中 期間における、別途の〈当事者訴訟による救済〉の可能性をも認める。 五.訴訟類型選択に係る判例政策   つ ぎ に 橋 本 博 之 氏 ( 40) は、 「具 体 的 な 紛 争 状 況 に お い て、 行 政 決 定 の 事 後 的 司 法 審 査 に よ っ て 救 済 を 求 め る こ と が 一 応合理的であると考えられる場合には、処分性の有無につき行政手続的にみた原告の利益保護の必要性という観点 から『仕組み解釈』を行って判定することが望ましい」とし、とりわけ「国民からの要求に行政が不利益を与える

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回 答 を す る と い う 手 続 上 の 仕 組 み が あ る 場 合」 に は、 「原 告 の 手 続 的 利 益 へ の マ イ ナ ス の 影 響 が あ れ ば 処 分 性 を 肯 定するのに十分と解すべき」と主張する。   一 方 で 医 療 法 勧 告 事 件 の よ う に、 法 律 上「行 政 指 導」 と さ れ る 通 知 や 勧 告 に つ い て、 「柔 軟 な『仕 組 み 解 釈』 に よ り 事 実 上 の 影 響 を 取 り 込 ん で 処 分 と 構 成 し た 場 合」 、 そ の 処 分 に「当 然 付 着 す る 手 続 的 仕 組 み・ 手 続 的 効 果」 と し て の、 「行 政 手 続 上 の 仕 組 み、 教 示 義 務、 取 消 訴 訟 の 利 用 強 制」 が 生 じ る こ と も 認 め る べ き と す る ( 41) 。 ま た そ う で あ る が ゆ え に、 「行 政 実 務 の 側 で は、 通 知 や 勧 告 が、 関 連 す る 法 的 仕 組 み の 全 体 の 中 で 処 分 で あ る か を 明 確 に す る 必要性が生じるので、立法政策上、これらの行為形式に対し、行政手続上の位置を明確にすることが喫緊の課題と な る。 」 こ の 立 法 的 整 備 の 必 要 性 か ら す る と、 処 分 性 拡 大 判 例 を「前 提 と し て も な お、 手 続 法 的 に 構 成 さ れ た 処 分 性概念の純化が図られるべき」とする。   し か し 以 上 の〈処 分 性 純 化 論〉 は、 「あ く ま で 抗 告 訴 訟 の 中 の 事 後 的 救 済 手 続 で あ る 取 消 訴 訟・ 無 効 確 認 訴 訟 に 限 定 し た 上 で の」 議 論 で あ っ て、 「抗 告 訴 訟 の 多 元 化、 抗 告 訴 訟 と 当 事 者 訴 訟 と の 重 層 化 と い う 与 件 は、 別 に 考 え な け れ ば な ら な い。 」 す な わ ち 行 訴 法 改 正 後 の「行 政 訴 訟 類 型 の 多 元 化・ 多 層 化 と い う 状 況 下 で は、 そ れ ぞ れ の 訴 訟類型を相互排他的と考え、並行訴訟性を否定した解釈をするべきではなく、個別の紛争ごとの救済の必要性に応 じてこれらを重層的に利用可能なものと解すべきである。 」として、いわく。   「行 政 決 定 に つ い て、 事 前・ 事 後 の 手 続 的 コ ン ト ロ ー ル の 仕 組 み を 整 備 し、 手 続 的 防 御 を 通 し て 当 該 行 政 決 定 に つき適法性を担保しようとする方向性と、法律関係という側面から行政決定に起因する紛争に着目し、国民の権利 利益の側から訴訟類型を再構築しようとする方向性について、両者を排他的にとらえるのではなく、複合的・重層 的 に 考 え る こ と こ そ 重 要 で あ る。 行 政 決 定 に よ っ て 生 じ る 形 成 的 な 法 律 関 係 の 変 動 を、 形 成 的 に 争 う も の (取 消 訴

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訟 等) を 用 い る こ と が 紛 争 解 決 上 合 理 的 で あ り、 争 訟 の タ イ ミ ン グ と し て 適 切 と 考 え ら れ る の で あ れ ば、 そ れ を 用 いればよいというだけの問題なのであり、その他の訴訟類型の並行提起可能性は別個に考えるべきである。根拠規 範の解釈により処分を発見し、その上で抗告訴訟という括りの中でしか争えないというドグマティクに縛られるの ではなく、訴訟類型の選択は、訴訟手続の多元化・多層化に対応した、個別具体の事案に適応した司法的救済を実 現するための判例政策上の問題と考えればよい。 」   こ の よ う に 橋 本 説 は、 「実 体 法 上、 適 正 手 続 原 理 に 資 す る 事 前・ 事 後 の 行 政 手 続 を 整 備 す る と い う 文 脈」 で の 処 分 性 純 化 論 を 主 張 す る 一 方、 訴 訟 類 型 の 選 択 に つ い て は、 「処 分 性 を 前 提 と す る 抗 告 訴 訟 と、 そ う で な い 当 事 者 訴 訟・ 民 事 訴 訟 と を 相 互 排 他 的 に 振 り 分 け な け れ ば な ら な い と す る 考 え 方」 を 転 換 し て、 「原 告 の 救 済 の 便 宜 か ら 機 能 的 に 解 釈 す れ ば 良」 く、 「も っ ぱ ら 個 別 具 体 の 事 案 に つ き 適 切 な 救 済 を 可 と す る 観 点 か ら の 判 例 政 策 の 問 題 と と らえるべき」とす る ( 42) 。 六.行訴法三条の文理解釈   さいごに大浜啓吉 氏 ( 43) は、取消訴訟の利用強制や出訴期間等の制約をクリアするために、行訴法三条二項の取消訴 訟 の 対 象 を、 「処 分」 と「そ の 他 公 権 力 の 行 使 に 当 た る 行 為」 に 区 別 し て 解 釈 す べ き と 提 唱 す る。 こ の 種 の「文 理 解釈」は従来から少なからずみられた が ( 44) 、大浜氏はこの解釈を、行為規範統制としての取消訴訟の性質 論 ( 45) にリンク させて――処分性=「 《行為規範に違反しうる対象であるか》否か」――論ずる。すなわち、 「処分」も「その他公 権力の行使に当たる行為」も、行訴法三条一項にいう「公権力の行使」――「行政庁が法律によって授権された権 限を行使する行為」――という点では共通するが、前者は「行為規範性が明確になるように実定法が要件・効果方

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式で書かれている場合」を指し、後者が「実定法が要件・効果方式で書かれていない場合」を指す。   そ の 上 で、 「処 分」 に よ り 法 律 関 係 が 形 成 さ れ た 場 合 に は、 原 因 行 為 の 違 法 性 を 直 截 に 争 う 方 が 合 理 的 で あ り、 また「適法処分の原 則 ( 46) 」を明確にできるので、取消訴訟の排他的管轄を認めることが許される。これに対し「その 他公権力の行使に当たる行為」の形式によって行政庁の権限行使がなされた場合、原因行為の違法性の確定が必ず しも容易ではなく、事案によっては、当事者訴訟や民事訴訟等の取消訴訟以外の訴訟類型で争う方が適切でありう る。 そ し て こ の 場 合、 司 法 権 の 任 務 が 権 利 救 済 に あ る 点 を 踏 ま え る な ら、 「い た ず ら に 訴 訟 の 形 式 を 理 由 に 訴 え を 却下するのではなく、事案の性格によって原告が求めている権利利益の実現により適切な方法を認めるべき」であ り、したがって「取消訴訟の排他性から解放することで原告に訴訟選択の自由を認めるべき」という。また以上と 同 じ 理 由 か ら、 出 訴 期 間 の 適 用 に 関 し て も「処 分」 の み に 適 用 さ れ、 「そ の 他 公 権 力 の 行 使 に 当 た る 行 為」 に 対 し てはその適用が除外されると解釈すべきとする。 第三節   若干の検討   以上代表的な取消訴訟の排他的管轄「不適用」論を紹介してきた。以下各説の到達水準と課題点を横断的に検討 していこう。まず塩野説であるが、排他的管轄「不適用」を正当化する論拠があまり明確でないように思われる。 と い う の も、 「定 型 的 処 分 に 至 る 純 粋 に 手 続 の 一 環 を 構 成 す る」 周 辺 部 分 に 関 し「処 分 の 標 準 装 備」 を 作 動 さ せ な い 理 由 は、 「事 柄 の 性 格」 を 越 え て 議 論 さ れ て い な い し、 そ う で な い 周 辺 部 分 に 関 し て も 権 利 救 済 の た め の「便 法」 と 議 論 す る に と ど ま る。 と り わ け、 「安 易 に 認 め る こ と は 取 消 訴 訟 制 度 を 含 む 行 政 制 度 の 根 幹 を 揺 る が す こ と になる。 」という重大な例外的取扱いを、 「便法」により正当化する議論展開には違和感を覚える。

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  む し ろ そ の よ う な 重 大 な 例 外 的 取 扱 い を、 「仮 に」 と は い え 塩 野 説 と し て も「認 め る」 の で あ れ ば、 そ う で あ れ 4 4 4 4 4 ばこそ 4 4 4 、法原理論的にまた法解釈論的に、その正当化につき議論を尽くしていく必要があるのではないか。うがっ た見方ではあるが、塩野説の「便法」論は、排他的管轄「不適用」を不明確な論拠でもって正当化してしまってい る点で、原田説等の「形式的行政処分」論において見られた「救済の便宜」論と、共通の基盤に立っている――も ちろん原田説等はそれを能動的に正当化するに対し塩野説は受動的に正当化するという姿勢の相違はあるが――よ うに思われ る ( 47) 。   と は い え 処 分 性 拡 大 の「補 充 性」 を 厳 格 に 解 釈 す る 塩 野 説 の 趣 旨 を 踏 ま え れ ば、 「便 法」 と い う 形 で し か 理 由 づ け ら れ な い こ と こ そ に、 安 易 に 流 れ る 処 分 性 拡 大 判 例 の 問 題 性 を 鋭 く 自 覚 し、 ま た「処 分 の 標 準 装 備」 の 重 要 性 ――それとともに行訴法改正による訴訟類型の多様化の重要性――を考慮する立場とみることもできよう。そして こ の 面 か ら す れ ば、 塩 野 説 は、 「取 消 訴 訟 の 排 他 的 管 轄」 に 内 在 す る「法 的 安 定 性 の 保 護」 の 原 理 的 要 請 に 配 慮 し た法解釈論を展開しているといえよう。   つ ぎ に 亘 理 説 は、 予 測 可 能 性 の 保 護 と い う 原 理 的 要 請 を 踏 ま え、 「抗 告 訴 訟 の 排 他 的 管 轄」 と「取 消 訴 訟 の 出 訴 期 間」 と で 論 点 を 区 別 し つ つ 解 釈 論 を 提 示 す る。 法 原 理 論 的 に も 法 解 釈 論 的 に も バ ラ ン ス の と れ た 正 当 化 論 で あ り、 早 く か ら 同 様 の 姿 勢 で 取 り 組 ん で い た 阿 部 説 (相 対 的 行 政 処 分 論) の 到 達 水 準 を 進 め る も の で あ ろ う。 し か し 疑問の余地もないではない。例えば亘理氏は、出訴期間に関して「正当な理由」条項を通じ対応すべきとの趣旨の ようである。その前提として同条項のカテゴリカルな解釈が可能との理解のようだが、先述のように検討の余地が あるのではないかと思われる。   ま た 亘 理 氏 は、 排 他 的 管 轄 が 適 用 さ れ な い 理 由 と し て、 行 訴 法 上 明 確 な 根 拠 が な い 点 を 挙 げ る。 し か し そ う は

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いっても、今日それが確立した法理であることを踏まえる必要があるのではないか。確立した法理であるのにもか かわらずそれを適用しないというのであれば、やはりそのことを正当化するに足りる相応の解釈論的裏付けが必要 で あ ろ う ( 48) 。 確 か に 同 氏 は、 「抗 告 訴 訟 と 当 事 者 訴 訟 の 連 携」 の 問 題 意 識 の も と、 訴 訟 類 型 の 理 論 的 相 対 性 の 観 点 か ら併用的構成を裏付ける説得力ある議論を展開する。しかし「処分の標準装備」として認められるべきはずの排他 的管轄が適用されないことの解釈論的裏付けについては、なお明確でないように思われ る ( 49) 。   ついで山本説は、 「行政行為」と「取消訴訟」について、 「法的明確性および法的安定性を志向する規律という行 政 行 為 の 法 的 性 質」 を 踏 ま え 再 定 義 し、 管 轄 拡 大 問 題 に 迫 る ( 50) 。 先 の 亘 理 説 が、 〈行 政 訴 訟〉 を 提 起 し よ う と す る “通常人”の観点を引き合いに、 「予測可能性の保護」の要請から、排他的管轄「不適用」論を導き出すのに対し、 山 本 説 は〈行 政 行 為〉 を 規 定 し よ う と す る“立 法 者” の 観 点 を 引 き 合 い に、 「法 的 安 定 性 の 保 護」 の 要 請 か ら、 排 他的管轄「不適用」論を導き出す。その意味で山本説は、亘理説との対比で言えば、法原理論的にも法解釈論的に も〈対蹠的な〉論理構成をするものとみられ、注目すべき議論である。また「法的安定性の保護」の要請に着目す る 点 で 塩 野 説 の 方 向 性 と も 共 通 す る よ う に 思 わ れ る と こ ろ、 「処 分 の 標 準 装 備」 を め ぐ る 解 釈 論 的 検 討 を 進 め る 点 で、塩野説よりも突っ込んだ論証を行うものと言えよう。   さ ら に 山 本 説 で は、 「行 政 行 為」 概 念 の あ り 方 に さ か の ぼ っ て 問 題 提 起 を す る 点 で、 処 分 性 拡 大 問 題 に 係 る 理 論 的考察の一つの方向性を開拓している。ただそうはいっても、山本説では、処分性が認められる行政活動のうち、 取消訴訟の排他的管轄が適用されうる「行政行為」概念と、それが適用されない「行政決定」概念との区別に関し て、なお議論の余地があるように思われる。例えば両拡大論でも、処分性が認められかつ取消訴訟の排他的管轄も 適 用 さ れ る「 (実 体 的) 行 政 行 為」 概 念 と、 前 者 は 認 め ら れ る が 後 者 は 適 用 さ れ な い「 (形 式 的) 行 政 処 分」 概 念 と

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の区別が議論されてきた。山本説の概念的区別はこれら従来の議論と比較してどのような意義があるのだろうか。   こ の 点 山 本 氏 は、 処 分 性 拡 大 判 例 の 分 析 を 踏 ま え、 「概 し て 言 う な ら、 処 分 性 は、 規 律 な ど の 法 的 効 果 を 重 視 し て 判 断 さ れ て き た が、 徐 々 に、 行 政 機 関 が 私 人 に 対 し て 行 う 決 定・ 執 行 の プ ロ セ ス に お け る 当 該 行 為 の 位 置 (最 終 性 な ど) が、 判 断 要 素 と し て の ウ ェ ー ト を 増 し て い る ( 51) 。」 と し て、 行 為 形 式 の「法 的 効 果」 (規 律 性) と 行 政 過 程 の 「手 続 構 造」 (最 終 決 定 性) と を 対 比 し な が ら 論 評 す る の が 注 目 さ れ る。 行 政 行 為 な い し 行 政 決 定 を い か に 認 識 す べ きかという“認識枠組み”にまでさかのぼった視点であり、両拡大論の到達水準をさらに進める展開であるように 思われる。今後この視点が「行政行為」概念のあり方にどのような影響を及ぼすのか、さらに検討する余地がある ように思われ る ( 52) 。   こ の ほ か 先 行 行 為・ 後 続 行 為 の 途 中 期 間 に お け る 当 事 者 訴 訟 の 提 起 を 認 め る 山 本 説 に 対 し て、 「あ え て 勧 告 に 処 分 性 を 認 め な く と も、 当 初 か ら、 取 消 訴 訟 以 外 の 適 切 な 訴 訟 を 行 え ば よ い」 と の 塩 野 氏 か ら の 批 判 が あ る ( 53) 。“あ り う る” 原 告 の 訴 訟 活 動 を 起 点 に 考 え る 山 本 説 と、 “あ る べ き” 裁 判 所 の 訴 訟 選 択 を 起 点 に 考 え る 塩 野 説 と で、 議 論 がかみ合っていないように思われる。とはいえ山本説からは、管轄拡大問題につき「違法性の承継」と「併用的構 成」という二つの対応策を想定されうる状況に応じて議論していく必要性が、また塩野批判からは、管轄拡大問題 につきできるかぎりシンプルで過不足のない対応策を議論していく必要性が、示唆されているようにも思われる。   つぎに橋本説は、行政手続の文脈では、 【行政決定の立法的統制】を重視しつつ、 〈処分性純化論〉を唱えるのだ が、その前提として「取消訴訟の利用強制」を認める。これに対し訴訟類型の文脈では、 【原告市民の裁判的救済】 を 重 視 し つ つ、 訴 訟 類 型 選 択 に 係 る〈判 例 政 策 論〉 を 唱 え る の だ が、 そ の 前 提 と し て「訴 訟 類 型 の 並 行 提 起 可 能 性」 を 認 め る (裏 返 せ ば「取 消 訴 訟 の 利 用 強 制」 を 否 定 す る) 。 す な わ ち 橋 本 説 は、 管 轄 拡 大 問 題 に 関 し て、 両 文 脈 に

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より排他的管轄の適用・不適用を異ならしめる (以下「切り離し論」 ) 。   確かに、処分性を拡大しても「処分の標準装備」の作動を前提とする議論は、現行法解釈として自然である。行 訴 法 改 正 の 趣 旨 を 踏 ま え た 併 用 的 構 成 も 立 法 動 向 に 根 差 し て い る ( 54) 。 さ ら に 処 分 性 純 化 論 に 立 ち つ つ も、 「手 続 的 利 益の侵害」のメルクマー ル ( 55) のもと処分性拡大の余地を認める点で、処分性拡大判例を説明する一つの視点を提示す るのみなら ず ( 56) 、抗告訴訟とりわけ取消訴訟の活用ニーズにも配慮するものとも言えよう。全体として橋本説は、塩 野・山本説が重視する「法的安定性の保護」の要請と、阿部・亘理説が重視する「予測可能性の保護」の要請との 調和を目指す、明瞭な論理構成であるように見受けられる。   しかし切り離し論は解釈論として成り立ちうるのだろうか。もっとも橋本氏はこの論拠につき次のように説明す る ( 57) 。田中二郎氏による取消訴訟の説明の仕方――「行政庁の第一次的判断権を媒介として生じた具体的違法状態の 排 除 を 求 め る 訴 訟」 ―― に つ い て、 今 日 に お い て も、 「行 政 庁 の 第 一 次 的 判 断 権 と い う 考 え 方 を 手 続 法 的 に 構 成 し 直して、フランス的な『訴訟への結合』理論と同質なものに翻案すれば、取消訴訟の説明として十分に機能する」 と の 理 解 の も と、 「こ の 場 合 に は、 行 政 事 件 訴 訟 の 中 で、 形 成 的 訴 え と し て 特 に 行 政 決 定 を 争 う こ と に 機 能 的 な 意 味がある場合に取消訴訟を用いるという理解となり、行政訴訟類型論は、副次的・便宜的なものとして定位し直さ なければならない。 」   おそらくこの圧縮された説明の中に、橋本氏による日仏行政訴訟制度に係る精緻な比較法研究の成果が込められ て い る も の と 推 察 さ れ る ( 58) 。 そ う だ と す る な ら、 切 り 離 し 論 が 成 立 す る た め に は、 「行 政 決 定」 と い う 名 目 で あ る 程 度柔軟な形で抗告訴訟対象適格性が認められつつも、訴訟類型の選択は裁判官の救済方法の選択問題に還元できる という「フランス・モデル」が、日本の現行法制度のもとで解釈論として成り立ちうるのかという評価が大きなポ

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イントとなってこよ う ( 59) 。   例 え ば、 訴 訟 類 型 の 選 択 を 救 済 方 法 の 選 択 と い う こ と で、 裁 判 所 の 判 例 政 策 (と い う 名 の 選 択) に ゆ だ ね る と の 議 論 ( 60) が、日本の行政訴訟制度のもとでどこまで成り立ちうるのか、検討の余地があるのではないか。この点両拡大 論 を 含 め、 こ れ ま で 多 く の 排 他 的 管 轄「不 適 用」 論 で は、 〈原 告 市 民 の 自 由 選 択〉 と し て 併 用 的 構 成 を 提 案 し て き た (先 の 白 藤 説 等 参 照 ( 61) ) 。「当 事 者 主 義」 、 な か ん ず く「処 分 権 主 義」 (民 訴 法 二 四 六 条、 行 訴 法 七 条) を 前 提 と す る 日 本法の議 論 ( 62) としては、裁判所の選択権限を介在させる橋本説よりも、原告の自己決定を基準とした従来型の議論の ほうが自然なようにも思われ る ( 63) 。   また橋本説に対しては、そうした裁判所の判例政策に「ひとつの道筋をつけることが学説の課題」との塩野氏か らの批判があることをも考慮せねばならな い ( 64) 。判例の積み重ねを重視するフランス法的視点からすればすれ違いが あ る か も し れ な い が、 ど の よ う な 場 合 に い か な る 訴 訟 類 型 を 裁 判 所 は 選 択 す べ き か と い う ( 65) 、“裁 判 所 を 統 制 す る” という問題意 識 ( 66) からすれば、塩野批判にも説得力があると思 う ( 67) 。   さ ら に 橋 本 説 は、 近 藤 意 見 同 様、 「違 法 性 の 承 継」 を 認 め る か 否 か が 定 か で は な い。 も っ と も、 医 療 法 勧 告 に つ き「取 消 訴 訟 の 利 用 強 制」 を 明 示 的 に 認 め る 旨 の 記 述 が あ る こ と、 「違 法 性 の 承 継」 を 認 め る 旨 の 記 述 が な い こ と か ら 推 察 す る と、 あ る い は、 藤 田 意 見 の よ う に、 そ れ を 否 定 す る 趣 旨 の よ う に も 見 受 け ら れ る (先 の 杉 原 説 と も 比 較 参 照 ( 68) ) 。 仮 に そ う で あ る と す る な ら、 現 に 取 消 訴 訟 に お い て「違 法 性 の 承 継」 を 求 め て 争 っ て い る ―― に も か か わらず裁判所からそれを拒絶される――原告市民に不利益が生じないのかな ど ( 69) 、さらに検討する余地があるように 思われる。   さ い ご に 大 浜 説 は、 処 分 性 の 認 め ら れ る 行 政 活 動 に つ き、 「処 分」 と「そ の 他 公 権 力 の 行 使 に 当 た る 行 為」 と に

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区別し、管轄拡大問題の処理を異ならしめる。またその際、行為規範統制という取消訴訟の性質理解に立つととも に、司法権の任務が人権保障にあることを踏まえて議論する。取消訴訟の性質にさかのぼって議論を展開する点で 亘理、山本、橋本各説とも類似するが、排他的管轄が適用されうる「行政行為」と、そうではない行政の「行為」 との区別について、具体的な行訴法の解釈論にまで突き詰めて論ずる点で、これらの説と相違があろう。   し か し こ の 解 釈 論 で あ る が、 「そ の 他 公 権 力 の 行 使 に 当 た る 行 為」 の 立 法 経 緯 に 照 ら す な ら ば、 同 文 言 が も と も と「事実行為」を念頭に置いて規定されたもの で ( 70) 、大浜氏の解釈とずれがあることに留意せねばならな い ( 71) 。またこ の文言に解釈論的意味を見出さない学説があるほ か ( 72) 、処分性拡大判例を通じてもこの文言にとくに着目した判断も 見受けられないように思われる。したがって大浜説には、その解釈論的二分論を支える「文理解釈」論の妥当性に ついて、現在の判例学説を踏まえたさらなる論証の余地があろう。   さ ら に 大 浜 説 は、 原 告 市 民 の 訴 訟 類 型 選 択 の 自 由 を 提 案 す る が、 〈訴 訟 提 起 段 階〉 で の 自 由 の み を 認 め る の か、 そ れ と も〈訴 訟 追 行 段 階〉 で も 自 由 を 認 め る の か が 問 題 と な り う る の で は な い か。 こ の 点 形 式 的 行 政 処 分 論 を め ぐって、原告市民がいったん取消訴訟を選択した場合それ以降その訴訟に服せしめられるとする原田尚彦説と、そ れ以降であっても当事者訴訟を含め原告市民の自由選択の余地を認める兼子仁説との議論対立が連想され る ( 73) 。加え て、そもそも原告市民の自由選択を認める併用的構成に関しては、実務上混乱を招くとの指摘もなされてきたが、 この指摘をどのように受け止めるのかという点もあろ う ( 74) 。   以 上、 取 消 訴 訟 の 排 他 的 管 轄「不 適 用」 論 を 主 張 す る 各 説 を 横 断 的 に 検 討 し、 到 達 水 準 と 課 題 点 を 検 討 し て き た。総じて学説は排他的管轄「不適用」をめぐりさまざまな論理構成を試みてきている。両拡大論より一歩進んだ 展開である。しかしそうは言っても、管轄拡大問題の重要性からすれば、法原理面からも法解釈面からも、なお突

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き詰めて検討する余地があるのではないか。例えば学説では、排他的管轄「不適用」をめぐる法原理的な正当化が いまだ十分に論じられていないように思われる。また法解釈面においても、排他的管轄「不適用」そのものを裏付 ける論証過程、排他的管轄「不適用」論と違法性の承継または併用的構成とをつなぐ論証過程、さらに違法性の承 継と併用的構成とを係争事案に応じどのように認めていくかの論証過程について、さらなる展開が求められる。加 えて学説では、併用的構成ということでどんな内容を念頭に置き、またそれをいかに論理的に正当化するのかにつ いても十分に議論されていないように思われ る ( 75) 。 第三章   「仕組み解釈」に対する「均衡解釈」論   以上学説の排他的管轄「不適用」論を考察し、その到達水準と課題点を検討してきた。以下本章ではこの検討を 踏まえ、管轄拡大問題へのあるべき対応策を論じていく。具体的には、処分性に係る「仕組み解釈」がもたらす弊 害 を 是 正 す る た め の 解 釈 論 と し て、 「取 消 訴 訟 の 排 他 的 管 轄」 に 係 る「均 衡 解 釈」 論 な る 議 論 を 提 示 し、 そ れ を 「予 測 可 能 性 の 保 護」 と「法 的 安 定 性 の 保 護」 と い う 相 対 立 す る 法 原 理 的 要 請 を 踏 ま え な が ら 正 当 化 し て い く (第 一 節) 。 そ の 上 で「均 衡 解 釈」 論 の 具 体 的 内 容 に 関 し て、 管 轄 拡 大 問 題 が 生 じ る 典 型 的 な 場 合 を 念 頭 に 置 き な が ら 法 解 釈 論 的 に 論 じ て い く (第 二 節) 。 さ ら に 行 政 訴 訟 に 係 る 実 務 動 向 を 踏 ま え た 上 で、 「均 衡 解 釈」 論 の 射 程 を 検 討 していく (第三節) 。 第一節   予測可能性の保護と法的安定性の保護   出 発 点 と し て、 「仕 組 み 解 釈」 に よ り 拡 大 さ れ る も の と は い え、 係 争 行 為 に つ き 処 分 性 を 認 め る 以 上、 そ の 付 随

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的な帰結として「取消訴訟の排他的管轄」をも認めざるをえないというのが、行訴法を踏まえた現実的な解釈との 前提に立つ必要がある。その理由として、処分性を拡大したのに取消訴訟の排他的管轄を「不適用」とする両拡大 論以来の試みに関して、必ずしも説得力あるものと受け止められてこなかったという解釈論レベルでの「反省」を 踏まえねばならないほかに も ( 76) 、塩野説や山本説が論ずるように、取消訴訟の排他的管轄の背景にある「法的安定性 の保護」という原理的要請についても無視できないからであ る ( 77) 。   とはいえ両拡大論以来懸念されてきたように、処分性の拡大解釈によって市民に対し「不測の不利益」が生じる 実際的帰結は容認できない。したがって例えば阿部説や亘理説が論ずるように、原告市民の「予測可能性の保護」 という原理的要請に基づく何らかの対応策が必要である。ただしこの対応策として、例えば藤田・近藤両意見が提 案 す る よ う に、 「正 当 な 理 由」 条 項 の 活 用 と い っ た、 裁 判 官 の 広 い 裁 量 判 断 に 依 存 す る 解 釈 論 は 好 ま し く な い。 ま た 阿 部 説 が 提 案 し て き た よ う に、 「訴 え の 変 更」 を 促 す「積 極 的 釈 明」 等 と い う 形 で の、 裁 判 所 の 認 定 判 断 (民 訴 法 一 四 三 条 四 項) や 訴 訟 指 揮 を 介 在 さ せ る 解 釈 論 ( 78) も、 “裁 判 所 に 対 す る 統 制” の 観 点 か ら す る と、 問 題 解 決 の あ り 方 としてあまり望ましくないように思われ る ( 79) 。   さ ら に 塩 野 説 の よ う に、 「事 柄 の 性 格」 や「便 法」 と い っ た あ い ま い な 理 由 で も っ て 排 他 的 管 轄「不 適 用」 論 を 正当化する対応策も、結果的にその実現の帰趨を裁判所に丸投げするおそれがあり、できるだけ避けるべきであろ う。 も っ と も 予 測 可 能 性 の 保 護 の 要 請 を「裁 判 を 受 け る 権 利」 等 の 憲 法 原 理 か ら 導 い た 上 で、 排 他 的 管 轄「不 適 用」論を積極的に提唱する阿部説も検討の余地がある。確かに、管轄拡大問題の「人権侵害」性を直視した議論と して、明瞭な論理構成ではある。しかしこの種の憲法へとダイレクトに結びつく議論がどこまで裁判所によって受 け 入 れ ら れ る の か、 現 実 的 に 考 え て 疑 問 が あ る。 そ れ ゆ え「予 測 可 能 性 の 保 護」 の 要 請 に 基 づ く 対 応 策 に 関 し て

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は、 こ の よ う な 形 で 憲 法 原 理 か ら の「外 在 的」 な 正 当 化 を 試 み て い く ―― こ と も 必 要 で あ る が そ れ ―― の み な ら ず、できるかぎり行政法原理からの「内在的」な正当化を試みていく必要があろう。   ひ る が え っ て、 '法 律 を 信 頼 し て 市 民 が み ず か ら の 活 動 (行 政 訴 訟 の 提 起 を 含 め) を 自 己 決 定 で き る' と い う の は、わがくに行政法の不変の原則たる「法律による行政」の'核心的部分'ではなかろうか。したがって「予測可 能 性 の 保 護」 の 要 請 に 関 し て は、 ま ず も っ て こ の 行 政 法 の〈原 理 原 則〉 か ら 内 在 的 に 正 当 化 さ れ て い く べ き で あ る。 も っ と も こ の よ う に「法 律 に よ る 行 政」 に 基 づ く こ の 原 理 的 要 請 を 踏 ま え た 上 で、 〈処 分 性 が 拡 大 さ れ る 場 合 には予測可能性の保護の要請が損なわれうるので、取消訴訟の排他的管轄を「不適用」にすべき〉という、従来か ら見られる“割り切った”議論を導き出すのは早計である。なぜなら管轄拡大問題への対応策を考えるに当たって は、 取 消 訴 訟 の 排 他 的 管 轄 が も つ、 「法 的 安 定 性 の 保 護」 の 要 請 を も 踏 ま え ね ば な ら な い か ら で あ る。 そ れ ゆ え 橋 本 説 の 到 達 水 準 に 立 っ て、 両 原 理 的 要 請 の 調 和 を 目 指 し た 明 瞭 な 解 釈 論 的 構 成 を 模 索 し て い く 姿 勢 が 必 要 で あ ろ う。   思う に ( 80) 、〈仕組み解釈〉を通じて処分性が“拡大解釈”されるのならば、少なくとも、 「法律による行政」という 行 政 法 原 理 か ら の 対 応 的 要 請 (す な わ ち 予 測 可 能 性 の 保 護 の 要 請) に 基 づ き、 そ の 拡 大 と「反 比 例」 し て、 「取 消 訴 訟の排他的管轄」が“縮小解 釈 ( 81) ”されねばならないという〈均衡解釈〉の必要性が、規範的に演繹できるのではな い だ ろ う か【後 掲 図 A ① ② ( 82) 】。 こ こ で 注 意 す べ き な の は、 規 範 的 に 演 繹 で き る の は 一 律「 不 適 用 4 4 4 」 で は な く、 あ く までも「 縮小解釈 4 4 4 4 」に過ぎない点であ る ( 83) 。その意味で、取消訴訟の排他的管轄がもつ「法的安定性の保護」の要請 についても、解釈論の中で何らかの形で反映させる余地を規範的に含んでいなければならな い ( 84) 。

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第二節   原告市民の訴訟活動に応じた「場合分け」   前 節 で は、 従 来 か ら の 学 説 の 課 題 点 で あ る、 排 他 的 管 轄「不 適 用」 そ の も の を 裏 付 け る 説 明 の 仕 方 と し て、 「均 衡解釈 (縮小解釈) 」という考えを提示した。しかし振り返って前章では、学説の排他的管轄「不適用」論につき、 その「不適用」論と違法性の承継・併用的構成との関係、またいかなる場合にどちらの対応策を採るのが合理的な のかに関して、いまだ十分議論が展開されていないことをも指摘した。そしてこれら課題点は、現段階での私見の 均衡解釈の課題点としてもそのままあてはまる。そこで解決の方向性である。結論から先に言えば、均衡解釈の内 容は、次に挙げるように、管轄拡大問題に関わって原告市民が直面する典型的な 事案類型の相違に応じてそれぞれ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 別異に考えるべき 0 0 0 0 0 0 0 0 である。   一 方 で、 法 律 規 定 を 信 頼 し、 先 行 行 為 に は 処 分 性 が な い と 原 告 市 民 が 解 釈 し て、 〈 後 続 行 政 処 分 の 取 消 訴 訟 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 〉 段 階 で は じ め て 先 行 行 為 の「違 法 性」 を 主 張 し た と こ ろ、 裁 判 所 (一 審 で あ れ 控 訴 審 で あ れ 最 高 裁 段 階 で あ れ。 以 下 同 じ。 ) が「仕 組 み 解 釈」 に よ っ て 先 行 行 為 の 処 分 性 を 認 め て し ま っ た 場 合 が 考 え ら れ る。 他 方 で、 法 律 規 定 を 信 頼 し、 係 争 行 為 に つ き 処 分 性 が な い と 原 告 市 民 が 解 釈 し て、 〈 別 途 の 当 事 者 訴 訟 4 4 4 4 4 4 4 4 〉 を 通 じ て 係 争 行 為 の「違 法 性」 に つ き 争 お う と し た と こ ろ、 裁 判 所 が「仕 組 み 解 釈」 に よ っ て 係 争 行 為 の 処 分 性 を 認 め て し ま っ た 場 合 ( 85) が 考 え ら れ る。 以 下 便 宜 上、 前 者 を (α) の 場 合、 後 者 を (β) の 場 合 と 称 し、 そ れ ぞ れ の 場 合 の 具 体 的 な 対 応 策 を 論 じ て い こ う ( 86) 。 一.取消訴訟の出訴期間の縮小解釈   (α) 〈後 続 行 政 処 分 の 取 消 訴 訟〉 で 争 っ て い る 場 合、 先 行 行 為 に つ き 処 分 性 が 肯 定 さ れ た こ と を 受 け、 あ ら た め

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て原告市民が先行行為の取消訴訟を提起――ないしはそれへと「訴えの変更」 (以下“提起”と“変更”を併せて「提 起 等」 ) ―― し よ う と し て も、 通 常 六 カ 月 の 取 消 訴 訟 の 出 訴 期 間 を 過 ぎ て し ま っ て い る し ―― 関 連 し て「正 当 な 理 由」 条 項 に よ っ て 救 済 を 受 け る こ と に も 方 法 論 上 限 界 が あ る (以 下 出 訴 期 間 徒 過 の 記 述 に つ き 同 様) ――、 ま た 先 行 行為が行政処分と解される以上、違法性の承継も原則として認められないので、その先行行為の違法性については もはや争いえないということになってしまう。   し か し こ の 帰 結 は、 「法 律 に よ る 行 政」 か ら の 対 応 的 要 請 た る「予 測 可 能 性 の 保 護」 の 要 請 か ら し て 妥 当 で な い。 そ れ ゆ え「均 衡 解 釈」 と し て、 取 消 訴 訟 の 出 訴 期 間 の 縮 小 解 釈 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 を し て 出 訴 期 間 の 縛 り を ゆ る め、 あ ら た め て (行 政 処 分 と 解 釈 さ れ て し ま っ た) 先 行 行 為 の 違 法 性 を 争 う チ ャ ン ス を 原 告 市 民 に 対 し 与 え ね ば な ら な い【後 掲 図 A ① ②】 。 も っ と も こ の 縮 小 解 釈 が も た ら す 論 理 的 帰 結 は、 あ く ま で も 出 訴 期 間 の 縛 り を ゆ る め る こ と だ け で あ っ て、 こ の こ と か ら 直 ち に、 現 に (適 法 に) 提 起 し て い る 後 続 行 政 処 分 取 消 訴 訟 の 中 で 先 行 行 為 の 違 法 性 が 争 え る 帰 結が論理必然的に導き出されうるわけではない。   言 い 換 え れ ば、 後 続 行 政 処 分 取 消 訴 訟 の 中 で 先 行 行 為 (行 政 行 為) の 違 法 性 を 争 う こ と を 認 め る に 当 た っ て は、 縮小解釈以外のさらなる「媒介的な解釈論」が必要であり、その解釈論に当たるものこそが、従来から指摘されて きた 違法性の承継 4 4 4 4 4 4 ――厳密に言えば違法性の【連辞的】承継なのだが、この意味に関しては本文後述する――と言 え る の で は な い か。 す な わ ち (α) の 場 合、 (法 律 に よ る 行 政 か ら の 対 応 的 要 請 と し て の) 取 消 訴 訟 の 出 訴 期 間 の 縮 小 解釈とともに、 実効的な権利救済ないし実効的な紛争解決の要請 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 からの、違法性の承継をも認める必要がある【後 掲 図 A ③】 。 そ れ ゆ え「均 衡 解 釈」 は、 処 分 性 の 拡 大 解 釈 に 直 接 (反 比 例 的 に) 対 応 す る、 取 消 訴 訟 の 出 訴 期 間 の 「縮 小 解 釈」 と い う 意 味 で の“狭 義” の「均 衡 解 釈」 の み な ら ず、 そ の 縮 小 解 釈 に 伴 っ て 求 め ら れ る「違 法 性 の 承

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継」をも含めた議論として、広く構成すべきであろう。以下本稿では、この“広義”の「均衡解釈」のことを指し て、便宜上〈 「均衡解釈」論〉と呼ぶ。   以 上、 従 来 学 説 上 指 摘 さ れ て き た 排 他 的 管 轄「不 適 用」 論 に 関 し て、 「縮 小 解 釈」 論 と 構 成 し 直 し た 上 で、 そ の 行政法原理的な裏付け (法律による行政との関連) を明確化するとともに、これまた従来から提唱されてきた、処分 性 拡 大 に 伴 う 違 法 性 の 承 継 に 関 し て、 そ の 解 釈 論 的 位 置 づ け を 排 他 的 管 轄「不 適 用」 論 (で は な く「縮 小 解 釈」 論) との関係で明確化していく必要があ る ( 87) 。もっともここで、均衡解釈の内容として、なぜ従来のような「不適用」と いう分かりやすい構成ではなく、わざわざ「縮小解釈」という“回りくどい”構成を採るのかという疑問が生じよ う。   その理由として、取消訴訟の出訴期間につき「不適用」と構成すると、原告市民として、 先行行為の取消訴訟の 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 提 起 等 も 可 能 と な っ て し ま う 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 こ と が 挙 げ ら れ る【後 掲 図 B (α) 黒 矢 印】 。 も ち ろ ん、 実 効 的 な 権 利 救 済 な い し 実 効的な紛争解決の要請からすれば、先行行為についても取消訴訟を通じて争いうるとの帰結も、一般的に望ましい 事態かもしれない。 また先行行為に違法性があると原告市民が考える以上、 その行為の効力を取消判決 (の形成力) により失わしめるチャンスを与えるというのが救済のあり方として直截的であろう。   しかし他方で、こうした場合、先行行為につき出訴期間の徒過を通じて不可争力が生じたものと信頼した第三者 市 民 の 信 頼 利 益 が 害 さ れ る お そ れ が 出 て く る こ と に も 留 意 せ ね ば な ら な い (取 消 判 決 に は 第 三 者 効 が あ る) 。 ま た た とえ先行行為が第三者の利益が関わらない性質のものであっても、現に原告市民から提起されている後続行政処分 をめぐる取消訴訟の審理を引き続き認め、その中で先行行為の違法性を争わせるのであれば、さしあたり原告市民 の救済としては足りるであろ う ( 88) 。そもそも原告市民としても、当初からそういった形での救済を望んでいたはずな

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