I は じめに われわれは、先 に,滋 賀大学産業共同研究セ ンターベ ンチ ャー企業研究会が 平成 9 年 9 月 か ら1 2 月に実施 した 「滋賀県企業の新 たな事業展開に関するアン ケ ー ト調 査 」 に も とづ き, 「滋 賀 県 企 業 の 新 事 業 展 開 の 実 態 と特 徴 」 (拙稿 『彦根論叢』第321号,1999年11月,21∼40頁)お よび 「滋賀県企業の新事業展 開の実態 と特徴 (その 2)」 (拙稿 F彦根論叢』第329号,2001年2月,73∼94頁)を 執 筆 した (アンケート調査のねらい,対象,調査の分析方法と記述方法,ア ンケート調査票等 については,こ こでは繰り返さないので上記拙稿を参照のこと。)。 本稿では,上 記調査結果 を別の視点か らの分析 も加 えて滋賀県企業の新事業 展 開の実態 を浮 き彫 りに し,そ の上で上記分析結果 にたって,一 般的に中小企 業の新事業展開の促進策はどうあるべ きかについて考察 しようとするものであ る。 すなわち,先 の論考では,調 査結果のクロス分析 をアンケー ト調査項 目ごと に横断的に眺め,特 徴 を浮 き彫 りにすることに意 を尽 くした。それだけで もず いぶん特徴が検出で きたと思われるが,本 稿ではそれに加えて,社 長の性格別, 社長の最長従事分野別,社 長年数別,売 上変化別,企 業 タイプ別,新 規事業件 数別,研 究開発費比率別 により細分化 された集団ごとに,縦 断的に眺めてさら にその特徴 を浮 き彫 りに してい く。それにより滋賀県企業の新事業展開の実態 と特徴 を詳 しく明 らかに した上で,新 事業展 開の促進策のあ り方 を導 き出 して み ようとす るのである。 か くして,こ れ まで とは別の視点か ら迫 って滋賀県企業の新事業展開の実態 と特徴 を浮 き彫 りに し,そ の上で一般的な新事業展開のあ りようへの提言 を考 彦 俊 田 一戸
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えてみようとするのが本論文の目的である。
Ⅱ 社 長の特性 と新事業展開の特徴 われわれは先の論考で,社 長の特性 にかかわる項 目について,社 長の性格別, 社長の最長従事分野別,社 長年数別の 3つ をとりあげクロス分析 をしてアンケー ト項 目ごとにいわば横断的に観察 して新事業展 開の特徴 を探 り出 した。 ここで は社長の特性 ごとに縦断的に観察 してそれぞれのタイプが もつ新事業展開の特 徴 を描 き出 してみ よう。その際,先 の分析では一つ選択の項 目も3つ 選択の項 目も同様 にサ ンプル数 に応 じて仮の有意性 を決め,そ れ以上の ものをすべて記 載 したが,そ のため特色が見 えに くかった と思われる。ここでは,有 意性 に意 味があ り, しか も25の各集回の中で最大値か最低値,な い しはそれに準 じた値 を示 した もので,特 徴 を浮 き出させ ると思われるもののみに絞 ってまず記載す る。そ してそれぞれの タイプごとに他の目立 った項 目も補足 してその特徴 を要 約 してい くこととしたい。 │ エー 1 社 長の性格別 一信長型,秀 吉型,家 康型 社長の性格が織田信長 に近い とする信長型は,従 業員数が10∼99人規模で73. 9%を 占め,100∼ 499人では14.3%に す ぎず,小 規模企業 に多いのが特徴的で ある。業種ではその他製造 に所属す る企業が28.6%と 目立 っている。今後影響 を与える環境変化 として第一位 にユーザーニーズが多様化 ・高度化 をあげるも のが40.5%を 占め多い。社長の年齢 は比較的若い41∼50歳が35.7%を 占め相対 的に多い。61∼70歳は14.3%と きわめて少ない。社長就任時の年齢 も41∼50歳 が42.9%と 多い。社長の最長従事分野 として営業部門をあげるものが42.9%と 多 く,研 究開発部門がそれに続 き両者で69。1%を 占める。社長の条件 として重 要 と思 われる もの として信念 をあげるものが半数強 を占め相対的に目立 ってい る。新規事業の リーダーとして望 ましいタイプとして信長型 をあげるものが61. 9%を 占めて圧倒的である。 つ ま り,信 長型は社長が主 として営業,研 究開発 に従事 してきて若 く,企 業も若 く小規模でその他製造が主体で,ユ ーザーニーズの多様化 ・高度化の影響 を受けている。そ して信念 をもって自社 開発技術 で本業 に関連する新規分野 に 主力転換 をね らい,研 究開発型企業 になろうとするものの,必 要な人材不足が 障害 になっている ところに特徴があるといえよう。 社長の性格が秀吉 に近い とする秀吉型は,新 規事業の リーダー として望 まし い タイプとして秀吉型 を50.8%の ものがあげて目立っている。 つ まり秀吉型 は中規模か ら大企業の範疇に入っている企業が多 く,社 長の条 件 として重要な ものは統率力であ り,望 ましい新規事業の リーダーは同 じ秀吉 型だ としている ところに特徴があるといえよう。 社長の性格が家康 に近い とする家康型は,新 規事業の リーダー として望 まし い タイプとして同 じ家康型 をあげるものが相対的には多い ものの300/0をやや下 回つてそれほど多 くはない。 つ まり家康型は専門企業 を目指す ものの,際 立った特徴が浮かび上が らない 特徴 をもつ もの といえよう。 H-2 社 長の最長従事分野別 ―営業,生 産,財 務,経 営 次 に社長が これ までの経歴で最 も長 く従事 していた分野別 に見て特徴 を浮 き 彫 りに してみ よう。 最 も長 く従事 していた分野 を営業部門 とする営業社長は,売 上高が10億∼50 億円未満 とする企業力M8.4%を 占め多い。大企業 との関係では,販 売提携 を行っ ているとす るものが31.2%あ り相対的に目立 っている。そ して今後 5年 間の売 上成長率の 目標 は0∼10%が 54.7%と 多い。最 も重要 と考 える海外進出戦略 と して国内商社等 を通 じての輸出を18.8%が あげ相対的に多い。 また最 も力 を入 れている新規事業 として環境関連機器 ・システムを20。3%が あげて多い。企業 の設立年 は1949年以前 とするものが39.1%と 多い。 つ ま り営業社長は売上規模が既 に大 きい古い企業が多 くを占め,今 後の売上 成長率 は小 さい ものが多い。そ して大企業 との販売提携,国 内商社等 を通 じた 輸出,環 境関連機器 ・システムの重視 などに見 られるように営業活動に力が入っ
9 4 冨 田光彦教授退官記念論文集 ( 第3 3 4 号) てい る ところ に特徴 が あ る。 最 も長 く従事 してい た分 野 を生産部 門ない し研 究 開発部 門 とす る生産社長 は, 最 重視 す る事 業構 造 の転換 と して本 業 に関連 す る新 規分 野 に主力転換 が2 5 % と 相対的に多い。新規事業の撤退 ・中止の理由 として過当競争の発生 をあげるも のが66.6%と 多い。社長の条件 として重要 と思われるもの として責任感 をあげ る ものが26.90/0と相対的に多い。会社設立年 として1980∼1990年とするものが 34.6%と 多 く,設 立後年数 も7∼10年が17.3%と 相対的に多い。 つ ま り生産社長は年配者が多 く,社 長の条件 にも責任感があげ られるが,企 業 は若い。最重視す る事業構造 の転換 として本業 に関連する新規分野 に主力転 換が相対 的に多い ところに特徴がある。 最 も長 く従事 していた分野 を財務部門ない し経営管理部門 とする財務社長 は, 経常利益 が1,000万∼5,000万円未満 とす る ものが38.50/0と目立 って多い。過去 3年 間に比べ た経常利益 は横 ばい とするものが過半 を占める。 5年 後の従業員 数の 目標 はマ イナス10∼ 0%と す る ものが46.2%と 多い。重要な経営 目標 とし て コス トダウンをあげるものが65。4%と 多い。最重視する事業構造の転換 とし て本業 を重視 しつつ本業関連事業へ多角化 をあげるものが61.5%と 目立 ってい る。最 も重要 と考 える海外進出戦略 を現地企業 との何 らかの協力関係 を確立 と す る ものが38.5%を 占め相対 的に多い。新規事業の うち撤退 ・中止 した件数は 0件 とす るものがほとん どである。新規事業 に不足する人材の確保の見通 しは かな り困難であるとするものが半数 を占め 目立 っている。特許 も実用新案 も取 得済み に しろ申請 中に しろ 0件 が圧倒 的である。社長の条件 として重要 と思わ れる もの として決断力 をあげるものが88.50/0と目立 っている。設立後年数 とし て40∼50年が30,8%と 多い。 つ ま り財務社長は,経 常利益が1,000万∼5,000万円の範囲で横 ばい状況であ り,コ ス トダウンを目標 として従業員 を削減 しようとしている。最重視する事 業構造の転換 は本業 を重視 しつつ本業関連事業へ多角化 を目指す ものである。 そのためか撤退 。中止件数はほとんどない。海外戦略は現地企業 とのなんらか の協力関係 を確立することとしている。不足人材の確保 はかな り困難 と見通 し
ている。特許等 はない。企業の年齢が高いだけに社長は創業者ではな く,決 断 力 を社長の条件 としてあげるものが 目立 っている。 最 も長 く従事 していた分野 を経営者 とする経営社長は,売 上高が50億円以上 とするものが38.2%と 多い。従業員数で も100∼499人が過半 を占めて中 ・大企 業が多い。会社設立年は1960∼1970年が36.4%を 占めて多い。 つ ま り経営社長は,設 立後3,40年 を経た中 。大企業の社長 として若 くして就 任 した ものが多い といえよう。 エー 3 社 長年数別 -1年 , 5年 ,10年 ,20年 次 に社長の在職年数別 に見て特徴 を浮 き周夕りに してみ よう。 社長の在職年数が 5年 以下の社長である 1年 社長は,大 企業 との関係で,人 員 を受け入れている,出 資 を受け入れているとす るものがあわせて72,30/0を占 め 目立 っている。最重視する事業構造の転換 として本業の内部で新たな市場 を 開拓 とす る ものが24.6%と 相対的に多い。最 も力 を入れている新規事業の現状 はアイデアが生 まれた段階 とする ものが18.5%と 多い。社長就任時の年齢は51 ∼60歳が49.2%を 占めて目立ってお り,さ らに61∼70歳が13.8%と 相対的に多 い。社長 と創業者の関係では,従 業員 ・幹部 とその他 とするものがあわせて43. 1%と 多 く,そ の他 の内容 は原票 に戻 って調べ てみる と親会社役員,関 連会社 役員,曾 孫 といった ところが多い。 このことか ら 1年 社長は設立後間 もない企 業のほかにかな り大 きな企業 を建て直 し中の社長が一つの勢力分野 を構成 して いるといえる。そのためか社長の最長従事分野 として経営者 をあげるものが7. 7%と く`ん と少 ない。 また設立年 として199o年以降 とする ものが 1割 強 を占め ている。 つ ま り1年 社長は,高 齢で,従 業員や親企業の役員か ら社長 に就任 し,売 上 高50億 円以上の企業で,今 後影響 を与 える環境変化 として国内企業 との競争が 激化 を多 くがあげ,重 要な経営 目標 としてシエア ・取引先の拡大 をあげるもの が相対的に多 く,大 企業か らの人員や出資 を受け,成 長 をはかろうとしている ところに特徴があるといえよう。
9 6 冨 田光彦教授退官記念論文集 ( 第3 3 4 号) 社長在職年数が 5年 超∼10年以下の 5年 社長は,社 長 と倉J業者の関係 は子供 が3 7 . 5 % と多い点が 目立つ程度である。つ ま り, 5年 社長はあま り特徴が出て いない といえよう。 社長在職年数が10年超 ∼20年以下の10年社長 は,売 上高 に占める研究開発費 の比率が 4∼ 6%と す るものが22.4%と 相対的に多い。重要な経営 目標 として 技術力の向上 を69.4%が あげて 目立 っている。社長の年齢 は51∼60歳がほぼ半 数 を占め多い。社長就任時の年齢 も31∼40歳がほぼ半数 を占め多い。設立後年 数は10∼15年 とす る ものが ほぼ 4分 の 1を 占め多い。 つ ま り10年社長 は社長 に31∼40歳で就任 し,現 在51∼60歳で,研 究開発部門 に従事 した ものが相対的に多 く,技 術 開発 は自社開発が多い し,研 究開発費比 率 も4∼ 6%と す る もの を多 く含 んでお り,現 在 の企業 タイプが研究開発型企 業 とす る,技 術への強い こだわ りが感 じられる企業 といえよう。 社長在職年数が20年超である20年社長は,過 去 3年 間に比べた最新売上高は 増加 しているとす る ものが63.5%と 多 く,所 属産業分野 として鉄鋼 ・非鉄 。金 属加工が 2割 以上 を占めて多い。社長の年齢 は61∼80歳に73%が 入 り高齢化が 際立 っている。社長就任時の年齢 は21∼40歳が80。8%と 目立 って多い。逆 に51 歳以上で社長 になった ものは皆無である。社長 と創業者 との関係 は55,8%の も のが創業者本人である。 また同 じ55,8%の ものが社長の最長従事分野 として経 営者 をあげている。 つ ま り,20年 社長は自ら創業者 として比較的若 くして社長にな り経営者 とし ての経験 を積 んではいる ものの今 は高齢化 しているものが多 く,鉄 鋼 ・非鉄 ・ 金属加工 に所属す るものを多 く含 んでお り,最 新売上高は増加 している企業 と いえよう。 皿 企 業の特性 と新事業展開の特徴 回- 1 売 上変化別 ―増加,横 ばい,減 少 過去 3 年 間に比べ た最新売上高が増加 している とす る増加企業 は, 過 去 3 年 間に比べ た最新経常利益 は増加 している とす る ものが7 3 . 5 % と圧倒 的である。
売上高の変化 と経常利益 の変化 は正比例関係 にあるか らであろう。新規事業の 撤退 ・中止の理由 として部門員の能力不足 をあげるものが55,6%と 多い。 つ まり増加企業は売上高に比例 して経常利益 も増加 してお り,新 規事業の撤 退 。中止は部門員の能力不足 をあげる企業 といえよう。 過去 3年 間に比べ た最新売上高が横 ばい とする横 ばい企業は,最 新決算期の 売上高が 1億 ∼ 5億 円未満 とする企業が 3割 弱 を占め多い。過去 3年 間に比べ た最新経常利益 も横 ばい とする企業が61.4%を 占め多い。新規事業への取組状 況は具体的な製品 ・商品 ・サー ビスの販売 を準備 中が24.6%と 多い。新規事業 の売上高は1,00o万円以下 とするものが38・6%を 占め多い。株式公開 したい と は思わないが36.8%を 占め多い。 つ ま り横 ばい企業は新規事業の リーダーに信長 を望 ましい とは思わず,新 規 事業への取 り組みが製品 ・商品 ・サービスの販売準備 中で,研 究開発 中で,そ の売上高 も1,Ooo万円以下で,ま だ何 も貢献 していない段階にあ り,現 在の売 上高 も低 く,経 常利益 は横 ばいで,株 式公開意欲 にも欠ける企業であるところ に特徴がある。 過去 3年 間に比べ た最新売上高が減少 しているとする減少企業は,最 新決算 期 の売上高が 5億 ∼10億円未満 とするものが23.5%と 相対的に多 く,50億 円以 上は 1割 弱 にす ぎない。最新決算期の経常利益が0∼1,00o万円未満が35。3%と 多 く,過 去 3年 間に比べ た最新経常利益 も減少 しているが 8割 近 くを占めて圧 倒的である。重要な経営 目標 として技術力の向上 をあげるものが68,6%と多い。 撤退 ・中止の理由 として需要見通 しの誤 りを72.8%が あげている。 つ ま り減少企業は経常利益がわずかな金額である上 に,減 少 しているものが 圧倒 的である。技術力の向上 を目指す ものの,下 請け企業のままであるものが 多い といえよう。 田- 2 企 業 タイプ別 ―研究, 家 業, 下 請, 伝 統,専 門 現在の企業 タイプを研究開発型企業 とした研究企業は,過 去 3年 間に比べた 最新売上高 も経常利益 も減少 しているとするものが きわめて少ない。最新時点
9 8 冨 田光彦教授退官記念論文集 (第334号) での従業員数は 0∼ 4人 とする ものが 2割 近 くを占め零細 な研究開発型企業 を 含 んでいることが見て取れる。売上高 に占める研究開発費の比率 を 0%や 0∼ 2%と する ものは合 わせて 3割 にす ぎず少ない。今後影響 を与 える環境変化 と して国内企業 との競争が激化 をあげる ものが15。10/0と相対的に少 ない。最重視 す る事業構造の転換 は既存の事業内容 を転換せず,本 業 を充実 とするものはわ ずかに 2%弱 にす ぎない。最 も重要 と考 える海外進出戦略 として海外進出は, 行わない とす る もの も30。2%と 相対的に少 ない。最近 5年 間の新規事業件数は 2∼ 3件 がほぼ半数 を占めて多い。新規事業への取組状況は既 に主力商品化 し ている とす るものが24.5%を 占め相対的に多い。最 も力 を入れている新規事業 の現状 は研究開発 中 と商品化 に成功 し,販 売開始 した段階が ともに34%を 占め 目立 っている。新規事業の人材 の最 も不足する専門分野 は研究開発関係で 6割 を占め多い。その確保の見通 しは頑張れば何 とかな りそ うであるが多い。新規 事業資金 の調達先 として,民 間金融機 関 (VC以 外)が 62.3%と 多 く,政 府 ・ 地方 自治体か らの補助金 も3割 強 を占め相対的に多い。新規事業 に関する技術 獲 得 方 法 につ い て はすべ て 自社 開発 とす る もの が 過 半 を占め多 い 。特 許 (申請中)は 2件 とするものが15。1%を 占め相対的に多い。社長の最長従事分野 は研究開発部門が26.4%を 占め多い。将来 目指す企業 タイプも研究開発型企業 が 7割 近 くを占め断然多い。 つ ま り,研 究企業は,零 細 な研究開発 に特化 した企業 をその中に含み,研 究 開発費比率が高い企業が多い。それゆえか,売 上高 も経常利益 も減少 とするも のが少 ない し,国 内企業 との競争激化や既存の事業内容 を転換せず本業 を充実 とした り,海 外進出は行 わない とするものなどはわずかである。積極的に新規 事業分野 に主力転換 をはか り,現 地企業 との協力関係 を確立 しようとしているO それ もすでに主力商品化 していた り研究開発 中や商品化 に成功 し販売開始 した 段 階が多いか らである。ただ今後の障害 として新 しい商品開発や取引に必要な 人材不足 を6割 強があげ,そ の不足人材 も研究開発関係が 6割 を占めるものの, 頑張れば何 とかな りそ うである とす る。資金調達 も民間金融機関のほか,政 府 ・地方 自治体か らの補助金に期待 をかけている。技術獲得方法は過半が 自社開
発 とし,特 許 (申請中)も 2件 とす る ものが相対 的に多い。創業者本 人である ものが多 く,研 究開発部門に従事 した ものが相対的に多 く,社 長の条件 として 洞察力 をあげるものが相対的に多い。将来 目指す企業 タイプは研究開発型企業 が 7割 を占める。いわゆる典型的なベ ンチ ャータイプの企業 といえよう。 現在の企業 タイプを家業型企業 とした家業企業は,所 属する産業分野は食料 品製造が27.8%と 目立 ってお り,大 企業 との関係 は特 に関係 はない とするもの が61.1%と 際立 って多い。重要な経営 目標 として企業の社会的イメージの向上 をあげるものが27.8%と 相対的に多い。最重視する事業構造の転換 は既存の事 業内容 を転換せず,本 業 を充実 とする ものが38.9%と 多い。最 も重要 と考 える 海外進出戦略 として海外進出は,行 わないを83.30/0があげて際立 っている。最 近 5年 間の新規事業件数は 0件 とするものが55.6%と 目立 っている。社長の条 件 として重要 と思 われるもの として意欲 を72.2%が あげて際立 っている。将来 目指す企業 タイプとして伝統 ・老舗企業が27.8%と 相対的に多い。 つ ま り,家 業企業は食料品製造 を3割 近 く含み,大 企業 との関係 もな く,海 外進出 も新規事業 も展 開せず,採 算不安定 を理由に してせいぜい企業の社会的 イメージの向上 を経営 目標 に し,手 堅 く本業充実 をはかろうとしている。そ し て伝統 ・老舗企業 を目指そ うとしている,変 化 を望 まない企業 といえよう。 現在 の企業 タイプを下請企業 とした下請企業は,過 去 3年 間に比べ た最新売 上高 も,経 常利益 も減少 している企業が 3割 台 と相対的に多い。従業員数は10 ∼49人がほぼ半数を占めて多い。売上高に対する研究開発費の比率は0°/0が34.2 °/oと相対的に多い。大企業 との関係 はライバル関係 にある とす るものは5。1% にす ぎない。今後影響 を与 える環境変化 として取引先の海外展開で需要が減少 を相対的に多 くの19,0%の ものが一位 に指摘 している。重要な経営 目標 として 新製品開発 をあげる ものが39.20/0と他 の企業 タイプに比べ少 ない。新規事業ヘ の取組状況で具体的な ものはないが探 しているが 3割 強 を占め多い。新規事業 の不足人材確保の見通 しとして大変,困 難である,か な り困難であるとするも のがあわせて57%ほ どで厳 しい。株式の公 開について考 えたことがないが45.6 %と 多い。新規事業 に対する技術獲得方法 は全面技術導入 し,自 社向けに改良
100 冨 田光彦教授退官記念論文集 (第334号) が24.10/0と相対的に多い。将来 目指す企業 タイプは専門企業が51.9%を 占め多 い。設立後年数は20∼40年に55.7%が 入 つている。 つ ま り下請企業は設立後20∼40年になるものの,親 企業次第の側面が強いよ うで,取 引先の海外展 開で需要が減少 によ り影響 され,売 上高 も経常利益 も減 少 している ものが多い。人材確保の見通 しが厳 しく,研 究開発,海 外進出,株 式公 開 も眼中にない。新規事業への取 り組みは具体的なものはないが探 してい る状況で,特 許等 はな く,技 術 は全面導入 し,自 社向けに改良するとしている。 将来は専 門企業 を志向 している企業 といえよう。 現在 の企業 タイプを伝統 ・老舗企業 とした伝統企業は,前 に見 た家業型企業 についでそ もそ も数が少 ない。そ して今後 5年 間の売上成長率の目標 は10∼20 %と するものが42.1%を 占め 目立 っている。技術 は一部技術導入が過半 を占め 多い。社長 と創業者 の関係 は本人 とす る ものが5,3%と きわめて少 ない。代替 わ りを遂げているか らであろう。設立後年数は50年超が63.2%と 圧倒的に多い。 つ ま り伝統企業 は創業者離れをしてお り,一 部技術導入にみ られるように着 実 な経営 を展 開 し,安 定的な業績 をあげ続 けている企業 といえよう。 現在 の企業 タイプを専 門企業 とした専 門企業は,最 新決算期の経常利益が 1 億 ∼ 5億 円未満 とする ものが34%を 占め多い。従業員数は100∼499人が55.3% を占め多い。大企業 との関係 はライバル関係 にあるとするものが42.6%と 多い。 重要な経営 目標 は新製品開発 とコス トダウンが双方 ともに多 く,両 立 を目指そ うとしているようである。 つ ま り専 門企業は中堅企業 といって もよい規模 となってお り,大 企業 とのラ イバル意識が強 く,新 製品開発 もコス トダウンも日標 に掲 げてそれな りの業績 も残 している企業 といえよう。 I V 経 営戦略の特性 と新事業展開の特徴 I V - 1 新 規事業件数別 -0件 , 2件 , 4件 新規事業件数が 0件 とする 0件 企業は,今 後影響 を与える環境変化 として国 内企業 との競争が激化 を第 1位 にあげた ものが37.1%,3位 までにあげた もの
が68.6%と 多 くがあげている。最重視する事業構造の転換 として既存の事業内 容 を転換せず,本 業 を充実が35.7%と 多い。そ して当然のことなが ら新規事業 にかかわる質問への回答 は低調である。社長の性格 に近い三武将 として54,3% の ものが徳川家康 をあげて目立 っている。 つ まり0件 企業 は国内企業 との競争が激化 しているものの既存の事業内容 を 転換せず,本 業 を充実 し,専 門企業 を目指そ うとしている企業 といえよう。 新規事業件数が 2∼ 3件 とす る 2件 企業は,新 規事業 に取 り組むことになっ た理由ない し動機 として,競 争 を避 け,独 自性 を強め,個 性的な会社 に変化 さ せ るため を47.1%が ,技 術革新や情報化で需要や市場が変化 を39.70/0のものが あげて 目立 っている。最 も力 を入れている新規事業分野 としてその他 を26.5% があげて多い。新規事業の展 開で今後障害 になることとして,52.9%が 顧客や 市場 に関す る情報 の不足 をあげている。不足 している人材の確保法 として社内 で養成 しているを52.9%,新 卒採用 を増やす を36.8%な ど様 々な確保法 を取 っ ている。 つ ま り, 2件 企業は競争 を避け,独 自性 を強め,個 性的な企業 を目指 し新規 事業 に取 り組んで商品化 もはか りつつある ものの,不 足 している人材の確保 に 様 々な方法で対処 している企業 といえよう。 新規事業件数が 4件 以上 とす る 4件 企業 は,大 企業 との関係 は共同研究 ・共 同開発 を行 っているの53.8%,技 術提携 を行 っているの34.6%が 目立 って多 く 積極的である。最重視する事業構造の転換 にして も既存の事業内容 を転換せず, 本業 を充実 とす る消極的姿勢 をとるものは皆無である。最 も重要 と考 える海外 進 出戦略 として現地企業 とのなんらかの協力関係 を確立 をあげるものが38.5% と多い。新規事業の うち撤退 ・中止件数は 2∼ 3件 が26.9%と 相対的に多 く, 逆 に 0件 は46.2%と 相対的に少 ない。新規事業件数が多ければ撤退 ・中止件数 も多 くなるとい うことであろう。新規事業 に取 り組 むことになった理由ない し 動機 として組織風土の活性化 ・企業家意欲の喚起 ・将来の成長機会の確保,既 存の主力事業の成熟化 ・不況化 をあげるものが ともに46.20/0と多 く目立 ってい る。 また,事 業活動か らの副産物 ・技術 ・アイデア ・ノウハ ウの事業化が38.5
1 0 2 冨 田光彦教授退官記念論文集 (第334号) %と 相対的に多 くなっている。新規事業への取組状況は主力ではないが,商 品 化 しているが61,5%を 占め際立 って多い。最 も力 を入れている新規事業の現状 は研究開発 中とするものが38.5%と 多い。新規事業の展開で今後障害 になるこ ととして新 しい商品開発や取引 に必要な人材不足 を65。4%が あげて目立ち,従 来の販売ルー トが使 えないを42.3%の ものがあげて相対的に多い。最 も不足す る人材の専 門分野 として研究開発 関係 をあげるものが76。9%と 際立 って多い。 不足 している人材の確保法 として友人 ・知人 ・先生 に紹介 を依頼 しているが38.5 %と 相対的に多 く目立 っている。その確保の見通 しは頑張れば何 とかな りそう で あ る が 61.5%と 多 い 。 新 規 事 業 資 金 の 調 達 先 と して 民 間 金 融 機 関 (VC以 外)73.1%,内 部資金65。4%が 多 く,資 金需要の強 さが うかがわれる。 つ まり, 4件 企業は新規事業に積極的に取 り組んでお り,大 企業 と技術提携, 共同研究 ・共同開発 を行 ってお り,海 外現地企業 とも協力 し合い,撤 退 ・中止 もい くつかあるものの,経 常利益 は増加 している。新規事業の取組み理由には 組織風土の活性化 ・企業家意欲の喚起 ・将来の成長機会の確保 ならびに既存の 主力事業の成熟化 ・不況化 などをあげ,商 品化 も進んでいる。障害 として人材 不足や販売ルー トがある ものの頑張れば何 とかな りそ うとしている。資金 も民 間金融機関や内部資金で対応 してやっていける企業 といえよう。そ して新規事 業展 開の強み も課題 も最 もシャープに現れている企業 といえよう。 Ⅳ-2 研 究開発費比率別 -0°/o, 1%, 5% 売上 に占める研究開発費の比率が 0%と する 0%企 業は,最 新決算期の経常 利益 が 0∼ 1,000万円未満 とす る企業が37.5%を 占め 目立 っている。逆 に 1億 ∼ 5億 円未満 とする企業は10%と 相対的に少ない。つ まり経常利益があまりあ が っていないのである。 また,過 去 3年 間に比べた最新経常利益が減少 してい る とす るものが45%を 占め多い。所属する産業分野 として鉄鋼 ・非鉄 ・金属加 工 をあげる ものが22.5%と 多い。重要な経営 目標 として新製品開発 をあげるも のは 3害Jにす ぎず,従 業員の処遇の向上 を350/0があげて相対的に多い。新規事 業への取組状況 として具体的なものはないが,探 しているとするものが35%を
占め多い。また,最 も不足す る人材の専門分野 として研究開発関係 をあげるも の も3割 と相対的に少 ない。新規事業 に関す る技術獲得方法 として全面技術導 入 し,自 社向けに改良を25%が あげて多い。社長の条件 として重要 と思われる もの として統率力 をあげるものが 5割 を占めて相対的に多い。新規事業の リー ダー として望 ま しい タイプとして織 田信長 をあげるものは17.5%に す ぎない。 現在 の企業 タイプは下請企業が67.5%と 圧倒的である。将来 目指す企業 タイプ として研究開発型企業 は15%に す ぎない。 まさに研究開発費比率 0%の 特徴が よく現れているところといえよう。設立年 として1950年以前 とす るものは 5% にす ぎない。設立後年数は20∼30年とするものが 3割 を占めて多い。 つ まり0%企 業は下請企業で,鉄 鋼 ・非鉄 ・金属加工 に属する企業 を多 く含 み,新 規事業や新製品開発 をは じめ積極的な経営活動 にあまり取 り組んでお ら ず,業 績が よくない上 にジリ貧状態 にある企業 といえよう。 売上 に占める研究開発費の比率が 1∼ 30/0未満 とする 1%企 業 は,所 属する 産業分野が繊維 ・同製品製造が19.6%と 多いほかは目立 った特徴 は何 もあがっ てこなかった。 売上 に占める研究開発費の比率が 5%以 上 とする 5%企 業は,所 属する産業 分野 として化学工業 ・医薬品製造が19。1%と 多い。これ ら産業では研究開発活 動がその存続 を左右するか らであろう。重要な経営 目標 として新製品開発 を80.9 %が あげ際立 って多い。最重視する事業構造の転換 として本業 に関連する新規 分野 に主力転換が25.5%と 相対的に多 く,既 存の事業内容 を転換せず,本 業 を 充実 とす る ものはほ とん どない。新規事業への取組状況 として具体的なものは ないが,探 しているとす る ものは4.3%に す ぎない。特許は取得済み も申請中 も0件 とす るものがそれぞれ 5割 ほ どにす ぎず相対的に少ない。社長の性格 に 近い三武将 として織田信長 をあげるものが31.9%を 占め相対的に多い。現在の 企業 タイプは研究開発型企業が42.6%と 多 く,下 請企業 とするものは12.8%に す ぎない。 つ ま り5%企 業 は, 0%企 業 とは対照的で,研 究開発型企業で,化 学工業 ・ 医薬品製造で多 く,新 製品開発 を重要な経営 目標 とし,本 業 に関連する新規分
104 冨 田光彦教授退官記念論文集 (第334号) 野 に主 力 転 換 を最 重 視 す る な ど, 信 長 的性 格 を もつ社 長 が積 極 的 な経 営 を展 開 して い る企 業 とい え よ う。 V 新 事業展開への政策的インプ リケーション これまでわれわれは滋賀大学産業共同研究セ ンターベ ンチ ャー企業研究会が 実施 した 「滋賀県企業の新 たな事業展 開に関するアンケー ト調査」の単純集計 結果 な らびに 7つ の視点 (社長の性格別,社 長の最長従事分野別,社 長年数別,売 上変 化別,企 業タイプ別,新 規事業件数別,研 究開発費比率別)か らのクロス分析 について 報告 し,滋 賀県企業の新事業展開の実態 とその特徴 を描 き出 し,滋 賀県内にお ける企業の新事業への取組状況やかかえている問題 を明 らかに した。 これによ り新 たな事業展 開に役立つ経営戦略や行政への示唆がある程度示 されたと思わ れる。本節では,こ れ らを総合的に観察 し,新 事業展開さらにはベ ンチャー企 業の創 出 と成長 を促進するための方策 について若干の考察 を加 えてお きたい。 調査 によ り明 らかになったことの第 1は 滋賀県企業の新事業展開の実態は大 きな動 きになっていることである。 重要な経営 目標 として新製品開発 をあげる企業が61%,技 術力の向上が57% で 1, 2位 を占め, 3位 以下 を大 きく引 き離 してお り,こ れ らをあわせて118 %あ る (1社で3つまで選択のため100%を超える)こ とが何 よ りの証左 であろう。 また,最 重視する事業構造の転換 として本業 を重視 しつつ,本 業関連事業への 多角化が43.5%,本 業 を重視 しつつ,本 業 と異 なる事業への多角化が11.2%, 本業 に関連す る新規分野 に主力転換が11,7%,全 く異 なる新規事業分野 に主力 転換 が1.3%で ,あ わせて67.7%あ り,さ らに本業の内部で新 たな市場 を開拓 の15.2%を 加 え,新 たな事業分野への進出意欲が高い といえよう。既存の事業 内容 を転換せず,本 業充実 としたのは16.6%に す ぎないのである。 さらに,最 近 5年 間の新規事業件数が 1件 以上あった企業はあわせて65.9% あ り,な かった企業 は31.4%に す ぎない。 その上,新 規事業への取組状況 として,す でに主力商品化 している10.8%, 主力ではないが,商 品化 している 31.8%,具 体的な製品 ・商品 ・サービスの
販売 を準備 中12.1%な ど,あ わせて54.7%の 企業 は新規事業 に具体的に取 り組 んでいる。そ して具体的なものはないが,探 しているの17.5%も その動 きをし ていると見 られる。関心 はあるが,何 もしていないは5。4%,関 ′亡ヽはないは3,1 %に す ぎない。 さらにいえば,経 営理念 を記 した企業の19。3%が 経営理念の中に技術 。商品 の開発 ・向上 をあげていた事実 もあげ られよう。経営理念から見ても新事業展 開を強 く認識 しているのである。 │ したが って,新 事業展 開を手助 けする,さ らには促進する政策やそれ らを支 える一層の研究の促進がはか られるべ きであろう。 第 2に ,そ の新規事業 とくに最 も力 を入れている新規事業の現状 を眺めると, 投資資金の回収が可能 な段 階 とす る ものが6.3%,生 産設備,販 売ルー トなど を拡張段階が13.9%,商 品化 に成功 し,販 売開始 した段階が20,2%な どはよい として も,研 究開発 中が19.7%,ア イデアが生 まれた段階が10。3%で あ り,新 規事業育成の初期段階が多 く,こ こで も支 えの必要性があることが分かる。 その現在 の売上高が1,000万円以下 とす るものが27.4%,1,000万 ∼5,000万 円以下が10,3%,5,000万 円超が17.9%に す ぎず,ま だ緒 についたばか りであ ることが金額的にも裏付 け られるか らである。 第 3に ,新 規事業の展 開で今後障害 になることは,新 しい商品開発や取引に 必要な人材不足 とする48,4%と ,顧 客や市場 に関する情報の不足 とする42.2% が突出 してお り,政 策努力の対象が この二つに向けられるべ きことを物語つて いるといえよう。人材不足 は研究開発関係が46.6%で 際立ってお り,社 内で養 成や新卒採用 を増やす ことで対応 しようとしているものの,確 保難を訴える企 業のほ うが多 くなっているのである。情報不足 については,本 調査では特 にア ンケー ト調査項 目を設けていないが,国 や地方 自治体,大 学 ・研究機関さらに は各種経済雑誌や組合等か らの顧客や市場 に関する情報の提供があるにもかか わらず,十 分には届いていないように思われる。資金についても17%が その不 足を障害になっているとするが,多 くは民間金融機関や内部資金で調達 し対応 しようとしている。ただ政府系金融機関や政府 ・地方自治体からの補助金を今
1 0 6 冨 田光彦教授退官記念論文集 (第334号) 後 の資金調達先 とす る企 業 もあ わせ て43.9%を 占め てお り,一 定 の役割 を果 た さざる をえない こ とは確 かであ る。 第 4に ,本 稿 で見 た ように,社 長の特性,企 業の特性 ,経 営戦略の特性 によっ て新事業展 開のあ り方が大 きく相違 しているこ とが明 らか になった ことである。 7つ の視 点 ,25の 細分化 された集 団 ご とに観察 してみたが,そ れぞれ に違 いが か な リシ ャー プだった とい わ ざる をえない。 この こ とは きめ細 かい政策的展 開 の必 要性 を物語 る ものであ ろ う。 なお,図 表 は割愛す るが これ ら25の細分化 さ れ た集 団 間 に 5割 以上 の企 業が共通す る組み合 わせ は皆無 , 4割 程度 が共通す る組 み合 わせ は家康 型 と増加企業 ,下 請企 業, 0件 企業 とのあいだで見 られ, また生 産社 長 と10年社長 で,さ らに経営社 長 と20年社長 , 1年 社長 と 1%企 業 間で見 られる。 これ らの間では似通 う傾 向がある もののそれで も依然 として差 異 も観察 されているのである。 第 5 に ,新 規事業への取組状況ですでに見たように,主 力ではないが商品化 しているな ど,新 規事業へ打 って出ているところでは功 を奏 しているといえる。 また新規事業件数が増 えるにつれ,売 上高や経常利益 の増加 につながっている こと,従 業員規模 の拡大 につながっていること,今 後 5年 間の売上高成長率 を 高め, 5年 後の従業員数 を増加 とす るものを多 くしていることがある。 さらに 新規事業件数の増加 は経営 目標 を内向 きか ら外向 きに変え,新 規事業の進展度 を高め,不 足人材確保の見通 しもなん とかな りそ うとさせている。これ らのこ とか ら新規事業への取組強化が望 まれるといえよう。そ しておお よそ同 じこと が研究開発費比率の向上 について も言 えることも指摘 してお きたい。 第 6 に ,新 規事業の失敗率 はそんなに高 くないことも指摘 してお きたい。 も ちろん中小企業 にとって新規事業への失敗が命取 りになる危険性 も併せ持つ こ とではあるが。図表 1に 示 したように最近手がけた新規事業の数 とその うち撤 退 ・中止 した件数 をクロス して示す と,新 規事業 を 1件 で も手がけた企業147 社の うち4 0 社の2 7 . 2 % が撤退 , 中止 した体験 をもっている。 1 件 しか手がけて いない企業では53社中 8社 の15.1%にす ぎないのである。撤退 ・中止が どの程 度 ダメージを与 えたかはつ まびらかではない ものの,ア ンケー トに答 えた企業
図表 1 . 最 近 5 年 間 に手 が けた新規事業 の数 と撤 退 ・中止 した件 数 であ る以上 ,存 続 に影響 を与 えた もので なか った こ とは確 かであろ う。 撤 退 ・中止 の理 由 と してはマ ーケテ ィングカ の欠如 が63。40/0,需要見通 しの 誤 りが51.2%,過 当競争 の発生 が41.5%,技 術 力 ・研 究 開発 力 の不足 が39%, リー ダーの人材不足 が36.60/0,部門員 の能力不足 が31.7%な どがあげ られてい る ところか ら,慎 重 な取 り組 み と政策的支援 に よ り失敗 を最小 限 に しうる もの と思 われ る。 第 7に ,い わゆるベ ンチ ャー企業 の ウエ イ トはか な りあ り,そ の方 向へ の動 きが広 く目指 されてい る こ とであ る。 図表 2に 示 した ように,現 在 の企業 タイプを聞いた ところ,ベ ンチ ャー企業 が 1.3%,ニ ュー ビジネスが0.9%,研 究 開発 型企業が19。3%,情 報 関連企業が 2.2%と なってお り,こ れ らはいわゆ る広 義 のベ ンチ ャー ビジネス と考 え られ, あ わせ て23.8%を 占め てい る。 また 目指 そ うとす る企業 の タイプを聞いた とこ ろ,同 じ図表 2に 示 され てい る ように,ベ ンチ ャー企業が4.9%,ニ ュー ビジ ネスが 1.8%,研 究 開発 型企業 が41.7%,情 報 関連企業 が4.5%と なってお り, いず れ も現在 よ リウエ イ トが高 くなってお り,合 わせ て52.9%で ある。滋賀県 企業 で現在 ベ ンチ ャー ビジネス と答 え る割合 は1.3%に 過 ぎない し,目 指 そ う とす る もの も4.9%に す ぎない こ とは事 実 であ ろ う。 しか し,ベ ンチ ャー ビジ ネスの特徴 と してあげ られ る若 い企 業,研 究 開発 に特化 ,情 報重視 な どを考慮 その うち撤退 ・中止 した件数 0 件 1 件 2 ∼ 3 件 4 ∼ 5 件 無 回答 計 新 規 事 業 の 数 最 近 5 年 間 に 手 が け た 0 件 1 件 4 0 ( 7 5 . 5 ) 8(15.1) 5 ( 9 . 4 ) 53(36。1) 2 ∼ 3 件 4 9 ( 7 2 . 1 ) 1502,1) 3 に, 4 ) 1 ( 1 . 5 ) 6 8 ( 4 6 . 働 4件 以上 12に6.2) 6(23.1) 7(26.9) 1(3.8) 2 6 ( 1 7 . 7 ) 計 1 0 1 ( 6 8 . 7 ) 2 9 ( 1 9 . 7 ) 1 0 ( 6 . 8 ) 1(0。7) 6 ( 4 . 1 ) 1 4 7 ( 1 0 0 . 0 ) 注(1)( )内 の数字 は構成比である。
108 冨 田光彦教授退官記念論文集 (第334号 ) に入れた, い わゆる広義ベ ンチ ャービジネス として考 えるならばそれは現在で も2 3 . 8 % を占め, 将 来はそれが 2 倍 以上 に達する可能性 を秘めているのである。 日本 におけるベ ンチ ャー ビジネスの数 と質の低調ぶ りが声高 に叫ばれること 図表 2,現 在の企業 タイプと目指す企業 タイプ 目 ち 日 す 企 業 タ イ プ 計 情 報 関 連 企 業 研 究 開 発 型 企 業 ニ ュ ー ビ ピ 不 ス ベ ン チ ャ ー 企 業 伝 専 下 家 警 門 請 業 老 型
塞
企企企
業 業 業 業 そ 無 の 回 他 答 現 在 の 企 業 タ イ プ 計 ( 1 0 0 , 0 )2 2 3 ( 4 . 9 ) ( 1 . 8 ) ( 4 1 , 7 ) ( 4 . 5 )1 1 4 9 3 1 0 9 70 ( 4 . 0 ) ( 3 1 , 4 ) 1 5 ( 0 . 4 ) ( 2 1 2 ) ︲ 2 ・ 4︲ ベ ンチ ャー企 業 ニ ュー ビジネス 研 究 開発 型 企 業 情 報 関 連 企 業 伝 統 ・老 舗 企 業 専 門 企 業 下 請 企 業 家 業 型 企 業 他 答 の 回 そ 無 3 ( 1 . 3 ) 2 ( 0 , 9 ) 4 3 ( 1 9 . 3 ) 5 ( 2 . 2 ) 19 ( 8 . 5 ) 4 7 ( 2 1 . 1 ) 7 9 0 5 . つ 18 ( 8 . 1 ) 0 7 ( 3 . 1 ) 1 1 34 2 1 1 1 4 23 3 1 18 1 1 4 3 16 41 6 1 3 1 注(1)( )内 の数字 は構成比である。が多いが,以 上の事実 に目を向けるとき,日 本では欧米でベ ンチ ャービジネス と目される企業が中小企業や大企業の中に埋没 しているといえるのではなかろ うか。ベ ンチ ャー ビジネスの促進策 を考 えるときこの点への目配 りが必要であ ろう。 また図表 2を 観察すると,現 在の企業 タイプと比べて目指す企業 タイプとし て研究開発型企業 と専門企業の両者の増加ぶ りが顕著である。 しか もこの両者 はクロス分析で排他的,つ ま りどちらか一方が 目指 される傾向がある。研究開 発型 を目指 しているのは研究開発型企業,専 門企業,伝 統 ・老舗企業で目立ち, 専 門企業 を目指 しているのは下請企業,家 業型企業で 目立 っているのである。 現在の企業 タイプと目指す企業 タイプが同 じとする企業は30.6%で あ り,残 り の企業 はタイプを変更 しようとしている。顕著 なのが家業型企業であ り,す べ てが変更 を目指 している。下請企業 も同 じ下請企業 とするものはわずか 1割 に す ぎない。 これ らは現在 の企業 タイプが仮の姿 ととらえているのであろう。 こ れ らか ら家業型企業,下 請企業はまず専門企業への転換 を目指 し,そ の他の企 業 タイプはいずれ も研究開発型企業 をその目指す先 として とらえていることが はっ きりす るといえよう。 第 8に ,滋 賀県企業の多 くが現在のあ り方 を意識的かつ意欲的に変えようと していることである。先 に見 た企業 タイプの変更はそのことを何 よりも物語 る ものであろう。 さらに,重 要な経営 目標 として,新 製品開発が61%,技 術力の向上が57%, コス トダウンカ当2.2%,シ ェア ・取引先の拡大が33.6%な どに見 られるように, 回答企業の過半数は内部管理の強化 よりは外部経営 に軸足 をお き,新 規事業ヘ 打 って出る方向で今後の経営の舵取 りを考 えている。最重視する事業構造の転 換 に して も,す でに見たように本業への こだわ りはずいぶん薄れた もの と読み 取れる。 また,新 規事業 に取 り組むようになった理由ない し動機の トップは既 存の主力事業の成熟化 ・不況化が30.5%で あるが, 2番 目は競争 を避け,独 自 性 を強め,個 性的な会社 に変化 させ るためが29.1%, 3番 目は組織風土の活性 化,企 業家意欲の喚起,将 来の成長機会の確保が26.9%か らあげられてお り,
1 1 0 冨 田光彦教授退官記念論文集 (第334号) 環境変化へ受身的に対応 しようとす るよ りは, あ るいは単 なる業績の改善 を志 向 しようとす るだけでな く,会 社のあ り方その ものを変 えていこうとし,そ こ に新規事業 を大 きく位置付 けていることが読み取れるのである。 第 9 に ,ベ ンチ ャービジネスの増強は中小企業の新規事業展開によることが 近道ではないか とい うことである。先 に見 た ように,新 規事業件数が増 えるに つれ,将 来 目指す企業 タイプとして研究開発型企業が上昇 し,専 門企業が下降 す る傾 向がある。新規事業の増加 は,専 門企業化ではな く,研 究開発型企業化 を促進す るのである。 また,研 究開発費比率が高 まるにつれ,研 究開発型企業 とする ものが上昇 し,専 門企業が下降する傾向 もある。つ まり研究費 をかけて 研究開発型企業 を目指 している といえよう。 この ことか らベ ンチ ャー ビジネス 的企業の増大 を目指すならば,既 存の中小企業の新規事業の増加 をはかること や売上高 に対す る研究費の比率 を増加 させ ることが功 を奏することを示唆する ものか もしれない。 そ して この ことは,本 調査で1990年以降設立の企業 はわずか3.6%に す ぎな い こと,開 業率の低迷現象が注 目を浴 び, しか もベ ンチ ャービジネスの新設は さらにそのご く一部 に限 られることに思いをいたすならば,上 記方法でのベ ン チ ャー ビジネスの増強 を促進す る政策的配慮 を考 えてい くことが望 まれるとい えよう。 Ⅵ む すび 以上,わ れわれは,ベ ンチ ャービジネス研究会が行 ったアンケー ト調査の結 果 を利用 して,ク ロス分析 を25の各集団ごとに縦断的に読み取 ることにより新 事業展開の特徴 を指摘 した。その上 にたって これ までの分析 を総合的に とらえ なお し,新 事業展開や さらにはベ ンチ ャービジネスの促進 にかかわる示唆点 を 明示 してみた。滋賀県の企業 はいまや新規事業展開をは じめ として意識的にか つ意欲的に大 きく変わろうとしていることが明 らかになった し,そ れを支え促 進す る政策の必要性 も大 きな ものがあることが示 された と思 われる。