JXTAを用いた自律分散型AnnoteaサーバWasabiの実装
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(2) Vol.2014-IOT-24 No.16 2014/2/28. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. スで管理することにより,ネットワーク変化といったその. ティを持ち,本文であるボディ部リソースまたはそのウェ. 他の要因に左右されない単独でのサービス提供も可能であ. ブアノテーション ID を示す.これらの形式に従ったアノ. る.このように,各サーバが独自に動作しながらも居合わ. テーションを以降,注釈ウェブアノテーションおよび返信. せた他ノードと協調する,自律分散なアノテーション共有. ウェブアノテーションと呼ぶ.. を実現する.動作環境構築の容易さから Java とその P2P. Annotea プロトコルは,上記の形式のアノテーションを. 通信ライブラリ JXTA[4] を選択し,JXTA ネットワークを. クライアント/サーバ間で通信する手順を定めたものであ. 介して Annotea プロトコルのサーバ処理を実装する.情. る.通信の際,アノテーションはに RDF/XML 形式にデー. 報の共有には JXTA の特徴的なリソース広告機能である. タ化される.クライアントは HTTP リクエストを用いて. Advertisement を利用し,効率的にアノテーションを検索. 注釈および返信ウェブアノテーションの投稿/検索/取得. するための手順や ID 生成規則を設計した.. /更新/削除を要求し,サーバは要求に従いデータベース. Wasabi の特徴は,Java プラットフォームによる実行の 容易さ,P2P の特性を活かした自由な共有グループ構築,. を操作する. サーバ処理は大まかに,注釈の投稿と検索,返信の投稿. ローカルデータベース管理によるアノテーション流用の容. と検索,注釈および返信の取得/更新/削除の 3 つに分類. 易さの 3 点によるサービスの運用性である.ユースケース. される.注釈が投稿されると,サーバはそのアノテーショ. には,会議や授業のグループワークなどの際に持ち寄った. ンの各リソースに ID を割り当て,プロパティ部リソース. ノート PC 上で,プライベートなコミュニケーション空間. をその ID と注釈先 URI をキーに,ボディ部リソースをそ. を構築する,という使い方を想定している.また,被災地. の ID をキーにデータベースへ保存する.注釈の検索は,. といった環境下においてアドホック通信を用いてアノテー. 注釈先 URI をキーにデータベースから関係する注釈ウェ. ションを収集しておき,ネットワークが回復した後に外部. ブアノテーションのプロパティ部リソースの一覧を検索. の拠点と情報を共有する,といった使い方も可能である.. し返答する.返信が投稿された際には,同様にリソースに. 2. 関連技術 2.1 Annotea. ID を割り当てたあと,プロパティ部リソースをその ID と 起点 ID をキーに,ボディ部リソースをその ID をキーに データベースに保存する.注釈の検索は,起点 ID をキー. Annotea におけるアノテーションは,作者や作成日時と. にデータベースから関連する返信ウェブアノテーションの. いった注釈行為そのものの情報を持つプロパティ部リソー. プロパティ部データの一覧を検索/返答し,クライアント. スと,その本文を持つボディ部リソースによって構成され. 側で返信先 ID を元にリプライツリーを復元する.注釈お. る.これは,既存リソースの本文への引用を許容するため. よび返信の取得/更新/削除は,ウェブアノテーション ID. である.これらのリソースには,その存在を表現するため. によって指定されたリソースの操作を行う.. の一意な URI が割り当てられる.これを,ウェブアノテー ション ID と呼ぶ.. 以上のように,Annotea によりアノテーションの形式や 処理手順が規定されているが,いくつかの点については明. プロパティ部リソースには 2 種類の RDF スキーマが用. 確化されていない.例えば,ウェブアノテーション ID の. 意されている.ひとつは通常の注釈を表現する注釈スキー. 生成規則は定義されていない.また,返信ウェブアノテー. マ,もうひとつは注釈への返信を表現する返信スキーマ. ションの更新や削除によるリプライツリーの破綻について. である.これらのスキーマは,リソースのウェブアノテー. も議論の余地がある.この点に関しては,返信は起点 ID. ション ID を主語に,特徴的なプロパティを持つ.注釈ス. のウェブアノテーションと同じデータベースに保存すべ. キーマには annotates と呼ばれるプロパティがあり,値と. きといった指針はあるものの,現状では実装者が各自ポリ. して注釈先の情報を URI 形式で持つ.この注釈先情報を,. シーを設定することになっている.. 注釈先 URI と呼ぶ.一方,返信スキーマには,inReplyTo プロパティおよび root プロパティがある.inReplyTo プロ. 2.2 JXTA. パティは返信先の情報を示し,返信対象となっているウェ. JXTA の P2P ネットワークは,Rendezvous ピアと呼ば. ブアノテーションの ID を持つ.これを,返信先 ID と呼. れるスーパーノードによって管理される.Rendezvous ピ. ぶ.root プロパティでは,返信の発端の情報が示される.. アは,既知またはマルチキャストに応答した他 Rendezvous. 例えば,返信の応酬によってアノテーションのツリーが出. ピアと,参加ノードや共有リソースといったネットワー. 来上がるが,そのすべてのアノテーションは root プロパ. ク情報を共有し管理する.JXTA ネットワークには,新た. ティに議論の発端となったアノテーションの ID を持つ.. な Rendezvous ピア,または Edge ピアと呼ばれる既存の. この議論の発端となるアノテーションの情報を起点 ID と. Rendezvous ピアにぶら下がるユーザノードという形で参. 呼び,返信の応酬によるアノテーションの木構造をリプラ. 加する.ネットワーク参加時に任意のグループ名を設定す. イツリーと呼ぶ.また,両スキーマはともに body プロパ. ることで,ピアグループと呼ばれる同じグループ名を設. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. 2.
(3) Vol.2014-IOT-24 No.16 2014/2/28. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 定したノードから共有空間を構築することも可能である.. Edge ピアは,親となっている Rendezvous ピアを介しての. 3.1 リクエスト転送のためのロケーション情報を含んだ ID の生成. みネットワークへの情報発信や検索が可能である.そのた. サーバは Annotea クライアントに対し一つのサービス. め,脱退などにより親ノードが不在になってしまうと,事. のように振舞うが,参照しているアノテーションのデータ. 前に発信し収集していた情報による参照/被参照のみ可能. は実際,複数のサーバのローカルデータベースに分散して. な,孤立ノードになってしまう.. いる.例えば,他のピアが持つ注釈ウェブアノテーション. JXTA の各ピアには,ピア ID と呼ばれる一意な識別子. への更新/取得/削除やそれに対する返信ウェブアノテー. が割り当てられる.ピア ID は,擬似乱数により生成され. ションの操作などの要求は,そのアノテーションを保持し. るバージョン 4 の UUID である.JXTA ネットワークはこ. ているサーバに転送しなければ処理できない.しかしなが. のピア ID を元に管理されており,ピア ID で指定した相手. ら,Annotea プロトコルに従ったリクエストでは,ウェブ. との双方向通信を提供する JxtaSocket など,様々な機能. アノテーション ID によるリソースの指定しか行われない.. が用意されている.. そのため,ウェブアノテーション ID からそのリソースの. JXTA の最大の特徴は,リソースの存在を広告するた. 所在が解析できる必要がある.ここで,ID の生成規則が. めの Advertisement と呼ばれるデータ構造である.Adver-. 定まっていないという Annotea プロトコルの特性を活用. tisement によるリソース広告をピア間で交換することによ. し,ロケーション情報を含んだウェブアノテーション ID. り,ネットワークの構築/管理,リソースの共有が行われ. を設計する.Wasabi におけるリソースの位置は,どのピ. る.Advertisement は,キーと値のセットの集合である.. ア(データベース)の,どのアノテーションの,プロパティ. 発行する際には検索に用いられるキーを任意に設定でき,. 部およびボディ部のいづれかといった情報の組み合わせで. その検索テーブルは JXTA ネットワーク内で構築される. 表すことができる.このアクセス経路はリソースごとに一. 分散ハッシュ上で管理される.注意点として,同じキーと. 意に定まるため,Wasabi では,これらの情報の組み合わ. 値を持つ Advertisement が複数存在する場合には,いづれ. せをウェブアノテーション ID として用いる.. の Advertisement が返答されるかは保証されない.発行さ. データベースを持つ通信相手の指定においては,ピア ID. れた Advertisement は発行元ピアのローカルキャッシュに. が問題になる.JXTA におけるピア ID は一時的なもので,. 保持され,分散ハッシュ上の検索テーブルにその存在が登. P2P ネットワークに参加するたびに新しいものが割り振ら. 録される.Advertisement の検索は,非同期に行われる.. れる.ウェブアノテーション ID の中にピア ID を埋め込. 検索の際にはキーと値を指定したクエリが分散ハッシュ. んでしまうと,都度更新が必要になってしまう.そこで,. 上に送信され,そのクエリは検索テーブルをたどり発行. ロケーション情報として,データベースを指定する.デー. 元ピアに転送される.クエリを受け取った発行元ピアは,. タベースを作成する際に一意な識別子を割り当て,それを. 検索元ピアに対し Advertisement を返答する.返答された. ロケーション情報としてウェブアノテーション ID に用い. Advertisement は検索元ピアのローカルキャッシュに複製. る.代わりに,このデータベース識別子を元にした通信相. され,以降,参照が可能となる.. 手ピアの特定が必要になる.Wasabi サーバは,自分の持. Advertisement はその検索手順からわかるように,リアル. つデータベースの識別子をキーに現在のピア ID を告知す. タイムなデータ共有を提供しない.そのかわり,Advertise-. る Advertisement を発行する.これにより,データベース. ment にはライフタイムを設定可能である.Advertisement. 識別子という静的な情報から,ピア ID という可変な位置. に有効期限を持たせることで,定期的に最新のデータを参. 情報を表現することが可能となる.. 照するような設計が可能である.. 3. Wasabi の設計と実装. 実装の際,データベース識別子には,データベース作 成時にピア ID を流用した.また,データベース内でのア ノテーションの識別には,検索キーとして生成していた. 以降の説明において,Wasabi をアノテーションサーバ. シーケンシャルナンバーを用いた.そして,プロパティ部. として説明する場合はサーバ,JXTA のノードとみなす場. またはボディ部といったリソースの種類を区別するため. 合はピアと呼ぶ.. に,”annotation”および”body”といったデータタイプを表. Wasabi サーバは,Annotea プロトコルに従った処理を. す文字列を定義した.これら三つのロケーション情報を組. 行い,単独でアノテーションサービスを提供する.しかし. み合わせに独自のプレフィクスを付加することで,以下の. ながら,周囲にピアが存在した場合に連動するため,いく. ようなウェブアノテーションが生成できる.. つかの手順が追加される.それは,Annotea クライアント. wasabi : //urn : jxta : uuid − 5961626164. からの処理要求の適切なピアへの転送,注釈先 URI に関. 6162614A78746150325033F 3BC76F F 13C2414CBC. するインデックスの作成/更新と参照の 2 つである.. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. 0AB663666DA53903/149/annotation. 3.
(4) Vol.2014-IOT-24 No.16 2014/2/28. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 3.2 注釈先 URI に関するインデックス. 要になる.しかし Wasabi においては,実装の容易さを優. Annotea プロトコルにおける注釈ウェブアノテーション. 先した結果,以下のような単純な手法を用いている.ある. の検索は,単一のデータベースにおいては注釈先 URI を. サーバが任意の注釈先 URI に関しインデックスの更新要. キーに検索さえすればよかった.しかし,複数のデータ. 求を行う際,その周囲にインデックスが存在しなかった場. ベースが存在する Wasabi において,それらのデータベース. 合,そのサーバがその注釈先 URI のマスターピアに名乗り. すべてを検索することは現実的ではない.そこで Wasabi. 出る.周囲のピアは,先駆者にその注釈先 URI のインデッ. の JXTA ネットワーク内に,注釈先 URI とそれに関連す. ク管理を一任し,ユーザノードとして利用する.マスター. る注釈ウェブアノテーションのプロパティ部リソースの. ピアは,インデックス Advertisement の再発行時といった. ID を紐付ける,検索用のインデックスを作成し共有する.. 定期的なタイミングで,インデックスの利用履歴を元にス. なお,インデックスの肥大化や存在しないデータの参照と. レーブを選択し複製を配置する.. いった無駄な処理を回避するため,ピアの脱退時には自分. しかしこの単純な手法では,複数のマスターが生成され. の持つアノテーションをインデックスから削除し,ネット. てしまう場合がある.例えば,特定のインデックスが存在. ワーク参加時に改めて登録するといった手順を追加する.. しない状況で 2 つのサーバにそれに関する投稿が行われ. インデックスは,注釈ウェブアノテーションが投稿や削. た場合,それらのサーバは同時にマスターピアに名乗り. 除されるたびに更新されるデータである.非同期かつ期限. でてしまう.また,既存のマスターピアが規定時間内に. 付きである JXTA の Advertisement の仕組みでは,イン. Advertisement が返答できないほど離れた位置に存在して. デックスのように可変かつ永続的なデータを共有するには. いた場合にも,その存在を無視してマスターピアが生成さ. 不適切である.そこで,各注釈先 URI に関するインデック. れる.さらに,複数のスレーブピアが同時にマスターピア. スを任意のピアに管理させることで,データのリアルタイ. の応答不能を感知してしまった場合などにも,各スレーブ. ム更新を可能にする.インデックスを管理するピアは,そ. がマスターへの昇格を行なってしまう.複数のマスターピ. の注釈先 URI と自分のピア ID を告知する Advertisement. アが存在してしまうと,検索から期待している応答が得ら. を発行する.その他のピアは,その Advertisement を参照. れなくなってしまう.これに対し,複数のマスターピアが. し,インデックス管理ピアを認知する.注釈ウェブアノ. 存在した場合のマージプロトコルを設計する.. テーションの操作や検索の際にインデックスの更新/参. マスターピアのインデックス Advertisement 再発行時. 照は,このインデックス管理ピアに要求することで実現さ. や,スレーブピアのデータ同期時,一般ピアのインデック. れる.. 更新要求時などに,複数のマスターによるインデックス. 管理ピアにとって,今保持しているインデックス情報は. Advertisement が検出される.検知したピアは任意のマス. そのネットワークでのみ有効なデータであるため,データ. ターピアに対し,マージ要求として衝突しているマスター. ベースなどによる保存は必要でない.しかし一方で,ネッ. のピア ID を通知する.マージ要求を受け取ったマスター. トワーク内の他ピアにとっては必ず保持しておくべきデー. は,衝突しているピアが持つインデックス情報を収集し,. タといえる.ピアの脱退が想定されるべき P2P ネットワー. 自分のインデックスと併合する.その後衝突ピアに対し,. クにおいては,重要なデータの複製といった対策が必要と. スレーブ化要求を行う.スレーブ化要求を受け取った衝突. なる.Wasabi においては,各注釈先 URI のインデックス. ピアは,自分の管理していた各スレーブを開放した後,ス. に対し,マスター/スレーブ型のデータバックアップを形. レーブに降格してインデックスの複製保持を開始する.こ. 成する.上で述べたインデックスの更新などを負い受ける. の処理により,複数存在したインデックスの情報を残しつ. ピアをマスターとし,インデックス情報の複製を保持する. つ,P2P ネットワーク上のマスターピアを一つに保つこ. 任意のスレーブピアを配置する.スレーブは,マスターの. とができる.また,応答時間の問題によって生成されたマ. 指示に従い複製の同期を行い,マスターピアが通信障害に. スターピアはネットワークトポロジ上重要な位置にいると. 陥った際などにその役割を引き継ぐ.インデックスデータ. 言えるため,スレーブピアとして流用することでインデッ. の存在を告知していた Advertisement にはマスターピアに. クスの参照範囲を効率的に拡大させることが可能と考えら. 加え,スレーブのピア情報も掲載しておくようにする.こ. れる.. れにより,特定のピアの脱退といった微小なネットワー ク変化に対する耐障害性を備えることができる.また,ス. 3.3 Wasabi の実装上の特性. レーブの持つ複製の参照を許可することにより,より広域. Wasabi は P2P 上に分散するアノテーションに対し,上. のピアがより早くインデックスを参照することも可能で. 記のような仕組みを用いて Annotea プロトコルのサーバ. ある.. 側処理を実現する.しかしその実装の仕様により,特徴的. 上記のように,インデックスの管理は任意のスーパー ノードによって行われるが,そのノードの選択手法が重. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. な動作をする点がある. はじめに,P2P ネットワークの構築に関して,WAN 上. 4.
(5) Vol.2014-IOT-24 No.16 2014/2/28. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. のノードと LAN 上のノードでの連携がうまくできない. これは,Wasabi が JXTA の共有リソースに対するネット ワークアドレス変換機能を未実装のために起きている.現 状では,JXTA で共有されるノード情報としてプライベー ト IP が収集/広告されることにより,ノード間で TCP 通 信を行う際にアドレスが解決できていない. また,Advertisement の検索について,存在しない Ad-. vertisement を検索した場合に一定の待ち時間が発生する. これは,JXTA の提供する非同期検索を同期的に利用して いるためである.Wasabi は,JXTA ネットワークに検索要 求を発信した後,ローカルキャッシュに Advertisement が 複製されていないか定期的に監視する.Advertisement が. 図 1 4 つのピアから構成されるテストネットワーク. Fig. 1 Test network consisted with four peers. 存在する場合には返答されたタイミングでこの監視処理を 中断するが,存在しない Advertisement はいつまでも応答 されない.そこで Wasabi では,Advertisement 検索にタ イムアウトを定め,規定時間内に返答がない場合を存在し ないとみなす.なお,Advertisement 検索に要する時間は 各ノード間の通信環境にも左右されるため安易に短い時間 にはできず,現状タイムアウトは 10 秒に設定されている.. 4. 動作試験 Wasabi について,自律分散型 Annotea サーバとしての 動作テストを行う.. 図 2. ピア Rdv4,Edge2 が加入したテストネットワーク. Fig. 2 The network that Rdv4 and Edge2 affiliated. はじめに,Wasabi の Annotea サーバとしての動作をテ ストする.プロトコルに従うサーバであれば,同じプロ. して Edge1 が,スレーブとして Rdv1 が選ばれているとす. トコルに従うクライアントから利用可能なはずである.. る.このネットワーク状態は,各ピアが起動しネットワー. Annotea の公式クライアントとして,Amaya[5] が公開され. クが構築された後,はじめに Edge1 その次に Rdv1 の順で. ている.Amaya は,ウェブ付箋機能が付加されたウェブブ. アノテーションを投稿し,スレーブが設定された後その他. ラウザ兼エディタである.このウェブ付箋機能は Annotea. ピアへ投稿することで再現できる.この状態でその注釈先. プロトコルに従っており,外部の Annotea サーバと連携. URI についてアノテーション検索を行った場合,その応答. してアノテーションサービスを提供する.実際に,Wasabi. には db r1 + db r2 + db r3 + db e1 = 19 個のアノテーショ. を単独で動作させこの機能から Annotea サーバとして利. ンが期待される.これを再現した結果,期待通りいづれの. 用したところ,注釈/返信の投稿や検索といった各操作を. ピアからも 19 個のアノテーションが検索された.. Amaya から実行することができた.結果として,Wasabi. P2P ネットワークにおいては,ノードの加入が想定され. が Annotea サーバとして振る舞うことができることが確. る.それらの新規ノードは,アノテーションを保持した状. 認できた.. 態で参加する場合も考えられる.そこで,それぞれ 10 個. 次に,Wasabi の自律分散システムとしての動作をテス. のアノテーションが登録されたピア Rdv4 及び Edge2 を. トする.自律分散システムとは,各ノードが他の要因に依. 事前に用意し,これらのがテストネットワークに加入する. らず自律的に動作しながら,全体で一つのシステムとして. 場合をテストする(図 2) .この場合,Rdv4 及び Edge2 が. 振る舞うものである.Wasabi においては,各サーバがア. 加入時に自分の持つアノテーションをインデックスに登録. ノテーションを相互参照し一様の返答を行う事を指す.. し,db r1 + db r2 + db r3 + db r4 + db e1 + db e2 = 39 個. 以降では,図 1 のようなネットワークにおける動作テス. の検索結果が得られる事になる.テストネットワークを用. トを行う.このテストネットワークは 3 つの Rendezvous. いて再現した結果,39 個のアノテーションを既存ピア及び. ピアと 1 つの Edge ピアから構成され,計 4 つのデータベー. 新規ピアの両方から参照できた.. スが存在する.各データベースにはある注釈先 URI に対. 加入と同様,ピアの脱退についても想定する.Wasabi. して,db r1 には 1 個,db r2 に 3 個,db r3 に 5 個,db e1. においては,インデックス管理ピアなど,脱退するピアに. に 10 個のアノテーションが登録されているとする.また,. よってその動作が異なる.. その注釈先 URI のインデックス管理ピアには,マスターと. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. はじめに,テストネットワークの Rdv2 のような,イン. 5.
(6) Vol.2014-IOT-24 No.16 2014/2/28. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Rdv1 を同時に脱退させた場合,検索の際にインデックス が参照できなくなり,すべてのアノテーションが参照でき なくなった. このように,想定される状況を再現したネットワークに おいて,ピアの加入や,マスターやスレーブといったイン デックス管理ピアの参照など,設計上想定通りの連携や相 互参照が行えていることが確認できた.. 5. まとめ 図 3. ピア Rdv3 が脱退したテストネットワーク. Fig. 3 The network that Rdv3 resigned. 本論文では,既存の P2P によるアノテーション共有手法 を応用し,P2P ネットワークを介したサーバ間アノテーショ ン相互運用が可能な自律分散型 Annotea サーバ Wasabi を. デックス管理に携わっていない一般ノードの脱退を考える.. 実装した.アノテーションを各サーバのローカル上に保持. これらのピアは,自分の持つアノテーションをインデック. することにより,ネットワーク状況に依らない単独での動. スから削除し脱退するため,単純に参照できるアノテー. 作を可能にする.また,居合わせた不特定多数のサーバか. ションが db r1 + db r3 + db e1 = 16 個に減る.この結果. ら P2P ネットワークを構築させることにより,通信先な. は,テストネットワークでの再現でも確認できた.. どの指定を必要としない自動相互参照を実現する.実装に. 次に,Rdv1 のようなスレーブの脱退を考える.この場合. は,Java 及びその P2P 通信ライブラリ JXTA を用いた.. インデックスのバックアップが消失するが,マスターデー. 複数のサーバ上に散在するアノテーションを効率的に検索. タによりサービスが維持される.結果,一般ノード脱退と. するため,P2P ネットワーク内で検索キーごとのインデッ. 同様に検索結果の減少(db r2 + db r3 + db e1 = 18 個)の. クスを共有する仕組みを設計した.また,ロケーション情. みに留まると予想される.この状況も同様に再現し,予想. 報を埋め込んだ ID を設計し,指定されたアノテーションへ. 通りの結果を確認した.. のアクセスと操作を可能にした.その結果,Annotea サー. 最後に,マスターが脱退した場合を考える.テストネッ. バを自律分散システム化することができ,動作試験で示し. トワークから Edge1 が脱退すると,インデックスのマス. たように,複数のサーバが独自に動作しながらも連携して. ターが消失する.この場合,スレーブである Rdv1 が昇格. サービスを提供することが可能となった.. しインデックス管理の役割を受け継ぎ,インデックスは保. Wasabi では実装の簡単化のため,いくつか簡素な設計. 守される.つまり,マスター脱退による影響は検索結果の. を行なった.例えば,インデックスの管理を行うピアは,. 減少(db r1 + db r2 + db r3 = 9 個)のみと想定され,再. ネットワークトポロジ上の位置や持続性などの評価の上で. 現テストにおいても同様の結果になった.. 慎重に選択されるべきである.また複製やマージといった. また,マスターの親ノードの脱退によっても,マスター が機能不全に陥ると想定される(図 3) .親ノード Rdv3 の. その管理手法についても,より多様な状況を考慮し改善し ていく余地があると考えている.. 脱退により,マスター Edge1 は Advertisement といった 共有データの発行/検索ができなくなる.Rdv3 脱退以前. 参考文献. に発行した Advertisement が有効な間はマスターとして動. [1]. 作可能であるが,期限が過ぎると他ノードから参照不能に なる.その後,スレーブが昇格しインデックスを保守する. この想定に従うと,Rdv3 脱退直後には単なるノード減少 (db r1+db r2+db e1 = 14 個)に見えるが,Advertisement. [2]. 失効による Edge1 の孤立後には db r1 + db r2 = 4 個の結 果に落ち着くと予想される.実際にこの状況を再現し何度 かテストした結果,Advertisement の失効タイミングによ. [3]. り差異はあったものの,参照できるアノテーションが 14 個から次第に 4 個に減少するという結果が得られた. これらの脱退したピアは,図 2 と同様に一般ノードとし ての再参加が可能であり,その動作確認した.また,マス ターとスレーブが同時に脱退する場合には,インデックス の消失は免れない.テストネットワークから Edge1 及び. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. [4] [5]. Wolfgang Nejdl, Boris Wolf, Steffen Staab and Julien Tane.: EDUTELLA: Searching and Annotating Resources withinan RDF-based P2P Network, P2P network 11th International World Wide Web Conference, Sematic Web Workshop (2002). Giovanni Tummarello, Christian Morbidoni, Joakim Petersson, Francesco Piazza and Paolo Puliti.: RDFGrowth, a P2P annotation exchange algorithm for scalable Semantic Web applications, First P2PKM Workshop (2004). Jos´e Kahan, Marja-Riitta Koivunen, Eric Prud’Hommeaux, and Ralph R. Swick.: Annotea: an open RDF infrastructure for shared Web annotations, Proceedings of the 10th international conference on World Wide Web (2001). Li Gong: JXTA: a network programming environment, Internet Computing, IEEE (2001). Amaya Home Page, http://www.w3.org/Amaya/.. 6.
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