164 (21) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ヒ ダイ . ヒロ コ日基裕子(昭和38
博士(医学)「 甲第230号平成5年3月19日
学位規則第4条第1項該当(医学研究科専攻,博士課程修了者)
骨髄腫におけるP53遺伝子の解析
(主査)教授 溝口 秀昭 (副査)教授 丸山 勝一,笠島 武論文 内 容 の 要 旨
目的 p53遺伝子は癌抑制遺伝子と考えられており,様々 な腫瘍において変異が認められている.本研究は,骨 髄腫の発症,進展におけるp53遺伝子の関与を明らか にすることを目的として,遺伝子の変異を検索した. 対象および方法、 骨髄腫患者17例の骨髄,末梢血あるいは胸水から得 られた骨髄腫細胞を検索の対象とした.そのうち13例 で染色体分析が可能であった.抽出したゲノムDNA を用いて,p53遺伝子のエクソン5~6,7,8の領域 についてpolymerase chain reaction-sihgle strand conformation polymorphism(PCR・SSCP)解析を行 い,泳動度に異常を認めたものについては,塩基配列 の解析を行った. 結果 検索した17例中1例において,PCR・SSCP解析で p53遺伝子の変異が検出された.その例は形質細胞性 白血病症例であった.塩基配列の解析の結果,エクソ ン5に1塩基の欠失とそれに伴うframe shiftが同定 された.しかし,この変異は病初期の検体では見られ ず,末期の腫瘍細胞にのみ認められた.なおこの例は 染色体分析でp53遺伝子座のある第17番染色体のモノ ソミーを認めた. 考察 骨髄腫症例ではp53遺伝子め変異は低頻度であり, 腫瘍の発症には不可欠ではないと考えられる.しかし 形質細胞性白血病において,p53遺伝子の変異が病期 の進行に伴って認められることから,一部の骨髄腫の 進展に関与している可能性が示唆された. 結論 骨髄腫においてp53遺伝子の解析を行い,17例中1 例に変異を認めた.骨髄腫における・p53遺伝子の変異 の頻度は低いが,変異を認めた症例では病期の進行に 伴って変異が起こつでいることから,腫瘍の進展に関 与していると考えられる. 一798一165