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ビタミンB6軟膏による2∼3の皮膚疾患の治験
東京女子医科大学皮膚科教室(主任申村敏郎教授)高 木
タカ ギ 干 枝 チ 調 子1 コ(受付昭和32年10月10同)
緒. 言
ビタミンB6(以下V. B 6と略す)は, Goldberger 及びLillie(1929)}こより抗ペラグラ因子として, はじめて研究報告されて一般の注目を浴びたが, さらにP.Gy6rgy(1934)の研究の結果はラット のペラグラが人間のペラグラとは全く別箇のビタ ミン欠乏症であることを証明し,これを治癒せし める因子をV.B6と命名した。その後Keresztesy, Gy6rgy, KuhnによりB6塩酸塩の分離抽出に成 功し,Gyδrgy, Echhardt(ユ939)はこの化合物に ピリドキシンなる名称を与えた。 V.B6の生体に対する作用については,いまだ 不明の点が多いが,現在では,V. B6は生体内で 燐酸エステルの形で,諸種のアミノ酸の酸化合成 にあずかる補酵素として,蛋白代謝に重要な関係 を有していると老えられている。 特にV.B6は皮膚科領域において, Spies(1939) はペラグラに,Smith(1940)は口角炎に, Jolliffe (1942)は尋常性座下に,Wright(1943)は脂漏 性皮膚炎などに使用し,また,わが国では井上が 慢性蒙麻疹,慢性湿疹に,高田は乳児脂漏性湿疹 に,安田は蒙麻疹性苔癬様皮膚変化,ライネル紅 皮症,妊娠痒疹に応用した。その他小島,小掘, 飯田,松本らの使用報告があるが,これらすべて はV.B6の全身的投与である。ところが,1952年 Schreiner&Slingerは23例の脂漏性皮膚炎のう ち,6例に終始1%ピリドキシン軟膏の塗布のみ を継続し,その結果ピリドキシン300mgを4週間 1毎日内服,または600∼1000皿9のピリドキシンを 3週聞注射せる例よりも全例において,遙かによ く5∼12日で奏効したと記載している1)。また, 我国でも脂漏性皮膚炎に対するV.B6の局所的応 用としては,馬揚及び広渡等による二つの報告が ある。 私達も武田製薬会社より,V. B6含有軟膏の提 供を受け,これを脂漏性皮膚炎:その他1∼2の皮 膚疾患に使用し,顕著な成績を得たので,ここに 報告する。 試用薬及び使用法 使:用した薬剤は,1∼2%の割合にV.B6を含 有するバニシングクリーム(B6−Vと略す)及びコ ーー泣hクリーム(B6−Cと略す)型の軟膏で,1日 2∼3回局所に塗布せしめた。また症例のあるも のでは,局所に塗布し,さらに電熱マスクを併用 して効果の増強を図った。 症 例 使用例は,表に示す如く,油性脂漏20例,尋常 性平時18例,脂漏性湿疹6例,頭部紙糠疹6例, 酒鍍5例,肌あれ4例,あぶら顔3例,顔面湿疹 1例,乾性脂漏1例,口唇のあれ1例,合計59例 で,著効26例,有効26例,不明7例,不良エ例の 結果を得た。 以下表に示せば表1の通りである 総括及び考按 V.B6は,今目まで皮膚科領域1とおいてV.B1, V.B2などと共に内服,注射の形で広く用いられ て来たが,相当:量の使用にもかかわらず,余り効 果のみられない場合もあるが,脂漏性皮膚炎には, 比較的有効のように思われたので,局所使用に当 っても私は主として脂漏性皮膚炎をはじめ尋常性 座瘡:,酒蚊,皮脂漏など,皮脂腺関係の疾患を選 んだのである。親水軟膏を基剤とせるB,一Vは,主Chieko TAKAGI (Dept. of Dermatology. Tokyo Women’s Medical Co]lege) : Treatment of several’
skin−diseases with vitamin−Bc, ointment.
72 表1 (B6“一Vの場合)
雛1性
ミ1121i♀
5 6 7 8i 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 ・35 36 37 38 39 40 41 42 2[259119
21ftl i 43 1 44 24 32 43 26 33 21 20 26 23 42 19 24 25 22 25 23 27 34 19 20 25 23 19 18 27 24 29 31 28 27 24 21 22 20 23 21 23 26 24 209
9
9
9
9
8
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9
9
8
9
9
9
9
9
診 断 脂漏性湿疹 尋常性座瘡 酒 鍍 尋常性痙瘡 尋常性三三 油性脂漏 油性脂漏 油性脂漏 油性脂漏 尋常性座瘡 7副生月旨漏,尋常姓・痙瘡 酒 簸 尋常性座瘡 酒 鍍 尋常性座瘡,面飽 油性脂漏,尋常性痙瘡 お化粧下 油性脂漏,尋常性座瘡 油性脂漏,尋常性座瘡 油・1生月旨漏,尋常」1生痙瘡 油性脂漏 酒 鍍 尋常性座瘡,面鍍 油性脂漏 油性脂漏 尋常性座瘡 尋常性痙瘡,赤鼻肌あれ
尋常性日直 あぶら顔 脂漏性湿疹 油性脂漏 油性脂漏 尋常性座瘡,肌あれ 尋常性痙瘡 油性脂漏 油性脂漏 油性脂漏 酒 簸 油性脂漏 あぶら顔 尋常性座論,面鍍 あぶら顔 油・1生月旨漏,二四使用方法
盤
tt tl 〃電気マスク tl It rl rl tl 〃電気マスク 〃電気マスク tl 〃電気マスク rl 〃電気マスク 〃電気マスク 11 rl電気マスク 〃電気マスク t/ fl 電fi・?スク 電気vスク 電気マスク 塗擦電気マスク t/ Il il t/ t/ tl rl tl tl rl r/ rl tl tf r/ t/ tt t/ rl r に油性脂漏20例,尋常性座瘡18例,興野5例,あ ぶら顔(皮脂漏の軽度なるもの)3例,肌あれ2 例,脂漏性湿疹2例に用いた。 使用数量59
59
59
30 gsg
sg
59
59
59
109 15 gsg
lo g59
15 g 10 gsg
15 g 15959
59
5g
.5959
10 gsg
10 gsg
sg
sg
sg
sg
sg
sg
sg
sg
sg
sg
59
59
59
59
59
5g
副作用 (一) (一) ・(一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一? (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) ・ (一) (一) c一) (一) c一) c一) c一) c一) c一) c一) c一) (+)罐なか c一) (一) (一) (一) (一) 併 用 療 法 エストロパン VB2エスbロバン EPホルモン エス〉ロバン’,ヘキセルミン VB2, VK VB2,ヘキセフレミン ニベナeノレ エスbロバシ エストロパン,ヘキセルミン エストロパン,VB2 エス〉ロバン,EPホ7レモン VB.o EPホルモン,エスbロパン ヘキセ7レミン,エス〉ロバン B2,二ベナール エストロパン,VB2 エストロパン,ビフロキシン エス〉ロバy エストmノぐン VB2,オバホルモン エス}mパン エス1・ロパン ノ、Ptビタ ヘキセルミン エストロパン ノ、rビタ BB,ノ、一ビタ エストロパン 判定 良 良 著効 著効 良 良 著効 良 良 甲 州野 良 良 著野 良 良 良 著効 良 良 不明、 不明 不明 良 著効 著効 著効 不明 良 良 著効 著効 著効 著効 良 良 良』 不良 不明 不明 良 良 著効 著効 B6−V使用症例44例中,著効15例,有効22例, 不明6例,不良1例であった。 著効16例中には,油性脂漏7例,尋常性痙瘡4 一 780 一73 表ll (B6・一Cの場合) 症例 1 2 3 4 5 6 7’ 8 9 10 11 12 13 14 15 年令 性 E?
8
9
9
?9
9
9
9
9
s・s
9
一?9
診 断 頭部枇糠疹 脂漏性湿疹 脂漏性湿疹,頭部三二疹 リボフラピン欠乏症肌あれ
口中のあれ 顔面湿疹 頭部枇糠疹 乾性脂漏 頭部枇糠疹 頭部枇糠開 頭部枇糠尽 目旨漏il生湿疹 肌あれ,毛孔拡大 脂漏性湿疹 使用方法塗擦
e a e e ,rl tt tt It tt rl tt It tl ll 使用数量59
10 g 10 g59
59
59
59
10 gsg
sg
sg
sg
sg
109 10g 副作用 (一) (一) (一) (+)’P,’w6 (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) (一) 併 用 療 法 スロン,コーチゾン錠 VB2,ヘキセノ?ミン VB2ジヘキセ7レミン 工琴hロパン ビフロキシン 判 定 著効 著効 著効 良 良 著効 良 著効 著効 著効 著効 著効 不明 良 著効 例,酒rw 2例,脂漏性湿疹1例,あぶら顔1例, 肌あれ1例であった。 皮脂漏の効果の著しかった例においては,B6− V使用後1週間後には,前額部,頗部,三宮溝な どの皮脂の分泌が減少し,紅斑,丘疹など炎症症 状も軽快し,2週間後皮膚が滑らかになった。 また酒醸で殊に鼻部や鼻翼の紅斑と座面の発生 せる例においてはB 6−V使用により皮脂分泌減少 し,紅斑や座臥も減少して良い結果を得ている。 皮脂漏のみを主訴とする所謂あぶら顔において も他のクリーム類を一切やめて,B 6−Vのみを1 日2∼3回使用すると,皮脂の分泌は減少し,滑 らかになった。また皮脂分泌過剰のため三部,頬 部の毛孔の拡大せる例においてもB6−V使用を継 続することにより,皮脂分泌減少を認めている。 コールドクリーム(B6−C)使用例は,頭部枇糠 疹6例,脂漏性湿疹4例,顔面湿疹1例,乾性脂 漏1例,リボフラビン欠乏症1例,口唇のあれ, 肌あれ各1例で,その中著効を示したものは,頭 部枇糠疹6例,脂漏性湿疹3例,乾性脂漏1例, 口唇のあれ1例であった。 頭部枇糠疹においては,B6−C 1∼2週間使用 後著明にふけの減少が見られた。 乾性脂漏においてもB6−C 2週間後で,皮脂分 泌減少し,軽快した。 脂漏性湿疹においては,B6−C使用後1∼2週 で,紅斑,落屑,痂皮消失し,3週間後において 全快した。また使用後最:初しみるような痛みを訴 えたものも2∼3あったが,.格別増悪することも なく,4∼5日で紅斑,痂皮消失し治癒に向つ た。 また顔面湿疹やリ、ボフラビン欠乏症にみられる 耳や口の鞍裂や痂皮の著明な例においても,使用 後2∼3週で軽快した。また口唇のあれにもB6− C奏効したようである。 さて,B6−CとB 6−Vとの使い分けについて は,辱一般にB、一。の方は,頭部三三疹脂漏性湿 疹で,痂皮を生ぜる例において奏効し,皮膚科的 にみて軟膏型を適応とする場合に一致する。 これに反し,B6−Vの方は,主に顔面で皮脂分 泌過剰で,油性脂漏,酒蚊,尋常性座瘡に対し, 皮脂分泌抑制作用が顕著で有効に作用した。この 揚合B6−Cの如く強く油脂性のものを使用するこ とは,一般に皮脂漏に座瘡を誘発する危険があ る。したがってバニシングクリームを基剤とした ものを用いることが正しく,また有利であるQ また外来に通院可能の患者においては,特殊の 処置としてB6−Vを顔面に塗ってその上から電熱 マスクを20分間当てて加温し,治療効果の増強を 図り,これを1週に2∼3回の割合で2∼3週間 継続した。この症例においては,全く脂漏性発疹, 座瘡消失し,その後の皮膚は皮脂の分泌も減少し て滑らかに殆んど全快した揚合も経験している。 なお,疾患という程ではないが,あぶら顔の人 一781一74 でB6−Vを所謂化粧クリームとして常用している 揚含,また基礎化粧料としてお化粧下に用いてい る揚合も,2∼4週間使用後にはお化粧ののりも 良く,皮脂も減ったと訴えている。 さて,以上の臨床実験からVB6の奏効機序を 老えてみるのに,Schreiner&Slinger1)の記載 によれば,ピリドキシンの代謝拮抗物質である 4一デスオキシーピリドキシンを与えた患者におい て,乾性の脂漏性皮膚炎と同様な皮膚炎:の発生を 認めた。この際生じた皮膚炎にピリドキシンの内 服叉は注射,または軟膏基剤19に対し10mgのピ リドキシンを含む軟膏を局所的に用いて速やかに 治癒したということで,この結果から脂漏性皮膚 炎は皮膚面においてのピリドキシンが局所的なi新 陳代謝の欠陥で不足を来した場合に現われること を指摘して,この揚合ピリドキシン軟膏での補給 が有効に作用することを認めている。また本邦に おいては馬揚2)は脂漏性皮膚=炎に1%のVB6軟 膏を局所的に使用しての結果から,VB6の皮脂 分泌抑制作用については,ビリドキシンが補酵素 として働くピリドキシン燐酸の形で脂肪代謝に作 用するのではないかと述べ,とくに脂漏性皮膚炎 においては,皮膚の局所における脂肪代謝異常が VB6の要求量を高めるものとも考えているので ある。 また,これに対し教室の桑野は動物実験におい て組織学的にVB6の外用が,皮脂腺の肥大を抑 制し,角質を除去する作用のあることを認めそい る。.(未発表) 結 ・・論 1)私はB6一バニシングクリーム(B6−V), B6一 コ・一ルドクIJ] 一一ム(B6−C)の2種の型を用いて 2∼3の皮膚疾患について臨床実験を試みた。 2) B6−Vは,油性脂漏,尋常性座瘡,酒破,あ ぶら顔に,B6−Cは,頭部枇糠疹,脂漏性湿疹, 乾性脂漏に用い,かなりの効果をおさめた。 3) B6の局所的投与は皮脂の分泌抑制作用の他 に,皮膚に滑沢さと適度の潤いを与え,中年以後 の肌あれにも奏効する。. B6−V使用に際して,電熱マスクを併用したこ とは,とくに効果を高めたようである。 4) B6の皮脂分泌抑制と角質除去作用の機序に ついて考察した。 主要文献
1) Sehreiner, A.W., Slinger, W., Hawkins,
V.R. and Vilter, R.W. : J. Lab. & Clin. Med. 40, 121・一一30 (1952)
2)馬場・岩崎・大江:臨二形,9,9(昭30) 3)竹田:皮と泌,17,3(昭30)