• 検索結果がありません。

大腸癌の外科的治療 : 特に括約筋温存手術と肝転移の治療について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "大腸癌の外科的治療 : 特に括約筋温存手術と肝転移の治療について"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

教育講演

大腸癌の外科的治療

〔東女医大誌 第63巻 第4号頁326∼334平成5年4.月〕

一特に括約筋温存手術と肝転移の治療について一

東京女子医科大学 第二外科学  ハマ   ノ   キヨウ   イチ

 浜 野  恭 一

(受付 平成5年1月14日) Snrgical Treatment of Color母cta亘Canc6r:With Special Mention of     Spllincter・Preserving Operation and Liver Metastasis         Kyoiclli HAMANO. Department of Surgery II, Tokyo Women’s Medical College   In surg韮cal treatment of colorectal cancer, among the greatest problems are sphincteゴpreserving operation(SPO)for rectal carcinoma and treatment of liver metastasis. I have studied my personal experience of surgically treating 1,876 cases of coloreρtal cancer with special interest on these two points.   .Anterior resection(RR)is presently the nearest to idea董among various methods of SPO. The author has demonstrated that the distant results after RR are no worse than those after abdominoperineal rectal amputation(Nliles’operation), even for lower rectal carcinoma cases. I have also shown.that RR is now an easy and safe technique with histrumental anastomosis, especially with dOuble stapling t㏄hnique(DST).   Liver血etastasis is a frequent complication of colorectal carcinoma. This may develop meta・ chronously after a curative operation and deteriorate§survival rates along with local recurrence. I have studied various therapeutic modalities for it including hepatectomy. It must be emphasized that the most effective treatment comprises first to recognize the risk factors and then to select the most adequate treatment for it.  1.はじめに  筆者が1968年より1991年までに東京女子医大消 化器病センターおよび第二外科において経験した 大腸癌手術症例は,直腸癌776例,結腸癌1,100例, 計1,876例である(表1).これらの症例に行った 治療や研究を基として,大腸癌外科治療上もっと も大きな問題である,括約筋温存術と肝転移につ き詳述する.  直腸癌に対する術式の選択は従来より種々論議 されているところであり,括約筋温存のために工 夫された術式も枚挙にいとまがない.括約筋温存 術として,最も完全な術式である前方切除術は    表1 大腸癌手術症例 1968∼1987.3:東京女子医大消化器病センター 1987.4∼1991.12:東京女子医大第二外科 直腸癌 結腸癌 計 治癒切除 治癒切除 @非切除 587 P31 T8 802 Q20 V8 1,386 @351 @136 計 776 1,100 1,876 Dexon1)により確立され,本邦では1960年代より 一般化されてきた.当初は腹膜反転部より高位の 直腸癌(Rs)のみに適応とされていたが,1970年 代にはいり器械吻合の導入により下部直腸癌にも

(2)

積極的に行われるようになってきた2)3).前方切除 術施行上の最大の問題点は,癌の手術として直腸 切除術に比し,残存する部分が多いため再発の危 険が多いと考えられることと,実際問題として, 骨盤腔底部の深い場所で,結腸直腸吻合が可能か どうかという点である.本稿ではこの2点の解明 を中心に述べる.  大腸癌の肝転移は,近年,画像診断の進歩に伴 い,非常に高率に発生していることが判明してき た.自験例でも1,755例中322例18.3%と高率に認 められており,この解決が大腸癌治療成績向上の ため必須であることも自明の理である.筆老らが 行ってきた方法も,肝切除,化学療法,温熱療法, 免疫療法など多岐に亘るが,円葉にまたがる複数 の転移に対しては確実な方法がないのが現状であ る.この解決のためには,むしろ手術時に肝転移 を認めない症例に対して,そのrisk factorを予知 し,予防的治療法を確立することが急務であると 考える.以上の一点につき以下順を追って述べる.  2.前方切除術  1)遠隔成績からみた前方切除術の適応  前方切除術を腹膜反転部以下の直腸癌(Ra, Rb)に対して行う場合は,その根治性が保たれる か否かが最大の問題である.直腸癌の郭清,即ち 上方向(上直腸動脈一下腸間膜動脈沿線)および 側方向(中直腸動脈一二腸骨動脈沿線)に関して は,前方切除術においても直腸切断術の場合と全 く同様の操作が可能であり,異なる点は,吻合す る直腸の一部門残存すること,肛門挙筋が残存す ることの2点のみである.したがって,この2カ 所に癌の遺残がなけれぽ,根治性の面で直腸切断 術と全く変らない訳である.これを証明するため には,症例を蓄積し,遠隔成績,すなわち生存率 および再発率,局所再発形式を同じ条件下に行っ た直腸切断術と比較検討する必要がある1下部直 腸癌に対して前方切除術を行う場合,最大の問題 は残存する直腸断端の癌遺残であるとされてき た.逆に言うと,癌腫の下縁より何cm離して切離 すれば安全かという肛門側切除断端(AW)の問題 である.表2は直腸切断術の摘出標本231例を用い て,直腸癌の肛門側への壁内進展を組織学的に検 表2 直腸癌肛門側壁内進展 1mm未満 1∼9mm 10∼19mm 20∼29mm 30mm以上 175例 34例 19例  3例  0例 計 231例 討したものである,粘膜面の癌腫下縁を基点とし

七検討すると門内進展1mm未満は175例と半数

以上を占め,1∼9mm 34例,10∼19mm 19例,

20∼29mm 3例,30mm以上は0例であった.し

たがってAWを3cmとれぽ完全であり,2cmで

あっても98%以上安全であるといえる.以上の結 果より,癌腫下縁より2ないし3cm離して直腸が 切離でき,かつ肛門挙筋に癌浸潤を認めない症例 を前方切除術の適応とした.この条件で前方切除 術を施行した症例151例と,同時期に施行した直腸 切除術125例につき前述の方法で遠隔成績につき 検討した.以下教室の亀岡の研究4)に基づいて述 べる。  (1)生存率  前方切除術151例の5年累積生存率(5生率)は 68.6%,腹会陰式直腸切断術125例では60.9%で あったが,一般化Wilcoxon検定では両術式間に 有意差はなかった.Dukes分類別に5生率をみて も,Dukes BおよびDukes C群で前方切除術の方 がわずかに高率であったが,同様に推計学的有意 差はなかった(図1).通常,前方切除術では癌腫 の存在部位は直腸切断術より高い位置であるの で,厳密には同じ部位で比較する必要がある.表 3は占居部位別に5生率をみたものである.前方 切除術では,Rs 68.9%, Ra 72.5%, Rb 64.5% であり,直腸切断術では,Rs 68.6%, Ra 68.5%, Rb 56.1%であった. Rsではほぼ同じ5生率を示 したが,Ra, Rbでは前方切除術の方が高率であっ た.しかしWilcoxon検定では有意差はなかった.  (2)局所再発率  前:方切除術では151例中局所再発をきたした症 例は23例(15.2%),直腸切断術では125例中25例 (20.0%)であった.占居部位別にみると,前方切 除術ではRs 87例中16例(18.4%), Ra 44例中5

(3)

100 器 害・・ 率 霧 「  し耀㍉

  へ、

 エしロ   叫㌔鴫. 髄tオ  冠}  ・前方切除術  68.6%(n=151) 」L一 ??A式  直腸切断術  60.9%(n=125) ⊥打ち切り例 一般化Wi}coxon検定値 ユ.30655(有意差なし:p<0.05)   1  2   3  4  5年 図1 術式別累積生存率(Kaplan・Meier法) 表3 占居部位別5年累積生存率(Kaplan−Meier法)     居部位 p式 Rs Ra Rb 前方切除術 ??A式直腸切 @断術 68.9%(n=87) U8.6%(n=10) 72.5%(n=44) U8.5%(n=30) 64.5%(nこ20) T6.1%(n二85) 一般化Wilcoxon @検定値 1.33417 iN.S.) 1.07416 iN.S.) 0.891696 iNS.)  局所再発形式を診断することはきわめて困難で あるが,筆者らは,初回手術標本の病理組織学的 検索,再手術での開腹所見および再切除標本の病 理組織学的検索,ならびに各種画像診断所見を総 合して診断基準を作成し,これに基づいて局所再 発を成因別に6型に分類した5》.この分類に前方 切除術後局所再発23例をあてはめると,肛門側切 除断端(AW)からの再発1例,血管侵襲(V)か らの再発1例,implantation 2例,外科的剥離面 (ew)からの再発3例,リンパ流(ly, n)からの 再発7例,分類不能9例であった.更にその後に 集計されたデータを加えると,外科的剥離面から の再発は14例,リンパ流からの再発は25例に及ぶ (表5).このことは,直腸癌の局所再発は大部分 がこの二者であることを示唆している.即ち,前 方切除術を直腸切断術に変更していれぽ防げた再 発は,AW, V, implantationからの再発計4例に すぎず,大部分の再発は,郭清の徹底,隣接臓器 の合併切除,adjuvant therapyなどに頼らざるを 得ないと考えられた.従って前方切除後の局所再 発に関して,従来考えられていた直腸切断術を行 えば再発を防げたという説は短絡的な誤った考え である.

最後にAWの長さと局所再発についての検討

表4 占居部位別にみた局所再発率      占居部位 p式 Rs Ra Rb 前方切除術 ??A式直腸切断術 16/87(18.4%) Q/10(20.0%) 5/44(11.4%) S/30(13,3%) 2/20(10.0%) P9/85(22。4%) 計 18/97(18.6%) 9/74(12.2%) 21/105(20.0%) (κ2=0.5909)  N.S. (κ2=0.5354)  N.S. (κ2=0.1773)  N.S. 例(11.4%),Rb 20例中2例(10.0%),直腸切断 術ではRs 10例中2例(20.0%), Ra 30例中4例 (13.3%),Rb 85例中19例(22.4%)であり,いず れも前方切除術の方が低率であった(表4).特に 最も問題となるRbにおいて局所再発率が低率な ことは,前方切除術の適応拡大の妥当性を示すも のと思われる.  (3)局所再発形式        表5 局所再発形式

’募離断戦

       ・手術方法の変更 ・血流(v)からの再発  噛一一略        (前方切除術→直腸切断術}

・騨㎝による/

・外科的剥離面(ew) からの再発 。リンパ流(ly,n)からの 再発   

、灘鱗の合併切除と

 症例数

(4)

表6 AWの長さと骨盤内再発 (Rb, RbRa, RaRb症例38例) AWの長さ 骨盤内再発@(一) 骨盤内再発@(+) 計 1,0−1.9cm Q.0−3.9cm S.0一 22例 W4 2例 Q0 24例 P0 S 計 34 4 38 κ2=1.546 NS(p<0,01) を行った.直腸癌占居部位が高位の場合は十分な ・AWがとれるので問題は生じない. AWがとりに くいRbに腫瘍またはその下縁がある38症例につ き,AWの長さ別に再発の有無をみたのが表6で ある.AWの長さがあまりとれぬ1.0∼1.9cmの もの24例中,22例は再発(一),2例が再発(+), 2.0∼3.9cmでは10例中21 晒が再:発(十),4cm以 上4例では再発0であった,推計学的には有意差 はなく,2cm以下のAWでも局所再発率は8.3% と低率で,AWの長さと再発との間には相関は見 出せなかった.  以上の検討を要約すると,前方切除術の適応拡 大の条件とした,肛門挙筋に癌浸潤のないこと, AWが3cm(2cm)とれることは誤まりがなく,生 存率,局所再発率,再発形式による検討,AWの 長さと局所再発との関係などをみても,同条件で 行った直腸切断術に比較して全く遜色がなかっ

た.またAWに関しては何cmと規定することは

無意味で,切離直腸断端のaw(一),即ち術中組 織検査で癌浸潤(一)であれが前方切除で差支え ないと考えるに至った.  2)器械吻合による低位前方切除術  前方切除術の普遍化を妨げていたもう一つの原 因は,骨盤i腔の深部における結腸直腸吻合が手術 手技上非常に困難であったことである.特に肥満 のある場合,また骨盤腔の狭い男性では,縫合に あたって持針器が骨盤壁につかえて使用が制限さ れ,とくに全層縫一時には,口側結腸断端を骨盤 腔内に引き入れ,直腸断端と並べて縫合せねぽな らず,視野の制限も加わることになる.従って, 吻合操作の困難さから,縫合不全を主とする術後 合併症も非常に多かった.

4

4

q)

、ρ2 (2)

R》002 &  ク (3)

44

4

(4)       (5)       (6)   図2 Double stapling technique  腸管の自動縫合器を用いて消化管吻合を行う器 械吻合が導入されてからは,低位前方切除を器械 吻合で行う試みが次第に行われるようになった. 筆者は1976年にソ連製の吻合器を用いて本邦で, はじめて低位前方切除術を行った6).その後,器械 を改良して,日本製のものを作製し,数多くの症 例を重ねてきた7).これら器械吻合の利点は,吻合 操作は肛門外から行えること,吻合はstapleによ る内翻一層縫合で確実であること,骨盤内操作は 直腸断端をpurse−string suture(巾着縫合)で器 械本体の中心ロッドに縫着するのみであること, 時間が短縮できること,などである.一方,問題 点としては,直腸断端を中心ロッドに縫着する際, ゆるんだり,粘膜が脱落したりすることが多く, ここに技術的困難があると同時に失敗の大部分の 原因となっていたことである.1980年Knight& Grif6en8)9)により開発されたDST法(double sta・

(5)

図3 Roticulator 図4 anvil(右)と器械本体(左) pling technique)は,この欠点を完全になくした もので,1983年頃より臨床応用されるようになっ た9)10).  本法を手順を追って紹介すると(図2(1)∼(6)) 直腸の切離にあたっては,切離予定線に器械頭部 が回転可能なlinear stapler(ROTICULATOR) (図3)をかけて切断する(1).従って直腸断端は stapleで線状に閉鎖された形で切断される訳であ る.口縄結腸断端はover and overでpurse− string sutureをかけ,器械本体から外したanvil (図4)を入れ縫着する.この操作は広い腹腔内で 行うので極めて簡単である.経肛門的にanvi1を 外した吻合器本体を直腸内に挿入し,器械中央よ りtrocarを出して,.直腸断端のstaplingさせた 中央を穿与する(2).直腸断端よりつき出た trocarを平ぎ取り(3),器械本体のshaftへ口側結 腸に縫着したanvi1を連結する(4).その後,機械 手元のwingnutを十分に捻りあげて結腸直腸を 密着させ,一気にハンドルを締めつけ吻合を完了 する(5)(6).吻合はstaplerによる一層のみで終 了し漿膜筋層縫合は追加していない.  DSTの利点は,直腸切離にあたって,断端に糸 をかけることがないので,縫い代をとる必要がな く,従来の器械吻合より2cm位肛門側で切離がで きること,直腸断端が開放されないので術野の汚 染が殆んどないこと,前述のごとく,器械吻合の 最も弱点であった直腸断端の処理がなくなり,吻 合が確実になったこと,手技が容易で誰にでもで きるようになったこと,手術時間の大幅な短縮が できたこと,などがあげられる.一方,本法では 吻合に際し左右両端はstaplerで閉じられた上 に,更にstaplerによる吻合が加わることになり, 若干の不安がある.更にその両側はstaplerによ る外翻一層縫合の部分(dog ear)がそのまま残る ので,術後縫合不全の心配がなされた.しかし実 際に施行した場合,殆んど問題はなく,すでに自 験例も数十例を数えているが,90%以上の症例に おいて合併症を認めていない.ごく低位の前方切 除術では,従来は手縫い吻合でも,器械吻合でも 20∼30%程度の縫合不全は止むを得なかった が3),本法による成績は画期的なものと考えられ る.  さて従来,ごく直腸低位の癌腫に対しては重積 手術,貫通手術,または経肛門的縫合などが括約 筋温存術として行われてきた.本法を応用するこ とにより,腹腔内のみの操作でいわゆる超低位前 方切除術(歯状線直上,肛門縁より2∼3cmの部で の吻合)が可能となり,従来の術式は殆んど行わ れなくなったと言っても過言ではないと思われ る.  3.肝転移に対する治療  大腸癌において高率に肝転移が発生することが 認識されはじめたのは1970年代からで,これは画 像診断の発展,とくに超音波診断の進歩と日常化

(6)

榴 :1 誌 :l l: ’1 表7 肝切除術弓 術  式 症例数   部分切除 @ 区域切除 @ 葉切除 @拡大葉切除 t切除+部分切除 23 P6 Q6 Q2 計 69 表8 転移数と残肝再発 残肝再発 @(一) 残心再発@(+) 計  1個 Q個以上 15 Q 14 P4 29 P6 計 17 28 45 (p<0.05) 表9 肝切除の時期と残肝再発 残肝再発 @(一) 残肝再発 @(+) 計 四時性切除 ッ時性切除 12 T 11 P7 23 Q2 計 17 28 45    1       2       3       4       5 (YEARS} 図5 肝切除例の累積生存率(Kaplan・Meier法) に負うところが多いと思われる。同時に腫瘍マー カーであるCEAが,大腸癌肝転移に密接に関係 することが判明し,CEAによるチェック,超音波 による診断,更にはCT, MRIなどによる検査と いう方法が定着してきたことに原因が求められよ う.前述のように,筆者の自験例でも1,755例中322 例(18.3%)に肝転移を認あている,実際には全 例がfollow upされている訳ではないので実数は 更に上回ると考えられる.肝転移癌に対しては, 可能であれぽ肝切除を行うことが試みはじめられ たのもこの頃で,筆者らも肝切除術の有用性を強 調してきたu)12).表7は肝切除を行った症例であ るが,69例に対し,部分切除23例,区域切除16例, 葉切除26例が主として行われている.拡大葉切除 は2例に,葉切除+部分切除と両葉に亘る手術は 2例に行ρている.これら肝切除症例の累積生存 率は図5に示すごとくで,約30%の3生率と20% 弱の5生率が得られている.肝切除に際して重要 なことは,血行性転移であるので,残存肝に転移 巣のないことを確認することが必要である.この ため術中超音波検査の開発を行ったが13)14),本法 は極めて有用で,術中簡単に直径5mm程度の転 移巣を判別できるようになり,超音波ガイドによ る肝切除術が盛んに行われるようになった15).し (p〈0.05) かしながら肝切除後の再発形式をみると,残肝再 発が最も多く,これに対する方法として,残雪に 対する化学療法が工夫されると共に,肝転移に対 する肝切除術の適応についても論議されるように なった.  筆者らも,追求しえた45例につき,肝切除時の 条件と残肝再発の有無につき検討した.そのうち 有意差のあったものをあげると,転移個数と残肝 再発においては,表8のごとく,転移巣が孤立性 で1個であった症例は29例あり,うち14例に残肝 再発が起こった.一・方2個以上の症例では16例中 14例に残肝再発があり,孤立性のものが有意(p< 0.05)に亭亭再発が少なかった.また肝切除の時 期(同時性か十時性か)と残肝再発の関係では, 異時性切除23例中,残肝再発11例に対し,同時性 切除22例中17例であった(表9).異時性切除は初 回の大腸癌手術時に肝転移を証明できず,術後 follow up時に発見された転移癌を肝切除したも ので,当然癌腫の発育が緩徐であると考えられ, 予後も良好である.また肝切除に際し,肝切離面 における癌浸潤(TW)の有無と丁丁再発との関係 をみると,肝切離面の癌浸潤部よりの距離が1cm 以上ある症例(TW(一))では,35例中残肝再発 は19例であるのに対し,1cm以内(TW(+))の 症例では,10例中門肝再発は9例に及んでいる(表 10).

(7)

表10肝切離面の癌浸潤の有無と残肝再発 表11肝転移の治療 肝切離面 残肝再発@(一) 残肝再発@(+) 計 TW(一) sW(+) 16 P 19 X 35 P0 計 17 28 45 (p<0.05) ・動注化学療法 ・塞栓化学療法 ・温熱療法 ・温熱化学療法 ・免疫療法 (LAK, CTL) ・腫瘍内局注療法 → ・温熱化学療法 ・CTL 100% 80 60 40 20 0 ’一’u  1_.「 ’1 一甲

u

区域切除(n=15) 表12温熱化学療法の抗腫瘍効果 幽’k一., 一’1   i.....匿L一

難 L塑睡23・

1  2  3  4  5  6  7  8  9  ¶0年   図6 肝切除術式別生存曲線  以上を要約すると肝転移に対する肝切除術の最 も良い適応は,転移が孤立性であること,平時性 の転移癌であること,切除に際してはTWが(一) であることが条件であるといえる.肝切除術式別 に生存曲線をみると,葉切除,部分切除,区域切 除の中では,区域切除を行った症例が最も良好で, 40%以上の9年生存率を得ている(図6).このこ とは,前に述べたごとく腫瘍が孤立性であり,し かも区域別に十分なsurg量cal marginをとって切 除できた症例の予後が好いことを裏づけていると いえる. CR PR

MR

NC

PD 計 症例数 i%) 0  8 i26.7)  5 i16.7)  14 i46.7)  3 i10.0) 30  さて,肝転移癌が肝切除の適応となる症例は少 なく,多くの症例は干葉に複数の転移巣を有し, 切除術以外の治療が求められる.表11は筆者の 試みた肝転移癌に対する治療法である.肝動脈内 にカテーテルを挿入し,リザーバーを留置して行 う動注化学療法や塞栓化学療法(TAE)は最も一 般的な治療法であるが単独では,よい効果を得ら れなかった.温熱療法も同様であった.超音波下 に腫瘍内にエタノールを局注する方法も,肝細胞 癌に対する著効が報告されているが,転移癌は非 常に固く,殆んど無効であった.免疫療法として は培養リンパ球を注入するLAK, CTL療法を試 みた.これら治療法のうち,一応の効果を認めた

ものは免疫療法のCTL(cytotoxic T

lymphocyte)と,温熱療法と動注リザーパーによ る肝動注を組合わせて行う,温熱化学療法の二者  前      後 図7 大腸癌手術後に生じた肝転移症例のCT像

(8)

であった.  CTLは患者のリンパ球とMitomycin Cで処理 した患者癌細胞を3日間培養律,更にIL2を加え

て4∼7日間培養し,CTLを誘導するものであ

る.このリンパ球1×108個以上を1週1回,リ ザーバーより患者の肝内に動注により反復投与す る.本法は有効性は実証されたが16),作製に高度の 技術と時間を要すること,高額の費用がかかるこ と,ターゲットとする癌病巣が小さくなけれぽな らないことなどの制限があり,一般化するには至 らな:かった.  温熱化学療法は肝に対する温熱療法と動注リ ザーバーよりの化学療法を組合わせたもので,週 1∼2回の温熱療法を数週間行い,その間動注に より5コ口系統の制癌剤の点滴を行って1クール とするものである.表12は本療法の抗腫瘍効果を 示したものであるが,30例中PRは8例(26.7%), MRは5例(16.7%)で奏効率は43.4%であった。 温熱化学療法は副作用のない場合には,2ないし

3クール行うが,1クールのみではNCまたは

MRであった症例が2クール後にはPRに移行す

る例が多く,継続できた場合にはかなりの抗腫瘍

効果が認められた.PRが得られた症例はMR以

下の症例に対して有意差をもって生存期間が延長 しており本療法の効果が確認された17)18).  図7は大腸癌手術後に生じた肝転移症例のCT 像で,温熱化学療法前には肝門葉に亘る大きな転 移性腫瘍を数個認めている.本症例に温熱化学療 法1クール施行後のCT像が右側にみられるが, 一部わずかに腫瘍陰影を認めるのみで,大部分の 腫瘍;が消失している.  以上述べたごとく,門葉に亘る肝転移に対して は,自験例では温熱化学療法とCTL療法にある 程度の効果を認めた.他にも制癌剤の持続点滴, あるいは頻回の動注などで効果を認めた報告もみ られるが,いずれにせよ単独投与では無効例が多 く,薬剤を組合わせて用いるか,二つの治療法を 同時に行うかが必要と思われる.しかし,丁丁葉 に多数の転移を認めるような症例においては,効 果を認めたとしても根治性はなく,この問題の解 決の第一歩としては,肝転移の予知と予防があげ られると思う.肝転移の予知,すなわち肝転移の risk factorを大腸癌初回手術時に明確にしょう という試みは現在盛んに行われている.  すでに腫瘍関連抗原として,CEA,血液関連糖 鎖抗原,病理組織学的検索として,静脈侵襲,stage 分類などが行われているが,最近,癌遺伝子,癌 抑制遺伝子,核DNA量(DNA ploidy pattern) また免疫学的パラメーターとして,NK活性, PPO皮内反応,腫瘍組織適合抗原の発現,などの 研究が盛んに行われるようになった.筆者らも基 底膜成分であるlamininに着目し,血中laminin と肝転移との相関を報告19)20)している.  このように,肝転移,risk factorについては, 解明が進んでいるが,初回手術時または術後に, 如何なる治療法が最も効果的かということについ ては,まだ定説はなく研究段階と言わざるを得な い.しかし大腸癌治療成績向上のためセこは,この 問題は困難ではあるが,避けて通ることはできな い.今後の若い学徒の研究に期待するゆえんであ る.          文  献  1)Dixon CF:Anterior resection for malignant   lesions of the upper part of the rectum and   lower part of the sigmoid. Ann Surg 128:   425−442, 1948  2)浜野恭一,山田明義,秋本 伸ほか:器械吻合に   よる直腸癌低位前方切除術.日臨外医会誌 40:   1071−1076, 1979  3)浜野恭一,亀岡信悟,秋本 伸ほか:直腸癌の括   約筋温存手術一低位前方切除術:手縫い吻合と器   械吻合.回外 39:1667−1673,1984  4)亀岡信悟:遠隔成績からみた直腸癌に対する前方   切除術の適応に関する研究.日消磁会誌 20二   1938−1947, 1987  5)五十嵐達紀:直腸癌局所再発(骨盤腔内再発およ   び会陰部再発)の成立機序に関する臨床病理学的   研究.日本大腸肛門病会誌 39:36}372,1986  6)浜野恭一,秋本 伸,亀岡信悟ほか:われわれの   結腸吻合法,特に腸管吻合器による低位前立切除   の試み.第31回日本大腸肛門病学会,1976  7)浜野恭一,秋本 伸,大森尚文ほか:器械吻合に   よる低位前立切除術.手術 33:1337−1344,1979  8)Knight CD, Grijfen FD:An impfoved tech・   nique for low anterior resection of the rectum   using EEA stapler. Surgery 88二710−714,1980  g)Cohen Z, Myers E, Langer B et al: Double

(9)

  stapling technique for low anterior resection.   Dis Colon Rectum 26:231−235,1983 10)亀岡信悟,中島清隆,宮崎 要はか:Double sta−   pling techniqueを用いた低位前方切除術.東女医   大誌 60:885−890,1990 11)浜野恭一由里樹生,秋本 伸:転移性肝癌に対   する肝切除術.消外 46:1125−1ユ31,1982 12)浜野恭一,由里樹生,秋本 伸ほか:大腸癌転移   巣に対する診断と治療..外科診療 27:618−624,   1985 13)秋本 伸,由里樹生,済陽高穂ほか:肝転移超音   波診断の検討.日超医論文集 40・:123−124,1982 14)亀岡信悟,浜野恭一,秋本 伸ほか:大腸癌の超   音波診断.日本大腸肛門病会誌 37:529−534,   1984 15)Hamano K, Akimoto S, Yuri T et aL   Intraoperative ultrasonography:An aid to   hepatectomy for liver metastases from color・   ectal cancer. J Exp Clin Cancer Res 3:   143−147, 1984 16)富松裕明,浜野恭一,三橋 牧ほか:大腸癌肝転   移に対するCTLを目指したキラー細胞による   Adoptive Immunotherapyの試み.日消外会誌   22:445, 1989 17)Seshhno A, Hamano K, Mabuchi G et al:A   review of cases treated by local hyperthemlia.   Hyperther Ohcol Jpn 91:167−168,1992 18)瀬下 明,大地哲郎,桐田孝史ほか:転移性肝腫   瘍に対する局所温熱療法の検討.東女医大誌   63:418−422, 1993 19)斉藤登:大腸癌肝転移予知因子としてのうミニ   ンの血清学的および組織学的研究.日本大腸肛門   病会誌 44:898−905,1991 20)泉 公成:大腸肝転移と血清laminin濃度の関   係に関する研究.日消外会誌25:1234−1242,   1992

参照

関連したドキュメント

 気管支断端の被覆には,胸膜 9) ,肋間筋 10) ,心膜周囲 脂肪織 11) ,横隔膜 12) ,有茎大網弁 13)

焼灼によって長期生存を認めている報告もある 23)

Hypotonic duodenography revealed a barium-filled pear-shaped sac surrounded by thin radiolucent line in the second part of duodenum.. The findings are most suggestive of

今回completionpneumonectomyを施行したが,再

Yoshinobu Hattorit, Seisaku Kamibayashi', Hirofumi Satoh2,Michihisa Kojima,r, Toru Watanabe3 and Kenji Omura3 uKijima Hospital 2Department of Surgery, Yokohama Sakae Kyosai

現在、当院では妊娠 38 週 0 日以降に COVID-19 に感染した妊婦は、計画的に帝王切開術を 行っている。 2021 年 8 月から 2022 年 8 月までに当院での

実行時の安全を保証するための例外機構は一方で速度低下の原因となるため,部分冗長性除去(Par- tial Redundancy

整合性 + 繁殖性 モジュラーカット除去 厳密性 + 繁殖性